特許第5754741号(P5754741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5754741改良された光学特性を有するポリカーボネート組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754741
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】改良された光学特性を有するポリカーボネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20150709BHJP
   C08K 5/527 20060101ALI20150709BHJP
   C08K 5/5393 20060101ALI20150709BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20150709BHJP
   C08K 5/5357 20060101ALI20150709BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K5/527
   C08K5/5393
   C08K5/521
   C08K5/5357
   C08J3/20 ZCFD
【請求項の数】1
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-531262(P2012-531262)
(86)(22)【出願日】2010年9月17日
(65)【公表番号】特表2013-506719(P2013-506719A)
(43)【公表日】2013年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2010005724
(87)【国際公開番号】WO2011038841
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年9月13日
(31)【優先権主張番号】102009043513.1
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504037346
【氏名又は名称】バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【弁理士】
【氏名又は名称】末盛 崇明
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ヴェーアマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート−ヴェルナー・ホイヤー
(72)【発明者】
【氏名】アンケ・ボウマンス
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−231840(JP,A)
【文献】 特開平11−035815(JP,A)
【文献】 特開平11−100497(JP,A)
【文献】 特開2000−239511(JP,A)
【文献】 特開2004−167946(JP,A)
【文献】 特開2007−308620(JP,A)
【文献】 特開2009−155377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08J 3/00 − 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)と式(2)、または式(3)と式(4)、または式(5)と式(6)、または式(15)と式(16)、または式(23)と式(24)のうちの、酸化数+3を有するリン化合物と酸化数+5を有するリン化合物の少なくとも1対、およびビスフェノールAを含有するコポリカーボネートまたはホモポリカーボネートを含有する組成物であって
【化1】





式中、
X=単一の化学結合であり、および
R1およびR2は、相互に独立して、互いに、フェニル基または置換フェニル基であり、
R7およびR8は、分岐C〜Cアルキルまたはクミルであり、
該組成物は、酸化状態+3を有する該リン化合物の酸化形態に対応する、酸化状態+5を有する該リン化合物をそれぞれ対で有し、
含有されるより高い酸化数を有する化合物の量は、より低い酸化数を有する化合物の量よりも低い、該組成物を調製する方法であって、以下の工程を有する該方法
界面法または溶融法に従う連続法で得られるベース樹脂からのポリカーボネート組成物を調製し、および、所望により空気を除外しながら、サイドユニットを用いることによる連続法で式(2)、(4)、(6)、(16)または(24)の酸化状態+3を有するリン化合物を導入し、生成ユニット内におけるインサイチュ反応で式(1)、(3)、(5)、(15)または(23)の酸化状態+5を有する対応するリン化合物を生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された光学特性を有する、ポリカーボネート組成物およびコポリカーボネート組成物、例えばブレンド、およびそれらの製造、および造形品を製造するためのそれらの使用、ならびに、それによって得ることができる造形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、工業用の熱可塑性物質に属する。それらはランプ用のハウジング材料のような、電気・電子分野における幅広い使用と、良好な光学特性と組合せて、特段の機械的特性が要求される用途において幅広く使用されている。そのため、別の大きな使用分野は、例えばCDおよびDVD、ブルーレイディスクならびにHD-DVDなどの光学データ記憶媒体、およびポリカーボネート板、散乱ディスクおよび他のディスプレー用物品の製造に関する押出用途、自動車部門における光学用途、例えば、ガラス、プラスチックカバー、導光要素、およびポリマー導光繊維など、ならびにバックグラウンド照明用の拡散シート、LED用途、レンズ、コリメーター、および長いフィールドランプ用のランプカバー、ならびにウォーターボトル製品である。
【0003】
これら全ての用途において、特に製造または加工する間における、高い熱的な荷重負担能力と共に、良好な機械的性質およびレオロジー的性質、例えば良好な流動性と組合せて、良好な光学特性が常に要求されている。
【0004】
ポリカーボネートを調製する連続法において、例えば、相界面法または溶融重縮合法に従う場合、ポリカーボネート溶融体は、処理装置中で強い熱応力と高いせん断エネルギーに曝されるので、ポリマー中にこの時点で損傷が既に生じ、光学特性の低下が認められ、低下した透明性と増加した黄色度指数の形成が生じる場合もある。
【0005】
EP0789053A1は、ポリカーボネートの長期間の安定化のために、ホスフィンとケイ素化合物の混合物を開示するが、加工する間に組成物を安定させるための混合物の記載はない。
【0006】
WO00/73386は、粉塵の蓄積を減少させた物品を製造するためのポリカーボネート成形組成物を開示し、この場合、ホスフィン、ジホスホニト、ヒドロキシフェニルプロピオネートおよび他の商業的なリン化合物からなる群からの酸化防止剤が使用される。しかしながら、組成物の光学特性を安定化する問題、およびホスフィン/ホスフィンオキシド混合物の使用は、言及および記載されていない。
【0007】
EP0625521A1において、高いガラス転移温度、高い衝撃強さおよび良好な難燃性を備えるポリカーボネートを得るために、ビスホスフィンオキシドジヒドロキシアリールモノマーが、ポリカーボネートに対するモノマー成分として使用される。
【0008】
EP0346761B1は、重縮合におけるプロセス触媒としてホスフィンまたはホスフィンオキシドを用いる相界面法に従う、ポリカーボネートを製造するための方法を開示する。該触媒は、処理の間にポリマーから除去される。
【0009】
しかしながら、先行技術を明らかにするこれらの文献は、上述の使用分野において光学的に優れた組成物を必要とする時であっても、良好な機械的特性を維持しながら、どのようにしてポリカーボネート組成物の光学特性が改良されるかについて指示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0789053号A1明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第00/73386号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0625521号A1明細書
【特許文献4】欧州特許第0346761号B1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、良好なレオロジー的性質を維持しながら、改良された光学特性を有するポリカーボネート組成物および芳香族ポリカーボネート組成物を開発することである。特に、これらの組成物に関して、黄変指数が低下し、透過率が増加することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、インサイチュ(in situ)で生成される酸化状態+5および+3の状態のリン化合物の混合物、またはポリカーボネート組成物に添加される混合物は、相界面法または溶融重縮合により、連続ポリカーボネート生成法で生成される組成物に対して、一定のレオロジー的な特性と、改良された光学特性プロファイルをもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0013】
製造する間に添加剤として導入され、酸化状態+3および+5における、式(1)〜(6)のリン化合物の、インサイチュで生成される対および添加される対は、共に、ポリカーボネート組成物の黄変指数を減少させ、透過率を増加させる。ここで、リン化合物の対は、酸化状態+3および+5を備る化合物を意味することを意図し、酸化状態+5を備える化合物は、酸化状態+3を有する化合物の酸化生成物である。
【0014】
したがって、本発明は、式(1)と(2)、または(3)と(4)、または(5)と(6)あるいは、これらの式の少なくとも2つの対の混合物で表わされるリン化合物の対を含有するポリカーボネート組成物を提供する。
【0015】
【化1】
式中、Xは、単一の化学結合または酸素原子を表わすことができ、
およびR1およびR2は相互に独立して、フェニル基または置換フェニルを表わすことができる。
【0016】
フェニル基は、C-Cアルキル、分岐C-Cアルキルまたはクミルで好ましく置換され、この場合において、置換基は同一であってもよくまたは異なっていてもよいが、同一の置換基が好ましい。
【0017】
フェニル基は、2および4、または2、4および6の位置で好ましく置換される。
【0018】
これらの位置におけるtert-ブチル置換基が、正に特に好ましい。
【0019】
フェニル基は、最大5個の置換基を有することができ、1、2または3個の置換基が好ましく、2または3個の置換基が特に好ましい。
【0020】
さらに、化合物中で、等しく命名される基Rは、与えられる定義の範囲内で異なっていてもよいが、同一の基が好ましい。
【0021】
好ましい実施態様において、好ましくは空気を排除しながら、対応する化合物(2)、(4)または(6)が、サイドユニットを用いることによりポリカーボネート溶融体へ添加され、および化合物(1)、(3)または(5)が、製造ユニットの内部にて、インサイチュ反応で生成される連続法において、化合物(1)、(3)または(5)はインサイチュで生成され、後に単離されるポリカーボネートグラニュール中における化合物(2)、(4)または(6)の濃度は、化合物(1)、(3)または(5)の濃度よりも大きい。
【0022】
酸化数+3から+5への遷移は、リン化合物(4)および(6)の場合、段階的に行うことができる。すなわち、まず、酸化数+3を有する2つのリン原子のうちの1つは、酸化され、それにより、酸化数+3と酸化数+5を共に有するリン化合物が存在でき、この場合において、2つのリン基は、相互に独立して考えられる。
【0023】
組成物中に含まれる式(2)、(4)または(6)の化合物の量は、好ましくは5〜1500ppm、好ましくは10〜1200ppm、より好ましくは30〜1000ppm、まさにより好ましくは50〜800ppm、特に好ましくは80〜400ppmであり、最も好ましくは100〜325ppmである。
【0024】
組成物中に含まれる式(1)、(3)または(5)の化合物の量は、好ましくは5〜300ppm、好ましくは10〜200ppm、より好ましくは15〜100ppmおよび特に好ましくは20〜60ppmである。
【0025】
式(1)、(3)または(5)のうちの1つによる化合物の量は、式(1)〜(6)の化合物の全質量で表現すると、2%〜49%、好ましくは2%〜45%、特に好ましくは3%〜40%、より特に好ましくは4%〜35%である。
【0026】
別の実施態様において、酸化状態+3および+5を有する対応する化合物は、ポリカーボネート溶融体へ添加され、酸化状態+3を有する化合物の割合は、酸化状態+5を有する化合物の割合よりも大きい。
【0027】
式(1)〜(6)から誘導される、式(7)と(8)、または(9)と(10)、または(11)と(12)、または(13)と(14)の対を含むポリカーボネート組成物が、特に好ましい:
【0028】
【化2】
式中、R1およびR3は、相互に独立して、フェニル基または置換フェニル基を表わすことができる。
【0029】
フェニル基は、C-Cアルキル、分岐C-Cアルキルまたはクミルで好ましく置換され、この場合において、置換基は同一であってもよくまたは異なっていてもよいが、同一の置換基が好ましい。
【0030】
およびR4、R5およびR6は、H、分岐C-Cアルキルまたはクミル、好ましくはtert-ブチルまたはクミルである。
【0031】
好ましくは空気を排除しながら、化合物(8)、(10)、(12)または(14)が、サイドユニットを用いてポリカーボネート溶融体へ添加され、および化合物(7)、(9)、(11)および(13)が、製造ユニットの内部にて、インサイチュ反応で生成される連続法を用いて、化合物(7)、(9)、(11)および(13)は、上述のようにインサイチュで好ましく生成される。後に単離されるポリカーボネートグラニュール中における化合物(7)、(9)、(11)および(13)の濃度は、化合物(8)、(10)、(12)または(14)の濃度よりも低い。
【0032】
しかしながら、別の方法として、これらの化合物の対または対の混合物を添加してもよい。
【0033】
式(15)と(16)、または(17)と(18)、または(19)と(20)または(21)と(22)の対、およびこれらの対の混合物を含有するポリカーボネート組成物が、更に特に好ましい。
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
式中、R4、R5、R6、R7およびR8は、H、分岐C-Cアルキルまたはクミル、好ましくはtert-ブチルまたはクミルである。
【0036】
上述のように、空気を排除しながら、化合物(16)、(18)、(20)および(22)が、サイドユニットを用いてポリカーボネート溶融体へ添加され、および化合物(15)、(17)、(19)および(21)が、製造ユニットの内部にて、インサイチュ反応で生成される連続法を用いて、化合物(15)、(17)、(19)および(21)は、インサイチュで好ましく生成される。後に単離されるポリカーボネートグラニュール中における化合物(15)、(17)、(19)および(21)の濃度は、化合物(16)、(18)、(20)および(22)の濃度よりも低い。
【0037】
しかしながら、別の方法として、これらの化合物の対または対の混合物を添加してもよい。
【0038】
式(23)と(24)、または(17)と(18)、または(25)と(26)、または(27)と(28)の混合物、またはこれらの対の混合物を含有するポリカーボネート組成物がさらにより特に好ましく、式(17)と(18)の混合物が最も好ましい。
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
化合物は、上述のように生成されてもよく、および/または添加により導入されてもよい。
【0042】
式(1)〜(28)の構造要素を有する化合物は、二次酸化防止剤(ヒドロペルオキシド分解剤)と称されるか、それらの逐次生成物と称される(プラスチック添加剤ハンドブック、第5版、Hanser Verlag,ミュンヘン、2001年)。
【0043】
更なる一次酸化防止剤(例えばラジカル捕捉剤)、例えば、立体障害型フェノールまたはHALS安定剤などは、本発明による組成物に、所望により添加できる(プラスチック添加剤ハンドブック、第5版、Hanser Verlag,ミュンヘン、2001年)。
【0044】
一次酸化防止剤に対する二次酸化防止剤の比は、6:1〜1:6の間、好ましくは5:1〜1:5の間、特に好ましくは4:1〜1:4の間、より特に好ましくは3:1〜1:3の間であることができる。
【0045】
本発明に関連する、熱可塑性の芳香族ポリカーボネートは、ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方である。ポリカーボネートは、既知の方法により、直鎖状または分岐状であることができる。
【0046】
いずれも用語「ポリカーボネート」のもとに要約される、熱可塑性の芳香族ポリカーボネートを含む、熱可塑性のポリカーボネートおよびコポリカーボネートは、10000〜200000、好ましくは15000〜100000、および特に好ましくは17000〜70000g/モルの分子量Mw(重量平均Mw、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により決定される)を有する。
【0047】
本発明による組成物は、紫外線安定剤および離型剤および所望による着色剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含有できる。
【0048】
組成物中のこれらの添加剤の割合は、一般に0.01〜1.00、好ましくは0.005〜0.800、特に好ましくは0.04〜0.50wt%である(組成物を単位として表わされる)。
【0049】
有機紫外線安定剤が、紫外線安定剤として適当である。紫外線安定剤は、ベンゾトリアゾール(例えばチバ社製のTinuvin、チバ社製のTriazine CGX-06)、ベンゾフェノン(BASF社製のUvinul)、シアノアクリレート(BASF製のUvinul)、桂皮酸エステルおよびオキサルアニリドおよびこれらの紫外線安定剤の混合物を含む群から好ましく選択される。
【0050】
適当な紫外線吸収剤の例は、
a)式(I)のマロン酸エステル
【0051】
【化7】
式中、Rはアルキルを示す。好ましくは、Rは、C1-C6アルキル、特にC1-C4アルキルおよび特に好ましくはエチルを示す。
【0052】
式(II)によるベンゾトリアゾール誘導体:
【0053】
【化8】
式(II)において、RおよびXは、同一または異なり、Hまたはアルキルまたはアルキルアリールを示す。
【0054】
Tinuvin(登録商標)329(この場合、X=1,1,3,3−テトラメチルブチルおよびR=Hである)、Tinuvin(登録商標)350(この場合、X=tert−ブチルおよびR=2−ブチル)およびTinuvin(登録商標)234(この場合、XおよびR=1,1−ジメチル−1−フェニル)が好ましい。
【0055】
c)式(III)による二量体ベンゾトリアゾール誘導体:
【0056】
【化9】
式(III)において、RおよびRは同一または異なっており、H、ハロゲン、C〜C10−アルキル、C〜C10−シクロアルキル、C〜C13−アラルキル、C〜C14−アリール、−ORまたは−(CO)−O−R(式中R=HまたはC〜C−アルキル)を示す。
【0057】
式(III)において、RおよびRは、同様に同一または異なっており、およびH、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、ベンジルまたは、C〜C14−アリールを示す。
【0058】
式(III)において、mは1、2または3を示し、およびnは1、2、3または4を示す。
【0059】
Tinuvin(登録商標)360(この場合、R=R=R=H;n=4;R=1,1,3,3−テトラメチルブチル;m=1)が好ましい。
【0060】
d)式(IV)による二量体ベンゾトリアゾール誘導体:
【0061】
【化10】
式中、「ブリッジ」は以下のものを示す:
【0062】
【化11】
【0063】
、R、mおよびnは式(III)に関して記載した意味を有し、式中、pは0〜3の整数であり、qは1〜10の整数であり、Yは−CH−CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、または−CH(CH)−CH−であり、RおよびRは、式(III)について記載した意味を有する。
【0064】
Tinuvin(登録商標)840(この場合、R=H;n=4;R=tert-ブチル;m=1;R=はオルト位置でOH基に対して付けられ;R=R=H;p=2;Y=−(CH-;q=1である)が好ましい。
【0065】
e)式(V)によるトリアジン誘導体:
【0066】
【化12】
式中、R、R、R、Rは同一または異なっており、およびH、アルキル、アリール、CNまたはハロゲンであり、Xはアルキル、好ましくはイソ-オクチルである。
【0067】
Tinuvin(登録商標)1577(この場合、R=R=R=R=H;X=ヘキシル)、およびCyasorb(登録商標)UV−1 164(この場合、R=R=R=R=メチル、X=オクチル)が好ましい。
【0068】
f)以下の式(Va)によるトリアジン誘導体:
【0069】
【化13】
式中、RはC-アルキル〜C17−アルキルを示し、RはHまたはC-アルキル〜C−アルキルを示し、nは0〜20である。
【0070】
g)式(VI)の二量体トリアジン誘導体:
【0071】
【化14】
式中、R、R、R、R、R、R、R、Rは同一であってもよく異なっていてもよく、およびH、アルキル、CNまたはハロゲンを意味し、Xはアルキリデン、好ましくはメチリデンまたは−(CHCH−O−)−C(=O)−であり、nは1〜10、好ましくは1〜5、特に1〜3である。
【0072】
h)式(VII)のジアリールシアノアクリレート:
【0073】
【化15】
式中、R〜R40は同一であってもよく異なっていてもよく、およびH、アルキル、CNまたはハロゲンを意味する。
【0074】
Uvinul(登録商標)3030(この場合、R〜R40=Hである)が好ましい。
【0075】
本発明による成形組成物に関する特に好ましい紫外線安定剤は、ベンゾトリアゾール(b)および二量体ベンゾトリアゾール(cおよびd)、マロン酸エステル(a)およびシアノアクリレート(h)、ならびにこれらの化合物の混合物からなる群からの化合物である。
【0076】
紫外線安定剤は、成形組成物を単位として表わす場合、0.01wt%〜15.00wt%の量、好ましくは0.05wt%〜1.00wt%の量、特に好ましくは0.08wt%〜0.5wt%の量、および正に特に好ましくは0.1wt%〜0.4wt%の量で使用される。
【0077】
本発明による組成物に対して所望により添加される離型剤は、ペンタエリトリトールテトラステアレート、グリセリンモノステアレート、ステアリルステアレートおよびプロパンジオールステアレートおよびそれらの混合物を含む群から好ましく選択される。離型剤は、成形組成物を単位として表わすと0.05wt%〜2.00wt%の量で使用され、総組成物を単位として表わすと、好ましくは0.1wt%〜1.0wt%の量、特に好ましくは0.15wt%〜0.60wt%の量、正に特に好ましくは0.2wt%〜0.5wt%の量で使用される。
【0078】
一次酸化防止剤として、立体障害型フェノール(例えば、チバ社製のIrganox型、例えば、Irganox1076(オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)、Irganox1010(ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、またはIrganox1035(チオジエチレンビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)が好ましく使用される。
【0079】
本発明による組成物は、常套の添加剤、例えば別の熱安定剤、帯電防止剤、着色剤、流動助剤および防炎剤を更に含有できる。
【0080】
本発明による、使用されるポリカーボネートの調製は、原則として、ジフェノール、炭酸誘導体および所望による分岐剤から、既知の方法を用いて行われる。
【0081】
ポリカーボネートの合成方法は既知であり、多くの文献に記載されている。EP−A0517044、WO2006/072344、EP−A1609818、WO2006/072344およびEP−A1609818およびそれに記載された文献は、例えば、ポリカーボネートを調製するための相界面法および溶融方法を開示する。
【0082】
ポリカーボネートの調製に適当なジヒドロキシアリール化合物は、式(29)のものである:
【化16】
式中、
Zは6個〜30個の炭素を有する芳香族基であり、1またはそれ以上の芳香核を含むことができ、置換可能で、脂肪族基または脂環式基を含有でき、またはおよび架橋要素としてヘテロ原子またはアルキルアリールを含有できる。
【0083】
好ましくは、式(29)におけるZは、式(30)の基を示す:
【0084】
【化17】
式中、
およびR10は、相互に独立して、H、C〜C18−アルキル、C〜C18−アルコキシ、ClまたはBr等のハロゲン、または各々の場合に所望により置換されているアリールまたはアラルキル、好ましくはHまたはC〜C12−アルキル、特に好ましくはHまたはC〜Cアルキル、および正に特に好ましくはHまたはメチルを表し、および
X(式30)は、単結合、−SO−、−CO−、−O−、−S−、C〜C−アルキレン、C〜Cアルキリデン、またはC〜C12−アリーレンを示し、それは別のヘテロ原子を更に含む芳香環と所望により縮合させることができる。
【0085】
好ましくは、Xは、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C12−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、または−SO−を意味し、Xは、特に好ましくは、単結合、イソプロピリデン、C〜C12−シクロアルキリデンまたは酸素を意味する。
【0086】
本発明により使用されるポリカーボネートを調製するのに適当なジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゾールおよびそれらのアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化化合物である。
【0087】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニル−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゾール(ビスフェノールM)、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゾール、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0088】
特に好ましいジフェノールは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)-プロパン(BPA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル(DOD)および2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(TMC)である。
【0089】
これらのジフェノールおよび更に適当なジフェノールは、例えば、US−A特許明細書2999835、3148172、2991273、3271367、4982014、および2999846、ドイツ公開特許公報1570703、2063050、2036052、2211956、および3832396、フランス特許明細書1561518、研究論文「H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Interscience Publishers, New York 1964, p. 28 以下参照; p. 102 以下参照」および「D.G. Legrand, J.T. Bendler, Handbook of Polycarbonate Science and Technology, Marcel Dekker New York 2000, p. 72 以下参照」に記載されている。
【0090】
ホモポリカーボネートの場合、ただ1種類のジフェノールが使用され、コポリカーボネートの場合、2種類以上のジフェノールが使用される。使用されるジフェノールは、合成の際に添加される任意の他の化学物質及び助剤と同様に、それらの合成、取り扱い、及び貯蔵に由来する不純物で汚染されている可能性がある。したがって、可能な限り純粋な原料を使用することが望ましい。
【0091】
ポリカーボネートの合成は連続的に行われる。相界面における反応(LPC法)は、既に記載した混合装置を用いる、ポンプ循環式反応装置、チューブ反応装置または攪拌タンクカスケードまたはそれらの組合せを用いて、合成混合物が反応するまで、すなわち、けん化性の塩素またはホスゲンクロロ炭酸塩をもはや含有しなくなる時まで、水相と有機相を可能な限りデミックス(demix)しないことで確実におこなわれる。
【0092】
モノフェノール、例えばフェノール、tert-ブチルフェノールまたはクミルフェノールなどの形態で使用される連鎖停止剤の量は、それぞれ使用されるジフェノールのモルを単位として表わされる場合、0.5モル%〜10.0モル%、好ましくは1.0モル%〜8.0モル%、特に好ましくは2.0モル%〜6.0モル%である。連鎖停止剤の添加は、ホスゲン化(phosgenation)の前、途中または後に行うことができ、好ましくは、塩化メチレンとクロロベンゼン(8-15wt%濃度)の溶媒混合形態の溶液として添加される。
【0093】
相界面合成において使用される触媒は、tert-アミン、特に、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、N−i/n−プロピルピペリジン、特に好ましくは、トリエチルアミンおよびN−エチルピペリジンである。触媒は、単独で、混合状態または相互に並列して連続的に、および所望によりホスゲン化の前に合成へ添加できるが、ホスゲンの導入後の計量添加が好ましい。酸、好ましくはミネラル酸、特に塩酸とのそれらのアンモニウム塩のようなtertアミンの場合、触媒または複数の触媒の投入は、物質中、不活性溶媒、好ましくはポリカーボネート合成の不活性溶媒中、もしくは水性溶液中で行うことができる。複数種の触媒を使用する場合、または触媒の総量の一部の量が投入される場合、様々な位置および様々な時に投入する様々な方法を行うことも、もちろん可能である。使用される触媒の総量は、使用されるビスフェノールのモルを単位として表わす場合、0.001〜10.000mol%、好ましくは0.01〜8.00mol%、特に好ましくは0.05〜5.00mol%である。
【0094】
有機相は、脱塩水または蒸留水で繰り返して洗浄される。各洗浄工程後における、水相の一部が分散し得る有機相の分離は、沈殿槽、攪拌層、またはこれらの装置の組合せを用いて行われ、いずれの場合においても、洗浄水は動的または静的混合装置を用いることにより、洗浄工程間で所望により添加される。
【0095】
温度、真空または加熱した搬送ガスを用いることによる、溶媒の蒸発により、溶液からのポリマーの単離を行うことができる。
【0096】
溶媒の残留物は、このような方法で得られた高濃度のポリマー溶融体から、脱蔵押出機、薄膜蒸発器、流下フィルム蒸発器または押出蒸発器を用いて溶融物から直接除去されてもよく、または摩擦圧縮(friction compacting)により、所望により同調因子、例えば窒素もしくは二酸化炭素の添加、または真空を用いて、あるいは、それに続く結晶化および固相中の溶媒残留物を完全に加熱することにより除去できる。
【0097】
溶融状態での反応(溶融重縮合法、MPC法)は、不連続的または連続的なエステル交換法によって行うことができる。ジヒドロキシアリール化合物と、ジアリールカーボネート、所望により更なる化合物が溶融体としてもたらされた後、反応は、適当な触媒が存在する状態で開始される。収率または分子量は、目的とされる最終状態に到達するまで、分離したモノヒドロキシアリール化合物を放出することにより、適当な装置および機器中で、温度の上昇および圧力の減少と共に増加する。ジアリールカーボネートに対するジヒドロキシアリール化合物の混合比を選択すること、ポリカーボネートの調製に関する方法または設備を選択すること、蒸気を介するジアリールカーボネートの損失率を選択すること、および、所望により添加される化合物、例えばより高沸点のモノヒドロキシアリール化合物などを選択することにより、末端基は種類と濃度を決定される。
【0098】
好ましくは、ポリカーボネートを調製するための連続法は、触媒を用い、所望により他の反応物質を添加して、ジアリールカーボネートと1または複数のジヒドロキシアリール化合物を溶融させ、次いで、予備縮合の後に、生成されたモノヒドロキシアリール化合物を分離することなく、段階的に減少する圧力と段階的に上昇する温度を用いる複数回の後反応蒸発器ステージにおいて、分子量が所望の程度にまでもたらされることを特徴とする。
【0099】
この方法に従う、各反応蒸発器ステージに適する装置、機器および反応装置は、熱交換器、圧力解放装置、分離器、カラム、蒸発器、攪拌漕および反応装置、または商業的に入手可能な装置であり、それは、選択された温度と圧力にて必要な滞留時間をもたらす。選択される装置は、熱の必要な導入をもたらすことができ、連続的に増加する溶融粘度に適応できるように構成されなければならない。
【0100】
全ての装置は、ポンプ、パイプラインおよびバルブを介して相互に接続される。不必要に滞留時間が伸びるのを避けるために、全ての装置間のパイプラインはもちろんできるだけ短く、ラインの曲率をできるだけ小さく維持するべきである。外部、すなわち技術的な枠組と化学設備の組み立てに関する要求は、この場合において検討される。
【0101】
好ましい連続法に従い処理を行うために、反応パートナーをいっしょに溶融させてもよく、または固体のジヒドロキシアリール化合物をジアリールカーボネート溶融体中に溶解させてもよく、または固体のジアリールカーボネートをジヒドロキシアリール化合物の溶融体中に溶解させてもよく、あるいは2つの原料は、好ましくは生成物から直接、溶融体として混合される。原料の各溶融体の滞留時間、特にジヒドロキシアリール化合物の溶融体の滞留時間は、可能な限り短く設定される。
【0102】
一方、溶融混合体は、個々の原材料に比べて原材料混合物の融点は低くなるので、品質を落とすことなく、それに応じて低温でより長く滞留させることができる。
【0103】
その後、触媒は、(好ましくはフェノールに)溶解され添加され、溶融体を反応温度まで加熱する。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとジフェニルカーボネートからポリカーボネートを調製するための、工業的に重要な方法に関して、これは180〜220℃、好ましくは190〜210℃、正に特に好ましくは190℃である。15〜90分、好ましくは30〜60分の滞留時間で、生成されるヒドロキシアリール化合物を除去せずに、反応の平衡は確立される。反応は大気圧下で行われてもよいが、技術的理由のために加圧下でもよい。工業的設備における好ましい圧力は2〜15bar(絶対圧)である。
【0104】
溶融混合物を第1の真空チャンバー内に放出し、その圧力を100〜400mbar、好ましくは150〜300mbarに設定し、その後、同じ圧力にて適当な装置内で、入り口温度まで直接後加熱する。放出操作において、生成したヒドロキシアリール化合物を、依然として存在するモノマーと共に蒸発させる。同じ圧力下で同じ温度で、所望によりポンプで循環させながら、底部生成物容器内で5〜30分の滞留時間の後、反応混合物を第2の真空チャンバー内に放出し、その圧力は50〜200mbar、好ましくは80〜150mbarであり、その後、同じ圧力下、適当な装置内で、190〜250℃、好ましくは210〜240℃、特に好ましくは210〜230℃の温度まで直接加熱する。ここでも再び、生成したヒドロキシアリール化合物を、依然として存在するモノマーと共に蒸発させる。同じ圧力下で同じ温度で、所望によりポンプで循環させながら、底部生成物容器内で5〜30分の滞留時間の後、反応混合物を第3の真空チャンバー内に放出し、その圧力は30〜150mbar、好ましくは50〜120mbarであり、その後、同じ圧力下、適当な装置内で、220〜280℃、好ましくは240〜270℃、特に好ましくは240〜260℃の温度まで直接加熱する。ここでも再び、生成したヒドロキシアリール化合物を、依然として存在するモノマーと共に蒸発させる。同じ圧力下で同じ温度で、所望によりポンプで循環させながら、底部生成物容器内で5〜20分の滞留時間の後、反応混合物をさらなる真空チャンバー内に放出し、その圧力は5〜100mbar、好ましくは15〜100mbar、特に好ましくは20〜80mbarであり、その後、同じ圧力下、適当な装置内で、250〜300℃、好ましくは260〜290℃、特に好ましくは260〜280℃の温度まで直接加熱する。ここでも再び、生成したヒドロキシアリール化合物を、依然として存在するモノマーと共に蒸発させる。
【0105】
これらのステージの数は、たとえば、ここでは4個であるが、2〜6個の間で変更できる。同程度の結果を得るために、ステージ数が変われば、それに合わせて温度および圧力を適合させる。
【0106】
これらのステージでもたらされるオリゴマー状カーボネートの予備縮合物(precondensate)の相対粘度は、1.04〜1.20の間、好ましくは1.05〜1.15の間、特に好ましくは1.06〜1.10の間である。
【0107】
好ましい実施態様において、直近のフラッシュ/蒸発器ステージと同じ圧力および同じ温度で、所望によりポンプで循環させながら、底部生成物容器で5〜20分の滞留時間の後、このようにして生成されるオリゴカーボネートを、ディスクまたはバスケット反応器へと移し、250〜310℃、好ましくは250〜290℃、特に好ましくは250〜280℃で、1〜15mbar、好ましくは2〜10mbarの圧力下で、30〜90分、好ましくは30〜60分の滞留時間で、さらに縮合させる。生成物は、1.12〜1.28、好ましくは1.13〜1.26、特に好ましくは1.13〜1.24の相対粘度に到達する。この反応器(中粘度反応器)を出る溶融体は、さらなるディスクまたはバスケット反応器(高粘度反応器)で、縮合生成物、フェノールを分離することにより、所望の最終粘度または最終分子量にされる。これに関する温度は270〜330℃、好ましくは280〜320℃、特に好ましくは280〜310℃であり、圧力は0.01〜3.00mbar、好ましくは0.2〜2mbarであり、滞留時間は60〜180分、好ましくは75〜150分である。相対粘度は想定される使用に必要なレベルに設定され、1.18〜1.40、好ましくは1.18〜1.36、特に好ましくは1.18〜1.34である。
【0108】
2つのバスケット反応器の機能を1つのバスケット反応器に結合させてもよい。
【0109】
全ての処理ステージからの気体を直接放出、回収および処理する。生成物の高い純度をもたらすために、この処理は、一般的に蒸留によって行われる。
【0110】
本発明による方法において、上記リンIII化合物およびリンV化合物、および所望による他の添加剤は、押出機における横押出機により溶融体中へ導入される。
【0111】
この目的を達成するために、式(2)、(4)および(6)ならびにそれらの混合物を含有する群からの化合物は、サイドユニット(横押出機)を用いることにより、スピニング(粒状化)の前に、ポリカーボネートに対してマスターバッチ(最大10wt.%)としてまたは純物質として添加される。このマスターバッチは、紫外線安定剤、離型剤または着色剤などの更なる添加剤を所望により含有できる。
【0112】
好ましくは、リン化合物の添加に続いて、更なる工程において、式(1)〜(6)による酸化状態+3および+5を有するリン化合物の量が決定され、この場合において、酸化状態+3を有するリン化合物の量は、酸化状態+5を有するリン化合物の量よりも多くなければならない。酸化状態+3を有するリン化合物の量が、酸化状態+5を有するリン化合物の量よりも少ない場合、更なる工程において、酸化状態+3を有する更なるリン化合物が、ポリカーボネート溶融体へ添加され得る。
【0113】
添加剤の導入は、組成物成分の分解を防ぐ安定剤によりポリカーボネート組成物の耐用年数が延長されること、最終生成物を着色すること、加工を容易にすること(例えば離型剤、流動助剤、帯電防止剤)、特殊加重に対してポリマー特性を適合させること(ゴムなどの衝撃強度改良剤、防炎剤、着色剤、ガラス繊維)に役立つ。
【0114】
これらの添加剤はポリマー溶融物へと、個々に添加されても、または任意の混合物で、または複数の異なる混合物で添加されてもよく、およびポリマーの単離前に、またはグラニュールの溶融後、いわゆる配合工程で添加されてもよい。添加剤、またはそれらの混合物は、固形分、すなわちパウダーとして、または溶融体としてポリマー溶融体内へ添加できる。計量添加の別の方法は、添加剤または添加剤混合物のマスターバッチまたはマスターバッチ混合物の使用を含む。
【0115】
ポリカーボネート組成物に関して適当な常套の添加剤は、「プラスチック用添加剤ハンドブック,John Murphy,エルゼビア,オックスフォード1999」、「プラスチック添加剤ハンドブック,Hans Zweifel,Hanser,ミュンヘン2001」または国際特許第WO99/55772号公報,第15−25頁に記載される。
【0116】
着色剤、例えば有機染料または顔料、または無機顔料、IR吸収剤は、単独で、混合状態で、または安定剤、ガラス(中空)ガラスビーズ、無機充填材または有機もしくは無機散乱顔料と組合せて、更に添加できる。
【0117】
本発明によるポリカーボネート組成物は、常套の機械、例えば押出機または射出成形機で加工でき、常套の方法により、任意所望の造形体、造形品、シートもしくはプレートまたはボトルなどを形成できる。
【0118】
このようにして得ることができる、本発明による改良された光学特性を備えるポリカーボネート組成物は、押出品(プレート、シートおよびそれらのラミネート;例えばカード用途およびチューブ)の製造、および造形体(ボトル)に関して使用でき、特に、透明な場所において使用するもの、特に、光学的利用の分野における使用、例えばプレート、ウェブ板、ガラス、散乱およびカバーディスク、ランプカバー、プラスチック製カバーディスク、光導体要素、または光データ記憶媒体、例えば音楽-CD、CD-R(W)、DVD、DVD-R(W)、ミニディスク(読み取り専用または1回書き込み可能および所望により再書き込み可能な態様)、近視野光学用の記憶媒体などに使用できる。さらに、電気/電子分野およびIT部門に関するものを製造することに使用できる。
【0119】
本発明によるポリカーボネート組成物の使用における別の大きな分野は、散乱ディスクおよび他のディスプレー用途だけでなく、自動車分野における光学的利用、例えば、ガラス、プラスチック被覆、散乱ディスクもしくは導光要素、コリメーター、レンズ、LED用途、ポリマー光導体繊維、バックグラウンド電光用の拡散シートおよびロングフィールドランプ用のランプカバーである。
【0120】
本発明によるポリカーボネート組成物は、化合物、ブレンド、例えばPC/ABS、PC/ASA、PC/SAN、PC/PBT、PC/PETまたはPC/PETG、および光学および機械的特性における特定の要求を与える成分の調製に使用でき、例えば、LED用途、コリメーター、発光ダイオード、ランプカバー、自動車分野、例えばフロントヘッドライトおよびガラス、医療部門、例えば透析装置など、コネクター、タップ、包装、例えばボトル、コンテナなどに使用できる。
【0121】
本出願は、本発明によるポリマーから製造される押出品および造形体、または造形品にも関する。
【実施例1】
【0122】
使用した原料
PC1は、14.5cm/10分(260℃/2.16kg)のメルトボリュームフローレート(MVR)を有する、ビスフェノールAおよびホスゲンに基づくポリカーボネートである。
PC2は、15.7cm/10分(260℃/2.16kg)のMVRを有する、ビスフェノールAおよびホスゲンに基づくポリカーボネートである。
PC3は、15.5cm/10分(260℃/2.16kg)のMVRを有する、ビスフェノールAおよびホスゲンに基づくポリカーボネートである。
PC4は、8.9cm/10分(260℃/2.16kg)のMVRを有する、ビスフェノールAおよびホスゲンに基づくポリカーボネートである。
TPP:トリフェニルホスフィン
Irgafos168:BASF/チバ社製のホスフィット(tris-(2,4-ジ-tert.-ブチル)フェニル-ホスフィット)
【0123】
本発明による成形組成物の特性評価(試験方法)
着色測定:
造形体における黄色指数の決定は、ASTM E313に従い、標準試験体(4mm厚)において測定することによりおこなう。
造形体における透過の決定は、ASTM E313に従い、標準試験体(4mm厚)において測定することによりおこなう。
メルトボリュームフローレート(MVR)の決定は、ISO1133に従い、メルトインデックス試験装置を用い、2.16kgの荷重と260℃にて、または1.2kgの荷重と300℃にて行われる。
【0124】
I-MVRの決定は、上述のように(ISO 1133)して同様に行われるが、20分間の連続熱荷重後においてのみおこなう。
【0125】
表1は、改良された光学特性の本発明による効果を示し、特に、増加した加工温度における、増加した透過と減少した黄色指数を示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1により明確に公開されるように、本発明による組成物は、非置換のポリカーボネート組成物と比べてより良好な熱安定性を有する。Y.Iは、著しく減少し、それに対して、透過およびメルトフローの挙動は殆ど変化しないままである。この効果は、高い加工温度および長い滞留時間において特に明白である。
【0128】
表2における試験は、ポリカーボネート(PC5およびPC6)を調製する際において、本発明によるリン化合物の直接導入は本質的要素であることを示し、その一方で、ポリカーボネート組成物中における、酸化状態+3と+5を有するリン化合物の対の欠如は、より高いY.I.およびより低い透過をもたらすことを示す。
【0129】
本発明によるPC5は、10.0cm/10分(1.2kg、300℃、ISO 1133に従う)のMVRを有するBPAポリカーボネートである。
【0130】
本発明によるPC6は、13.2cm/10分(1.2kg、300℃、ISO 1133に従う)のMVRを有するBPAポリカーボネートである。
【0131】
比較例PC7は、13.0cm/10分(1.2kg、300℃、ISO 1133に従う)のMVRを有するBPAポリカーボネートである。
【0132】
【表2】
【0133】
本発明によるPC5およびPC6のポリカーボネート組成物は、減少した黄色指数と共により高い透過を有することが理解できる。
【0134】
表3における試験は、ポリカーボネート(PC5)を調製する際において、本発明によるリン化合物の直接導入は本質的要素であることを示し、その一方で、ホスフィン/ホスフィン酸化物混合物の後配合は、より高いY.Iとより低い透過を有する組成物をもたらすことを示す。
【0135】
本発明によるPC8は、12.5cm/10分(1.2kg、300℃、ISO 1133に従う)のMVRを有するBPAポリカーボネートである。
【0136】
比較例PC9は、配合工程において250ppmのTPPが導入された、12.5cm/10分(1.2kg、300℃、ISO 1133に従う)のMVRを有するBPAポリカーボネートである。
【0137】
【表3】
【0138】
本発明によるポリカーボネート組成物PC8は、後配合PC9と比べて、より高い透過を有すると共に減少した黄色指数を有することが判る。