特許第5754760号(P5754760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5754760-製玉装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5754760
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】製玉装置
(51)【国際特許分類】
   A21C 9/08 20060101AFI20150709BHJP
   A23L 1/16 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   A21C9/08 F
   A23L1/16 J
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-257426(P2014-257426)
(22)【出願日】2014年12月19日
【審査請求日】2015年4月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正人
(72)【発明者】
【氏名】横井 歩
(72)【発明者】
【氏名】飯田 久雄
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−67185(JP,U)
【文献】 特開昭50−36677(JP,A)
【文献】 実開昭57−192178(JP,U)
【文献】 実開昭51−92592(JP,U)
【文献】 実開昭58−7586(JP,U)
【文献】 実開昭50−156595(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 9/08
A23L 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺玉を生成する製玉装置において、麺を送り出す方向に回転する第1の成形ローラと、前記第1の成形ローラの斜め下側に配置され前記第1の成形ローラと同じ方向に回転する第2の成形ローラと、前記第2の成形ローラに対向配置され前記第1の成形ローラと同じ方向に回転し前記第2の成形ローラに対して接離するように変位する第3の成形ローラと、前記第1の成形ローラないし前記第3の成形ローラによって形成される成形空間に麺を閉じ込めて前記麺を押圧するように前記麺の性状に合わせた変位量で変位する第4の成形ローラと、で成る成形ローラを備えた製玉装置。
【請求項2】
前記成形ローラの直下に配置され前記成形ローラで生成された麺玉を搬送するコンベアと、前記コンベアの上側において前記麺玉を押圧する押圧装置と、を備えた請求項1に記載の製玉装置。
【請求項3】
前記押圧装置は、上側から前記麺玉を押圧する第1の押圧装置と、前記麺玉が搬送される方向に直交する水平方向から麺玉を押圧する第2の押圧装置と、を含んで成る請求項2に記載の製玉装置。
【請求項4】
前記第1の押圧装置と前記第2の押圧装置が前記麺の性状に合わせて位置を変更することができることを特徴とする請求項3に記載の製玉装置。
【請求項5】
前記麺を玉形状に成形する工程に要する時間を前記麺の性状に合わせて設定でき設定された時間で前記成形ローラを動作制御する制御装置を備えた請求項1に記載の製玉装置。
【請求項6】
玉形状に成形された麺玉に形状癖を付与する工程に要する時間を前記麺の性状に合わせて設定でき設定された時間で前記成形ローラを動作制御する制御装置を備えた請求項1に記載の製玉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製麺機によって製造された生麺を玉形状に成形して麺玉を生成する製玉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製麺機は、小麦粉や蕎麦粉のような素材を混練して生成される麺粒を寄せ集めて圧縮してできる麺帯を引き延ばして所定の厚さにし、麺線を切り出して、麺線を所定の長さに切断することによって連続的に麺を製造する。そのため、製麺機によって製造された所定の長さの麺は、麺線を切り出す方向に揃っている。したがって、製品として複数本の麺を丸くまとめた麺玉を生成する必要がある場合は、所定数の複数本の麺を集めた麺束毎に麺を玉形状に成形し、形状を維持するために形状癖を付ける作業が必要である。
【0003】
麺束毎に機械的に麺玉を生成する製玉装置は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の考案の製玉装置は、具体的には、3個のローラによって形成される空間において、各ローラによって麺を転がして丸める構成を有する。特許文献1の考案の製玉装置によると、麺を傷付けないように玉形状に成形することができる。
【0004】
特許文献2は、3個のローラのうちの1つが変位ローラであり、固定ローラと変位ローラとの間隔を調整することができ、麺を丸めてから変位ローラを逆回転させて生成された麺玉を押圧しながら元の位置に戻す構成の麺玉装置を開示している。特許文献2の発明によると、麺玉を生成後に押し固めることによって麺玉に形状癖を付与するので、形状を崩れにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭53−40558号公報
【特許文献2】特開2007−319148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
麺を玉形状に成形して、形状を維持するために形状癖を付ける作業を行なうにあたって、太さ、固さ、長さ、形のような麺の特徴によって、玉形状に成形することが難しかったり、形状を維持できるように形状癖を付けることが難しい種類の麺がある。以下、このような麺の特徴を性状と総称する。麺の形は、例えば、直線形と縮れ形がある。麺の固さは、加水率または水分含有量によって定量的に表すことができる。
【0007】
3個のローラによって形成される“成形空間”において麺を転がすことによって麺を丸めていくような構成の製玉装置の場合は、成形空間の上側が開放されている状態であるとともに、各ローラの材質と大きさ、および成形空間の大きさが一定であるので、麺玉を生成することができる麺の種類に限りがある。また、麺を玉形状に成形した後に一対のローラによって無理に圧縮して形状癖を付けるように麺を送り出すと、ローラによって麺が傷付けられて品質を低下させるおそれがある。
【0008】
例えば、比較的太い麺あるいは長さが短い麺である場合、短時間に玉形状に丸めることが困難である。また、例えば、水分含有量が少ない低加水の麺では、玉形状に成形することができても、形状癖を付与することが難しく、麺玉を回収するバケットまで搬送されていく間に形状が崩れてしまうことが多い。そのため、麺の種類によっては、その麺の性状に合う特別な専用の製玉装置を開発することが要求される。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて、ローラによって麺玉を生成する製玉装置であって、より多くの種類の麺に対応して麺玉を生成することができる改良された製玉装置を提供することを主たる目的とする。本発明によって得ることができるいくつかの有利な点は、実施の形態の説明において、その都度具体的に示される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の麺玉を生成する製玉装置は、上記課題を解決するために、麺を送り出す方向に回転する第1の成形ローラ(10A)と、第1の成形ローラ(10A)の斜め下側に配置され第1の成形ローラ(10A)と同じ方向に回転する第2の成形ローラ(10B)と、第2の成形ローラ(10B)に対向配置され第1の成形ローラ(10A)と同じ方向に回転し第2の成形ローラ(10B)に対して接離するように変位する第3の成形ローラ(10C)と、第1の成形ローラ(10A)ないし第3の成形ローラ(10C)によって形成される成形空間に麺を閉じ込めて麺を押圧するように麺の性状に合わせた変位量(ε)で変位する第4の成形ローラと、で成る成形ローラ(10)を備えるようにされる。
【0011】
本発明の製玉装置は、好ましくは、成形ローラ(10)の直下に配置され成形ローラ(10)で生成された麺玉を搬送するコンベア(20)と、コンベア(20)の上側において麺玉を押圧する押圧装置(30)と、を備える。望ましくは、上側押圧装置(30)は、上側から麺玉を押圧する第1の押圧装置と、麺玉が搬送される方向に直交する水平方向から麺玉を押圧する第2の押圧装置と、を含んで成る。また、第1の押圧装置と第2の押圧装置が麺の性状に合わせて位置を変更できる。
【0012】
また、本発明の製玉装置は、好ましくは、麺を玉形状に成形する工程に要する時間を麺の性状に合わせて設定でき設定された時間で成形ローラ(10)を動作制御する制御装置を備える。また、好ましくは、玉形状に成形された製玉に形状癖を付与する工程に要する時間を麺の性状に合わせて設定でき設定された時間で成形ローラ(10)を動作制御する制御装置を備える。
【0013】
括弧内の符号は、明細書に添付されている図面で使用されている符号と一致する。ただし、括弧内の符号は、説明の便宜上表示されているものであって、本発明を図面に示されている実施の形態の製玉装置と同一の構成に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製玉装置は、麺の性状に合わせて第4のローラによって任意の大きさで形成される成形空間に麺を閉じ込めた状態で適正圧力で押圧しながら成形するので、基本的に麺の性状に関わらず、麺を傷付けずに玉形状に成形し形状癖を付与することができる。そのため、より多くの種類の麺に対応して、各麺玉間でばらつきが小さく形状がより崩れにくい品質が安定した麺玉を連続的に生成することができる。
【0015】
特に、成形ローラによって成形された麺玉をバケットまで搬送するコンベアとコンベアによって移動中の麺玉を押圧する押圧装置を備えた本発明の製玉装置は、成形ローラによって生成された麺玉を必要に応じてさらに押圧することができるので、麺を傷付けずに、形状が一層崩れにくい麺玉を生成することができる。
【0016】
また、成形ローラを制御する制御装置を備えた本発明の製玉装置は、麺を玉形状に成形する工程ないしは玉形状に成形された麺玉に形状癖を付与する工程に要する時間を麺の性状に合わせて任意に設定して成形ローラを動作させることができるので、より多くの種類の麺に対応して成形でき、各麺玉間でばらつきが小さく形状が崩れにくい品質が安定した麺を連続的に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の製玉装置の概容を示す側面図である。
図2図1に示される製玉装置における第3の成形ローラと第4の成形ローラをそれぞれ変位させる移動機構を示す側面図である。
図3】本発明の製玉装置における成形ローラの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、本発明の適する実施の形態の製玉装置の構成が示されている。図1に示される製玉装置においては、説明の便宜上、図面に向かって右側の面を前面とし、左側の面を後面とする。図1Aは、搬送装置の終端側の上面を部分的に抽出して示している。図1Bは、製玉装置の押圧装置の前面を部分的に抽出して示している。図2は、図1における第3の成形ローラを変位させる移動機構と、第4の成形ローラを変位させる移動機構をそれぞれ部分的に模式的に示している。
【0019】
製玉装置1は、4個の成形ローラ10と、コンベア20と、押圧装置30とを備える。製玉装置1は、搬送装置2の終端側に配置される。製玉装置1は、図示しない製麺機で製造され搬送装置2によって送られてくる生麺を玉形状に成形し、形状癖を付与して麺玉BNを生成する装置である。製玉装置1によって生成された麺玉BNは、バケット3に回収される。以下、本発明では、製麺機の切断機で所定の長さに切断され所定の切断単位量毎に同一の方向に揃うように集められた複数本の麺を麺束という。
【0020】
4個の成形ローラ10の外周面には、それぞれ各回転軸と平行に麺をグリップして回転方向に送り出すための複数の溝が等間隔に形成されている。第1の成形ローラ10Aの回転軸は、図示しないインダクションモータの回転駆動軸と直結するか、またはギアとタイミングベルトによって連結されている。第1の成形ローラ10Aは、上記モータによって搬送装置2から落下してくる麺束を下に向けて送り出す方向に所定の回転速度で回転する。
【0021】
第2の成形ローラ10Bは、第1の成形ローラ10Aから送り出される麺束を受け止めることができる斜め下側の位置に配置される。第2の成形ローラ10Bは、第1の成形ローラ10Aと同形で同じ材質で成る。第2の成形ローラ10Bの回転軸は、ギアとタイミングベルトによって第1の成形ローラ10Aを駆動するモータの回転駆動軸と連結している。第2の成形ローラ10Bは、上記モータによって第1の成形ローラ10Aと同じ方向に同一の回転速度で回転する。
【0022】
第3の成形ローラ10Cは、第2の成形ローラ10Bと共に麺束を受ける位置にあるように第2の成形ローラ10Bに対向配置される。第3の成形ローラ10Cは、第1の成形ローラ10Aと同形で同じ材質で成る。第3の成形ローラ10Cの回転軸は、ギアとクロスタイミングベルトによって第1の成形ローラ10Aを駆動するモータの回転駆動軸に連結している。第3の成形ローラ10Cは、上記モータによって第1の成形ローラ10Aおよび第2の成形ローラ10Bと同じ方向に同一の回転速度で回転する。
【0023】
第3の成形ローラ10Cは、移動機構40によって第2の成形ローラ10Bに対して接離するように変位量δで変位することができる。第3の成形ローラ10Cは、対向配置されている第2の成形ローラ10Bとの間から成形空間にある麺束ないし麺玉BNがコンベア20に落下しないように第2の成形ローラ10Bとの間に実質的に隙間を設けない状態にする第1の位置と、第1の位置から変位量δ離れて成形空間から麺玉BNをコンベア20に落下させる1点鎖線で示される第2の位置との間を往復移動する。
【0024】
移動機構40は、第3の成形ローラ10Cを変更量δで第1の位置と第2の位置との間を往復移動させる手段である。移動機構40は、例えば、シリンダ装置あるいは回転アクチュエータを含むラックピニオン機構である。図2Aに示される実施の形態の製玉装置1における第3の成形ローラ10Cを変位させる移動機構40は、単動空圧シリンダである。したがって、実施の形態の製玉装置1の第3の成形ローラ10Cは、第1の位置と第2の位置との間を直線的に高速移動する。
【0025】
図2Aに示されるように、第3の成形ローラ10Cが第1の位置にあるときは、図示しないクロスタイミングベルトを介在させて第1の成形ローラ10Aを駆動するモータの回転駆動軸に反転して接続する伝達ギア10MGと、第3の成形ローラ10Cの回転軸に同軸に設けられている従動ギア10TGとが噛合って第3の成形ローラ10Cが第1の成形ローラ10Aと同じ方向に回転する。一方、第3の成形ローラ10Cが第2の位置に変位したときは、伝達ギア10TGが従動ギア10MGから離れて、第3の成形ローラ10Cが空転する。
【0026】
実施の形態の製玉装置1の成形ローラ10においては、第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cを第1の成形ローラ10Aを駆動するモータから駆動力を受けて各モータを同一の回転速度で回転するように構成している。しかしながら、第1の成形ローラ10Aを駆動するモータとは別の独立してインバータ制御されるインダクションモータを設けて、第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cをそれぞれ別々のモータによって第1の成形ローラ10Aと同じ回転速度で駆動するようにすることができる。
【0027】
第4の成形ローラ10Dは、第1の成形ローラ10Aないし第3の成形ローラ10Cの3個の成形ローラによって形成される成形空間の上側に配置される。第4の成形ローラ10Dは、第1の成形ローラ10Aないし第3の成形ローラ10Cと同じ材質で成り、各成形ローラと同じ幅を有し、各成形ローラよりも小さい直径を有する。第4の成形ローラ10Dは、図2Bに示されるサーボモータ50Mによって第1の成形ローラ10Aと同じ方向に周速が同じになるように第1の成形ローラ10Aよりも小さい回転速度で回転する。
【0028】
第4の成形ローラ10Dは、移動機構50によって成形空間に対して接離するように麺の性状に合わせた任意の変位量εで変位することができる。第4の成形ローラ10Dは、搬送装置2から供給される麺束が落下して成形空間に収容されることを邪魔しないように成形空間の上側を開放する第1の位置と、成形空間に麺を閉じ込めて麺を適正圧力で押圧する1点鎖線で示される任意の第2の位置との間を往復移動する。
【0029】
移動機構50は、第4の成形ローラ10Dを任意の変位量εで第1の位置と第2の位置との間を往復移動させる手段である。図2Bに示されるように、実施の形態の製玉装置1の第4の成形ローラ10Dを任意の変位量εで変位させる移動機構50は、主に、サーボモータ50Mと、スイングアーム50Aと、クラッチ50Cとで構成される。移動機構50では、サーボモータ50Mによってスイングアーム50Aの回転角度を位置決めすることができるので、スイングアーム50Aの先端側に設けられている第4の成形ローラ10Dを任意の位置に移動させることができる。
【0030】
移動機構50によって第4の成形ローラ10Dを変位量εで変位させるときは、変速機50Tによってスイングアーム50Aの揺動回転軸を駆動伝達軸に結合し、電磁クラッチ50Cを励磁して駆動伝達軸とサーボモータ50Mの回転駆動軸とを接合する。そして、サーボモータ50Mによってスイングアーム50Aを所定の位置まで揺動させることによって、第4の成形ローラ10Dを任意の変位量εで移動させる。
【0031】
第4の成形ローラ10Dが第1の位置または第2の位置にあるときは、変速機50Tによってスイングアーム50Aの揺動回転軸を駆動伝達軸から切り離して、図示しない電磁ブレーキまたはストッパによってスイングアーム50Aを移動しないように固定する。
【0032】
第2の位置において第4の成形ローラ10Dを回転させるときは、変速機50Tによって回転駆動力を伝達する伝達ギア50MGの回転軸を駆動伝達軸に結合し、クラッチ50Cを励磁して駆動伝達軸とサーボモータ50Mの回転駆動軸を接合する。そして、サーボモータ50Mを第1の成形ローラ10Aを駆動するモータと同じ方向に周速が同じになる所定の回転速度で回転させる。サーボモータ50Mの回転駆動力は、伝達ギア50MGとタイミングベルト50Bによって伝達ギア50MGと同形で同歯数の従動ギア50TGに伝達され、第4の成形ローラ10Dが回転する。
【0033】
移動機構50は、第1の成形ローラ10Aと異なる回転速度で回転する第4の成形ローラ10Dを任意の変位量εで変位させることができる手段であるなら、アクチュエータがサーボモータである必要はない。例えば、ピストンの移動ストローク(移動量)を任意に変更することができる単動空圧シリンダによって第4の成形ローラ10Dを第4の成形ローラ10Dを回転駆動するモータと一緒にスライドさせる移動機構を設けることができる。ただし、実施の形態の製玉装置1における移動機構50は、操作者が成形ローラ10を操作することがより容易である点で優位である。
【0034】
コンベア20は、駆動ローラ20Mと従動ローラ20Tとの間でテンションローラ20Fによって所定の張力が付与された状態で張架させるゴム製の無端ベルト20Bを有するベルトコンベアである。コンベア20の本体である無端ベルトは、一端が成形ローラ10の第2の成形ローラ10Bおよび第3の成形ローラ10Cの直下に位置し、他端がバケット3の直上に位置するように配設される。ゴム製の無端ベルト20Bに代えて、一対のスプロケット間に張架される樹脂製または金属製のベルトをコンベア20の本体に適用することができる。
【0035】
押圧装置30は、コンベア20の上側において麺玉BNを押圧して麺玉BNに補助的に形状癖を付与する装置である。押圧装置30は、上側から下方向に麺玉BNを押圧する第1の押圧装置と、麺束BNが搬送される方向に対して直交する水平方向から麺玉BNを押圧する第2の押圧装置とを含んで成る。
【0036】
具体的に、第1の押圧装置は、外周面が平滑な樹脂製の押圧ローラ30Uである。押圧ローラ30Uは、コンベア20が麺玉BNを搬送する方向に対して反対方向に回転する。押圧ローラ30Uは、麺玉BNの搬送の障害にならないようにするとともに、麺玉BNを傷付けて品質を低下させることがないように十分に小さいトルクで回転する。そして、押圧ローラ30Uは、麺玉BNをその外周面に滑らせながら適正圧力で押圧する。
【0037】
第2の押圧装置は、表面が平滑な一対の押圧ベルト30R,30Lである。右側押圧ベルト30Rは、麺玉BNと接触する面が麺玉BNの移動方向に対して反対方向に移動するように反時計回りにコンベア20の移動速度よりも遅い移動速度で移動する。一方、左側押圧ベルト30Lは、麺玉BNと接触する面が麺玉BNの移動方向に対して反対方向に移動するように時計回りに右側押圧ベルト30Rの移動速度と同じ移動速度で移動する。そのため、第2の押圧装置は、麺玉BNの搬送の障害になることがなく、麺玉BNを傷付けることがない。
【0038】
第1の押圧装置の押圧ローラ30Uと、第2の押圧装置の一対の押圧ベルト30R,30Lは、それぞれ麺の性状に合わせて任意に位置を変更することができる。そのため、実施の形態の製玉装置1では、成形ローラ10で生成された麺玉を麺の性状に合わせて必要に応じてさらに適正圧力で押圧することができる。特に、低加水の麺のように形状癖が付きにくい麺に対してより十分に形状癖を付与することができる。一方で、麺玉BNを全く押圧しない位置に押圧装置30を配置することによって、成形ローラ10によって十分に形状癖が付与された麺に対して必要以上無駄に圧縮しないようにすることができる。
【0039】
搬送装置2は、製麺機の切断機によって所定の長さに切断された複数本の麺を所定の切断単位量毎に製玉装置1まで搬送する装置である。切断単位量は、製麺機の切断機が麺線を所定の長さに切断するときに、1回の切断時にまとめて切断される麺線の本数に相当する。
【0040】
搬送装置2が所定の切断単位量毎の複数本の麺を搬送する送り速度は、製麺機が麺を製造する生産速度に依存する。したがって、製麺から製玉までの作業を連続して行なう場合、所定の切断単位量毎の複数本の麺が製玉装置1に送られてくる時間間隔を調整するときは、製麺機の生産速度を搬送装置2の送り速度に合わせることが要求される。
【0041】
実施の形態の製玉装置1は、成形ローラ10と、コンベア20と、押圧装置30とを同期して駆動制御する図示しない制御装置を有している。制御装置は、第1の成形ローラ10Aないし第3の成形ローラ10Cによって成形空間において麺を転がして丸めて玉形状に成形する工程に要する時間を操作者が麺の性状に合わせて設定できる設定手段を有しており、設定された時間で成形ローラ10を動作制御する。
【0042】
また、制御装置は、第1の成形ローラ10Aないし第4の成形ローラ10Dによって前工程でおおよそ玉形状に成形された麺玉に形状癖を付与する工程に要する時間を麺の性状に合わせて設定できる手段を有しており、設定された時間で成形ローラ10を動作制御する。なお、必要に応じて、制御装置に検出信号を出力する各種センサを設置して、例えば、動作不良が発生したときに、製玉装置1と搬送装置2と製麺機とを全て停止するようにすることができる。
【0043】
搬送装置2は、主に、コンベア60と収束ローラ70とで構成されている。収束ローラ70は、コンベア60の終端側において、所定の切断単位量毎の複数本の麺を水平方向に回転する右側ローラ70Rと左側ローラ70Lとの一対のローラ間に集めて麺束を作る。コンベア60によって所定の時間間隔で所定の切断単位量毎に順次供給されてくる麺束は、製玉装置1の成形ローラ10の第1の成形ローラ10Aの上に落下して成形空間に投入される。
【0044】
図3は、4個の成形ローラの動作を示す。図3Aは、麺が成形空間において第1の成形ローラないし第3の成形ローラによって丸められて玉形状に整えられるまでの状態を示す。図3Bは、玉形状に成形された麺を成形空間に閉じ込めて形状癖が付けられるまでの状態を示す。図3Cは、生成された麺玉をコンベアに排出する状態を示す。以下、図1および図2を適宜引用しながら、図3に基づいて実施の形態の製玉装置1の動作を説明する。
【0045】
製麺機の切断機で所定の長さに切断された麺は、1回の切断によって決める所定の切断単位量毎に製麺機の生産速度に依存するタイミングで搬送装置2に投下される。搬送装置2では、所定の切断単位量毎の複数本の麺を製玉装置1に向けて搬送しながら収束ローラ70によって集めて麺束SNにして、所定の切断単位量の複数本の麺を製玉装置1の成形空間に落下させて投入する。
【0046】
図3Aに示されるように、搬送装置2から落下してくる同一方向に揃えられた複数本の麺束SNは、製玉装置1の成形ローラ10の第1の成形ローラ10Aが受けて第2の成形ローラ10Bの方向に送り出す。第1の成形ローラ10Aによって送り出される麺束SNは、第2の成形ローラ10Bによって受け止められる。この間に、麺束SNの両端は、上向きに丸められていく。
【0047】
第2の成形ローラ10Bは、第1の成形ローラ10Aと同じ方向に同一の回転速度で回転しており、第3の成形ローラ10Cとの間は閉じられているので、麺束SNは、第3のローラ10Cに捕捉されて成形空間の上方向に送り出される。麺束SNは、自重によってその先端が再び下方向に向かうので、成形空間において時間とともに麺が丸められておおよそ玉形状に成形される。
【0048】
図3Aに示される複数本の麺を玉形状に成形する“成形工程”においては、第1の成形ローラ10Aないし第3の成形ローラ10Cとによって外周面において麺束SNを転がしながら丸めていくので、麺を傷付けて品質を低下させることなく、麺を玉形状に成形することができる。また、製麺機の生産速度と搬送装置2の搬送速度を調整することによって、成形工程の時間を変更することができる。そのため、より多くの種類の麺を玉形状に成形することができる。
【0049】
図3Bに示されるように、麺が玉形状に整えられた後で第4の成形ローラ10Dが麺の性状に合わせた任意の変位量εで変位して上記成形工程において成形された麺を成形空間に閉じ込めて適正圧力で押圧する。例えば、太いうどんとか、低加水の蕎麦のように、比較的形状癖が付きにくい麺に対しては、麺に傷を与えない範囲で変位量εをより大きくして成形空間を小さくし、形状癖を付きやすくすることができる。
【0050】
したがって、図3Bに示される玉形状に成形された麺に形状癖を付ける“癖付工程”では、麺を傷付けて品質を低下させることなく、麺に玉形状の形状癖を付けやすくすることができる。また、製麺機の生産速度と搬送装置2の搬送速度を調整することによって、麺の性状に合わせて癖付工程の時間を変更することができる。そのため、より多くの種類の麺に対して形状が崩れにくい麺玉を生成することができる。なお、癖付工程においても麺が成形され続けるので、癖を付けやすくするために成形工程を相対的に短くするとよい。
【0051】
図3Cに示されるように、次の麺束SNが送られてくる直前に第3の成形ローラ10Cを第2の成形ローラ10Bから離れる方向に変位量δで変位させて第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cとの間を開放する。その結果、生成された麺玉BNは、コンベア20上に落下する。したがって、麺玉BNが外周面に麺をグリップするための溝を有する成形ローラ10によって必要以上に加圧されることがないので、麺が傷付かずにコンベア20に送られる。
【0052】
図3Cに示される麺玉BNを成形空間からコンベア20に送り出す“排出工程”において、実施の形態の製玉装置1においては、第3の成形ローラ10Cを変位させる移動機構40が単動空圧シリンダであるので、排出工程に要する時間をより短くすることができる。そのため、1つの麺玉BNを生成後に直ちに次の麺玉BNを生成するプロセスに移行することができる利点がある。
【0053】
ところで、実施の形態の製玉装置1においては、第3の成形ローラ10Cを変位させる移動機構40をピストンのストロークが任意に変更することができる単動空圧シリンダにすることによって第3の成形ローラ10Cの変位量δを任意に設定することが可能である。
【0054】
第3のローラ10Cの変位量δを麺の性状に合わせて調整し、第3の成形ローラ10Cを第2の成形ローラ10Bに対して等速で逆回転させることによって、第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cとで麺玉BNを補助的に押圧して送り出すようにすることができる。このとき、麺玉BNには、すでに形状癖が付与されており、無理に強い力で麺玉BNを加圧する必要がないので、第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cの外周面の溝によって麺を傷付けるおそれはない。
【0055】
ただし、第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cとの間で麺を押圧するように構成する場合は、1つの麺玉の生成により多くの時間がかかる点に注意を要する。また、第3の成形ローラ10Cを逆回転させる必要があるため、第3の成形ローラ10Cを第1の成形ローラ10Aを駆動するモータとは別のモータで駆動するようにすることが望ましい。
【0056】
コンベア20に麺玉BNが落下した直後に第3の成形ローラ10Cを第2の成形ローラ10Bに近付く方向に変位量δで変位させて第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cとの間を閉じる。第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cとの間が閉じられた後に、次の麺束SNが搬送装置2から成形空間に供給される。
【0057】
図3Aから図3Cまでの動作時間は、既述のとおり、製麺機の生産速度と搬送装置2の搬送速度を調整することによって変更することができるので、望ましくは、図示しない制御装置の設定装置を操作者が操作して、成形工程と癖付工程の各時間を設定する。なお、実施の形態の製玉装置1における制御装置は、操作者がディスプレイの画面上に表示されている各種類の麺の性状を対話形式で選択的に順次入力することで自動的に各時間を設定するタッチパネル式の操作盤を備えている。
【0058】
押圧装置30の第1の押圧装置と第2の押圧装置は、作業前に、それぞれ麺の性状に合わせて位置合わせが行なわれている。コンベア20に投下された麺玉BNは、押圧装置30の第2の押圧装置の一対の押圧ベルト30R,30Lによって挟み込まれて両側から適正圧力で加圧される。また、麺玉BNは、バケット3の方向に送られる間に、第1の押圧装置の押圧ローラ30Uによって上側からも適正圧力で加圧される。そのため、低加水の麺のように形状癖が付きにくい麺であっても、一層確実に形状癖が付与され、形状が崩れにくくされる。
【0059】
以上に説明される実施の形態の製玉装置は、すでにいくつかの例が具体的に示されているが、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、変形されたり、他の発明と組み合われたり、部材を置き換えたりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の製玉装置は、製麺業において利用される。本発明の製玉装置は、生麺を製造する製麺機に適用することができ、麺の性状に合わせてより幅広く多くの種類の面に対応して崩れにくい麺玉を生成することができる。本発明は、製麺業における作業の合理化に貢献し、その発展に寄与する。
【符号の説明】
【0061】
1 製玉装置
2 搬送装置
3 バケット
10 成形ローラ
10A 第1の成形ローラ
10B 第2の成形ローラ
10C 第3の成形ローラ
10D 第4の成形ローラ
10MG 伝達ギア
10TG 従動ギア
20 コンベア
20B 無端ベルト
20M 駆動ローラ
20T 従動ローラ
20F テンションローラ
30 押圧装置
30U 押圧ローラ
30R 右側押圧ベルト
30L 左側押圧ベルト
40 移動機構
50 移動機構
50A スイングアーム
50B タイミングベルト
50C クラッチ
50M サーボモータ
50T 変速機
50MG 伝達ギア
50TG 従動ギア
60 コンベア
70 収束ローラ
70R 右側収束ローラ
70L 左側収束ローラ
【要約】
【課題】性状が異なるより多くの種類の麺に対応する製玉装置が望まれている。
【解決手段】製玉装置1は、第1の成形ローラ10Aと第2の成形ローラ10Bと第3の成形ローラ10Cと第4の成形ローラ10Dとの4個の成形ローラ10を有する。第3の成形ローラ10Cは、変位量δで変位する。第4の成形ローラ10Dは、第1の成形ローラ10Aないし第3の成形ローラ10Cによって形成される成形空間に麺を閉じ込めて麺を適正圧力で押圧するように麺の性状に合わせた変位量εで変位する。また、コンベア20の上側において上方向から麺玉を押圧する第1の押圧装置と、麺玉が搬送される方向に直交する水平方向から麺玉を押圧する第2の押圧装置と、を含んで成る押圧装置30を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3