(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、腹腔等の体腔や尿管や血管等の管腔内に挿入して薬剤等を病変部へ注入する治療方法、体液を排出する治療方法又は経皮的血管形成術等に使用する医療用機械器具としてカテーテルが知られている。
【0003】
そのようなカテーテルは、体外にて手技者により操作される遠位部と、体内の血管等の体腔内に挿入される近位部と、遠位部から近位部まで連続しており液体等やガイドワイヤ又はバルーンカテーテル等のデバイスが挿通する内腔と、内腔を区画する壁部とから形成されている。
【0004】
カテーテルは、曲がりくねった血管等の体腔内の深部まで挿入されるので、ねじれた場合に折れ曲がって内腔が閉じることのないよう、耐キンク性が要求される。
そのため、壁部内に素線を編んでなるブレードが配置されることがある。
【0005】
一方、壁部内にブレードを配置したカテーテルでは、遠位部の柔軟性が損なわれやすくなることがあり、これを緩和するべく、遠位部の柔軟性を高める構成が採用されることもある。
【0006】
例えば、特許文献1には、遠位部と、近位部と、遠位部から近位部まで連続した内腔を区画する壁部と、壁部内に配置されたブレードとから形成されたカテーテルが開示されている。
【0007】
特許文献1に開示された従来のカテーテル100は、
図4に示すように、近位部200側に位置するブレード400を形成する素線の線径が太く、遠位部300側に位置するブレード500を形成する素線の線径が細い。
図4は、従来のカテーテルにおいて、壁部のアウターシャフトを除去してブレードが現れた状態を示す部分平面図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された従来のカテーテルは、以下の問題がある。
【0010】
(1)近位部側に位置するブレードを形成する素線の線径が太く、遠位部側に位置するブレードを形成する素線の線径が細く形成されているが、係る素線の構成を得るためには均一な線径を有する素線に対して冷間引き抜き加工やエッチング加工等(以下、細径化加工ともいう)を施すことにより、遠位部側に位置するブレードを形成することになる素線部分のみの線径が細くなるように加工する必要がある。
しかしながら、このような細径化加工を行うには比較的高額なコストを要する。
【0011】
(2)細径化加工を行うことにより線径を制御した複数の素線を編んでブレードを形成する場合には、全ての素線の線径が所望の位置でちょうど細径化してブレードが形成されるようにブレーダーを調整しなければならず、同じ構成のカテーテルを連続して製造することは困難である。
【0012】
(3)線径を制御した素線を用いたブレードを採用することにより遠位部の柔軟性を高めることが可能であるといっても、細径化加工前の素線の線径よりも細くして柔軟性を高めることは当然にできず、遠位部の柔軟性を高めることに限界がある。
即ち、遠位部と近位部とで、それほど大きな剛性差をつけることができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のカテーテルは、
近位部側に位置する第一端部と、
遠位部側に位置する第二端部と、上記第一端部から上記第二端部まで連続した内腔を区画する壁部と、上記壁部内に配置されたブレードとを含んで形成されたカテーテルである。
上記壁部は、上記第一端部側に位置する第一壁部と、上記第二端部側に位置する第二壁部とから形成されている。
上記第一壁部内に配置された第一ブレードは、
少なくとも第一素線と第二素線とを互いに
平行な第一素線組を複数組編むことにより形成されている。
上記第二壁部内に配置された第二ブレードは、上記
第一素線と連続した
一続きの第三素線と上記第二素線と連続した一続きの第四素線とを互いに
平行な第二素線組を複数組編むことにより形成されている。
上記第一素線組を形成する上記第一素線と上記第二素線との第一最短距離は、上記第一素線組を形成する上記第一素線と隣り合う上記第一素線組を形成する他の第二素線との最短距離よりも短く、かつ、上記第二素線組を形成する上記第三素線と上記第四素線との第二最短距離は、上記第二素線組を形成する上記第三素線と隣り合う上記第二素線組を形成する他の第四素線との最短距離よりも短くなっている。
更に、上記第二最短距離は、上記第一最短距離よりも長くなっていることを特徴とする。
【0014】
本発明のカテーテルにおいて、隣り合う上記第二素線組のピッチは、隣り合う上記第一素線組のピッチよりも広いことが望ましい。
なお、本明細書において、第一素線組のピッチとは、カテーテルの長手軸に平行な方向に沿った隣り合う第一素線組間の最短距離をいうものとする。
カテーテルの長手軸に平行な方向に沿った隣り合う第一素線組間の最短距離は、次のようにして求める。即ち、一の第一素線組は複数本持ちの複数の素線から形成されているので、一の第一素線組を形成する複数の素線のうちで最も第一端部(第二端部)側に位置する素線と、該一の第一素線組の第一端部(第二端部)側に隣接する他の第一素線組を形成する複数の素線のうちで最も第一端部(第二端部)側に位置する素線との間の最短距離が、カテーテルの長手軸に平行な方向に沿った隣り合う第一素線組間の最短距離となる。
また、第二素線組のピッチとは、カテーテルの長手軸に平行な方向に沿った隣り合う第二素線組間の最短距離をいうものとする。
カテーテルの長手軸に平行な方向に沿った隣り合う第二素線組間の最短距離は、次のようにして求める。即ち、一の第二素線組は一本持ちの複数の素線から形成されているので、一の第二素線組を形成する複数の素線のうちで最も第一端部(第二端部)側に位置する素線と、該一の第二素線組の第一端部(第二端部)側に隣接する他の第二素線組を形成する複数の素線のうちで最も第一端部(第二端部)側に位置する素線との間の最短距離が、カテーテルの長手軸に平行な方向に沿った隣り合う第二素線組間の最短距離となる。
【0015】
本発明のカテーテルにおいて、上記第二素線組の巻回角度は、上記第一素線組の巻回角度よりも小さいことが望ましい。
なお、本明細書において、巻回角度とは、カテーテル(シャフト本体部)の長手方向に沿って引いた仮想線と、第一素線組又は第二素線組の素線の中心軸に沿って引いた仮想線とが交差することにより形成される角度のうち鋭角の範囲にある角度をいう。
【0016】
本発明のカテーテルにおいて、上記第二壁部の外径は、上記第一壁部の外径よりも小さいことが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係るカテーテル1を
図1(a)、
図1(b)及び
図2を参照しつつ説明する。
なお、
図1(a)においては、図中下側が体内に挿入される遠位側(先端側)であり、
図1(a)中上側が医師等の手技者によって操作される近位側(後端側、基端側)である。
また、以下に説明するように、第一壁部内に配置された第一ブレードは、複数の素線を互いに平行かつ隣接して束ねた第一素線組を複数組編むことにより形成された、いわゆる、複数本持ちの素線組である。それゆえ、各素線間には空間が形成されていないように図示するのが通常である。しかしながら、
図2及び
図3では、第一素線組が複数の素線から形成されていることを視覚的に分かり易くするために、あえて、各素線間に空間を空けて図示していることに注意すべきである。一方、
図2及び
図3では、第二素線組を形成する複数の素線間に空間が形成されているように図示されているが、実際においても、図示のように、第二素線組を形成する複数の素線間に空間が形成されていることに注意すべきである。
【0019】
図1(a)に示す本発明の実施形態に係るカテーテル1は、近位部及び遠位部を有するシャフト本体部2と、シャフト本体部2の近位部に取り付けられたコネクタ3と、シャフト本体部2の遠位部に取り付けられた先端チップ4とを含んで構成されている。
なお、カテーテル1の全長は800〜1500mm、外径は0.5〜3.0mm、内径は0.3〜2.5mmであってもよい。
【0020】
シャフト本体部2は、近位部側に位置する第一端部10と、遠位部側に位置する第二端部20と、第一端部10から第二端部20まで連続した内腔30を区画する壁部40と、壁部40内に配置されたブレード50とから形成されている。
【0021】
図2に示すように、壁部40は、第一端部10側に位置する第一壁部41と、第二端部20側に位置しており第一壁部41に隣接する第二壁部42とから形成されている。
【0022】
図1(b)を示しつつ、壁部40のより具体的な内部構成について説明すると、壁部40は、シャフト本体部2の最も内側に位置し内腔30を直接区画している管状のインナーシャフト2aと、インナーシャフト2aの外周面を覆うように配置された管状のブレード50と、ブレード50が埋め込まれることによりブレード50の外周面を覆っている管状のアウターシャフト2bとから形成されている。アウターシャフト2bは、内側に位置してブレード50を埋め込んでいる中間樹脂層2b1と、中間樹脂層2b1の外周面に接触しておりシャフト本体部2の外周面を形成している外層2b2とから形成されている。なお、アウターシャフト2bは、単一層から形成されていてもよい。
【0023】
図2に戻って説明すると、第一壁部41内に配置された第一ブレード51は、複数の素線52を互いに平行かつ隣接して束ねた第一素線組53を複数組編むことにより形成されている。
第一素線組53は、いわゆる複数本持ちの素線組であり、単一の大径素線と同様に高い剛性を有する。
従って、第一壁部41は、剛性が高く、耐キンク性が高い。
【0024】
第一素線組53の組数は、2〜16組であることが望ましく、2〜8組であることがより望ましい。剛性が高くなりすぎず、耐キンク性が低くなりすぎないからである。
なお、第一素線組53のうちで巻回方向が右巻きの組数と、巻回方向が左巻きの組数とは同数であってもよいが、例えば、右巻きの組数が2組で、左巻きの組数が1組のように、右巻きの組数と左巻きの組数とが異なっていてもよい。
なお、
図2に示す例では、右巻きの組数と左巻きの組数とが同数である。
【0025】
一の第一素線組53を形成する複数の素線52の本数は、2〜4本であることが望ましい。一の第一素線組53を形成する複数の素線52の本数が2〜4本であると、耐キンク性により優れるとともに、素線52の本数が多すぎず剛性が高くなりすぎないからである。
一の第一素線組53を形成する複数の素線52の本数は、2本であることがより望ましい。
なお、
図2に示す例では、一の第一素線組を形成する素線の本数は、2本である。
【0026】
第一素線組53を形成する複数の素線52の束ね方は、
図1(b)及び
図2に示したように互いに隣接して平板状に束ねることが望ましい。ブレード50の厚みを減らしてカテーテル1の外径を小さくすることができるからである。ただし、カテーテル1の外径にそれほど制約がない場合には、例えば、複数の素線52の束ね方は同心円状であってもよい。
また、素線同士は、接着剤等の接着手段により互いに接着してもよいし、接着せず物理的に束ねるのみであってもよい。
【0027】
第一素線組53は、同じ材質から形成された複数の素線52から形成されていてもよいし、互いに異なる材質から形成された複数の素線52から形成されていてもよい。
第一素線組53が同じ材質から形成された複数の素線52から形成されている場合には、当該素線52を形成する材質の特性をより強く発揮することができる。また、第一素線組53が互いに異なる材質から形成された複数の素線52から形成されている場合には、各々の素線52を形成する材質の特性を組合せて発揮することができる。例えば、少なくとも一本の素線52をステンレスや超弾性合金等の剛性の比較的高い金属から形成された素線52とし、組合せる他の少なくとも一本の素線52を白金等のX線不透過性金属から形成された素線52とした場合には、高耐キンク性及び高剛性とともに、X線不透過性を有するカテーテル1を得ることができる。
【0028】
素線52の材質としては、例えば、ステンレス、Ni−Ti合金、Cu−Al−Ni合金又はCu−Zn−Al合金等の超弾性合金、ピアノ線、タングステン線、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン又はシリコン樹脂等の合成樹脂といった材質が挙げられる。
上記ステンレスとしては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、オーステナイト、フェライト二相ステンレス及び析出硬化ステンレス等のステンレスが挙げられる。
【0029】
素線52は、例えば、0.02〜0.06mmの素線径を有してもよい。
また、素線52は、各々均一な外径を有していてもよいし、各々異なる外径を有していてもよい。
【0030】
第二壁部42内に配置された第二ブレード54は、第一ブレード51を形成する複数の素線52と連続した複数の素線52’を互いに平行かつ間隔を空けて整列させた第二素線組55を複数組編むことにより形成されている。即ち、カテーテル1の壁部40内に配置されたブレード50を形成する素線52、52’は、第一端部10側から第二端部20側まで切れ目なく延びる一続きの素線であり、分離した2本のワイヤを溶接等の結合手段を用いて結合した素線とは異なるものである。
【0031】
第二素線組55は、複数の素線52’を互いに平行かつ間隔を空けて整列させることにより形成されているので、あたかも一本持ちの素線から形成されているようであり、第一素線組53に比べて低い剛性を有する。
従って、第二壁部42は、剛性が低く、柔軟性が高い。
【0032】
第二素線組55の組数は、第一素線組53の組数と同数である。
一の第二素線組55を形成する複数の素線52’の本数は、一の第一素線組53を形成する複数の素線52の本数と同数である。
また、第二素線組55を形成する複数の素線52’におけるその他の構成(素線の組合せ、材質、素線径等)は、上述した第一素線組53を形成する複数の素線52の構成と同様である。
【0033】
上述した構成を有する本発明の実施形態に係るカテーテル1は、複数の素線52からなる複数本持ちの第一素線組53を有する第一壁部41と、複数の素線52’からなる一本持ちの第二素線組55を有する第二壁部42とから形成されているため、第一壁部41の耐キンク性が高く、第二壁部42の柔軟性が高い。
【0034】
しかも、このような剛性差を達成するために、第一素線組53を形成する複数の素線52の線径と第二素線組55を形成する複数の素線52’の線径とを変化させる必要がなく、均一径の素線52、52’を使用することができるので、細径化加工を施した素線を使用せずともよい。それゆえ、製造コストを低くすることができる。
【0035】
また、細径化加工を施した複数の素線を編む場合に必要となるブレーダーの調整が不要であり、同じカテーテルを連続して製造しやすい。そのため、製造コストの低いカテーテル1とすることができる。
【0036】
さらに、細径化加工を施した素線を使用する場合には、細径化加工前よりも素線径を細くして柔軟性を高めることができないのに対し、本発明の実施形態に係るカテーテル1では第一素線組を複数本持ちの複数の素線から形成し、第二素線組を一本持ちの複数の素線から形成することにより遠位部の柔軟性を高めている。
そのため、第二素線組の素線の本数を種々変化させることにより、遠位部と近位部とで大きな剛性差をつけることも、小さな剛性差をつけることもできる。
【0037】
第一素線組53を形成する素線52と第二素線組55を形成する素線52’とは、連続した一続きの素線であり、第一壁部41と第二壁部42の境界部分で切断されていないので、上記境界部分での破損が生じにくい。
これに対して、例えば、複数本持ちの複数の素線からなるブレードを備える壁部材と、一本持ちの複数の素線からなるブレードを備える壁部材とを別々に作製し、その後、両部材を連結してなるカテーテルでは、境界部分で複数の素線が連続しておらず切断されているので境界部分で破損しやすい。
【0038】
本発明の実施形態に係るカテーテル1のその他の構成について、以下に詳述する。
【0039】
隣り合う第二素線組55のピッチ(w)は、隣り合う第一素線組53のピッチ(W)よりも広い。
そのため、第一壁部41は剛性がより高く、柔軟性がより低い。また、これとは反対に、第二壁部42は剛性がより低く、柔軟性がより高い。
なお、隣り合う第一素線組53のピッチ(W)と隣り合う第二素線組55のピッチ(w)とは、同じであってもよい。
【0040】
隣り合う第一素線組53間のピッチ(W)と隣り合う第二素線組55間のピッチ(w)との比は、1:1.05〜1:5であることが望ましく、1:1.5〜1:2であることがより望ましい。
隣り合う第一素線組53間のピッチ(W)と隣り合う第二素線組55間のピッチ(w)との比が1:1.05〜1:5である場合において、隣り合う第一素線組53間のピッチ(W)は、0.1〜1.0mmであることがさらに望ましく、隣り合う第二素線組55間のピッチ(w)は、0.1〜1.0mmであることがさらに望ましい。
【0041】
第二素線組55の巻回角度θ1は、第一素線組53の巻回角度θ2よりも小さい。
そのため、第二素線組55を形成する複数の素線52’は、第一素線組53を形成する複数の素線52よりも、シャフト本体部2(カテーテル1のシャフト)の長手方向Lに対してより平行に近い角度で巻回されている。
従って、第二ブレード54の方が、第一ブレード51に比べて、より曲がりやすくより柔軟であり、結果として、第二壁部42の方が第一壁部41に比べてより柔軟である。
なお、第二素線組55の巻回角度θ1と、第一素線組53の巻回角度θ2とは、略同一であってもよい。
【0042】
一の第二素線組55を形成する一の素線52’と、該一の第二素線組55を形成する該一の素線52’に隣接する他の素線52’とのピッチ(P)は、隣り合う第二素線組55間のピッチ(w)より小さいことが望ましく、隣り合う第一素線組53間のピッチ(W)より小さいことがより望ましい。
一の第二素線組55を形成する一の素線52’と該一の素線52’に隣接する他の素線52’とのピッチは、例えば、0.1〜1.0mmであることが望ましい。
【0043】
図1に示すように、第二壁部42の外径は、第一壁部41の外径よりも小さい。
従って、第二壁部42は、第一壁部41に比べて、より柔軟である。
【0044】
インナーシャフト2aの材質としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)等のフッ素系樹脂や、HDPE(高密度ポリエチレン)等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
これらの樹脂からなるインナーシャフト2aは、摩擦抵抗が低く、ガイドワイヤが内腔内をスムーズに通過しやすくなるので好ましい。
【0045】
アウターシャフト2b(中間樹脂層2b1及び外層2b2)の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、軟質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン66、ナイロン6等のポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステルポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、フッ素系樹脂、形状記憶樹脂等の各種樹脂材質やスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー樹脂、シリコン樹脂、加硫ゴム等の熱硬化性エラストマー樹脂、さらには、これらのうちの2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)が挙げられる。
なお、中間樹脂層2b1を形成する材質と、外層2b2を形成する材質とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
先端チップ4はカテーテル1の先端開口部を構成する円筒状の部材であり、柔軟性が高い樹脂等の材質から形成されていることが望ましい。
上記樹脂としては、例えば、ポリウレタンエラストマー等の樹脂が挙げられる。
【0047】
カテーテル1の外周面の一部又は全体には、それらを覆う潤滑コーティング層等のコーティング層がさらに形成されていてもよい。潤滑コーティング層を形成する材質としては、例えば、親水性ポリマー、ポリアリーレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ピリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース系材質、アルギン酸、サッカリド、カプロラクトン等並びにそれらの混合物及び組合せが挙げられる。
親水性ポリマーは、適当な潤滑性、結合性及び溶解性を有するコーティングを形成するために、親水性ポリマー同士をブレンドしてもよいし、配合量の(ある種のポリマーを含む)非水溶性成分とブレンドしてもよい。
【0048】
(本発明の実施形態に係るカテーテルの製造方法)
本発明の実施形態に係るカテーテル1は、例えば、下記の工程(1)〜(5)を経ることにより好適に製造することができる。
【0049】
(1)ブレーディング工程(
図3(a)参照)
インナーチューブ2aと、複数本持ちの第一素線組53を複数組準備する。
ブレーダーを使用して、インナーチューブ2aの外周面上に複数組の第一素線組53を第一端部10から第二端部20まで編みつける。
これにより、ブレード被覆体Aを作製する。
【0050】
(2)中間樹脂層形成工程(
図3(b)参照)
工程(1)で作製したブレード被覆体Aの外周面をブレードが隠れる程度の中間樹脂層2b1で被覆し、第一複層体Bを作製する。
【0051】
(3)延伸工程(
図3(c)参照)
工程(2)で作製した第一複層体Bの内腔に、第一壁部側から第二壁部側に向かって縮径したテーパー部を中間部に有する芯金を通した後、第一複層体Bの第二端部20と第一複層体Bの第一端部10及び第二端部20の中間部Mとを把持して芯金に沿った方向に引き伸ばす。これにより、第二端部20と中間部Mとにより挟まれた第二壁部42を引き伸ばす。
第一端部10と中間部Mとに挟まれた第一壁部41内に配置された第一ブレード51は、複数の素線を互いに平行かつ隣接して束ねた第一素線組を複数組編むことにより形成されることとなる。また、第二壁部42内に配置された第二ブレード54は、第一ブレード51を形成する複数の素線と連続した複数の素線を互いに平行かつ間隔を空けて整列させた第二素線組を、複数組編むことにより形成されることとなる。
そして、中間樹脂層2b1は、第二端部20から中間部Mにかけて肉薄となる。
隣り合う第二素線組のピッチは、隣り合う第一素線組のピッチよりも広くなり、第二素線組の巻回角度は、第一素線組の巻回角度よりも小さくなる。
延伸工程を経た第一複層体Bは、第二複層体Cとなる。
なお、延伸工程は、加熱しながら行ってもよい。ブレードを被覆した樹脂が軟化し、第一端部と中間部とを把持して引き伸ばしやすくなるからである。
また、テーパー状の芯金ではなく、略均一径の芯金を使用してもよい。
【0052】
(4)外層形成工程(
図3(d)参照)
第二複層体Cの外径よりも内径が大きい内腔を有する外層チューブ2b2と、外層チューブ2b2の外径よりも内径が大きい内腔を有する熱収縮チューブ(図示せず)とを準備する。
第二複層体Cを外層チューブ2b2の内腔内に挿入し、第二積層体Cが挿入された外層チューブ2b2を熱収縮チューブの内腔内に挿入する。
この状態で、熱収縮チューブが収縮する程度に加熱することにより熱収縮チューブを収縮させ、インナーチューブ2a、ブレード50、中間樹脂層2b1、外層2b2及び熱収縮チューブを熱溶着させる。なお、中間樹脂層2b1が第二端部20から中間部Mにかけて肉薄となっているので、中間樹脂層2b1を被覆する外層2b2も同様に第二端部20から中間部Mにかけて肉薄となる。その結果、後の工程を経て製造されるカテーテルにおいては、第二壁部の外径が第一壁部の外径よりも小さくなる。
【0053】
(5)熱収縮チューブ剥離工程
工程(4)の後、熱収縮チューブのみ剥離させることにより、本実施形態のカテーテル1を製造する。
【0054】
(変形例)
変形例に係るカテーテルは、壁部の構成以外は上述した本発明の実施形態に係るカテーテルと同様の構成を有している。重複部分の説明は省略する。
【0055】
変形例に係るカテーテルは、第一端部側に位置する第一壁部と、第二端部側に位置する第二壁部と、第一壁部及び第二壁部の間に位置する第三壁部とから壁部全体が形成されている。
第三壁部内には、複数の素線を整列させた第三素線組を複数組編むことにより形成された第三ブレードが配置されている。
一の第三素線組を形成する複数の素線は、第一ブレードを形成する複数の素線とも、第二ブレードを形成する複数の素線とも連続している。また、一の第三素線組を形成する複数の素線は、第一ブレード側では複数本持ちに形成されており、第二ブレード側では一本持ちに形成されており、第一ブレード側から第二ブレード側にかけて複数の素線間の間隔が徐々に広がっていくように形成されている。即ち、一の第三素線組を形成する複数の素線は、第一ブレード側から第二ブレード側に向かって複数本持ちから一本持ちに徐々に変化している。
係る構成を有する変形例のカテーテルは、第一端部側の第一壁部から第二端部側の第二壁部にかけてよりなだらかな剛性変化が得られるので望ましい。
なお、第三素線組の組数は、第一素線組及び第二素線組の組数と同数である。
一の第三素線組を形成する複数の素線の本数は、一の第一素線組又は第二素線組を形成する複数の素線の本数と同数である。
また、第三素線組を形成する複数の素線におけるその他の構成(素線の組合せ、材質、素線径等)は、上述した第一素線組又は第二素線組を形成する複数の素線の構成と同様である。