(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754841
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】ズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット、及びそれを用いた赤外線カメラ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20060101AFI20150709BHJP
G02B 7/02 20060101ALI20150709BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G02B7/02 Z
H04N5/225 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-36359(P2011-36359)
(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-173570(P2012-173570A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小出 淳史
(72)【発明者】
【氏名】西村 文良
【審査官】
登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−317273(JP,A)
【文献】
特開2005−326494(JP,A)
【文献】
特開2009−017495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/02
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の赤外線透過レンズと、当該赤外線透過レンズをレンズ保持枠を介して収容するレンズ鏡筒と、ズームレンズとして機能する赤外線透過レンズを光軸に沿って移動させるためのモーターを含むズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットであって、
当該レンズ鏡筒は、その外周面に当該レンズ鏡筒の外周から略突出しないようモーターを収容するためのモーター収容凹部を備え、
モーター駆動により、当該ズームレンズをリードスクリューとガイドポールに沿ってスライド移動可能とし、
アルミニウム系金属材、鉄系金属材から選択される熱伝導性に優れた金属材からなり、当該レンズ鏡筒の外周側からリードスクリュー及びガイドポールを覆い、且つ、レンズ鏡筒内を密閉可能とする蓋体を配したことを特徴とするズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット。
【請求項2】
前記モーターは、ステッピングモーターである請求項1に記載のズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット。
【請求項3】
前記レンズ鏡筒は、アルミニウム系金属材、鉄系金属材から選択される熱伝導性に優れた金属材を用いたものである請求項1又は請求項2に記載のズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットを用いたことを特徴とする赤外線カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットに関し、更に詳しくはズーム機構を搭載したレンズユニット、及びそれを用いた赤外線カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ対策として、撮像装置を用いた人間等不審物の監視が行われている。そして、夜間等薄暗い空間においては、可視カメラを用いた場合に人間を検知することが難しいため、監視空間における温度分布により人間等の監視を行うことが可能な赤外線カメラが用いられるようになっている。なお、赤外線カメラは、監視空間に存在する発熱物体を検知する測定精度を維持するために、備わる電気・電子機器が発熱する温度(輻射エネルギー)に起因した撮像品質の低下を極力生じさせないようにする必要がある。
【0003】
従来、防犯カメラ等の定点観察用途、自動車のナイトビジョン等の赤外線カメラは、人や動物の有無の判別が可能な程度であり、広角撮像は可能であるものの、高解像度の撮像画像を得ることが出来なかった。しかし、赤外線カメラは、近年における人々の、セキュリティに対する関心の向上や、自動車の夜間走行の安全性に対する意識の向上に伴い、その需要は年々増加傾向にある。従って、上述した赤外線カメラのレンズ鏡筒内に熱源となる電気・電子機器を用いる場合には、これら機器から発せられる熱の撮像画像への写り込みを防ぐための対策を講じる必要があった。
【0004】
ここで、可視カメラに関しては、レンズ鏡筒自身に放熱効果を持たせて当該レンズ鏡筒内の熱源の発する熱を当該レンズ鏡筒外に放熱する技術が知られている(特許文献1)。具体的には、特許文献1は、レンズ鏡筒に関する発明であって、カメラ本体に取り付けられ、撮影光学系を内蔵する鏡筒本体と、前記鏡筒本体の対物側に設けられ、前記鏡筒本体よりも高い放熱効果を有する放熱部材と、前記鏡筒本体内に組み込まれ、前記鏡筒本体又はカメラ本体の内部に設けられた撮像部が発する熱を放熱部材に伝導するヒートパイプとを備えたことを特徴とするものである。また、特許文献1の放熱部材は、複数の放熱フィンを有するヒートシンクを鏡筒本体の対物側端部に設けたものであることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−350112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された技術は、レンズ鏡筒内にヒートパイプを取り付けているため、レンズユニットの小型化を図る上で支障が生じてしまう。また、特許文献1に記載された技術は、当該レンズ鏡筒を取り付けるカメラが赤外線カメラである場合に必ずしも十分であると言えない。例えば、特許文献1に記載された技術をズーム機能付き赤外線カメラのレンズ鏡筒に採用した場合、ズームレンズ駆動用のモーターによる発熱量が大きいために例えヒートパイプを取り付けたとしても十分に温度上昇を抑制することが出来ず、当該モーターの発する熱が撮像画像に写り込んで撮像品質の低下を招く恐れがある。
【0007】
また、特許文献1の放熱部材は、複数の放熱フィンを有するヒートシンクを鏡筒本体の対物側端部に設けているが、この場合、最も被写体側に位置するレンズに対して、入射する撮像光の光路を遮る構成となってしまう。このため、特許文献1のヒートシンクを設けたレンズ鏡筒は、広角レンズを用いた不審者の監視用途に適さず、セキュリティ対策として用いることが難しい。また、特許文献1のレンズ鏡筒では、ヒートシンクを設けた場合に、近年のカメラの小型化に伴うレンズ鏡筒ユニットの薄型化の市場要求に十分に応えることが出来ない。
【0008】
本件発明は、かかる上述の課題に鑑みてなされたものであり、レンズ鏡筒内の温度上昇を抑制可能なズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット、及びそれを用いた赤外線カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本件発明者等は、
鋭意研究の結果、上述した課題を解決するために以下のようなズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット、及びそれを用いた赤外線カメラを採用した。
【0010】
本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット: 本件発明のズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットは、1以上の赤外線透過レンズと、当該赤外線透過レンズをレンズ保持枠を介して収容するレンズ鏡筒と、ズームレンズとして機能する赤外線透過レンズを光軸に沿って移動させるためのモーターを含むズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットであって、当該ズームレンズをリードスクリューとガイドポールに沿って、モーター駆動によりスライド移動可能としたことを特徴としている。
【0011】
また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットにおいて、前記レンズ鏡筒は、その外周面にモーター収容凹部を備えたことが好ましい。
【0012】
また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットにおいて、前記レンズ鏡筒は、その外周面に、レンズ鏡筒の外周面から略突出しないようモーターを収容するためのモーター収容凹部を備え、ここにモーターを収容し、当該レンズ鏡筒の外周側からリードスクリュー及びガイドポールを覆い、且つ、レンズ鏡筒内を密閉可能とする蓋体を配したことが好ましい。
【0013】
また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットにおいて、前記モーターは、ステッピングモーターであることが好ましい。
【0014】
また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットにおいて、前記レンズ鏡筒及び前記蓋体は、アルミニウム系金属材、鉄系金属材から選択される熱伝導性に優れた金属材を用いたものであることが好ましい。
【0015】
本件発明に係る赤外線カメラ: 本件発明の赤外線カメラは、前記ズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本件発明のズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットによれば、レンズ鏡筒内の温度上昇を抑制することができる。従って、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット、及びそれを用いた赤外線カメラは、暗視カメラ等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本件発明の一実施形態に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットを示す模式断面図である。
【
図2】本件発明の別の実施形態に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本件発明の実施の形態を図に従って説明する。なお、以下に示す図においては、図の見易さを考慮し、レンズ断面部のハッチングを省略した。
【0019】
本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットの形態:
図1は、本件発明の一実施形態に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットを示す模式断面図である。
図1に示すように、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、1以上の赤外線透過レンズ8〜11と、当該赤外線透過レンズ8〜11をレンズ保持枠12〜15を介して収容するレンズ鏡筒6と、ズームレンズとして機能する赤外線透過レンズ11を光軸に沿って移動させるためのモーター2を含んでいる。そして、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、ズームレンズ11をリードスクリュー4とガイドポール16に沿って、モーター2駆動によりスライド移動可能としたものである。
【0020】
図1には、本件発明のレンズユニット1は、赤外線透過レンズ8〜11がそれぞれレンズ保持枠12〜15にレンズ押え環17〜20によって固定されているのが示されている。そして、ズームレンズとして機能する赤外線透過レンズ11については、モーター2駆動によりリードスクリュー4とガイドポール16に沿った移動が可能となっている。このように、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、ズームレンズ11を移動させるにあたって、リードスクリュー4とガイドポール16を用いることで、移動精度の向上を図ることが出来る。
【0021】
なお、本件発明の一実施形態に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、赤外線カメラ本体(不図示)に対してレンズ鏡筒6の取り外しが可能であり、当該レンズ鏡筒6を赤外線カメラ本体に取り付けるためのマウント7を備えている。このマウント7は、例えばバヨネット爪が形成されることで、赤外線カメラ本体に対するレンズユニット1の着脱が自在に行えるようになる。更に、このマウント7によって、赤外線カメラ本体とレンズユニット1とを電気的に接続することで、赤外線カメラ本体側とレンズユニット側とで相互に信号のやり取りが出来るようになる。
【0022】
また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1において、レンズ鏡筒6は、その外周面にモーター収容凹部を備えたことが好ましい。
【0023】
本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、レンズ鏡筒6の外周面にモーター収容凹部を備えることで、当該モーター収容凹部にモーター2を収容した場合にレンズユニット1の大型化を招くことがない。また、本件発明のレンズユニット1は、当該モーター収容凹部にモーター2を配置することで、リードスクリュー4とガイドポール16を用いてズームレンズ11を移動させることが構造上可能となる。更に、本件発明のレンズユニット1は、このようなモーター2の配置構造を採ることで、当該モーター2の発する熱がレンズ鏡筒内に伝達するのを効果的に抑制することが出来る。
【0024】
本件発明のレンズユニット1は、ズーム機能付赤外線カメラに用いることを前提としたものである。また、本件発明のレンズユニット1は、中赤外線領域及び遠赤外線領域の赤外線を感知することが可能な赤外線カメラに用いられるものである。ここで、特に中赤外線領域及び遠赤外線領域の赤外線感知用の赤外線カメラにおいては、レンズ鏡筒内に搭載される電気・電子機器の発する熱が撮像品質の低下を招く要因となる。そのため、所謂中・遠赤外線カメラにおいては、レンズ鏡筒内に熱源となり得る部品の組み込まれていないことが、撮像品質の観点からみて好ましい。ここで、赤外線カメラについて、簡単に説明しておく。赤外線カメラは、対象物体から放射されている赤外線を受動的に検出して画像表示するものである。従って、赤外線カメラによれば、夜間等可視カメラで撮影不可能な環境下においても、熱源となる物体や生物が発生する赤外線を感知して撮影することが出来る。そのため、赤外線カメラは、可視反射光で前方の物体を認識する手法を用いることが出来ない状況において有効であり、暗闇において光源の届かない遠方や側方の物体の認識を補完するものとして好適に用いることが出来る。
【0025】
以上のことから理解出来るように、例えば、レンズ鏡筒内に熱源となる部品が組み込まれている場合には、当該部品から放射される赤外線の影響により、物体認識が困難となってしまう。特に、本件発明のレンズユニット1のように、ズーム機構を備えたものであると、ズームレンズ11を駆動するためのモーター2が構造上必要となるが、このモーターの発熱量は、他の電気・電子機器の発熱量と比較しても大きい。従って、赤外線カメラにおいては、可視カメラのようにレンズ駆動用のモーター2をレンズ鏡筒6内の筒側方に配置した場合に、撮像品質の低下を引き起こすこととなり好ましくない。なお、この場合に、ヒートパイプ等の熱源を冷却する専用機器を別途用いた場合には、構造の複雑化や製造コストの増大を招いてしまう。
【0026】
また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1において、レンズ鏡筒6は、その外周面に、レンズ鏡筒6の外周面から略突出しないようモーター2を収容するためのモーター収容凹部を備え、ここにモーター2を収容したものである。ここで、当該モーター2の回転軸は、一端側をレンズ鏡筒に軸回転可能に連結したリードスクリュー4の他端側と接続させることが出来る。また、そのリードスクリュー4の鏡筒側に、当該リードスクリュー4に平行な状態で、当該レンズ鏡筒6にガイドポール16を配置させることが出来る。また、当該ズームレンズとして機能する赤外線透過レンズ11のレンズ保持枠15に備える連結部15aで、当該リードスクリュー4及びガイドポール16とスライド移動可能に接続させることが出来る。そして、このような場合に、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、当該レンズ鏡筒6の外周側からリードスクリュー4及びガイドポール16を覆い、且つ、レンズ鏡筒6内を密閉可能とする蓋体3を配したことが好ましい。
【0027】
上述したように、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1によれば、レンズ鏡筒6の外側にズームレンズ11を移動させるためのモーター2を備える構造であることで、暗視画像の画質向上が可能となる。また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1の構造によれば、ズームレンズ駆動用のモーター2をレンズ鏡筒6の外に配置したとしても、当該レンズ鏡筒6の外径からはみ出して配置されることがなく、レンズ鏡筒6の外径が大きくなることがない。更に、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1の構造によれば、モーター2をレンズ鏡筒6の外に配置しても、リードスクリュー4とガイドポール16を用いることで、ズームレンズ11を光軸に沿ってスムーズに移動させることが出来る。なお、このときに、当該赤外線透過レンズ11のレンズ保持枠15は、
図1に示すようなガイド部材5と係合させてリードスクリュー4及びガイドポール16とスライド移動可能に接続することも出来る。例えば、このガイド部材5は、モーター2の駆動軸4に螺合係合されることで、当該モーター2の駆動力により光軸に沿って前後移動することが可能となる。
【0028】
そして、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、リードスクリュー4及びガイドポール16を覆い、且つ、レンズ鏡筒6内を密閉可能とする蓋体3を配したものである。ここで、当該蓋体3が、その材質や形状等に関して放熱性に優れた条件を具備することで、モーター3の発する熱を効果的にレンズ鏡筒6外へ放熱させることが出来る。また、当該蓋体3が放熱性に優れることで、仮にレンズ鏡筒6内に熱源となり得る電気・電子機器を搭載した場合であっても、当該電気・電子機器の発する熱が、当該蓋体3を介してレンズ鏡筒6外に放熱され、熱に起因した撮像品質の低下を抑制可能となる。
【0029】
例えば、
図1に示す本件発明の一実施形態に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1には、撮像画像の振れを光学的に補正する機構21が備えられている。この機構21は、カメラの振れを検出する振れ検出部(不図示)と、撮影光軸と直交する方向に移動可能な振れ補正レンズ10とを有し、振れ検出部の出力に基づいて当該振れ補正レンズ10を駆動することで、結像面22における撮像画像の振れを光学的に補正するものである。本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、レンズ鏡筒6内にこのような熱源となり得る機構部品を組み込んだとしても、放熱性に優れる蓋体3を採用することで、当該機構部品の発する熱に起因した撮像品質の低下を防ぐことが出来る。
【0030】
なお、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットは、
図1に示す本件発明の一実施形態に係るレンズユニット1の形態に限定されるものではない。そこで、本件発明の考えられる別の実施形態に関して以下に説明する。
【0031】
図2は、本件発明の別の実施形態に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットを示す模式断面図である。次に、図面を参照して本件発明の別の実施形態に係るレンズユニット50について説明する。
図1と
図2に示す実施形態の主な相違点は、
図1のズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1が、被写体側から4番目の赤外線透過レンズ11を移動させる構造であるのに対し、
図2のズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット50が、被写体側から2番目の赤外線透過レンズ59を移動させる構造である点にある。すなわち、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1、50は、本件発明の条件を満たす限りにおいて、その構造について任意に定めることが可能である。なお、
図1と
図2とではモーター2、52の配置位置についてのみ、それぞれ異なった構造が示されている。従って、
図2に示す本件発明の別の実施形態に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットに関する説明は省略する。
【0032】
なお、
図2において、50がズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット、52がレンズ駆動用モーター(ステッピングモーター)、53が蓋体、54がリードスクリュー、55がガイド部材、56がレンズ鏡筒、57がマウント、58〜61が赤外線透過レンズ、62〜65がレンズ保持枠、63aが連結部、67〜70がレンズ押え環、71が手振れ補正機構、72が撮像素子としてそれぞれ示されている。
【0033】
また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1、50において、モーター2、52は、ステッピングモーターであることが好ましい。
【0034】
ここで、ステッピングモーターとは、基本的にフィードバックを要せず、簡単な回路構成で正確な速度や位置決めの制御を行うことが出来る、所謂オープンループ式制御モーターのことである。従って、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1は、ズームレンズ駆動用のモーターをステッピングモーターとすることで、赤外線カメラ本体からの制御信号を受けて細かなモータ制御が可能となる。なお、ステッピングモーターの構造や原理に関しては一般的に知られている為、ここでの説明を省略する。
【0035】
従って、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1、50は、上述したステッピングモーター2、52をズームレンズ駆動用モーターとして採用し、そのモーター軸にリードスクリュー4、54を結合させ、当該リードスクリュー4、54の回転によってズームレンズ11、59をスライド駆動させる方式を採用することことがより好ましい。本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1、50は、このような構造とすることで、ズームレンズ11、59を移動させるにあたって、移動精度及び駆動持の静粛性を更に向上させることが出来る。
【0036】
また、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1、50において、レンズ鏡筒6、56及び蓋体3、53は、アルミニウム系金属材、鉄系金属材から選択される熱伝導性に優れた金属材を用いたものであることが好ましい。
【0037】
本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1、50は、レンズ鏡筒6、56及び蓋体3、53の材質について、熱伝導性を考慮すれば、金属材が最も好適である。また、当該レンズ鏡筒6、56及び蓋体3、53の材質について、軽量化と耐腐食性を考えるならば、アルミニウム、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材を用いることが好ましい。なお、当該レンズ鏡筒6、56及び蓋体3、53の材質をアルミニウム系金属材とした場合には、その表面にミクロポアを備えるアルマイト処理を施して、熱の放散性を高めることが好ましい。また、当該レンズ鏡筒6、56及び蓋体3、53の材質について、強度、摺動特性、価格等の観点から見れば、鋳鉄、鋼、ステンレス鋼等の鉄系金属材を選択することが好ましい。
【0038】
なお、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1、50において、蓋体3、53は、その外周面にヒートシンクを設けることも出来る。本件発明のレンズユニット1、50は、当該蓋体3の外周面にヒートシンクを設けることで、レンズ鏡筒6、56の外周面からの熱の放散効率を、更に高めることが出来る。
【0039】
本件発明に係る赤外線カメラ: 本件発明の赤外線カメラ(不図示)は、上述した本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット1、50を用いたことを特徴とするものである。従って、本件発明の赤外線カメラを採用することで、光学品質に優れた赤外線カメラを提供することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本件発明のズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットは、構成部品の中で特に発熱量が大きいモーターをレンズ鏡筒の外に配置させることで、熱の影響を受けやすい光学部品に悪影響を及ぼすのを防ぐことが出来る。従って、本件発明に係るズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニットを用いた赤外線カメラは、夜間等暗い空間においても物体認識を正確に行うことが出来、セキュリティ対策用の監視カメラ以外にも、視界不良の中にいる遭難者を探索する救助活動や火災現場における残火確認等にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ズーム機能付赤外線カメラ用レンズユニット
2 レンズ駆動用モーター(ステッピングモーター)
3 蓋体
4 リードスクリュー
5 ガイド部材
6 レンズ鏡筒
7 マウント
8〜11 赤外線透過レンズ
12〜15 レンズ保持枠
17〜20 レンズ押え環
21 撮像画像振れ補正機構
22 撮像素子(結像面)
L 光軸