【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
以下の方法により、本発明に係る光触媒を製造した。
[光触媒製造方法]
還流冷却器、温度計、及び攪拌装置を取り付けた反応器に、ジオキサン500gと、KF9901{メチルハイドロジェンシロキサンージメチルシロキサンコポリマーの商品名(信越化学製)、Si−H基含有7.14mmol/g(カタログ記載値)、重量平均分子量3900}500gを入れ、攪拌下80℃に昇温した。これにユニオックスMUS−8{ポリオキシエチレンアリルメチルエーテルの商品名(日本油脂製)、重量平均分子量800(カタログ記載値)}1370gと塩化白金(IV)酸六水和物の5重量%イソプロパノール溶液5gをジオキサン2310gに溶解した溶液を、80℃にて攪拌下約1時間かけて添加し、さらに80℃にて2時間攪拌を続けた後、室温にまで冷却することにより、Si−H基含有ケイ素化合物(1){以下、化合物(1)という。}を含む溶液を得た。
【0043】
還流冷却器、温度計、及び攪拌装置を取り付けた反応器に、TO−240{粒子表面がペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型酸化チタンを含有するゾルの商品名(田中転写製)、ゾル中に分散した粒子の体積平均粒子径15nm、TiO
2濃度2.4重量%}420gを入れ、これに化合物(1)を含む溶液23.4gを30℃にて攪拌下約30分かけて添加し、さらに30℃にて10時間攪拌を続けることにより、非常に分散性の良好な、体積平均粒子径17nmの変性酸化チタン粒子を含有する光触媒水分散体(2)を得た。
【0044】
本発明に係る光触媒シート、及びマスクの特性を以下の方法で測定した。尚、ウイルス吸着性能については、国立感染症研究所との共同研究により実施した、以下の実施例1と2、比較例1と2についての評価を、以下の表1に示す。
【0045】
[ウイルス吸着効果試験]
本試験は国立感染症研究所バイオセーフティ管理室との共同研究で実施した。予めUV照射した光触媒シートをイオン交換水で洗浄した後、縦横1cm×1cmの試験片に裁断し、20KGyの電子線を照射し滅菌した。
1cm
2の各試験片を12well plateの各well内に置く。ここに各ウイルス液10μL滴下し、室温で所定時間静置する。その後各ウイルス培養培地を0.5mL/well加え、攪拌してウイルスを溶出させる。この溶出液を培地にて5倍段階希釈し、各培養細胞単層96well-plateに接種し、3〜7日間培養した後、10%ホルマリン液固定、メチレンブルー染色を行い、50%感染価(TCID
50)を算出した。
【0046】
供試ウイルスは、以下の:
インフルエンザAウイルス(H1N1)型 ニューカレドニア株
インフルエンザAウイルス(H3N2)型 パナマ株
インフルエンザBウイルス
ネコカリシウイルス(FCV)
ヒトアデノウイルス type―3(HAdV−3)
であった。
また、培養液は、以下の:
インフルエンザ:0.3%BSA−Eagle‘MEM
FCVとHAdV:5%BSA−Eagle‘MEM
であった。
【0047】
[ウイルス不活化効果試験]
本試験は国立感染症研究所バイオセーフティ管理室との共同研究で実施した。予めUV照射した光触媒シートをイオン交換水で洗浄した後、縦横1cm×1cmの試験片に裁断し、20KGyの電子線を照射し滅菌した。
1cm
2の各試験片を12well plateの各well内に置く。ここに各ウイルス液10μL滴下し、室温で5分静置する。ここにUV−Aを1200−1400μW・cmで照射し、一定時間ごとに試験片を回収する。回収後、直ちに各ウイルス培養培地を0.5mLで溶出し、これを5倍段階希釈したものを各培養細胞単層96well-plateに接種し、3〜7日間培養した後、10%ホルマリン液固定、メチレンブルー染色を行い、50%感染価(TCID
50)を算出した。
試験ウイルス及び培養液として、前記したウイルス吸着効果試験に供したものと同じものを使用した。
【0048】
[比表面積(m
2/g)の測定方法]
自動比表面積測定装置(ジェミニ2360:島津製作所製)を用い、BET多点法により測定した。吸着ガスとしては、純度99.99%の窒素ガスを用いた。
【0049】
[目付(g/m
2)]
縦25cm×横25cmの試料を3カ所切り取り、重量を測定し、その平均値を質量に換算して求めた。JIS-L-1906に準拠した。
【0050】
[厚み(μm)]
JIS-L-1906に準拠した。
【0051】
[光触媒の吸着能力(アンモニア吸着効果、光触媒吸着効果)]
光触媒シート又はマスクの一部を5cm×10cmに切り出して、1Lのテドラバッグに入れ、アンモニアガス(200ppm)を600mL封入する。20℃に設定したインキュベーター内暗所で30分安置後、検知管にてアンモニア濃度を測定した。残留アンモニア濃度より、光触媒の吸着能力を判定した。
尚、以下の表3中、アンモニア吸着効果を、効果の高い順に、◎、○、△、×で格付けした。また、以下の表4中、光触媒吸着効果を、効果の高い順に、◎、○、△、×で格付けした。
【0052】
[光触媒の有機物分解能力(効果)]
光触媒シート又はマスクの一部を5cm×10cmに切り出して、1Lのテドラバッグに入れ、アンモニアガス(200ppm)を600mL封入する。20℃に設定したインキュベーター内でブラックライトを0.6mW/cm
2の照射強度になるように照射位置を調節し、30分安置後、検知管にてアンモニア濃度を測定した。残留アンモニア濃度より、光触媒の有機物分解能力を判定した。
尚、以下の表4中、光触媒有機物分解効果を、効果の高い順に、◎、○、△、×で格付けした。また、以下の表3中、アンモニア消臭試験における有機物分解効果を、効果の高い順に、◎、○、△、×で格付けした。
【0053】
[実施例1]
プレシゼA1290(旭化成せんい製)にアクリル樹脂ボンコートR3380−E(大日本インキ社製)5%sol.をDip−Nipにて塗工し、150℃×60秒間、乾熱処理を行った。さらに上記光触媒水分散体(2)固形分5%溶液をDip−Nipにて塗工し、光触媒4g/m
2を担持したシートを作製した。このシートをイオン交換水で洗浄して乾燥した後、0.5mW/cm
2のUV強度を持つブラックライトを表裏各24時間照射した。得られた光触媒シートの Ti成分のX線強度は87.9kcpsであった。
【0054】
[実施例2]
プレシゼA1290(旭化成せんい製)にアクリル樹脂ボンコートR3380−E 5%sol.をDip−Nipにて塗工し、150℃×60秒間、乾熱処理を行った。さらに上記光触媒水分散体(2)固形分0.5%溶液をDip−Nipにて塗工し、光触媒0.4g/m
2を担持したシートを作製した。このシートをイオン交換水で洗浄して乾燥した後、0.5mW/cm
2のUV強度を持つブラックライトを表裏各24時間照射した。得られた光触媒シートの Ti成分のX線強度は12.5kcpsであった。
【0055】
[実施例3]
プレシゼA1290(旭化成せんい製)にアクリル樹脂ボンコートR3380−E 5%sol.をDip−Nipにて塗工し、150℃×60秒間、乾熱処理を行った。さらに上記光触媒水分散体(2)固形分1.2%溶液をDip−Nipにて塗工し、光触媒1g/m
2を担持したシートを作製した。このシートをイオン交換水で洗浄して乾燥した後、0.5mW/cm
2のUV強度を持つブラックライトを表裏各24時間照射した。得られた光触媒シートの Ti成分のX線強度は24.5kcpsであった。
【0056】
[実施例4]
プレシゼA1290(旭化成せんい製)にアクリル樹脂ボンコートR3380−E 5%sol.をDip−Nipにて塗工し、150℃×60秒間、乾熱処理を行った。さらに上記光触媒水分散体(2)固形分2.5%溶液をDip−Nipにて塗工し、光触媒2g/m
2を担持したシートを作製した。このシートをイオン交換水で洗浄して乾燥した後、0.5mW/cm
2のUV強度を持つブラックライトを表裏各24時間照射した。得られた光触媒シートの Ti成分のX線強度は44.9kcpsであった。
【0057】
[
参考例5]
エルタスN01070(旭化成せんい製)に上記光触媒水分散体(2)固形分2.5%溶液をDip−Nipにて塗工し、光触媒2g/m
2担持したシートを作製した。このシートを0.5mW/cm
2のUV強度を持つブラックライトを表裏各24時間照射した。得られた光触媒シートの Ti成分のX線強度は30.2kcpsであった。
【0058】
[実施例6]
エルタスPMA040(SMMS;旭化成せんい製)にアクリル樹脂ボンコートR3380−E 5%sol.をDip−Nipにて塗工し、150℃×60秒間、乾熱処理を行った。さらに上記光触媒水分散体(2)固形分3%溶液をDip−Nipにて塗工し、光触媒2g/m
2を担持したシートを作製した。このシートをイオン交換水で洗浄して乾燥した後、0.5mW/cm
2のUV強度を持つブラックライトを表裏各24時間照射した。得られた光触媒シートの Ti成分のX線強度は26.5kcpsであった。
【0059】
[比較例1]
プレシゼA1290を縦横1cm×1cmの試験片に裁断し、20KGyの電子線を照射し滅菌した。このシートのTi成分のX線強度は4.5kcpsであった。このシートをウイルス試験のコントロールとした。
【0060】
[比較例2]
プレシゼA1290にアクリル樹脂ボンコートR3380−E(大日本インキ社製)5%sol.をDip−Nipにて塗工し、150℃×60秒間、乾熱処理を行った。さらにSTS−02{アナターゼ型酸化チタンゾルの商品名(石原産業製)}酸化チタンゾルを固形分5%溶液に希釈し、Dip−Nipにて塗工し、光触媒4g/m
2を担持したシートを作製した。 このシートをイオン交換水で洗浄して乾燥した後、0.5mW/cm
2のUV強度を持つブラックライトを表裏各24時間照射した。得られた光触媒シートの Ti成分のX線強度は79kcpsであった。
【0061】
[実施例7]
外層として表面修飾した光触媒を4g/m
2担持させたプレシゼA1160(ポリエステルSMS不織布;旭化成せんい製)を配置し、中間層としてクラレ社製ポリプルピレンメルトブロウン不織布(帯電加工) 20g/m
2、内層として、旭化成せんい社製 ベンリーゼ 14g/m
2を配置し、ヨコ17cm、タテ17cmの不織布を横方向にひだが3列できるように折りたたみ、製品サイズヨコ17cm、タテ9cm、両ヨコに耳掛け用ゴムを配置した折りたたみ型マスクを作製した。
【0062】
[実施例8]
外層として表面修飾した光触媒を1g/m
2担持させたプレシゼA1160(ポリエステルSMS不織布;旭化成せんい製)を配置し、中間層としてクラレ社製ポリプルピレンメルトブロウン不織布(帯電加工)20g/m
2、内層として、ベンリーゼ(旭化成せんい製) 14g/m
2を配置して、
参考例5と同様の形状のマスクを作製した。
【0063】
[実施例9]
外層として表面修飾した光触媒を1g/m
2担持させたSM不織布を配置し、中間層としてクラレ社製ポリプロピレンメルトブロウン不織布(帯電加工) 20g/m
2、内層として、エルタスP03020(旭化成せんい製)20g/m
2を配置し、
参考例5と同様の形状のマスクを作製した。
光触媒を担持させたSM不織布は、スパンボンドE01012(旭化成せんい製)に(目付12g/m
2、平均繊維径2μmのPETメルトブロウン繊維を15g吹き付けながら積層し、PETSM構造の不織布を作製した。
【0064】
[実施例10]
外層として エルタスP03020(スパンボンド;旭化成せんい製) 20g/m
2、中間層1として、クラレ社製ポリプロピレンメルトブロウン不織布(帯電加工)、中間層2として、光触媒を4g/m
2担持させたプレシゼA1160(ポリエステルSMS不織布;旭化成せんい製)を配置し、内層として旭化成せんい社製 ベンリーゼ 14g/m
2を配置し、実施例7と同様の形状のマスクを作製した。
【0065】
[実施例11]
外層としてエルタスP03020(スパンボンド;旭化成せんい製)20g/m
2、中間層1として、クラレ社製ポリプロピレンメルトブロウン不織布(帯電加工)、中間層2として、光触媒を5g/m
2担持させた旭化成社製ベンリーゼ 40g/m
2を配置し、内層としてプレシゼPO1020(旭化成せんい製) 20g/m
2を配置し、実施例7と同様の形状のマスクを作製した。
【0066】
[比較例3]
表層に光触媒を担持しないプレシゼA1160(ポリエステルSMS不織布;旭化成せんい製)を用いた以外は、実施例7と同様にして折りたたみ型マスクを成形し、その評価を行った。
【0067】
[比較例4]
中間層2にとして、光触媒を担持しないベンリーゼ(旭化成せんい製) 40g/m
2を配置した以外は、実施例11と同様にして折りたたみ型マスクを成形し、その評価を行った。
【0068】
上記実施例1〜11、及び比較例1〜4の評価結果を以下の表1〜4に示す。
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】