(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体基板の中央部に前記赤外光検出部が配置されており、前記半導体基板において前記中央部の外側の周縁領域に機能素子部、外部接続部、マーク部、ヒューズのうちの少なくとも一つが配置されている、請求項1〜32のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の先行技術では、受光素子および照度センサが個別のチップからなり、これらが基板上に取り付けられている。そのため、小型化に限界がある。たとえば、携帯電話機に代表される携帯型電子機器の筐体内のスペースは極めて制限されているから、筐体内に収容される部品の小型化に対する要求が厳しい。とくに最近の高機能化および多機能化された携帯型電子機器の筐体内におけるスペースの制限は、全ての内蔵部品を極限まで小型化することを要求する。特許文献1の先行技術に示された構成では、もはや、最近の小型化に対する要求を充足することができない。
【0005】
また、特許文献1の先行技術では、少なくとも照度センサのモールド樹脂には、発光素子の発光波長域の光を透過しない素材を混入する必要がある。したがって、照度センサの樹脂モールドは、受光素子の樹脂モールドとは別に行う必要がある。これにより、樹脂モールドの回数が多くなるから、組立工程における工数が多くなり、それに応じて生産性が悪くなるという問題がある。
【0006】
そこで、この発明の目的は、可視光および赤外光の検出が可能であり、かつ小型化および生産性のいずれの観点においても改良された半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられ、可視光を検出する可視光検出部と、前記半導体基板上に設けられ、赤外光を検出する赤外光検出部と、前記可視光検出部と前記赤外光検出部との間に設けられた絶縁分離層と、前記絶縁分離層の上部に設けられた配線層と、
前記半導体基板上に設けられ、前記可視光検出部の出力信号および前記赤外光検出部の出力信号を保持するデータレジスタと、クロック信号を発生する発振器と、前記発振器が発生するクロック信号に同期して前記可視光検出部および前記赤外光検出部の各々の動作タイミングを制御するタイミングコントローラとを含み、前記可視光検出部の出力と前記赤外光検出部の出力とに対して演算を行う機能素子部と、前記赤外光検出部、前記絶縁分離層および前記配線層を覆うように設けられ、赤外光を透過させる積層光学膜とを含む、半導体装置である。
この構成によれば、可視光検出部および赤外光検出部
ならびにそれらの出力に対して演算を行う機能素子部が同じ半導体基板上に設けられるから、可視光検出機能および赤外光検出機能
ならびに可視光および赤外光の検出出力に対する演算機能を有する1チップの半導体装置を提供できる。これにより、
可視光検出および赤外光検出のための構成を、簡素化でき、著しい小型化を図ることができる。また、赤外光を透過させる積層光学膜が赤外光検出部を覆うように形成されているので、当該半導体装置を樹脂モールドする場合であっても、可視光検出部と赤外光検出部とで個別の樹脂モールド工程を要しない。さらに、積層光学膜は、半導体基板上に薄膜を形成する半導体プロセスによって形成できる。したがって、積層光学膜を形成するプロセスの追加は容易であり、半導体製造設備を利用できるので、生産コストを圧縮できる。
さらに、可視光検出部または赤外光検出部を形成するための工程の一部と機能素子部を形成するための工程の一部とを同時に行うことによって、製造工程を簡素化し、一層のコスト削減を図ることができる。
【0008】
前記積層光学膜は、赤外光域の波長の光のみを透過させる光学特性を有するように設計された光学膜であり、複数枚の膜を積層して構成されている。具体的には、積層光学膜は、複数膜の膜を周期的に積層して構成されている。さらに具体的には、積層光学膜は、第1膜と、第2膜とを交互に積層して構成されていてもよい。第1膜はたとえばTiO
2膜であってもよく、この場合に、第2膜はたとえばSiO
2膜であってもよい。必要な通過波長特性(通過波長ピーク)に合わせて、第1および第2膜の各膜厚を設定し、それらの積層繰り返し回数を設定することによって、目的とする光学特性の積層光学膜を得ることができる。たとえば、第1膜および第2膜は、スパッタ法によって形成されてもよい。
【0009】
前記可視光検出部は、可視光を検出して照度を測定するための照度センサであってもよい。また、前記赤外光検出部は、赤外光を発生する発光素子から発生して被検出物から反射した反射光を検出するように構成されていてもよい。この場合、発光素子および赤外光検出部は、被検出物の近接を検出する近接センサを構成していてもよい
。
【0011】
前記機能素子部は、トランジスタ、ダイオード、キャパシタ、抵抗素子等の機能素子(能動素子または受動素子)が形成された部分である。前記機能素子部は、前述のような近接センサの発光素子を制御および駆動する回路を構成する機能素子を含んでいてもよい。前記機能素子部は、可視光検出部の出力信号を増幅する増幅回路を含んでいてもよい。同様に、前記機能素子部は、赤外光検出部の出力信号を増幅する増幅回路を含んでいてもよい。前記機能素子部は、可視光検出部が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部を構成する機能素子を含んでいてもよい。また、前記機能素子部は、赤外光検出部が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部を構成する機能素子を含んでいてもよい。前記機能素子部は、可視光検出部の出力信号および/または赤外光検出部の出力信号を保持するデータレジスタを構成する機能素子を含んでいてもよい。
【0012】
請求項
2記載の発明は、前記積層光学膜が、前記赤外光検出部および前記機能素子部を覆うように形成されている、請求項
1に記載の半導体装置である。この構成によれば、積層光学膜が赤外光検出部だけでなく機能素子部をも覆っている。これにより、機能素子部への外乱光の入射を抑制できるので、外乱光に起因する機能素子部の誤動作を低減できる。
【0013】
請求項
3記載の発明は、前記機能素子部上に形成された金属膜をさらに含む、請求項
1または
2に記載の半導体装置である。この構成により、機能素子部への外乱光の入射をさらに抑制できるから、外乱光に起因する機能素子部の誤動作を一層低減できる。前記金属膜は、配線膜の一部であってもよい。
請求項
4記載の発明は、前記積層光学膜が、前記可視光検出部が露出するように形成されている、請求項1〜
3のいずれか一項に記載の半導体装置である。この構成によれば、積層光学膜が可視光検出部を覆わないので、可視光検出部への可視光域の光の入射が阻害されない。これにより、可視光検出部は、良好な感度で可視光を検出できる。
【0014】
請求項
5に記載されているように、前記赤外光検出部と前記積層光学膜とに間に設けられた保護膜をさらに含むことが好ましい。
請求項
6に記載されているように、前記赤外光検出部と前記積層光学膜とに間に設けられ、前記可視光検出部上まで延びて形成された保護膜をさらに含むことが好ましい。
請求項
7に記載されているように、前記赤外光検出部と前記積層光学膜とに間に設けられ、前記可視光検出部上および前記機能素子部上まで延びて形成された保護膜をさらに含むことが好ましい。
【0015】
請求項
8記載の発明は、前記半導体基板を見下ろす平面視において、前記積層光学膜が前記赤外光検出部よりも大きい、請求項1〜
7のいずれか一項に記載の半導体装置である。
この構成によれば、積層光学膜は、平面視において赤外光検出部を完全に覆い、さらに、その外周の領域をも覆っている。これにより、赤外光検出部への赤外光域以外の波長の光の入射を確実に抑制または防止できるから、赤外光を正確に検出できる。
【0016】
請求項
9に記載されているように、前記積層光学膜が前記可視光検出部の外周まで延びており、前記可視光検出部を露出させるように形成されていることが好ましい。これにより、可視光検出部への可視光域の波長の光の入射を保証できる。
請求項
10に記載されているように、前記半導体装置は、前記半導体基板上に設けられ、前記半導体装置の電気的特性を調整するためのヒューズをさらに含んでいてもよい。
【0017】
請求項
11に記載されているように、前記積層光学膜が前記ヒューズの外周まで延び、前記ヒューズを露出させるように形成されていることが好ましい。これにより、たとえば、レーザ加工その他の方法によってヒューズを溶断するときに、積層光学膜が邪魔にならない。
請求項
12に記載されているように、前記半導体装置は、前記半導体基板上に設けられ、当該半導体装置を外部に電気的に接続するためのパッドをさらに含んでいてもよい。
【0018】
請求項
13に記載されているように、前記積層光学膜が前記パッドの外周まで延び、前記パッドを露出させるように形成されていることが好ましい。これにより、パッドを介する外部接続の際に、積層光学膜が邪魔にならない。パッドを介する外部接続は、パッドに一端がボンディングされるボンディングによって行われてもよい。
請求項
14に記載されているように、前記半導体装置は、前記半導体基板上に設けられ、基準位置を示すマーク部をさらに含んでいてもよい。マーク部は、たとえば、半導体基板上に薄膜パターンを形成するために使用されるマスクの位置合わせのためのマーク部を含んでいてもよい。また、マーク部は、形成されたマスクを検査するときの基準位置を示すマーク部を含んでいてもよい。さらに、マーク部は、チップ切り出し前の半導体ウエハ上においてチップエリア端の認識のためのマーク部を含んでいてもよい。また、マーク部は、ヒューズを溶断するときの基準位置を示すマーク部を含んでいてもよい。
【0019】
請求項
15に記載されているように、前記積層光学膜が前記マーク部の外周まで延び、前記マーク部を露出させるように形成されていることが好ましい。これにより、マーク部を認識する際に積層光学膜が邪魔にならないので、半導体プロセスを高い位置合わせ精度で精密に実行できる。
請求項
16記載の発明は、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられ、可視光を検出する可視光検出部と、前記半導体基板上に設けられ、赤外光を検出する赤外光検出部と、前記可視光検出部と前記赤外光検出部との間に設けられた絶縁分離層と、前記絶縁分離層の上部に設けられた配線層と、
前記半導体基板上に設けられ、前記可視光検出部の出力信号および前記赤外光検出部の出力信号を保持するデータレジスタと、クロック信号を発生する発振器と、前記発振器が発生するクロック信号に同期して前記可視光検出部および前記赤外光検出部の各々の動作タイミングを制御するタイミングコントローラとを含み、前記可視光検出部の出力と前記赤外光検出部の出力とに対して演算を行う機能素子部と、前記赤外光検出部、前記絶縁分離層および前記配線層を覆うように設けられ、赤外光を透過させる第1積層光学膜と、前記可視光検出部を覆うように設けられ、可視光を透過させる第2積層光学膜とを含む、半導体装置である。
【0020】
この構成によれば、可視光検出部および赤外光検出部
ならびにそれらの出力に対して演算を行う機能素子部が同じ半導体基板上に設けられるから、可視光検出機能および赤外光検出機能
ならびに可視光および赤外光の検出出力に対する演算機能を有する1チップの半導体装置を提供できる。これにより、
可視光検出および赤外光検出のための構成を、簡素化でき、著しい小型化を図ることができる。また、赤外光を透過させる第1積層光学膜が赤外光検出部を覆うように形成されており、可視光を透過させる第2積層光学膜が可視光検出部を覆うように形成されているので、当該半導体装置を樹脂モールドする場合であっても、可視光検出部と赤外光検出部とで個別の樹脂モールド工程を要しない。さらに、第1および第2積層光学膜は、半導体基板上に薄膜を形成する半導体プロセスによって形成できる。したがって、それらの積層光学膜を形成するプロセスの追加は容易であり、半導体製造設備を利用できるので、生産コストを圧縮できる。
さらに、可視光検出部または赤外光検出部を形成するための工程の一部と機能素子部を形成するための工程の一部とを同時に行うことによって、製造工程を簡素化し、一層のコスト削減を図ることができる。また、赤外光検出部だけでなく可視光検出部にも積層光学膜を設けてあるので、可視光検出部に可視光域外の波長の光が入射することを抑制または防止できる。これにより、可視光検出部の検出精度を向上できる。
【0021】
前記第1積層光学膜は、赤外光域の波長の光のみを透過させる光学特性を有するように設計された光学膜であり、複数枚の膜を積層して構成されている。また、前記第2積層光学膜は、可視光域の波長の光のみを透過させる光学特性を有するように設計された光学膜であり、複数枚の膜を積層して構成されている。具体的には、第1および第2積層光学膜は、それぞれ、複数膜の膜を周期的に積層して構成されている。さらに具体的には、第1および第2積層光学膜は、それぞれ、第1膜と、第2膜とを交互に積層して構成されていてもよい。第1膜はたとえばTiO
2膜であってもよく、この場合に、第2膜はたとえばSiO
2膜であってもよい。必要な通過波長特性(通過波長ピーク)に合わせて、第1および第2膜の各膜厚を設定し、それらの積層繰り返し回数を設定することによって、目的とする光学特性の積層光学膜を得ることができる。たとえば、第1膜および第2膜は、スパッタ法(光学スパッタ)によって形成されてもよい。
【0022】
前記可視光検出部は、周囲の可視光を検出して照度を測定するための照度センサであってもよい。また、前記赤外光検出部は、赤外光を発生する発光素子から発生して被検出物から反射した反射光を検出するように構成されていてもよい。この場合、発光素子および赤外光検出部は、被検出物の近接を検出する近接センサを構成していてもよい。この場合、第2積層光学膜は被検出物から反射して可視光検出部に向かう赤外光を遮光するから、可視光検出部の検出精度を高めることができる。
【0025】
請求項
17記載の発明は、前記第2積層光学膜が、前記可視光検出部および前記機能素子部を覆うように形成されている、請求項
16に記載の半導体装置である。この構成によれば、可視光域の波長の光を選択的に透過させる第2積層光学膜が、可視光検出部だけでなく機能素子部をも覆っている。これにより、機能素子部への外乱光の入射を抑制できるので、外乱光に起因する機能素子部の誤動作を低減できる。半導体(とくにシリコン)は、赤外光域に強い感度特性を有している。そこで、第2積層光学膜によって赤外光をカットすることにより、機能素子部の誤動作を確実に低減できる。
【0026】
請求項
18記載の発明は、前記機能素子部上に形成された金属膜をさらに含む、請求項
16または
17に記載の半導体装置である。この構成により、機能素子部への外乱光の入射をさらに抑制できるから、外乱光に起因する機能素子部の誤動作を一層低減できる。前記金属膜は、配線膜であってもよい。
請求項
19記載の発明は、前記第1積層光学膜が前記可視光検出部が露出するように形成されており、前記第2積層光学膜が前記赤外光検出部が露出するように形成されている、請求項
16〜18のいずれか一項に記載の半導体装置である。この構成によれば、第1積層光学膜が可視光検出部を覆わないので、可視光検出部への可視光域の波長の光の入射が阻害されない。また、第2積層光学膜が赤外光検出部を覆わないので、赤外光検出部への赤外光域の波長の光の入射が阻害されない。これにより、可視光検出部および赤外光検出部は、良好な感度で可視光および赤外光をそれぞれ検出できる。
【0027】
請求項
20に記載されているように、前記半導体装置は、前記赤外光検出部と前記第1積層光学膜とに間に設けられた保護膜をさらに含むことが好ましい。
請求項
21に記載されているように、前記半導体装置は、前記赤外光検出部と前記第2積層光学膜とに間に設けられた保護膜を含むことが好ましい。
請求項
22に記載されているように、前記保護膜が前記機能素子部上まで延びて形成されていることが好ましい。
【0028】
請求項
23記載の発明は、前記半導体基板を見下ろす平面視において、前記第1積層光学膜が前記赤外光検出部よりも大きい、請求項
16〜
22のいずれか一項に記載の半導体装置である。この構成によれば、第1積層光学膜は、平面視において赤外光検出部を完全に覆い、さらに、その外周の領域をも覆っている。これにより、赤外光検出部への赤外光域以外の波長の光の入射を確実に抑制または防止できるから、赤外光を正確に検出できる。
【0029】
請求項
24記載の発明は、前記第2積層光学膜が、前記第1積層光学膜よりも前記半導体基板上において大きな面積に渡って形成されている、請求項
16〜
23のいずれか一項に記載の半導体装置である。この構成により、半導体基板内への赤外光の入射を低減できる。半導体(とくにシリコン)は、赤外光に対する感度が高いので、赤外光域の波長の光を遮断する第2積層光学膜がより広い面積に渡って形成されていることによって、半導体基板内に形成された機能素子の誤動作を効果的に抑制できる。
【0030】
請求項
25に記載されているように、前記第1積層光学膜が前記可視光検出部の外周まで延びており、前記可視光検出部を露出させるように形成されていることが好ましい。これにより、可視光検出部への可視光域の波長の光の入射を保証できる。
請求項
26に記載されているように、前記半導体装置は、前記半導体基板上に設けられ、前記半導体装置の電気的特性を調整するためのヒューズをさらに含んでいてもよい。
【0031】
請求項
27に記載されているように、前記第2積層光学膜が前記ヒューズの外周まで延び、前記ヒューズを露出させるように形成されていることが好ましい。これにより、たとえば、レーザ加工その他の方法によってヒューズを溶断するときに、第2積層光学膜が邪魔にならない。
請求項
28に記載されているように、前記半導体装置は、前記半導体基板上に設けられ、当該半導体装置を外部に電気的に接続するためのパッドをさらに含んでいてもよい。
【0032】
請求項
29に記載されているように、前記第2積層光学膜が前記パッドの外周まで延び、前記パッドを露出させるように形成されていることが好ましい。これにより、パッドを介する外部接続の際に、第2積層光学膜が邪魔にならない。パッドを介する外部接続は、パッドに一端がボンディングされるワイヤボンディングによって行われてもよい。
請求項
30に記載されているように、前記半導体装置は、前記半導体基板上に設けられ、基準位置を示すマーク部をさらに含んでいてもよい。マーク部の例は、前述のとおりである。
【0033】
請求項
31に記載されているように、前記第2積層光学膜が前記マーク部の外周まで延び、前記マーク部を露出させるように形成されていることが好ましい。これにより、マーク部を認識する際に第2積層光学膜が邪魔にならないので、半導体プロセスを高い位置合わせ精度で精密に実行できる。
請求項
32記載の発明は、前記可視光検出部が前記半導体基板上の第1領域に配置されており、前記赤外光検出部が前記半導体基板上の前記第1領域とは異なる第2領域に配置されている、請求項1〜
31のいずれか一項に記載の半導体装置である。
【0034】
この構成によれば、可視光検出部および赤外光検出部が半導体基板上の異なる領域に形成されている。そのため、赤外光域の光を選択的に透過させる積層光学膜で赤外光検出部を覆いながら、可視光検出部へは可視光域の光を入射させることができる。これにより、可視光の検出を犠牲にすることなく、赤外光を検出できる。
請求項
33記載の発明は、前記赤外光検出部が前記半導体基板の中央部に配置されている、請求項1〜
32のいずれか一項に記載の半導体装置である。この構成によれば、赤外光検出部が半導体基板の中央部に配置されていることによって、赤外光検出部への外乱光の入射を抑制または防止できる。
【0035】
請求項
34記載の発明は、前記半導体基板の中央部に前記赤外光検出部が配置されており、前記半導体基板において前記中央部の外側の周縁領域に機能素子部、外部接続部、マーク部、ヒューズのうちの少なくとも一つが配置されている、請求項1〜
32のいずれか一項に記載の半導体装置である。この構成によれば、外乱光の影響を受けにくい機能素子部、外部接続部、マーク部、ヒューズのうちの少なくとも一つが半導体基板の周縁領域に配置されている一方で、赤外光検出部が半導体基板の中央部に配置されていることによって、赤外光検出部への外乱光の入射を抑制または防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の平面図である。半導体装置1は、半導体基板2と、半導体基板2上に設けられた可視光検出部3と、半導体基板2上に設けられた赤外光検出部4と、半導体基板2上に設けられた機能素子部5とを含む、半導体チップである。さらに、半導体装置1は、赤外光検出部4を覆うように設けられた積層光学膜6を含む。
図1においては、積層光学膜6は、形成範囲を明確にするために斜線を付して表してある。
【0038】
半導体基板2は、たとえば、シリコン基板である。この半導体基板2には、可視光検出部3、赤外光検出部4および機能素子部5を構成する半導体素子(機能素子の例)と、それらの電気的接続のための配線を内蔵した多層配線構造とが形成されている。半導体基板2は、この実施形態では、平面視においてほぼ矩形に形成されている。この半導体基板2の一辺に沿って、ほぼ長方形の機能素子部5Aが配置されている。この機能素子部5Aの長手方向中間部付近において、その一つの長辺の近傍に赤外光検出部4が配置されている。赤外光検出部4は、機能素子部5Aよりも内側に配置されており、半導体基板1の表面のほぼ中央に位置している。この赤外光検出部4に隣接するように可視光検出部3が配置されている。すなわち、可視光検出部3も、半導体基板1の表面のほぼ中央に位置している。これらの赤外光検出部4および可視光検出部3の周囲は、機能素子が配置された機能素子部5Bとなっている。
【0039】
半導体基板2の互いに対向する一対の辺に沿って、複数のパッド10が半導体基板2上に配列されている。これらのパッド10は、半導体装置1を外部に電気的に接続するためのパッドであり、この実施形態ではそれぞれ矩形(ほぼ正方形)の平面形状を有している。パッド10は、それぞれボンディングワイヤの各一端が接合されるワイヤボンディングパッドであってもよい。この実施形態では、機能素子部5Aと、可視光検出部3および赤外光検出部4を挟んで当該機能素子部5Aに対向する半導体基板2の一辺との間の領域に、パッド10が配置されている。
【0040】
半導体基板2上には、さらに、ヒューズ11およびマーク部12が形成されている。この実施形態では、ヒューズ11は、機能素子部5Aの近傍において、1つのパッド10と赤外光検出部4との間に配置されていて、機能素子部5Bの一長辺に沿って延びる長方形に形成されている。ヒューズ11は、半導体装置1の電気的特性を調整するために、必要に応じて溶断される。マーク部12は、半導体基板2上の複数の位置に配置されている。この実施形態では、半導体基板2の互いに対向する一対の対角付近にマーク部12a,12bが配置されており、さらに別の1つの対角部付近に別のマーク部12cが形成されている。そして、1つのパッド10の近傍にさらに別のマーク部12dが形成されている。マーク部12a,12bは、たとえば、チップ切り出し前の半導体ウエハ上においてチップエリア端を認識するためのマーク部であってもよい。また、マーク部12cは、ヒューズ11を溶断するときの基準位置を示すマーク部であってもよい。さらに、マーク部12dは、半導体基板上に薄膜パターンを形成するために使用されるマスクを検査するときの基準位置を示すマーク部であってもよい。
【0041】
積層光学膜6は、赤外光検出部4を覆うように形成されている。積層光学膜6は、可視光検出部4を露出させる開口6aと、ヒューズ1を露出させる開口6bとを有している。さらに、積層光学膜6は、その周縁部に、パッド10、ヒューズ11およびマーク部12を露出させる切り欠き6c〜6kを有している。より具体的には、積層光学膜6は、赤外光検出部4および機能素子部5を覆うように形成されており、可視光検出部3、パッド10、ヒューズ11およびマーク部12を露出させるように形成されている。そして、積層光学膜10は、平面視において、赤外光検出部4を完全に覆い、赤外光検出部4の外方の領域にはみ出して、赤外光検出部4よりも大きい領域に形成されている。また、積層光学膜6は、可視光検出部3の外周まで延びて形成されていて、開口6aにおいて可視光検出部3を露出させている。さらに、積層光学膜6は、ヒューズ11の外周まで延びて形成されており、開口6bにおいてヒューズ11を露出させるように形成されている。また、積層光学膜6は、パッド10およびマーク部12の外周まで形成されており、切り欠き6c〜6kにおいてパッド10およびマーク部12を露出させるように形成されている。さらに、積層光学膜6は、その周端縁が半導体基板2の周端縁(チップエッジ)から所定の間隔を開けて配置されるように形成されている。この配置は、積層光学膜6の剥がれ防止に効果的である。
【0042】
可視光検出部3は、半導体基板2に形成された複数のフォトダイオードPDA1,PDA2,PDA3,PDB1,PDB2,PDB3を含む。これらのフォトダイオードPDA1,PDA2,PDA3,PDB1,PDB2,PDB3は、可視光域の波長の光を検出して、当該半導体装置1が置かれた位置の照度に相当する出力信号を生成するように構成されている。一対のフォトダイオードPDA1,PDB1は、第1受光ユニット81を構成している。別の一対のフォトダイオードPDA2,PDB2は、第2受光ユニット82を構成している。さらに別の一対のフォトダイオードPDA3,PDB3は、第3受光ユニット83を構成している。
【0043】
図2は、
図1の切断面線II−IIにおける断面を示す図解的な断面図である。半導体基板2は、この実施形態ではp型のシリコン基板である。この半導体基板2の表層部に、可視光検出部3、赤外光検出部4および機能素子部5を構成する半導体素子が作り込まれている。
可視光検出部3は、n型埋め込み層15と、p型埋め込み層16と、p型ウェル17と、n型ウェル18と、n
+型拡散層19A,19Bと、p
+型拡散層20A,20Bとを含む。n型埋め込み層15は、半導体基板2の表面から予め定める深さの位置に形成されている。このn型埋め込み層15よりも浅い領域に、当該n型埋め込み層15に接するようにp型埋め込み層16が形成されている。p型ウェル17は、p型埋め込み層16に接し、このp型埋め込み層16よりも浅い領域に形成されている。n型ウェル18は、平面視においてp型ウェル17を取り囲む枠状(たとえば矩形枠状)に形成されており、その下端縁がn型埋め込み層15に接しており、その上端縁は半導体基板2の表面を形成している。n
+型拡散層19Aは、p型ウェル17の中央領域に形成されていて、n型ウェル18からは一定の間隔が保たれている。n型ウェル18は、平面視においてほぼ矩形をなす枠状(たとえば矩形枠状)に形成されている。n
+型拡散層19Bは、n型ウェル18の表面に形成されている。p
+型拡散層20Aは、n型ウェル18の外側において、半導体基板2の表面に形成されている。p
+型拡散層20Bは、n型ウェル18の内側において、p型ウェル17の表面に形成されている。p
+型拡散層20A,20Bは、n型ウェル18から間隔を開けて形成されており、平面視においてほぼ矩形をなす枠状(たとえば矩形枠状)に形成されている。
【0044】
n型ウェル18に形成されたn
+型拡散層19Bには、配線プラグ21が接触している。配線プラグ21は、n型ウェル18の平面形状に従うように、平面視において矩形の枠状に形成されており、n
+型拡散層19Bを介してn型ウェル18に電気的に接続されている。枠状の配線プラグ21の外側には、同様な枠状に形成された配線プラグ22が配置されている。この配線プラグ22はp
+型拡散層20Aに接しており、このp
+型拡散層20Aを介してp型半導体基板2に電気的に接続されている。配線プラグ21の内側には、枠状の配線プラグ23が配置されている。配線プラグ23は、n
+型拡散層19とn型ウェル18との間に形成されたp
+型拡散層20Bに接しており、このp
+型拡散層20Bを介してp型ウェル17に接続されている。配線プラグ23のさらに内側には、同様な枠状の配線プラグ24が配置されている。この配線プラグ24は、n
+型拡散層19Aに接続されている。
【0045】
p型半導体基板2とn型埋め込み層15との間にpn接合が形成されており、このpn接合は第1フォトダイオード25を形成している。また、n型埋め込み層15とp型埋め込み層16との間に別のpn接合が形成されていて、このpn接合が第2フォトダイオード26を形成している。そして、p型ウェル17とn
+型拡散層19との間にさらに別のpn接合が形成されており、このpn接合によって第3フォトダイオード27が形成されている。
【0046】
フォトダイオードの分光感度特性は、pn接合(受光面)の半導体表面からの深さに依存することが知られている。一般的には、pn接合面(受光面)が深いほど、分光感度特性のピークは長波長側にシフトする。つまり、可視光検出部3において、第1フォトダイオード25は、第2および第3のフォトダイオード26および27よりも、長波長側に分光感度特性のピークを有する。逆に、第3フォトダイオード27は、第1および第2フォトダイオード25および26よりも短波長側に分光感度特性のピークを有している。そして、第2フォトダイオード26は、第1フォトダイオード25および第3フォトダイオード27における分光感度特性ピークの間に分光感度特性のピークを有している。
【0047】
この実施形態では、第1フォトダイオード25のpn接合が赤外光域に整合し、第2フォトダイオード26のpn接合面の深さが可視光域に整合するように、各層の深さおよび厚さが設計されている。そこで、配線プラグ23,24の間を短絡し、n型埋め込み層15に電気的に接続された配線プラグ21から出力信号を取り出すことにより、可視光の光量(照度)に対応した出力信号を取り出すことができる。つまり、紫外光域の光は第3フォトダイオード27で光電変換されるが、第3フォトダイオード27のアノード−カソード間が短絡されているから、第3フォトダイオード27の検出電流は出力に寄与しない。したがって、第2フォトダイオード26には、紫外光域の光が除去された光が到達する。この光が、第2フォトダイオード26によって光電変換され、その出力が、配線プラグ21から取り出されることになる。第2フォトダイオード26の出力信号には、赤外光域の成分が含まれている。この成分の除去については、後述する。
【0048】
赤外光検出部4は、n型埋め込み層35と、p型埋め込み層36と、p型ウェル37と、n型ウェル38と、n
+型拡散層39A,39Bと、p
+型拡散層40A,40Bとを含む。n型埋め込み層35は、半導体基板2の表面から予め定める深さの位置に形成されている。このn型埋め込み層35よりも浅い領域に、当該n型埋め込み層35に接するようにp型埋め込み層36が形成されている。p型ウェル37は、p型埋め込み層36に接し、このp型埋め込み層36よりも浅い領域に形成されている。n型ウェル38は、平面視においてp型ウェル37を取り囲む枠状(たとえば矩形枠状)に形成されており、その下端縁がn型埋め込み層35に接しており、その上端縁は半導体基板2の表面を形成している。n
+型拡散層39Aは、p型ウェル37の中央領域に形成されていて、n型ウェル38からは一定の間隔が保たれている。n型ウェル38は、平面視においてほぼ矩形をなす枠状(たとえば矩形枠状)に形成されている。n
+型拡散層39Bは、n型ウェル38の表面に形成されている。p
+型拡散層40Aは、n型ウェル38の外側において、半導体基板2の表面に形成されている。p
+型拡散層40Bは、n型ウェル38の内側において、p型ウェル37の表面に形成されている。p
+型拡散層40A,40Bは、n型ウェル38から間隔を開けて形成されており、平面視においてほぼ矩形をなす枠状(たとえば矩形枠状)に形成されている。
【0049】
n型ウェル38に形成されたn
+型拡散層39Bには、配線プラグ41が接触している。配線プラグ41は、n型ウェル38の平面形状に従うように、平面視において矩形の枠状に形成されており、n
+型拡散層39Bを介してn型ウェル38に電気的に接続されている。枠状の配線プラグ41の外側には、同様な枠状に形成された配線プラグ42が配置されている。この配線プラグ42はp
+型拡散層40Aに接しており、このp
+型拡散層40Aを介してp型半導体基板2に電気的に接続されている。配線プラグ41の内側には、枠状の配線プラグ43が配置されている。配線プラグ43は、n
+型拡散層39とn型ウェル38との間に形成されたp
+型拡散層40Bに接しており、このp
+型拡散層40Bを介してp型ウェル37に接続されている。配線プラグ43のさらに内側には、同様な枠状の配線プラグ44が配置されている。この配線プラグ44は、n
+型拡散層39Aに接続されている。
【0050】
p型半導体基板2とn型埋め込み層35との間にpn接合が形成されており、このpn接合は第1フォトダイオード45を形成している。また、n型埋め込み層35とp型埋め込み層36との間に別のpn接合が形成されていて、このpn接合が第2フォトダイオード46を形成している。そして、n型ウェル37とn
+型拡散層39との間にさらに別のpn接合が形成されており、このpn接合によって第3フォトダイオード47が形成されている。
【0051】
フォトダイオードの分光感度特性が、pn接合(受光面)の半導体表面からの深さに依存することは前述のとおりである。したがって、赤外光検出部4において、第1フォトダイオード45は、第2および第3のフォトダイオード46および47よりも、長波長側に分光感度特性のピークを有する。逆に、第3フォトダイオード47は、第1および第2フォトダイオード45および46よりも短波長側に分光感度特性のピークを有している。そして、第2フォトダイオード46は、第1フォトダイオード45および第3フォトダイオード47における分光感度特性ピークの間に分光感度特性のピークを有している。
【0052】
この実施形態では、第1フォトダイオード45のpn接合が赤外光域に整合し、第2フォトダイオード46のpn接合面の深さが可視光域に整合するように、各層の深さおよび厚さが設計されている。そこで、配線プラグ41,43,44の間を短絡し、p型基板2に電気的に接続された配線プラグ42から出力信号を取り出すことにより、赤外光の光量に対応した出力信号を取り出すことができる。つまり、第2および第3フォトダイオード46,47の検出電流は出力に寄与しない。
【0053】
機能素子部5に形成された機能素子は、たとえば、nチャネル型MOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)51と、pチャネル型MOSFET52とを含む。
nチャネル型MOSFET51は、半導体基板2に形成されたp型ウェル53と、p型ウェル53の表層部に間隔をあけて形成された一対のn
+型拡散層54(ソース/ドレイン層)とを含む。p型ウェル53の下方には、p型埋め込み層55が形成されている。半導体基板2の表面には、p型ウェル53およびn
+型拡散層54を覆うようにゲート絶縁膜56が形成されている。このゲート絶縁膜56を挟んでp型ウェル53に対向するように、ゲート電極57が配置されている。ゲート電極57は、p型ウェル53の表面において一対のn
+型拡散層54の間の領域に対向している。一対のn
+型拡散層54には、それぞれ配線プラグ63が接合されている。
【0054】
pチャネル型MOSFET52も同様の構造を有している。具体的には、pチャネル型MOSFET52は、n型ウェル58と、n型ウェル58の表層部に間隔をあけて形成された一対のp
+型拡散層59(ソース/ドレイン層)とを有している。n型ウェル58の下方にはn型埋め込み層60が配置されている。n型ウェル58の表面はゲート絶縁膜56によって覆われており、このゲート絶縁膜56上に、ゲート電極61が配置されている。ゲート電極61は、n型ウェル58の表面において一対のp
+型拡散層59の間の領域に対向している。一対のp
+型拡散層59には、それぞれ配線プラグ64が接合されている。
【0055】
n型ウェル58とp型ウェル53との間には、半導体基板2の表面付近にLOCOS層62が配置されており、これによって、nチャネル型MOSFET51とpチャネル型MOSFET52との間の素子分離が行われている。
半導体基板2の表面には、ゲート絶縁膜56上に多層配線構造65が設けられている。多層配線構造65は、複数層の層間絶縁膜66〜69と、これらの層間絶縁膜66〜69によって互いに絶縁された複数層の配線層71〜73とを有している。より具体的には、ゲート絶縁膜56上に第1層間絶縁膜66が配置されており、この第1層間絶縁膜66上に、予め定めるパターンで第1配線層71が形成されている。第1配線層71を覆うように第2層間絶縁膜67が形成されている。この第2層間絶縁膜67の表面に、第2配線層72が予め定めるパターンで形成されている。第2配線層72は、第3層間絶縁膜68によって覆われている。この第3層間絶縁膜68の表面に、第3配線層73が予め定めるパターンで形成されている。第3配線層73は、第4層間絶縁膜69によって覆われている。
【0056】
第4層間絶縁膜69の表面は、その全域が保護膜(パッシベーション膜)70によって覆われている。第1〜第4層間絶縁膜66〜69は、酸化シリコンからなっていてもよい。また、保護膜70は、窒化シリコンからなっていてもよい。第1〜第3配線層71〜73は、アルミニウムを含む金属(アルミニウムまたはアルミニウム合金)または銅を含む金属(銅または銅合金)によって構成されていてもよい。
【0057】
配線プラグ21〜24,41〜44は、少なくとも第1層間絶縁膜66を貫通するように形成されており、第1〜第3配線層71〜73のいずれかに電気的に接続されている。第1〜第3配線層71〜73の間の接続は、図示は省略するけれども、第2または第3層間絶縁膜67,68を貫通する配線プラグによって、必要箇所で互いに接続されている。nチャネル型およびpチャネル型MOSFET51,52の配線プラグ63,64も同様に、少なくとも第1層間絶縁膜66を貫通して形成されている。これらの配線プラグ63,64は、第1〜第3配線層71〜73のいずれかに電気的に接続されている。ゲート電極57,61も同様に、図示しない位置に形成された配線プラグによって第1〜第3配線層71〜73のいずれかに接続されている。
【0058】
第3配線層73は、たとえば、機能素子部5Bのほぼ全域を覆うパターンに形成されている。機能素子部5A(
図1参照)においては、第3配線層73は、予め定める配線パターンに形成されている。機能素子部5Aでは、平面視において第3配線層73が形成されていない領域には、第1配線層71または第2配線層72が配置されるように、それらのパターンが設計されている。このような構成によって、機能素子部5(5A,5B)においては、半導体基板2内への外乱光の到達が抑制または防止されている。
【0059】
保護膜70の表面には、積層光学膜6が形成されている。すなわち、保護膜70は、赤外光検出部4と積層光学膜6との間に設けられており、さらに、可視光検出部3および機能素子部5上にまで延びており、これらと積層光学膜6との間に配置されている。積層光学膜6は、可視光検出部3に対応する領域に開口6aを有しており、赤外光検出部4および機能素子部5を覆うように形成されている。可視光検出部3と赤外光検出部4との間は、半導体基板2の表面に形成されたLOCOS層50
(絶縁分離層)によって分離されている。積層光学膜6において開口6aを規定する縁部は、LOCOS層50の可視光検出部3側のエッジ部付近に位置している。これにより、積層光学膜6は、赤外光検出部5を完全に覆っており、さらに、赤外光検出部4の外周の領域まで延びて、この領域を覆っている。これにより、積層光学膜6は、赤外光域以外の波長域の光が赤外光検出部4に到達することを確実に抑制または防止するように構成されている。
配線層71〜73の一部は、LOCOS層50の上部に配置されている。積層光学膜6は、LOCOS層50の上部に配置された配線層71−73を覆っている。
【0060】
さらに、前述のとおり、積層光学膜6は、その周端縁が半導体基板2の周端縁(チップエッジ)から所定の間隔を開けて配置されるように形成されている。これにより、積層光学膜6が周端縁から剥がれることを抑制または防止している。この実施形態では、保護膜70は、半導体基板2の周端縁(チップエッジ)に至る領域に延びて形成されている。したがって、積層光学膜6は、保護膜70の外周縁よりも内方にその外周縁を有し、保護膜70よりも狭い範囲に形成されている。
【0061】
図3Aおよび
図3Bは、可視光検出部3に関連する等価回路を示す電気回路図である。可視光検出部3は、それぞれ一対のフォトダイオードPDA1,PDB1;PDA2,PDB2;PDA3,PDB3で構成された第1、第2および第3受光ユニット81,82,83を含む。フォトダイオードPDA1,PDA2,PDA3(以下総称するときには「フォトダイオードPDA」という。)は、p型埋め込み層16とn型埋め込み層15との間のpn接合によって形成された第2フォトダイオード26によって生成される光電流IAを取り出すように構成されている。一方、フォトダイオードPDB1,PDB2,PDB3(以下総称するときには「フォトダイオードPDB」という。)は、n型埋め込み層15と半導体基板2との間のpn接合によって形成された第1フォトダイオード25が生成する光電流IBを出力するように構成されている。
【0062】
より具体的に説明すると、フォトダイオードPDAにおいては、多層配線構造65内の配線層によって、配線プラグ23および24の間が短絡されており、n型ウェル18に接続された配線プラグ21が電源電位Vccに接続されている。また、基板2に接続された配線プラグ22は、接地電位に接続されている。そして、配線プラグ23に現れる光電流IAが出力されるようになっている。第2フォトダイオード26のpn接合面は、可視光域の光(たとえば波長が600nmの光)に対して感度が最大になるようにその深さが設計されている。よって、フォトダイオードPDAが生成する光電流IAは、入射した可視光域の光量に相当する。第3フォトダイオード27のpn接合面は半導体基板2の浅い領域に形成されており、紫外光域の光を光電変換する。よって、紫外光域の光は第3フォトダイオード27によって吸収されるので、第2フォトダイオード26のpn接合面には、可視光域および赤外光域の波長の光のみが到達することになる。
【0063】
一方、フォトダイオードPDBは、対応するフォトダイオードPDAの光電流IAに含まれる赤外光成分をキャンセルするための赤外光成分補償素子である。このフォトダイオードPDBにおいては、半導体基板2とn型埋め込み層15との間のpn接合面によって形成された第1フォトダイオード25が生成する光電流IBが取り出される。そのために、配線プラグ21,23,24を短絡するように、多層配線構造65内の配線が形成されている。配線プラグ22には、接地電位が与えられる。これにより、フォトダイオードPDBにおいては、第2および第3フォトダイオード26,27が生成する光電流は無効となり、第1フォトダイオード25が生成する光電流IBのみが配線プラグ21に導出される。第3フォトダイオード27は紫外光域の光を吸収して光電変換し、第2フォトダイオード26は可視光域の光を吸収して光電変換するので、第1フォトダイオード25は赤外光域の光のみを受光し、その光量に対応した光電流IBを生成することになる。
【0064】
フォトダイオードPDAの配線プラグ23とフォトダイオードPDBの配線プラグ21とは、多層配線構造65内の配線によって互いに接続されている。これにより、フォトダイオード対PDA,PDBで構成された受光ユニット(81,82,83)が出力する光電流Iは、I=IA−IBとなる。すなわち、フォトダイオードPDAの光電流IAから、赤外光成分に相当する光電流IBが減じられ、可視光域の光の受光光量に対応した光電流Iが得られる。
【0065】
図3Bは、3対のフォトダイオードPDA1,PDB1;PDA2,PDB2;PDA3,PDB3の接続状態を示す。フォトダイオードPDA1,PDB1は、電源電位Vccと接地電位との間に直列に接続されていて、それらの間のノードから光電流I1が取り出されるようになっている。同様に、フォトダイオードPDA2,PDB2は電源電位Vccと接地電位との間に直列に接続されていて、それらの間のノードの光電流I2が取り出されるようになっている。フォトダイオードPDA3,PDB3は電源電位Vccと接地電位との間に直列に接続されていて、それらの間のノードに現れる電流が光電流I3として取り出されるようになっている。
【0066】
図1に図解的に示したように、たとえば、フォトダイオードPDA1とフォトダイオードPDB1とは、受光面の面積比が、30.5:1.7に設定されている。また、フォトダイオードPDA2とフォトダイオードPDB2とは、受光面の面積比が25.6:4.5に設定されている。さらに、フォトダイオードPDA3とフォトダイオードPDB3との受光面の面積比は、25.6:11.7に設定されている。
【0067】
赤外光成分を多く含む光を発生するハロゲンランプを光源として用いる場合、第1受光ユニット81(フォトダイオードPDA1,PDB1)では、フォトダイオードPDA1の光電流IA1から赤外光成分である光電流IB1を差し引いた演算結果(IA1−IB1)が零よりも小さくなるため、検出電流I1は零になる。これに対して、第2受光ユニット82(フォトダイオードPDA2,PDB2)および第3受光ユニット83(フォトダイオードPDA3,PDB3)においては、赤外光成分の減算比率が第1受光ユニット81よりも低いので、検出電流I2,I3は零にならない。また、さらに多くの赤外光成分を含む光を発生する白熱灯が光源である場合、第2受光ユニット82の検出電流I2も零になってしまうが、赤外光成分の減算比率を最も低減してある第3受光ユニット83の検出電流I3は零にならない。一方、赤外光成分をあまり含まない光を照射する蛍光灯や白色LEDが光源である場合には、第1〜第3受光ユニットの検出電流I1〜I3はいずれも正の値となる。よって、第1〜第3受光ユニット81,82,83の検出電流I1,I2,I3の合計電流(I1+I2+I3)は、光源の種類によらずに、当該半導体装置1が配置された位置における照度を表わす。すなわち、その合計電流は、光源の種類によらずに、一定の照度に対して一定の値となる。
【0068】
第1〜第3受光ユニットの出力電流I1〜I3は、電流増幅回路80に入力され、この電流増幅回路80において合算されて増幅される。電流増幅回路80は、照度を表わす照度信号を生成する。
図4は、赤外光検出部4に関連する等価回路を示す電気回路図である。赤外光検出部4は、半導体基板2とn型埋め込み層35との間のpn接合面によって形成された第1フォトダイオード45が生成する光電流が取り出される。そのために、配線プラグ41,43,44を短絡するように、多層配線構造65内の配線が形成されている。配線プラグ42に表れる電流が出力として取り出される。したがって、第2および第3フォトダイオード46,47が生成する光電流は無効となり、第1フォトダイオード45が生成する光電流IBのみが配線プラグ42に導出される。第3フォトダイオード47は紫外光域の光を吸収して光電変換し、第2フォトダイオード46は可視光域の光を吸収して光電変換するので、第1フォトダイオード45は赤外光域の光のみを受光し、その光量に対応した光電流を生成することになる。この実施形態では、赤外光を選択的に透過させる積層光学膜6によって赤外光検出部4が覆われているので、第1フォトダイオード45が生成する光電流は、赤外光の受光光量に一層正確に対応する。
【0069】
第1フォトダイオード45の出力電流は、電流増幅回路85に入力され、この電流増幅回路85において増幅される。電流増幅回路85は、赤外光の受光光量を表す信号を生成する。
図5Aは、積層光学膜6の構造例を示す図解的な断面図であり、
図5Bは積層光学膜6の透過波長特性を示す特性図である。積層光学膜6は、たとえば、第1膜91と第2膜92とを交互に繰り返し積層した積層構造膜で構成されている。第1膜91が保護膜70に接している。第1膜91は、たとえばTiO
2膜からなっていてもよい。この場合、その膜厚は、たとえば50μm〜150μmとされることが好ましい。第2膜92は、たとえばSiO
2からなっていてもよい。この場合に、第2膜92の膜厚は、たとえば100μm〜200μmとされることが好ましい。さらに、第1および第2膜91,92の積層繰り返し回数は、たとえば、50回〜60回とされることが好ましい。このような構成により、
図5Bに示すように、赤外光域のみに通過波長帯域を有する赤外光透過フィルタとしての積層光学膜6が実現される。
【0070】
図6は、半導体装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。半導体装置(半導体チップ)1は、近接センサ102、照度センサ110、データレジスタ120、発振器(OSC)121、タイミングコントローラ122、信号出力回路123、および信号入出力回路124を含む。半導体装置1のボンディングパッド10(
図1参照)は、後述する配線基板100(
図7A〜7D参照)に配置された、駆動端子T1〜T3、信号出力端子T4、クロック入力端子T5、シリアルデータ入出力端子T6、電源端子T7、接地端子T8,T9、およびテスト端子T10にそれぞれ接続される。
【0071】
駆動端子T1〜T3には、それぞれ半導体装置1外の素子である赤外LED(Light Emitting Diode)131〜133のカソードが接続される。赤外LED131〜133のアノードは、ともに電源電圧VDD1を受ける。近接センサ102は、制御回路103、パルス発生器104、ドライバ105、赤外光センサ106、増幅器107、A/Dコンバータ108、および線形/対数変換器109を含む。赤外光センサ106は、前述の赤外光受光部4を含む。制御回路103、パルス発生器104、ドライバ105、増幅器107、A/Dコンバータ108、および線形/対数変換器109は、前述の機能素子部5(とくに機能素子部5B)に配置された機能素子を含む電子回路で構成されている。制御回路103は、データレジスタ120に格納された制御信号に従って、近接センサ102全体を制御する。データレジスタ120は、前述の機能素子部5(とくに機能素子部5A)に配置された機能素子を含む電子回路で構成されている。
【0072】
パルス発生器104は、赤外LED131〜133を駆動するためのパルス信号を発生する。ドライバ105は、駆動端子T1〜T3の各々をハイ・インピーダンス状態に維持しておき、パルス発生器104によってパルス信号が生成されると、そのパルス信号に応答して、駆動端子T1〜T3のうちの当該パルス信号に対応する駆動端子を接地させる。赤外LED131〜133のうちのいずれの1個、2個、または3個の赤外LEDを使用するかを、データレジスタ120に格納する信号によって選択することが可能となっている。また、選択した各赤外LEDに流す電流値、選択した各赤外LEDを発光させる周期は、データレジスタ120に格納する信号によって設定することが可能となっている。
【0073】
ドライバ105によって駆動端子T1〜T3のうちのいずれかの駆動端子が接地されると、その駆動端子に対応する赤外LEDに電流が流れ、その赤外LEDから赤外光が出射される。赤外LEDから出射された赤外光αは、反射物134で反射されて赤外光センサ106(赤外光検出部4)に入射する。積層光学膜6の働きにより、赤外光センサ106(赤外光検出部4)には、赤外光域の波長の光が選択的に入射する。赤外光センサ106は、入射した赤外光αの光強度に応じたレベルの光電流を発生する。この光電流は、赤外LED131〜133からの赤外光αに基づくパルス成分と、太陽からの赤外光に基づく直流成分とを含む。
【0074】
増幅器107は、
図4の電流増幅回路85に相当し、赤外光センサ106で発生した光電流のうちのパルス成分のみを増幅して、赤外光センサ106に入射した赤外光αの光強度に応じたレベルのアナログ電圧を出力する。A/Dコンバータ108は、増幅器107から出力されたアナログ電圧をデジタル信号に変換する。アナログ電圧のレベルとデジタル信号の数値は線形関係にある。線形/対数変換器109は、A/Dコンバータ108で生成されたデジタル信号の数値の対数を求め、求めた対数を示す8ビットのデジタル信号をデータレジスタ120に格納する。
【0075】
照度センサ110は、可視光センサ111、増幅器112、コンデンサ113、A/Dコンバータ114、および制御回路115を備える。可視光センサ111は、前述の可視光受光部3を含む。増幅器112は、
図3Bに示す電流増幅回路80に相当する。増幅器112、コンデンサ113、A/Dコンバータ114、および制御回路115は、機能素子部5(とくに機能素子部5B)に形成された機能素子を含む電子回路で構成されている。
【0076】
半導体装置1の周辺の可視光源135で発生した可視光βは、可視光センサ111に入射される。可視光源135は、蛍光灯、白熱電球、太陽などである。可視光センサ11は、入射した可視光βの光強度に応じたレベルの光電流を発生する。
増幅器112およびコンデンサ113は、光電流をアナログ電圧に変換する。A/Dコンバータ114は、そのアナログ電圧を16ビットのデジタル信号に変換して制御回路115に与える。制御回路115は、データレジスタ120に格納された制御信号に従って、照度センサ110全体を制御するとともに、A/Dコンバータ114で生成されたデジタル信号をデータレジスタ120に格納する。
【0077】
発振器121は、データレジスタ120に格納された制御信号に従って、クロック信号を発生する。タイミングコントローラ122は、発振器121からのクロック信号に同期して近接センサ102および照度センサ110の各々の動作タイミングを制御する。発振器121およびタイミングコントローラ122は、前述の機能素子部5(とくに機能素子部5B)に形成された機能素子を含む電子回路で構成されている。
【0078】
信号出力端子T4は、信号線を介して、半導体装置1外のMPU(Micro Control Unit)136に接続されるとともに、抵抗素子137を介して電源電圧VDD2のラインに接続される。出力回路123は、機能素子部5(とくに機能素子部5A)に配置された機能素子を含む電子回路からなる。この出力回路123は、データレジスタ120に格納されたインタラプト信号INTに従って、信号出力端子T4を接地状態またはフローティング状態にすることにより、インタラプト信号INTをMCU136に与える。インタラプト信号INTは、赤外光センサ106に入射した赤外光αの光強度が所定のしきい値を超えた場合、あるいは可視光センサ111に入射した可視光βの光強度が所定の範囲を超えた場合に活性化される。インタラプト信号INTをどのような場合に活性化させるかは、データレジスタ120に格納する信号によって設定することが可能となっている。
【0079】
クロック入力端子T5は、信号線を介してMPU136に接続されるとともに、抵抗素子139を介して電源電圧VDD2のラインに接続される。シリアルデータ入出力端子T6は、信号線を介してMPU136に接続されるとともに、抵抗素子138を介して電源電圧VDD2のラインに接続される。MCU136は、クロック入力端子T5を接地状態またはフローティング状態にすることにより、クロック信号SCLを信号入出力回路124を介してデータレジスタ120に与える。また、MCU136は、シリアルデータ入出力端子T6を接地状態またはフローティング状態にすることにより、シリアルデータ信号SDAを信号入出力回路124を介してデータレジスタ120に与える。信号入力回路124は、機能素子部5(とくに機能素子部5A)に配置された機能素子を含む電子回路からなる。
【0080】
データレジスタ120は、MCU136から与えられるクロック信号SCLに同期して動作し、MCU136から与えられるシリアルデータ信号SDAを選択されたアドレスに記憶する。また、データレジスタ120は、MCU136から与えられるクロック信号SCLに同期して動作し、選択されたアドレスから記憶データを読み出し、読み出したデータをシリアルデータ信号SDAとして信号入出力回路124およびシリアルデータ入出力端子T6を介してMCU136に与える。
【0081】
出力回路123は、データレジスタ120から出力されたインタラプト信号INTを信号出力端子T4を介してMCU136に伝達する。出力回路123は、データレジスタ120から出力されたインタラプト信号INTが「H」レベルの場合は信号出力端子T4をハイ・インピーダンス状態にし、データレジスタ120から出力されたインタラプト信号INTが「L」レベルの場合は信号出力端子T4を「L」レベルにする。
【0082】
信号入出力回路124は、MCU136からクロック入力端子T5を介して与えられたクロック信号SCLをデータレジスタ120に伝達するとともに、MCU36からシリアルデータ入出力端子T6を介して与えられたシリアルデータ信号SDAをデータレジスタ120に伝達する。
また、信号入出力回路124は、データレジスタ120から出力されたシリアルデータ信号をシリアルデータ入出力端子T6を介してMCU136に伝達する。信号入出力回路124は、データレジスタ120から出力されたデータ信号が「H」レベルの場合はシリアルデータ入出力端子T6をハイ・インピーダンス状態にし、データレジスタ20から出力されたデータ信号が「L」レベルの場合はシリアルデータ入出力端子T6を「L」レベルにする。パワー・オン・リセット(POR)回路125は、電源電圧VDD3が投入されたことに応じて、データレジスタ120内のデータをリセットする。パワー・オン・リセット(POR)回路125は、機能素子部5(とくに機能素子部5A)に配置された機能素子を含む電子回路で構成されている。
【0083】
電源端子T7には、半導体装置1を駆動するための電源電圧VDD3が印加される。また、電源端子T7には、電源電圧VDD3を安定化させるためのコンデンサ140の一方電極が接続される。コンデンサ140の他方電極は接地される。接地端子T8は、LED131〜133の電流を流出させるための端子であり、接地される。接地端子T9は、半導体装置1の内部回路102〜115,120〜125に接地電圧GNDを与えるための端子である。テスト端子T10は、テストモード時は「H」レベルにされ、通常動作時は接地される。
【0084】
図7A〜7Dは、半導体装置1(半導体チップ)を含むセンサパッケージ101の外観を示す図である。
図7Aはセンサパッケージ101の上面図であり、
図7Bはその側面図であり、
図7Cはその下面図であり、
図7Dはセンサパッケージ101の上方から見た端子T1〜T10の配置図である。センサパッケージ101は、配線基板100(プリント配線基板)を含む。配線基板100は、たとえば1辺の長さが2.8mmの正方形に形成されている。
図7Aおよび
図7Bでは、明確化のために、配線基板100に斜線を付してある。
【0085】
配線基板100の表面には、半導体装置1(半導体チップ)が搭載されている。半導体装置1上のパッド10には、複数のボンディングワイヤ117の各一端が接続されており、ボンディングワイヤ117の各他端は配線基板100上の導体パターン(図示せず)に接続されている。これにより、半導体装置1は、ボンディングワイヤ117を介して、配線基板100に電気的に接続されている。配線基板100の表面には、透明樹脂118が配置されており、透明樹脂118は、半導体装置1およびボンディングワイヤ117を封止するように配置されている。センサパッケージ101の高さは、たとえば0.9mmである。配線基板100の裏面には、端子T1〜T10が設けられている。端子T1〜T10は、配線基板100の四辺に沿って所定の順序で配置されている。端子T1〜T10は、LGA(Land grid array)の形態を有していてもよい。
【0086】
図8は、センサパッケージ101の使用方法を例示する図である。この例では、センサパッケージ101は、3つの赤外LED131〜133とともに携帯電話機150に搭載されている。携帯電話機150は、縦長の長方形状に形成されている。携帯電話機150の中央部にはタッチパネル151が設けられ、タッチパネル151の上下にそれぞれスピーカ152およびマイク153が設けられている。赤外LED131は携帯電話機150の表面の右上の角に配置され、赤外LED132は赤外LED131から図中のX方向(左方向)に所定距離だけ離れた位置に配置され、赤外LED133は赤外LED131から図中のY方向(下方向)に所定距離だけ離れた位置に配置されている。センサパッケージ101は、赤外LED131に対してX方向に隣接して配置されている。
【0087】
図9は、携帯電話機150に搭載されたセンサパッケージ101と赤外LED131との配置を図解的に示す断面図である。センサパッケージ101および赤外LED131は、プリント配線基板154の表面に隣接して配置される。センサパッケージ101の配線基板100に搭載された半導体装置1は、そのチップ内に、近接センサ102(赤外光検出部4)と照度センサ110(可視光検出部3)とを有していて、半導体装置1は配線基板100上において透明樹脂118で封止されている。プリント配線基板154の上には遮光性のスペーサ155を介して透明板156が配置されており、この透明板56によってセンサパッケージ101および赤外LED131が保護されている。
【0088】
赤外LED131から出射された赤外光αは、反射物134で反射して近接センサ102に入射する。近接センサ102は、入射した赤外光αの光強度に応じたレベルのPS測定データをデータレジスタ120に格納する。反射物134は、たとえば、携帯電話機150の使用者の耳や手であってもよい。また、可視光源135から出射した可視光βは、照度センサ110に入射する。照度センサ110は、入射した可視光βの照度を示すALS測定データをデータレジスタ120に格納する。
【0089】
携帯電話機150内には、
図10に示すように、MCU136、バックライト157、およびドライバIC158が設けられている。バックライト157は、タッチパネル151に透過光を与える。ドライバIC158は、MCU136からの制御信号に従って、バックライト157を駆動する。MCU136は、タッチパネル151からの信号に従って携帯電話機150全体を制御する。また、MCU136は、半導体装置1からのデータ信号に従って、ドライバIC158およびタッチパネル151を制御する。
【0090】
すなわち、MCU136は、半導体装置1からのデータ信号(ALS測定データ)によって携帯電話機150が使用されている場所の照度を検出し、検出した照度に応じてバックライト157の明るさを制御する。これにより、タッチパネル151に表示される画像を鮮明に表示することができる。また、消費電力の低減化を図ることができる。
また、MCU136は、携帯電話機150のタッチパネル151が携帯電話機150の使用者の耳に近付いたことを半導体装置1からのデータ信号(PS測定データ)によって検知した場合は、タッチパネル151の機能を停止させる。これにより、携帯電話機150の使用者の耳がタッチパネル151に接触したときの誤動作を防止することができる。
【0091】
また、MCU136は、赤外LED131〜133の反射光強度を示すPS測定値に基づいて、携帯電話機150の使用者のハンドジェスチャーを検出し、検出結果に従ってタッチパネル151に表示される画像のスクロール操作を行う。すなわち、携帯電話機150の使用者が携帯電話機150の表面上で
図8中のX方向に手を移動させた場合、まず赤外LED131,133が手で覆われ、次に赤外LED132が手で覆われる。この場合は
図11Aに示すように、まず赤外LED131,133の反射光強度が大きくなり、次に赤外LED132の反射光強度が大きくなる。そこで、MCU136は、赤外LED131〜133の反射光強度が
図11Aに示すような態様で変化した場合は、使用者の手が横方向に移動したと判断し、たとえば、タッチパネル51の画像を横方向にスクロールするための制御を実行する。
【0092】
また、携帯電話機150の使用者が携帯電話機150の表面上で
図8中のY方向に手を移動させた場合、まず赤外LED131,132が手で覆われ、次に赤外LED133が手で覆われる。この場合は
図11Bに示すように、まず赤外LED131,132の反射光強度が大きくなり、次に赤外LED133の反射光強度が大きくなる。そこで、MCU136は、赤外LED131〜133の反射光強度が
図11Bに示すような態様で変化した場合は、使用者の手が縦方向に移動したと判断し、たとえば、タッチパネル151の画像を縦方向にスクロールするための制御を実行する。
【0093】
図12A〜12Kは、半導体装置1の製造工程を工程順に示す断面図である。半導体基板2a(シリコン基板)に対して、n型埋め込み層15,35,60等に対応した開口を有するマスク171(レジストマスク等)が形成され、このマスク171を介して、n型不純物(たとえば砒素)が拡散されることによって、n型埋め込み層15,35,60が半導体基板2aの表層部に形成される。
【0094】
次に、
図12Bに示すように、マスク171を剥離し、p型埋め込み層16,36,55に対応する開口を有するマスク172(たとえばレジストマスク)が新たに形成される。このマスク172を介してp型不純物イオン(ホウ素イオン)が注入(インプランテーション)される。その後、
図12Cに示すように、マスク172を剥離して、半導体基板2aの表面にn型エピタキシャル成長層2bが成長させられる。これにより、最初の半導体基板2aとエピタキシャル成長層2aとが合体した半導体基板2が得られる。このエピタキシャル成長の際に半導体基板2に加わる熱によって、注入されたp型不純物イオンが活性化され、最初の半導体基板2aとエピタキシャル成長層2bとの界面付近にp型埋め込み層16,36,55が形成される。
【0095】
次いで、
図12Dに示す通り、p型ウェル17,37,53およびLOCOS層50等に対応する領域に開口を有し、n型ウェル18,38,58に対応する領域を覆うマスク173(たとえばレジストマスク)が形成される。このマスク173を介してp型不純物イオン(たとえばホウ素イオン)が注入される。その後、
図12Eに示すように、注入されたイオンを活性化するための熱処理(ドライブ)が行われることによって、p型ウェル17等がエピタキシャル層2b内に形成され、p型不純物イオンが注入されなかった領域(マスク173で覆われていた領域)がn型ウェル18等となる。その後、
図12Eに示すように、素子分離のためのLOCOS層50,62等が形成される。
【0096】
次に、
図12Fに示すように、半導体基板2の表面に熱酸化膜からなるゲート酸化膜が形成され、その上にゲート電極57,61が形成される。さらに、
図12Gに示す通り、n
+型拡散層19A,19B,39A,39B,54に対応する開口を有するマスク174が形成され、このマスク174およびゲート電極57をマスクとしてn型不純物イオン(たとえば砒素イオン)のイオン注入が行われる。さらに、
図12Hに示すように、p
+型拡散層20A,20B,40A,40B,59に対応する開口を有するマスク175(レジストマスク等)が形成されて、このマスク175およびゲート電極61をマスクとしてp型不純物イオン(ホウ素イオン)のイオン注入が行われる。
【0097】
その後、
図12Iに示すように、層間絶縁膜66〜69、配線層71〜73および配線プラグ21〜24,41〜44,63,64を含む多層配線構造65が形成される。層間絶縁膜66等をたとえばCVD(化学的気相成長)法によって形成するときに半導体基板2が同時に熱せられることによって、n
+型拡散層19A,19B,39A,39B,54およびp
+型拡散層20A,20B,40A,40B,59に対応する領域に注入された不純物イオンが活性化され、それらの拡散層が形成される。多層配線構造65の上には、たとえば、プラズマCVD法によって、保護膜70が形成される。
【0098】
次に、
図12Jに示すように、積層光学膜6を形成すべき領域以外の領域を覆うパターンでリフトオフ用のマスク176(たとえばレジストマスク)が形成される。このマスク176は、逆テーパ状の断面形状を有している。すなわち、マスク176のエッジ部は、半導体基板2から離れるほどマスク176の形成領域外へと張り出すテーパ面176aを有している。
【0099】
この状態で、
図12Kに示すように、たとえばスパッタリングによって、積層光学膜6が形成される。たとえば、積層光学膜6の総膜厚は4.1μmとされてもよい。その後、レジスト176がリフトオフされることにより、
図2に示す通り、必要領域にのみ積層光学膜6が残される。これによって、積層光学膜6は、赤外光検出部4および機能素子部5を覆うとともに、可視光検出部3を露出させる開口6a等を有するパターンに形成される。
【0100】
この実施形態の半導体装置1は、1つの半導体基板2上に、可視光検出部3と、赤外光検出部4とを有しており、赤外光検出部4が積層光学膜6によって覆われている。この構成により、可視光検出機能および赤外光検出機能を有する1チップの半導体装置1を提供できるから、それらの機能を個別のチップで実現する場合に比較して、著しい小型化を図ることができる。また、赤外光を透過させる積層光学膜6が赤外光検出部4を覆うように形成されているので、半導体装置1を透明樹脂118でモールドするときに、可視光検出部3と赤外光検出部4とで個別の樹脂モールド工程を要しない。しかも、積層光学膜6は、半導体基板1上に薄膜を形成する半導体プロセスによって形成できる。したがって、積層光学膜6を形成するプロセスの追加は容易であり、半導体製造設備を利用できるので、生産コストを圧縮できる。
【0101】
さらに、この実施形態では、半導体基板1上に、可視光検出部3の出力と赤外光検出部4の出力とに対して演算を行う機能素子部5が配置されている。すなわち、可視光検出部3および赤外光検出部4に加えて、それらの出力に対して演算を行う機能素子部5も1チップ化されている。これにより、可視光検出および赤外光検出のための構成を一層簡素化することができる。さらに、可視光検出部3または赤外光検出部4を形成するための工程の一部と機能素子部5を形成するための工程の一部とを同時に行うことができるので、製造工程を簡素化して、一層のコスト削減を図ることができる。
【0102】
さらに、この実施形態では、積層光学膜6が、赤外光検出部4および機能素子部5を覆うように形成されている。この構成により、機能素子部5への外乱光の入射を抑制できるので、外乱光に起因する機能素子部5の誤動作を低減できる。しかも、機能素子部5の上方は、金属膜である配線層71〜73で覆われている。これにより、機能素子部5への外乱光の入射をさらに抑制できるから、外乱光に起因する機能素子部5の誤動作を一層低減できる。
【0103】
また、積層光学膜6は、可視光検出部3を覆わないように形成されている。より具体的には、積層光学膜6は可視光検出部3の外周まで延びており、可視光検出部3を露出させるように形成されている。したがって、積層光学膜6は、可視光検出部3への可視光域の光の入射を阻害しない。これにより、可視光検出部3は、良好な感度で可視光を検出できる。
【0104】
また、この実施形態では、半導体基板2を見下ろす平面視において、積層光学膜6が赤外光検出部4よりも大きく形成されている。すなわち、積層光学膜6は、平面視において赤外光検出部4を完全に覆い、さらに、その外周の領域をも覆っている。これにより、赤外光検出部4への赤外光域以外の波長の光の入射を確実に抑制または防止できるから、赤外光を正確に検出できる。
【0105】
また、積層光学膜6は、パッド10、ヒューズ11およびマーク部12を露出させる切り欠き6c〜6kを有している。したがって、積層光学膜6は、パッド10を介する外部接続(ワイヤボンディング)、ヒューズ11の溶断のための加工、およびマーク部12を観察しての位置合わせをいずれも阻害しない。
また、この実施形態では、可視光検出部3が半導体基板1上の第1領域に配置されており、赤外光検出部4が半導体基板1上の前記第1領域とは異なる第2領域に配置されている。つまり、可視光検出部3および赤外光検出部4が半導体基板2上の異なる領域に形成されている。そのため、赤外光域の光を選択的に透過させる積層光学膜6で赤外光検出部を覆いながら、可視光検出部3へは可視光域の光を入射させることができる。これにより、可視光の検出を犠牲にすることなく、赤外光を検出できる。
【0106】
また、この実施形態では、赤外光検出部4が半導体基板2の中央部に配置されている。より具体的には、外乱光の影響を受けにくい機能素子部5、外部接続部(パッド10)、マーク部12、およびヒューズ11が半導体基板2の周縁領域に配置されている一方で、赤外光検出部4が半導体基板2の中央部に配置されている。これによって、赤外光検出部への外乱光の入射を抑制または防止できるから、赤外光検出部4への外乱光の入射を抑制または防止できる。具体的には、
図7A等に示すようなセンサパッケージ101を作製したときに、透明樹脂107の側方からの外乱光が赤外光検出部4に入射しにくい。これにより、誤検出を抑制できる。
【0107】
図13は、この発明の第2の実施形態に係る半導体装置200の平面図である。
図13において、前述の
図1に示された各部に相当する部分には、
図1と同一参照符号を付して説明を省略する。
半導体装置200は、赤外光検出部4を覆うように設けられた第1積層光学膜201と、可視光検出部3を覆うように設けられた第2積層光学膜202とを有している。
図13においては、第1および第2積層光学膜202は、それぞれの形成範囲を明確にするために斜線を付して表してある。第1積層光学膜201は、可視光検出部3を覆わないように形成されており、第2積層光学膜202は赤外光検出部4を覆わないように形成されている。
【0108】
第1積層光学膜201は、より具体的には、赤外光検出部4を完全に覆い、この赤外光検出部4の外周領域にまではみ出して形成されていて、赤外光検出部4への赤外光域以外の波長の光の入射を抑制または防止するように構成されている。第1積層光学膜201は、可視光検出部3の外周まで延びて形成されていて、可視光検出部3を露出させるように形成されている。
【0109】
一方、第2積層光学膜202は、赤外光検出部4を露出させる開口202aを有し、可視光検出部3および機能素子部5を覆うとともに、第1積層光学膜201よりも広い面積にわたって半導体基板2上に設けられている。第2積層光学膜202は、パッド10、ヒューズ11およびマーク部12の外周まで延びて形成されていて、これらのパッド10、ヒューズ11およびマーク部12を露出させる開口202bおよび切り欠き202c〜202kを有している。
【0110】
図14は、
図13の切断面線XIV−XIVにおける模式的な断面図である。
図14において、
図2に示された各部と同等の部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
第1積層光学膜201は、赤外光検出部4が形成された第1領域を覆い、さらに、その外周部まで延びて形成されていて、可視光検出部3との素子分離領域に形成されたLOCOS層50の上方に外周縁が達している。
第1積層光学膜201は、LOCOS層50の上部に配置された配線層71−73を覆っている。第2積層光学膜202は、可視光検出部3を覆い、さらに機能素子部5を覆っており、その外周縁は、可視光検出部4との素子分離領域に形成されたLOCOS層50の上方に達している。
【0111】
保護膜70は、多層配線構造65の表面全域を覆っていて、可視光検出部3と第2積層光学膜202との間、赤外光検出部4と第1積層光学膜201との間、および機能素子部5と第2積層光学膜202との間に延びて形成されている。機能素子部5Bのほぼ全域の上方に第3配線層73が形成されていること、および機能素子部5A(
図13参照)において第3配線層73が所定の配線パターンに形成されていて、第3配線層73の開口部には第1配線層71または第2配線層72が位置するように配線パターンが設計されていることなどは、第1の実施形態の場合と同様である。
【0112】
赤外光検出部4を覆うように形成された第1積層光学膜201は、第1の実施形態における積層光学膜6と同様な光学特性を有するように設計されていてもよい。すなわち、第1積層光学膜201は、
図5Aに示すような膜構造を有し、
図5Bに示すような透過波長特性を有していてもよい。
図15Aは第2積層光学膜202の図解的な断面構造例を示す断面図であり、
図15Bは第2積層光学膜の透過波長特性を示す特性図である。第2積層光学膜202は、たとえば、第1膜203および第2膜204を所定の積層繰り返し数だけ交互に積層して構成されている。第1膜203が保護膜70に接している。第1膜203はTiO
2膜であってもよく、第2膜204はSiO
2膜であってもよい。第1膜203の膜厚は、たとえば10μm〜30μmであってもよく、第2膜204の膜厚はたとえば50μm〜60μmであってもよい。第1膜203および第2膜204の積層繰り返し回数は、たとえば35回〜45回であってもよい。第1膜203および第2膜204の材料および膜厚ならびに積層繰り返し回数を適切に設定することによって、第2積層光学膜202は、可視光域(視感度域)に属する波長の光を選択的に通過させる視感度フィルタとしての光学特性を有している。したがって、このような第2積層光学膜202によって覆われた可視光検出部3には、可視光域の波長の光のみが到達することになる。
【0113】
前述の第1の実施形態では、受光面積の異なる6個のフォトダイオードによって可視光検出部3が構成されている(
図1参照)。これは、可視光検出部3に赤外光域の光が到達するため、赤外光域の光電流をキャンセルするためである。そして、赤外光成分の割合が光源の種類によって異なるため、3対のフォトダイオードを用いて第1〜第3受光ユニット81,82,83を構成している。これに対して、第2の実施形態では、赤外光域に属する波長の光が第2積層光学フィルタ202によって遮断されるので、可視光検出部3の構成を単純にすることができる。具体的には、可視光検出部3は、赤外光補償用のフォトダイオードを備えている必要がなく、さらに具体的には、必要な受光面積を有するただ1つのフォトダイオードを備えていてもよい。
【0114】
図16A〜16Eは、この第2の実施形態に係る半導体装置200の製造工程を説明するための断面図である。
図16A〜16Eには、第1および第2積層光学膜201,202の製造工程を示す。これ以前の工程は、第1の実施形態の場合とほぼ同様であり、
図12A〜
図12Iに示す工程によって、多層配線構造65上に保護膜70が形成された状態となる。
【0115】
この状態から、
図16Aに示すように、第1積層光学膜201の形成領域に開口を有するパターンのマスク210(たとえばレジストマスク)が形成される。すなわち、マスク210は、第1積層光学膜201を形成すべきでない領域を覆う。マスク210は、開口縁部付近の断面形状が逆テーパ状に形成されたマスクである。このマスク210が形成された状態で、
図16Bに示すように、たとえばスパッタリングによって、第1積層光学膜201が全面に形成される。その後、マスク210をリフトオフすることにより、マスク210とともにその上に形成された第1積層光学膜201が除去される。これによって、
図16Cに示すように、赤外光検出部4およびその外周の領域のみを覆うパターンの第1積層光学膜201が保護膜70上に形成された状態となる。
【0116】
次に、
図16Dに示すように、第2積層光学膜202を形成すべき領域に開口を有するマスク211(たとえばレジストマスク)が形成される。マスク211は、開口および外周縁部の断面形状が逆テーパ形状のマスクである。このマスク211は、第1積層光学膜201を覆い、さらにパッド10、ヒューズ11およびマーク部12を覆うパターンに形成される。すなわち、マスク211は、第2積層光学膜202を形成すべきでない領域を覆う。
【0117】
次に、
図16Eに示すように、たとえばスパッタリングによって、全面に第2積層光学膜202が形成される。その後、マスク211をその上に形成された第2積層光学膜202とともにリフトオフすることによって、
図14に示すように、所定の領域に形成された第2積層光学膜202が得られる。こうして、保護膜70上に第1および第2積層光学膜201,202を有する半導体装置200を得ることができる。
【0118】
このように、この第2の実施形態に係る半導体装置200は、1つの半導体基板2上に、可視光検出部3と、赤外光検出部4と、赤外光検出部4を覆うように設けられ、赤外光を透過させる第1積層光学膜201と、可視光検出部3を覆うように設けられ、可視光を透過させる第2積層光学膜202とを含む。この構成により、第1の実施形態と同様に、可視光検出機能および赤外光検出機能を有する1チップの半導体装置200を提供できる。また、赤外光を透過させる第1積層光学膜201が赤外光検出部4を覆うように形成されており、可視光を透過させる第2積層光学膜202が可視光検出部3を覆うように形成されているので、
図7A等に示されたセンサパッケージ101に当該半導体装置202を適用して透明樹脂118でモールドする場合であっても、可視光検出部3と赤外光検出部4とで個別の樹脂モールド工程を要しない。さらに、第1および第2積層光学膜201,202は、半導体基板2上に薄膜を形成する半導体プロセスによって形成できる。したがって、それらの積層光学膜201,202を形成するプロセスの追加は容易であり、半導体製造設備を利用できるので、生産コストを圧縮できる。また、赤外光検出部4だけでなく可視光検出部3にも積層光学膜202を設けてあるので、可視光検出部3に可視光域外の波長の光が入射することを抑制または防止できる。これにより、可視光検出部3の検出精度を向上できる。
【0119】
さらに、この実施形態では、半導体基板2上に機能素子部5が配置されており、第2積層光学膜202が機能素子部5をも覆っている。この構成により、機能素子部5への外乱光の入射を抑制できるので、外乱光に起因する機能素子部の誤動作を低減できる。半導体(とくにシリコン)は、赤外光域に強い感度特性を有している。そこで、第2積層光学膜202によって赤外光をカットすることにより、機能素子部5の誤動作を確実に低減できる。
【0120】
また、第1積層光学膜201が可視光検出部3を覆わないように形成されており、第2積層光学膜202が赤外光検出部4を覆わないように形成されているから、可視光検出部3への可視光域の波長の光の入射が阻害されず、また、赤外光検出部4への赤外光域の波長の光の入射が阻害されない。これにより、可視光検出部3および赤外光検出部4は、良好な感度で可視光および赤外光をそれぞれ検出できる。
【0121】
また、第1の実施形態の場合と同様に、半導体基板2を見下ろす平面視において、第1積層光学膜201が赤外光検出部4よりも大きく形成されている。すなわち、第1積層光学膜201は、平面視において赤外光検出部4を完全に覆い、さらに、その外周の領域をも覆っている。これにより、赤外光検出部4への赤外光域以外の波長の光の入射を確実に抑制または防止できるから、赤外光を正確に検出できる。第1積層光学膜201は、可視光検出部3の外周まで延びており、可視光検出部3を露出させるように形成されているから、可視光検出部3への可視光域の波長の光の入射を保証できる。
【0122】
また、この実施形態では、第2積層光学膜202が、第1積層光学膜201よりも、半導体基板2上において大きな面積に渡って形成されている。この構成により、半導体基板2内への赤外光の入射を効果的に低減できる。前述のとおり、半導体(とくにシリコン)は、赤外光に対する感度が高いので、赤外光域の波長の光を遮断する第2積層光学膜202がより広い面積に渡って形成されていることによって、半導体基板3内に形成された機能素子の誤動作を効果的に抑制できる。
【0123】
また、第2積層光学膜202は、パッド10、ヒューズ11およびマーク部12を露出させる切り欠き202c〜202kを有している。したがって、第2積層光学膜202は、パッド10を介する外部接続(ワイヤボンディング)、ヒューズ11の溶断のための加工、およびマーク部12を観察しての位置合わせをいずれも阻害しない。
その他、この第2の実施形態においても、第1の実施形態に関連して説明した効果を同様に達成できる。
【0124】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば
、前述の実施形態では、積層光学膜6,201,202をスパッタリング(光学スパッタ)によって形成する例を示したが、蒸着法によってこれらの積層光学膜を形成してもよい。ただし、スパッタリングによる方が、膜質が優れている。
【0125】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この明細書および図面から抽出され得る特徴を以下に記す。
1.半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、可視光を検出する可視光検出部と、
前記半導体基板上に設けられ、赤外光を検出する赤外光検出部と、
前記赤外光検出部を覆うように設けられ、赤外光を透過させる積層光学膜とを含む、
半導体装置。
2.半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、可視光を検出する可視光検出部と、
前記半導体基板上に設けられ、赤外光を検出する赤外光検出部と、
前記半導体基板上に設けられ、前記可視光検出部の出力と前記赤外光検出部の出力とに対して演算を行う機能素子部と、
前記赤外光検出部を覆うように設けられ、赤外光を透過させる積層光学膜とを含む、
半導体装置。
3.前記積層光学膜が、前記赤外光検出部および前記機能素子部を覆うように形成されている、項2に記載の半導体装置。
4.前記機能素子部上に形成された金属膜をさらに含む、項2または3に記載の半導体装置。
5.前記積層光学膜が、前記可視光検出部が露出するように形成されている、項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
6.前記赤外光検出部と前記積層光学膜とに間に設けられた保護膜をさらに含む、項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
7.前記赤外光検出部と前記積層光学膜とに間に設けられ、前記可視光検出部上まで延びて形成された保護膜をさらに含む、項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
8.前記赤外光検出部と前記積層光学膜とに間に設けられ、前記可視光検出部上および前記機能素子部上まで延びて形成された保護膜をさらに含む、項2に係る項3〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
9.前記半導体基板を見下ろす平面視において、前記積層光学膜が前記赤外光検出部よりも大きい、項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置。
10.前記積層光学膜が前記可視光検出部の外周まで延びており、前記可視光検出部を露出させるように形成されている、項1〜9のいずれか一項に記載の半導体装置。
11.前記半導体基板上に設けられ、前記半導体装置の電気的特性を調整するためのヒューズをさらに含む、項1〜10のいずれか一項に記載の半導体装置。
12.前記積層光学膜が前記ヒューズの外周まで延び、前記ヒューズを露出させるように形成されている、項11に記載の半導体装置。
13.前記半導体基板上に設けられ、当該半導体装置を外部に電気的に接続するためのパッドをさらに含む、項1〜12のいずれか一項に記載の半導体装置。
14.前記積層光学膜が前記パッドの外周まで延び、前記パッドを露出させるように形成されている、項13に記載の半導体装置。
15.前記半導体基板上に設けられ、基準位置を示すマーク部をさらに含む、項1〜14のいずれか一項に記載の半導体装置。
16.前記積層光学膜が前記マーク部の外周まで延び、前記マーク部を露出させるように形成されている、項15に記載の半導体装置。
17.半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、可視光を検出する可視光検出部と、
前記半導体基板上に設けられ、赤外光を検出する赤外光検出部と、
前記赤外光検出部を覆うように設けられ、赤外光を透過させる第1積層光学膜と、
前記可視光検出部を覆うように設けられ、可視光を透過させる第2積層光学膜と
を含む、
半導体装置。
18.半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、可視光を検出する可視光検出部と、
前記半導体基板上に設けられ、赤外光を検出する赤外光検出部と、
前記半導体基板上に設けられ、前記可視光検出部の出力と前記赤外光検出部の出力とに対して演算を行う機能素子部と、
前記赤外光検出部を覆うように設けられ、赤外光を透過させる第1積層光学膜と、
前記可視光検出部を覆うように設けられ、可視光を透過させる第2積層光学膜と
を含む、
半導体装置。
19.前記第2積層光学膜が、前記可視光検出部および前記機能素子部を覆うように形成されている、項18に記載の半導体装置。
20.前記機能素子部上に形成された金属膜をさらに含む、項18または19に記載の半導体装置。
21.前記第1積層光学膜が前記可視光検出部が露出するように形成されており、前記第2積層光学膜が前記赤外光検出部が露出するように形成されている、項17〜20のいずれか一項に記載の半導体装置。
22.前記赤外光検出部と前記第1積層光学膜とに間に設けられた保護膜をさらに含む、項17〜21のいずれか一項に記載の半導体装置。
23.前記赤外光検出部と前記第2積層光学膜とに間に設けられた保護膜を含む、項17〜22のいずれか一項に記載の半導体装置。
24.前記保護膜が前記機能素子部上まで延びて形成されている、項18に係る項22または23に記載の半導体装置。
25.前記半導体基板を見下ろす平面視において、前記第1積層光学膜が前記赤外光検出部よりも大きい、項17〜24のいずれか一項に記載の半導体装置。
26.前記第2積層光学膜が、前記第1積層光学膜よりも前記半導体基板上において大きな面積に渡って形成されている、項17〜25のいずれか一項に記載の半導体装置。
27.前記第1積層光学膜が前記可視光検出部の外周まで延びており、前記可視光検出部を露出させるように形成されている、項17〜26のいずれか一項に記載の半導体装置。
28.前記半導体基板上に設けられ、前記半導体装置の電気的特性を調整するためのヒューズをさらに含む、項17〜27のいずれか一項に記載の半導体装置。
29.前記第2積層光学膜が前記ヒューズの外周まで延び、前記ヒューズを露出させるように形成されている、項28に記載の半導体装置。
30.前記半導体基板上に設けられ、当該半導体装置を外部に電気的に接続するためのパッドをさらに含む、項17〜29のいずれか一項に記載の半導体装置。
31.前記第2積層光学膜が前記パッドの外周まで延び、前記パッドを露出させるように形成されている、項30に記載の半導体装置。
32.前記半導体基板上に設けられ、基準位置を示すマーク部をさらに含む、項17〜31のいずれか一項に記載の半導体装置。
33.前記第2積層光学膜が前記マーク部の外周まで延び、前記マーク部を露出させるように形成されている、項32に記載の半導体装置。
34.前記可視光検出部が前記半導体基板上の第1領域に配置されており、
前記赤外光検出部が前記半導体基板上の前記第1領域とは異なる第2領域に配置されている、項1〜33のいずれか一項に記載の半導体装置。
35.前記赤外光検出部が前記半導体基板の中央部に配置されている、項1〜34のいずれか一項に記載の半導体装置。
36.前記半導体基板の中央部に前記赤外光検出部が配置されており、前記半導体基板において前記中央部の外側の周縁領域に機能素子部、外部接続部、マーク部、ヒューズのうちの少なくとも一つが配置されている、項1〜34のいずれか一項に記載の半導体装置。