(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所との間隔から前記レーザ照射部から次に照射されるレーザ光の強さを予想し、レーザ光の焦点の位置を調整することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
前記制御部は、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所との間隔から前記レーザ照射部から次に照射されるレーザ光の強さを予想し、該レーザ照射部から照射されるレーザ光の出力を調整することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のレーザ加工装置。
前記制御部は、前記記憶部に記憶された複数の加工予定箇所の位置情報に基づいて、該加工予定箇所を、前記移動部による移動距離に応じて複数のグループに分け、異なるグループ間で移動が行われる際に、レーザ光の焦点の位置を調整する、または、前記レーザ照射部から照射されるレーザ光の出力を調整することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
前記制御部は、同じグループ内で移動が行われる際に、前記移動部による移動距離に応じて、レーザ光の焦点の位置を調整する、または、前記レーザ照射部から照射されるレーザ光の出力を調整することを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
前記制御部は、異なるグループ間での移動が行われる際にのみ、レーザ光の焦点の位置を調整する、または、前記レーザ照射部から照射されるレーザ光の出力を調整することを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所との間隔から次に照射されるレーザ光の強さを予想し、次に照射されるレーザ光の出力を調整することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば加工穴などを不等間隔で形成する場合には、加工間隔が一定ではないので、レーザ照射部から照射されるレーザ光の時間的間隔も一定ではなくなる。このため、連続発振するレーザ光をQスイッチでパルス出力とする方法でのレーザ照射部から照射されるレーザ光の出力やピークパワーが変化してしまい、加工が均一にならない問題がある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、レーザ照射部から照射されるレーザ光の時間的間隔を極力一定にすることで、加工を均一にすることができるレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるレーザ加工装置は、
被処理体に不等間隔の加工を行うためのレーザ加工装置であって、
前記被処理体を保持する保持部と、
CWレーザからなる
レーザ光を遮断することでパルス状のレーザ光を形成するスイッチ部とを有するレーザ照射部と、
前記保持部および前記レーザ照射部のうちの少なくとも一方を、他方に対して相対的に移動させる移動部と、
複数の加工予定箇所の位置情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された加工予定箇所の位置情報から次回加工する加工予定箇所を適宜選択する選択部と、
前記選択部によって選択された加工予定箇所を加工するように移動部を制御する制御部と
を有し、
前記選択部は、前々回加工した加工箇所と前回加工した加工箇所の間の間隔と、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所の間の間隔との差が最小となるように、前記記憶部に記憶された加工予定箇所の位置情報から次回加工する加工予定箇所を選択することを備えている。
【0010】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記制御部は、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所との間隔から前記レーザ照射部から次に照射されるレーザ光の強さを予想し、レーザ光の焦点の位置を調整してもよい。
【0011】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記制御部は、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所との間隔から前記レーザ照射部から次に照射されるレーザ光の強さを予想し、該レーザ照射部から照射されるレーザ光の出力を調整してもよい。
【0012】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された複数の加工予定箇所の位置情報に基づいて、該加工予定箇所を、前記移動部による移動距離に応じて複数のグループに分け、異なるグループ間で移動が行われる際に、レーザ光の焦点の位置を調整する、または、前記レーザ照射部から照射されるレーザ光の出力を調整してもよい。
【0013】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記制御部は、同じグループ内で移動が行われる際に、前記移動部による移動距離に応じて、レーザ光の焦点の位置を調整する、または、前記レーザ照射部から照射されるレーザ光の出力を調整してもよい。
【0014】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記制御部は、異なるグループ間での移動が行われる際にのみ、レーザ光の焦点の位置を調整する、または、前記レーザ照射部から照射されるレーザ光の出力を調整してもよい。
【0015】
本発明によるレーザ加工装置は、
前々回加工した加工箇所
と前回加工した加工箇所の間の間隔と、前回加工した加工箇所
と次回加工する加工予定箇所の間の間隔
との差が最小となるように、前記記憶部に記憶された加工予定箇所の位置情報から次回加工する加工予定箇所を選択するか、または、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所との間隔が最小になるように、該記憶部に記憶された加工予定箇所の位置情報から次回加工する加工予定箇所を選択するかを、決定するためのモード切換部をさらに備えてもよい。
【0016】
本発明によるレーザ加工方法は、
被処理体に不等間隔の加工を行うためのレーザ加工方法であって、
CWレーザからなるレーザ光を遮断することでパルス状のレーザ光を形成し、当該レーザ光を照射することで前記被処理体を加工する工程と、
前々回加工した加工箇所
と前回加工した加工箇所の間の間隔と、前回加工した加工箇所
と次回加工する加工予定箇所の間との間隔との差が最小になるように、次回加工する加工予定箇所を選択する工程と、
選択された加工予定箇所にレーザ光を照射する工程と、
を備えている。
【0017】
本発明によるレーザ加工方法において、
前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所との間隔から次に照射されるレーザ光の強さを予想し、レーザ光の焦点の位置を調整してもよい。
【0018】
本発明によるレーザ加工方法において、
前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所との間隔から次に照射されるレーザ光の強さを予想し、次に照射されるレーザ光の出力を調整してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次回加工する加工予定箇所が適宜選択されて加工される。このため、レーザ照射部から照射されるレーザ光の時間的間隔を極力一定にすることができ、ひいては、加工を均一に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第1の実施の形態
以下、本発明に係るレーザ加工装置およびレーザ加工方法の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、
図1乃至
図8は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0022】
本実施の形態によるレーザ加工装置は例えば樹脂成形に用いられる金型(被処理体)60を加工して、複数の加工穴を不等間隔に形成するために用いられる。
【0023】
図1に示すように、レーザ加工装置は、金型60を保持する保持部20と、金型60に対してレーザ光Lをパルス状で照射するレーザ照射部10と、レーザ照射部10を保持部20に対して相対的に移動させる移動部30と、複数の加工予定箇所60a(
図2参照)の位置情報を記憶する記憶部52と、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aを適宜選択する選択部51と、選択部51によって選択された加工予定箇所60aを加工するよう移動部30を制御する制御部50と、を備えている。なお、本実施の形態の選択部51は、これから加工する加工箇所(次回加工予定箇所)と今回加工し終わった加工箇所(前回加工した加工箇所)との間隔が、前々回加工した加工箇所と前回加工した加工箇所の間の間隔と類似するよう、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aを選択するように構成されている。また、制御部50には、上述した記憶部52と選択部51の各々が接続されており、選択部51は制御部50を介して記憶部52に接続されている。
【0024】
なお、間隔が類似している加工予定箇所60aを選択する際には、遺伝的アルゴリズムや人工知能、計画法、ファジイ制御といった方法を用いることができる。また、類似した間隔を選ぶ際には、前々回加工した加工箇所と前回加工した加工箇所の間の間隔と、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aとの間隔との差が最小になるように、次回加工する加工予定箇所60aを選択する方法を例えば用いることができる。また、記憶部52は、加工予定箇所60aの間隔と照射されるレーザ光Lの強度との関係を予めデータベース化して記憶していてもよい。
【0025】
なお、上述のように、前々回加工した加工箇所と前回加工した加工箇所の間の間隔と、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aとの間隔との差が最小になるようにすることは、前々回加工した加工箇所から前回加工した加工箇所までの移動にかかる時間と、前回加工した加工箇所から次回加工する加工予定箇所60aまでの移動にかかる時間との差が最小になるようにしてやることと同じである。
【0026】
また、
図1に示すように、レーザ照射部10は、CWレーザからなるレーザ光Lを発振するレーザ発振部11と、当該レーザ発振部11から照射されるレーザ光Lを遮断することでパルス状のレーザ光Lを形成するQスイッチなどからなるスイッチ部12と、を有している。
【0027】
また、
図1に示すように、移動部30は、レーザ照射部10のレーザ発振部11を水平方向に移動させる水平方向移動部31と、当該レーザ発振部11を上下方向に移動させる上下方向移動部32と、を有している。
【0028】
ところで、本実施の形態では、レーザ発振部11が水平方向および上下方向に移動される態様を用いて説明するが、これに限られることはない。例えば、保持部20が水平方向に移動されレーザ発振部11が上下方向に移動される態様であってもよいし、保持部20が上下方向に移動されレーザ発振部11が水平方向に移動される態様であってもよい。また、保持部20が水平方向および上下方向に移動される態様であってもよい。
【0029】
図1に示す制御部50は、加工予定箇所60aの位置情報に基づく間隔、より具体的には前回加工した加工箇所(記憶部52に「前回の加工予定箇所60a」として記憶されている)と次回加工する加工予定箇所60aの間の間隔によって、レーザ照射部10から次に照射されるレーザ光Lの強さを予想し、レーザ光Lの焦点の位置を調整することで、加工穴(加工箇所)の深さを均一にするように構成されている。なお、レーザ光Lの焦点の位置を調整するためには、金型60上に形成される焦点の位置を調整すればよく、本実施の形態では、上下方向移動部32によってレーザ発振部11の上下位置を調整することでレーザ光Lの焦点の位置を調整する。
【0030】
また、制御部50は、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aの間の間隔からレーザ照射部10から次に照射されるレーザ光Lの強さを予想し、レーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力を調整するようにも構成されている。なお、レーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力を調整するには、レーザ発振部11に供給される電流の大きさを調整したり、スイッチ部12の開きの大きさを調整したりすればよい。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0032】
まず、保持部20によって金型60が保持される(保持工程)。
【0033】
次に、制御部50によって、選択部51によって選択された加工予定箇所60aを加工するよう移動部30が制御され、この結果、移動部30によってレーザ照射部10が移動される(移動工程)。
【0034】
次に、レーザ照射部10からレーザ光Lが照射されて金型60が加工され、加工穴が形成される(加工工程)(後述する前々回加工した加工箇所に対応する。)。
【0035】
次に、制御部50によって、選択部51によって選択された別の加工予定箇所60aを加工するよう移動部30が制御され、この結果、移動部30によってレーザ照射部10が移動される(移動工程)。なおこのとき、加工予定箇所60aとしては、例えば、記憶部52に記憶されている複数の加工予定箇所60aのうち、最初に加工した加工予定箇所60aとの距離が最小になるものを選択することができる。
【0036】
次に、レーザ照射部10からレーザ光Lが照射されて金型60が加工され、加工穴が形成される(加工工程)(後述する前回加工した加工箇所に対応する。)。
【0037】
次に、選択部51によって、前回加工した加工箇所との間隔が、前々回加工した加工箇所と前回加工した加工箇所の間の間隔と類似するよう、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aが選択される(選択工程)。
【0038】
次に、制御部50によって、選択部51によって選択された加工予定箇所60aを加工するよう移動部30が制御され、この結果、移動部30によってレーザ照射部10が移動される(移動工程)。
【0039】
次に、レーザ照射部10からレーザ光Lが照射されて金型60が加工され、加工穴が形成される(加工工程)。
【0040】
後は、金型60に予定された加工穴が形成されるまで、上述した選択工程以降の工程が順次繰り返される。
【0041】
本実施の形態によれば、上述のように、前回加工した加工箇所との間隔が、前々回加工した加工箇所と前回加工した加工箇所の間の間隔と類似するよう、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aが選択されて順次加工される。具体的には、
図2において、レーザ照射部10が、間隔が不均一なA方向に移動されるのではなく間隔が均一なB方向に移動されて、加工予定箇所60aが順次加工される。
【0042】
このため、レーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの時間的間隔を極力一定にすることができ、金型60に形成される加工穴(加工箇所)の深さを均一にすることができる。
【0043】
すなわち、例えば
図2においてA方向に沿ってレーザ照射部10を(1)〜(9)に順に動かすと、レーザ照射部10からレーザ光Lが照射されるタイミングが
図3(a)のようになり、そのタイミングで照射されるレーザ光Lの波形が
図3(b)にようになる。この
図3(b)から分かるように、(6)、(7)および(9)で大きな波形のレーザ光L(ジャイアントパルス)が照射されることとなり、(6)、(7)および(9)で金型60に形成される加工穴の深さが深くなってしまって不均一になる(すなわち、(6)、(7)および(9)で実際に照射されるレーザ光の波形(実線で表示)は、(1)〜(5)および(8)で照射される波形((6)、(7)および(9)で点線で表示)より大きくなっている。)。これに対して、本実施の形態では、レーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの時間的間隔を極力一定にすることで、このように加工穴の深さが不均一になることを防止することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aとの間の間隔からレーザ照射部10から次に照射されるレーザ光Lの強さが予想され、レーザ光Lの焦点の位置が調整される(
図4参照)。
【0045】
より具体的には、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aとの間の間隔から次回に照射されるレーザ光Lの波形が大きくなることが予測された場合には、レーザ発振部11が上下方向移動部32によって移動されて焦点が金型60の表面からずらされることとなる(金型60の表面におけるスポット径が大きくなる)(
図4の右側のレーザ光L、参照)。この結果、例えば
図2のA方向に移動させる際であって、前々回加工した加工箇所と前回加工した加工箇所の間の間隔と、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aの間の間隔とが大きく異なる場合であっても、加工穴(加工箇所)の深さを均一にすることができる。
【0046】
さらに、本実施の形態では、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aとの間の間隔からレーザ照射部10から次に照射されるレーザ光Lの強さが予想された場合に、レーザ発振部11に供給される電流の大きさを調整したり、スイッチ部12の開きの大きさを調整したりすることで、レーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力が調整される。このため、上述のように焦点を金型60の表面からずらすことに加えて、例えば微調整をすることも可能となり、加工穴(加工箇所)の深さをより確実に均一にすることができる。
【0047】
ところで、本実施の形態では、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aとの間の間隔からレーザ照射部10から次に照射されるレーザ光Lの強さが予想され、レーザ光Lの焦点の位置が調整されることと、レーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力が調整されることの両方を行う態様と用いて説明した。しかしながら、これに限られることはなく、その一方のみを用いて、前々回加工した加工箇所と前回加工した加工箇所の間の間隔と、前回加工した加工箇所と次回加工する加工予定箇所60aの間の間隔が大きく異なる場合に、加工穴(加工箇所)の深さを均一にするようにしてもよい。
【0048】
(実施例)
次に、
図5乃至
図8により、前々回加工した加工穴と前回加工した加工穴の間の間隔と、前回加工した加工穴と次回加工する加工予定箇所60aの間隔との差が最小になるように、次回加工する加工予定箇所60aを選択する態様について、様々なパターンからなる実施例を示す。
【0049】
CWレーザからなるレーザ光LをQスイッチなどのスイッチ部12によって遮断することでパルス状のレーザ光Lを形成する場合において、レーザ光Lを照射するまでにレーザ媒質内でエネルギーが飽和する時間がある場合には、レーザ光Lの出力が最大出力となり、照射されたレーザ光Lはいわゆるジャイアントパルスとなる。
【0050】
すなわち、連続して形成される加工穴の間隔が、所定の距離(所定の移動時間)以上となると、レーザ媒質内でエネルギーが飽和し、ジャイアントパルスが発生する。他方、連続して形成される加工穴の間隔が所定の距離よりも小さい場合には、スイッチ部12のON/OFFを切り換える際の周波数に応じた出力でレーザ光Lが照射される。ところで、レーザ媒質内でエネルギーが飽和するのにかかる時間は、スイッチ部12のON/OFFを切り換える際の周波数に依存しているので、当該周波数を変えると、上述した所定の距離(所定の移動時間)が変わることとなる。
【0051】
なお、レーザ媒質内でエネルギーが飽和する時間より短い時間でレーザ光Lが照射される場合には、周波数に応じた出力でレーザ光Lが照射されることとなるが、周波数によるレーザ光Lの出力の差は僅少である。このため、ジャイアントパルスでないレーザ光Lによって形成される加工穴の大きさは、概ね同一になっている。
【0052】
従って、従来技術のように加工予定箇所60aの配置関係を考慮しない場合には、連続して形成される加工穴の間隔が所定の距離(所定の移動時間)以上となる箇所が多くなるため、
図10に示すようになり、ジャイアントパルスによって大きな加工穴が形成される箇所が多くなってしまう(
図5−
図7および
図9−
図10において丸印「○」で示した箇所は、何ら調整を行わなければ、ジャイアントパルスからなるレーザ光Lによって加工される加工予定箇所60aを示している。)。また、連続して形成される加工穴の間隔の様々なものとなることから、ジャイアントパルスによる強度を調整することも困難である。
【0053】
なお、以下に示す実施例1−4に示す態様および
図10に示す態様では、移動距離が「1」または「2」の場合にはレーザ光Lはジャイアントパルスとならないが、移動距離が「3」、「4」および「5」のときにはレーザ光Lがジャイアントパルスになるものとして説明する(なお、「1」〜「5」の数値は、
図10のみで示している。)。
【0054】
(実施例1)
図5に示す態様では、最初は間隔の短い加工予定箇所60a(移動距離が「1」または「2」で済む加工予定箇所60a)から順に加工しているが、間隔の長い加工予定箇所60a(移動距離が「3」の加工予定箇所60a)を加工し始めると、その間隔を維持するように、適宜、加工予定箇所60aを選択している。
図5に示す態様では、16個目の加工穴が形成されると、17個目以降の加工穴を形成する際には、同様の間隔(同様の移動時間)で加工穴を連続して形成するように加工予定箇所60aが選択される。
【0055】
このような場合には、ジャイアントパルスによって大きな加工穴が形成される箇所が多くなるように思われるが、上述のように、レーザ光Lの焦点を金型60の表面からずらしたり(焦点位置をずらすように調整したり)、レーザ発振部11に供給される電流の大きさを調整したり、スイッチ部12の開きの大きさを調整したりすることで、加工穴の深さを均一にすることができる。そして、本実施例のように、同様の間隔(同様の移動時間)で加工穴を形成することができる場合には、一度調整してしまうとその後に加工穴を形成する場合に再度調整する必要がないため有益である。
【0056】
すなわち、前々回加工した加工穴と前回加工した加工穴の間の間隔と、前回加工した加工穴と次回加工する加工予定箇所60aの間隔との差が、一定の閾値以上となれば、レーザ光Lの焦点の位置が調整される、または、レーザ照射部10に供給される電流の大きさが調整されたりスイッチ部12の開きの大きさが調整されたりするなどしてレーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力が調整される。他方、前々回加工した加工穴と前回加工した加工穴の間の間隔と、前回加工した加工穴と次回加工する加工予定箇所60aの間隔との差が、一定の閾値未満となれば、上述のような調整は行われない。このため、本実施例のように、同様の間隔(同様の移動時間)で加工穴を連続して形成する場合には、調整を行わなければならない回数が少なくなり、調整に必要な手間を少なくすることができる。
【0057】
(実施例2)
また、必ずしも直交する二方向(
図6の紙面の上下方向と左右方向)に移動する必要はなく、
図6に示すように斜め(上下方向と左右方向の間の方向)に移動するようにしてもよい。このように斜めに移動することで、柔軟に、同様の間隔(同様の移動時間)で加工穴を連続して形成することができる。この場合にも、実施例1と同様に、レーザ光Lの焦点を金型60の表面からずらしたり(焦点位置をずらすように調整したり)、レーザ発振部11に供給される電流の大きさを調整したり、スイッチ部12の開きの大きさを調整したりすることで、加工穴の深さを均一にすることができる。なお、本実施例でも、同様の間隔(同様の移動時間)で加工穴を連続して形成するため、上述のような調整を行わなければならない回数が少なくなり、調整に必要な手間を少なくすることができる。
【0058】
(実施例3)
また、必ずしもレーザ光Lによる加工は端部から始まる必要はなく、例えば
図7に示すように、左端の加工予定箇所60aから一列右の加工予定箇所60aからレーザ光Lによる加工が開始されてもよい。このようにすることで、後に行われる(
図7では11番目以降に行われる)レーザ光Lによる加工において、同様の間隔(同様の移動時間)で加工穴を形成することができるようになり、同様の間隔(同様の移動時間)で形成される加工穴の数を増やすことができる。この場合にも、実施例1および実施例2と同様に、レーザ光Lの焦点を金型60の表面からずらしたり(焦点位置をずらすように調整したり)、レーザ発振部11に供給される電流の大きさを調整したり、スイッチ部12の開きの大きさを調整したりすることで、加工穴の深さを均一にすることができる。なお、本実施例でも、同様の間隔(同様の移動時間)で加工穴を連続して形成するため、上述のような調整を行わなければならない回数が少なくなり、調整に必要な手間を少なくすることができる。
【0059】
(実施例4)
また、レーザ光Lによる加工についての別の態様としては、記憶部52に記憶された複数の加工予定箇所60aの位置情報に基づいて、加工予定箇所60aを、移動部30による予想される移動距離に応じて複数のグループに分けてもよい。そして、異なるグループ間で移動が行われる際にのみ、レーザ光Lの焦点の位置を調整する、または、レーザ照射部10に供給される電流の大きさを調整したりスイッチ部12の開きの大きさを調整したりするなどしてレーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力を調整するようにしてもよい。
【0060】
例えば
図8に示す態様では、加工予定箇所60aが三つのグループ(グループG1、グループG2およびグループG3)に分けられている。なお、グループG2およびグループG3の中においては斜めに移動する箇所があるが、
図8の左右方向で移動するのと斜め方向で移動するのとでは、間隔の差(移動時間の差)が小さいことから、同様の間隔(同様の移動時間)とみなして同じグループとしている。
【0061】
そして、異なるグループ間での移動があった場合(例えば、グループG1に属する加工予定箇所60aを加工した後でグループG2に属する加工予定箇所60aを加工する場合や、グループG2に属する加工予定箇所60aを加工した後でグループG3に属する加工予定箇所60aを加工する場合)には、レーザ光Lの焦点の位置が調整される、または、レーザ照射部10に供給される電流の大きさが調整されたりスイッチ部12の開きの大きさが調整されたりするなどしてレーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力が調整される。
【0062】
他方、同じグループ内の加工予定箇所60aを加工する際には、上述のような調整が既に行われていることから、さらなる調整は行われない(すなわち、同じグループに属する加工予定箇所60aを加工する際には同じ条件で加工されることとなる。)。このため、本実施例によれば、異なるグループ間での移動がある場合にのみ調整が行われるので、調整に必要な手間を少なくすることができる点で有益である。
【0063】
なお、加工の順番はグループを一単位に決めてやればよく、
図8に示すように、グループG1→グループG2→グループG3の順番で加工してもよいし、それとは異なり、グループG1→グループG3→グループG2、グループG2→グループG3→グループG1など別の任意の順番で加工することもできる。
【0064】
ところで、上記では、同じグループ内の加工予定箇所60aを加工する際には、調整を一切行わない態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、同じグループ内の加工予定箇所60aを加工する際であっても移動距離の差がある場合には、当該移動距離に応じて、レーザ光Lの焦点の位置を調整する、または、レーザ照射部10に供給される電流の大きさを調整したりスイッチ部12の開きの大きさを調整したりするなどしてレーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力を調整するようにしてもよい。
【0065】
第2の実施の形態
次に、
図9により、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0066】
第1の実施の形態は、選択部51が、これから加工する加工穴(次回加工予定箇所60a)と今回加工し終わった加工穴(前回加工した加工穴)との間隔が、前々回加工した加工穴と前回加工した加工穴の間の間隔と類似するように、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aを選択するように構成されている態様であったが、本実施の形態では、選択部51が、今回加工し終わった加工穴(前回加工した加工穴)とこれから加工する加工穴(次回加工予定箇所60a)との間隔が最小になるように、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aを選択する態様になっている。
【0067】
第2の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となっている。
図9に示す第2の実施の形態において、
図1乃至
図8に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
従来技術のように加工予定箇所60aの配置関係を考慮しない場合には、連続して形成される加工穴の間隔が所定の距離(所定の移動時間)以上となる箇所が多くなるため、
図10に示すようになり、ジャイアントパルスによって大きな加工穴が形成される箇所が多くなってしまう。
【0069】
これに対して、本実施例によれば、前回加工した加工穴と次回加工予定箇所60aとの間隔が最小になるように、次回加工する加工予定箇所60aが選択されるので、
図9に示すように、ジャイアントパルスによって大きな加工穴が形成される箇所を少なくすることができる。
【0070】
なお、何ら調整を行わない場合には、数が少ないながらも、このようにジャイアントパルスによって大きな加工穴が形成されることとなる。この点、本実施の形態では、ジャイアントパルスによって大きな加工穴が形成されると予想される箇所について、レーザ光Lの焦点の位置を調整する、または、レーザ照射部10に供給される電流の大きさを調整したりスイッチ部12の開きの大きさを調整したりするなどしてレーザ照射部10から照射されるレーザ光Lの出力を調整することで、形成される加工穴の深さを均一にすることもできる。
【0071】
ところで、上述のようにして一つの金型60に対する加工が終了すると、次の金型60が加工されることとなるが、この際には、通常、いずれの加工予定箇所60aを選択してもジャイアントパルスが発生してしまうこととなる。このため、同じシーケンスで金型60を加工することができることを優先して、
図9に示すように、加工の終了した金型60で最初に形成された加工穴(
図9では左上の加工穴)に対応する加工予定箇所60aを加工するように、次の金型60への移動が行われる。なお、このように同じシーケンスを用いることで、予め準備しなければならない加工順序に関するプログラムの数を少なくすることができる。
【0072】
上記では、
図9に示すように、加工の終了した金型60で最初に形成された加工穴に対応する加工予定箇所60aを加工するように次の金型60への移動が行われる態様を用いて説明したが、これに限られることはない。例えば、加工の終了した金型60から次の金型60への移動および移動後の次の金型60内での移動の全てを考慮して、加工の終了した金型60から次の金型60(例えば
図9の下側に示した金型60の右上の加工予定箇所60aや右下の加工予定箇所60aなど)への移動をすることもできる。この場合には、同じシーケンスを用いることができないので予め準備しなければならない加工順序に関するプログラムの数は多くなるが、複数の金型60を加工する際の効率を向上させることができる。
【0073】
第3の実施の形態
次に、
図11を用いて、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0074】
第1の実施の形態は、選択部51が、前々回加工した加工穴および前回加工した加工穴の間の間隔と、前回加工した加工穴および次回加工する加工予定箇所60aの間の間隔が類似するように、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aを選択するように構成されている態様であり、第2の実施の形態は、選択部51が、前回加工した加工穴と次回加工する加工予定箇所60aの間隔が最小になるように、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aを選択する態様であった。
【0075】
この点、第1の実施の形態によれば、移動距離の差が小さいため、レーザ光Lの焦点の位置、レーザ照射部10に供給される電流の大きさ、スイッチ部12の開きの大きさなどの再調整を行わなければならない箇所を少なくすることができ、形成される加工穴を均一にしやすい(加工均一性が高い)というメリットがある。他方、第2の実施の形態によれば、合計の移動距離を短くすることができるので、加工穴を形成する際の生産性を高めることができる(生産性が高い)というメリットがある。
【0076】
図11に示す本実施の形態は、加工均一性を優先するか生産性を優先するかを決定することができるモード切換部56が設けられている。そして、このモード切換部56によって、第1の実施の形態のように、選択部51が、次回加工予定箇所60a前回加工した加工穴との間隔が、前々回加工した加工穴と前回加工した加工穴の間の間隔と類似するように、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aを選択するか、または、第2の実施の形態のように、選択部51が、前回加工した加工穴と次回加工する加工予定箇所60aの間隔が最小になるように、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aを選択するかを、決定することができる。なお、モード切換部56は、制御部50を介して選択部51と記憶部52に接続されている。
【0077】
第3の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態または第2の実施の形態と略同一の態様となっている。第2の実施の形態において、
図1乃至
図8に示す第1の実施の形態および
図9に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0078】
例えば、
図9に示すようなパターンでレーザ光Lによる加工を行う場合と、
図7に示すようなパターンでレーザ光Lによる加工を行う場合とでは、斜め方向に移動する回数の多い
図7に示す態様の方が、合計の移動距離が大きくなってしまう。他方、この
図7に示す態様では、各移動距離の差は小さくなっているため、再調整を行わなければならない箇所を少なくすることができる。
【0079】
このため、加工穴の大きさをより均一にしたい場合には、モード切換部56に操作部(図示せず)から信号を入力することによって、次回加工予定箇所60aと前回加工した加工穴との間隔が前々回加工した加工穴と前回加工した加工穴の間の間隔と類似するように(例えば
図7に示すような順番で加工穴が形成されるように)、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aが選択されるようにすればよい。他方、加工穴の大きさの不均一性が無視できるほど小さい場合や加工穴を形成する際の生産性を高くすることを重視したい場合には、モード切換部56に操作部から信号を入力することによって、前回加工した加工穴と次回加工する加工予定箇所60aの間隔が最小になるように、記憶部52に記憶された加工予定箇所60aの位置情報から次回加工する加工予定箇所60aが選択されるようにすればよい。
【0080】
このような本実施の形態によれば、操作者は、加工均一性を優先するか生産性を優先するかを自由に決定することができる。このため、操作者のニーズにあった態様で、レーザ光Lによる加工を行うことができる。