(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性繊維が面方向に連続的に接合された導電性繊維層が互いに平行に二層形成され、該二層の導電性繊維層の間に、該二層の導電性繊維層を絶縁する状態で非導電繊維層が形成されることを特徴とする編機で一体に形成される導電性三層構造布帛であって、該二層の導電性繊維層の各々が、表層を構成する導電性繊維と裏層を構成する非導電性繊維からなる表裏二層の地組織内に形成されており、該地組織内の導電性繊維の少なくとも一部は、該地組織内の表層と裏層の境界面において非導電性繊維のシンカーループによって被覆されている、前記導電性三層構造布帛。
【背景技術】
【0002】
従来、二層の面状体からなる導電性の電極の間に柔軟な誘電体を配置し、電極間の距離の変化に伴う静電容量の変化を検出するセンサーが多く開発されている。
以下の特許文献1には、ウレタンシート等からなるシート状誘電体の両面に伸縮性を有する一対の導電布を配備し、一対の導電布の間の距離が変動することで静電容量が変動するセンサーが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載されたセンサーは、二層の導電布と一層のシート状誘電体をそれぞれ個別に製造した後、積層して組み合わせるため、製造方法が煩雑で高コストとなるという問題がある。
【0003】
また、以下の特許文献2には、上下の地組織とこれらを連結する連結糸層からなる立体構造編基材に導電性金属層が形成された導電性編地が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載された導電性編地は、立体構造基材を製造した後、スパッタリングや真空蒸着メッキ等の方法で上下の地組織の編地を導電化するため、上下の地組織の導電層同士を完全に絶縁することが困難であり、厚み方向に大きな荷重が加わる場合には上下の地組織の導電層が接触して導通することにより、静電容量を検出できなくなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、前記した従来技術の問題点を解決し、二層の導電性の電極と誘電体層を織編機で一体に形成(編成)することができ、低コストであり、人体の形状にも柔軟に追従でき、大荷重に対しても静電容量の検出精度の高い導電性三層構造布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、三層構造布帛の中の導電性繊維の構造を鋭意検討し、実験を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]導電性繊維が面方向に連続的に接合された導電性繊維層が互いに平行に二層形成され、該二層の導電性繊維層の間に、該二層の導電性繊維層を絶縁する状態で非導電繊維層が形成されることを特徴とする
編機で一体に形成される導電性三層構造布帛
であって、該二層の導電性繊維層の各々が、表層を構成する導電性繊維と裏層を構成する非導電性繊維からなる表裏二層の地組織内に形成されており、該地組織内の導電性繊維の少なくとも一部は、該地組織内の表層と裏層の境界面において非導電性繊維のシンカーループによって被覆されている、前記導電性三層構造布帛。
【0008】
[
2]前記二層の導電性繊維層の間隔を狭める方向に5KPaの圧力を加えたとき、該二層の導電性繊維層は、前記非導電繊維層により絶縁されている、前記[
1]に記載の導電性三層構造布帛。
【0009】
[
3]前記二層の導電性繊維層の少なくとも一部が樹脂で被覆されている、前記[1]
又は[2]に記載の導電性三層構造布帛。
【0010】
[
4]前記二層の導電性繊維層の地組織がいずれも縞状を呈し、かつ、一の層の地組織の縞の方向が、他の層の地組織の縞の方向に直交している、前記[1]〜[
3]のいずれかに記載の導電性三層構造布帛。
【0011】
[
5]前記[1]〜[
4]のいずれかに記載の導電性三層構造布帛を検知部として含み、前記二層の導電性繊維層の各々に配線を介して静電容量測定装置が接続され、前記検知部に加えられた圧力が静電容量の変化として検知されることを特徴とする感圧センサー。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る導電性三層構造布帛は、織編機で一体に形成(編成)することができるため、その製造には、複雑な製造工程を必要とせず、低コストで、静電容量の検出精度の高い静電容量センサー等の要素として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性三層構造布帛は、二層の導電性繊維層と、該二層の導電性繊維層の間に、該二層の導電性繊維層を絶縁する状態で非導電性繊維層が布帛製造時に一体化されて形成される。
二層の導電性繊維層は各々、導電性繊維が面方向に連続的に接合し合うことにより面状の導電性繊維層を形成する。導電性繊維層が布帛全面を構成してもよく、布帛面の一部分に一定面積の導電性繊維層を複数個形成させてもよい。布帛面の一部分に一定面積の導電性繊維層を複数個形成する場合は、二層の導電性繊維層が向かい合う同一位置に存在してもよく、二層の導電性繊維層がずれた位置に存在していてもよい。
【0015】
一定面積の導電性繊維層を複数個形成する場合は、好ましくは、表側の導電性繊維層を各々が絶縁された島状とし、タテ、ヨコ方向に規則的に配置すると同時に、裏面の同位置に導電性繊維層を配置することで、個々の表裏の相対する導電性繊維層の静電容量を計測して布帛の圧力分布状態を測定できる。より好ましくは、表裏二層の導電性繊維層の地組織をいずれも縞状に形成し、かつ、一の層の地組織の縞の方向を、他の層の地組織の縞の方向に直交させて配置することにより、表裏の導電性繊維層への配線数を大幅に減らして、布帛の伸長性や柔軟性を阻害せずに圧力分布を測定できるものとすることができる。
【0016】
本発明の導電性三層構造布帛は、二層の導電性繊維層と非導電性繊維層とが織編機で一体に形成して得られる。二枚の導電層と一枚の非導電層をそれぞれ個別に織編し、これらを積層して組み合わせる方法では、製造方法が煩雑で高コストとなる。さらに、製編又は製織によって形成された導電性繊維層は、柔軟であり人体等の形状に容易に追従することができる。特に編地であれば、布帛の伸縮性が向上し様々な形状への追従性がより良好となり好ましい。編地の場合は針列が2列あるダブルラッセル編機やダブル丸編機によって好適に得られる。織物の場合は多重織等により好適に得られる。二層の導電性繊維層を非導電繊維層で完全に絶縁するためにはダブルラッセル編機で製造された三層構造編地であることが好ましい。
【0017】
本発明の三層構造布帛としては、表裏二層の地組織の各々が、導電性繊維が配されて形成された導電性繊維層を含み、該地組織の間に非導電繊維のみからなる非導電繊維層が形成されていればよい。導電性繊維層は、導電性繊維層が形成されている範囲においては、導電性繊維が連続的に接合されていることにより、導電性繊維層が形成されている範囲の全体に導電性を有する。布帛内に形成される導電性繊維層の面積は、静電容量の検出精度を上げるため、0.2cm
2以上が好ましい。導電性繊維が連続的に接合する状態とは、隣り合う導電性繊維が接触して導電性を有する状態、隣り合う導電性繊維が他の導電性繊維との接触を介して導電性を有する状態、又はこれらの組み合わせの状態が面方向に連続することにより、導電性繊維層が形成されている範囲全体に導電性を有している状態をいう。導電性繊維層は、導電性繊維層が形成されている範囲全体に導電性があればよく、導電性繊維のみから形成されていてもよく、交編等によって導電性繊維と非導電性繊維とで形成されていてもよい。導電性繊維と非導電性繊維によって形成されていることは、非導電性繊維が導電性繊維を外力による摩耗等から保護する役割を有すると共に、非導電性繊維の伸縮性を活用して導電性繊維層に伸縮性を付与することができる点で好ましい。
【0018】
隣り合う導電性繊維を接触させる方法としては、製編において上下左右に隣り合う導電性繊維が少なくとも一部分で同一のニットループを形成する方法、1本の導電性繊維のニットループに別の導電性繊維のニットループが連なる方法、1本の導電性繊維のニットループと別の導電性繊維のシンカーループ又は挿入糸が接触する方法、隣り合う導電性繊維の挿入糸が部分的に重なり合って接触する方法等のいずれの方法であってもよい。しかしながら、布帛の伸長や変形に対する回復性や耐久性を向上させるためには、隣り合う導電性繊維が同一のニットループを形成する方法、又は1本の導電性繊維のニットループに別の導電性繊維のニットループが連なる方法がより好ましい。また、非導電性繊維による導電性繊維の被覆率を上げて、外力から導電性繊維を保護するためには、隣り合う導電性繊維の挿入糸が、地組織を形成する非導電性繊維のニードルループとシンカーループの間に挟まれた状態で重なり合って接触する方法がより好ましい。
【0019】
本発明においては、二層の導電性繊維層の間に、該二層の導電性繊維層を絶縁する状態で非導電繊維層が形成される。本発明でいう絶縁とは、二層の導電性繊維層間で導電性が実質的に無い状態を示し、具体的には電圧をかけても電流値が0(A)であることを示す。
二層の導電性繊維層を一体化し、かつ二層の導電性繊維層の間に非導電性繊維層を形成するためには、非導電性繊維が二層の導電性繊維層を結合しながら、二層の導電性繊維層の間に絶縁層を形成することが好ましい。
【0020】
二層の導電性繊維層の間に該二層の導電性繊維層を絶縁する状態で非導電性繊維層を形成する構造としては、表裏二層の地組織及びこれらを連結する連結糸からなる三層構造布帛において、導電性繊維層を表裏の地組織内に形成し、表裏の地組織を連結する連結糸に非導電性繊維を使用して表裏の地組織を連結する構造が好ましく用いられる。このように表裏の地組織を連結糸で連結した三層構造布帛はダブルラッセル編機を用いて形成することが好ましい。
【0021】
また、二層の導電性繊維層の間に非導電繊維層を形成する別の構造としては、ダブル丸編機により表裏二層の編地を形成する際、導電性繊維が表側編地と裏側編地にまたがることなく表裏二層に分断されて編み込まれ、非導電性繊維が表側編地と裏側編地にまたがって編み込まれ、二層の導電性繊維層をつなぎ合せながら中間に非導電性繊維層を形成する構造が好ましく用いられる。さらには、表側編地と裏側編地にまたがって編み込まれる非導電性繊維とは別の非導電性繊維を、表側編地と裏側編地の中間層に挿入編みし、表裏の導電性繊維層の絶縁を強固にする構造が好ましい。これらの編地は通常2層構造編地と呼ばれることがあるが、非導電性繊維層を有するため、本発明における三層構造布帛に該当する。
【0022】
本発明の三層構造布帛では、二層の導電性繊維層がお互いに接することがないように、二層の導電性繊維層の各々が、表層を構成する導電性繊維と裏層を構成する非導電性繊維からなる表裏二層の地組織内に形成されており、該地組織内の導電性繊維の少なくとも一部は、該地組織内の表層と裏層の境界面において非導電性繊維によって被覆されていることが好ましい。導電性繊維の少なくとも一部を非導電性繊維によって被覆する方法は、導電性繊維に非導電性繊維を引き揃えて製編織し、導電性繊維を非導電性繊維で覆う方法や、ダブルラッセル編機やダブル丸編機において、地組織を形成する非導電性繊維のシンカーループにより、導電性繊維の少なくとも一部を被覆する方法が好ましく用いられる。特に、ダブルラッセル編機において、導電性繊維を編成する筬とは別の筬に非導電性繊維を配置して、非導電性繊維のシンカーループで導電性繊維を覆う方法がより好ましい。また、ダブルラッセル編機やダブル丸編機を用いる場合に、地組織を形成する非導電性繊維に導電性繊維の少なくとも一部を挿入編みする方法を用いることは、非導電性繊維による導電性繊維の内側面の被覆率が向上すると同時に、導電性繊維の表裏面側も被覆される構造となり、センサーとしての耐久性向上につながる点で好ましい。二層の地組織の内側面における、非導電性繊維による導電性繊維の被覆率は好ましくは10%以上、よりより好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。
【0023】
導電性繊維層を表裏の地組織内に形成する際、導電性繊維層を地組織の全面に形成する方法、地組織内に部分的に島状に形成する方法、地組織内に縞状に形成する方法があるが、圧力分布を測定するために表裏の縞状の導電性繊維層を交差させて、すなわち、一の層の地組織の縞の方向を、他の層の地組織の縞の方向に直交させて、縞状に形成する方法としては、ダブルラッセル編機により、一方面のニットループ編成や挿入編によりタテ方向に縞状に導電性繊維層を形成し、他方面を緯糸挿入編によりヨコ方向に縞状に導電性繊維層を形成する方法が好ましい。また、二重織物を形成する際に、片面をタテ方向の縞状とし、一方面をヨコ方向の縞状とすることもできる。
【0024】
本発明に用いられる導電性繊維とは、合成繊維の表面にスパッタリング、蒸着、メッキ等の方法により、銀、銅、ニッケル、硫化銅等の公知の金属皮膜を形成した繊維や、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等の公知の金属繊維や、ポリピロール、ポリアニリン等の公知の導電性高分子繊維等を用いることができる。また、芯糸に弾性繊維を用い、これらの導電性繊維をカバーリングした複合糸は、布帛の伸縮性を増大できるものとなる。更には、金属などの導体が塩ビやポリエチレン等の被覆材で覆われた電線を用いることは、液体で濡れることによる劣化や腐食等を防止し、長期使用時の耐久性を向上させる上で好ましい。
【0025】
導電性繊維としては、任意の繊度のものを使用することができるが、高分子繊維を主体として構成される導電性繊維の場合、導電性を良好にして製編織性を向上させる観点で、総繊度が30〜1000デシテックスのマルチフィラメントが好ましく用いられる。金属繊維の場合には、単糸の直径が1〜500μmのモノフィラメントやマルチフィラメントが好ましく用いられるが、単糸の直径が1〜200μmのマルチフィラメントであると製編織性が良好となりより好ましい。電線の場合は断面積が0.1〜6mm
2のものが製編織上、好ましく用いられるが、0.1〜2mm
2がより好ましい。
【0026】
本発明に用いられる非導電性繊維は、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等の合成繊維が好ましく用いられる。繊維形態は、未加工糸(原糸)、仮撚加工糸、紡績糸のいずれであってもよく、また、マルチフィラメント糸であってもモノフィラメント糸であってもよい。非導電性繊維の好ましい総繊度は、導電性繊維の被覆性や絶縁性を良好にし、製編織性を向上させる観点から、50〜1000デシテックスが好ましい。
【0027】
非導電繊維層に用いる非導電性繊維としては、二層の導電性繊維層間の絶縁性を良好にするため、以下に示す繊維が好ましく用いられる。まず、2層の導電性繊維間の間隔が小さい場合(間隔が約2mm以下の場合)は、2層の導電性繊維同士が接する隙間をなくすために、カバー率の高いマルチフィラメントや紡績糸を用いることが好ましく、より好ましくはマルチフィラメントの仮撚加工糸が用いられる。また、二層の導電性繊維層が繰返し圧縮される場合の回復性や耐久性を向上させるためには、ポリウレタン繊維やポリエステル系エラストマー繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等の弾性繊維を使用することが好ましい。
【0028】
また、二層の導電性繊維層の間隔が比較的大きく(間隔が約2mm以上である)、厚み方向のクッション性を向上させる場合は、二層の導電性繊維層を連結する繊維として合成繊維のモノフィラメント糸を用いることが好ましい。モノフィラメント糸の剛性により、圧力が加わる際の二層の導電性繊維層の接触を防止することが可能となると共に、繰返しの圧力に対する耐久性も良好となる。モノフィラメント糸としてはポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエステル系エラストマー繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維が好ましく用いられる。
【0029】
本発明の導電性三層構造布帛は、自動車等の座席の乗員検知センサーとして用いる際に大荷重が加わった場合に、二層の導電性繊維層が接触して導通することによる誤作動を防止するため、二層の導電性繊維層の間隔を狭める方向に5KPaの圧力が加わっても、二層の導電性繊維層が接触することなく、絶縁されていることが好ましい。このような絶縁性能を有するためには、非導電繊維層が50デシテックス以上の繊度のモノフィラメント糸で形成されていることが好ましい。
【0030】
さらに、導電性三層構造布帛が水等の液体で濡れたり、導電性繊維に腐食等の劣化が生じることを防止するため、又は二層の導電繊維層の接触による導通を完全に防止するためには、導電性繊維層の少なくとも一部が樹脂で被覆されていることが好ましい。樹脂で被覆する方法としては、導電性三層構造編地の少なくとも片面を、より好ましくは両面を、コーティング加工やラミネート加工等による樹脂加工することが、水分等の液体の浸入を防止する点で、好ましい。また、ディッピング加工等により、導電性三層構造布帛を樹脂溶液に浸漬して、二層の導電性繊維層の内層側に樹脂を含浸し、熱等によって乾燥・固化することは、導電性繊維の劣化を防止し、二層の導電性繊維層の絶縁性を向上させることができるため、より好ましい。
【0031】
導電性繊維層を被覆する樹脂は特に限定されるものではなく、通常一般に使用されている樹脂を使用することができる。例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、クロロプレン、クロロスルホン化ポリオレフィン、アクリル、フッ素、ポリアミド系エラストマー、ポリスチレンブタジエン等の樹脂を好ましく用いることができる。
これらの樹脂による被覆は、導電性三層構造布帛を所望のサイズにカットし、2層の導電性繊維層に配線を備えた後に行うことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明の導電性三層構造布帛は、製編・製織後、熱セット工程を経て、寸法や形態安定性を向上させることが好ましい。また、繊維と樹脂との接着性を向上させるため、必要に応じて精錬を行ってもよい。熱セット工程で用いる熱処理機としては、ピンテンター、クリップテンター、ショートループドライヤー、シュリンクサーファードライヤー、ドラムドライヤー、連続又はバッチ式タンブラー等が使用できる。
【0033】
本発明の導電性三層構造の厚みは1〜20mmが好ましいが、圧縮回復性をより向上させるためには、1〜10mmがより好ましく、1〜7mmがさらに好ましい。
本発明で得られた導電性三層構造布帛は、二層の導電性繊維層に配線し、静電容量の変化を検出する圧力(感圧)センサーやスイッチ、生体信号検出用電極等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
22ゲージのダブルラッセル編機を用い、表裏の地組織を形成する筬L1、L2、L5、L6において、L1及びL6に導電性繊維(日本蚕毛染色株式会社製サンダーロン110デシテックスの4本引き揃え)、L2、L5に非導電性繊維であるポリエステル(以下、単にポリエステルと記載)330dtex96フィラメントの仮撚加工糸を配置して、L2、L5のポリエステルのシンカーループが導電性繊維のシンカーループの一部を被覆する様に編成した。尚、編組織はL1とL6は3針振りのトリコット編とし、L2とL5はそれぞれL1とL6とは逆振りの1針振りのトリコット編とした。また、非導電性繊維層を形成しながら表裏の地組織を連結する筬L3、L4に、ポリエステル330デシテックスのモノフィラメントを配置して、表裏の導電性繊維層を有する地組織を非導電性繊維であるポリエステルモノフィラメントで連結した導電性三層構造布帛を得た。尚、L3、L4はそれぞれ逆振りの1針振りのトリコット編とした。得られた布帛に180℃×2分の熱セットを行い形態を安定させ、厚さ5mmの導電性三層構造布帛を製造した。熱セット後の導電性三層構造布帛の断面を
図1に示す。
【0035】
図1に示す導電性三層構造布帛1は表側の地組織2と裏側の地組織3、及び地組織2と地組織3を連結する非導電繊維4からなる。表側の地組織2においては導電性繊維層5が形成されていると共に、地組織と非導電繊維層との境界面の導電性繊維の一部が、地組織を形成する非導電性繊維6によって被覆されている。裏側の地組織3においては導電性繊維層7が形成されていると共に、非導電繊維層との境界面の導電性繊維の一部が、地組織を形成する非導電性繊維8によって被覆されている。
得られた導電性三層構造布帛は一体で簡単に製造でき、二層の導電性繊維層が5KPaの圧力下においても絶縁されており、柔軟に変形し、かつ、厚みの変化により静電容量の変化が発生するものであった。
【0036】
尚、布帛を30cm角にカットし、表裏の導電性繊維層に配線を介して静電容量測定装置を接続して静電容量の変化に基づく圧力センサーを作製した。得られた圧力センサーは、荷重に応じて静電容量値がリニアに変化し、繰返し圧縮に対する回復性も良好であった。
【0037】
[実施例2]
22ゲージのダブル丸編機を用い、第1フィーダーから導電性繊維(日本蚕毛染色株式会社製サンダーロン110デシテックスの2本引き揃え)をダイアル側のロング針のみに供給して天竺編みし、第2フィーダーから導電性繊維(日本蚕毛染色株式会社製サンダーロン110デシテックスの2本引き揃え)をシリンダ側のロング針のみに供給して天竺編みした。引き続き第3フィーダーからポリトリメチレンテレフタレート繊維167デシテックス48フィラメントの仮撚加工糸をダイアル側のショート針のみに供給して天竺編みし、第4フィーダーからポリトリメチレンテレフタレート繊維167デシテックス48フィラメントの仮撚加工糸をシリンダ側のショート針のみに供給して天竺編みした。引き続き、第5フィーダーからポリトリメチレンテレフタレート繊維167デシテックス48フィラメントの仮撚加工糸をダイアル側及びシリンダ側のショート針のみに供給してゴム編みした。同時にポリトリメチレンテレフタレート繊維330デシテックス96フィラメントの仮撚加工糸をダイアル針とシリンダ針の裏側から挿入編みして導電性三層構造布帛を得た。得られた布帛に180℃×2分の熱セットを行い、形態を安定させ、厚さ2mmの導電性三層構造布帛を製造した。熱セット後の導電性三構造布帛の断面を
図2に示す。
【0038】
図2に示す導電性三層構造布帛9は、表側の地組織10と裏側の地組織11及び地組織10と地組織11を連結する非導性電繊維12によって形成されている。表側の地組織10においては導電性繊維層13が形成されていると共に、地組織と非導電繊維層との境界面の導電性繊維の一部が、地組織を形成する非導電性繊維14によって被覆されている。裏側の地組織11においては導電性繊維層15が形成されていると共に、地組織と非導電繊維層との境界面の導電性繊維の一部が、地組織を形成する非導電性繊維16によって被覆されている。また、表裏の地組織の中間に非導電性繊維17が挿入されており、表裏の地組織を連結する非導電性繊維12と共に、非導電性繊維層を形成している。
得られた導電性三層構造布帛は一体で簡単に製造でき、二層の導電性繊維層が5KPaの圧力下においても絶縁されており、柔軟に変形し、かつ、厚みの変化により静電容量の変化が発生するものであった。また、厚みが薄く、曲げや伸びに柔軟に追従するものであった。
【0039】
[実施例3]
裏面に緯糸挿入装置を装備した22ゲージのダブルラッセル編機を用い、表裏の地組織を形成する筬L1、L2、L5、L6において、L1に導電性繊維(日本蚕毛染色株式会社製サンダーロン、アクリル2/52)を20イン10アウト、L2、L5、L6に非導電性繊維であるポリエステル330dtex96フィラメントの仮撚加工糸をオールインで配置し、また、非導電性繊維層を形成しながら表裏の地組織を連結する筬L3、L4に、ポリエステル330デシテックスのモノフィラメントをオールインで配置した。L1を4針振りの挿入編、L2を2針振りのトリコット編、L3、L4をそれぞれ逆振りの1針振りのトリコット編、L5を鎖編、L6を2針振りのトリコット編として、三層構造布帛を編成した。この際、裏面の緯糸挿入装置により、20コースに導電性繊維(日本蚕毛染色株式会社製サンダーロン、アクリル2/52)を緯糸挿入した後、10コースは緯糸を挿入せず、以降これを繰り返して、表側にタテ方向の縞状導電性繊維層、裏側にヨコ方向の縞状の導電性繊維層を有する地組織を形成し、これらを非導電性繊維であるポリエステルモノフィラメントで連結した導電性三層構造布帛を得た。得られた布帛に180℃×2分の熱セットを行い形態を安定させ、厚さ5mmの導電性三層構造布帛を製造した。熱セット後の導電性三層構造布帛を
図3に示す。
【0040】
図3に示す導電性三層構造布帛18は表側の地組織19と裏側の地組織20、及び地組織19と地組織20を連結する非導電繊維21からなる。表側の地組織においては導電性繊維層22がタテ方向に縞状形成されていると共に、地組織と非導電繊維層との境界面の導電性繊維の一部が、筬L2から供給されたポリエステルによって被覆されている。裏側の地組織20においてはヨコ方向の縞状の導電性繊維層23が形成されていると共に、地組織と非導電繊維層との境界面の導電性繊維の一部が、筬L5及びL6から供給されたポリエステルによって被覆されている。
【0041】
得られた導電性三層構造布帛は一体で簡単に製造でき、二層の導電性繊維層が5KPaの圧力下においても絶縁されており、柔軟に変形し、かつ、厚みの変化により静電容量の変化が発生し、圧力分布を計測することのできる布帛であった。
尚、布帛を30cm角にカットし、表裏の縞状の導電性繊維層(表裏計16本)に配線を介して静電容量測定装置を接続して静電容量センサーを試作した結果、各々の交差する導電性繊維層から得られる静電容量値を演算することで、圧力分布を測定できる感圧センサーとなった。