(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整ナットと、前記ドラグ座金との間に配置され、前記ドラグ座金を付勢する第1付勢部材をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の両軸受リールのドラグ機構。
前記移動規制部材は、前記ハンドル軸に一体回転可能に設けられ、前記操作部を回転自在に支持する、請求項2から4のいずれか1項に記載の両軸受リールのドラグ機構。
前記第1カム部材と、前記第2カム部材との間に配置され、前記第1カム部材を前記ドラグ調整部材に向けて押圧する第2付勢部材をさらに備える、請求項6に記載の両軸受リールのドラグ機構。
前記第1カム部材及び前記第2カム部材の一方は、周方向に間隔を隔てて配置され、前記第1カム部材及び前記第2カム部材の他方に向けて突出する一対のカム突起を有し、
前記第1カム部材及び前記第2カム部材の他方は、前記一対のカム突起に接触する一対の傾斜カム面を有する、請求項6又は7に記載の両軸受リールのドラグ機構。
前記第1カム部材及び前記第2カム部材の他方は、前記一対の傾斜カム面の間に配置され、前記一対のカム突起に係合して前記ハンドルの揺動範囲を前記所定角度に規制する一対の規制突起を有する、請求項8に記載の両軸受リールのドラグ機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のドラグ機構では、ドラグ調整部材全体がハンドル軸に螺合している。このため、ドラグ調整部材を回すと、ドラグ調整部材の操作部のハンドル軸方向の位置が変化する。さらに、ドラグ調整部材の軸方向位置に応じてハンドルの位置が変化するので、ハンドルの軸方向位置が大きな範囲で変化する。ドラグ調整部材及びハンドルの軸方向の位置が変化すると、迅速でスムーズなドラグ操作を行いにくい。
【0006】
本発明の課題は、ハンドルとドラグ調整部材とでドラグ力を調整可能な両軸受リールのドラグ機構において、ドラグ操作時にドラグ調整部材及びハンドルがハンドル軸方向に大きく移動しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る
両軸受リールのドラグ機構は、スプールの糸繰り出し方向の回転をハンドル軸周りで制動する。ドラグ機構は、ドラグ調整部材と、少なくとも一つのドラグ座金と、ハンドルと、ワンウェイクラッチと、カム機構と、を備える。ドラグ調整部材は、ドラグ力を調整するための部材である。ドラグ調整部材は、操作部と、操作部に軸方向移動自在かつ一体回転可能に連結されハンドル軸の先端側外周面に螺合する調整ナットと、を有する。少なくとも一つのドラグ座金は、ドラグ調整部材より基端側でハンドル軸に設けられる。ハンドルは、ドラグ座金とドラグ調整部材との間に配置される。ハンドルは、第1位置と第1位置より糸巻取方向の第2位置とに所定角度揺動可能かつ一体回転可能にハンドル軸に設けられる。ワンウェイクラッチは、ハンドル軸の糸繰り出し方向の回転を禁止する。カム機構は、ハンドルの第1位置から第2位置への揺動により、ドラグ調整部材によって調整されたドラグ力を所定量増加させる。
【0008】
この両軸受リールのドラグ機構では、ハンドル軸に螺合するドラグ調整部材の操作部を回すことにより、調整ナットがハンドル軸に対して軸方向に移動する。これにより、カム機構を介してドラグ座金への押圧力が変化し、ドラグ力が調整される。このドラグ調整部材によりドラグ力を弱く調整して魚の当たりを待つ。魚が掛かると、ハンドルを第1位置から第2位置に糸巻取方向に回転させる。これにより、第2位置に所定角度揺動するまでは、ハンドルの回転はハンドル軸に伝達されない。しかし、カム機構によりドラグ力が所定量増加する。この結果、弱いドラグ力をドラグ調整部材により設定しても、ハンドルの糸巻取方向の回転によりそれより所定量強いドラグ力が得られる。この結果、合わせ動作を行え、また、合わせ動作に連続してハンドル又はモータにより巻き上げ動作を行える。また、巻き上げているときに、ドラグ力を緩めたいときは、ハンドルを第2位置から第1位置に糸繰り出し方向に揺動させる。これにより、カム機構によりドラグ力が弱くなる。ここでは、ドラグ調整部材が操作部と操作部に一体回転可能かつ軸方向移動自在に連結された調整ナットとを有している。このため、ドラグ調整部材の操作部を回しても、調整ナットだけが軸方向に移動してドラグ力を調整できる。この結果、ドラグ操作時にドラグ調整部材の操作部及びハンドルがハンドル軸方向に大きく移動しないようになる。
【0009】
発明2に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明1に記載の機構において、ハンドル軸は
、外周面に形成された段差を有する。ドラグ機構は、移動規制部材と、位置決め部材と、抜け止め部材と、をさらに備える。移動規制部材は、操作部の
ハンドル軸の先端から離反する方向の移動を規制する。移動規制部材は、段差により
先端から離反する軸方向の移動が規制されてハンドル軸に装着されている。位置決め部材は、操作部の軸方向外方に配置される。位置決め部材は、移動規制部材とで操作部を挟んで操作部をハンドル軸方向の所定位置に位置決めする。抜け止め部材は、位置決め部材を抜け止めする。
【0010】
この場合には、移動規制部材は、段差により基端側への移動が規制され、移動規制部材により操作部の基端側への移動が規制される。また、操作部は、移動規制部材と移動規制部材と逆側に配置された位置決め部材により挟まれてハンドル軸方向の所定位置に位置決めされる。位置決め部材は、抜け止め部材により抜け止めされている。これにより、操作部がハンドル軸の軸方向に移動しなくなる。
【0011】
発明3に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明2に記載の機構において、ハンドル軸は、先端側の端面に形成された雌ネジ部を有する。抜け止め部材は、位置決め部材に接触可能な頭部を有し、雌ネジ部に螺合するボルト部材を有する。この場合には、ハンドル軸の先端面にねじ込まれるボルト部材の頭部により位置決め部材を抜け止めできる。
【0012】
発明4に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明1から3のいずれかに記載の機構において、調整ナットと、ドラグ座金との間に配置され、ドラグ座金を付勢する第1付勢部材をさらに備える。この場合には、ドラグ調整部材の軸方向の移動量が多くなり、第1付勢部材の付勢力より、ドラグ力を細かく調整できる。
【0013】
発明5に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明2から4のいずれかに記載の機構において、移動規制部材は、ハンドル軸に一体回転可能に設けられ、操作部を回転自在に支持する。この場合には、移動規制部材により操作部を回転自在に支持できるので、操作部を移動規制部材と位置決め部材とで挟んでも操作部を滑らかに回動させることができる。
【0014】
発明6に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明1から5のいずれかに記載の機構において、カム機構は、第1カム部材と、第2カム部材と、を有する。第1カム部材は、ハンドルと一体的に回動可能かつハンドル軸に対して軸方向移動自在である。第2カム部材は、ハンドル軸に一体回転可能かつ軸方向移動自在に連結され、第1カム部材に係合する。ハンドルが第1位置から第2位置に揺動すると、第1カム部材と第2カム部材とが離反する方向に相対移動する。
【0015】
この場合には、ハンドルが第1位置から第2位置に揺動すると、第2カム部材と第1カム部材とが離反する。このため、第1カム部材と第2カム部材とを合わせた軸方向長さが長くなる。この結果、ドラグ座金への押圧力が強くなりドラグ力が増加する。逆に第2位置から第1位置にハンドルが揺動すると、ドラグ力が弱くなる。
【0016】
発明7に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明6に記載の機構において、第1カム部材と、第2カム部材との間に配置される第2付勢部材をさらに備える。第2付勢部材は、第1カム部材をドラグ調整部材に向けて押圧する。この場合には、ドラグ調整部材によりドラグ力が弱く調整されても、第1カム部材を介してハンドルがドラグ調整部材側に付勢されるので、ハンドルが軸方向にガタツキにくくなる。
【0017】
発明8に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明6又は7に記載の機構において、第1カム部材及び第2カム部材の一方は、周方向に間隔を隔てて配置され、第1カム部材及び前記第2カム部材の他方に向けて突出する一対のカム突起を有している。第1カム部材及び第2カム部材の他方は、一対のカム突起に接触する一対の傾斜カム面を有している。
【0018】
この場合には、カム突起と傾斜カム面との係合により、第1カム部材を第1位置から第2位置に揺動させると、第2カム部材と第1カム部材とを離反させることができる。このため、カム機構の構成が簡素になる。
【0019】
発明9に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明8に記載の機構において、第1カム部材及び前記第2カム部材の他方は、一対の傾斜カム面の間に配置され、一対のカム突起に係合してハンドルの揺動範囲を所定角度に規制する一対の規制突起を有する。この場合には、第2カム部材の傾斜カム面に係合する一対のカム突起を利用して第1カム部材の揺動範囲を規制できる。
【0020】
発明10に係る両軸受リールのドラグ機構は、発明1から10のいずれかに記載の機構において、両軸受リールは、モータによりスプールを糸巻取方向に駆動可能な電動リールである。この場合には、ハンドルによる合わせ又は仕掛けを魚が群れている棚に配置する棚取り作業に引き続いて即座にモータによる巻き上げを開始できる。このため、電動リールの操作性が格段に向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ドラグ調整部材が操作部と操作部に一体回転可能かつ軸方向移動自在に連結された調整ナットとを有しているので、ドラグ調整部材の操作部を回しても、調整ナットだけが軸方向に移動してドラグ力を調整できる。このため、ドラグ操作時にドラグ調整部材の操作部及びハンドルがハンドル軸方向に大きく移動しないようになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<電動リールの全体構成>
図1、
図2及び
図3において、本発明の一実施形態を採用した電動リールは、外部電源から供給された電力により駆動されるとともに、手巻きリールとして使用するときの電源を内部に有するリールである。また、電動リールは糸繰り出し長さ又は糸巻取長さに応じて仕掛けの水深を表示する水深表示機能を有するリールである。
【0024】
電動リールは、ハンドル2を有し、釣り竿に装着可能なリール本体1と、リール本体1の上部に設けられたカウンタケース4と、リール本体1の内部に配置された糸巻用のスプール10と、を備えている。また、スプール10を駆動するスプール駆動機構13をさらに備えている。
【0025】
リール本体1は、フレーム7と、第1側カバー8aと、第2側カバー8bと、前カバー9と、備える。フレーム7は、第1側板7aと、第2側板7bと、第1側板7aと第2側板7bとを連結する第1連結部材7c及び第2連結部材7dと、を有する。第1側カバー8aは、フレーム7のハンドル装着側と逆側を覆う。第2側カバー8bは、フレーム7のハンドル装着側を覆う。前カバー9は、フレーム7の前部を覆う。
【0026】
第1側板7aには、
図3に示すように、スプール10が通過可能な円形開口7eが形成されている。円形開口7eには、スプール10のスプール軸14の第1端(
図3左端)を回転自在に支持するスプール支持部17が芯出しされて装着されている。スプール支持部17は、第1側板7aの外側面にネジ止め固定されている。スプール支持部17には、スプール軸14の第1端を支持する第1軸受18aが収納される。
【0027】
第2側板7bは、各種の機構を装着するために設けられている。第2側板7bと第2側カバー8bとの間には、スプール駆動機構13と、後述するクラッチ機構16を制御するクラッチ制御機構20と、キャスティングコントロール機構21と、が設けられている。
【0028】
第1側板7aと第2側板7bとの間には、スプール10と、クラッチ機構16と、スプール10に釣り糸を均一に巻き付けるためのレベルワインド機構22と、が設けられている。クラッチ機構16は、スプール10に動力を伝達する動力伝達状態(クラッチオン)と動力を遮断する動力遮断状態(クラッチオフ)とに切り換える。リール本体1の後部において、第1側板7aと第2側板7bとの間には、クラッチ機構16をオンオフ操作するためのクラッチ操作部材11が揺動可能に設けられている。クラッチ操作部材11は、
図2に実線で示すクラッチオン位置と、二点鎖線で示すクラッチオフ位置と、の間で揺動する。
【0029】
リール本体1は、第2側板7bの外側面に間隔を隔てて配置され、第2側カバー8bとの間の空間に上記の機構を装着するための機構装着板19をさらに備えている。機構装着板19は、第2側板7bの外側面にネジ止め固定されている。
【0030】
第1連結部材7cは、第1側板7a及び第2側板7bの下部を前後2箇所で連結する。第2連結部材7dはスプール10の前部を連結する。第1連結部材7cは、板状の部分であり、その左右方向の略中央部分に釣り竿に取り付けるための竿取付脚7fが一体形成されている。第2連結部材7dは、概ね円筒状の部分であり、その内部にスプール10駆動用のモータ12(
図2及び
図3)が収容されている。
【0031】
第1側カバー8aは、第1側板7aの外縁部に例えばネジ止めされている。第1側カバー8aの前部下面には、電源ケーブル接続用のコネクタ15が下向きに装着されている。
【0032】
ハンドル2は、第2側カバー8b側に設けられている。ハンドル2は、
図1、
図3及び
図5に示すように、ハンドルアーム2aと、ハンドルアーム2aの先端に装着されたハンドル把手2bと、を有している。
【0033】
第2側カバー8bには、ハンドル軸30を回転自在に支持するための第1ボス部8cが外方に突出して形成されている。第1ボス部8cの後方には、スプール軸14の第2端を支持する第2ボス部8dが外方に突出して形成されている。第2側カバー8bの第1ボス部8cの上方には、モータ12を複数段階に制御するための調整レバー5(
図1参照)が揺動自在に支持されている。
【0034】
前カバー9は、第1側板7a及び第2側板7bの前部外側面の上下2箇所で、例えばネジ止め固定されている。前カバー9には、釣り糸通過用の横長の開口9a(
図2)が形成されている。
【0035】
カウンタケース4は、
図1及び
図2に示すように、第1側板7a及び第2側板7bの上部に載置され、第1側板7a及び第2側板7bの外側面にネジ止め固定されている。カウンタケース4の内部には、水深表示用の液晶ディスプレイが収納されている。また、カウンタケース4の内部には、モータ12及び液晶ディスプレイを制御する、例えばマイクロコンピュータからなるリール制御部が設けられている。
【0036】
スプール10は、スプール軸14に一体回転可能に装着されている。スプール10は、筒状の糸巻胴部10aと、糸巻胴部10aの両側に一体形成された大径の第1フランジ部10b及び第2フランジ部10cと、を有している。スプール軸14は、糸巻胴部10aの内周部に圧入等の適宜の固定手段により固定されている。
【0037】
スプール軸14の第1端は、前述したようにスプール支持部17で第1軸受18aにより支持されている。スプール軸14の第2端(
図3右端)は、第2側カバー8bの第2ボス部8dに第2軸受18bにより支持されている。
【0038】
スプール軸14は、スプール10が固定された大径部14aと、大径部14aの第1端側の第1小径部14bと、大径部14aの第2端側の第2小径部14cと、を有している。大径部14aのスプール固定部分より第2小径部14c側には、クラッチ機構16を構成するクラッチピン16aが径方向を貫通して装着されている。
【0039】
クラッチ機構16は、クラッチピン16aと、後述するピニオンギア32の
図3左側端面に径方向に沿って十字に凹んで形成されたクラッチ凹部16bと、を有している。ピニオンギア32は、クラッチ機構16を構成するとともに後述する第1回転伝達機構24を構成している。ピニオンギア32は、スプール軸14方向に沿って、
図3に示すクラッチオン位置とクラッチオン位置より
図3右側のクラッチオフ位置との間で移動する。クラッチオン位置では、クラッチピン16aがクラッチ凹部16bに係合してピニオンギア32の回転がスプール軸14に伝達され、クラッチ機構16は、クラッチオン状態になる。このクラッチオン状態では、ピニオンギア32とスプール軸14とが一体回転可能になる。また、クラッチオフ位置では、クラッチ凹部16bがクラッチピン16aから離反してピニオンギア32の回転がスプール軸14に伝達されない。このため、クラッチ機構16は、クラッチオフ状態になり、スプール10は自由回転可能になる。
【0040】
クラッチ制御機構20は、クラッチ操作部材11の
図2に実線で示すクラッチオン位置と
図2に二点鎖線で示すクラッチオフ位置との間の揺動によりクラッチ機構16をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換える。
【0041】
キャスティングコントロール機構21は、
図3に示すように、スプール軸14の両端を押圧してスプール10を制動する機構である。キャスティングコントロール機構21は、第2ボス部8dの外周面に螺合する制動キャップ51と、第1制動プレート52aと、第2制動プレート52bと、を有している。第1制動プレート52aは、スプール支持部17内に配置されスプール軸14の第1端に接触する。第2制動プレート52bは、制動キャップ51内に配置され、スプール軸14の第2端に接触する。
【0042】
レベルワインド機構22は、第1側板7aと第2側板7bに両端が回転自在に支持された螺軸53と、螺軸53に係合する釣り糸ガイド54と、を有している。螺軸53の外周面には交差する螺旋状溝53aが形成されている。螺軸53の、
図3右端には、スプール駆動機構13に連結された従動ギア55が一体回転可能に装着されている。釣り糸ガイド54は、螺軸53の軸方向に沿って案内される。釣り糸ガイド54は、螺軸53の螺旋状溝53aに係合し、螺軸53の回転により螺軸53に沿って往復移動する。これにより、スプール10の糸巻取方向の回転に連動して釣り糸がスプール10に概ね均一に巻き取られる。
【0043】
<スプール駆動機構の構成>
スプール駆動機構13は、スプール10を糸巻取方向に駆動する。また、巻取時にスプール10にドラグ力を発生させて釣り糸の切断を防止する。スプール駆動機構13は、
図2から
図4に示すように、モータ12と、モータ12の糸巻取方向の回転を禁止する逆転禁止部23と、第1回転伝達機構24と、第2回転伝達機構25と、を備えている。第1回転伝達機構24は、モータ12の回転を減速してスプール10に伝達する。第2回転伝達機構25は、ハンドル2の回転を、第1回転伝達機構24を介して増速してスプール10に伝達する。
【0044】
モータ12は、前述した第2連結部材7dの内部に収容されている。モータ12は、ローラクラッチの形態の逆転禁止部23により糸繰り出し方向の回転が禁止れている。
【0045】
<第1回転伝達機構の構成>
第1回転伝達機構24は、モータ12の出力軸12aに連結された遊星減速機構26を有している。遊星減速機構26は、モータ12の回転を1/20から1/30程度の範囲の減速比で減速してスプール10に伝達する。遊星減速機構26は、モータ12の出力軸12aに連結された第1遊星歯車機構27と、第1遊星歯車機構27に連結された第2遊星歯車機構28と、を有している。遊星減速機構26は、第2側板7b及び機構装着板19に両端を回転自在に支持されたケース70内に収納される。ケース70の内周面には、第1遊星歯車機構27及び第2遊星歯車機構28の内歯ギア71が形成されている。第1遊星歯車機構27太陽ギアは出力軸12aに一体回転可能に連結される。第2遊星歯車機構28の太陽ギアは、第1遊星歯車機構27のキャリアに一体回転可能に連結される。ケース70に形成された内歯ギア71の出力がスプール10に伝達される。
【0046】
第1回転伝達機構24は、
図2及び
図3に示すように、第1ギア部材80と、第1ギア部材80に噛み合う第2ギア部材81と、第2ギア部材81に噛み合うピニオンギア32と、をさらに有している。第1ギア部材80は、遊星減速機構26のケース70の外周に形成されている。したがって、第1ギア部材80は内歯ギア71と一体回転可能である。第1ギア部材80は、レベルワインド機構22の従動ギア55にも噛み合っている。第2ギア部材81は、機構装着板19と第2側板7bの外側面との間に配置されている。第2ギア部材81は、第1ギア部材80の回転をピニオンギア32に回転方向を整合させて伝達するための中間ギアである。第2ギア部材81は、機構装着板19に回転自在に支持されている。ピニオンギア32は、第2側板7bに装着された第3軸受73により第2側板7bにスプール軸14回りに回転自在かつ軸方向移動自在に装着されている。ピニオンギア32は、クラッチ制御機構20により制御されて軸方向にクラッチオン位置とクラッチオフ位置との間で移動する。
【0047】
<第2回転伝達機構の構成>
第2回転伝達機構25は、
図2、
図3、
図4及び
図5に示すように、ハンドル2が一体回転可能に連結されたハンドル軸30と、ドライブギア31と、第3ギア部材82と、本発明の一実施形態よるドラグ機構29と、を有している。
【0048】
ハンドル軸30は、
図3に示すように、第2側板7b及び第2側カバー8bの第1ボス部8cに回転自在に支持されている。ハンドル軸30は、
図4に示すように、外周面に互いに平行に面取りされた第1面取り部30aを有している。また、先端部の外周面に、第1面取り部30aより面取り部分の間隔が小さい第2面取り部30bと、ドラグ調整部材3の係合のための雄ネジ部30cを有している。また、ハンドル軸30は、第1面取り部30aの基端側に、4面を有する第3面取り部30dを有している。ハンドル軸30の先端面には、雌ネジ部30eが所定の深さで形成されている。
【0049】
第1面取り部30aには、ドラグ機構29のドラグ座金37が一体回転可能に装着されている。第3面取り部30dには、爪式(クラッチ爪は図示せず)の第1ワンウェイクラッチ34のラチェットホイール35が一体回転可能が装着されている。ラチェットホイール35は、軸方向内方(
図4左方)への移動が規制された状態で装着されている。ハンドル軸30の基端は、第2側板7bに軸受33により回転自在に支持されている。また、ハンドル軸30は、ローラ型の第2ワンウェイクラッチ36により第2側カバー8bの第1ボス部8cに支持されている。ハンドル軸30は、第1ワンウェイクラッチ34により糸繰り出し方向の回転が禁止されている。第2ワンウェイクラッチ36は、ハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転を迅速に禁止する。第2ワンウェイクラッチ36は、第1ボス部8cに回転不能に装着された外輪36aと、ハンドル軸30に回転自在に連結された内輪36bと、外輪36aと内輪36bの間に配置されたローラ36cと、を有している。内輪36bは、ドラグ座金37に接触可能かつ一体回転可能に連結されている。内輪36bには、ドラグ座金37に係合する係合突起36d(
図4参照)が軸方向に沿って延びて形成されている。
【0050】
ドライブギア31は、ハンドル軸30に回転自在に装着されている。ドライブギア31は、ドラグ座金37により押圧される。ドライブギア31は、ドラグ機構29により糸繰り出し方向の回転が制動される。これにより、スプール10の糸繰り出し方向の回転が制動される。
【0051】
第3ギア部材82は、ハンドル2の回転をスプール10に伝達するために設けられている。第3ギア部材82は、第2遊星歯車機構28のキャリアに一体回転可能に連結されている。第3ギア部材82は、ドライブギア31に噛み合い、ハンドル2の回転を第2遊星歯車機構28のキャリアに伝達する。キャリアに伝達された回転は、第1ギア部材80及び第2ギア部材81を介してピニオンギア32に伝達される。第3ギア部材82から第2ギア部材81までの減速比は概ね「1」である。
【0052】
<ドラグ機構の構成>
ドラグ機構29は、スプール10の糸繰り出し方向の回転をハンドル軸30周りで制動するスタードラグ型である。ドラグ機構29は、
図4及び
図5に示すように、ドラグ調整部材3と、ドラグ座金37と、ハンドルアーム2aと、第1ワンウェイクラッチ34と、カム機構38と、第1付勢部材39と、を備えている。ドラグ調整部材3は、ハンドル軸30の一端(先端)に配置されている。したがって、ドラグ調整部材3は、ハンドルアーム2aの軸方向外方に配置されている。ドラグ調整部材3は、操作部40と、操作部40に軸方向移動自在かつ一体回転可能に連結された調整ナット41と、操作部40を回転自在に支持する回転支持部材42を有している。
【0053】
操作部40は、例えば、合成樹脂製の僅かに先細りの筒状の部材である。操作部40は、回転支持部材42(移動規制部材の一例)によりハンドル軸30に対して相対回転自在に装着される。操作部40は、通常のハンドル2の回転操作の時は、ハンドル2と一体回転する。しかし、操作部40は、ハンドル2との相対回転によりドラグ力を調整操作可能である。
【0054】
操作部40は、位置決め部材44により、ハンドル軸30の軸方向外方(
図4右方)への移動が規制され、ハンドル軸30の先端側の所定位置に配置される。操作部40の外周面には、
図5に示すように、回動操作を行いやすくするために、複数(例えば5つ)の凹部40aと、凹部40aの間に配置された複数の凹凸部40bと、が周方向に間隔を隔てて形成されている。操作部40の内部には、
図4に示すように、ナット収納部40cと、ナット収納部40cの径方向外方に配置されたピン収納部40dと、が形成されている。
【0055】
ナット収納部40cは、断面が非円形の内周面を有している。この実施形態では、矩形断面の内周面を有している。非円形の内周面は、矩形断面に限定されず、六角形又は楕円形でも良い。ナット収納部40cには、調整ナット41が軸方向移動自在かつ一体回転可能に装着されている。ナット収納部40cには、径方向内方に突出する環状突起40eが形成されている。環状突起40eは、回転支持部材42に係合する。
【0056】
調整ナット41は、矩形の外周面を有している。調整ナット41は、操作部40の
回転により雄ネジ部30cに螺合してスプール軸方向に移動する。
【0057】
回転支持部材42は、操作部40を回転自在に支持するとともに、操作部40を抜け止めするために設けられている。回転支持部材42は、第2面取り部30bに係合する非円形の内周面42aを有している。この実施形態では、長円形の内周面を有している。したがって、回転支持部材42は、ハンドル軸30と一体回転する。回転支持部材42は、操作部40の環状突起40eに係合して操作部40の軸方向内方(
図4左方)への移動を規制する鍔部42bを外周面に有している。回転支持部材42は、第2面取り部30bと第1面取り部30aとの段差30fにより軸方向内方への移動が規制されている。この結果、鍔部42bにより環状突起40eの軸方向左方への移動が規制されて、操作部40の軸方向左方への移動が規制される。
【0058】
ピン収納部40dには、ドラグ調整操作により発音するドラグ操作発音機構60の打撃ピン61が進退自在に収納されている。ドラグ操作発音機構60は、操作部40の回動操作により発音する。また、ドラグ操作発音機構60は、操作部40を周方向の複数の回動位置のいずれかに位置決め可能である。ドラグ操作発音機構60は、打撃ピン61と、打撃ピン61の進出方向に付勢するコイルバネ62と、打撃ピン61が係合する音出し部材63と、を有している。打撃ピン61は、先端面が半球面のピン部材である。音出し部材63は、円板状の部材であり、ハンドル軸30に対して一体回転可能である。音出し部材63のドラグ調整部材3に対向する裏面には、打撃ピン61に係合する複数の音出し凹部63aが周方向に間隔を隔てて形成されている。音出し部材63の表面には、位置決め部材44に係合する係合突起63bが形成されている。
【0059】
位置決め部材44は、ハンドル軸30の先端に一体回転可能に装着された円板状の部材である。位置決め部材44は、ハンドル軸30の第2面取り部30bに係合する非円形の内周面44aを有している。したがって、位置決め部材44は、ハンドル軸30と一体で回転する。位置決め部材44の内周面44aは、
図11に示すように機械加工により円を平行な2つの直線で切り欠いた形状に形成されている。従来はプレス加工により、内周面44aを形成しており、
図11のA部に破線で示すように、円と直線との接続部分を半径0.3mmのR面取り(フィレット)で接続している。しかし、機械加工でこのような小径部を形成すると、工具への負担が大きくなるので、本実施形態では、
図11のA部に実線で示すように、円と直線部分を、内周面44aの円及び直線に0.2mm食い込む形の半径0.5mmのR面取り(フィレット)で接続している。これにより、内周面44aを機械加工により工具への負担を小さくして容易に形成できる。
【0060】
位置決め部材44は、ハンドル軸30の先端面に形成された雌ネジ部30eに螺合するボルト部材46の頭部46aによりハンドル軸30に一体回転可能に装着される。位置決め部材44の音出し部材63との対向面には、係合突起63bに係合する係合凹部44bが形成されている。これにより、音出し部材63がハンドル軸30と一体回転する。
【0061】
ドラグ座金37は、
図4に示すように、ハンドル軸30の第1面取り部30aに係合する非円形(例えば長孔)の内周面37aを有している。また、ドラグ座金37は、第2ワンウェイクラッチ36の内輪36bの係合突起36dに一体回転可能に連結される係合凹部37bを有している。ドラグ座金37は、ドライブギア31を押圧可能である。ドライブギア31は、ラチェットホイール35と、ドラグ座金37とに挟まれて制動される。したがって、従って、ラチェットホイール35は、ドラグ座金としても機能する。ドラグ座金37とドライブギア31との間には、例えばフェルト又はカーボン製の第1ドラグディスク47aが装着され、ドライブギア31とラチェットホイール35との間には、例えばフェルト又はカーボン製の第2ドラグディスク47bが装着されている。
【0062】
第1ワンウェイクラッチ34は、前述したように、ラチェットホイール35と図示しないラチェット爪とを有し、ハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転を禁止する。なお、第2ワンウェイクラッチ36又は第1ワンウェイクラッチ34の少なくともいずれかをドラグ機構29のワンウェイクラッチとして用いても良い。
【0063】
ハンドルアーム2aは、例えば、アルミニウム合金製の板状部材である。ハンドルアーム2aの基端は、第1位置と第1位置から糸巻取方向に揺動した第2位置とに所定角度揺動可能かつ所定角度以外で一体回転可能にハンドル軸30に連結されている。所定角度は、例えば90度以上150度以下であるのが好ましく、この実施形態では、115度から125度の範囲である。この所定角度の揺動は、カム機構38を動作させるために設けられている。ハンドルアーム2aの基端の外側面には、合成樹脂製の第1カバー部材64が装着されている。第1カバー部材64は、鍔付き筒状の部材であり、第1付勢部材39をカバーするために設けられている。第1カバー部材64は、ハンドルアーム2aに位置決めされる位置決め突起64aを有している。第1カバー部材64は、ネジ部材65によりハンドルアーム2aの外側面に固定されている。
【0064】
ハンドルアーム2aの基端部の内側面には、第2カバー部材66とカム機構38とが設けられている。ハンドルアーム2aの基端部には、カム機構38を装着するための装着孔2cが形成されている。第2カバー部材66は、カム機構38をカバーするために設けられている。第2カバー部材66は、アルミニウム合金等の金属製の有底筒状の部材である。第2カバー部材66は、複数本(例えば4本)のネジ部材68により、後述する第1カム部材72と一括してハンドルアーム2aの内側面に固定されている。
【0065】
カム機構38は、ハンドルアームの第1位置から第2位置への揺動により、ドラグ調整部材3によって調整されたドラグ力を所定量増加させるために設けられている。また、カム機構38は、ハンドルアーム2aの揺動範囲を所定角度に規制するために設けられている。カム機構38は、ハンドルアーム2aと一体回転する第1カム部材72と、第1カム部材72に係合する第2カム部材74と、を有している。第1カム部材72は、ネジ部材68により第2カバー部材66と共にハンドルアーム2aに固定されている。第2カム部材74は、ハンドル軸30の第1面取り部30aにハンドル軸30と一体回転可能に装着されている。第1カム部材72と第2カム部材74との間には、ハンドルアーム2aをがた止めする第2付勢部材76が配置されている。
【0066】
図6及び
図7に示すように、第1カム部材72は、例えば、特殊高張力黄銅等の銅系合金製のフランジ状の部材である。第1カム部材72は、ハンドルアーム2aに嵌合する装着筒部72aと、装着筒部72aの一端外周面に大径に形成されたカム受け部72bと、カム受け部72bの外周面に形成されたフランジ部72cと、を有している。装着筒部72aの内周面は、円形断面であり、ハンドル軸30に回転自在に装着される。装着筒部72aの外周面は、ハンドルアーム2aの装着孔2cに嵌合している。装着筒部72aの先端
面は、
図4に示すように、ハンドルアーム2aの側面から突出しており、後述する第1ワッシャ部材45aに接触している。これにより、ハンドルアー
ム2aと第1ワッシャ部材45aとの間での傷付きを防止している。
【0067】
図6及び
図7に示すように、カム受け部72bの第2カム部材74に対向する裏面には、直径方向に沿って配置され第2カム部材74に向けて突出する一対のカム突起72dが形成されている。また裏面には、一つのカム突起72dに近接して第2付勢部材76が係合する球面状に凹んだ係合凹部72eが形成されている。カム突起72dは、先端部に向かって先細りに形成されている。カム突起72dの先端面は、ハンドル軸30と直交する平面で構成されている。
【0068】
フランジ部72cは、第2カバー部材66をハンドルアーム2aとの間に挟んで配置される。フランジ部72cには、4つのネジ貫通孔72fが周方向に間隔を隔てて形成されている。ネジ貫通孔72fを挿通してネジ部材68をハンドルアーム2aにねじ込むことにより、第2カバー部材66とともに第1カム部材72がハンドルアーム2aに固定される。
【0069】
第2カム部材74は、
図8及び
図9に示すように、厚肉円筒状のステンレス合金等の金属製の部材である。第2カム部材74は、第1カム部材72と第2ワンウェイクラッチ36の内輪36bとの間に両者に接触して配置されている。第2カム部材74は、第1面取り部30aに係合する非円形の内周面74aを有している。第2カム部材74の第1カム部材72と対向する面には、一対の規制突起74bと、規制突起74bの間に配置された一対の傾斜カム面74cと、を有している。規制突起74bは、直径に沿って配置されており、ハンドルアーム2aを所定角度揺動可能に規制するために設けられている。規制突起74bは、カム突起72dの側面が接触可能な形状である。具体的には、規制突起74bの周方向長さは、内周側から外周側にいくにつれて長くなっている。一方の規制突起74bの端面には、第2付勢部材76を収納するための収納部74dが設けられている。
【0070】
傾斜カム面74cは、規制突起74bに対して凹んで形成されている。それぞれの傾斜カム面74cは、
図10に模式的に示すように、規制突起74bの両側に配置された第1平坦面74e及び第2平坦面74fと、第1平坦面74eと第2平坦面74fとを結ぶ傾斜面74gと、を有している。第1平坦面74e及び第2平坦面74fは、ハンドル軸30と直交する平面で構成されている。第1平坦面74eは、第2平坦面74fより凹んだ位置に形成されている。すなわち、第2平坦面74fは第1平坦面74eより第1カム部材72に近いに位置にある。
【0071】
ここで、第1平坦面74eは、ハンドルアーム2aの第1位置あるとき、
図8に二点鎖線で示すように、カム突起72dが配置される面である。第2平坦面74fは、ハンドルアーム2aの第2位置あるとき、
図8に破線で示すように、カム突起72dが配置される面である。第1平坦面74eと第2平坦面74fの軸方向の差は、例えば0.8mmから1.5mm程度である。このような第1平坦面74e及び第2平坦面74fを設けることにより、ドラグ力が釣り人の意に反して変化しにくくなる。また、ドラグ力が弱いときに第1カム部材72が安定して止まれるようになる。
【0072】
第2付勢部材76は、
図4及び
図10に示すように、第2カム部材74の収納部74dに進退自在に収納された付勢ピン78と、付勢ピン78を第1カム部材72に向けて付勢するコイルバネ79と、を有している。付勢ピン78は、第1カム部材72の係合凹部72eに係合する。第2付勢部材76は、第1カム部材72を付勢することによりハンドルアーム2aをドラグ調整部材3に向けて付勢する。これにより、ドラグ力が弱いときにハンドルアーム2aがガタツキにくくなる。また、第1位置で係合凹部72eに係合するように配置されている。このため、第1位置にハンドルアーム2aに戻しやすくなる。
【0073】
第1付勢部材39は、
図4に示すように、調整ナット41と、ハンドルアーム2aとの間に配置されている。第1付勢部材39は、一対の皿バネ43を複数組(例えば2組)有している。一対の皿バネ43は外周側が接触し内周側が離反するように配置されている。第1付勢部材39の両端には第1ワッシャ部材45a及び第2ワッシャ部材45bが配置されている。第1ワッシャ部材45aは、第1カム部材72と皿バネ43との間に配置され、第2ワッシャ部材45bは、調整ナット41と皿バネ43との間に配置されている。
【0074】
第1付勢部材39はドラグ力を細かく滑らかに変化させるために用いられる。第1付勢部材39の付勢力によりドラグ力が定まる。ドラグ調整部材3により第1付勢部材39の付勢力が調整される。
図4では、ハンドル軸30の中心軸Aの上側が、ドラグ力が最も弱い状態を示し、下側がそれより強い状態を示している。第1付勢部材39は、調整ナット41の軸方向位置により伸縮する。第1付勢部材39の付勢力は、第1カム部材72,第2カム部材74を介して第2ワンウェイクラッチ36の内輪36bに伝達され、内輪36bがドラグ座金37を押圧する。これにより、ドライブギア31が制動され、スプール10の糸繰り出し方向の回転が制動される。
【0075】
<ドラグ機構の動作>
マダイ釣りを行う時は、クラッチ操作部材11を操作してクラッチ機構16をクラッチオフ状態にする。そして、仕掛けの自重により、仕掛けを魚が群れる棚位置まで繰り出す。仕掛けを棚位置まで繰り出すと、クラッチ機構16をクラッチオン状態にする。また、ハンドルアーム2aを第1位置に配置し、魚が餌を食い込みやすくするためにドラグ力を緩めて当たりを待つ。魚の当たりがあると、ハンドル2を糸巻取方向に回転させる。すると、ハンドルアーム2aが第1位置から第2位置にハンドル軸30に対して相対回転する。このとき、ハンドルアーム2aの回転はハンドル軸30に伝達されない。しかし、第1カム部材72と第2カム部材74が相対的に回動する。これにより、
図8に示すように、第1カム部材72のカム突起72dが糸巻取方向WDに回動する。この結果、第2カム部材74の第1平坦面74eから傾斜面74gを経て第2平坦面74fに向けてカム突起72dが接触しながら移動する。この結果、第2カム部材74が第1カム部材72を第2カム部材74から離反する方向に移動させる。第2位置にハンドルアーム2aが到達すると、ハンドルアーム2aがドラグ調整部材3側に移動し、第2カム部材74の傾斜カム面74cのハンドル軸方向の差に応じて第1付勢部材39を収縮させ第1付勢部材39の付勢力が増加し、ドラグ機構29のドラグ力が所定量強くなる。ハンドルアーム2aが第2位置まで揺動すると、ハンドルアーム2aの糸巻取方向の回転がハンドル軸30に伝達される。ハンドルアーム2aが第2位置まで揺動すると、調整レバー5を用いたモータ12による電動巻取動作、ハンドル2による手動巻取動作、又はモータ12とハンドル2とによる電動及び手動巻取動作によりスプールを糸巻取方向に回転させる。
【0076】
これにより、ドラグ力の増加操作を正確かつ瞬時に行えるとともに巻取動作を行える。このため、仕掛けの合わせを迅速に行え、かつ合わせに続いて魚を確実に釣り上げることができる。
【0077】
<特徴>
(A)両軸受リールのドラグ機構29は、スプールの糸繰り出し方向の回転をハンドル軸周りで制動するスタードラグ型である。ドラグ機構29は、ドラグ調整部材3と、少なくとも一つのドラグ座金37と、ハンドル2と、第1ワンウェイクラッチ34と、カム機構38と、を備える。ドラグ調整部材3は、ドラグ力を調整するための部材である。ドラグ調整部材3は、操作部40と、操作部40に軸方向移動自在かつ一体回転可能に連結されハンドル軸30の先端側外周面に螺合する調整ナット41と、を有する。少なくとも一つのドラグ座金37は、ドラグ調整部材3より基端側でハンドル軸30に設けられる。ハンドル2は、ドラグ座金37とドラグ調整部材3との間に配置される。ハンドル2は、第1位置と第1位置より糸巻取方向の第2位置とに所定角度揺動可能かつ一体回転可能にハンドル軸30に設けられる。第1ワンウェイクラッチ34は、ハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転を禁止する。カム機構38は、ハンドル2の第1位置から第2位置への揺動により、ドラグ調整部材3によって調整されたドラグ力を所定量増加させる。
【0078】
この電動リールのドラグ機構29では、ハンドル軸30に螺合するドラグ調整部材3の操作部40を回すことにより、調整ナット41がハンドル軸30に対して軸方向に移動する。これにより、カム機構38を介してドラグ座金37への押圧力が変化し、ドラグ力が調整される。このドラグ調整部材3によりドラグ力を弱く調整して魚の当たりを待つ。魚が掛かると、ハンドル2を第1位置から第2位置に糸巻取方向に回転させると、すると、第2位置に所定角度揺動するまでは、ハンドル2の回転はハンドル軸に伝達されない。しかし、カム機構38によりドラグ力が所定量増加する。この結果、弱いドラグ力をドラグ調整部材3により設定しても、ハンドル2の糸巻取方向の回転によりそれより所定量強いドラグ力が得られる。この結果、合わせ動作を行え、また、合わせ動作に連続してハンドル2又はモータ12により巻き上げ動作を行える。また、巻き上げているときに、ドラグ力を緩めたいときは、ハンドル2を第2位置から第1位置に糸繰り出し方向に揺動させる。これにより、カム機構38によりドラグ力が弱くなる。ここでは、ドラグ調整部材3が操作部40と操作部40に一体回転可能かつ軸方向移動自在に連結された調整ナット41とを有している。このため、ドラグ調整部材3の操作部を回しても、調整ナット41だけが軸方向に移動してドラグ力を調整できる。この結果、ドラグ操作時にドラグ調整部材3の操作部40がハンドル軸方向に移動しないようになる。
【0079】
(B)ドラグ機構29において、ハンドル軸30は、先端側外周面に形成された段差30fを有する。ドラグ機構29は、回転支持部材42と、位置決め部材44と、ボルト部材46と、をさらに備える。回転支持部材42は、操作部40の基端側への移動を規制する。回転支持部材42は、段差30fにより基端側への移動が規制されてハンドル軸30に装着されている。位置決め部材44は、操作部40の軸方向外方に配置される。位置決め部材44は、回転支持部材42とで操作部40を挟んで操作部40をハンドル軸方向の所定位置に位置決めする。ボルト部材46は、位置決め部材44を抜け止めする。
【0080】
この場合には、回転支持部材42は、段差30fにより基端側への移動が規制され回転支持部材42により操作部40の基端側への移動が規制される。また、操作部40は、回転支持部材42と回転支持部材42と逆側に配置された位置決め部材44により挟まれてハンドル軸方向の所定位置に位置決めされる。位置決め部材44は、ボルト部材46により抜け止めされている。これにより、操作部40がハンドル軸の軸方向に移動しなくなる。
【0081】
(C)ドラグ機構29において、ハンドル軸30は、先端側の端面に形成された雌ネジ部30eを有する。抜け止め部材は、位置決め部材44に接触可能な頭部46aを有し、雌ネジ部30eに螺合するボルト部材46を有する。この場合には、ハンドル軸30の先端面にねじ込まれるボルト部材46の頭部46aにより位置決め部材44を抜け止めできる。
【0082】
(D)ドラグ機構29は、調整ナット41と、ドラグ座金37との間に配置され、ドラグ座金37を付勢する第1付勢部材39をさらに備える。この場合には、ドラグ調整部材3の軸方向の移動量が多くなり、第1付勢部材39の付勢力より、ドラグ力を細かく調整できる。
【0083】
(E)ドラグ機構29において、回転支持部材42は、ハンドル軸30に一体回転可能に設けられ、操作部40を回転自在に支持する。この場合には、回転支持部材42により操作部40を回転自在に支持できるので、操作部40を回転支持部材42と位置決め部材44とで挟んでも操作部40を滑らかに回動させることができる。
【0084】
(F)ドラグ機構29において、カム機構38は第1カム部材72と第2カム部材74と、を有する。第1カム部材72は、ハンドル2と一体的に回転可能かつハンドル軸30に対して軸方向移動自在である。第2カム部材は、ハンドル軸30に一体回転可能かつ軸方向移動自在に連結され、第1カム部材72に係合する。カム機構38では、ハンドル2が第1位置から第2位置に揺動すると、第1カム部材72と第2カム部材74とが離反する方向に相対移動する。
【0085】
この場合には、ハンドル2が第1位置から第2位置に揺動すると、第1カム部材72と第2カム部材74とが離反する。このため、第1カム部材72と第2カム部材74とを合わせた軸方向長さが長くなる。この結果、ドラグ座金37への押圧力が強くなりドラグ力が増加する。逆に第2位置から第1位置にハンドル2が揺動すると、ドラグ力が弱くなる。
【0086】
(G)第1カム部材72と、第2カム部材74との間に配置される第2付勢部材76をさらに備える。第2付勢部材76は、第1カム部材72をドラグ調整部材3に向けて押圧する。この場合には、ドラグ調整部材3によりドラグ力が弱く調整されても、第1カム部材72を介してハンドル2がドラグ調整部材3側に付勢されるので、ハンドル2が軸方向にガタツキにくくなる。
【0087】
(H)ドラグ機構29において、第1カム部材72は、周方向に間隔を隔てて配置され、第2カム部材74に向けて突出する一対のカム突起72dを有し、第2カム部材74は、一対のカム突起72dに接触する一対の傾斜カム面74cを有する。この場合には、カム突起72dと傾斜カム面74cとの係合により、第1カム部材72を第1位置から第2位置に揺動させると第2カム部材74を第1カム部材72から離反させることができる。このため、カム機構38の構成が簡素になる。
【0088】
(I)ドラグ機構29において、第2カム部材74は、一対の傾斜カム面74cの間に配置され、一対のカム突起72dに係合してハンドルの揺動範囲を所定角度に規制する一対の規制突起74bを有する。この場合には、第2カム部材74の傾斜カム面に係合する一対のカム突起を利用して第1カム部材72の揺動範囲を規制できる。
【0089】
(J)ドラグ機構29において、両軸受リールは、モータ12によりスプール10を糸巻取方向に駆動可能な電動リールである。この場合には、ハンドル2による合わせ又は仕掛けを魚が群れている棚に配置する棚取り作業に引き続いて即座にモータ12による巻き上げを開始できる。このため、電動リールの操作性が格段に向上する。
【0090】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0091】
(a)前記実施形態では、第1付勢部材39をドラグ調整部材3とハンドルアーム2aとの間に配置したが、本発明はこれに限定されない。第1付勢部材をハンドルアームとドラグ座金37の間に配置しても良い。
【0092】
(b)前記実施形態では、スプール10の外側にモータ12が配置されていたが、スプール内にモータが配置される電動リールのドラグ機構にも本発明を適用できる。スプール内にモータが配置される電動リールでは、ドライブギアの回転はピニオンギアに直接伝達される。
【0093】
(c)前記実施形態では、第1カム部材72にカム突起72dを設け、第2カム部材74に傾斜カム面74cを設けたが、逆でもよい。すなわち、第1カム部材に傾斜カム面を設け、第2カム部材にカム突起を設けても良い。また、傾斜カム面を両方のカム部材に設けても良い。
【0094】
(d)前記実施形態では、両軸受リールとモータによりスプール10を糸巻取方向に駆動する電動リールを例示したが、本発明はこれに限定されない。ハンドル2によりスプールを糸巻取方向に回転させる手巻きの両軸受リールにも本発明を適用できる。手巻きの両軸受リールの場合、ドライブギアの回転は、ピニオンギアに直接伝達される。
【0095】
(e)前記実施形態では、移動規制部材である回転支持部材42で操作部40を回転自在に支持したが、本発明はこれに限定されない。位置決め部材により操作部を回転自在に支持しても良い。また、移動規制部材をワッシャ形状に構成し、回転支持部材を移動規制部材と別に設けてもよい。
【0096】
(f)前記実施形態では、抜け止め部材としてボルト部材46を例示したが、本発明はこれに限定されない。抜け止め部材として、ボルト部材に代えて軸用止め輪を用いても良い。