特許第5755062号(P5755062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755062
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】階段用階段アタッチメント
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/16 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   E04F11/16 D
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-151488(P2011-151488)
(22)【出願日】2011年7月8日
(65)【公開番号】特開2013-19123(P2013-19123A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】303055914
【氏名又は名称】杉原 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】杉原 正治
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−010136(JP,U)
【文献】 実開平06−079942(JP,U)
【文献】 米国特許第04125175(US,A)
【文献】 実開昭60−195417(JP,U)
【文献】 特開2000−226919(JP,A)
【文献】 国際公開第95/011657(WO,A1)
【文献】 独国特許発明第00817033(DE,C1)
【文献】 特開2002−201778(JP,A)
【文献】 特開2007−146635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅等の建築物の既設階段に着脱自在に取り付けることができる階段用階段アタッチメントであって、
既設階段の踏板の横幅と略同一の横幅を有し、その略半分が手前側に延長する延長面部(12)を有する踏板部(11)と、この踏板部(11)の前方側に直立する蹴込み板部(13)とから成り、
踏板部(11)の延長面部(12)の裏面及び/又は手前側縁部に固定部材(15)を設け、
蹴込み板部(13)の上端側縁部に設けた固定用部材(14)によって、蹴込み板部(13)が踏板の段鼻の下面で押圧固定され、又は、蹴込み板部(13)の上下方向長さを、既設階段の踏板と段鼻との間隔距離に合致させて嵌め合わせ、前記固定部材(15)により既設階段に取り付け固定できることを特徴とする階段用階段アタッチメント。
【請求項2】
住宅等の建築物の既設階段に着脱自在に取り付けることができる階段用階段アタッチメントであって、
既設階段の踏板の横幅の略半分の横幅を有する踏板部(21)から成り、この踏板部(21)の前方縁部には前方に延長する延長部(24)を設けて既設階段の踏板の上面に載置でき、
前記踏板部(21)の手前側裏面には高さ調整可能な支柱(23)を設け、支柱(23)の下端部には既設階段の踏板の手前側の段鼻に固定できる固定部材(25)を設け、
前記踏板部(21)の前方の延長部(24)を既設階段の踏板に載置し、支柱(23)の高さを調整してその下端部の固定部材(25)により既設階段に取り付け固定できることを特徴とする階段用階段アタッチメント。
【請求項3】
前記踏板部(21)の前方裏面側にも前方に延長する固定用延長部(28)を設け、この固定用延長部(28)により既設階段の段鼻を下方から固定できるようにしたことを特徴とする請求項に記載の階段用階段アタッチメント。
【請求項4】
請求項1に記載の階段用階段アタッチメント(10)において、手前側に延長する延長面部(12)を左右何れか一方に設けたものを複数用意し、
これらを既設階段の各踏板に互い違いに固定することにより、既設階段の踏板を左右交互に互い違いに形成できることを特徴とする階段用階段アタッチメント。
【請求項5】
請求項に記載の階段用階段アタッチメント(20)を既設階段の踏板の手前側又は踏板の上に左右交互に取り付け固定することにより、既設階段の踏板を左右交互に互い違いに形成することができることを特徴とする階段用階段アタッチメント。
【請求項6】
階上床面の一段下の既設階段に請求項に記載の階段用階段アタッチメント(20)を更に取り付け固定したことを特徴とする請求項に記載の階段用階段アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種住宅等の建築物の既設階段に付加的に取り付けて踏板が左右交互に段違いとなる「互い違い階段」(登録商標)に変更することができる階段用階段アタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、踏板が左右段違いに形成された各種の互い違い形式の階段について既に複数の意匠登録を取得している。
即ち、意匠登録第1344132号、同第1356675号、同第1356676号、同第1387344号、同第1401737号、同第1401768号、同第1401769号、同第1401770号、同第1401771号、及び同第1401772号を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1344132号公報
【特許文献2】意匠登録第1356675号公報
【特許文献3】意匠登録第1356676号公報
【特許文献4】意匠登録第1387344号公報
【特許文献5】意匠登録第1401737号公報
【特許文献6】意匠登録第1401768号公報
【特許文献7】意匠登録第1401769号公報
【特許文献8】意匠登録第1401770号公報
【特許文献9】意匠登録第1401771号公報
【特許文献10】意匠登録第1401772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記登録意匠に係る互い違い形式の階段は、その全体が完成品で、この完成品を各種の住宅等に設置することとなる。
本発明においては、その課題とするところは、各種住宅等の建築物の既設の通常の階段に付加的に取り付けてこの互い違い形式の階段を簡単に形成することができる既設階段用の階段アタッチメントを提案することである。
【0005】
何故通常の形式の既設階段に代えてこのような互い違い形式の階段にするかというと、第一に先ず上り易く降り易いということが挙げられる。
また、互い違い形式とすることによって、踏板の実際の前後方向の踏み面(踏みしろ)の長さを長くすることができる。そのため、踏み外しや滑り等の恐れが少なくなるのである。
更に、本発明においては、通常の既設階段に付加的に取り付ける階段アタッチメント形式のものであるために、必要に応じて、通常の既設階段にすぐ変更し、元の形態に戻せることもその課題となる。
【0006】
上記課題を解決するために、本願出願人は、平成22年8月20日付で特願2010−185365号により階段用階段アタッチメントを既に提案しているが、本願では、この先願発明と異なる改良タイプのものを提案する。
その改良点は、踏板を支持する支柱を少なくすること、更にはその支柱を無くすることをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、住宅等の建築物の既設階段に着脱自在に取り付けることができる階段用階段アタッチメントであって、既設階段の踏板の横幅と略同一の横幅を有し、その略半分が手前側に延長する延長面部を有する踏板部と、この踏板部の前方側に直立する蹴込み板部とから成り、踏板部の延長面部の裏面及び/又は手前側縁部に固定部材を設け、前記蹴込み板部を既設階段の蹴込み板に接合して既設階段の段鼻に適合させ、前記固定部材により既設階段に取り付け固定できることを特徴とする階段用階段アタッチメントである。
ここで、「手前側に延長する延長面部」における「手前側」とは、階段を上る方向から見て手前側を意味する。以下同じである。
【0008】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、前記蹴込み板部の上端側縁部に少なくとも1つの固定用部材を設けたことを特徴とする階段用階段アタッチメントである。
【0009】
本発明の第3のものは、住宅等の建築物の既設階段に着脱自在に取り付けることができる階段用階段アタッチメントであって、既設階段の踏板の横幅の略半分の横幅を有する踏板部から成り、この踏板部の前方縁部には前方に延長する延長部を設けて既設階段の踏板の上面に載置でき、前記踏板部の手前側裏面には高さ調整可能な支柱を設け、支柱の下端部には既設階段の踏板の手前側の段鼻に固定できる固定部材を設け、前記踏板部の前方の延長部を既設階段の踏板に載置し、支柱の高さを調整してその下端部の固定部材により既設階段に取り付け固定できることを特徴とする階段用階段アタッチメントである。
ここで、「この踏板部の前方縁部には」における「前方」とは、階段を上る方向から見て前方を意味する。以下同じである。
【0010】
本発明の第4のものは、上記第3の発明において、前記踏板部の前方裏面側にも前方に延長する固定用延長部を設け、この固定用延長部により既設階段の段鼻を下方から固定できるようにしたことを特徴とする階段用階段アタッチメントである。
【0011】
本発明の第5のものは、上記第1の発明に記載の階段用階段アタッチメントにおいて、手前側に延長する延長面部を左右何れか一方に設けたものを複数用意し、これらを既設階段の各踏板に互い違いに固定することにより、既設階段の踏板を左右交互に互い違いに形成できることを特徴とする階段用階段アタッチメントである。
【0012】
本発明の第6のものは、上記第3の発明に記載の階段用階段アタッチメントを既設階段の踏板の手前側又は踏板の上に左右交互に取り付け固定することにより、既設階段の踏板を左右交互に互い違いに形成することができることを特徴とする階段用階段アタッチメントである。
上記「踏板の手前側又は踏板の上」としたのは、既設階段の一番下では、踏板の手前側に設置することとなり、既設階段の一番上の段、つまり階上床面の手前側には、既設階段の一番上の踏板の上に取り付けることとなるからである。
【0013】
本発明の第7のものは、上記第5の発明において、階上床面の一段下の既設階段に上記第3の発明に係る階段用階段アタッチメントを更に取り付け固定したことを特徴とする階段用階段アタッチメントである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1のものにおいては、この階段アタッチメントを既設階段に取り付けることによって簡単に互い違い形式の階段に変更することができ、他方、これが不要で通常の階段に戻すときにも簡単にこの階段アタッチメントを取り外して元の既設階段に容易に戻すこともできる。
この階段アタッチメントでは、踏板部の裏面に支柱を1本も配設していないために、支柱の高さ調整も不要で、取り付けも簡単と成る。
更には、踏板部の下面に支柱がなく、また突っ張り棒等の存在も無いため、階段の上り下りに際して、支柱や突っ張り棒が邪魔になることもない。
【0015】
本発明の第2のものにおいては、上記第1の発明の効果に加えて、蹴込み板部の上端側縁部に固定用部材を設けているために、取り付け固定がより確実と成る。
本発明では、蹴込み板部が、既設階段の段鼻(踏板の手前側縁部の突出部)と踏板との間に嵌め込まれて、上方向への移動(回転モーメントによる移動)が阻止され、踏板部の延長面部の裏面等に設けた固定部材の機能により踏板部の手前方向への移動が阻止されることにより、本発明に係る階段アタッチメントが既設階段に取り付け固定されるのであるが、上記固定用部材を設けることにより、本発明に係る階段アタッチメントがより強固に固定されることとなる。
【0016】
本発明の第3のものにおいては、上記発明と異なり、支柱を1本有するものではあるが、この階段アタッチメントを既設階段に取り付けることによって簡単に互い違い形式の階段に変更することができ、他方、これが不要で通常の階段に戻すときにも簡単にこの階段アタッチメントを取り外して元の既設階段に容易に戻すこともできる。
即ち、既設階段の踏板の横幅の略半分の横幅を有する踏板部から成り、前方の延長部を既設階段の踏板の上面に載置し、手前側の支柱の高さを調整して、支柱の下端部の固定部材は、既設階段の一つ下の踏み板の段鼻に取り付け固定することができるのである。
【0017】
本発明の第4のものにおいては、上記第3の発明において、踏板部の前方裏面側にも前方に延長する固定用延長部を設け、段鼻の下側から固定できるようにしたものである。
これにより、例えば、固定用延長部の下面から螺子等により締め付けて、段鼻に踏板部を固定することができることとなる。
【0018】
本発明の第5のものは、上記第1の発明に係る階段アタッチメントにおいて、左右異なる延長面部を有する複数のものを用意し、これらを既設階段の全ての段の踏板上に、延長面部を左右互い違いになるように設置することによって既設階段の全てを簡単に互い違い形式の階段に変更することができる。
【0019】
同様に、本発明の第6のものにおいても、上記第3の発明に係る階段アタッチメントを既設階段のすべての段の手前側又はその上に左右交互に設置することによって既設階段の全てを簡単に互い違い形式の階段に変更することができるものである。
【0020】
本発明の第7のものにおいては、上記第3の発明に係る階段アタッチメントを階上の床面の一段下の既設階段に取り付け固定することにより、より完全な形で、既設階段を互い違い形式の階段とすることができる。
そして、上記第5乃至第7のいずれの発明ににおいても、必要に応じて、その互い違い形式の階段を取り外して、元に既設階段の状態に戻すことも容易にできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係る階段用階段アタッチメントの全体斜視図であって、その(A)が、踏板部の手前側に延長する延長面部が左側に設けられたもの、その(B)が延長面部が右側に設けられたものを図示している。
図2】上記第1実施形態に係る階段用階段アタッチメントを既設階段に取り付け固定した状態の上方側から俯瞰した説明図である。
図3】上記第1実施形態に係る階段用階段アタッチメントを既設階段に取り付け固定した状態の下方側から見た説明図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る階段アタッチメントを図示する下方側から見た斜視図である。
図5】上記第2実施形態に係る階段アタッチメントを既設階段に固定した状態を上から俯瞰した状態の説明図である。
図6】上記第2実施形態に係る階段アタッチメントを既設階段に固定した状態を下方から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る階段用階段アタッチメントの全体斜視図であって、その(A)が、踏板部の手前側に延長する延長面部が左側に設けられたもの、その(B)が延長面部が右側に設けられたものを図示している。
【0023】
本発明の第1実施形態に係る階段アタッチメント10は、既設階段の踏板の上面に載置される踏板部11と、この踏板部11の前方側から垂直上方に起立するように設けられた蹴込み板部13とから成り、踏板部11の左半部から手前側に延長する延長面部12hを有するものと((A)図)、踏板部11の右半部から手前側に延長する延長面部12mを有するもの((B)図)との2つのタイプのものがある。これらは左右対称形状を有している。
【0024】
踏板部11は、図示はしていないが、既設階段の踏板と略同一形状及び大きさを有する。
延長面部12の平面視形状は略矩形形状で、既設階段の略半分の大きさを有していればよいが、本実施形態のように、手前側角部を面取りしてアールを持たせた形状とすることができる。デザイン性を考慮したものである。従って、延長面部12の手前側の延長長さは、既設階段の踏板の踏み面の前後方向長さと略同一である。
踏板部11、蹴込み板部13及び延長面部12は、全て木材製である。
固定部材等は、後の図面を用いて説明する。
【0025】
図2は、上記第1実施形態に係る階段用階段アタッチメントを既設階段に取り付け固定した状態の上方側から俯瞰した説明図である。
図中Sは、2階床部を示しているが、この2階床部Sの一段下の踏板F1に本実施形態に係る階段アタッチメント10hを取り付け固定する。
【0026】
この階段アタッチメント10hは、その踏板部11の左半部(左側の1/2の部分)が手前側に延長した延長面部12hが設けられたものである。
そのもう一段下の踏板F2には、階段アタッチメント10mが取り付け固定される。
この階段アタッチメント10mは、その踏板部11の右半部(右側の1/2の部分)が手前側に延長した延長面部12mが設けられたものである。
以下、階下に向かって、順次繰り返して互い違い形式の階段が形成される。
【0027】
この階段アタッチメント10は、その延長面部12の裏面で金属製アングル材等によって固定されているが、その状態は次の図3において説明する。
また、それぞれの階段アタッチメント10h、10mの蹴込み板部13の上端側縁部13uの2箇所で固定用部材14を設けている。
【0028】
この固定用部材14は、金属製の本体部からなり、その本体部の上下方向に出没自在の押圧杆が内装され、本体部の下方の摘みを回転することによりこの押圧杆が上方に突出し、その先端が当接する段鼻を押圧して、蹴込み板部13を固定できるものである。この実施形態では、固定用部材14として、現在市販のもの(商品名「強力ベンリーしまり」清水株式会社(大阪市)製)を利用している。
尚、この固定用部材は自由に選択することができる。
例えば、蹴込み板部の上端側縁部に埋込ナットを設け、この埋込ナットにボルトを螺合して、このボルトを回転させ伸長させて、段鼻の下面を押圧して固定できるようにすることもできる。
【0029】
図3は、上記第1実施形態に係る階段用階段アタッチメントを既設階段に取り付け固定した状態の下方側から見た説明図である。
2階床部Sの一段下の踏板F1には階段アタッチメント10hを固定し、その下の踏板F2には階段アタッチメント10mを固定する。
【0030】
固定に際しては、階段アタッチメント10の延長面部12の下面に設けられた固定部材15を使用する。
固定部材15は、金属製のアングル材を利用して、螺子によって延長面部12の裏面及び段鼻F1の手前側面に螺着され、固定される。
これにより、階段アタッチメント10の踏板部11が手前側に移動してしまうことを阻止することができる。
ここで、上記アングル材ではなく、延長面部12の裏面、踏板F1の手前側面、及び、踏板F1の段鼻の裏面に接合する断面Z字形状(クランク形状)の金具を利用して固定することもできる。
このように、固定部材の選択は自由である。
【0031】
更に、上述した通り、蹴込み板部13の上端側縁部の13uの2箇所に設けた固定用部材14、14によって、蹴込み板部13が踏板F1、F2の段鼻の下面で押圧固定される。
上記の固定部材15と、固定用部材14、14とによって、本発明に係る階段アタッチメント10h、10mは、それぞれ既設階段に堅固に固定される。
尚、本発明に係る階段アタッチメント10では、蹴込み板部13の上端側縁部に設けた固定用部材14は、必ずしも必須のものではなく、任意のものである。というのも、この固定用部材14を設けなくとも本発明に係る階段アタッチメント10は、その蹴込み板部13の上下方向の長さを、既設階段の踏板と段鼻との間隔距離に合致させて嵌め合わせることによって、既設階段に固定することが可能だからである。
【0032】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る階段アタッチメントを図示する下方側から見た斜視図である。
この第2の実施形態に係る階段アタッチメント20は、既設階段の踏板の半部(略1/2部分)と略同一の大きさと形状を有する木材製の踏板部21を有し、踏板部21の前方側Hに金属製の延長部24を設け、その手前側の裏面には高さ調整可能な支柱23が設けられたものである。
【0033】
支柱23の下端部には、固定手段25が設けられ、踏板部21の前方側Hの下面側には、金属製の固定用延長部28、28が設けられている。
より具体的には、延長部24は、横断面略クランク形状(Z字形状)の金属製型材を利用し、固定用延長部28、28は、それぞれ金属製板材を用いて形成しているが、この金属製板材を用いたのは、踏板部21が寄木材を利用している関係上、その補強のための機能をも発揮させるためである。
【0034】
従って、固定用延長部28は、例えば、チャンネル材やH型型材を利用して、踏板部21の前方端縁部で横断面コ字形状に形成すれば、延長部24と固定用延長部28を共に形成して、既設階段の段鼻に嵌合できる構成とすることができる。
固定用延長部28に設けた丸孔は、螺子挿通孔28hを示している。
【0035】
支柱23は、その上方に設けられた上端部27とその下方の螺子棒26とから成り、上端部27の上端固定部27hが円盤状に形成され、踏板部21に螺着される。
上端部27には、その軸方向に雌ネジ孔が設けられ、この雌ネジ孔に螺子棒26の雄ネジ部26sが螺合して、その支柱23の長さ(高さ)を調整できる。
【0036】
支柱23の螺子棒26の下端部に設けられた頭部26hは、横断面略コ字形状の金属製の固定部材25の内部に配置され、既設階段の段鼻にこの固定部材25を取り付けて、その下面の螺子29、29を締め付けて、支柱23を既設階段の段鼻に固定することができる。
以下の図5及び図6によりこの第2実施形態を既設階段に取り付け固定する状態を示す。
【0037】
図5は、上記第2実施形態に係る階段アタッチメント20を既設階段に固定した状態を上から俯瞰した状態の説明図である。
先ず、2階床部Sの手前側側縁部に延長部24を載置して、すぐ下の既設階段の踏板F1の右半部の上方に踏板部21を配置する。
【0038】
即ち、支柱を構成する螺子棒26の下端部に設けられた固定部材25の横断面略コ字形状の開放部を既設階段F1の段鼻D1に適合させる。
螺子棒26を適宜回転させて、支柱の高さを調整し、踏板部21の高さを2階床部Sの平面と同一レベルにする。
その後固定部材25の下面に配置した2本の螺子29、29を締め付けて支柱を固定することによって、本第2実施形態に係る階段アタッチメント20が取り付け固定される。
以下、同様にして、その下の踏板には、その左側にこの第2実施形態に係る階段アタッチメント20を取り付け固定し、以下これを交互に繰り返して、互い違い形式の階段が出来上がるのである。
【0039】
尚、この実施形態では、次の図6で説明するように、延長部24の下面側での固定が行なわれる。
図6は、上記第2実施形態に係る階段アタッチメント20を既設階段に固定した状態を下方側から見た説明図である。
この図から、踏板部21の下面前方側の固定用延長部28の固定をよく見て取ることができる。
【0040】
このように、第2実施形態に係る階段アタッチメント20を先ず、2階床部Sとその直ぐ下の既設階段の踏板F1に取り付け固定する。
固定に際しては、前方の延長部を2階床部S上に載置し、支柱23の高さ調整をした後、支柱23の下端の固定部材25を踏板F1の段鼻D1に螺子29によって固定し、更に、踏板部21の前方裏面側の固定用延長部28、28の下面から螺子30によって固定することができる。
【0041】
尚、この螺子30による固定用延長部28の固定は、必ずしも必須のものでなく、任意の構成である。
このようにして、本発明においては、この第2実施形態に係る階段アタッチメント20を既設階段の右半部そして左半部に交互に順次設置し、固定することにより、既設階段が簡単に互い違い形式の階段に生まれ変わるのである。
【0042】
既設階段の第1段目の手前側に設置する階段アタッチメントを左側に設置する、右側とするかも自由に設定でき、第1段目を左側とする場合には、既設階段の第1段目の踏板の手前側の左側に本発明の第2実施形態に係る階段アタッチメント20を取り付け固定すればよく、他方、右側を第一段目とする場合には、この階段アタッチメント20を第1段目の踏板の右側手前に取り付ければよい。
尚、第1段目の階段アタッチメント20においては、その支柱23の下端部の固定部材25は不要となるために、螺子棒26からこの固定部材25を取り外しておけばよく、その場合には、螺子棒26の下端部の頭部26hを螺子により直接床部に螺着することができる。勿論、この頭部26hを螺着せずに実施することも可能である。
【0043】
最後に、前記第1実施形態の図2において、階段アタッチメント10を既設階段の一番上の踏板F1に固定し、更に、その踏板部11の図中右側に、上記第2実施形態に係る階段アタッチメント20を取り付け固定することもできる。
このようにすることにより、図2において、互い違い形式の階段を、その既設階段のすべてにおいて完全な互い違い形式とすることができる。
【0044】
以上のように、第1及び第2の実施形態に係る階段アタッチメント10、20を既設階段に取り付けて互い違い形式の階段とすることができる。
そして、その互い違い形式の階段のそれぞれの踏み面は、その横幅が既設階段の半分となるものの、その前後方向の長さは既設階段の2倍となり、その踏み面に載せる片足は、その踏み面を踏み外す心配は極めて少なくなるのである。
即ち、各踏み面が踊り場の如き広さを有するものとなるのである。
尚、本発明に係る階段アタッチメントは、互い違い階段(登録商標)を既設階段に出現させるものであるが、このために、上記第1実施形態のみ、又は、上記第2実施形態のみで、これを各段部に左右交互に設置することができ、或いは、両者を組み合わせて実現することも可能なものである。
【0045】
以上、実施形態について説明したが、本発明においては、以下の通りその形態を種々変更することができる。
上記第1実施形態においては、その踏板部及び蹴込み板部の形状と大きさは、既設階段の大きさと形状にほぼ同じとしたが、延長面部の形状は、適宜変更することができ、略矩形形状やその手前角部を面取りしてアールを付けた形状とすることができる。
その延長面部の前後方向の長さは、既設階段の前後方向長さと略同一とする。これにより、互い違い形式の階段の各踏み面が既設階段の2倍の長さとなる。
【0046】
延長面部の裏面等に設ける固定部材も各種自由に選択することができる。その設ける個数も2個以上であっても良い。
固定部材は、上記第1実施形態では、延長面部の裏面に設けたが、踏板部11の手前側縁部と既設階段の段鼻の手前側縁部及び/又は下面に接合する金具を用いて固定することもできる。
また、蹴込み板部の上端側縁部に設ける固定用部材も自由に選択することができ、その設ける数も自由である。
【0047】
上記第2実施形態においても、その踏板部の平面視形状を略矩形形状とするばかりでなく、手前側の角部を面取りし、アールを付加してデザイン性を高めて自由に設計することができる。
その前後方向の長さは既設階段の前後方向の長さと略同一とすればよい。これにより、踏み面の前後方向長さを既設階段の2倍とすることができる。
支柱も、高さ調整可能なものであればよく、その他の構成のものを採用することができる。
【0048】
更に、本発明に係る階段アタッチメントを既設階段に設置した後に、踏板部の上に各種のシート、マット等を敷設して、滑り止め部材又はクッション部材を付加することもできる。
特に第2実施形態では、延長部が既設階段の段鼻上面に載置して、外に現われるために、各種シートやマットを敷設することが望ましい。
【0049】
以上、本発明は、これまでにない極めてユニークで画期的な住宅等の建築物の既設階段に互い違い形式の階段を出現させることのでき、その各ステップの踏み面の前後方向長さを従来の2倍とし、安全性に優れた階段用階段アタッチメントを提供することができたものである。
【符号の説明】
【0050】
10、20 階段アタッチメント
11、21 踏板部
12 延長面部
13 蹴込み板部
14 固定用部材
15 固定部材
23 支柱
24 延長部
25 固定部材
26 螺子棒
27 上端部
28 固定用延長部
D 段鼻
F 踏板
S 2階床部
図1
図2
図3
図4
図5
図6