(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、複数の流体をインラインで混合する方法としては
図13に示すような縮径部104、スロート部105、拡径部106が連続して形成された絞り流路を有するベンチュリ管を使用した方法が用いられている。
図13では、入口流路101から流入した主流体は、縮径部104、スロート部105、拡径部106の順で通過して出口流路103へ流出する。この場合、スロート部105の断面積は入口流路101及び出口流路103の断面積よりも小さく設計されている。このため、スロート部105を流れるときに流速が増大し、これによりスロート部105の部分で負圧が生じる。その結果、スロート部105付近に連通されている吸引流路102から負圧によって副流体が吸引され、主流体と混合されて出口流路103から流出する。このようなインライン型流体混合装置の利点は、副流体を注入するための特別な装置、例えばポンプ等が不要となることである。
【0003】
しかしながら、このような流体混合装置では、吸引される流体がスロート部105の内周に連通した吸引流路102より周方向に偏った方向から合流するため、流路内で混合ムラが起こりやすい。この混合ムラを回避して、より均一に混合撹拌するためにはインライン型流体混合装置の下流側にさらに静止型のミキサー等を設置する必要がある。
【0004】
上記の問題点を解決するため、
図14に示すようなジェットノズルを用いた液体混合装置(特許文献1参照)が提案されている。この液体混合装置は、原水通路107に、薬液導入ポンプ108により吐出される薬液のエジェクタ109とエジェクタ109の下流側に設けられたミキサ110とを備え、エジェクタ109のノズル部材111の直ぐ下流側に、ノズル部材111のジェット112より断面積の大きい負圧発生空間113が設けられる。ノズル部材111の内部通路114には、原水通路107から原水が導入され、導入された原水がジェット112から噴射されることにより負圧発生空間113に負圧が発生して、導入連絡通路115から薬液が導入される。
【0005】
このようなエジェクタ109を用いると、導入連絡通路115から流入する薬液は、ノズル部材111の外壁116に沿って全周方向から原水へと混入される。このため、従来のベンチュリ管を用いた混合方法に比べて薬液をより均一に混ぜることが可能となる。
【0006】
しかしながら、上述した従来の液体混合装置においては、導入連絡通路115から流入する薬液は、ノズル部材111の外壁116の外周における最短ルートの流路を通って負圧発生空間113へ偏って流れ易い。つまり、
図14の下側から負圧発生空間113へは薬液が流れにくい。このため、原水と薬液との十分な混合ができずに混合ムラが発生しやすい。この混合ムラを回避するためには、エジェクタ109の下流側に静止型のミキサー等を設置する必要があり、この場合には装置全体が複雑になり、装置の製造コストが増大する。
【0007】
一方、ノズル部材111のジェット112の断面積をさらに小さくして原水が噴射される速度を増加させることで、混合効果を高めることは可能である。しかしながら、原水の流速が一定以上になると、キャビテーションが発生し、発生したキャビテーションによってエジェクタ109の下流側に位置する配管の内壁が損傷するおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
−第一の実施の形態−
以下、
図1〜
図6を参照して本発明の第一の実施の形態に係るインライン型流体混合装置について説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態に係るインライン型流体混合装置の構成を示す縦断面図であり、
図2は、
図1の要部拡大図である。この流体混合装置は、外形が略円柱状の本体1と、本体1に嵌合される、外形が略円柱状のノズル部材2とを有する。
【0013】
本体1の一端面には、ノズル部材2が嵌挿される受容部6が設けられ、他端面には、出口流路5を形成する出口開口部22が設けられている。受容部6の内周面の開口側には雌ネジ部11が設けられている。受容部6の底面23には円環状溝部10が設けられ、円環状溝部10の外周面は雌ネジ部11の略延長線上に位置している。本体1の内部には、受容部6の底面中心部に形成され、出口開口部22に向けて円錐台形状に縮径する縮径部7と、縮径部7に連設され、円筒面をなすスロート部(細径部)8と、スロート部8に連設され、出口開口部22に向けて円錐台形状に拡径する拡径部9とが、それぞれ本体1の中心軸(円柱の中心軸)と同軸上に設けられている。これら縮径部7とスロート部8と拡径部9とにより、縮径部7から出口開口部22にかけてベンチュリ効果を有する出口流路5が形成されている。なお、拡径部9の端部から出口開口部22までは、円筒面により流路が形成されている。
【0014】
図3は、本体1の受容部6の底面23の正面図(
図1のIII−III線断面図)である。
図3に示すように、本体1の外周面には、周方向所定位置(
図3では頂部)に第二入口開口部21が設けられ、第二入口開口部21は円環状溝部10に連通している。受容部6の底面23には、円環状溝部10から縮径部7の周縁にかけて複数の放射曲線状の溝部12が周方向等間隔に設けられている。
【0015】
図1に示すように、ノズル部材2は、外周面に雄ネジ部15が設けられた円柱部13と、円柱部13の一端面に円柱部13と同軸上でかつ円錐台形状に突設された突出部14とを有する。円柱部13の他端面には第一入口開口部20が設けられ、突出部14の端面には吐出口16が設けられている。ノズル部材2の内部には、流路の途中から吐出口16に向けて縮径された円錐台形状のテーパ部17がノズル部材2の中心軸と同軸上に設けられ、第一入口開口部20から吐出口16にかけて、出口側で絞られる第一入口流路3が形成されている。なお、第一入口開口部20からテーパ部17の一端部およびテーパ部17の他端部から吐出口16までは、円筒面により流路が形成されている。
【0016】
ノズル部材2の雄ネジ部15は、円柱部13の端面24が本体1の受容部6の底面23に当接するまで本体1の受容部6の雌ネジ部11に密封状態で螺合され、ノズル部材2が本体1の受容部6に嵌挿されている。このとき、本体1の縮径部(凹部)7内に突出部(凸部)14が収容され、本体1の受容部6の底面23に設けられた溝部12とノズル部材2の突出部14側の端面24とによって連通流路18が形成されている。さらに、本体1の縮径部7の内周面(テーパ面)とノズル部材2の突出部14の外周面(テーパ面)との間にはクリアランスが設けられ、このクリアランスによりテーパ面に沿って環状流路19が形成されている。
【0017】
これにより、第二入口開口部21から円環状溝部10、連通流路18、および環状流路19を通って本体1のスロート部8に連通し、出口側で絞られる第二入口流路4が形成されている。なお、本体1の受容部6の底面23とノズル部材2の突出部14側の端面24とが当接せずに、両者の間に適度なクリアランスが設けられても良い。クリアランスが設けられる場合、そのクリアランスの部分と溝部12の部分とが、円環状溝部10と環状流路19とを連通する連通流路18を形成する。
【0018】
溝部12の形状は
図3に示したものに限らず、例えば
図4に示すように、ノズル部材2内の第一入口流路3の中央軸線に対し偏芯して直線状に複数の溝部12bを設けてもよい。すなわち、ノズル部材2内の流路中央軸線とは交差せずに径方向外側に延びる直線に沿って溝部12bを設けてもよく、旋回流を発生させるために縮径部7の周縁部の円周に対し正接して連通していれば、溝部12の形状は特に限定されない。溝部12の断面形状及び溝部12の本数についても特に限定されない。
【0019】
なお、本体1およびノズル部材2の材質は、使用する流体によって侵されない材質であれば特に限定されず、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどいずれでも良い。特に流体に腐食性流体を用いる場合は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオロライド、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂などのフッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂製であれば腐食性流体に用いることができ、腐食性ガスが透過しても配管部材の腐食のおそれがないため好適である。本体1またはノズル部材2の構成材を透明または半透明な部材としてもよく、この場合には流体の混合の状態を目視で確認できるため好適である。流体混合器に流す物質によっては各部品の材質は鉄、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属や合金であっても良い。特に流体が食品である場合、衛生的で寿命の長いステンレスが好ましい。本体とノズルとの組立方法は螺着、溶接、溶着、接着、ピン止め、嵌め合わせ等の内部流体の密閉性が保たれる方法であればいずれの方法でもよい。第一入口開口部20、第二入口開口部21及び出口開口部22にはそれぞれ流体を導入及び排出するための配管(図示せず)が接続されるが、その接続方法は特に限定されない。
【0020】
以下、本発明の第一の実施形態の動作について説明する。本発明の第一の実施の形態に係るインライン型流体混合装置においては、第一入口開口部20から主流体を導入して発生した負圧によって第二入口開口部21から副流体が吸引される場合と、第二入口開口部21から主流体を導入して絞り流路に発生した負圧によって第一入口開口部20から副流体が吸引される場合のいずれかを選ぶことができる。
【0021】
まず、より効果的に両流体の混合を行うことができる第二入口開口部21から主流体を導入する場合について説明する。
【0022】
図1において、第二入口開口部21からポンプなどの圧送手段により導入された主流体は、第二入口流路4を通過して流れる。すなわち、円環状溝部10から連通流路18及び環状流路19を経て本体1のスロート部8へ流入する。円環状溝部10から連通流路18へと主流体が流れる際、流路の開口面積が縮小するために、円環状溝部10内で一時的に主流体が満たされる。この状態から主流体は連通流路18を通って環状流路19へと流れるため、スロート部8に流路の全周から均一に主流体が流れ込む。このとき、連通流路18は、環状流路19に対し主流体の流れが放射曲線状となるように形成されているため、円環状溝部10に導入された主流体は、環状流路19内を旋回しながら環状流路19の全周から均一にスロート部8へ流れる。スロート部8へ流入した主流体は旋回流となって出口流路5を流れる。すなわち、拡径部9を通って出口開口部22へ向かうが、旋回流は拡径部9の内周面に沿って流れるため、旋回流の回転半径は徐々に大きくなる。
【0023】
第二入口開口部21から環状流路19を経てスロート部8へ流入した主流体は、絞り流路である縮径部7、スロート部8、拡径部9を順次流れ、これによりベンチュリ効果によってスロート部8で負圧が発生する。スロート部8に負圧が発生することにより、スロート部8には、ノズル部材2の第一入口開口部20、第一入口流路3および突出部14先端の吐出口16を介して副流体が吸引され、スロート部8で主流体に合流する。スロート部8には、環状流路19を介して全周から偏ることなく主流体が旋回流として流れ込んでおり、この旋回流によって生じる主流体の撹拌作用により、主流体と副流体とがムラなく均一に混合される。
【0024】
このとき、混合された流体の流速が速くなると、スロート部8から拡径部9へ流れるときにキャビテーションが発生する。しかしながら、本実施の形態では、環状流路19からスロート部8へ流入した主流体は旋回流となって拡径部9の内周面に沿って流れるので、キャビテーションにより発生した気泡は管路の軸心付近に集められる。このため、管壁がキャビテーションによって損傷することを防止できる。また、キャビテーションの作用により主流体と副流体はさらに撹拌され、一層ムラなく均一に混合される。
【0025】
一般に配管内を流れる流体の流速が速くなると流体の静圧は低下する。しかし、配管内を流れる流体では、同じ流量であっても通常の軸方向流れよりも旋回流の方が回転による流れが加わるため、絶対的な流速が速くなり、静圧の低下はより大きい。従って、本実施形態のように、環状流路19からスロート部8へ主流体を流すことで絞り流路に負圧を発生させ、第一入口流路3から導入される副流体を吸引する場合には、旋回流を発生させて混合させた方が負圧は大きくなり、より多くの副流体を第一入口流路3から吸引することができる。これにより副流体を吸引する能力が高くなり、主流体と副流体との混合比率の調整範囲を拡大できる。このように旋回流を発生させることで、広範囲の混合比率に調節が可能なインライン型流体混合装置を得ることができる。
【0026】
ここで、環状流路19から主流体が旋回流として流入した場合(実験例1)と旋回せずに流入した場合(比較例1)の流量測定試験の試験結果について説明する。この流量測定試験におけるインライン型流体混合装置のスロート部8の内径は6mmであり、ノズル部材2の吐出口16の内径は3mmである。試験に用いた装置の第二入口開口部21にはポンプにより主流体(水)を導入し、第一入口開口部20には圧送手段を用いずに副流体(水)を導入し、各開口部20、21付近に設置させた流量計で流量を測定した。
【0027】
〔実験例1〕
実験例1では、図
3に示すように本体1の溝部12を放射曲線状に形成し、旋回流が発生するように装置を構成する。この装置を用いて、装置内に流す主流体の流量を変化させたときの第二入口流路4に導入した主流体(水)の流量と、第一入口流路3から吸引された副流体(水)の流量を測定した。
【0028】
〔比較例1〕
比較例1では、
図5に示すように本体1の溝部25を中心軸から放射状に形成し、旋回流が発生しないように装置を構成する。この装置を用いて、装置内に流す主流体の流量を変化させたときの第二入口流路4に導入した主流体(水)の流量と、第一入口流路3から吸引された副流体(水)の流量を測定した。
【0029】
図6は、上記実験例1および比較例1における試験結果を示す特性図である。図中、横軸は第二入口開口部21に導入した主流体(水)の流量、縦軸は第一入口開口部20から吸引された副流体(水)の流量である。
図6より、同じ流量でも旋回流を発生させた方(実験例1)が旋回流を発生させない場合(比較例1)よりも副流体の吸引量が多いことがわかる。
【0030】
次に、第一入口開口部20から主流体を導入する場合について説明する。
【0031】
第一入口開口部20からポンプなどの圧送手段により導入された主流体は、第一入口流路3を通過して流れる。すなわち、テーパ部17を経て吐出口16よりスロート部8へ流入する。このとき、テーパ部17で流路が絞られることにより主流体の流速が増加し、増速された主流体は吐出口16からスロート部8へ流れ、スロート部8で負圧が発生する。スロート部8で負圧が発生することにより、第二入口開口部21から環状流路19を通って副流体が吸引される。吸引された副流体は、放射曲線状の連通流路18を通過することで旋回流となり、スロート部8へ流入する。主流体と副流体が混合する作用は、第二入口開口部21から主流体を導入したときと同様なので、説明を省略する。
【0032】
以上のように本実施の形態に係るインライン型流体混合装置によれば、第一入口開口部20と第二入口開口部21のいずれから主流体を導入しても、スロート部8で発生させた負圧により副流体を吸引することができる。このため、副流体を流す流路側にポンプなどの圧送手段を設ける必要がなく、部品点数を低減できる。また、旋回流を発生させることで撹拌効果が得られるとともに、副流体の吸引量を増加させることができる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、主流体を第一入口開口部20および第二入口開口部21のいずれか一方から導入し、流路に負圧を発生させていずれか他方の入口流路から副流体を吸引するようにしたが、ポンプ等の圧送手段を補助的に用いて副流体をインライン型流体混合装置内へ導入してもよい。このとき、圧送手段による吐出圧が低圧であっても、良好な流体混合の効果が得られる。この場合にも、旋回流による撹拌効果とキャビテーションによる配管内壁の損傷を防止する効果が得られる。
【0034】
上記実施の形態では、ノズル部材2の突出部14の形状を円錐台形状としたが、円柱形状としてもよい。突出部14の長さは縮径部7の軸線長さとほぼ同じか若干短くすることが好ましい。ノズル部材2の吐出口16の内径は本体1のスロート部8の内径より小さい方が好ましく、例えばスロート部8の内径に対する比率αは0.5〜0.9倍であることが好ましい。すなわち、吐出口16の内径をスロート部8の内径より小さくしてスロート部8での流体混合を高めるためには、吐出口16からスロート部8へ流入する流速が速い方がよく、αは0.9倍以下であることが好ましい。また、吐出口16を介して流れる流体の流量を確保するためには、αは0.5倍以上であることが好ましい。一方、突出部14の出口開口部22側の端面の周縁部外径は、スロート部8の内径より僅かに小径であることが好ましく、スロート部8の内径に対する比率βは0.7〜0.95倍であることが好ましい。すなわち、周縁部外径をスロート部8の内径より小さくして環状流路19からスロート部8へ流入する螺旋流をスロート部8の流路内周面に沿って流れ易くするためには、βは0.7倍以上であることが好ましい。また、縮径部7の内周面に対しクリアランスを設けて環状流路19を形成するためには、βは0.95倍以下であることが好ましい。
【0035】
インライン型流体混合装置により混合される異種流体としては、気体、液体等の物質の相が異なる流体、物質の温度、濃度、
粘度等が異なる流体、物質そのものの種類が異なる流体等、いかなるものでもよい。例えば一方を液体、他方を気体として、液体に気体を混合して溶解させる場合にも適用できる。この場合、液体をキャビテーションが発生する条件で流体混合装置内に一方の流路から導入すれば、キャビテーション現象によって液体に溶存している気体が気泡となって液体から脱気されるために、他方の流路から導入される別の気体(たとえばオゾンガス等)を効果的に溶け込ませることが可能となる。
【0036】
−第二の実施の形態−
図7、
図8を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施の形態が第一の実施の形態と異なるのは、連通流路18の構成である。すなわち第一の実施の形態では、本体1の受容部6の底面23に溝部12を設けて連通流路18を形成したが、第二の実施の形態では、ノズル部材2の突出部14側の端面24に溝部を設ける。
図7は、第二の実施の形態に係るインライン型流体混合装置の要部構成を示す図であり、ノズル部材2を
図1の出口開口部22側から見たときの正面図である。なお、
図1,2と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0037】
図7に示すように、ノズル部材2の端面24には連通流路18を形成する複数の溝部26が周方向均等に設けられている。なお、図示は省略するが、本体1の受容部6の底面23に溝部は形成されていない。溝部26はノズル部材2の端面の外周縁から突出部14の根元周縁に設けられた外周溝部27の円周に対して正接して連通するように放射曲線状に設けられ、本体1にノズル部材2を螺合したときにノズル部材2の溝部26と本体1の受容部6の底面23とによって連通流路18が形成される。これにより、第二入口開口部21から円環状溝部10、連通流路18、環状流路19を通って本体1のスロート部8に連通する第二入口流路4が形成される。この場合、連通流路18を流れた流体は、突出部14の外周面に沿った旋回流となる。本実施形態の他の構成及び動作は第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0038】
なお、溝部26は
図7に示すような放射曲線状に限らず、
図8に示すような流路の中央軸線に対して偏芯して直線状に形成された溝部26bであってもよく、外周溝部27の円周に対して正接して連通していればその形状は特に限定されない。また、溝の断面形状及び溝の本数についても特に限定されない。
【0039】
本実施形態のようにノズル部材2側に溝部26を設けることよって、分解時の溝部26の清掃が容易になる。また、ノズル部材2を、溝部26の構成を変化させた他のノズル部材2に交換することで、主流体の導入条件や副流体の吸引条件を容易に変更することができる。
【0040】
−第三の実施の形態−
図9a,9bを参照して本発明の第三の実施形態について説明する。第三の実施の形態が第一の実施の形態と異なるのは、連通流路18の構成である。すなわち、第一の実施の形態では、本体1とノズル部材2とが嵌合するテーパ面の径方向外側の受容部底面23に溝部12を設けて連通流路18を形成したが、第三の実施の形態では、テーパ面に溝部を設ける。
図9aは、第三の実施の形態に係るインライン型流体混合装置を構成する本体1の構成を示す縦断面図である。なお、
図1,2と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0041】
図9aに示すように、本体1の縮径部7の内周面には螺旋状の溝部(螺旋溝部)28が形成されている。ノズル部材2は、本体1の受容部6の底面23とノズル部材2の突出部14側の端面24との間に適度なクリアランスを保つように本体1に螺合され、このクリアランスにより連通流路18が形成されるとともに、ノズル部材2の突出部14の外周面と本体1の縮径部7の螺旋溝部28とによって環状流路19が形成される。これにより、第二入口開口部21から円環状溝部10、連通流路18、環状流路19を通って本体1のスロート部8に連通する第二入口流路4が形成される。この場合、環状流路19を流れる流体は、突出部14の外周面に沿った旋回流となる。本実施形態の他の構成は第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0042】
次に、第三の実施形態の動作について説明する。第二入口開口部21から連通流路18を経て環状流路19へ流入した主流体は、螺旋溝部28によって形成された螺旋状の環状流路を流れることで環状流路19内を旋回しながらスロート部8へ流入する。スロート部8へ流入した主流体は、旋回流のまま出口流路5の拡径部9を通り、出口開口部22へ向かう。本実施形態の他の動作は第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0043】
なお、螺旋溝部28の本数及び溝の断面形状については特に限定されない。縮径部7の内周面とノズル部材2の突出部14の外周面とは当接してもよく、適度なクリアランスを保ってもよい。縮径部7の内周面と突出部14の外周面とを当接させることによって、縮径部7と突出部14の流路軸線を合わせることができる。縮径部7と突出部14の流路軸線を合わせることは、特に小口径の場合に重要である。また、縮径部7の内周面と突出部14の外周面との間のクリアランスを調整することによって、主流体の導入条件や副流体の吸引条件を調整することができる。
【0044】
縮径部7の内周面の全域にわたって螺旋溝部28を形成するのではなく、
図9bに示すように縮径部7の上流側端部から中間部にかけてのみ螺旋溝部28を形成し、中間部よりも下流側を平坦に形成してもよい。この構成によれば、縮径部7と突出部14との間の環状流路19は、螺旋溝部28を含む旋回部37と、螺旋溝部28の下流側に単なるクリアラスが形成された平坦部38とを有する。旋回部37の長さは、旋回流を発生させることができれば特に限定されず、平坦部38の長さは、旋回部37で発生した旋回流を環状流路19の全周から均一にスロート部8に流入させることができれば特に限定されない。
【0045】
−第四の実施の形態−
図10を参照して本発明の第四の実施形態について説明する。第三の実施の形態では、本体1の縮径部7の内周面に螺旋溝部28を形成したが、第四の実施形態では、ノズル部材2の突出部14の外周面に螺旋溝部を形成する。
図10は、第四の実施の形態に係るインライン型流体混合装置を構成するノズル部材2の構成を示す側面図である。なお、
図1,2と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0046】
図10に示すように、ノズル部材2の突出部14の外周面には螺旋溝部29が形成されている。ノズル部材2は、本体1の受容部6の底面23とノズル部材2の突出部14側の端面24との間に適度なクリアランスを保つように本体1に螺合され、このクリアランスにより連通流路18が形成されるとともに、ノズル部材2の突出部14の螺旋溝部29と本体1の縮径部7の内周面とによって環状流路19が形成される。これにより、第二入口開口部21から円環状溝部10、連通流路18、環状流路19を通って本体1のスロート部8に連通する第二入口流路4が形成される。この場合、環状流路19を流れる流体は、突出部14の外周面に沿った旋回流となる。本実施形態の他の構成及び動作については第三の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0047】
−第五の実施の形態−
図11a、
図11bを参照して本発明の第五の実施の形態について説明する。第五の実施の形態が上述した他の実施の形態と異なるのは、主にノズル部材2の形状である。すなわち、第五の実施の形態では、円柱部13と突出部14との間に、外形が細径の中間部31を設ける。
図11aは、第五の実施の形態に係るインライン型流体混合装置の構成を示す縦断面図であり、
図11bは、
図11aのノズル部材2の構成を示す斜視図である。なお、
図1,2と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0048】
図11aに示すように、本体1は、円筒部32aと円筒部32aの中間部側面から突設された接続部32bとを有する略T字状の筒状ケーシング部34と、ケーシング部34内に嵌合された流路部36とによって構成されている。接続部32bの端部には第二入口開口部21が設けられている。円筒部32aの両端部内周面には、それぞれ雌ねじ部33が設けられている。
【0049】
流路部36は、一端部側に外形が略円柱形状の小径部36aを有し、他端部側に外形が略円柱形状でかつ小径部36aよりも大径の大径部36bとを有する。大径部36bの端部外周面には雄ねじ部35aが設けられ、雄ねじ部35aはケーシング部34の雌ねじ部33に螺合し、流路部36がケーシング部34に嵌合されている。この嵌合状態では、ケーシング部34と小径部36aとの間に円環状溝部10が形成され、円環状溝部10は接続部32a内の流路に連通している。流路部34の内部には、縮径部7とスロート部8と拡径部9とが連設され、出口流路5が形成されている。
【0050】
ノズル部材2は、円柱部13と突出部14との間に、ノズル部材2の中心軸と同軸上に外形が略円柱形状の中間部31を有する。中間部31の外径は、中間部31に隣接する円柱部13の外径および突出部14の外径よりも小さく、ノズル部材2の外周面には中間部31によって凹部が形成されている。
図11bに示すように、突出部14の外周面には、大径側に螺旋溝部29aが設けられ、小径側に螺旋溝部29の底面と連なるように円錐面29bが形成されている。
螺旋溝部29aの外周面の傾斜角度(テーパ角度)と縮径部7の内周面の傾斜角度(テーパ角度)は互いに等しい。円柱部13の端部外周面には雄ねじ部35bが設けられている。
図11aに示すように雄ねじ部35bはケーシング部34の
雌ねじ部33に螺合し、ノズル部材2はケーシング部34内に嵌合している。
【0051】
この嵌合状態では、突出部14の螺旋溝部29aにおける外周面が流路部36の縮径部7の内周面に当接し、螺旋溝部29aの周囲および円錐面29bの周囲には、それぞれ旋回部37および平坦部38よりなる環状流路19が形成されている。また、中間部31の周囲には、流路部36の上流側端面と、円柱部13の下流側端面と、中間部31の外周面と、突出部14の上流側端面とにより、連通流路18が形成されている。これにより第二入口開口部21から円環状溝部10、連通流路18、環状流路19を通ってスロート部8に連通する第二入口流路4が形成される。
【0052】
このような構成により、第二入口開口部21を介して導入された主流体は連通流路18を流れ、突出部14の上流側の端面から旋回部37に流入する。旋回部37に流入した主流体は、旋回流となり、その後、平坦部38を流れることによって環状流路19の全周から均一にスロート部8へ流入する。
【0053】
本実施の形態において、環状流路19の平坦部37の上流側と下流側の流路断面積は略同一であることが好ましい。これにより主流体が平坦部37を流れるときに、主流体の流速や流量、旋回流の流れの変動が抑えられ、良好な流れを維持できる。このため、第二入口流路4から流入した主流体の流れにより、スロート部8に安定して効率的に副流体を吸い込むことができる。
【0054】
本実施の形態において、突出部14の下流側端面と縮径部7の下流側縁部(縮径部7とスロート部8との接続部)とは、ノズル部材2の中心軸線に垂直な互いに同一の面上、もしくは突出部14の端面が縮径部7の縁部よりやや上流側に位置することが好ましい。すなわち、凹部(縮径部7)の下流側縁部と凸部(突出部14)の下流側端面とが、略同一面上に設けられることが好ましい。この場合、主流体が環状流路19を通過すると、環状流路19の出口付近で流路断面積が拡大することによりキャビテーションが発生すると思われる。したがって、キャビテーションが発生しやすい箇所で主流体と副流体とが合流することにより、主流体と副流体をより均一に混合できる。
【0055】
なお、縮径部7の下流側縁部と突出部14の下流側端面との位置関係においては、これらを同一面上に設けようとしても、各部品の寸法公差や組立誤差などにより、突出部14の端面が縮径部7の縁部の上流側または下流側にずれる場合がある。このように突出部14の端面と縮径部7の縁部とが完全に同一面上になく、一方が他方の上流側または下流側にずれるような場合も、実質的には同一面上にあるものとして、本明細書では同一面上と呼ぶ。すなわち、同一面上とは、完全な同一面だけでなく、ほぼ同一面上にある場合も含む。
【0056】
本実施の形態では、ケーシング部34と流路部36とにより本体1が構成され、ケーシング部34に流路部36とノズル部材2とが螺合される。このような構成により、連通流路18や環状流路19の形状を容易に変更することができ、主流体と副流体の流れを適宜修正することができる。なお、本実施の形態の他の構成および動作は第四の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。旋回部37と平坦部38を突出部14に代えて縮径部7に設けてもよい。
【0057】
−第六の実施の形態−
図12を参照して本発明の第六の実施形態について説明する。第一の実施の形態では、本体1とノズル部材2との対向面の間に形成される第二入口流路4において旋回流を発生させるようにしたが、第六の実施の形態では、ノズル部材2の内部の第一入口流路3において旋回流を発生させるように構成する。
図12は、第六の実施の形態に係るインライン型流体混合装置の構成を示す縦断面図である。なお、
図1,2と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0058】
図12に示すように、本体1の第一入口流路3内には、外径がテーパ部17の上流の第一入口流路3の内径とほぼ等しく形成された捻り羽根形状の旋回子30が挿入されて配置されている。なお、図示は省略するが、本体1とノズル部材2には溝部(
図3の溝部12等)は形成されていない。ノズル部材2は、本体1の受容部6の底面23とノズル部材2の突出部14側の端面24との間に適度なクリアランスを保つように本体1に螺合され、このクリアランスにより連通流路18が形成されるとともに、ノズル部材2の突出部14の外周面と本体1の縮径部7の内周面とによって環状流路19が形成される。第一入口流路3では、旋回子30の捻りによって旋回流が発生し、この旋回流は吐出口16からスロート部8へ流入する。なお、旋回流を発生させるのであれば、旋回子30の形状は捻り羽根形状に限らない。本実施形態の他の構成は第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0059】
次に、第六の実施形態の動作について説明する。
図12において、第一入口開口部20からポンプなどの圧送手段により第一入口流路3へ導入された主流体は、旋回子30の作用によって第一入口流路3内で旋回流となり、テーパ部17を経て突出部14先端の吐出口16より本体1のスロート部8へと流入する。テーパ部17で流路が絞られたことによりスロート部8で負圧が発生するが、旋回流は流路の外周側ほど絶対的な流速が早くなるため、発生する負圧も外周部のほうが大きくなる。従って、スロート部8の内周面と連続して形成された環状流路19の開口部付近には大きな負圧が発生することとなり、第二入口開口部21から副流体が効果的に吸引される。このとき、スロート部8で主流体と副流体が混合されるが、混合された主流体と副流体は、スロート部8の流路全周から旋回流として流入される主流体の撹拌作用によりムラなく均一に混合される。
【0060】
一方、第二入口開口部21からポンプなどの圧送手段により主流体を導入した場合には、第二入口開口部21から環状流路19を経てスロート部8へ流入した主流体は、絞り流路である縮径部7、スロート部8、拡径部9を通過することでベンチュリ効果によってスロート部8で負圧が発生する。これによりノズル部材2の突出部先端に設けられた吐出口16からは、第一入口開口部20から第一入口流路3に副流体が吸引される。吸引された副流体は旋回子30を通過することで旋回流となり、スロート部8へ流入する。主流体と副流体が混合する作用は第一入口開口部20から主流体を導入したときと同様なので説明を省略する。
【0061】
なお、上記第一の実施の形態〜第五の実施の形態では、第二入口開口部21から流入する流体が旋回流となるように構成し、上記第六の実施の形態では、第一入口開口部20から流入する流体が旋回流となるように構成したが、第一入口開口部20及び第二入口開口部21から流入する流体がともに旋回流となるように構成してもよい。すなわち、第一の実施の形態〜第六の実施の形態を任意に組み合わせてインライン型流体混合装置を構成してもよい。第一入口開口部20及び第二入口開口部21から流入する流体がともに旋回流となるように構成する場合には、吐出口16からスロート部8へ流入する旋回流と環状流路19からスロート部8へ流入する旋回流とが互いに干渉し合うことにより、撹拌効果を高めた混合を行うことができる。より撹拌効果を高めるためには、それぞれの旋回流が互いに逆方向に回転するように構成することが好ましい。
【0062】
上記実施の形態では、ノズル本体2に第一入口開口部20(第一入口部)を設けるとともに、テーパ部17および吐出口16(第一通路部)を長手方向に延設して、第一入口開口部20から吐出口16にかけて第一入口流路3を形成したが、第一流路形成手段の構成は上述したものに限らない。本体1に第二入口開口部21(第二入口部)を設けるとともに、本体1とノズル部材2との対向面(第二通路部)において連通流路18および環状流路19を形成し、第二入口開口部21から環状流路19にかけて第二入口流路4を形成したが、少なくとも吐出口16の周囲を包囲するテーパ面に沿って通路を形成するのであれば、第二流路形成手段の構成は上述したものに限らない。本体1に縮径部7とスロート部8(細径部)と拡径部9と出口開口部22(出口部)とを設けて、縮径部7から出口開口部22にかけて出口流路5を形成したが、第三流路形成手段の構成は上述したものに限らない。すなわち、本体1とノズル部材2とにより第一入口流路3、第二入口流路4および出口流路5を形成したが、他の部材を用いてこれら流路3〜5を形成してもよい。本体1にテーパ状に縮径する縮径部7を、ノズル部材2にテーパ状に突出する突出部14を設けて両者を嵌合するようにしたが、本体1とノズル部材2の構成もこれに限らない。
【0063】
上記実施の形態では、本体1とノズル部材2との対向面に周方向複数の溝部12,25〜29,12b,26bを設けて、あるいはノズル部材2の第一入口流路3に旋回子30を配設して旋回流を発生させるようにしたが、旋回流発生手段の構成はこれに限らない。本体1の縮径部7(凹部)の内周面とノズル部材2の突出部14(凸部)の外周面の両方に溝部を設けてもよく、本体1の端面23とノズル部材2の端面24の両方に複数の溝部を設けてもよい。また、縮径部7内周面と突出部14外周面の両方および端面23,24の両方に複数の溝部を設けてもよい。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態のインライン型流体混合装置に限定されない。
【0064】
本発明のインライン型流体混合装置によれば以下のような効果が得られる。
(1)第一入口流路もしくは第二入口流路から導入される流体のどちらか一方が旋回流となることで、合流した流体同士を効果的に混合・撹拌することができる。このため、下流側に別途静止型のミキサーを設ける必要がなく、コンパクトで低コストの構成を実現できる。
【0065】
(2)旋回流はベンチュリ管の内壁面およびその下流側の配管内壁に沿って流れる。この流れがキャビテーション発生条件下で保護層として機能すると同時に、キャビテーション現象によって生成した気泡は配管中央へ寄せ集められるため、配管内壁の損傷を防止できる。