(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755296
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】光センサの受光角を増大させる方法及び構造体、並びに携帯端末
(51)【国際特許分類】
G01J 1/04 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
G01J1/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-175662(P2013-175662)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-81361(P2014-81361A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2013年8月27日
(31)【優先権主張番号】201210389982.9
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512165101
【氏名又は名称】▲華▼▲為▼終端有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI DEVICE CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】▲ぱん▼ 磊磊
(72)【発明者】
【氏名】邵 慧
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/020594(WO,A1)
【文献】
特開2009−017306(JP,A)
【文献】
特開2011−220769(JP,A)
【文献】
特開2010−212204(JP,A)
【文献】
特開2012−070356(JP,A)
【文献】
特開2008−033238(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0282953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60、11/00
G02B 5/02
G02F 1/1335−1/13363
G09G 3/18−3/20、3/36、5/00−5/36、
5/377−5/42
H01L 31/00−31/0232、31/08−31/119
H04M 1/02−1/23
H05B 37/00−37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチスクリーンガラス、光センサ、及びメイン基板を有し、前記タッチスクリーンガラスに周辺光孔が設けられ、前記光センサは前記タッチスクリーンガラスと前記メイン基板との間に配置され、
前記タッチスクリーンガラスと前記光センサとの間に光均一化膜が配設され、該光均一化膜は、前記タッチスクリーンガラスと接触して前記周辺光孔を完全に覆っており、
前記光均一化膜はテフロン(登録商標)材料を含有し、該テフロン(登録商標)材料は、様々な方向から入射する外部周辺光を受けることができる光均一化粒子を含有している、
光センサの受光角を増大させる構造体。
【請求項2】
ケースを有する携帯端末であって、
当該携帯端末は更に、請求項1に記載の光センサの受光角を増大させる構造体を有し、
前記光センサの受光角を増大させる構造体内の前記タッチスクリーンガラスが前記ケースに組み込まれ、前記光センサの受光角を増大させる構造体内の前記メイン基板が前記ケースの内部に固定されている、
携帯端末。
【請求項3】
光均一化膜を取り付ける方法であって、
液晶ディスプレイ(LCD)及びタッチスクリーンガラスモジュールを固定するステップと、
前記タッチスクリーンガラスの周辺光孔に対して、光均一化膜を近付け且つアライメントするステップと、
前記光均一化膜と前記タッチスクリーンガラスとを接合するステップと、
前記タッチスクリーンガラスをプレスして、前記光均一化膜と前記タッチスクリーンガラスとを完全に接触させるステップと、
を有し、
前記光均一化膜はテフロン(登録商標)材料を含有し、該テフロン(登録商標)材料は、様々な方向から入射する外部周辺光を受けることができる光均一化粒子を含有している、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯(ハンドヘルド)端末の分野に関し、特に、光センサの受光角を増大させる方法及び構造体並びに携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光センサがタッチスクリーン式モバイルフォン(移動式電話)に広く適用されている。光センサは、外部の周辺光を受け、この外部周辺光の強度を検知することによって、モバイルフォンのディスプレイの明るさを制御する。ユーザがモバイルフォンを使用するとき、外部周辺光は様々な方向から入射する。光センサが受光する角度には一定の限界が存在し、また、タッチスクリーンのガラス構造も光センサが受光する角度に影響を及ぼすので、モバイルフォン全体の受光角は比較的小さく、それにより、異なる外部周辺光の下でのモバイルフォンのディスプレイの明るさが影響を受ける。
【0003】
現在、光センサの受光角を増大させるため1つの技術は、タッチスクリーンのガラス周辺光孔上に、光を均一にするインクを印刷するものであり、他の1つの技術は、タッチスクリーンのガラス周辺光孔と光センサとの間に光を導くカラム(柱状物)を付加するものである。
【0004】
これらの技術的解決法を実現する過程において、本発明の発明者により、これらの従来技術は少なくとも以下の問題を有することが見出された。
【0005】
一方では、光センサの受光角を増大させるためにタッチスクリーンのガラス周辺光孔上に光均一化インクを印刷することは、タッチスクリーンの生産速度を低下させ、他方では、光センサの受光角を増大させるためにタッチスクリーンのガラス周辺光孔と光センサとの間に光を導くカラムを付加することは、組立の難度を上げてしまう。故に、何れの方法もコストが高くつく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態により、光センサの受光角を増大させるとともに単純な組立と低コストとを実現するような、光センサの受光角を増大させる方法及び構造体並びに携帯端末を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の実施形態は以下の技術的解決法を採用する。
【0008】
第1の態様において、光センサの受光角を増大させる構造体提供される。当該構造体は、タッチスクリーンガラスと、光センサと、メイン基板とを含み、周辺光孔が前記タッチスクリーンガラスに設けられ、前記光センサは前記タッチスクリーンガラスと前記メイン基板との間に配置され、光均一化膜が、前記タッチスクリーンガラスと前記光センサとの間に配設され、前記タッチスクリーンガラスと接触し、且つ前記周辺光孔を完全に覆う。
【0009】
第2の態様において、携帯端末が提供される。当該携帯端末は、ケースと、上述の光センサの受光角を増大させる構造体とを含み、前記光センサの受光角を増大させる構造体内の前記タッチスクリーンガラスが前記ケースに組み込まれ、前記光センサの受光角を増大させる構造体内の前記メイン基板が前記ケースの内部に固定される。
【0010】
第3の態様において、光センサの受光角を増大させる方法が提供される。当該方法は:
光均一化膜によって、タッチスクリーンガラスを通過した入射外部周辺光を収集し、且つ該入射外部周辺光を光センサへと導くことと、前記光センサによって、受けた光の強度に従って液晶ディスプレイ(LCD)の明るさを制御することとを含む。
【0011】
第4の態様において、光均一化膜を取り付ける方法が提供される。当該方法は:
液晶ディスプレイ(LCD)及びタッチスクリーンガラスモジュールを固定することと;
前記タッチスクリーンガラスの周辺光孔に対して、光均一化膜を近付け且つアライメントすることと;
前記光均一化膜と前記タッチスクリーンガラスとを接合することと;
前記タッチスクリーンガラスをプレスして、前記光均一化膜と前記タッチスクリーンガラスとを完全に接触させることとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によって提供される、光センサの受光角を増大させる方法及び構造体並びに携帯端末において、外部周辺光は、タッチスクリーンガラスを通過して光均一化膜に入射し、光均一化膜が、外部周辺光を収集し且つそれを光センサへと導く。光均一化膜は光均一化粒子を含有し、光均一化粒子は様々な方向から入射する光を受けることができるので、光センサの受光角が増大される。光均一化膜を付着させる処理方法は単純である。故に、タッチスクリーンガラスの生産速度が向上されるのみでなく、低コストでもある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、光センサの受光角を増大させる構造を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、光センサの受光角を増大させる方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、光センサにより検知される光強度と液晶ディスプレイの明るさとの間の関係を示す図である。
【
図4A】光均一化膜が付加されないときの、2つのタイプの携帯端末の光センサが入射光を受ける受光範囲を示す図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る、光均一化膜が付加されるときの、2つのタイプの携帯端末の光センサが入射光を受ける受光範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の範囲内の添付図面を参照して、本発明の実施形態における技術的解決法を明瞭に説明する。明らかなように、以下に説明される実施形態は、本発明の実施形態の全てではなく一部に過ぎない。本発明のこれらの実施形態に基づいて当業者が創作努力なく得ることができるその他の実施形態も全て、本発明の保護範囲に入るべきものである。
【0015】
本発明により、光センサの受光角を増大させる構造が提供される。
図1に示すように、該構造は、タッチスクリーンガラス101、光均一化膜102、光センサ103、及びメイン基板104を含んでいる。
【0016】
タッチスクリーンガラス101は、この構造体の頂部側にあり、周辺光孔を備えている。光均一化膜102は、タッチスクリーンガラス101と光センサ103との間であり、光センサ103は、光均一化膜102とメイン基板104との間である。光均一化膜102は、タッチスクリーンガラス101と接触しており、メイン基板104はこの構造体の底部側にある。
【0017】
光均一化膜102は、例えば、テフロン(登録商標)材料を含有することができ、テフロン材料は光を均一化する粒子を含有し得る。それら光均一化粒子は、様々な方向から入射する光を受けることができ、故に、光センサの受光角が増大される。
【0018】
光センサの受光角を増大させるための上述の構造は、タッチスクリーンガラス101が携帯端末のケースに組み込まれ且つメイン基板104が該ケースの内部に固定されるようにして、携帯端末内に配置され得る。
【0019】
タッチスクリーンガラス101と光センサ103との間に光均一化膜102の層を付着させるステップ群は、例えば、以下の通りとし得る:
先ず、ピンセットを用いて光均一化膜102を拾い上げ;そして、LCD(液晶ディスプレイ)及びタッチスクリーンガラス101モジュールを固定し、光均一化膜102をタッチスクリーンガラス101の周辺光孔に近付け、光均一化膜102をタッチスクリーンガラス101の周辺光孔とアライメントする。なお、光均一化膜102は、タッチスクリーンガラス101のエッジに露出されてはならない。そして最後に、光均一化膜102とタッチスクリーンガラス101とを接合してタッチスクリーンガラス101をプレスし、光均一化膜102とタッチスクリーンガラス101とが完全に接触するようにする。
【0020】
光センサの受光角を増大させるためにタッチスクリーンガラスと光センサとの間に光均一化膜の層を付着させる上述のステップ群から理解され得るように、光均一化膜を付着させる処理方法は単純であり、コストが低い。
【0021】
本発明の一実施形態は更に、光センサの受光角を増大させる方法を提供する。
図2に示すように、この方法は以下のステップを含む。
【0022】
ステップ201:タッチスクリーンガラスを通過した入射外部周辺光を光均一化膜が収集する。
【0023】
ユーザが携帯端末を使用するとき、外部周辺光が携帯端末のタッチスクリーンガラスを通過する。タッチスクリーンガラスの下側に光均一化膜が付着されているので、外部周辺光がタッチスクリーンガラスを通過した後、光均一化膜がタッチスクリーンガラスを通過した入射外部周辺光を収集する。
【0024】
ステップ202:光均一化膜が外部周辺光を光センサへと導く。
【0025】
光均一化膜の材料は光均一化粒子を含有しており、光均一化粒子は、様々な方向から入射する光を受けることができる。故に、光均一化膜は、様々な方向からタッチスクリーンガラスを通過した入射外部周辺光を収集し得る。タッチスクリーンガラスを通過した入射外部周辺光を収集した後、光均一化膜は、収集した外部周辺光を光センサへと導く。
【0026】
ステップ203:光センサが受けた光の強度に従ってLCDの明るさを制御する。
【0027】
光均一化膜により導かれた光を受け取った後、光センサは、受けた光の強度を検知し、検知した光強度に従ってLCDの明るさを制御する。
【0028】
具体的には、ステップ203にて、先ず、光強度と明るさとの間の予め設定された対応関係に従って、受けた光の強度に対応する輝度データを決定し、そして、この輝度データに従ってLCDの明るさを調整する。例えば、光強度と明るさとの間の対応関係は
図3のように示される。この図において、Y軸のnitはLCDの明るさ(ニット)を表し、X軸のluxは光センサによって検知される光強度(ルクス)を表している。この図から分かるように、例えば:光センサによって検知される光強度が0から1ルクスの範囲であるとき、LCDの明るさは30ニットであり;光センサによって検知される光強度が1ルクスから500ルクスの範囲であるとき、LCDの明るさは100ニットであり;光センサによって検知される光強度が500ルクスから800ルクスの範囲であるとき、LCDの明るさは130ニットであり;そして、光センサによって検知される光強度が800ルクスより高いとき、LCDの明るさは300ニットである。故に、理解されるように、光センサによって検知される光強度が高いほどLCDの明るさの値が大きくされ、その逆もまた然りである。本発明のこの実施形態においては、光均一化膜が付加されており、故に、光センサは、可能な限り大きい光入射角範囲内の外部周辺光の強度を正確に検知することができ、外部周辺光の強度を検知することによりLCDの明るさを制御することができる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る光センサにより検知される光強度とLCDの明るさとの間の関係の図は、単なる参考図である。実際の適用状況において、光センサにより検知される光強度とLCDの明るさとの間の関係は、外部環境の違いに従って、それに対応して変わり得る。当業者は容易に、本発明にて開示される技術範囲内で変更又は置換を得ることができ、故に、ここでは詳細は繰り返し述べないこととする。
【0030】
図4Aは、タッチスクリーンガラスと光センサとの間に光均一化膜が付着されないときの光センサの受光角を示している。
図4Bは、タッチスクリーンガラスと光センサとの間に光均一化膜が付着されるときの光センサの受光角を示している。
【0031】
図4A及び
図4Bの双方の横軸は光センサの受光角を表し、縦軸は光エネルギー減衰の割合を表している。
図4Aと
図4Bとを比較することによって分かるように、相対光強度が20%以上であることが必要とされる場合に、第1タイプの携帯端末の受光角はトータルで69°の受光範囲である57°から126°までであり、第2タイプの携帯端末の受光角はトータルで48°の受光範囲である67°から115°までである。
【0032】
図4Bにおいては、やはり相対光強度が20%以上であることが必要とされる場合に、第1タイプの携帯端末の受光角はトータルで119°の受光範囲である32°から151°までであり、第2タイプの携帯端末の受光角はトータルで97°の受光範囲である41°から138°までである。光均一化膜の付加なしと光均一化膜の付加ありとの間の比較から分かるように、相対光強度が20%以上であるとき、第1タイプの携帯端末の受光角の範囲は50°増大し、第2タイプの携帯端末の受光角の範囲は49°増大する。比較結果から理解されるように、第1タイプの携帯端末及び第2タイプの携帯端末は何れも、光均一化膜が付加された後、光センサの受光角を大幅に増大させ得る。
【0033】
タッチスクリーンガラスと光センサとの間に光均一化膜を付着させることによって光センサの受光角を増大させることは、組立が単純であるのみでなく、タッチスクリーンガラスの生産速度を高め、且つ低コストである。
【0034】
以上の説明は、単に、本発明の特定の実現法であり、本発明の保護範囲を限定することを意図したものではない。本発明にて開示された技術範囲内で当業者によって容易に考え出される如何なる変形又は置換も、本発明の保護範囲の範囲内である。故に、本発明の保護範囲は請求項の範囲のみによって決定されるものである。
【符号の説明】
【0035】
101 タッチスクリーンガラス
102 光均一化膜
103 光センサ
104 メイン基板