特許第5755301号(P5755301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755301
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】LNG燃料供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20150709BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20150709BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   F17C9/02
   B63H21/38 C
   B63B25/16 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-194607(P2013-194607)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-172661(P2014-172661A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2013年9月19日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0024164
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513235337
【氏名又は名称】ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジュ ソグ
(72)【発明者】
【氏名】イ ホン ブン
【審査官】 戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−507585(JP,A)
【文献】 特表2011−520081(JP,A)
【文献】 特表2008−539384(JP,A)
【文献】 特開2004−360878(JP,A)
【文献】 特開2002−323398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/10
B63B 25/16
B63H 21/38
F17C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNG貯蔵タンクからエンジンまで連結された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ライン上に具備され、前記LNG貯蔵タンクから排出されたLNGを加圧するポンプと、
前記エンジンと前記ポンプとの間の前記燃料供給ライン上に具備され、前記ポンプから供給される前記LNGをグリコールウォーターと熱交換させて前記エンジンに供給する熱交換器と、
前記グリコールウォーターを貯蔵するグリコールタンクと、
前記グリコールタンクから排出されるグリコールウォーターを加熱した後、前記熱交換器に供給するグリコールヒーターと、
前記熱交換器から前記グリコールタンクに漏れるLNGを感知するLNG流入感知センサーと、
前記グリコールタンクに連結され、前記LNG流入感知センサーによりLNGの流入が感知されると、前記グリコールタンクに流入されたLNGを外部に排出させるLNG除去バルブと、
を含むことを特徴とするLNG燃料供給システム。
【請求項2】
前記LNG流入感知センサーは、
前記グリコールタンクの一側に具備され、前記グリコールタンクの圧力を把握する圧力感知センサーであることを特徴とする請求項1に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項3】
前記LNG流入感知センサーは、
前記グリコールタンクの一側に具備され、前記グリコールタンクに流入される流体の温度を感知する温度感知センサーであることを特徴とする請求項1に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項4】
前記熱交換器は、
前記LNG流入感知センサーがLNGの漏れを感知すると動作を中止することを特徴とする請求項1に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項5】
前記LNG除去バルブは、
LNG除去ラインによってグリコールタンクに連結されることを特徴とする請求項1に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項6】
前記LNG除去ラインの端に具備され、前記グリコールタンクから排出されるLNGとグリコールウォーターの混合流体からLNGを除去するLNG除去トレイをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項7】
一端が前記LNG除去トレイに連結され、他端が前記グリコールタンクに連結され、前記LNG除去トレイから前記LNGの除去後、残留したグリコールウォーターを前記グリコールタンクに復帰させるグリコールウォーター復帰ラインをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項8】
前記グリコールタンクに貯蔵された前記グリコールウォーターを前記グリコールヒーターに供給するグリコールポンプをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項9】
前記グリコールポンプは、
メイングリコールポンプと補助グリコールポンプとを含むことを特徴とする請求項8に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項10】
前記熱交換器は、前記LNGをグリコールウォーターと熱交換させて前記LNGを加熱し、前記グリコールウォーターを冷却させることを特徴とする請求項1に記載のLNG燃料供給システム。
【請求項11】
前記グリコールヒーターは、
ボイラーによって生成された蒸気を使用してグリコールウォーターを加熱することを特徴とする請求項1に記載のLNG燃料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は大量の鉱物や石油、天然ガス、または数千個以上のコンテナを載せて海を航海する輸送手段であり、鋼から成り、浮力によって海水面で浮遊した状態でプロペラの回転により発生する推力によって移動する。
【0003】
これらの船舶は、エンジンを駆動することで推進力を発生させるが、この時、エンジンは、ガソリンやディーゼルを使用してピストンを動かし、ピストンの往復運動によりクランク軸が回転することで、クランク軸に連結されたシャフトが回転してプロペラが駆動されるようにするのが一般的であった。
【0004】
しかし、最近は、液化天然ガスLiquefied Natural Gasを運搬するLNG運搬船からLNGを燃料として使用してエンジンを駆動するLNG燃料供給方式が使用されており、このようにエンジンの燃料としてLNGを使用する方式は、LNG運搬船以外の船舶にも適用されている。
【0005】
一般に、LNGは清浄の燃料であり、埋蔵量も石油より豊富であると知られており、採鉱と輸送技術が発達するにつれて、その使用量が急激に増加している。これらのLNGは、主成分であるメタンを1気圧下で-162℃℃以下に温度を下げて液体状態で貯蔵するのが一般的であるが、液化されたメタンの体積は、標準状態である気体状態のメタン体積の600分の1程℃であり、比重は0.42で原油割合の約2分の1となる。
【0006】
しかし、エンジンが駆動するために必要な温度および圧力などは、タンクに貯蔵されているLNGの状態とは異なる場合がある。したがって、最近は、液体状態で 貯蔵されているLNGの温度や圧力などを制御してエンジンに供給するような技術について、継続的な研究開発が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決しようと創出されたものであり、その目的は、グリコールウォーターを蒸気で加熱し、加熱されたグリコールウォーターを利用してLNGをエンジンの要求温度まで加熱する方式を使用することで、加熱効率を向上させることができるLNG燃料供給システムを提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、熱交換器が予期せぬ要因により破損した場合、相対的に圧力の高い燃料供給ラインを循環するLNGが、圧力の低いグリコール循環ラインに沿ってグリコールタンクに流入される場合、グリコールタンクの圧力をもとにLNGの流入を感知してLNGを外部に排出させることで、グリコールタンクの内圧を原状復帰させることができるLNG燃料供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の一側面によるLNG燃料供給システムは、LNG貯蔵タンクからエンジンまで連結された燃料供給ラインと、前記燃料供給ライン上に具備され、前記LNG貯蔵タンクから排出されたLNGを高圧で加圧するポンプと、前記エンジンと前記ポンプとの間の前記燃料供給ライン上に具備され、前記ポンプから供給される前記LNGをグリコールウォーターと熱交換させて前記エンジンに供給する熱交換器と、前記グリコールウォーターを貯蔵するグリコールタンクと、前記グリコールタンクから排出されるグリコールウォーターを加熱した後、前記熱交換器に供給するグリコールヒーターと、前記熱交換器から前記グリコールタンクに漏れるLNGを感知するLNG流入感知センサーと、前記グリコールタンクに連結され、前記LNG流入感知センサーによりLNGの流入が感知されると、前記グリコールタンクに流入されたLNGを外部に排出させるLNG除去バルブと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記LNG流入感知センサーは、前記グリコールタンクの一側に設置され、前記グリコールタンクの圧力を把握する圧力感知センサーである。
【0011】
上記課題を解決するために本発明の一側面によるLNG燃料供給システムは、LNG貯蔵タンクからエンジンまで連結された燃料供給ラインと、前記燃料供給ライン上に具備され、前記LNG貯蔵タンクから排出されたLNGを加圧するポンプと、前記エンジンと前記ポンプとの間の前記燃料供給ライン上に具備され、前記ポンプから供給される前記LNGをグリコールウォーターと熱交換させて前記エンジンに供給する熱交換器と、前記グリコールウォーターを貯蔵するグリコールタンクと、前記グリコールタンクから排出されるグリコールウォーターを加熱した後、前記熱交換器に供給するグリコールヒーターと、前記熱交換器から前記グリコールタンクに漏れるLNGを感知するLNG流入感知センサーと、前記グリコールタンクに連結され、前記LNG流入感知センサーによりLNGの流入が感知されると、前記グリコールタンクに流入されたLNGを外部に排出させるLNG除去バルブと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、前記熱交換器は、前記LNG流入感知センサーがLNGの漏れを感知すると、操作を中止することができる。
【0013】
また、前記LNG除去バルブは、LNG除去ラインによってグリコールタンクに連結することができる。
【0014】
また、前記LNG除去ラインの端に具備され、前記グリコールタンクから排出されるLNGとグリコールウォーターの混合流体からLNGを除去するLNG除去トレイをさらに含むことができる。
【0015】
また、一端が前記LNG除去トレイに連結され、他端が前記グリコールタンクに連結され、前記LNG除去トレイから前記LNGの除去後、残留したグリコールウォーターを前記グリコールタンクに復帰させるグリコールウォーター復帰ラインをさらに含むことがています。
【0016】
また、前記グリコールタンクに貯蔵された前記グリコールウォーターを前記グリコールヒーターに供給するグリコールポンプをさらに含むことができる。
【0017】
また、前記グリコールポンプは、メイングリコールポンプと補助グリコールポンプとを含むことができる。
【0018】
また、前記熱交換器は、前記LNGをグリコールウォーターと熱交換させて前記LNGを加熱し、前記グリコールウォーターを冷却させることができる。
【0019】
また、前記グリコールヒーターは、ボイラーによって生成された蒸気を使用してグリコールウォーターを加熱することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によるLNG燃料供給システムによれば、ボイラーを使用して生成された蒸気によってグリコールウォーターを加熱し、グリコールウォーターがLNGを加熱させるようにして効率的にLNGをエンジンの要求温度まで昇温させることができるという効果がある。
【0021】
また、本発明によるLNG燃料供給システムによれば、熱交換器が破損した時に燃料供給ラインとグリコール循環ラインとの圧力差により、LNGがグリコールタンクに流入されることがあるが、この場合、圧力感知センサーなどを通じてグリコールタンクへのLNG流入を把握した後、流入されたLNGを外部に排出させてグリコール循環ラインを正常な状態に回復させることができるので、システムの安定性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来のLNG燃料供給システムの概念図である。
図2】本発明の一実施例によるLNG燃料供給システムの概念図である。
図3】本発明の一実施例によるLNG燃料供給システムにおけるLNG貯蔵タンクの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。図1は、従来のLNG燃料供給システムの概念図である。
【0024】
図1に示したように、従来のLNG燃料供給システム1は、LNG貯蔵タンク10、エンジン20、ポンプ30、電気ヒーター40を含む。以下、本明細書では、LNGは、便宜上、液体状態であるNG(Natural Gas)のみならず、超臨界状態などであるNGをすべて包括する意味として使用されうる。
【0025】
従来のLNG燃料供給システム1は、電気エネルギーの供給を受けてLNGを直接加熱する電気ヒーター40を使用した。しかし、電気ヒータ40を駆動するために必要な電気エネルギーは、燃料を使用して発電機(図示せず)を駆動しなければ得ることができないので、燃料消費によるコストの問題と、燃料の燃焼の時に発生する排気による環境汚染の問題などが発生しえる。
【0026】
図2は、本発明の一実施例によるLNG燃料供給システムの概念図であり、図3は、本発明の一実施例によるLNG燃料供給システムにおけるLNG貯蔵タンクの断面図である。
【0027】
図2に示したように、本発明の一実施例によるLNG燃料供給システム2は、LNG貯蔵タンク10、エンジン20、ポンプ30、熱交換器50、グリコールタンク61、グリコールポンプ62、グリコールヒーター63を含んでいる。本発明の一実施例では、LNG貯蔵タンク10、エンジン20、ポンプ30などは、従来のLNG燃料供給システム1での各構成と便宜上同じ符号を使用したが、必ずしも同一の構成を指すものではない。
【0028】
LNG貯蔵タンク10は、エンジン20に供給されるべきLNGを貯蔵する。 LNG貯蔵タンク10は、LNGを液体状態で貯蔵しなければならないが、このときLNG貯蔵タンク10は、圧力タンクの形状を持つことができる。
【0029】
図3に示したように、LNG貯蔵タンク10は、外槽タンク11、内槽タンク12、断熱部13を含む。外槽タンク11は、LNG貯蔵タンク10の外壁をなす構造であり、スチールで形成され、断面が多角形の形状を持つことができる。
【0030】
内槽タンク12は、外槽タンク11の内部に具備され、サポート(Support)14によって外槽タンク11の内部に支持されて設置することができる。この時、サポート14は、内槽タンク12の下端に具備されることができ、もちろん、内槽タンク12の左右流動を抑制するために、内槽タンク12の側面にも具備することができる。
【0031】
内槽タンク12は、ステンレス材質で形成され、5barないし10bar(一例として6bar)の圧力に耐えるように設計することができる。内槽タンク12をこのように一定の圧力に耐えるように設計することは、内槽タンク12の内部に具備されたLNGが蒸発して蒸発ガスが生成されることによって内槽タンク12の内圧が上昇するからである。
【0032】
内槽タンク12の内部には、バッフル(Baffle)15が具備される。バッフル15は、格子形態のプレートを意味し、バッフル15が設置されることにより内槽タンク12内の圧力が均等に分布して内槽タンク12が一部に集中的に圧力を受けることを防止することができる。
【0033】
断熱部13は、内槽タンク12と外槽タンク11との間に具備され、外部の熱エネルギーが内槽タンク12に伝達されることを防止することができる。このとき、断熱部13は、真空状態になることがある。断熱部13を真空で形成することにより、LNG貯蔵タンク10は、一般的なタンクに比べて高い圧力により効率的に耐えることができる。一例として、LNG貯蔵タンク10は、真空の断熱部13によって5barないし20barの圧力を十分に耐えることができる。
【0034】
このように本実施例では、真空タイプの断熱部13を外槽タンク11と内槽タンク12との間に具備する圧力タンク型LNG貯蔵タンク10を使用することにより、蒸発ガスの発生を最小限に抑えることができ、内圧が上昇してもLNG貯蔵タンク10が破損するなどの問題が起きることを未然に防止することができる。
【0035】
エンジン20は、LNG貯蔵タンク10から供給されるLNGによって駆動されて推力を発生させる。この時、エンジン20は、MEGIエンジン20、または二重燃料エンジン20である。
【0036】
エンジン20が二重燃料エンジン20の場合、LNGとオイルが混合されて供給されず、LNGやオイルが選択的に供給されることができる。これは、燃焼温度の異なる二つの物質が混合供給されることを遮断し、エンジン20の効率が落ちるのを防止するためである。
【0037】
エンジン20は、LNGの燃焼によりシリンダ(図示せず)内のピストン(図示せず)が往復運動することにより、ピストンに連結されたクランク軸(図示せず)が回転し、クランク軸に連結されるシャフト(図示せず)が回転されることができる。したがって、エンジン20駆動の時に最終的にシャフトに連結されたプロペラ(図示せず)が回転することにより、船体が前進または後進することになる。
【0038】
もちろん、本実施例では、エンジン20は、プロペラを駆動するためのエンジン20であるが、発電のためのエンジン20またはその他の動力を発生させるためのエンジン20である。すなわち、本実施例では、エンジン20の種類を特に限定しない。ただし、エンジン20は、LNGの燃焼によって駆動力を発生させる内燃機関である。
【0039】
LNG貯蔵タンク10とエンジン20との間には、LNGを伝送する燃料供給ライン21が具備され、燃料供給ライン21には、ポンプ30、熱交換器50などが具備されてLNGがエンジン20に供給されるようにすることができる。この時、燃料供給ライン21には、燃料供給バルブ(符号図示せず)が具備され、燃料供給バルブの開度調整によりLNGの供給量が調整されることができる。
【0040】
ポンプ30は、燃料供給ライン21上に具備され、LNG貯蔵タンク10から排出されたLNGを高圧で加圧する。ポンプ30は、ブースティングポンプ(Boosting Pump)31と高圧ポンプ(High Pressure Pump)32を含む。
【0041】
ブースティングポンプ31は、LNG貯蔵タンク10と高圧ポンプ32との間の燃料供給ライン21上に、またはLNG貯蔵タンク10内に具備されており、高圧ポンプ32に十分な量のLNGが供給されるようにして高圧ポンプ32の空洞現象(Cavitation)を防止する。また、ブースティングポンプ31は、LNG貯蔵タンク10からLNGを取り出してLNGを数十bar以内に加圧することができ、ブースティングポンプ51を経たLNGは、1barないし25barに加圧することができる。
【0042】
LNG貯蔵タンク10に貯蔵されたLNGは液体状態である。この時、ブースティングポンプ31は、LNG貯蔵タンク10から排出されるLNGを加圧して圧力および温度を多少上げることができ、ブースティングポンプ31によって加圧されたLNGは、依然として液体状態である。
【0043】
高圧ポンプ32は、ブースティングポンプ31から排出されたLNGを高圧で加圧し、エンジン20にLNGが供給されるようにする。 LNGは、LNG貯蔵タンク10から約10bar程℃の圧力で排出された後、ブースティングポンプ31によって一次に加圧されるが、高圧ポンプ32は、ブースティングポンプ31によって加圧された液体状態のLNGを二次に加圧して後述する熱交換器50に供給する。
【0044】
この時、高圧ポンプ32は、LNGをエンジン20が要求する圧力、例えば200barないし400barまで加圧してエンジン20に供給することで、エンジン20がLNGによって推力を生成することができる。
【0045】
高圧ポンプ32は、ブースティングポンプ31から排出される液体状態のLNGを高圧で加圧するが、LNGが超臨界点(Critical Point)よりも高い温度および高い圧力を持つ超臨界状態になるように相変化させることができる。このとき、超臨界状態であるLNGの温度は、臨界温度よりも相対的に高い−20℃以下である。
【0046】
また、高圧ポンプ32は、液体状態のLNGを高圧で加圧して過冷却液体状態に変化させることができる。ここで、過冷却液体状態のLNGとは、LNGの圧力が臨界圧力よりも高く、温度が臨界温度よりも低い状態を意味する。
【0047】
具体的に高圧ポンプ32は、ブースティングポンプ31から排出される液体状態のLNGを200barないし400barまで高圧で加圧するが、LNGの温度が臨界温度よりも低い温度になるようにし、LNGを過冷却液体状態に相変化させることができる。ここで、過冷却液体状態であるLNGの温度は、臨界温度よりも相対的に低い−140℃〜−60℃である。
【0048】
熱交換器50は、エンジン20とポンプ30との間の燃料供給ライン21上に具備され、ポンプ30から供給されるLNGをグリコールウォーターと熱交換させてエンジン20に供給する。熱交換器50にLNGを供給するポンプ30は、高圧ポンプ32であり、熱交換器50は、過冷却液体状態または超臨界状態のLNGを高圧ポンプ32から排出される圧力である200barないし400barを維持しつつ加熱させて、40℃〜60℃の超臨界状態のLNGに変換した後、エンジン20に供給することができる。
【0049】
高圧ポンプ32がLNGをどのような状態に相変化させるかによって、熱交換器50がLNGに供給する熱の量が異なる場合がある。すなわち、高圧ポンプ32がLNGを超臨界状態に相変化させる場合には、熱交換器50は、LNGを−20℃から40〜60℃まで加熱なければならないのに対し、高圧ポンプ32がLNGを過冷却液体状態に相変化させる場合、熱交換器50は、LNGを-60℃から40〜60℃まで加熱しなければならない。
【0050】
本実施例での熱交換器50は、グリコールヒーター63から供給されるグリコールウォーターを使用してLNGを加熱することができる。グリコールウォーターとは、エチレングリコール(Ethylene Glycol)と水を混合した流体であり、グリコールヒーター63で加熱されて熱交換器50で冷却され、循環することができる。
【0051】
熱交換器50でLNGと熱交換した後に吐出されるグリコールウォーターの温度は、前述の高圧ポンプ32のLNG相変化に応じて変わることがある。すなわち、高圧ポンプ32がLNGを過冷却液体状態に相変化させた後熱交換器50に供給すると、グリコールウォーターは過冷却液体状態であるLNGを40℃〜60℃まで加熱つつ冷却することができ、または高圧ポンプ32がLNGを超臨界状態に相変化させた後熱交換器50に供給すると、グリコールウォーターは過冷却液体状態よりも温度が高い超臨界状態のLNGをエンジン20要求温度まで加熱しつつ冷却することができる。このとき、過冷却液体状態のLNGと熱交換する場合のグリコールウォーターは、超臨界状態のLNGと熱交換する場合のグリコールウォーターよりも低い温度に冷却された後、グリコールタンク61に循環することができる。
【0052】
グリコールタンク61は、グリコールウォーターを貯蔵することができる。グリコールタンク61は、グリコールウォーターのクラッキング(Cracking、水の相変化により水とエチレングリコールが分離される現象)を防止することができる温度にグリコールウォーターを貯蔵することができる。
【0053】
グリコールタンク61の下流にはグリコールポンプ62が具備され、グリコールポンプ62によって一定量のグリコールウォーターがグリコールタンク61からグリコールヒーター63に流入されることができる。また、グリコールタンク61の上流には熱交換器50が連結され、LNGに熱を供給し、冷却されたグリコールウォーターがグリコールタンク61に再度流入されることができる。
【0054】
グリコールタンク61とグリコールポンプ62、グリコールヒーター63と熱交換器50は、グリコール循環ライン64によって連結することができる。すなわち、グリコールウォーターはグリコール循環ライン64に沿って流動しつつ、グリコールタンク61、グリコールポンプ62、グリコールヒーター63、熱交換器50の順に移動して加熱または冷却されることができる。
【0055】
グリコールポンプ62は、グリコールタンク61に貯蔵されたグリコールウォーターをグリコールヒーター63に供給する。グリコールポンプ62は、グリコールタンク61の下流に具備され、メイングリコールポンプ621と補助グリコールポンプ622を含むことができる。
【0056】
グリコールウォーターを利用したLNG加熱の時に、基本的にはメイングリコールポンプ621によってグリコールウォーターがグリコールタンク61からグリコールヒーター63に移送され、メイングリコールポンプ621の駆動に問題が発生したり、またはメイングリコールポンプ621の最大供給流量を上回る流量のグリコールウォーターをグリコールヒーター63に供給しなければならない場合(グリコールヒーター63の排出流量がメイングリコールポンプ621の吐出流量よりも相対的に多い場合を意味する)には、補助グリコールポンプ622が動作していグリコールウォーターの循環を補助することができる。
【0057】
これにより、本実施例では、メイングリコールポンプ621が破損などの理由により動作ができない場合でも、補助グリコールポンプ622によってグリコールウォーターの循環を持続することができるので、グリコールウォーターが熱交換器50からグリコールタンク61に排出されず、低温のLNGと継続的に熱交換されることによってグリコールウォーターに含まれた水が冷却され、グリコールウォーターから分離されるクラッキング現象を防止することができる。
【0058】
メイングリコールポンプ621と補助グリコールポンプ622は、並列に配置され、グリコールタンク61から分岐されるグリコール循環ライン64にそれぞれ連結することができる。すなわち、グリコール循環ライン64は、グリコールタンク61の下流で分岐されてメイングリコールポンプ621と補助グリコールポンプ622にそれぞれ連結され、メイングリコールポンプ621および補助グリコールポンプ622の下流に連結される各グリコール循環ライン64は、併合されてグリコールヒーター63に連結することができる。
【0059】
グリコールヒーター63は、グリコールタンク61から排出されるグリコールウォーターを加熱した後、熱交換器50に供給する。グリコールヒーター63はグリコールウォーターを一定の温度に加熱することにより、グリコールウォーターが熱交換器50から十分な熱をLNGに供給することができる。
【0060】
グリコールヒーター63は、電気エネルギーを使用してグリコールウォーターを加熱することもできるが、本実施例では、蒸気を使用することができる。すなわち、グリコールヒーター63には、ボイラー(図示せず)によって生成される蒸気が供給され、蒸気は、グリコールウォーターに熱を供給し、グリコールウォーターは蒸気を冷却させてグリコールウォーターが加熱され、蒸気は、復水で凝縮されることができる。この時、復水は、復水タンク(図示せず)を介してボイラに再度流入されて蒸気に変化した後、再度グリコールヒーター63に流入されることができ、蒸気によって加熱されたグリコールウォーターはグリコールヒーター63から排出されて熱交換器50に流入されることができる。
【0061】
本発明によるLNG燃料供給システム2は、LNG流入感知センサー65、LNG除去バルブ66をさらに含むことができる。
【0062】
LNG流入感知センサー65は、熱交換器50からグリコールタンク61に漏れるLNGを感知する。LNGは、燃料供給ライン21に沿ってLNG貯蔵タンク10からブースティングポンプ31、高圧ポンプ32、熱交換器50を介してエンジン20に供給されるが、このとき、LNGは200barないし400barに達するほど高圧状態である。反面、グリコールウォーターの場合、グリコールタンク61からグリコールポンプ62、グリコールヒーター63を循環するとき、LNGの圧力に比べて相当低圧状態に置かれる場合がある。この場合、予期しない要因によって熱交換器50が破損すると、高圧のLNGは相対的に低圧であるグリコール循環ライン64に沿って流入されることができ、LNGとグリコールウォーターが一緒にグリコールタンク61に流入されることができる。
【0063】
この時、グリコールタンク61にはLNGが流入されることによって内圧が急上昇することがあり、グリコールタンク61は、圧力に耐え切れず破壊される危険性がある。さらに、グリコールタンク61の内圧上昇により、熱交換器50から流入されたLNGがグリコールポンプ62まで循環することができ、加熱されたLNGがグリコールポンプ62に流入されると、LNGの気体粒子によってグリコールポンプ62をも同様に破損することがありえる。
【0064】
したがって、本実施例では、熱交換器50が何かの要因によって破損されることによってLNGがグリコール循環ライン64に流入する場合、LNG流入感知センサー65によってこれを感知し、かつ対処することができる。
【0065】
LNG流入感知センサー65は、グリコールタンク61の一側に具備される圧力感知センサーである。熱交換器50から排出されたLNGは、200barないし400barの高圧なので、少量のLNGが漏れてグリコールタンク61に流入されてもグリコールタンク61の内圧は急上昇することができる。したがって、LNG流入感知センサー65は、グリコールタンク61の圧力を把握し、グリコールタンク61にLNGが流入したことを確認することができる。この時、LNG流入感知センサー65は、グリコールタンク61内に連結されるか、グリコールタンク61の上流または下流に具備することができる。
【0066】
反面、LNG流入感知センサー65は、グリコールタンク61の一側に具備される温度感知センサーである。 LNGがグリコールウォーターと一緒に熱交換器50からグリコールタンク61に流入される場合、グリコールウォーターのみグリコールタンク61に流入される場合に比べて熱交換器50とグリコールタンク61を連結するグリコール循環ライン64の温度が多少低くなることがある。したがって、LNG流入感知センサー65は、グリコールタンク61の上流に具備されてグリコールタンク61に流入する流体の温度を感知し、LNGの漏れを把握することができる。ただし、LNGが漏れしても熱交換器50からグリコールタンク61まで流れる流体の温度は大きな高い差を見せないことがあるので、LNG流入感知センサー65は、複数で構成されて温度感知センサーと圧力感知センサーを含み、グリコールタンク61の上流の温度とグリコールタンク61の内部の圧力をそれぞれ測定することにより、LNGの漏れを明確に感知することができる。
【0067】
LNG流入感知センサー65がLNGの漏れを感知した場合、熱交換器50の破損が推定されるので、熱交換器50は、LNG流入感知センサー65と通信し、LNG漏れの時動作を停止することができる。この場合、エンジン20に供給されるLNGの流れが停止する。
【0068】
LNG除去バルブ66は、グリコールタンク61に連結され、LNG流感知センサー65によりLNGの流入が感知されるとグリコールタンク61に流入されたLNGを外部に排出させる。LNG除去バルブ66は、LNG除去ライン67によってグリコールタンク61に連結され、LNG除去バルブ66の開放の時グリコールタンク61内部のLNGは、LNG除去ライン67に沿って外部に排出されることができる。 LNG流入感知センサー65がLNGの漏れを感知するとき、熱交換器50がすぐに動作を停止することができるが、すでに漏れたLNGによってグリコールタンク61の内圧が急上昇する危険性があるので、漏れたLNGは、LNG除去バルブ66によって除去される必要がある。
【0069】
LNG除去バルブ66は、本発明のLNG燃料供給システム2の正常動作時には、密閉された状態を保つことができるが、LNG流入感知センサー65により熱交換器50からグリコールタンク61へのLNGの流入が感知されると開放され、グリコールタンク61内部に流入されたLNGが外部に排出されるようにし、グリコールタンク61の内圧を下げることができる。この時、LNG除去バルブ66は、既に設定時間の間だけ開放されてグリコールタンク61内部のLNGを排出させたり、またはLNG流入感知センサー65の感知が中断されるまで開放されることができ、LNG除去バルブ66の開放の時グリコールタンク61の出口は遮断バルブ(図示せず)などにより遮断され、LNGがグリコールポンプ62に流入することを防止することができる。ただし、グリコールタンク61に流入されるLNGは高圧なので、LNG除去バルブ66がLNG除去ライン67に沿ってLNGが外部に放出されるようにする場合、LNG除去行67にはLNGとグリコールウォーターが混合された流体が排出され、グリコールウォーターの量が減少することがある。
【0070】
したがって、本実施例では、LNG除去バルブ66が開放された後、密閉されると、グリコールタンク61がグリコールウォーターの量を再測定し、グリコールウォーターが既設定水位以下であることが感知されると、グリコールウォーターの補充が必要であることを知らせることができる。
【0071】
LNG除去ライン67の端には、LNG除去トレイ(図示せず)が具備されている。 LNG除去トレイは、グリコールタンク61から排出されるLNGとグリコールウォーターの混合流体からLNGのみを除去してグリコールウォーターを再利用するためのものであって、流体を貯蔵することができ、上方の一部が開放された形態でもよい。
【0072】
グリコールタンク61から排出されたLNGは、すでにグリコールウォーターによって熱交換された状態であるため、LNG除去トレイに供給されたLNGは、上方の開放された部分に沿って自然に排出される。しかし、LNGと熱交換したグリコールウォーターは、依然として液体状態である場合があるので、LNG除去トレイでは、LNGのみを分離することができる。この時、LNGの除去後、残留したグリコールウォーターは、グリコールタンク61に復帰することができる。このため、LNG除去トレイは、グリコールウォーター復帰ライン(図示せず)の一端が連結され、グリコールウォーター復帰ラインの他端は、グリコールタンク61に連結することができる。
【0073】
このように本実施例では、蒸気によって加熱されるグリコールウォーターを使用してLNGをエンジン20の要求温度まで加熱することにより、電気エネルギーの使用量を低減し、エネルギーを節約して環境にやさしいシステムを構築することができる。
【0074】
また、本実施例では、熱交換器50の破損によってLNGがグリコールタンク61に流入されても、LNGの流入を感知し、グリコールタンク61内部のLNGが外部に排出されるようにすることで、グリコールタンク61の内圧を一定に保つことができる。
【0075】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、前記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能なのはもちろんであり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1 従来のLNG燃料供給システム、
2 本発明のLNG燃料供給システム、
10 LNG貯蔵タンク、
11 外槽タンク、
12 内助タンク、
13 断熱部、
14 サポート、
15 バッフル、
20 エンジン、
21 燃料供給ライン、
30 ポンプ、
31 ブースティングポンプ、
32 高圧ポンプ、
40 電気ヒーター、
50 熱交換器、
61 グリコールタンク、
62 グリコールポンプ、
621 メイングリコールポンプ、
622 補助グリコールポンプ、
63 グリコールヒーター、
64 グリコール循環ライン、
65 LNG流入感知センサー、
66 LNG除去バルブ、
67 LNG除去ライン
図1
図2
図3