特許第5755310号(P5755310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755310
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   H01T13/20 B
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-222947(P2013-222947)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-88224(P2015-88224A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2014年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】特許業務法人鳳国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光田 伸也
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕一
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−260816(JP,A)
【文献】 特開2007−080833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパークプラグであって、
軸線の方向に延びる貫通孔を有する絶縁体と、
前記貫通孔に挿設され、前記軸線の方向に延びる棒状の中心電極と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記主体金具と電気的に導通し、前記中心電極との間でギャップを形成する接地電極と、
を備えるスパークプラグであって、
前記絶縁体の先端部分は、先端面と、前記先端面より前記軸線の方向の後端に向かって延びる外周面と、前記先端面と前記外周面との間に形成された曲面部を有し、
前記軸線を含む断面において、
前記主体金具の内周面の先端は、前記曲面部と、前記軸線と垂直な方向に対向し、
前記曲面部の曲率半径は、0.2mm(ミリメートル)以上、かつ、0.8mm(ミリメートル)以下である、スパークプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のスパークプラグであって、
前記絶縁体の前記外周面の外径は、前記外周面の先端から後端に向かって大きくなる、スパークプラグ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスパークプラグであって、
前記軸線を含む断面において、前記絶縁体の2つの前記外周面がなす鋭角は、5度以上、かつ、30度以下である、スパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等において着火に用いられるスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
スパークプラグは、絶縁体によって互いに絶縁された中心電極と接地電極とに電圧が印加されることによって、中心電極の先端部と接地電極の先端部との間に形成された火花ギャップに、火花放電を発生させる。中心電極と接地電極とを絶縁する絶縁体が、印加された電圧によって貫通破壊されると、貫通破壊された部位に電流が流れるために、火花ギャップにおいて火花放電が発生しない不具合が生じ得る。
【0003】
近年、内燃機関における燃料ガスの高圧縮化などに伴って、スパークプラグに印加される電圧は、高くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−307857号公報
【特許文献2】特開平8−298177号公報
【特許文献3】特開平9−27379号公報
【特許文献4】特開平9−266056号公報
【特許文献5】特開平10−41047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、スパークプラグに印加される電圧が高くなると、スパークプラグの絶縁体の貫通破壊が発生しやすくなるので、絶縁体の貫通破壊を抑制する技術が求められている。
【0006】
本発明の目的は、絶縁体の貫通破壊を抑制することができるスパークプラグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]スパークプラグであって、
軸線の方向に延びる貫通孔を有する絶縁体と、
前記貫通孔に挿設され、前記軸線の方向に延びる棒状の中心電極と、
前記絶縁体の外周に配置される主体金具と、
前記主体金具と電気的に導通し、前記中心電極との間でギャップを形成する接地電極と、
を備えるスパークプラグであって、
前記絶縁体の先端部分は、先端面と、前記先端面より前記軸線の方向の後端に向かって延びる外周面と、前記先端面と前記外周面との間に形成された曲面部を有し、
前記軸線を含む断面において、
前記主体金具の内周面の先端は、前記曲面部と、前記軸線と垂直な方向に対向し、
前記曲面部の曲率半径は、0.2mm(ミリメートル)以上、かつ、0.8mm(ミリメートル)以下である、スパークプラグ。
【0009】
ギャップとは異なる部位で、意図しない火花放電が発生する場合の一例として、主体金具の内周面の先端と、中心電極と、の間に火花放電が発生することが考えられる。上記構成によれば、主体金具の内周面の先端は、絶縁体の先端部分の曲面部と、軸線と垂直な方向に対向している。そして、曲面部の曲率半径は、0.2mm(ミリメートル)以上、かつ、0.8mm(ミリメートル)以下とされている。この結果、主体金具の内周面の先端と、中心電極と、の間に火花放電が発生した場合に、火花放電の経路が、絶縁体の曲面部と先端面とを通って中心電極に至る経路(以下、沿面経路とも呼ぶ)となる可能性が高くなる。したがって、火花放電の経路が、絶縁体の内部を通って中心電極に至る経路(以下、貫通経路とも呼ぶ)となること、すなわち、絶縁体が貫通破壊することを、抑制することができる。
【0010】
さらに、曲面部の曲率半径は、0.2mm(ミリメートル)以上、かつ、0.8mm(ミリメートル)以下の範囲に設定することによって、火花放電の経路が、沿面経路となる可能性を高めて、絶縁体が貫通破壊することを、効果的に抑制することができる。
【0011】
[適用例2]適用例1に記載のスパークプラグであって、
前記絶縁体の前記外周面の外径は、前記外周面の先端から後端に向かって大きくなる、スパークプラグ。
【0012】
温度が高い部位ほど、近傍の空気の密度が低くなるので、火花放電が発生しやすく、温度が低い部位ほど、近傍の空気の密度が高くなるので、火花放電が発生し難い。上記構成によれば、絶縁体の先端部分の近傍において、絶縁体の体積が、先端に近いほど小さくなる。この結果、絶縁体の近傍の温度を、絶縁体の先端に近いほど高く、後端に向かうほど低くすることができる。したがって、火花放電の経路が、絶縁体の先端面を通る沿面経路となる可能性をより高め、絶縁体の先端面より後端側を通る貫通経路となる可能性をより低くすることができる。この結果、絶縁体が貫通破壊することを、さらに効果的に抑制することができる。
【0013】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載のスパークプラグであって、
前記軸線を含む断面において、前記絶縁体の2つの前記外周面がなす鋭角は、5度以上、かつ、30度以下である、スパークプラグ。
【0014】
上記構成によれば、軸線を含む断面において、絶縁体の2つの外周面がなす鋭角(以下、絶縁体のテーパー角とも呼ぶ)は、5度以上である。この結果、絶縁体の先端の温度を比較的高くすることによって、沿面経路を通る火花放電の放電電圧を低減することができる。したがって、絶縁体の先端の削れを抑制することができる。
【0015】
さらに、絶縁体のテーパー角は、30度以下であるので、絶縁体の先端の温度が過度に高くなることを抑制することができる。この結果、内燃機関内での使用時に、過熱された先端による誤着火、例えば、プレイグニションが発生する可能性を低減することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、スパークプラグや、そのスパークプラグを搭載する内燃機関、等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態のスパークプラグ100の断面図である。
図2】スパークプラグ100の先端近傍の断面図である。
図3】スパークプラグ100の先端近傍の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A−1.スパークプラグの構成:
以下、本発明の実施の態様を実施形態に基づいて説明する。図1は本実施形態のスパークプラグ100の断面図である。図1の一点破線は、スパークプラグ100の軸線CO(軸線COとも呼ぶ)を示している。軸線COと平行な方向(図1の上下方向)を軸線方向とも呼ぶ。軸線COを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、軸線COを中心とする円の周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。図1における下方向を先端方向D1と呼び、上方向を後端方向D2とも呼ぶ。図1における下側を、スパークプラグ100の先端側と呼び、図1における上側をスパークプラグ100の後端側と呼ぶ。スパークプラグ100は、絶縁体としての絶縁碍子10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、を備える。
【0019】
絶縁碍子10はアルミナ等を焼成して形成されている。絶縁碍子10は、軸線方向に沿って延び、絶縁碍子10を貫通する貫通孔12(軸孔)を有する略円筒形状の部材である。絶縁碍子10は、鍔部19と、後端側胴部18と、先端側胴部17と、段部15と、脚長部13とを備えている。後端側胴部18は、鍔部19より後端側に位置し、鍔部19の外径より小さな外径を有している。先端側胴部17は、鍔部19より先端側に位置し、鍔部19の外径より小さな外径を有している。脚長部13は、先端側胴部17より先端側に位置し、先端側胴部17の外径よりも小さな外径を有している。脚長部13は、スパークプラグ100が内燃機関(図示せず)に取り付けられた際には、その燃焼室に曝される。段部15は、脚長部13と先端側胴部17との間に形成されている。
【0020】
主体金具50は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼材)で形成され、内燃機関のエンジンヘッド(図示省略)にスパークプラグ100を固定するための円筒状の金具である。主体金具50は、軸線COに沿って貫通する挿入孔59が形成されている。主体金具50は、絶縁碍子10の外周に配置される。すなわち、主体金具50の挿入孔59内に、絶縁碍子10が挿入・保持されている。絶縁碍子10の先端の軸線方向の位置は、詳細は後述するが、主体金具50の先端の軸線方向の位置と、ほぼ等しい。絶縁碍子10の後端は、主体金具50の後端より後端側に突出している。
【0021】
主体金具50は、スパークプラグレンチが係合する六角柱形状の工具係合部51と、内燃機関に取り付けるための取付ネジ部52と、工具係合部51と取付ネジ部52との間に形成された鍔状の座部54と、を備えている。取付ネジ部52の呼び径は、例えば、M8(8mm(ミリメートル))、M10、M12、M14、M18のいずれかとされている。
【0022】
主体金具50の取付ネジ部52と座部54との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、スパークプラグ100が内燃機関に取り付けられた際に、スパークプラグ100と内燃機関(エンジンヘッド)との隙間を封止する。
【0023】
主体金具50は、さらに、工具係合部51の後端側に設けられた薄肉の加締部53と、座部54と工具係合部51との間に設けられた薄肉の圧縮変形部58と、を備えている。主体金具50における工具係合部51から加締部53に至る部位の内周面と、絶縁碍子10の後端側胴部18の外周面との間に形成される環状の領域には、環状のリング部材6,7が配置されている。当該領域における2つのリング部材6,7の間には、タルク(滑石)9の粉末が充填されている。加締部53の後端は、径方向内側に折り曲げられて、絶縁碍子10の外周面に固定されている。主体金具50の圧縮変形部58は、製造時において、絶縁碍子10の外周面に固定された加締部53が先端側に押圧されることにより、圧圧縮変形する。圧縮変形部58の圧縮変形によって、リング部材6、7およびタルク9を介し、絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。金属製の環状の板パッキン8を介して、主体金具50の取付ネジ部52の内周に形成された段部56(金具側段部)によって、絶縁碍子10の段部15(絶縁碍子側段部)が押圧される。この結果、内燃機関の燃焼室内のガスが、主体金具50と絶縁碍子10との隙間から外部に漏れることが、板パッキン8によって防止される。
【0024】
中心電極20は、軸線COに沿って延びる棒状の部材であり、絶縁碍子10の貫通孔12に挿設されている。中心電極20は、電極母材21と、電極母材21の内部に埋設された芯材22と、を含む構造を有する。電極母材21は、ニッケルまたはニッケルを主成分とする合金(インコネル(登録商標)600等)で形成されている。芯材22は、電極母材21を形成する合金よりも熱伝導性に優れる銅または銅を主成分とする合金で形成されている。中心電極20の先端は、絶縁碍子10の先端側に露出している。
【0025】
また、中心電極20は、軸線方向の所定の位置に設けられた鍔部24(電極鍔部、フランジ部とも呼ぶ。)、鍔部24よりも後端側の部分である頭部23(電極頭部)と、鍔部24よりも先端側の部分である脚部25(電極脚部)と、を備えている。鍔部24は、絶縁碍子10の段部16に支持されている。脚部25の先端部分は、絶縁碍子10の先端より先端側に突出している。脚部25の先端部分には、電極チップ29が、例えば、レーザー溶接によって接合されている。電極チップ29は、高融点の貴金属を主成分とする材料で形成されている。この電極チップ29の材料には、例えば、イリジウム(Ir)や、Irを主成分とする合金が用いられ、具体的には、Ir−5Pt合金(5質量%の白金を含有したイリジウム合金)などが用いられる。
【0026】
接地電極30は、電極本体31と、電極チップ33と、を備えており、主体金具50の先端に接合されている。電極本体31は耐腐食性の高い金属、例えば、インコネル(登録商標)600などのニッケル合金で形成されている。この電極本体31の基端部31bは、主体金具50の先端面に溶接にて接合されている。この結果、接地電極30は、主体金具50と電気的に導通している。電極本体31は、屈曲されており、電極本体31の基端部31bとは反対側の端部31aの一側面は、中心電極20の電極チップ29と、軸線CO上で軸線方向に対向している。電極本体31の端部31aの一側面には、中心電極20の電極チップ29と対抗する位置に電極チップ33が溶接されている。電極チップ33は、例えば、Pt(白金)または、Ptを主成分とする合金、具体的には、Pt−20Ir合金(20質量%のイリジウムを含有した白金合金)など用いられる。中心電極20の電極チップ29と、接地電極30の電極チップ33の間には火花ギャップが形成される。
【0027】
端子金具40は、軸線COに沿って延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼)で形成され、端子金具40の表面には、防食のための金属層(例えば、Ni層)がめっきなどによって形成されている。端子金具40は、軸線方向の所定位置に形成された鍔部42(端子顎部)と、鍔部42より後端側に位置するキャップ装着部41と、鍔部42より先端側の脚部43(端子脚部)と、を備えている。端子金具40のキャップ装着部41は、絶縁碍子10より後端側に露出している。端子金具40の脚部43は、絶縁碍子10の貫通孔12に挿入(圧入)されている。キャップ装着部41には、高圧ケーブル(図示外)が接続されたプラグキャップが装着され、火花放電を発生するための高電圧が印加される。
【0028】
絶縁碍子10の貫通孔12内において、端子金具40の先端(脚部43の先端)と中心電極20の後端(頭部23の後端)との間には、火花発生時の電波ノイズを低減するための抵抗体70が配置されている。抵抗体は、例えば、主成分であるガラス粒子と、ガラス以外のセラミック粒子と、導電性材料と、を含む組成物で形成されている。貫通孔12内において、抵抗体70と中心電極20との隙間は、導電性シール60によって埋められている。抵抗体70と端子金具40との隙間は、導電性シール80によって埋められている。導電性シール60、80は、例えば、B23−SiO2系等のガラス粒子と金属粒子(Cu、Feなど)とを含む組成物で形成されている。
【0029】
A−2. 中心電極の先端部分の構成:
上記で説明したスパークプラグ100の先端近傍の構成について、さらに、詳細に説明する。図2(A)は、スパークプラグ100の先端近傍を、軸線COが含まれる面で切断した断面図である。図2(B)は、図2(A)の一点破線EAで囲まれた部分の拡大図である。なお、図2は、先端方向D1を上向きに、後端方向D2を下向きにして、図示されている。なお、図2(A)に示すスパークプラグ100の先端近傍の断面は、接地電極30を除いて、軸線COを対象軸とする線対称な形状を有している。このために、図2(B)を参照して、図2(A)の断面のうち、軸線COより右側の部分を中心に説明を行うが、軸線COより左側の部分も同様の構成を有している。
【0030】
図2(B)に示すように、脚長部13(絶縁碍子10)の先端部分は、先端面13Aと、外周面13Bと、曲面部13Cと、を有している。先端面13Aは、軸線COと垂直な面である。外周面13Bは、先端面13Aより後端側に位置し、軸線方向の後端(後端方向D2)に向かって延びている。曲面部13Cは、先端面13Aと外周面13Bとの間に形成されている。
【0031】
図2(B)の断面において、点P1は、先端面13Aの外縁に位置する点である。点P1は、曲面部13Cの先端に位置する点とも言うことができる。点P2は、外周面13Bの先端に位置する点である。点P2は、曲面部13Cの後端に位置する点とも言うことができる。ここで、図2(B)の断面における先端面13Aを延長した仮想線(軸線COと垂直な線になる)をHL1とする。また、外周面13Bを延長した仮想線をHL2とする。曲面部13Cは、図2(B)の断面における絶縁碍子10の外表面のうち、2本の仮想線HL1、HL2から離れた部分である、と言うことができる。
【0032】
曲面部13Cの軸線方向の長さ、すなわち、曲面部13Cの先端P1から曲面部13Cの後端P2までの軸線方向の長さをH1とする。
【0033】
曲面部13Cは、絶縁碍子10の作成時において、焼成前の絶縁碍子10を研削砥石を用いて研削することによって、絶縁碍子10の外形を整える際に、形成される。曲面部13Cは、脚長部13の先端部分の外縁の全周に亘って環状に形成されている。曲面部13Cの曲率半径Rは、図2(B)の断面において曲面部13Cを表す円弧の半径を用いて表される。
【0034】
図2(B)の断面において、上述した先端面13Aを延長した仮想線HL1と、外周面13Bを延長した仮想線HL2と、の交点をP4とする。また、図2(B)の断面において、外周面13B上の点のうち、絶縁碍子10の先端面13Aとの間の軸線方向の距離が1mmである点をP3とする。
【0035】
ここで、軸線COから点P4までの径方向の距離の2倍を、絶縁碍子10(脚長部13)の第1の外径φ1(先端径φ1とも呼ぶ)とする。また、軸線COから点P3までの径方向の距離の2倍、すなわち、先端面13Aから軸線方向に1mm離れた位置における絶縁碍子10の外径を、絶縁碍子10の第2の外径φ2とする。図2(B)の例では、第2の外径φ2は、第1の外径φ1より大きい(φ2>φ1)。すなわち、絶縁碍子10の脚長部13の外周面13Bの外径は、先端から後端に向かって大きくなる。換言すれば、脚長部13は、先端から後端に向かって拡径するテーパー形状を有している。ただし、図2(B)の例に限らず、第2の外径φ2は、第1の外径φ1と等しくても良い。
【0036】
図2(A)に示すように、断面には、軸線COを挟んだ両側に絶縁碍子10(脚長部13)の外周面13Bを表す2つの線が現れる。この2つの線の間の角度、すなわち、図2(A)の断面上における2つの外周面がなす鋭角をθ1とする。θ1を、絶縁碍子10の先端部近傍のテーパー角とも呼ぶ。
【0037】
なお、絶縁碍子10の第1の外径φ1は、これに限られるわけではないが、例えば、3.0mm以上5.5mm以下であることが好ましく、3.6mm以上4.3mm以下であることが特に好ましい。また、絶縁碍子10の先端部分の内径φ4(中心電極20の脚部25が挿入されている部分の内径)は、これに限られるわけではないが、例えば、3.1mm以上5.55mm以下であることが好ましく、3.7mm以上4.35mm以下であることが特に好ましい。
【0038】
主体金具50の先端部分は、先端面50Aと、内周面50Bと、先端面50Aと内周面50Bとの間に形成された面取部50Cと、を有している。主体金具50の内周面50Bの内径(挿入孔59の内径)は、図1の段部56より先端側の部分では、一定値φ3である。以下では、φ3を、主体金具50の先端部近傍の内径φ3とも呼ぶ。内径φ3は、これに限られるわけではないが、例えば、5.5mm以上8.5mm以下であることが好ましく、7.0mm以上7.5mm以下であることが特に好ましい。なお、上述した径φ1〜φ4は、いずれも半径ではなく、直径を表すものとする。
【0039】
図2(B)の断面において、点P5は、内周面50Bの先端に位置する点である。点P5は、面取部50Cの後端に位置する点とも言うことができる。主体金具50の先端部分に面取部50Cが形成されていない場合には、内周面50Bの先端P5は、先端面50Aと内周面50Bとの交点になる。
【0040】
主体金具50の内周面50Bの先端P5の軸線方向の位置を基準とした絶縁碍子10の先端面13Aの軸線方向の位置をΔHを用いて表す(図2(B))。ΔHは、主体金具50の内周面50Bの先端P5の軸線方向の位置を基準とした絶縁碍子10の曲面部13Cの先端P1の位置と言うこともできる。なお、絶縁碍子10の曲面部13Cの先端P1が、主体金具50の内周面50Bの先端P5より先端方向D1に位置している場合に、ΔHの値を正の値とする。逆に、絶縁碍子10の曲面部13Cの先端P1が、主体金具50の内周面50Bの先端P5より後端方向D2に位置している場合に、ΔHの値を負の値とする。
【0041】
ΔHが0以上であり、かつ、曲面部13Cの軸線方向の長さH1以下であること(0≦ΔH≦H1)は、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cの先端P1より後端側であり、かつ、曲面部13Cの後端P2より先端側に位置していることを意味している。換言すれば、0≦ΔH≦H1であることは、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cと軸線方向と垂直な方向に対向していることを意味している。図2(B)の例では、0≦ΔH≦H1が満たされている。
【0042】
ΔHが負の値であること(ΔH<0)は、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cの先端P1より先端側に位置していることを意味する。図3は、スパークプラグ100の先端近傍の構成を説明するための図である。例えば、図3の破線VL1で示す位置に主体金具50の先端面50Aがある場合には、内周面50Bの先端(図3のP5a)が、絶縁碍子10の曲面部13Cの先端P1より先端側に位置するので、ΔH<0になる。
【0043】
また、ΔHが曲面部13Cの軸線方向の長さH1より大きいことは(ΔH>H1)、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cの後端P2より後端側に位置していることを意味する。例えば、図3の破線VL2で示す位置に主体金具50の先端面50Aがある場合には、内周面50Bの先端(図3のP5b)が、絶縁碍子10の曲面部13Cの後端P2より後端側に位置するので、ΔH>H1になる。
【0044】
以下では、スパークプラグ100のサンプルを用いて行われた評価試験について説明する。
【0045】
B:第1評価試験
第1評価試験では、表1に示すように、16種類のスパークプラグのサンプル1−1〜1−16を作成し、放電試験を行った。各サンプルに共通な寸法は、以下の通りである。
絶縁碍子10の先端部分の内径φ4:2.3mm
主体金具50の先端部近傍の内径φ3:7.2mm
【0046】
【表1】
【0047】
16種類のサンプルでは、上述したΔHの値と、曲面部13Cの曲率半径Rと、第1の外径φ1と、第2の外径φ2と、のうちの少なくとも1つの値が異なっている。曲率半径Rは、0.1mm、0.2mm、0.4mm、0.8mm、0.9mmのいずれかの値とされている。また、第1の外径φ1は、4.1mm、4.5mmのいずれかの値とされている。第2の外径φ2は、4.1mm、4.3mm、4.5mm、4.7mmのいずれかの値とされている。
【0048】
また、ΔHの値は、−0.1mm、0mm、0.05mm、0.35mm、0.4mm、0.7mm、0.75mmのいずれかの値とされている。曲面部13Cの軸方向の長さH1は、曲率半径Rと、第1の外径φ1と、第2の外径φ2と、によって決まる値である。
【0049】
表1から解るように、サンプル1−2〜1−4、1−6、1−8〜1−16は、0≦ΔH≦H1を満たす。すなわち、サンプル1−2〜1−4、1−6、1−8〜1−16では、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cと軸線方向と垂直な方向に対向している。
【0050】
サンプル1−1は、ΔH<0であり、主体金具50の内周面50Bの先端P5aが、絶縁碍子10の曲面部13Cの先端P1より先端側に位置している。また、サンプル1−5、1−7は、ΔH>H1であり、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cの後端P2より後端側に位置している。
【0051】
第1評価試験では、各サンプルを2個ずつ用意して、試験Aと試験Bの2種類の試験を行った。試験Aでは、5MPaに加圧したチャンバー内で、1秒間に60回の火花放電を発生させる放電試験を20時間行った。なお、火花放電は、サンプルの絶縁碍子10の先端の温度が摂氏900度になるように、バーナーを用いて加熱しながら行われた。試験Bでは、試験Aよりさらに厳しい条件で、放電試験が行われた。具体的には、試験Bは、10MPaに加圧したチャンバ−内で行われた。試験Bのその他の条件は、試験Aと同じである。チャンバ−内の圧力が高いほど、中心電極20の電極チップ29と、接地電極30の電極チップ33との間の火花ギャップでの正常な放電が発生しにくくなるので、後述する貫通破壊が生じやすくなる。
【0052】
放電試験後に、各サンプルを解体し、絶縁碍子10に貫通破壊が発生しているか否かを評価した。具体的には、貫通破壊の有無は、レッドチェック液を絶縁碍子10に塗布して貫通破壊による絶縁碍子10の割れを可視化した後に、目視で確認された。
【0053】
表1には、試験Aと試験Bのそれぞれにおいて貫通破壊の有無が示されている。そして、試験Aにおいて貫通破壊が認められ、かつ、試験Bにおいて貫通破壊が認められたサンプルの評価を「×」とした。試験Aにおいて貫通破壊が認められず、かつ、試験Bにおいて貫通破壊が認められたサンプルの評価を「○」とした。試験Aにおいて貫通破壊が認められず、かつ、試験Bにおいて貫通破壊が認められなかったサンプルの評価を「◎」とした。
【0054】
0≦ΔH≦H1を満たしていないサンプル、すなわち、ΔH<0であるサンプル1−1と、ΔH>H1であるサンプル1−5、1−7と、の評価は、「×」であった。また、曲率半径Rが0.2mm未満であるサンプル1−8と、曲率半径Rが0.8mmを超えるサンプル1−11と、の評価は、「×」であった。
【0055】
また、ΔHが、0≦ΔH≦H1を満たし、かつ、曲率半径Rが、0.2mm≦R≦0.8mmを満たすサンプル1−2〜1−4、1−6、1−9、1−10、1−12〜1−16の評価は、「○」または「◎」であった。
【0056】
この理由は、以下のように推定される。正常な火花ギャップとは異なる部位で、意図しない火花放電が発生する場合の一例として、主体金具50の内周面50Bの先端P5と、中心電極20と、の間に火花放電が発生することが最も考えられる。主体金具50の内周面50Bの先端P5のような鋭利な部位(エッジ部位)は、電界が集中しやすいので、火花放電の起点となりやすいからである。ここで、0≦ΔH≦H1が満たされていると、すなわち、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cと軸線方向と垂直な方向に対向していると、意図しない火花放電の経路は、図3の沿面経路RT1となる可能性が高くなる。すなわち、意図しない火花放電の経路は、主体金具50の内周面50Bの先端P5から、絶縁碍子10の曲面部13Cと、先端面13Aと、を通って、中心電極20に至る経路となりやすい。火花放電が、曲面部13Cによって先端面13Aに誘導されるからである。意図しない火花放電の経路が、沿面経路RT1となる場合には、絶縁碍子10の貫通破壊は発生しない。
【0057】
これに対して、ΔH>H1であると、すなわち、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cの後端P2より後端側に位置していると、意図しない火花放電の経路は、図3の貫通経路RT2となる可能性が高くなる。すなわち、火花放電は、先端面13Aに誘導されずに、主体金具50の内周面50Bの先端P5から、外周面13Bから絶縁碍子10(脚長部13)の内部を通って、中心電極20に至る経路となりやすい。この結果、絶縁碍子10の貫通破壊が発生しやすい。
【0058】
また、ΔH<0であると、すなわち、主体金具50の内周面50Bの先端P5が、絶縁碍子10の曲面部13Cの先端P1より先端側に位置していると、主体金具50の内周面50Bの先端P5から、絶縁碍子10の表面(外周面13Bまたは先端面13A)までの距離が長くなる(図3参照)。この結果、意図しない火花放電の起点は、主体金具50の内周面50Bの先端P5ではなく、主体金具50の内周面50Bのうち、先端P5より後端側の部位になりやすい。この結果、意図しない火花放電の経路は、図3の貫通経路RT2になりやすくなる。この結果、この結果、絶縁碍子10の貫通破壊が発生しやすい。
【0059】
さらに、0≦ΔH≦H1が満たされている場合であっても、曲面部13Cの曲率半径Rが、0.2mm未満であると、曲面部13Cが鋭利なエッジに近くなるので、曲面部13Cに電界が集中して、曲面部13Cが破壊されて絶縁碍子10の貫通破壊が発生する可能性が高くなる。
【0060】
さらに、0≦ΔH≦H1が満たされている場合であっても、曲面部13Cの曲率半径Rが、0.8mmを超えていると、曲面部13Cを通って先端面13Aに火花放電を誘導する経路長が長くなる。この結果、火花放電の経路が絶縁碍子10の先端面13Aを通らずに、絶縁碍子10の内部を通る経路になりやすい。この結果、絶縁碍子10の貫通破壊が発生する可能性が高くなる。
【0061】
以上の説明から解るように、0≦ΔH≦H1、かつ、0.2mm≦R≦0.8mmが満たされることが好ましいことが解った。換言すれば、主体金具50の内周面50Bの先端P5は、絶縁碍子10の曲面部13Cと、軸線方向と垂直な方向に対向し、曲面部13Cの曲率半径Rは、0.2mm(ミリメートル)以上、かつ、0.8mm(ミリメートル)以下であることが好ましい。こうすれば、絶縁碍子10が貫通破壊することを効果的に抑制することができる。
【0062】
さらに、0≦ΔH≦H1、かつ、0.2mm≦R≦0.8mmを満たす11種のサンプル1−2〜1−4、1−6、1−9、1−10、1−12〜1−16について詳しく説明する。これらのサンプルのうち、第2の外径φ2が第1の外径φ1より大きな8種のサンプル1−2〜1−4、1−6、1−9、1−10、1−13、1−16の評価は、「◎」であった。一方、第2の外径φ2が第1の外径φ1以下である3種のサンプル1−12、1−14、1−15の評価は、「○」であった。
【0063】
この理由は、以下のように推定される。温度が高い部位ほど、近傍の空気の密度が低くなるので、電気抵抗が低くなり火花放電が発生しやすくなる。逆に、温度が低い部位ほど、近傍の空気の密度が高くなるので、電気抵抗が高くなり火花放電が発生し難くなる。ここで、絶縁碍子10の先端部分の近傍において、第2の外径φ2が第1の外径φ1より大きい場合には、絶縁碍子10の体積が、先端に近いほど小さくなる。この結果、絶縁碍子10の近傍の温度が、絶縁碍子10の先端に近いほど高く、後端に向かうほど低くなる。したがって、火花放電の経路が、絶縁碍子10の先端面13Aを通る沿面経路RT1となる可能性をより高めることができる。したがって、火花放電の経路が絶縁碍子10の先端面13Aより後端側を通る貫通経路RT2となる可能性を相対的に低くすることができる。この結果、絶縁碍子10が貫通破壊することを、さらに効果的に抑制することができる。
【0064】
以上の説明から解るように、第2の外径φ2は第1の外径φ1より大きいことがより好ましいことが解った。換言すれば、絶縁碍子10の外周面13Bの外径は、外周面13Bの先端から後端に向かって大きくなることがより好ましい。こうすれば、絶縁碍子10が貫通破壊することを、さらに効果的に抑制することができる。
【0065】
C:第2評価試験
第2評価試験では、表2に示すように、第1評価試験で明らかにされた好ましい条件(0≦ΔH≦H1、かつ、0.2mm≦R≦0.8mm)を満たす6種類のスパークプラグのサンプル2−1〜2−6を作製して、運転試験を行った。各サンプルに共通な寸法は、以下の通りである。
絶縁碍子10の先端部分の内径φ4:2.3mm
主体金具50の先端部近傍の内径φ3:7.2mm
ΔH:0.05mm
曲率半径R:0.4mm
第1の外径φ1:4.1mm
【0066】
【表2】
【0067】
6種類のサンプルでは、上述したテーパー角度θ1が互いに異なる。具体的には、サンプル2−1〜2−6のテーパー角度θ1は、それぞれ、0度、5度、10度、20度、30度、40度とされている。テーパー角度θ1は、第2の外径φ2を変更することによって変更されている。サンプル2−1では、第2の外径φ2と第1の外径φ1は等しく(φ2=φ1)、サンプル2−2〜2−6では、第2の外径φ2が第1の外径φ1より大きい(φ2>φ1)。
【0068】
第2評価試験では、接地電極30を取り外して正常な火花放電を不可能にしたサンプルを用いた。そして、各サンプルを搭載した内燃機関を100時間に亘って運転する運転試験を行った。具体的には、直列4気筒、排気量1.3Lのガソリンエンジンを、スロットル全開(WOT(Wide-Open Throttle))、かつ、6000rpmの回転速度で運転した。
【0069】
そして、運転試験後に、各サンプルを解体し、絶縁碍子10の先端部(先端面13Aおよび曲面部13C)に発生した傷の軸線方向の深さを、三次元形状測定器(具体的には、X線CTスキャナー)を用いて測定した。そして、測定された傷の深さの最大値を、当該サンプルの削れ量とした。削れ量が0.1mm未満であるサンプルの評価を「○」とし、削れ量が0.1mm以上であるサンプルの評価を「×」とした。
【0070】
テーパー角度θ1が5度未満であるサンプル2−1の評価は「×」であり、具体的には、削れ量が0.1mmを大幅に超えて、0.14mmに達した。テーパー角度θ1が5度以上30度以下であるサンプル2−2〜2−5の評価は「○」であり、具体的には、削れ量は、テーパー角度θ1が大きいほど小さくなった。
【0071】
また、テーパー角度θ1が30度を超える40度であるサンプル2−6は、プレイグニション(過早点火)が発生したために、内燃機関の運転を最後まで行うことができなかった。このために、サンプル2−6の削れ量の評価は、行うことができなかった。プレイグニションは、内燃機関の燃焼室内において、正常なタイミングより早いタイミングで燃料ガスが着火する不具合である。
【0072】
この理由は以下のように推定される。テーパー角度θ1が0度以上である場合には、絶縁碍子10の体積が、先端に近いほど小さくなる。そして、テーパー角度θ1が大きいと、絶縁碍子10の先端の体積が小さくなる。この結果、テーパー角度θ1が大きいほど、絶縁碍子10の先端の温度が高くなる。絶縁碍子10の先端の温度が高いほど、近傍の空気の密度が低くなるので、電気抵抗が低くなる。この結果、絶縁碍子10の先端面13Aを通る火花放電の放電電圧が低くなり、火花エネルギーが低下する。この結果、テーパー角度θ1が大きいほど、火花放電による絶縁碍子10の先端部分の削れ量が小さくなる。具体的には、テーパー角度θ1が5度以上である場合には、火花放電による絶縁碍子10の先端部分の削れ量を効果的に抑制することができる。
【0073】
一方、テーパー角度θ1が30度を超える場合には、絶縁碍子10の先端の体積が過度に小さくなることによって、絶縁碍子10の先端の温度が過度に高くなる。この結果、テーパー角度θ1が30度を超える場合には、過熱された絶縁碍子10の先端によってプレイグニションなどの誤着火が発生する可能性が高くなる。
【0074】
以上の説明から解るように、テーパー角度θ1は、5度以上、かつ、30度以下であることがより好ましい。こうすれば、火花放電による絶縁碍子10の先端の削れ量を抑制することができるので、スパークプラグの耐久性を向上できる。また、過熱された絶縁碍子10の先端によってプレイグニションなどの誤着火が発生することを抑制することができる。
【0075】
D.変形例:
(1)上記実施形態のスパークプラグ100の貫通破壊の抑制は、上述したように、0≦ΔH≦H1、かつ、0.2mm≦R≦0.8mmが満たされることによってもたらされると考えられる。したがって、これらのパラメータ以外の要素、例えば、主体金具50の材質や細部の寸法、絶縁碍子10の材質や細部の寸法などは、様々に変更可能である。例えば、主体金具50の材質は、ニッケルめっきまたは亜鉛めっきがなされた低炭素鋼でも良いし、めっきがなされていない低炭素鋼でも良い。また、絶縁碍子10の材質は、アルミナ以外の様々な絶縁性セラミックスでもよい。
【0076】
(2)上記実施形態では、スパークプラグの構成の一例を挙げて説明した。しかし、上記実施形態における態様はあくまで一例であり、スパークプラグの用途や、必要とされる性能に応じて、種々変形可能である。例えば、軸線方向に放電する縦放電型のスパークプラグに代えて、軸線方向と垂直な方向に放電する横放電型のスパークプラグとして構成されても良い。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0077】
5...ガスケット、6...リング部材、8...板パッキン、9...タルク、10...絶縁碍子、12...貫通孔、13...脚長部、13A...先端面、13B...外周面、13C...曲面部、15...段部、16...段部、17...先端側胴部、18...後端側胴部、19...鍔部、20...中心電極、21...電極母材、22...芯材、23...頭部、24...鍔部、25...脚部、29...電極チップ、30...接地電極、31...電極本体、33...電極チップ、40...端子金具、41...キャップ装着部、42...鍔部、43...脚部、50...主体金具、50...内周面、50A...先端面、50B...内周面、50C...面取部、51...工具係合部、52...取付ネジ部、53...加締部、54...座部、56...段部、58...圧縮変形部、59...挿入孔、60...導電性シール、70...抵抗体、80...導電性シール、100...スパークプラグ
図1
図2
図3