特許第5755375号(P5755375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5755375コア直径が低減された香箱を有する時計ムーブメント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755375
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】コア直径が低減された香箱を有する時計ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04B 1/16 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   G04B1/16
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-530207(P2014-530207)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公表番号】特表2014-526690(P2014-526690A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2012067910
(87)【国際公開番号】WO2013037868
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年3月12日
(31)【優先権主張番号】11181351.5
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ケリン,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスブロード,バプティスト
(72)【発明者】
【氏名】ケヴァル,アルテュール
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−013136(JP,A)
【文献】 特公昭36−017210(JP,B1)
【文献】 実公昭44−006779(JP,Y1)
【文献】 実開平01−165490(JP,U)
【文献】 実公昭46−003257(JP,Y1)
【文献】 特開2002−365377(JP,A)
【文献】 特開昭52−051973(JP,A)
【文献】 特開2004−307993(JP,A)
【文献】 特表2014−526688(JP,A)
【文献】 特表2014−526689(JP,A)
【文献】 特表2014−526691(JP,A)
【文献】 スイス国特許発明第00231733(CH,A5)
【文献】 米国特許第00996499(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/10− 1/22
F16F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の香箱アセンブリ(1)に接合してこれを支持する受け(11)から一定の距離にある少なくとも1つの地板(10)を含む時計ムーブメント(100)であって、
前記香箱アセンブリ(1)は少なくとも1つの香箱用ゼンマイ(2)を含み、
前記ゼンマイ(2)は、前記受け(11)のそばに配設された香箱ドラム(3)と、角穴車(12)と一体として回転しかつ共通の軸線(D)の周りで前記ドラム(3)と同軸である香箱のコア(4)が備える受承表面(5)との間に、第1の端部(21)が前記香箱ドラム(3)上、第2の端部(22)が前記受承表面(5)上にあるように設置され、
前記香箱アセンブリ(1)は前記地板側(10)に、前記ドラム(3)に固定された蓋(7)を含み、
前記蓋(7)及び前記ドラム(3)は共に、前記ゼンマイ(2)を収容するチャンバ(32)を形成する、時計ムーブメント(100)において、
前記ゼンマイ(2)は、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロムベースの合金製であり、9〜21の幅厚比を有すること、並びに
前記軸線(D)に対する鋼又はステンレス鋼製の前記コア(4)の最大半径は前記ゼンマイ(2)の最大厚さの9倍未満であること
を特徴とし、並びに
前記ムーブメント(100)は、少なくとも1つのシムワッシャ(70)を含む振動制限手段を含み、前記振動制限手段は前記コア(4)とは独立しており、前記コア(4)の肩部(44)によってガイドされ、前記地板(10)と前記蓋(7)との間又は前記受け(11)と前記ドラム(3)との間に挿入されることを更に特徴とする、時計ムーブメント(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのシムワッシャ(70)は、前記肩部(44)に嵌め込まれることを特徴とする、請求項1に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項3】
前記振動制限手段は、前記受け(11)と前記ドラム(3)との間に挿入される第1の前記シムワッシャ(70)及び前記地板(10)と前記蓋(7)との間に挿入される第2の前記シムワッシャ(70)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項4】
前記シムワッシャ(70)は、前記コア(4)が備える又は前記コア(4)と一体である香箱真(18)及び前記蓋(7)とは独立しており、前記地板(10)と前記蓋(7)との間に挿入されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項5】
前記コア(4)は、前記地板(10)及び前記受け(11)において直接枢動することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項6】
前記コア(4)は、前記地板(10)及び前記受け(11)において、それぞれ前記蓋(7)及び前記ドラム(3)を介して間接的に枢動することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項7】
前記コア(4)は、2つの同軸部品(4A;4B)を有し、
一方の前記部品(4B)は前記受け(11)において直接枢動し、前記ドラム(3)の孔(35)のためのガイド用肩部(43)を有し、
他方の前記部品(4A)は、前記地板(10)において直接枢動し、前記ゼンマイ(2)を引っ掛けるためのフック(41)を備える
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項8】
前記ドラム(3)は、前記受け(11)又は前記受け(11)が支持するガイド部材(403)において枢動し、前記ドラム(3)の移動の終点を制限するために前記受け(11)又は前記ガイド部材(403)の相補的停止表面(119)と協働するよう配設された軸方向支持肩部(39)を含み、
前記蓋(7)は、前記地板(10)又は前記地板(10)が支持するガイド部材(108)において枢動し、前記蓋(7)の移動の終点を制限するために前記地板(10)又は前記ガイド部材(108)の相補的停止表面(109)と協働するよう配設された軸方向支持肩部(79)を含む
こと、並びに
前記コア(4)は、前記ドラム(3)の前記孔(35)において枢動する第1の前記肩部(43)及び前記蓋(7)の孔(75)において枢動する第2の前記肩部(44)を含むこと、並びに
前記コア(4)と前記ドラム(3)との間の相対的前後振動は、前記コア(4)の第1の停止表面(4030)及び前記ドラム(3)の第1の相補的内側停止表面(31)によって制限され、前記コア(4)と前記蓋(7)との間の前記相対的前後振動は、前記コア(4)の第2の停止表面(407)及び前記蓋(7)の第2の相補的内側表面(71)によって制限されること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項9】
前記ドラム(3)の前記軸方向支持肩部(39)及び/又は前記蓋(7)の前記軸方向支持肩部(79)は、表面接触を低減するために、隅肉(202;207)で形成されることを特徴とする、請求項8に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項10】
前記隅肉(202;207)は、前記受け(11)又は前記地板(10)が支持する前記ガイド部材(403;108)上に支持されることを特徴とする、請求項9に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項11】
前記香箱アセンブリ(1)は、前記香箱アセンブリ(1)と前記地板(10)又は前記受け(11)のうちの少なくとも一方との間の前後振動を制限するための手段(6)を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項12】
前記制限手段(6)は、前記地板(10)及び/又は前記受け(11)における前記ドラム(3)及び/又は前記蓋(7)の直接的な枢動をガイドする手段を含むことを特徴とする、請求項11に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項13】
前記制限手段(6)は、シム手段又は前記地板(10)及び/若しくは前記受け(11)に対する前記ドラム(3)及び/若しくは前記蓋(7)の移動を制限する手段を含むことを特徴とする、請求項11に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項14】
前記制限手段(6)は、前記ドラム(3)の外側表面(30)から前記地板(10)若しくは前記受け(11)と反対側に突出する少なくとも1つの縁部(202)、及び/又は前記地板(10)若しくは前記受け(11)の外側表面から突出して前記ドラム(3)の前記外側表面(30)に面する少なくとも1つの縁部(102)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項15】
前記制限手段(6)は、前記蓋(7)の外側表面(76)から前記地板(10)若しくは前記受け(11)と反対側に突出する少なくとも1つの縁部(207)、及び/又は前記地板(10)若しくは前記受け(11)の外側表面から突出して前記蓋(7)の前記外側表面(76)に面する少なくとも1つの縁部(107)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項16】
前記制限手段(6)は、前記コア(4)が支持する前記角穴車(12)の外側表面(121)から前記地板(10)若しくは前記受け(11)と反対側に突出する少なくとも1つの縁部(201)、及び/又は前記地板(10)若しくは前記受け(11)の外側表面から突出して前記角穴車(12)の前記外側表面(121)に面する少なくとも1つの縁部(101)を含むことを特徴とする、請求項14及び15に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項17】
前記受承表面(5)は、前記軸線(D)に対する回転の表面であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項18】
前記ゼンマイ(2)は、摩擦によって前記コア(4)に固定されることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項19】
前記ゼンマイ(2)は、前記コア(4)と共に、単一部品の、溶接若しくはハンダ付け又はこれらと同等の方法で形成されたゼンマイ−コアサブアセンブリを形成することを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の時計ムーブメント(100)。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の少なくとも1つの時計ムーブメント(100)及び/又は少なくとも1つのエネルギ貯蔵用香箱アセンブリ(1)を含む時計(1000)であって、
前記アセンブリ(1)は、コア(4)と一体として回転するよう設置される角穴車(12)又はドラム(3)と一体として回転するよう設置されるドラム歯部(13)のいずれかによって形成される1つの入力、及びこれら各場合のそれぞれに対して、前記ドラム(3)と一体として回転するよう設置される前記ドラム歯部(13)又は前記コア(4)と一体として回転するよう設置される前記角穴車(12)によって形成される1つの出力を有する、時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の香箱アセンブリに接合してこれを支持する受けから一定の距離にある少なくとも1つの地板を含む時計ムーブメントに関し、この香箱アセンブリは少なくとも1つの香箱用ゼンマイを含み、上記ゼンマイは、上記受けのそばに配設された香箱ドラムと、角穴車と一体として回転しかつ共通の枢軸の周りで上記ドラムと同軸である香箱のコアの受承表面との間に、その第1の端部が香箱ドラム上、第2の端部が受承表面上にあるように設置され、上記香箱アセンブリは上記地板側に、上記ドラムに固定された蓋を含み、上記蓋及び上記ドラムは共に、上記ゼンマイを収容するチャンバを形成する。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような時計ムーブメントを含む時計にも関する。
【0003】
本発明は、時計学の分野に関し、より具体的にはムーブメント、時報動作又はその他の時計の機能に動力供給するためのエネルギ貯蔵香箱の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
ゼンマイの回転数を増やすことによりパワーリザーブを増大させるための1つの解決法は、香箱真及び関連するコアの直径を低減することによりドラム内部のゼンマイのために利用可能な空間を増大させることからなる。
【0005】
ゼンマイの厚さに対するコア半径の比は通常10〜20であり、本発明はこの比を10より小さく、好ましくは5〜10の範囲内に低減することを提案する。
【0006】
コア直径が小さすぎる場合、コア破損のリスクがあるため、小さすぎる寸法に寸法決めしてはならない。
【0007】
従来の香箱の構造において、角穴車は四角形部分を介して香箱真又はコアに軸方向に設置され、角穴車は通常軸方向のネジによって固定される。よってネジ及び四角形部分の寸法は、枢動肩部の最小直径を画定する。枢動肩部に連結される段差部は、地板若しくは宝石若しくは同様の要素を支持する受けに対する香箱真又はコアの軸方向の前後振動を制限する。
【0008】
ドラムの軸方向の前後振動を制限する段差部と結合した香箱真又はコア上でのドラムの枢動をガイドするための肩部には、段差部よりも大きな直径が必要である。材料の断面を最小とするために必要な立体的連鎖には相当な寸法が必要となり、これを低減するのは困難である。特に、単にすべての寸法を低減すると、材料の断面が耐疲労性を保証するには不十分なものとなってしまうため、これは不十分である。
【0009】
MARSHALLによる特許文献1は、角穴車が、ヒゲゼンマイの外側コイルを引っ掛けるためのフックを含む単一部品の蓋と一体である、香箱を開示している。蓋は地板の肩部によってガイドされ、香箱真の端部をガイドする孔を含む。香箱真は主部である円筒形肩部を有し、これは2つの軸受けを介してドラムをガイドする。この肩部は停止肩部によって制限され、この停止肩部はドラムを地板からある距離に保持し、この地板において香箱真の一端が回転する。一方裏蓋は、地板に対する香箱真の移動を制限するよう配設された停止部を含む。従ってゼンマイは、アーバとドラムとの間ではなく、ドラムと蓋との間に設置される。
【0010】
JUNGHANSによる特許文献2は、コアがその上で枢動するパイプを有するドラムを含む香箱を開示し、このコアは四角形部分を介して、受けと地板との間で枢動する香箱真に接続され、角穴車にクランプ留めされる。角穴車の反対側では、香箱真は自動巻き機構と協働する歯付きホイールを支持する。受け上の隅肉は、この歯付きホイールのクリアランスを制限する。
【0011】
KERNによる特許文献3は、バヨネット及びピンによってドラムに固定された、ドラムを閉鎖するための蓋を有する香箱を開示しており、この蓋は歯部を備える。
【0012】
LANGEによる特許文献4は、受けの孔によってドラムがその周縁においてガイドされ、ドラムが支持領域と呼ばれる突出環状表面を含み、この支持領域がドラムの上記ガイド用孔を越えて径方向に延伸して、受け上のドラムのための支持体又は停止部材を提供する、特定の構成に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願第996499A号
【特許文献2】スイス特許出願第318898A号
【特許文献3】米国特許出願第1033020A号
【特許文献4】欧州特許出願第1542098A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
様々な構成部品の寸法決めに関するこれらの物理的制限のために、上述した従来の構成とは異なる香箱の構成を想定することが必要である。
【0015】
本発明は、コア直径の減少を達成するための複数の解決法を考慮する。
【0016】
実質的な制約は、必要に応じてゼンマイを交換するためにアセンブリを分解できることを保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って本発明は、時計の香箱アセンブリに接合してこれを支持する受けから一定の距離にある少なくとも1つの地板を含む時計ムーブメントであって、この香箱アセンブリは少なくとも1つの香箱用ゼンマイを含み、上記ゼンマイは、上記受けのそばに配設された香箱ドラムと、角穴車と一体として回転しかつ共通の枢軸の周りで上記ドラムと同軸である香箱のコアの受承表面との間に、その第1の端部が香箱ドラム上、第2の端部が受承表面上にあるように設置され、上記香箱アセンブリは上記地板側に、上記ドラムに固定された蓋を含み、上記蓋及び上記ドラムは共に、上記ゼンマイを収容するチャンバを形成する、時計ムーブメントに関し、上記ゼンマイは、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロムベースの合金製であり、9〜21の幅厚比を有すること、並びに上記枢軸に対する鋼又はステンレス鋼製の上記コアの最大半径は上記ゼンマイの最大厚さの9倍未満であることを特徴とし、並びに上記ムーブメントは、少なくとも1つのシムワッシャを含む振動制限手段を含み、これは上記コアとは独立しており、上記コアの肩部によってガイドされ、上記地板と上記蓋との間又は上記受けと上記ドラムとの間に挿入されることを更に特徴とする。
【0018】
本発明の特徴によると、上記ドラムは上記受け又は上記受けが支持するガイド部材において枢動し、上記ドラムの移動の終点を制限するために上記受け又は上記ガイド部材の相補的停止表面と協働するよう配設された軸方向支持肩部を含み、上記蓋は上記地板又は上記地板が支持するガイド部材において枢動し、上記蓋の移動の終点を制限するために上記地板又は上記ガイド部材の相補的停止表面と協働するよう配設された軸方向支持肩部を含み;上記コアは、上記ドラムの孔において枢動する第1の肩部及び上記蓋の孔において枢動する第2の肩部を含み、上記コアと上記ドラムとの間の相対的前後振動は、上記コアの第1の停止表面及び上記ドラムの第1の相補的内側停止表面によって制限され、上記コアと上記蓋との間の相対的前後振動は、上記コアの第2の停止表面及び上記蓋の第2の相補的内側表面によって制限される。
【0019】
本発明の特徴によると、上記香箱アセンブリは、上記香箱アセンブリと、上記地板又は上記受けのうちの少なくとも一方との間の前後振動を制限する手段を含む。
【0020】
本発明は更に、このタイプの少なくとも1つのエネルギ貯蔵用香箱アセンブリを有するこのタイプの少なくとも1つの時計ムーブメントを含む時計に関し、上記香箱アセンブリは、上記コアと一体として回転するよう設置される角穴車又は上記ドラムと一体として回転するよう設置されるドラム歯部のいずれかによって形成される1つの入力、及びこれら各場合のそれぞれに対して、上記ドラムと一体として回転するよう設置されるドラム歯部又は上記コアと一体として回転するよう設置される角穴車によって形成される1つの出力を有する。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の変形例による時計の香箱の、枢軸を通る平面における概略断面図である。
図2図2は、従来のコアを有する香箱の、枢軸を通る平面における概略断面図である。
図3図3は、シムワッシャを有する本発明の変形例による、図2の香箱アセンブリ及びコアの展開図である。
図4図4は、本発明の変形例による、隅肉の形態の支持部材を受けと角穴車との間に有する香箱の、枢軸を通る平面における概略部分断面図である。
図5図5は、本発明の変形例による、隅肉の形態の支持部材を、隅肉を備える受けとドラムとの間及び地板と香箱蓋との間に有する香箱の、枢軸を通る平面における概略部分断面図である。
図6図6は、本発明の変形例による、隅肉の形態の支持部材をドラムと受けとの間に有する(隅肉はドラム上にある)香箱の、枢軸を通る平面における概略部分断面図である。
図7図7は、従来のコアを有する香箱の、枢軸を通る平面における概略断面図である。
図8図8は、2つの部品からなる段差付きコアを有する本発明の変形例による、図2の香箱アセンブリ及びコアの展開図である。
図9図9は、本発明によるムーブメント及び香箱アセンブリを含む時計のブロック図である。
図10図10図16は、本発明による時計用香箱の様々な変形例の、枢軸を通る平面における概略断面図である。図10は、地板及び受けの2つの宝石でガイドされる単一部品のコアを有する変形例を示し、上記コアはドラム及び蓋を支持し、ドラムはその外面に、上側の受けの宝石と当接して協働するための隅肉を有する。
図11図11図10と同様の変形例を示し、蓋の面上に支持されるよう配設された、コア上に打ち込まれた調整ワッシャを含む。
図12図12は、地板及び受けの2つの宝石でガイドされる単一部品のコアを有する変形例を示し、上記コアはドラム及び蓋を支持し、ドラムはその外面に、上側の受けの宝石と当接して協働するための隅肉を有し、蓋は地板の宝石と協働するための同様の隅肉を有し、ゼンマイは第1の拡張コイルを含む。
図13図13は、2つの部品からなるコアを有する変形例を示し、香箱真と呼ばれる一方の部品は、受けの宝石にガイドされてドラムを支持し、コアと呼ばれるもう一方の部品は、地板の宝石にガイドされて蓋を支持し、蓋はその外面に、地板の宝石と当接して協働するための隅肉を有し、ゼンマイは拡張コイルを含み、これは第1のコイルではない。
図14図14図12と同様の、地板及び受けの2つの宝石でガイドされる単一部品のコアを有する変形例を示し、上記コアはドラム及び蓋を支持し、ドラムはその外面に、上側の受けの宝石と当接して協働するための隅肉を有し、蓋は地板の宝石と協働するための同様の隅肉を有し、ドラム及び蓋はコアの段差部上にクランプ留めされ、角穴車はネジ山が付いたコア上にネジ留めされる。
図15図15は、地板及び受けの2つの宝石でガイドされる単一部品のコアを有する変形例を示し、上記コアはドラム及び蓋を支持し、また、ドラムの内面に当接して協働するよう配設されたカラーを含む。
図16図16図14と同様の、地板及び受けの2つの宝石でそれぞれガイドされるドラム及び蓋を支持する単一部品のコアを有する変形例を示しの変形例を示し、ドラムはその外面に、上側の受けの宝石と当接して協働するための隅肉を有し、蓋は地板の宝石と協働するための同様の隅肉を有し、ドラム及び蓋はコアの段差部上にクランプ留めされ、角穴車はネジ山が付いたコア上にネジ留めされる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は時計学の分野に関し、より具体的にはムーブメント、時報動作又はその他の時計の機能に動力供給するためのエネルギ貯蔵香箱の分野に関する。
【0024】
好ましい非限定的な実施形態では、本発明は、時計の香箱アセンブリ1に接合してこれを支持する受け11から一定の距離にある少なくとも1つの地板10を含む時計ムーブメント100に関する。
【0025】
この香箱アセンブリ1は少なくとも1つの香箱用ゼンマイ2を含み、このゼンマイ2は、上記受け11のそばに配設された香箱ドラム3と、角穴車12と一体として回転しかつ共通の軸線Dの周りでドラム3と同軸である香箱のコア4が備える受承表面5との間に、その第1の端部21が香箱ドラム3上、第2の端部22が受承表面5上にあるように設置される。香箱アセンブリ1は地板10側に、ドラム3に固定された蓋7を含み、上記蓋7及び上記ドラム3は共に、ゼンマイ2を収容するチャンバ32を形成する。
【0026】
図面には様々な変形例を示す。
【0027】
本発明によると、ゼンマイ2は、44〜46%のコバルト、20〜22%のニッケル、17〜19%のクロム、4〜6%の鉄、3〜5%のタングステン、3〜5%のモリブデン、0〜2%のチタン、0〜1%のベリリウムを含み、200〜240GPaのヤング率及び80〜100GPaの剪断弾性率を有する、多相のコバルト−ニッケル−クロムベースの合金製である。このゼンマイ2は、3〜23、より具体的には9〜21の幅厚比を有する。
【0028】
軸線Dに対する鋼又はステンレス鋼製のコア4の最大半径は、ゼンマイ2の最大厚さの9倍未満である。特に、図示した実施形態では、上記比を約5とすることができる。
【0029】
更に、ムーブメント100は振動制限手段を備える。図3の変形例では、この制限手段はシム手段又は移動制限手段を含み、これは、地板10とドラム3の間又は受け11とゼンマイ2を収容するチャンバ32を形成するためにドラム3に固定された蓋7との間に挿入されるシムワッシャ70を含む。このシムワッシャ70はコア4とは独立しており、上記コア4が備える肩部44によってガイドされ、地板10と蓋7との間又は受け11とドラム3との間に挿入される。
【0030】
図3に示す変形例では、この少なくとも1つのシムワッシャ70は好ましくはコア4の肩部44によってガイドされ、より具体的には上記44上に嵌め込まれる。
【0031】
別の変形例では、振動制御手段は、受け11とドラム3との間に挿入される第1のシムワッシャ70及び地板10と蓋7との間に挿入される第2のシムワッシャ70を含む。
【0032】
別の変形例では、シムワッシャ70は、コア4が備える又はコア4と一体である香箱真18及び蓋7とは独立しており、地板10と蓋7との間に挿入される。
【0033】
特定の変形例では、コア4は地板10及び受け11において直接枢動する。
【0034】
図1図16に示す別の変形例では、コア4は地板10及び受け11において、それぞれ蓋7及びドラム3を介して間接的に枢動する。
【0035】
図8に示す変形例では、コア4は2つの同軸部品4A、4Bを有し、これらのうち一方の部品4Bは受け11において直接枢動し、ドラム3の孔35のためのガイド用肩部43を有し、他方の部品4Aは、地板10において直接枢動し、ゼンマイ2を引っ掛けるためのフック41を備える。
【0036】
図8の同一の変形例では、ドラム3は、受け11において又は受け11が支持するガイド部材403において枢動し、ドラム3の移動の終点を制限するために受け11又はガイド部材403の相補的停止表面119と協働するよう配設された軸方向支持肩部39を含む。蓋7は、地板10又は地板10が支持するガイド部材108において枢動し、蓋7の移動の終点を制限するために地板10又はガイド部材108の相補的停止表面109と協働するよう配設された、軸方向支持肩部79を含む。
【0037】
コア4は、ドラム3の孔35において枢動する第1の肩部43及び蓋7の孔75において枢動する第2の肩部44を含む。コア4とドラム3との間の相対的前後振動は、コア4の第1の停止表面4030及びドラム3の第1の相補的内側停止表面31によって制限される。コア4と蓋7との間の相対的前後振動は、コア4の第2の停止表面407及び蓋7の第2の相補的内側停止表面71によって制限される。
【0038】
有利には、図1、16に示すように、ドラム3のこの軸方向支持肩部39及び/又は蓋7の軸方向支持肩部79は、表面接触を低減するために、隅肉202、207で形成される。隅肉202、207は、受け11又は地板10が支持するガイド部材403、108上に支持される。
【0039】
特に図8に示すように、ムーブメント100は有利には、香箱アセンブリ1と地板10又は受け11のうちの少なくとも一方との間の前後振動を制限するための手段6を含む。
【0040】
ある変形例では、この制限手段は、地板10及び/又は受け11におけるドラム3及び/又は蓋7の直接的な枢動をガイドする手段を含む。
【0041】
この制限手段は、有利にはシム手段又は地板10及び/若しくは受け11に対するドラム3及び/若しくは蓋7の移動を制限する手段を含む。
【0042】
図6に示す変形例では、制限手段は、ドラム3の外側表面30から地板10若しくは受け11と反対側に突出する少なくとも1つの縁部202、及び/又は図5に示すように、地板10若しくは受け11の外側表面から突出してドラム3の外側表面30に面する少なくとも1つの縁部102を含む。
【0043】
図5に示す変形例では、制限手段は、蓋7の外側表面76から地板10若しくは受け11と反対側に突出する少なくとも1つの縁部207、及び/又は地板10若しくは受け11の外側表面から突出して蓋7の外側表面76に面する少なくとも1つの縁部107を含む。
【0044】
有利には図5の変形例からわかるように、コア4が支持する角穴車12の外側表面121から地板10若しくは受け11と反対側に突出する少なくとも1つの縁部201、及び/又は地板10若しくは受け11の外側表面から突出して角穴車12の外側表面121に面する少なくとも1つの縁部101を、制限手段に追加する。
【0045】
特定の実施形態では、受承表面5は、軸線Dを中心にして回転した時に形成される回転表面である。
【0046】
変形実施形態では、ゼンマイ2は摩擦によってコア4に固定される。
【0047】
有利な好ましい実施形態では、ゼンマイ2は、コア4と共に、単一部品の、溶接若しくはハンダ付け又はこれらと同等の方法で形成されたゼンマイ−コアサブアセンブリを形成する。摩擦又は溶接若しくはこれと同等の方法によって固定されるこれら2つの変形例は、ゼンマイを引っ掛けるフックを省略できることを意味する。
【0048】
本発明は、このようなコア直径の低減を達成するための複数の解決法を考慮するものであり、これは香箱に貯蔵されるエネルギを増大させることができる。
【0049】
本発明が提案する様々な手段を互いに組み合わせて、利用可能な空間、角穴車の位置、香箱を閉鎖するための(この機能は角穴車によっても実施できるが)蓋の存在又は不在に応じて最適な結果を得ることができる。
【0050】
第1の解決法は、特にゼンマイを突起等の突出領域、フランジを追加する積層領域等に固定することによって、振動調整機能をゼンマイに付与することにより、ゼンマイによるドラムとカバーとの間の振動を提供することからなる。これにより、ドラムを支持する肩部及び香箱真又はコア上の蓋が不要となる。
【0051】
第2の解決法は、特に2つ又は3つである複数の部分からコアを形成することからなる。この解決法により、特にドラムの枢動直径よりも小さな直径のコアを形成することが可能となる。有利には、コアはドラムの孔を通して挿入される。香箱真又はコアを2つ以上の部分で形成することにより、ゼンマイの目玉部を引っ掛けるフックの機械加工が容易になる。
【0052】
コアは、角穴車を駆動するための従来の四角形部分又はネジ山を含んでよい。或いは限定するものではないが、第2の変形例において、コアは地板及び受け内でコアをガイドするための1つ又は複数の直径調整用ワッシャ又はリングを含んでもよい。
【0053】
別の解決法は、ワッシャをコアに打ち込んでドラム−蓋振動を調整することからなる。このワッシャは、香箱への干渉が必要となった場合に受けのいずれの分解を防止するよう設置される。
【0054】
更に別の解決法は、香箱真又コア上で起こる枢動ではなく、受けでのドラム及び/又は蓋の枢動を提供することからなる。有利には、ドラム及び蓋の両方は地板及び受けにおいて枢動する。
【0055】
本発明によって提案される異なる変形例によって、機械加工、組立て及び分解、並びに様々な構成部品間の前後振動及び受けに対する前後振動の制御が容易となることが保証される。
【0056】
以下の2種類の前後振動を考慮する必要がある。
−香箱「単独」の前後振動、並びに
−1つ又は複数のエボーシュ(これ以降簡略化のために地板及び受けと呼ぶが、限定するものではない)を有する香箱の前後振動。
【0057】
これらの前後振動は互いに対して加算されるため、設計にあたってこれら両方を考慮しなければならない。
【0058】
本発明は、コア直径を可能な限り低減しようとする努力を発端とするものである。従って、本発明は、一方の振動又は他方の振動又はその両方を補償するための新しい解決法を手供することを目的とする。
【0059】
従って本発明は、香箱「単独」の振動を補償するための択一的な解決法を実装するために考案され、
−香箱ドラム及び/又は香箱蓋と、コアの構造に応じて香箱真の肩部及び/又はコアの肩部とを接触させ、
−ゼンマイと香箱ドラム及び/又は香箱蓋とを、1つ又は複数の表面において接触させる。
【0060】
ゼンマイとゼンマイを収容するチャンバ(チャンバがドラム及び蓋、ドラム及び角穴車、又はドラム及び受けのいずれによって形成されるかに関わらず)の1つ又は複数の内側表面との間の接触を有するこの実施形態では、以下の複数の変形例が可能である:
−コアの受承表面と接触するゼンマイの第1の内側コイルが、他のコイルより高い変形例;
−コアの肩部と協働せず、ドラム又は蓋等の内側表面と直接協働するようにコアから十分に離間した別のコイルが、他のコイルより高い変形例;
−いくつかのコイルが他のコイルより高い変形例;
−他のコイルより高いコイルが、ゼンマイに少なくとも1つ追加される変形例;又は
−ゼンマイとチャンバの内壁との間の振動制限接触を保証するために、ドラム及び/又は蓋が、ゼンマイと対面する内面上に1つ又は複数の隆起部、縁部、隅肉等を含む変形例。
ここでは「隅肉」とは、重力若しくはユーザの運動による加速の影響下において、機構内の遊び補償によって構成部品を互いに対して押し付ける際に、別の構成部品の隣接する表面に当接して協働するために、表面から突出した表面、好ましくは回転の表面を意味する。
【0061】
香箱アセンブリが組込まれたエボーシュによって実現される香箱の振動の補償に関して、本発明は以下の複数の変形例を提供する:
−(コアの設計に応じて)コアの肩部又は香箱真の肩部と、エボーシュの地板又は受けが備える宝石又はガイド要素との間の接触;
−香箱ドラム及び/又は香箱蓋と、地板又は受けに嵌め込まれた宝石又は同等のガイド手段との間の、ドラム及び/又は蓋の面に配設された隆起部、縁部、隅肉等を介した接触;
−香箱ドラム及び/又は香箱蓋と、地板又は受けに嵌め込まれた宝石又は同等のガイド手段との間の、地板及び/又は受けの面に配設された隆起部、縁部、隅肉等を介した接触。
【0062】
図面は、本発明の複数の可能な組み合わせのうち、特定の実施形態を示す。
【0063】
本発明によると、ムーブメント100は、香箱アセンブリ1と、香箱アセンブリ1が備える少なくとも1つの地板10又は受け11との間の前後振動を制限する手段6を含む。
【0064】
この制限手段は:
−シム手段、又は地板若しくは受け11に対するドラム3及び/若しくはドラム3に固定されてこれと共にゼンマイ2を収容するチャンバ32を形成する蓋7の移動を制限する手段によって形成されるか;又は
−ドラム3及び/又はドラム3に固定されてこれと共にゼンマイ2を収容するチャンバ32を形成する蓋7の、地板10及び/又は受け11における枢動を直接ガイドする手段によって形成されるか;又は
−シム手段又は移動制限手段と、香箱アセンブリ1と少なくとも1つの地板10又は受け11との間の振動を枢軸方向Dにおいて制限するための枢動ガイド手段との組み合わせによって形成される。
【0065】
図4図6は、図4では受け11と角穴車12との間、並びに隅肉102及びドラム3を支持する受け11と、香箱1の地板10及び蓋7との間それぞれの、隅肉の形態の支持を図示する。図5ではこの蓋7は隅肉207を備え、図5はまた、隅肉107を備える地板10及び隅肉102を備える受け11を示し、これらはそれぞれ蓋7及びドラム3と協働する。
【0066】
この支持用隅肉は、ドラム3と受け11との間に形成され、図6ではドラム3上に隅肉202が存在する。
【0067】
図8は、2つの段差付き部分4A、4Bからなるコア4を示し、部分4Bはドラム3の孔35のためのガイド用肩部を含む。主部分4Aは、肩部182の下端87において地板10に嵌め込まれた宝石にガイドされ、蓋7は、蓋7の孔75と協働するフランジ4Aの肩部44上にガイドされる。部分4Bは、受け11の上端86において受け11に嵌め込まれた宝石の肩部181にガイドされる。この図は、ゼンマイ2をフック41に引っ掛ける従来の様式を示す。
【0068】
図10は、図5の構成とは逆の構成を示し、図10ではドラム3が、受け11に嵌め込まれた宝石302と当接して協働するよう設計された隅肉202及びコアの肩部43をガイドする孔を有する宝石302を支持する。この特定の変形例では、同一の円筒形肩部43が、ドラム3の枢動をガイドするよう延伸する。
【0069】
宝石への隅肉の移動によって、隅肉と宝石との間の摩擦トルクを制御してこれを極めて低い値に維持できる。
【0070】
図10では、コアと、組立て済みの香箱アセンブリとの間の振動は、コア4の肩部43A、43B上でのドラム3及び蓋7の支持を制限することによって与えられる。
【0071】
エボーシュに対する香箱アセンブリの振動は、コア4の軸方向の遊びによって画定され、これは宝石302の反対側のドラム3の隅肉202によって制限される。
【0072】
図10の変形例は、ドラム3と角穴車12との間に受け11を挿入した状態を示す。
【0073】
図11はまた、受け11に嵌め込まれた宝石302と協働するよう配設されたドラム3の隅肉202を示す。
【0074】
コア4は、その肩部44のうちの1つに嵌め込まれたワッシャ70を備える。軸方向に空間を提供するために、ワッシャ70は上方に嵌め込まれる。
【0075】
香箱アセンブリに対するコアの振動は、蓋7の底部軸受け表面73に対するワッシャ70のクリアランスによって制限される。
【0076】
エボーシュに対する香箱の振動は、地板10の宝石702に対してはコア4によって、受け11に対してはドラム3の隅肉202によって制限される。
【0077】
図12はまた、受け11に嵌め込まれた宝石302と協働するよう配設されたドラム3の隅肉202、及び地板10に嵌め込まれた宝石702と協働するよう配設された蓋7の隅肉207を示す。
【0078】
図12では、香箱単独の前後振動は、ここでは第1の拡張コイルの形態で示される突出領域23を有するゼンマイ2によって保証され、この突出領域23は、コア4の位置に応じて、ドラム3の内側表面31又は蓋7の内側表面71と直接協働する。受けにおける香箱の振動は、ドラム及び蓋の外側において、一方の側では隅肉202、他方の側では隅肉207によって保証される。
【0079】
図13は、地板10に嵌め込まれた宝石701と協働するよう配設された蓋7の隅肉207を示す。
【0080】
コアは2つの部品、即ち、香箱真18の軸受け表面18Aを介して軸方向に制限されつつ香箱真18上に嵌め込まれた、ゼンマイ2を支持するコア4自体、及びコア4の反対側の軸受け面49である。
【0081】
ゼンマイ2の内側端部22を支持するコア4は、香箱真18の肩部84と協働するコアの孔411を含む。
【0082】
香箱単独の振動はゼンマイ2によって補償され、このゼンマイ2は突出領域23を有し、突出領域23はここでは、香箱真の底部肩部189A上ではなくドラム3の内側表面31上に支持されるように軸から十分に離間した、追加のフランジ又はコイルである。
【0083】
従って、エボーシュによって実現される香箱の振動は、受け11の宝石302と軸受け接触するよう配設された香箱真18の上側肩部189Bによって、及び地板10の宝石702上への蓋7の隅肉207の接触によって保証される。
【0084】
図14はまた、受け11に嵌め込まれた宝石302と協働するよう配設されたドラム3の隅肉202、及び地板10に嵌め込まれた宝石702と協働するよう配設された蓋7の隅肉207を示す。
【0085】
エボーシュにおける香箱全体の振動の補償は、図12と同様の方法でもたらされ、エボーシュに対する香箱単独の振動は、コア4の肩部407と蓋7又はコア4の肩部403とドラム3それぞれの接触によって補償される。
【0086】
図14は、コア4の雄ネジ山上にネジ留めされる雌ネジ山を含む角穴車12を示す。
【0087】
図15は、底部カラー40を有するコア4を有する有利な変形例を示し、カラー40は、ドラム3の内面31上に軸受け面401を介して支持されるよう配設される。
【0088】
香箱アセンブリに対するコアの振動は、コア4の軸受け面40A、407それぞれに対するドラム3及び蓋7の振動によって制限される。
【0089】
エボーシュに対する香箱アセンブリの振動は、コア4の対向する軸受け面49A、49Bそれぞれと、地板10の宝石702及び受け11の宝石302との間の接触によって画定される。
【0090】
機械加工を単純化するために、コア4は有利には、複数の同軸の部品で形成される。
【0091】
図16は、図14のバージョンの変形例である。このバージョンでは、振動は同じ様式で補償される。しかしながら、ドラム3及び蓋7の枢動がそれぞれエボーシュの受け11及び地板10において直接生じるため、ガイド部材が異なる。この配置により、拡張枢動直径による軸方向の遊びのより良好な制御を提供する。
【0092】
本発明はまた、このタイプの少なくとも1つの時計ムーブメント100及び/又はこのタイプの少なくとも1つのエネルギ貯蔵用香箱アセンブリ1を含む時計1000にも関し、このアセンブリ1は、コア4と一体として回転するよう設置される角穴車12又はドラム3と一体として回転するよう設置されるドラム歯部13のいずれかによって形成される1つの入力、及びこれら各場合のそれぞれに対して、ドラム3と一体として回転するよう設置されるドラム歯部13又はコア4と一体として回転するよう設置される角穴車12によって形成される1つの出力を有する。
【0093】
本発明は、直径が極めて小さいコアを形成する手段、並びに従って、ムーブメント機構又は時報機構又は同様の機構の動力貯蔵性能及びパワーリザーブを向上させる手段を提供する。
【0094】
構成部品の摩耗を制限するため及び機構の信頼性を向上するために振動を制御することは、重要である。
図1
図2-3】
図4
図5
図6
図7-8】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16