特許第5755414号(P5755414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755414
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】振れ補正機能付き光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20060101AFI20150709BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20150709BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   G03B5/00 J
   H04N5/225 D
   H04N5/232 Z
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-131388(P2010-131388)
(22)【出願日】2010年6月8日
(65)【公開番号】特開2011-257555(P2011-257555A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2013年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】和出 達貴
(72)【発明者】
【氏名】浅川 新六
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 克重
(72)【発明者】
【氏名】濱田 吉博
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−288769(JP,A)
【文献】 特開2002−262545(JP,A)
【文献】 特開2007−109317(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/044196(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/044197(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/044195(WO,A1)
【文献】 特開2010−117708(JP,A)
【文献】 特開2002−245647(JP,A)
【文献】 特表2011−521285(JP,A)
【文献】 特開2005−215454(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/139543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
H04N 5/225
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、
光学素子を保持する可動モジュールと、
前記可動モジュールを前記固定体に対して揺動させる駆動力を発生させる振れ補正用駆動機構と、
を有する振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、
前記振れ補正用駆動機構は、前記可動モジュールの外周面において前記光学素子の光軸周りの周方向で離間する個所に設けられた複数の永久磁石と、前記固定体において周方向に延在して、前記永久磁石に対向する複数のコイル部および該コイル部に電気的接続する端子部を一体に備えたシート状コイルと、を備え、
前記端子部は、前記シート状コイルにおいて前記永久磁石と対向する側とは反対側の外側に向いており、
前記可動モジュールは、前記シート状コイルと前記永久磁石との当接によって前記光軸と交差する方向の可動範囲が規制されていることを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記コイル部は、基板上で複数層の配線層が絶縁膜を介して積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記シート状コイルは、前記永久磁石に対向配置された基板と、該基板において前記永久磁石と対向する側とは反対側の面に固定されて前記コイル部を構成する複数の空芯コイルとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記永久磁石において前記シート状コイルと対向する面には樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記永久磁石と前記シート状コイルとの間隔は、前記可動モジュールの揺動中心から前記光軸方向で離間するに従って広がっていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記コイル部は、前記永久磁石が発生する磁力線の方向が前記可動モジュールの揺動中
心から略遠ざかる方向となる第1の領域内および/または前記磁力線の方向が前記揺動中心へ略向かう方向となる第2の領域内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
前記可動モジュールは、前記光学素子として、撮像素子およびレンズを保持していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付き携帯電話機等に搭載される振れ補正機能付き光学ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機は、撮影用の光学ユニットが搭載された光学機器として構成されている。かかる撮影用の光学ユニットは、レンズを備えた移動体、この移動体を光軸方向に磁気駆動するフォーカシング用のレンズ駆動機構、および撮像素子が支持体上に支持された撮像ユニットを備えている。かかる光学ユニットにおいては、ユーザーの手振れによる撮影画像の乱れを抑制するために、撮像ユニットを固定体上で揺動可能な可動モジュールとして構成するとともに、撮像ユニット(可動モジュール)と固定体との間に永久磁石と単体の空芯コイルとを用いた振れ補正用駆動機構を構成した技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−288769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光学ユニットにおいて各方向の手振れを補正するには、撮像ユニットの周方向で離間する複数個所に空芯コイルを配置する必要があるとともに、複数の空芯コイルの各々を電気的に接続する必要があるため、特許文献1に記載の構成のように、固定体と撮像ユニットとの間に永久磁石と単体の空芯コイルとを配置すると、空芯コイルの配置や電気的な接続に多大な工数が必要であるという問題点がある。
【0005】
かかる問題点は、撮像用の光学ユニットにおいて手振れを補正する場合に限らず、光学ユニットにおいて振れを補正する場合の全般において共通する問題点である。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可動モジュールと固定体との間に振れ補正用駆動機構を設けた場合でも、組立工数の増大を最小限に止めることのできる振れ補正機能付き光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、固定体と、光学素子を保持する可動モジュールと、前記可動モジュールを前記固定体に対して揺動させる駆動力を発生させる振れ補正用駆動機構と、を有する振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、前記振れ補正用駆動機構は、前記可動モジュールの外周面において前記光学素子の光軸周りの周方向で離間する個所に設けられた複数の永久磁石と、前記固定体において周方向に延在して、前記永久磁石に対向する複数のコイル部および該コイル部に電気的接続する端子部を一体に備えたシート状コイルと、を備え、前記端子部は、前記シート状コイルにおいて前記永久磁石と対向する側とは反対側の外側に向いており、前記可動モジュールは、前記シート状コイルと前記永久磁石との当接によって前記光軸と交差する方向の可動範囲が規制されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る振れ補正機能付き光学ユニット(光学ユニット)では、可動モジュールの外周面において光軸周りの周方向で離間する複数個所に永久磁石が設けられ、固定体には、周方向に延在して永久磁石に対向する複数のコイル部を備えたシート状コイルが設けられている。このため、光学ユニットに手振れ等の振れが発生した際、シート状コイルのコイル部に給電すれば、可動モジュールを揺動させることができる。従って、光学ユニットが振れても光軸の傾きを補正することができる。かかる振れ補正用駆動機構を構成するにあたって、本発明では、シート状コイルが用いられており、かかるシート状コイルの場合、複数のコイル部が端子部と一体に設けられているため、光軸周りの複数個所にコイル部を配置する場合でも、シート状コイルを光軸周りに延在させればよい。従って、単体の空芯コイルを用いた場合と違って、光軸周りの複数個所の各々にコイル部を配置して各々に電気的な接続を行なう必要がないので、組立工数が少なく済む。また、本発明では、端子部は、シート状コイルにおいて永久磁石と対向する側とは反対側の外側に向いているので、コイル部に対する電気的接続を容易に行なうことができる。さらに、シート状コイルの場合、空芯コイルと違って、永久磁石と当接しても巻線が解けることがないので、シート状コイル自身と永久磁石とを当接させて、可動モジュールの可動範囲を規制するのに利用することができる。
【0009】
本発明において、前記コイル部は、基板上で複数層の配線層が絶縁膜を介して積層されてなる構成を採用することができる。かかる構成によれば、空芯コイルを用いた場合と比較して、可動モジュールと固定体との間隔を狭めることができる。それ故、光学ユニットの小型化を図ることができる。
【0010】
本発明において、前記シート状コイルは、前記永久磁石に対向配置された基板と、該基板において前記永久磁石と対向する側とは反対側の面に固定されて前記コイル部を構成する複数の空芯コイルとを備えている構成を採用することができる。
【0013】
本発明では、前記永久磁石において前記シート状コイルと対向する面には樹脂層が形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、シート状コイルと永久磁石とを当接させて可動モジュールの可動範囲を規制した際、シート状コイルおよび永久磁石が損傷することを確実に防止することができる。
【0014】
本発明において、前記コイル部への給電を停止した状態で、前記永久磁石と前記シート状コイルとの間隔は、前記可動モジュールの揺動中心から前記光軸方向で離間するに従って広がっていることが好ましい。かかる構成によれば、可動モジュールが傾いた側では、永久磁石とシート状コイルとが平行に対向し、永久磁石とコイル部との平均距離が狭くなるので、振れ補正用駆動機構では、可動モジュールを揺動させようとする力を効率よく発生させることができる。また、永久磁石とシート状コイルとが当接した際、永久磁石の角部分がシート状コイルに強く当接することを回避することができるので、シート状コイルおよび永久磁石が損傷することを確実に防止することができる。
【0015】
本発明において、前記コイル部は、前記永久磁石が発生する磁力線の方向が前記可動モジュールの揺動中心から略遠ざかる方向となる第1の領域内および/または前記磁力線の方向が前記揺動中心へ略向かう方向となる第2の領域内に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、コイル部に電流が供給されることで生じる電磁力の方向は、揺動中心を中心とするとともにコイル部を通過する円の接線方向と略一致する。すなわち、コイル部に電流が供給されることで生じる電磁力の方向は、揺動中心を中心として可動モジュールを揺動させるための揺動力を発生させる方向と略一致する。従って、永久磁石が発生させる磁束を有効に利用して、振れ補正用駆動機構の駆動力を高めることが可能になる。
【0016】
本発明において、前記可動モジュールは、前記光学素子として、撮像素子およびレンズを保持している構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る振れ補正機能付き光学ユニットでは、可動モジュールの外周面において光軸周りの周方向で離間する複数個所に永久磁石が設けられ、固定体には、周方向に延在して永久磁石に対向する複数のコイル部を備えたシート状コイルが設けられている。このため、光学ユニットに手振れ等の振れが発生した際、シート状コイルのコイル部に給電すれば、可動モジュールを揺動させることができる。従って、光学ユニットが振れても光軸の傾きを補正することができる。かかる振れ補正用駆動機構を構成するにあたって、本発明では、シート状コイルが用いられているため、空芯コイルを用いた場合に比して、可動モジュールと固定体との間隔を狭めることができるので、光学ユニットのサイズを小さくすることができる。また、シート状コイルの場合、複数のコイル部が端子部と一体に設けられているため、光軸周りの複数個所にコイル部を配置する場合でも、シート状コイルを光軸周りに延在させればよい。従って、空芯コイルを用いた場合と違って、光軸周りの複数個所の各々にコイル部を配置して各々に電気的な接続を行なう必要がないので、組立工数が少なく済む。それ故、可動モジュールと固定体との間に振れ補正用駆動機構を設けた場合でも、サイズの大型化や組立工数の増大を最小限に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットを携帯電話機等の光学機器に搭載した様子を模式的に示す説明図である。
図2】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットの外観等を示す斜視図である。
図3】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットに搭載されている撮像ユニット1の構成を模式的に示す断面図である。
図4】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットに搭載されている撮像ユニットの分解斜視図である。
図5】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットの内部構造を示す断面図である。
図6】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットを被写体側からみたときの分解斜視図である。
図7】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットを被写体側とは反対側からみたときの分解斜視図である。
図8】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットに構成した振れ補正用駆動機構の構成を示す説明図である。
図9】本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットの振れ補正用駆動機構に用いたシート状コイルの説明図である。
図10】本発明の実施の形態の改良例に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの説明図である。
図11】本発明の実施の形態の別の改良例に係る振れ補正機能付きの光学ユニットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、光学素子ユニットとして撮像ユニットの手振れを防止するための構成を例示する。また、以下の説明では、互いに直交する3方向を各々X軸、Y軸、Z軸とし、光軸L(レンズ光軸)に沿う方向をZ軸とする。また、以下の説明では、各方向の振れのうち、X軸周りの回転は、いわゆるピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転は、いわゆるヨーイング(横揺れ)に相当し、Z軸周りの回転は、いわゆるローリングに相当する。また、X軸の一方側には+Xを付し、他方側には−Xを付し、Y軸の一方側には+Yを付し、他方側には−Yを付し、Z軸の一方側(被写体側とは反対側)には+Zを付し、他方側(被写体側)には−Zを付して説明する。
【0020】
(撮影用の光学ユニットの全体構成)
図1は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットを携帯電話機等の光学機器に搭載した様子を模式的に示す説明図である。図2は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニットの外観等を示す斜視図であり、図2(a)、(b)は、光学ユニットを被写体側からみたときの斜視図、および光学ユニットを被写体側と反対側からみたときの斜視図である。
【0021】
図1に示す光学ユニット100(振れ補正機能付き光学ユニット)は、カメラ付き携帯電話機等の光学機器1000に用いられる薄型カメラであって、光学機器1000のシャーシ1100(機器本体)に支持された状態で搭載される。かかる光学ユニット100では、撮影時に光学機器1000に手振れ等の振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。そこで、本形態の光学ユニット100には、後述するように、撮像ユニット1からなる可動モジュールを固定体200内で揺動可能に支持するとともに、光学ユニット100に搭載したジャイロスコープ(図示せず)、あるいは光学機器1000の本体側に搭載したジャイロスコープ(図示せず)等の振れ検出センサによって手振れを検出した結果に基づいて、撮像ユニット1を揺動させる振れ補正用駆動機構(図1では図示せず)が設けられている。
【0022】
図1および図2に示すように、光学ユニット100には、撮像ユニット1や振れ補正用駆動機構への給電等行うためのフレキシブル配線基板410、420が引き出されており、かかるフレキシブル配線基板410、420は、共通のコネクタ490等を介して光学機器1000の本体側に設けられた上位の制御部等に電気的に接続されている。また、フレキシブル配線基板410は、撮像ユニット1から信号を出力する機能も担っている。このため、フレキシブル配線基板410は、配線数が多いので、フレキシブル配線基板410としては、比較的幅広のものが使用されている。
【0023】
(撮像ユニット1の構成)
図3は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100に搭載されている撮像ユニット1の構成を模式的に示す断面図である。図4は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100に搭載されている撮像ユニット1の分解斜視図である。
【0024】
図3および図4に示すように、撮像ユニット1は、例えば、光学素子としての複数枚のレンズ1a(図1参照)を光軸L方向に沿って被写体(物体側)に近づくA方向(前側)、および被写体とは反対側(撮像素子側/像側)に近づくB方向(後側)の双方向に移動させる光学素子ユニットであり、略直方体形状を有している。撮像ユニット1は、概ね、複数枚のレンズ1a(図1参照)および固定絞り等の光学素子を内側に保持した移動体3と、この移動体3を光軸L方向に沿って移動させるレンズ駆動機構5と、レンズ駆動機構5および移動体3等が搭載された支持体2とを有している。移動体3は、レンズ1aおよび固定絞り(図示せず)を保持する円筒状のレンズホルダ12と、レンズホルダ12を内側に保持するコイルホルダ13とを備えており、コイルホルダ13の外周側面には、レンズ駆動機構5を構成するレンズ駆動用コイル30s、30tが保持されている。
【0025】
支持体2は、被写体側(−Z側)とは反対側で、後述するバネを保持するバネホルダ19と、バネホルダ19に対して被写体側(−Z側)とは反対側で基板15を位置決めする矩形板状の基板ホルダ16と、バネホルダ19に対して被写体側で被さる箱状のケース18と、ケース18の内側に配置される矩形板状のスペーサー11とを備えており、基板15において被写体側に向く基板面に撮像素子1bが実装されている。また、バネホルダ19には、赤外線フィルタ等のフィルタ1cが保持されている。スペーサー11およびケース18の中央には、被写体からの光をレンズ1aに取り込むための入射窓11a、18aが各々形成されている。また、基板ホルダ16およびバネホルダ19の中央には、入射光を撮像素子1bに導く窓16a、19aが形成されている。
【0026】
ケース18は、鋼板等の強磁性板からなり、ヨークとしても機能する。このため、ケース18は、後述するレンズ駆動用マグネット17とともに、レンズ駆動用コイル30s、30tに鎖交する磁界を発生させる鎖交磁界発生体を構成しており、かかる鎖交磁界発生体は、コイルホルダ13の外周面に巻回されたレンズ駆動用コイル30s、30tとともにレンズ駆動機構5を構成している。
【0027】
支持体2と移動体3とは、光軸方向で離間する位置に設けられた金属製のバネ部材14sと、バネ部材14tとを介して接続されている。本形態では、撮像素子1bの側にはバネ部材14sが用いられ、被写体の側にはバネ部材14tが用いられている。バネ部材14s、14tは基本的な構成が同様であり、支持体2側に保持される外周側連結部141と、移動体3の側に保持される円環状の内周側連結部142と、外周側連結部141と内周側連結部142とを接続する細幅のアーム部143とを備えている。撮像素子1b側のバネ部材14sは、バネホルダ19に外周側連結部141が保持され、内周側連結部142が移動体3のコイルホルダ13の撮像素子側端部に連結されている。かかるバネ部材14sにおいて、アーム部143は、周方向に円弧状に延在している。被写体側のバネ部材14tは、スペーサー11に外周側連結部141が保持され、内周側連結部142が移動体3のコイルホルダ13の被写体側端部142に連結されている。かかるバネ部材14tにおいて、アーム部143は、径方向において蛇行しながら周方向に円弧状に延在している。このような構成により、移動体3は、バネ部材14s、14tを介して支持体2に光軸の方向に移動可能に支持されている。バネ部材14s、14tはいずれも、ベリリウム銅や非磁性のSUS系鋼材等といった非磁性の金属製であり、所定厚の薄板に対するプレス加工、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工により形成したものである。バネ部材14sは、2つのバネ片に2分割されており、レンズ駆動用コイル30s、30tの各端末は各々、バネ片に接続される。また、バネ部材14sにおいて、2つのバネ片には各々、端子14a、14bが接続されており、バネ部材14sはレンズ駆動用コイル30s、30tに対する給電部材としても機能する。
【0028】
コイルホルダ13の被写体側端部にはリング状の磁性片61が保持されており、かかる磁性片61の位置は、レンズ駆動用マグネット17に対して被写体側の位置である。このため、磁性片61は、レンズ駆動用マグネット17との間に作用する吸引力により移動体3に対して光軸Lの方向の付勢力を印加する。このため、非通電時(原点位置)においてはレンズ駆動用マグネット17と磁性片61との吸引力によってレンズホルダ12を撮像素子1b側に静置することができる。また、磁性片61は、一種のヨークとして作用し、レンズ駆動用マグネット17とレンズ駆動用コイル30s、30tとの間に構成される磁路からの漏れ磁束を少なくすることができる。磁性片61としては、棒状あるいは球状の磁性体が用いられることもある。磁性片61をリング形状にすれば、レンズホルダ12が光軸方向に移動する際にレンズ駆動用マグネット17と引き合う吸引力が等方的になるという効果がある。さらに、レンズ駆動用コイル30s、30tに対する通電時、磁性片61はレンズ駆動用マグネット17から離間する方向に移動するので、撮像素子1b側にレンズホルダ12を押し付けるような余計な力は働かない。そのため、少ない電力でレンズホルダ12を光軸方向に移動させることができる。
【0029】
本形態の撮像ユニット1において、光軸Lの方向からみたとき、レンズ1a(図1参照)は円形であるが、支持体2に用いたケース18は矩形箱状である。従って、ケース18は、角筒状胴部18cを備えており、角筒状胴部18cの上面側には、入射窓18aが形成された上板部18bを備えている。角筒状胴部18cの内側において、四角形の角に相当する側面部にはレンズ駆動用マグネット17が固着されており、かかるレンズ駆動用マグネット17は各々、三角柱状の永久磁石からなる。4つのレンズ駆動用マグネット17はいずれも光軸の方向において2分割されており、いずれにおいても内面と外面とが異なる極に着磁されている。このため、コイルホルダ13の周りにおいて、2つのレンズ駆動用コイル30s、30tにおける巻回方向は反対である。このように構成した移動体3は、ケース18の内側に配置される。その結果、レンズ駆動用コイル30s、30tは各々、ケース18の角筒状胴部18cの内面に固着されたレンズ駆動用マグネット17に対向して、レンズ駆動機構5を構成することになる。
【0030】
このように構成した撮像ユニット1において、移動体3は、通常は撮像素子側(Z軸方向の一方側)に位置しており、このような状態において、レンズ駆動用コイル30s、30tに所定方向の電流を流すと、レンズ駆動用コイル30s、30tは、それぞれ被写体側(Z軸方向の他方側)に向かう電磁力を受けることになる。これにより、レンズ駆動用コイル30s、30tが固着された移動体3は、被写体側(前側)に移動し始めることになる。このとき、バネ部材14tと移動体3の前端との間、およびバネ部材14sと移動体3の後端との間には、移動体3の移動を規制する弾性力が発生する。このため、移動体3を前側に移動させようとする電磁力と、移動体3の移動を規制する弾性力とが釣り合ったとき、移動体3は停止する。その際、バネ部材14s、14tによって移動体3に働く弾性力に応じて、レンズ駆動用コイル30s、30tに流す電流量を調整することで、移動体3を所望の位置に停止させることができる。
【0031】
(光学ユニット100の構成)
図5は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100の内部構造を示す断面図であり、図5(a)、(b)は、光学ユニット100のYZ断面図、および光学ユニット100のXZ断面図である。なお、図5では、撮像ユニット1についてはケース18、基板ホルダ16および基板15のみを図示し、その他の部材について図示を省略してある。図6は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100を被写体側からみたときの分解斜視図であり、図7は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100を被写体側とは反対側からみたときの分解斜視図である。
【0032】
図5図6および図7において、光学ユニット100は、まず、固定体200と、撮像ユニット1と、撮像ユニット1が固定体200に変位可能に支持された状態とするバネ部材600と、撮像ユニット1と固定体200との間で撮像ユニット1を固定体200に対して相対変位させる磁気駆動力を発生させる振れ補正用駆動機構500とを有している。撮像ユニット1の外周部分は、撮像ユニット1において支持体2に用いたケース18(図4参照)からなる。
【0033】
固定体200は上カバー250、スペーサー280および下カバー700を備えており、上カバー250は、撮像ユニット1の周りを囲む角筒状胴部210と、角筒状胴部210の被写体側の開口部を塞ぐ端板部220とを備えている。端板部220には、被写体からの光が入射する窓220aが形成されている。上カバー250において、角筒状胴部210は、被写体側(光軸Lが延在している側)とは反対側(+Z側)の端部が開放端になっている。また、角筒状胴部210において、Y軸方向で対向する2つ個所には切り欠き219が形成されており、かかる2つの切り欠き219のうち、Y軸方向の一方側+Yの切り欠き219は、フレキシブル配線基板420を、後述するシート状コイル550の端子部と接続する際に利用される。また、角筒状胴部210の4面には、後述するスペーサー280との係合に利用される切り欠き218が形成されており、切り欠き218のうち、Y軸方向に位置する2つの切り欠き218は、切り欠き219と繋がって一体の切り欠きを構成している。また、角筒状胴部210において、Y軸方向で対向する2つ個所の下端側には切り欠き218と繋がった切り欠き217が形成されており、かかる2つの切り欠き217のうち、Y軸方向の一方側+Yの切り欠き217は、フレキシブル配線基板410を外部に引き出すのに利用される。
【0034】
スペーサー280は、上カバー250の角筒状胴部210と下カバー700との間に挟持される四角形の枠部281と、枠部281の角部分から被写体側に向けて突出した柱状部283と、枠部281の辺部分で外側に向けて小さく突出する係合突部285とを備えている。スペーサー280に対して上カバー250を被せた際、上カバー250の角筒状胴部210において四角形状に切り欠かれた切り欠き218に係合突部285が係合して、スペーサー280と上カバー250との位置決めが行われる。
【0035】
下カバー700は、金属板に対するプレス加工品であり、略矩形の底板部710と、底板部710の外周縁から被写体側に向けて起立する4つの側板部720とを備えている。かかる下カバー700に対してスペーサー280および上カバー250を重ねた際、側板部720は、上カバー250の角筒状胴部210との間にスペーサー280の枠部281を挟持する。
【0036】
下カバー700の側板部720のうち、Y軸方向の一方側+Yに位置する側板部720には、切り欠き728が形成されているとともに、かかる切り欠き728の中央部には、側板部720の一部が板状突起729として残されている。また、側板部720のうち、Y軸方向の他方側−Yに位置する側板部720にも窓状の切り欠き726が形成されているとともに、かかる切り欠き726の中央部には、側板部720の一部が桟部727として残されている。かかる切り欠き726、728のうち、切り欠き728は、後述するように、フレキシブル配線基板410を外部に引き出すのに利用され、切り欠き726は、折り返し部分413が下カバー700の側板部720と干渉するのを防止するのに利用される。
【0037】
下カバー700の底板部710にはその中央位置に穴711が形成されているとともに、穴711に対してX軸方向の他方側−Xで隣接する位置、および穴711に対してY軸方向の他方側で隣接する位置には、矩形形状に凹んだ凹部716、717が形成されている。凹部716、717の底部716a、717aの内面は略鏡面になっており、底部716a、717aは、基板15において被写体側とは反対側の基板面に実装された第1フォトリフレクタ580および第2フォトリフレクタ590に対する反射面として利用される。
【0038】
(揺動支点の構成)
撮像ユニット1に対してZ軸の一方側+Z(被写体側とは反対側)では、撮像ユニット1と固定体200の下カバー700との間に、撮像ユニット1を揺動させる際の揺動支点180が設けられており、撮像ユニット1は、バネ部材600によって揺動支点180を介して下カバー700に向けて付勢されている。本形態において、揺動支点180は、下カバー700の底板部710に形成された穴711に位置決めされた鋼球181と、基板15の底面151に固着された支持板183とによって構成されており、撮像ユニット1は、鋼球181と支持板183との接触位置を揺動中心にして揺動可能である。
【0039】
(バネ部材600の構成)
バネ部材600は、固定体200において下カバー700の側板部720とスペーサー280の枠部281との間に挟持される固定側連結部620と、撮像ユニット1に連結される可動側連結部610と、可動側連結部610と固定側連結部620の間で延在する複数本のアーム部630とを備えた板状バネ部材であり、アーム部630の両端は各々、可動側連結部610および固定側連結部620に繋がっている。本形態において、バネ部材600の可動側連結部610は、撮像ユニット1の後端側において基板ホルダ16の外周側に形成された段部168に固着されている。かかるバネ部材600は、ベリリウム銅や非磁性のSUS系鋼材等といった非磁性の金属製であり、所定厚の薄板に対するプレス加工、あるいはフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工により形成したものである。
【0040】
ここで、バネ部材600の固定側連結部620を固定体200において下カバー700の側板部720とスペーサー280の枠部281との間に挟持した状態で、鋼球181より被写体側に撮像ユニット1を配置すると、撮像ユニット1は鋼球181よって被写体側に押し上げられた状態となる。このため、バネ部材600において、可動側連結部610は固定側連結部620よりも被写体側に押し上げられた状態となり、バネ部材600のアーム部630は、撮像ユニット1を被写体側とは反対側に付勢する。従って、撮像ユニット1は、バネ部材600によって揺動支点180を介して下カバー700の底板部710に向けて付勢された状態になり、撮像ユニット1は、揺動支点180によって揺動可能な状態に固定体200に支持された状態となる。
【0041】
(振れ補正用駆動機構500の詳細構成)
図8は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100に構成した振れ補正用駆動機構の構成を示す説明図であり、図8(a)、(b)は、振れ補正用駆動機構を被写体側からみたときの斜視図および平面図である。図9は、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100の振れ補正用駆動機構に用いたシート状コイルの説明図であり、シート状コイルを被写体側からみたときの斜視図、およびシート状コイルを別の角度からみたときの斜視図である。
【0042】
図5図8に示すように、本形態の光学ユニット100では、コイル部560と、コイル部560に鎖交する磁界を発生させる永久磁石520とによって、振れ補正用駆動機構500が構成されている。より具体的には、撮像ユニット1においてケース18の角筒状胴部18cの4つの外面18e、18f、18g、18hには平板状の永久磁石520が各々固定されており、上カバー250の角筒状胴部210の内面211、212、213、214にはコイル部560配置されている。永久磁石520は、外面側および内面側が異なる極に着磁されている。また、コイル部560は、四角形の枠状に形成されており、上下の長辺部分が有効辺として利用される。
【0043】
これらの永久磁石520およびコイル部560のうち、撮像ユニット1をY軸方向の両側で挟む2箇所に配置された永久磁石520およびコイル部560はY側振れ補正用駆動機構500yを構成しており、図5(a)に矢印X1、X2で示すように、揺動支点180を通ってX軸方向に延在する軸線X0を中心にして撮像ユニット1を揺動させる。また、撮像ユニット1をX軸方向の両側で挟む2箇所に配置された永久磁石520およびコイル部560はX側振れ補正用駆動機構500xを構成しており、図5(b)に矢印Y1、Y2で示すように、揺動支点180を通ってY軸方向に延在する軸線Y0を中心にして撮像ユニット1を揺動させる。
【0044】
かかるY側振れ補正用駆動機構500yおよびX側振れ補正用駆動機構500xを構成するにあたって、本形態では、上カバー250の4つの内面211、212、213、214に沿って延在するシート状コイル550が用いられており、シート状コイル550では、4つのコイル部560が所定の間隔を空けて一体に形成されている。また、シート状コイル550は展開したときの帯状に延在する形状を備えており、上カバー250の4つの内面211、212、213、214に沿うように折り曲げた状態で上カバー250の内面211〜214に面接着等の方法で固定されている。この状態で、シート状コイル550の両端部551、552はスリット555を介して近接することになる。
【0045】
かかるシート状コイル550は、導電配線技術を利用して微細な銅配線からなるコイル部560をプリント基板上に形成した構造を有しており、複数層の銅配線(コイル部560)が絶縁膜を介して多層に形成されている。また、銅配線(コイル部560)の表面も絶縁膜で覆われている。かかるシート状コイル550としては、例えば、旭化成エレクトロニクス株式会社製のFPコイル(ファインパターンコイル(登録商標))を挙げることができる。
【0046】
本形態では、シート状コイル550の一方の端部551には、被写体側とは反対側に矩形に突出した突部553が形成されており、かかる突部553には、4つのコイル部560から延在する導電層によって複数の端子部565が形成されている。本形態において、端子部565は、シート状コイル550において永久磁石520と対向する内側とは反対側の外側に向いている。また、図2図6および図7に示すように、上カバー250において端子部565と重なる部分は、切り欠き219が形成されている。このため、シート状コイル550の端子部565(突部553)は外面に露出しているので、かかる切り欠き219において、シート状コイル550と、フレキシブル配線基板420において光軸Lの方向に向けて折り曲げられた端部425とはハンダ等により電気的に接続されている。
【0047】
このように構成した光学ユニット100において、撮像ユニット1は、揺動支点180によって揺動可能な状態に固定体200に支持された状態にある。従って、外部から大きな力が加わって撮像ユニット1が大きく揺動すると、バネ部材600のアーム部630が塑性変形するおそれがある。ここで、シート状コイル550と永久磁石520とは狭い隙間を介して対向している。また、シート状コイル550の場合、空芯コイルと違って、永久磁石520と当接しても巻線が解けることがない。そこで、本形態の光学ユニット100では、シート状コイル550と永久磁石520との当接によって、撮像ユニット1の光軸Lと交差するX軸方向およびY軸方向の可動範囲が規制されており、撮像ユニット1の揺動を阻止するストッパ機構が他に設けられていない。
【0048】
(振れ補正動作)
本形態の光学ユニット100において、図1に示す光学機器1000が振れると、かかる振れはジャイロスコープによって検出されるとともに、上位の制御部では、ジャイロスコープでの検出に基づいて、振れ補正用駆動機構500を制御する。すなわち、ジャイロスコープで検出した振れを打ち消すような駆動電流をフレキシブル配線基板410およびフレキシブル配線基板420を介してシート状コイル550のコイル部560に供給する。その結果、X側振れ補正用駆動機構500xは、揺動支点180を中心に撮像ユニット1をY軸周りに揺動させる。また、Y側振れ補正用駆動機構500yは、揺動支点180を中心に撮像ユニット1をX軸周りに揺動させる。また、撮像ユニット1のX軸周りの揺動、およびY軸周りの揺動を合成すれば、XY面全体に対して撮像ユニット1を変位させることができる。それ故、光学ユニット100で想定される全ての振れを確実に補正することができる。
【0049】
(フレキシブル配線基板410の構成)
本形態の光学ユニット100において、撮像ユニット1の基板15には、フレキシブル配線基板410の一方の端部が接続されており、撮像ユニット1を揺動させた際にフレキシブル配線基板410が撮像ユニット1に負荷を印加すると、撮像ユニット1を適正に揺動させるのに支障がある。
【0050】
そこで、フレキシブル配線基板410は、光学ユニット100の外部に位置する本体部分415は、コネクタ490の搭載やフレキシブル配線基板420の接続が可能な広幅になっているが、光学ユニット100の内側に位置する部分は、本体部分415より幅寸法の狭い帯状部分411になっている。また、帯状部分411は、Y軸方向の一方側+Yから他方側−Yに向けて延在した後、一方側+Yに向けて折り返され、その後、端部が基板15の縁に沿って基板15の被写体側の基板面に向けて折り返されて固定されている。このため、フレキシブル配線基板410は、外部の本体部分415から基板15に固定にされている部分までの間に折り返し部分413が設けられている分、寸法が長い。従って、フレキシブル配線基板410の帯状部分は、撮像ユニット1の振れにスムーズに追従するので、素子大きな負荷を撮像ユニット1に印加することがない。
【0051】
また、フレキシブル配線基板410の帯状部分411は、長さ方向の途中部分に、帯状部分411の延在方向(Y軸方向)に沿って延在するスリット418が形成されており、帯状部分411の途中部分は、幅方向において細幅部分416、417に2分割されている。このため、帯状部分411の剛性が緩和されている。従って、フレキシブル配線基板410の帯状部分は、撮像ユニット1の振れにスムーズに追従するので、素子大きな負荷を撮像ユニット1に印加することがない。
【0052】
ここで、フレキシブル配線基板420の帯状部分411は撮像ユニット1に対して光軸L方向で重なっているが、揺動支点180と重なる部分は、スリット418に繋がる円形の穴414になっている。このため、フレキシブル配線基板420の帯状部分411を撮像ユニット1に対して光軸L方向で重なる位置に配置しても、揺動支点180を設けるのに支障がない。
【0053】
また、下カバー700の側板部720のうち、Y軸方向の一方側+Yに位置する側板部720には、フレキシブル配線基板420の帯状部分411を引き出す切り欠き728が形成され、かかる切り欠き728の中央部には、側板部720の一部が板状突起729として残されている。但し、フレキシブル配線基板420の帯状部分411において、板状突部729と重なる部分には楕円形の穴419が形成されている。このため、フレキシブル配線基板420の帯状部分411を側板部720の切り欠き728から外部に引き出す際、穴419に板状突起729を通すことができるので、フレキシブル配線基板420の帯状部分411を外部に引き出すのに支障がない。また、穴419に板状突起729を嵌るので、フレキシブル配線基板420の帯状部分411の位置決めを行うことができる。
【0054】
さらに、下カバー700の側板部720のうち、Y軸方向の他方側−Yに位置する側板部720には窓状の切り欠き726が形成されている。このため、フレキシブル配線基板410の折り返し部分413が側板部720の近傍に位置する場合でも、折り返し部分413と側板部720とが干渉することがない。それ故、撮像ユニット1が揺動した際、折り返し部分413と側板部720との干渉に起因する余計な負荷が撮像ユニット1に印加されることがない。
【0055】
さらにまた、フレキシブル配線基板410の折り返し部分413は、揺動支点180における撮像ユニット1の揺動中心(鋼球181と支持板183との接触位置)と同一の高さ位置にある。このため、撮像ユニット1が揺動した際の帯状部分411の変位を小さく抑えることができる。従って、フレキシブル配線基板410が撮像ユニット1に及ぼす影響を低減することができるので、撮像ユニット1を精度よく揺動させることができる。
【0056】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の振れ補正機能付きの光学ユニット100では、可動モジュールである撮像ユニット1の外周面において光軸L周りの周方向で離間する複数個所に永久磁石520が設けられ、固定体200には、周方向に延在して永久磁石520に対向する複数のコイル部560を備えたシート状コイル550が設けられている。このため、光学ユニット100に手振れ等の振れが発生した際、シート状コイル550のコイル部560に給電すれば、撮像ユニット1を揺動させることができる。従って、光学ユニット100が振れても光軸Lの傾きを補正することができる。かかる振れ補正用駆動機構500を構成するにあたって、本形態では、シート状コイル550が用いられているため、空芯コイルを用いた場合に比して、撮像ユニット1と固定体200との間隔を狭めることができるので、光学ユニット100のサイズを小さくすることができる。また、シート状コイル550の場合、複数のコイル部560が端子部565と一体に設けられているため、光軸L周りの複数個所にコイル部560を配置する場合でも、シート状コイル550を光軸L周りに延在させればよい。従って、空芯コイルを用いた場合と違って、光軸L周りの複数個所の各々に空芯コイルを配置する必要がないとともに、空芯コイルの各々に電気的な接続を行なう必要がないので、本形態によれば、組立工数が少なく済む。それ故、本形態によれば、撮像ユニット1と固定体200との間に振れ補正用駆動機構500を設けた場合でも、サイズの大型化や組立工数の増大を最小限に止めることができる。
【0057】
また、シート状コイル550において、端子部565は、永久磁石520と対向する側とは反対側の外側に向いているため、コイル部560に対する電気的接続、すなわち、端子部565へのフレキシブル配線基板420の接続を容易に行なうことができる。
【0058】
また、撮像ユニット1は、シート状コイル550と永久磁石520との当接によって光軸Lと交差する方向の可動範囲が規制されている。かかる構成の場合でも、シート状コイル550の場合、空芯コイルと違って、永久磁石520と当接しても巻線が解けることがないので、シート状コイル550自身と永久磁石520とを当接させて、撮像ユニット1の可動範囲を規制するのに利用することができる。
【0059】
(シート状コイル550と永久磁石520との位置関係の改良例1)
図10は、本発明の実施の形態の改良例に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、上記実施の形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0060】
図10(a)に示すように、本形態の振れ補正機能付きの光学ユニット100でも、振れ補正用駆動機構500では、シート状コイル550と永久磁石520とは対向している。ここで、コイル部560への給電を停止した状態で、永久磁石520とシート状コイル550との間隔は、撮像ユニット1の揺動中心(図5等を参照)から光軸L方向で離間するに従って広がっている。本形態では、Z軸方向の一方側+Z(被写体側とは反対側)に揺動支点180があるので、永久磁石520とシート状コイル550との間隔は、Z軸方向の一方側+Zから他方側−Zに向かって(被写体側に向かって)広がっている。
【0061】
かかる構成によれば、図10(b)に示すように、撮像ユニット1が傾いた側では、永久磁石520とシート状コイル550とが平行に対向し、永久磁石520とコイル部560との平均距離が狭くなるので、振れ補正用駆動機構500では、撮像ユニット1を揺動させようとする力を効率よく発生させることができる。また、図10(c)に示すように、永久磁石520とシート状コイル550とが当接した際、永久磁石520の角部分がシート状コイル550に強く当接することを回避することができるので、シート状コイル550および永久磁石520が損傷することを確実に防止することができる。
【0062】
かかる構成を実現するには、例えば、固定体200の側において上カバー250の角筒状胴部210を傾斜面とした構成、撮像ユニット1の側においてケース18の角筒状胴部18cを傾斜面とした構成、あるいは永久磁石520の厚さ寸法が光軸L方向で変化している構成を採用すればよい。
【0063】
(シート状コイル550と永久磁石520との位置関係の改良例2)
図11は、本発明の実施の形態の別の改良例に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100の説明図である。なお、本形態の基本的な構成は、上記実施の形態と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0064】
図10(a)に示すように、本形態の振れ補正機能付きの光学ユニット100でも、振れ補正用駆動機構500では、シート状コイル550と永久磁石520とが対向しており、コイル部560の上下の長辺部分が有効辺として利用される。本形態において、永久磁石520は、光軸方向に配置された第1磁石片521と第2磁石片522とから構成され、かつ、コイル部560の側に位置する磁極が異なるように着磁されている。このため、永久磁石520が発生する磁力線は、たとえば、図11(a)に示す矢印のようになる。従って、光軸L方向における第1磁石片521の中心CL1よりも被写体側では、第1磁石片521の磁力線の方向は、揺動支点180(図5参照)から略遠ざかる方向となる第1領域31を形成する。これに対して、光軸L方向における第2磁石片522の中心CL2よりも被写体側では、第2磁石片522の磁力線の方向が揺動支点180へ略向かう方向となる第2の領域32を形成する。
【0065】
ここで、光軸方向におけるコイル部560の中心CL3は、第1磁石片521と第2磁石片521との当接面527よりも上側に配置されるように、永久磁石520とコイル部560とが対向配置されている。すなわち、コイル部560の中心CL3は、永久磁石520の磁気中心となる当接面527よりも光軸方向において揺動支点180から離れる被写体側に配置されている。従って、第1磁石片521の磁気中心となる中心CL1よりもコイル部560の長辺部560aの中心CL4が被写体側に配置され、第2磁石片521の磁気中心となる中心CL2よりも長辺部560bの中心CL5が被写体側に配置されている。すなわち、第1の領域31に長辺部560aが配置され、第2の領域32に長辺部560bが配置されている。
【0066】
そのため、図11(b)に示すように、コイル560に電流が供給されることで長辺部560aに生じる電磁力F1の方向は、揺動支点180を中心とするとともに長辺部560aを通過する円の接線方向と略一致している。また、駆動用コイル560に電流が供給されることで長辺部560bに生じる電磁力F2の方向は、揺動支点180を中心とするとともに長辺部560bを通過する円の接線方向と略一致している。すなわち、コイル部560に電流が供給されることでコイル部560に生じる電磁力F1、F2の方向は、揺動支点180を中心として撮像ユニット1を揺動させるための揺動力を発生させる方向と略一致している。よって、永久磁石520が発生させる磁束を有効に利用して、振れ補正用駆動機構500の駆動力を高めることが可能になる。
【0067】
また、本形態では、永久磁石520の当接面527よりもコイル部23の中心CL3が光軸方向において揺動支点180から離れた位置に配置されているため、永久磁石520の当接面527とコイル部23の中心CL3とが光軸方向において揺動支点180から同等の位置に配置されている場合と比較して、揺動支点180を中心として撮像ユニット1を揺動させるためのトルクが大きい。それ故、振れ補正用駆動機構500の駆動力を高めることができる。
【0068】
さらに、本形態では、第1の領域31にコイル部560の長辺部560aが配置され、第2の領域32にコイル部560の長辺部560bが配置されているため、短辺部が第1の領域31や第2の領域32に配置される場合と比較して、振れ補正用駆動機構500の駆動力をより高めることができる。
【0069】
(永久磁石520表面の構成)
上記実施の形態に係る振れ補正機能付きの光学ユニット100において、永久磁石520とシート状コイル550とが当接した際にシート状コイル550および永久磁石520が損傷することを確実に防止するという観点からすれば、永久磁石520においてシート状コイル550と対向する面に樹脂層を形成してもよい。
【0070】
かかる構成を実現するには、例えば、撮像ユニット1に対して永久磁石520を取り付けてから永久磁石520の表面に樹脂をコーティングした構成や、表面に樹脂をコーティングした永久磁石520を撮像ユニット1に対して取り付ける構成のいずれを採用してもよい。その際、前者の場合では、永久磁石520の表面のみに樹脂がコーティングされた構成となる。また、後者の場合、永久磁石520の表面のみに樹脂がコーティングされた構成、あるいは永久磁石520の表面および裏面(撮像ユニット1側の面)に樹脂がコーティングされた構成を実現することができる。
【0071】
(シート状コイル550の別の構成)
上記実施の形態では、基板上で複数層の配線層が絶縁膜を介して積層されてなる構成のコイル部560を有するシート状コイル550(FPコイル)を用いたが、永久磁石に対向配置された基板と、基板において永久磁石と対向する側とは反対側の面に固定されてコイル部520を構成する複数の空芯コイルとを備えているシート状コイル550を用いてもよい。
【0072】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、カメラ付き携帯電話機に用いる光学ユニット100に本発明を適用した例を説明したが、薄型のデジタルカメラ等に用いる光学ユニット100に本発明を適用してもよい。また、上記形態では、撮像ユニット1にレンズ1aや撮像素子1bに加えて、レンズ1aを含む移動体3を光軸方向に磁気駆動するレンズ駆動機構5が支持体2上に支持されている例を説明したが、撮像ユニット1にレンズ駆動機構5が搭載されていない固定焦点タイプの光学ユニットに本発明を適用してもよい。
【0073】
さらに、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100は、携帯電話機やデジタルカメラ等の他、冷蔵庫等、一定間隔で振動を有する装置内に固定し、遠隔操作可能にしておくことで、外出先、たとえば買い物の際に、冷蔵庫内部の情報を得ることができるサービスに用いることもできる。かかるサービスでは、姿勢安定化装置付きのカメラシステムであるため、冷蔵庫の振動があっても安定な画像を送信可能である。また、本装置を児童、学生のかばん、ランドセルあるいは帽子等の、通学時に装着するデバイスに固定してもよい。この場合、一定間隔で、周囲の様子を撮影し、あらかじめ定めたサーバへ画像を転送すると、この画像を保護者等が、遠隔地において観察することで、子供の安全を確保することができる。かかる用途では、カメラを意識することなく移動時の振動があっても鮮明な画像を撮影することができる。また、カメラモジュールのほかにGPSを搭載すれば、対象者の位置を同時に取得することも可能となり、万が一の事故の発生時には、場所と状況の確認が瞬時に行える。さらに、本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニット100を自動車において前方が撮影可能な位置に搭載すれば、ドライブレコーダーとして用いることができる。また、本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニット100を自動車において前方が撮影可能な位置に搭載して、一定間隔で自動的に周辺の画像を撮影し、決められたサーバに自動転送してもよい。また、カーナビゲーションの道路交通情報通信システム等の渋滞情報と連動させて、この画像を配信することで、渋滞の状況をより詳細に提供することができる。かかるサービスによれば、自動車搭載のドライブレコーダーと同様に事故発生時等の状況を、意図せずに通りがかった第三者が記録し状況の検分に役立てることも可能である。また、自動車の振動に影響されることなく鮮明な画像を取得できる。かかる用途の場合、電源をオンにすると、制御部に指令信号が出力され、かかる指令信号に基づいて、振れ制御が開始される。
【0074】
また、本発明を適用した振れ補正機能付きの光学ユニット100は、レーザポインタ、携帯用や車載用の投射表示装置や直視型表示装置等、光を出射する光学機器の振れ補正に適用してもよい。また、天体望遠鏡システムあるいは双眼鏡システム等、高倍率での観察において三脚等の補助固定装置を用いることなく観察するのに用いてもよい。また、狙撃用のライフル、あるいは戦車等の砲筒とすることで、トリガ時の振動に対して姿勢の安定化が図れるので、命中精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 撮像ユニット(可動モジュール)
1a レンズ(光学素子)
1b 撮像素子(光学素子)
5 レンズ駆動機構
100 光学ユニット
180 揺動支点
200 固定体
250 上カバー(固定体)
410、420 フレキシブル配線基板
500 振れ補正用駆動機構
500x X側振れ補正用駆動機構
500y Y側振れ補正用駆動機構
520 永久磁石
550 シート状コイル
560 コイル部
600 バネ部材
700 下カバー(固定体)
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