特許第5755424号(P5755424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755424
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】クランプ機構
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   B23Q3/06 301J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-212156(P2010-212156)
(22)【出願日】2010年9月22日
(65)【公開番号】特開2012-66325(P2012-66325A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】510253815
【氏名又は名称】山正機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼藤 英基
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−310225(JP,A)
【文献】 特開2003−245834(JP,A)
【文献】 特開2009−006404(JP,A)
【文献】 特開2010−058200(JP,A)
【文献】 実開平03−019645(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
B25B 1/00− 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ部を回転駆動部で駆動してワークを押圧保持するクランプ機構において、
クランプ部は、ワークを下方(クランプ方向)に向けて押圧することでワークを保持するためのクランプアームを、可動体設け、
基台に回転駆動部の回転体を回動自在に設けるとともに、基台にクランプ部の可動体を変位自在に設け、
回転駆動部の回転体に連結ピンを回転体の回転中心から偏移させた位置に設ける一方、クランプ部の可動体に連結溝をクランプ方向と直交する左右方向に伸延させて形成し、連結ピンを連結溝に挿通して回転駆動部とクランプ部とを連動連結し、
クランプ部の可動体にガイド溝を連結溝に対して下部側においてクランプ方向と同じ上下方向に伸延させて形成し、ガイド溝を基台に設けたガイドピンに挿通させ、
回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心とガイドピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過した後にクランプ部でワークを押圧保持するように構成したことを特徴とするクランプ機構。
【請求項2】
クランプ部の可動体に規制溝をガイド溝に対して側部側においてクランプ方向と同じ上下方向に伸延させて形成し、規制溝を基台に設けた規制ピンに挿通させ、
回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心とガイドピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過し、かつ、回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心と規制ピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過した後にクランプ部でワークを押圧保持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のクランプ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ部を回転駆動部で駆動してワークを押圧保持するクランプ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の加工装置等においては、クランプ機構を用いて被加工物(ワーク)を仮に固定した状態で被加工物に加工を施すようにしている。
【0003】
クランプ機構は、様々な構造のものが知られているが、その一つとして、クランプ部を回転駆動部で駆動してワークを押圧保持する構成のものがある(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
このクランプ機構では、回転駆動部に設けられたロータリーアクチュエーターやモータなどを駆動源としてクランプ部のクランプアームを回転運動させ、クランプアームでワークを押圧保持するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−58200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のクランプ機構では、回転駆動部でクランプ部を回転運動させてワークを押圧保持するように構成しているために、クランプ時にクランプ部がワークから受ける反力によって、回転駆動部がクランプ方向とは逆方向に回転してしまい、ワークを強固に保持することが困難であった。
【0007】
そのため、従来においては、クランプ時にワークを強固に保持できるようにするために、クランプ機構に複雑な構造を追加しており、クランプ機構が大型化してしまうとともに高価なものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、クランプ部を回転駆動部で駆動してワークを押圧保持するクランプ機構において、クランプ部は、ワークを下方(クランプ方向)に向けて押圧することでワークを保持するためのクランプアームを、可動体設け、基台に回転駆動部の回転体を回動自在に設けるとともに、基台にクランプ部の可動体を変位自在に設け、回転駆動部の回転体に連結ピンを回転体の回転中心から偏移させた位置に設ける一方、クランプ部の可動体に連結溝をクランプ方向と直交する左右方向に伸延させて形成し、連結ピンを連結溝に挿通して回転駆動部とクランプ部とを連動連結し、クランプ部の可動体にガイド溝を連結溝に対して下部側においてクランプ方向と同じ上下方向に伸延させて形成し、ガイド溝を基台に設けたガイドピンに挿通させ、回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心とガイドピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過した後にクランプ部でワークを押圧保持するように構成することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、クランプ部の可動体に規制溝をガイド溝に対して側部側においてクランプ方向と同じ上下方向に伸延させて形成し、規制溝を基台に設けた規制ピンに挿通させ、回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心とガイドピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過し、かつ、回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心と規制ピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過した後にクランプ部でワークを押圧保持するように構成することにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、クランプ部を回転駆動部で駆動してワークを押圧保持するクランプ機構において、基台に回転駆動部の回転体を回動自在に設けるとともに、基台にクランプ部の可動体を変位自在に設け、回転駆動部の回転体に連結ピンを回転体の回転中心から偏移させた位置に設ける一方、クランプ部の可動体に連結溝をクランプ方向と直交する方向に伸延させて形成し、連結ピンを連結溝に挿通して回転駆動部とクランプ部とを連動連結し、クランプ部の可動体にガイド溝をクランプ方向に伸延させて形成し、ガイド溝を基台に設けたガイドピンに挿通させ、回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心とガイドピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過した後にクランプ部でワークを押圧保持するように構成することで、簡単かつ小型の構造でありながら、クランプ時にクランプ部が受ける反力によって回転駆動部がクランプ方向とは逆方向に回転することが無くなり、クランプ時にワークを強固に保持することができ、クランプ機構の小型化や低廉化を図ることができる。
【0012】
特に、クランプ部の可動体に規制溝をクランプ方向に伸延させて形成し、規制溝を基台に設けた規制ピンに挿通させ、回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心とガイドピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過し、かつ、回転駆動部の回転体に設けた連結ピンが回転体の回転中心と規制ピンの中心とを結ぶ仮想直線を通過した後にクランプ部でワークを押圧保持するように構成した場合には、クランプ時にワークをより一層強固に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るクランプ機構を示す分解斜視図。
図2】同正面透視図。
図3】同動作説明図。
図4】同動作説明図。
図5】同動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係るクランプ機構の具体的な構成について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、クランプ機構1は、加工装置等に取付けるための基部2に回転駆動部3とクランプ部4とを取付け、クランプ部4を回転駆動部3で駆動してワーク5を押圧保持する構成となっている。
【0016】
基部2は、基台6にカバー7をスペーサー8を介してスペーサー8の厚みに相当する所定間隔をあけて4本のネジ9で取付けている。
【0017】
基台6は、上部に表裏貫通する円形状の貫通孔10を形成するとともに、左下部に4個の雌ネジ11を形成している。
【0018】
また、基台6は、貫通孔10の右下部にガイドピン12を取付け、ガイドピン12の右上部に規制ピン13を取付け、規制ピン13の真下部に付勢ピン14を取付けている。
【0019】
カバー7は、左下部に4個の表裏貫通する貫通孔15を形成している。
【0020】
スペーサー8は、左上部に4個の表裏貫通する貫通孔16を形成するとともに、下部に2個の表裏貫通する上下長孔状の取付孔17を形成している。
【0021】
そして、基部2は、基台6の雌ネジ11とスペーサー8の貫通孔16とカバー7の貫通孔15とを符合させた状態でカバー7の貫通孔15からカバー7及びスペーサー8に挿通したネジ9を基台6の雌ネジ11に螺着した構成となっている。なお、基部2は、加工装置等にスペーサー8の取付孔17を介して上下位置調整可能に装着される。
【0022】
回転駆動部3は、ロータリーアクチュエーターやモータなどの回転駆動体18に円板状の回転体19を取付け、回転体19に連結ピン20を回転体19の回転中心から外周側に偏移させた位置に取付けている。
【0023】
そして、回転駆動部3は、基台6の貫通孔10に回転体19を挿通させた状態で基台6に回転駆動体18を取付け、回転駆動体18を駆動することで、回転体19が回転し、それに伴って連結ピン20が回転するようになっている。
【0024】
クランプ部4は、上下に伸延する可動体21の上端部に可動体21よりも右側方に張出したクランプアーム22を取付けている。
【0025】
また、クランプ部4は、略中央部に左右(クランプ方向とは直交する方向)に伸延する長孔状の連結溝23を形成し、連結溝23の下部に上下(クランプ方向)に伸延する長孔状のガイド溝24を形成し、ガイド溝24の右側部に上下(クランプ方向)に伸延する切欠状の規制溝25を形成している。
【0026】
そして、クランプ部4は、回転駆動部3の連結ピン20を連結溝23に挿通するとともに、基部2のガイドピン12をガイド溝24に挿通し、さらに、基部2の規制ピン13を規制溝25に挿通した状態で基台6とカバー7との間に収容している。これにより、クランプ部4は、基部2の基台6に可動体21が上下(クランプ方向)に移動自在かつ回動自在に取付けられている。
【0027】
このようにして、クランプ機構1は、基台6に回転駆動部3の回転体19を回動自在に設けるとともに、基台6にクランプ部4の可動体21を変位自在(クランプ方向に移動自在かつ回動自在)に設け、回転駆動部3の回転体19に連結ピン20を回転体19の回転中心から偏移させた位置に設ける一方、クランプ部4の可動体21に連結溝23をクランプ方向と直交する方向に伸延させて形成し、連結ピン20を連結溝23に挿通して回転駆動部3とクランプ部4とを連動連結し、クランプ部4の可動体21にガイド溝24をクランプ方向に伸延させて形成し、ガイド溝24を基台6に設けたガイドピン12に挿通させ、クランプ部4の可動体21に規制溝25をクランプ方向に伸延させて形成し、規制溝25を基台6に設けた規制ピン13に挿通させた構成としている。なお、クランプ機構1は、クランプ部4の可動体21の側部に基台6に設けた付勢ピン14を当接して可動体21のがたつきを防止するようにしている。
【0028】
このクランプ機構1は、回転駆動部3の回転駆動体18を駆動すると、回転体19及び連結ピン20が回転し、図3(a)に示すように、連結ピン20と連結溝23とが当接してクランプ部4の可動体21が回転して、図3(b)に示すように、クランプ部4のクランプアーム22がワーク5の直上方より側方にずれた位置(ワーク5の直上方を開放した位置)からワーク5の直上方の位置(ワーク5の直上方を閉塞した位置)まで移動し、クランプ部4の可動体21が直立してガイド溝24の伸延方向が上下方向(クランプ方向)となった時に、規制ピン13が規制溝25に挿通される。
【0029】
その後、クランプ機構1は、上下方向(クランプ方向)に並行に形成されたガイド溝24と規制溝25とにガイドピン12と規制ピン13とが挿通された状態となっているために、回転体19及び連結ピン20の回転に伴って可動体21が直下方に向けて移動する。
【0030】
そして、図4(a)に示すように、クランプ機構1は、回転体19及び連結ピン20がさらに回転し、連結ピン20が回転体19の回転中心と規制ピン13の中心とを結ぶ仮想直線を通過し、その後、図4(b)に示すように、回転体19及び連結ピン20がさらに回転し、連結ピン20が回転体19の回転中心とガイドピン12の中心とを結ぶ仮想直線を通過し、その状態で、図5に示すように、クランプ部4の可動体21に設けたクランプアーム22でワーク5を下方に向けて押圧して保持する。
【0031】
ここで、クランプ機構1は、連結ピン20が回転体19の回転中心とガイドピン12の中心とを結ぶ仮想直線を通過するまでは、可動体21にガイドピン12を中心に回転させる力が作用した場合に、その力が連結ピン20には鈍角の作用角度で作用することになるが、連結ピン20が回転体19の回転中心とガイドピン12の中心とを結ぶ仮想直線を通過した後では、可動体21にガイドピン12を中心に回転させる力が作用した場合に、その力が連結ピン20には鋭角の作用角度で作用することになり、連結ピン20に作用する力、言い換えれば、回転駆動部3をクランプ方向とは逆方向に向けて回転させる力が著しく低減する。その結果、クランプ時にクランプ部4が受ける反力によって回転駆動部3がクランプ方向とは逆方向に回転することが無くなり、クランプ時にワーク5を強固に保持することができるようになる。
【0032】
また、クランプ機構1は、規制ピン13についても同様に、連結ピン20が回転体19の回転中心と規制ピン13の中心とを結ぶ仮想直線を通過するまでは、可動体21に規制ピン13を中心に回転させる力が作用した場合に、その力が連結ピン20には鈍角の作用角度で作用することになるが、連結ピン20が回転体19の回転中心と規制ピン13の中心とを結ぶ仮想直線を通過した後では、可動体21に規制ピン13を中心に回転させる力が作用した場合に、その力が連結ピン20には鋭角の作用角度で作用することになり、連結ピン20に作用する力、言い換えれば、回転駆動部3をクランプ方向とは逆方向に向けて回転させる力が著しく低減する。その結果、クランプ時にクランプ部4が受ける反力によって回転駆動部3がクランプ方向とは逆方向に回転することが無くなり、クランプ時にワーク5を強固に保持することができるようになる。
【0033】
なお、上記クランプ機構1では、連結ピン20が回転体19の回転中心と規制ピン13の中心とを結ぶ仮想直線を通過した後に、連結ピン20が回転体19の回転中心とガイドピン12の中心とを結ぶ仮想直線を通過するようになっているが、これは、ガイドピン12と規制ピン13との位置関係で決まり、たとえば、ガイドピン12の右下方に規制ピン13を位置させることで、連結ピン20が回転体19の回転中心とガイドピン12の中心とを結ぶ仮想直線を通過した後に、連結ピン20が回転体19の回転中心と規制ピン13の中心とを結ぶ仮想直線を通過するようにすることもできる。
【0034】
以上に説明したように、上記クランプ機構1は、基台6に回転駆動部3の回転体19を回動自在に設けるとともに、基台6にクランプ部4の可動体21を変位自在に設け、回転駆動部3の回転体19に連結ピン20を回転体19の回転中心から偏移させた位置に設ける一方、クランプ部4の可動体21に連結溝23をクランプ方向と直交する方向に伸延させて形成し、連結ピン20を連結溝23に挿通して回転駆動部3とクランプ部4とを連動連結し、クランプ部4の可動体21にガイド溝24をクランプ方向に伸延させて形成し、ガイド溝24を基台6に設けたガイドピン12に挿通させ、回転駆動部3の回転体19に設けた連結ピン20が回転体19の回転中心とガイドピン12の中心とを結ぶ仮想直線を通過した後にクランプ部4でワーク5を押圧保持するように構成している。
【0035】
そのため、上記構成のクランプ機構1では、簡単かつ小型の構造でありながら、クランプ時にクランプ部4が受ける反力によって回転駆動部3がクランプ方向とは逆方向に回転することが無くなり、クランプ時にワーク5を強固に保持することができ、クランプ機構1の小型化や低廉化を図ることができる。
【0036】
また、上記クランプ機構1は、クランプ部4の可動体21に規制溝25をクランプ方向に伸延させて形成し、規制溝25を基台6に設けた規制ピン13に挿通させ、回転駆動部3の回転体19に設けた連結ピン20が回転体19の回転中心とガイドピン12の中心とを結ぶ仮想直線を通過し、かつ、回転駆動部3の回転体19に設けた連結ピン20が回転体19の回転中心と規制ピン13の中心とを結ぶ仮想直線を通過した後にクランプ部4でワーク5を押圧保持するように構成している。
【0037】
そのため、上記構成のクランプ機構1では、クランプ時にワーク5をより一層強固に保持することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 クランプ機構 2 基部
3 回転駆動部 4 クランプ部
5 ワーク 6 基台
7 カバー 8 スペーサー
9 ネジ 10 貫通孔
11 雌ネジ 12 ガイドピン
13 規制ピン 14 付勢ピン
15 貫通孔 16 貫通孔
17 取付孔 18 回転駆動体
19 回転体 20 連結ピン
21 可動体 22 クランプアーム
23 連結溝 24 ガイド溝
25 規制溝
図1
図2
図3
図4
図5