(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755437
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】ウッド型ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20150709BHJP
【FI】
A63B53/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-279232(P2010-279232)
(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公開番号】特開2012-125390(P2012-125390A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078824
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 竹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】竹地 隆晴
【審査官】
鶴岡 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−035915(JP,A)
【文献】
特開2004−313777(JP,A)
【文献】
特開2005−296204(JP,A)
【文献】
特開2004−089434(JP,A)
【文献】
特許第4339008(JP,B2)
【文献】
特開平10−127834(JP,A)
【文献】
特開平07−255881(JP,A)
【文献】
特開平08−196665(JP,A)
【文献】
特開2005−137634(JP,A)
【文献】
特開2008−125811(JP,A)
【文献】
特開2004−552(JP,A)
【文献】
米国特許第5429354(US,A)
【文献】
米国特許第5518242(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0116200(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0195055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部、トウ、ヒール及びソールを備え、ヒールにシャフトが結合されるホゼルを形成し、ソールのまわりにサイド部を立ち上げて形成したクラウン部のない金属製のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、
前記フェース部の表面上端から5〜20mmの範囲で後方に延出し、トウとヒールの間にまたがるフランジ部を形成し、
前記サイド部の高さをフェース部の高さの3分の2以下とし、
少なくとも前記フランジ部裏面からフェース部裏面にかけてゴム製の弾性部材を各裏面に固着し、
前記弾性部材に連成されてサイド部の内側に沿って、かつソール内面を覆うように被覆材を形成したことを特徴とするウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記弾性部材の厚さを1〜10mmとしたことを特徴とする請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記被覆材のソール内面の肉厚よりもサイド部内側の肉厚を厚く形成したことを特徴とする請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記被覆材のフェース部の中央からサイド部の後端側に向かうライン上を隆起させて長方形状の肉厚部を形成したことを特徴とする請求項3に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記肉厚部の中央にターゲット用目印を形成したことを特徴とする請求項4に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のウッド型ゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のウッド型のヘッドは、ステンレス鋼やチタン合金で中空に形成されているものがほとんどである。このような中空ヘッドは、上面にクラウン部を有し、クラウン部の重さにより、低重心化にも限度があった。そこで、クラウンレスのヘッドが開発された。例えば、米国特許第5,429,354号の明細書に記載されているように、ソールのまわりにはフランジが上方に伸び、その高さにリムの端から後方に向けて低くなり、フランジとソール、前部部分によりヘッドには上方がさらされたクラウン部のないヘッドにより、低重心化を図ったものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
低重心化のみならず、慣性モーメントを大きくしたクラウンレスのヘッドとしては、特許第4339008号公報に記載のものが知られている(特許文献2参照)。これは、2.75インチ−4.50インチ(6.99cm−11.43cm)の範囲の幅と1.50インチ−2.00インチの高さを持つ前壁と、前壁の底端部から後方に3.00インチ−3.25インチ(7.62cm−8.26cm)の範囲で延び、0.040インチ−0.100インチ(0.10cm−0.25cm)の範囲の厚さを持つ底壁と、前記前壁の頂端部から後方に延びる頂壁と、前記底壁から上方に延びるリボン壁とを有し、前記底壁は前記頂壁より後方に大きく延び、前記前壁、前記リボン壁、前記底壁及び前記頂壁は開口キャビティを画成し、前記リボン壁は前記前壁より低く、前記頂壁は前記前壁から後方に前記開口キャビティの33%未満を覆う、ボディを有するドライバーであって、前記ドライバーは、ホゼル穴の中心線から前記前壁の前側エッジまで、0.250インチ−0.400インチ(0.64cm−1.02cm)の範囲で連続するフェースを持ち、15°−18°の範囲のロフト角を持ち、重心を通るIzz軸の回りの慣性モーメントが少なくとも2900g・cm
2であるドライバーである。さらに、2.50インチ−4.25インチ(6.35cm−10.80cm)の範囲の幅と1.50インチ−2.00インチ(3.81cm−5.08cm)の高さを持つ前壁と、前壁の低端部から後方に2.75インチ−3.25インチ(6.99cm−8.26cm)の範囲で延び、0.040インチ−0.100インチ(0.10cm−0.25cm)の範囲の厚さを持つ底壁と、前記前壁の頂端部から後方に延びる頂壁と、前記底壁から上方に延びるリボン壁とを有し、前記底壁は前記頂壁より後方に大きく延び、前記前壁、前記リボン壁、前記底壁及び前記頂壁は開口キャビティを画成し、前記リボン壁は前記前壁より低く、前記頂壁は前記前壁から後方に前記開口キャビティの33%未満を覆う、ボディを有するフェアウェイウッドであって、フェアウェイウッドは、ホゼル穴の中心線から前記前壁の前側エッジまで、0.250インチ−0.400インチ(0.64cm−1.02cm)の範囲で連続するフェースを持ち、19°−30°の範囲のロフト角を持ち、重心を通るIzz軸の回りの慣性モーメントが少なくとも2900g・cm
2であるフェアウェイウッドである。
【0004】
同じように、慣性モーメントを大きくしたものとしては、特開平8−196665号公報に記載のものが知られている(特許文献3参照)。これは、ホゼル部を一体に成形した金属製のゴルフクラブのヘッドにおいて、ヘッドの重心を含む鉛直方向に貫通する貫通孔が形成されて、全体が環状に設定されたものであり、このヘッド本体よりも比重が小さく、かつ、軟質の材料からなる閉塞板を上記ヘッド本体に固定または固着して、上記ヘッド本体の上記貫通孔の上方または下方の開口の少なくとも一方を閉塞しても良い、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,429,354号
【特許文献2】特許第4339008号公報
【特許文献3】特開平8−196665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のクラウンレスのヘッドのいずれも、低重心化を図り、慣性モーメントを大きくすることを目的とし、打感や打音の改善を図ろうとするものではなかった。そこで、クラウンレスのヘッドにも柔らかい打感や心地よい打音が求められるようになった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、柔らかい打感や心地よい打音を得るため、フェース部、トウ、ヒール及びソールを備え、ヒールにシャフトが結合されるホゼルを形成し、ソールのまわりにサイド部を立ち上げて形成したクラウン部のない金属製のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、前記フェース部の表面上端から5〜20mmの範囲で後方に延出し、トウとヒールの間にまたがるフランジ部を形成し、前記サイド部の高さをフェース部の高さの3分の2以下とし、少なくとも前記フランジ部裏面からフェース部裏面にかけてゴム製の弾性部材を各裏面に固着したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フェース部、トウ、ヒール及びソールを備え、ヒールにシャフトが結合されるホゼルを形成し、ソールのまわりにサイド部を立ち上げて形成したクラウン部のない金属製のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、前記フェース部の表面上端から5〜20mmの範囲で後方に延出し、トウとヒールの間にまたがるフランジ部を形成し、前記サイド部の高さをフェース部の高さの3分の2以下とし、少なくとも前記フランジ部裏面からフェース部裏面にかけてゴム製の弾性部材を各裏面に固着したので、低重心化を図り得ることは勿論のこと、トウとヒール側の肉厚を厚くしたり、錘を設ければ慣性モーメントを大きくすることもでき、弾性部材の存在により柔らかい打感が得られ、心地よい打音も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】フェース部のみのトウとヒール間の切断端面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適な実施形態について図面を参照にして説明する。
【0011】
図1の斜視図に示すように、本発明のヘッドは、ボールをヒットするフェース部1、トウ2、ヒール3、ソール4を備え、ヒール3にシャフトが結合されるホゼル5を形成し、ソール4のまわりにサイド部6を立ち上げて形成し、クラウンがないようになっている。このクラウンレスヘッドは、ステンレス鋼、チタン合金などの金属材料で形成される。また、
図2に示すように、フェース部1の表面上端から5〜20mmの範囲で後方に延出し、トウとヒールの間にまたがるフランジ部7を形成してある。このフランジ部7の裏面からフェース部裏面にかけてゴム製の弾性部材8を各裏面に固着してある。この弾性部材8は、厚みを1〜15mm、好ましくは1〜10mmの範囲内とし、フェース部1の下端からソール4にかけてのコーナー部分の厚みを最も厚く形成してある。ただし、フェース部1の裏面は、弾性部材8の厚みを20mm以下としてもよく、フェース部1に接する部分のアライメントマークとなる肉厚部10(
図5参照)の高さは、30mmまで高くしてもよい。この実施形態では、この弾性部材8と一体的に連成され、サイド部6の内側に沿って、かつソール4の内面を覆うように被覆材9を形成してある。この被覆材9は、サイド部6の内側を厚く、ソール4の内面は薄くコーティングする程度の厚さに形成してある。
【0012】
前記弾性部材8は、ゴム製であり、天然ゴム、合成ゴムが使用される。合成ゴムとしては、一般的に知られているウレタンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリイソブチレン(ブチルゴム)が使用される。前期被覆材9としては、弾性部材8と同じゴム製であっても良いが、樹脂材料(例えばポリウレタンエラストマー)であっても良い。
【0013】
図3は、
図1のB−B線で切断した端面図であり、左右のサイド部6の両端を厚く、中間部材を薄くして被覆材9を形成した状態を示す。この被覆材9の最も肉厚が厚い個所aと最も肉厚が薄い個所bとでは、a=5〜10b位の関係になっている。
【0014】
図3は、フェース部1を含む個所の横断端面図であり、トウ2とヒール3の個所の肉厚をフェース部1の打撃面個所の肉厚よりも厚くし、トウ2とヒール3側に重量を多く配分し、慣性モーメントを大きくしている。このような肉厚の配分ではなく、ソール4のトウ2寄りとヒール3寄りとにタングステンなどの錘を配置しても慣性モーメントを大きくすることができる。このような錘をソール4の内面に設け、この錘を被覆材9で覆ってしまうように構成することもできる。
【0015】
前記被覆材9は、ソール4の内面の肉厚を薄く形成したが、
図5に示すように、フェース部1の中央からサイド部6の後端側に向かうライン上を隆起させて長方形状の肉厚部10を形成し、この肉厚部10をターゲットラインに合わせるようにすることもできる。また、ヘッドをターゲットに合わせ易くするために、肉厚部10の中央長手方向に沿って溝を形成し、この溝をターゲット用目印11とすることもできる。この目印11は、直線状の溝としたが、突起や窪み、あるいは着色部であってもよい。前記肉厚部10は、フェース部1の中央につながるので、インパクト時の振動吸収にも役立つ。
【符号の説明】
【0016】
1 フェース部
2 トウ
3 ヒール
4 ソール
5 ホゼル
6 サイド部
7 フランジ部
8 弾性部材