特許第5755467号(P5755467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755467
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】水中油型皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/26 20060101AFI20150709BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   A61K8/26
   A61Q19/00
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61K8/60
   A61K8/06
   A61K8/73
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-46278(P2011-46278)
(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2012-184167(P2012-184167A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】清水 知和
(72)【発明者】
【氏名】西村 彦人
(72)【発明者】
【氏名】福田 英憲
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−089356(JP,A)
【文献】 特開2003−192532(JP,A)
【文献】 特開2002−087924(JP,A)
【文献】 特開昭62−030708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭化水素油5質量%〜25質量%、
(B)水膨潤性粘土鉱物、
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び
(D)オリゴ糖0.1質量%〜5質量%、
を含有してなり、
前記(B)成分の水膨潤性粘土鉱物の含有量と、前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量との質量比(B/C)が0.1〜3であることを特徴とする水中油型皮膚化粧料。
【請求項2】
更に、(E)キサンタンガム及びカルボキシメチルセルロース塩から選択される少なくとも1種を0.1質量%〜1質量%含有する請求項1に記載の水中油型皮膚化粧料。
【請求項3】
(B)水膨潤性粘土鉱物の含有量が0.1質量%〜3質量%であり、
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.5質量%〜5質量%であり、
前記(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが8〜16であり、
前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸が、ジイソステアリルポリグリセリン、及びイソステアリルポリグリセリンの少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の水中油型皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布時のべたつきがなく、塗布後のしっとり感が高く、凍結復元安定性が向上した水中油型皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水中油型皮膚化粧料は、油溶性の成分と水溶性の成分を含んでおり、両成分を一度に塗布できる利点があり、皮膚外用剤などに多く使用されている。皮膚外用剤の使用感としては、塗布時にベタつき無く、しっとり感が高い使用感のものが求められている。このようなしっとり感の高い感触のものを得る場合、炭化水素等の油成分の含有量を高めることが行われている。しかし、炭化水素等の油成分の含有量を高めると、ベタつきが強くなる。そこで、ベタつき感を抑えるため、ベントナイト等の粉体を添加(特許文献1参照)したり、シリコーンオイルを併用(特許文献2参照)することが提案されている。
【0003】
しかし、ベントナイトを添加した場合には、十分な安定性が得られず、流通段階で氷点下にさらされると離水、分離等が生じ、凍結復元安定性に問題がある。ここで、凍結復元安定性とは、凍結溶解を繰り返し行っても離水、分離等が起こらないことを意味する。日本でも北海道や東北地方等では、真冬になると気温が−10℃を超えて下がることがあるので、流通段階又は使用時において凍結復元安定性を有することが強く求められている。そこで、凍結復元安定性を向上させ、離水、分離を防ぐには増粘剤を添加することが考えられるが、水中油型皮膚化粧料に増粘剤を加えると、塗布時のべたつきが強くなるという問題がある。
一方、シリコーンオイルを添加すると、特有の肌のすべり感が発現することから、塗布後のしっとり感が付与されにくいという問題がある。また、シリコーンオイルは、炭化水素油等の油性成分との相溶性が低く、乳化安定性に悪影響を与えるという問題がある。
【0004】
したがって、塗布時のべたつきがなく、塗布後のしっとり感が高く、凍結復元安定性が向上した水中油型皮膚化粧料の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−151635号公報
【特許文献2】特開2009−132638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、塗布時のべたつきがなく、塗布後のしっとり感が高く、凍結復元安定性が向上した水中油型皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、(A)炭化水素油5質量%〜25質量%、(B)水膨潤性粘土鉱物、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)オリゴ糖0.1質量%〜5質量%、を含有してなり、前記(B)成分の水膨潤性粘土鉱物の含有量と、前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量との質量比(B/C)が0.1〜3である水中油型皮膚化粧料が、塗布時のべたつきがなく、塗布後のしっとり感が高くなり、凍結復元安定性が向上することを知見した。
特に、好ましくは、(E)キサンタンガム及びカルボキシメチルセルロース塩から選択される少なくとも1種を添加すると、ネットワークの形成により、更に凍結復元安定性が向上することを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)炭化水素油5質量%〜25質量%、
(B)水膨潤性粘土鉱物、
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び
(D)オリゴ糖0.1質量%〜5質量%、
を含有してなり、
前記(B)成分の水膨潤性粘土鉱物の含有量と、前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量との質量比(B/C)が0.1〜3であることを特徴とする水中油型皮膚化粧料である。
<2> 更に、(E)キサンタンガム及びカルボキシメチルセルロース塩から選択される少なくとも1種を0.1質量%〜1質量%含有する前記<1>に記載の水中油型皮膚化粧料である。
<3> (C)成分のポリグリセリン脂肪酸が、ジイソステアリルポリグリセリン、及びイソステアリルポリグリセリンの少なくともいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の水中油型皮膚化粧料である。
<4> (B)成分の水膨潤性粘土鉱物の膨潤力が20mL/2g以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の水中油型皮膚化粧料である。
<5> (C)成分のポリグリセリン脂肪酸のHLBが、8〜16である前記<1>から<4>のいずれかに記載の水中油型皮膚化粧料である。
<6> (D)成分のオリゴ糖が、マルトテトラオースである前記<1>から<5>のいずれかに記載の水中油型皮膚化粧料である。
<7> (E)成分のカルボキシメチルセルロース塩の重量平均分子量が、10,000〜300,000である前記<2>から<6>のいずれかに記載の水中油型皮膚化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、塗布時のベタつきなく、しっとり感が高く、凍結復元安定性を改善した水中油型皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水中油型皮膚化粧料は、(A)炭化水素油、(B)水膨潤性粘土鉱物、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル、及び(D)オリゴ糖を含有してなり、好ましくは(E)キサンタンガム及びカルボキシメチルセルロース塩から選択される少なくとも1種を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0011】
<(A)炭化水素油>
前記(A)成分の炭化水素油は、塗布後のしっとり感を向上させる目的で配合される。
前記(A)成分の炭化水素油は、25℃で液状、半固体であり、合成又は天然由来のものが含まれる。
前記液状の炭化水素油としては、例えば流動イソパラフィン、液状ラノリン、流動パラフィン、スクワラン等が挙げられる。前記半固体の炭化水素油としては、例えばワセリン、ラノリン等のワックス類などが挙げられる。これらの中でも、塗布時のべたつきのなさ、塗布後のしっとり感の点から、液状の流動パラフィン、スクワランが特に好ましい。
前記(A)成分の炭化水素油としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、流動パラフィン350−S(三光化学工業株式会社製)等の流動パラフィン;ヒトデルム(COGNIS IBERIA,s.l.製)等のスクワランなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記(A)成分の炭化水素油の含有量は、前記水中油型皮膚化粧料全体に対し、5質量%〜25質量%であり、塗布後のしっとり感の点から、10質量%〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、塗布後のしっとり感が悪くなることがあり、25質量%を超えると、塗布時にべたつきが生じることがある。
【0013】
<(B)水膨潤性粘土鉱物>
前記(B)成分の水膨潤性粘土鉱物は、塗布時のべたつき、塗布後のしっとり感、及び凍結復元安定性を向上させる目的で添加される。
前記(B)成分の水膨潤性粘土鉱物は、膨潤力が20mL/2g以上でカチオン化されていないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、天然物、天然物の精製品、天然の膨潤性を改質したもの又は合成されたものなどが挙げられる。
前記膨潤力は、20mL/2g以上が好ましく、塗布後のしっとり感、及び凍結復元安定性の点から、60mL/2g以上がより好ましく、60mL/2g〜90mL/2gが特に好ましい。
前記膨潤力が、20mL/2g未満の水膨潤性粘土鉱物を用いた場合、水中油型化粧料中での分散性が悪くなり、塗布後のしっとり感及び凍結復元安定性が悪くなるおそれがある。その理由は不明であるが、膨潤力20mL/2g未満の水膨潤性粘土鉱物は抱水性が低いためと、(C)成分と形成する安定な乳化界面膜により凍結復元安定性が向上することが推察される。
ここで、前記水膨潤性粘土鉱物の膨潤力は、第15改正日本薬品局方に定められたベントナイトの試験方法を準用し、水膨潤性粘土鉱物2gの膨潤体積(mL)で表される。具体的には、水膨潤性粘土鉱物2.0gを取り、水100mLを入れた100mLのメスシリンダーに10回に分けて加え、これを24時間放置したときの器底の塊の見かけ容積を目盛りから読み取る。なお、水膨潤性粘土鉱物を10回に分けて水に加えるとき、先に加えた試料がほとんど沈着した後、次の試料を加える。
【0014】
前記(B)成分の水膨潤性粘土鉱物としては、前記膨潤力を有する天然又は合成されたモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライト、スチブンサイト等のスメクタイト族の粘土鉱物や、バーミキュライト、膨潤性合成フッ素雲母(Na型、Li型合成マイカ)などが挙げられる。また、上記粘土鉱物のイオン交換反応を行った、膨潤性を向上させた高金属イオン置換粘土鉱物等も用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記膨潤力を有する水膨潤性粘土鉱物は、層間に水分子を水和して取り込む交換性のイオンを含有しており、膨潤性、吸着性、結合性、懸濁性、増粘性等の性質を有し、他の粘土鉱物とは異なった性質を示すものである。
これら水膨潤性粘土鉱物の中でも、スメクタイト族、スメクタイト族のモンモリロナイトを主成分とするベントナイトが特に好ましい。
具体的には、この市販品としては、例えば、ポーラゲル(膨潤力:20mL/2g、アメリカンコロイド社製)、ラポナイト(日本シリカ工業株式会社製)、ベンゲル(膨潤力:35mL/2g、豊順鉱業株式会社製)、ルーセンタイト(コープケミカル株式会社製)、クニピアF(膨潤力:70mL/2g、クニミネ工業株式会社製)、クニピアG(膨潤力:86mL/2g、クニミネ工業株式会社製)、ベンクレイ(水澤化学工業株式会社製)、ビーガム(バンダービルト社製)などが挙げられる。これらの中でも、塗布後のしっとり感の点から、クニピアF、クニピアGが特に好ましい。
【0015】
前記(B)成分の水膨潤性粘土鉱物の含有量は、前記水中油型皮膚化粧料全体に対し、0.1質量%〜3質量%が好ましく、0.5質量%〜2質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、塗布時のべたつきのなさ、凍結復元安定性が不十分となることがあり、3質量%を超えると、塗布後のしっとり感が低下してしまうことがある。
【0016】
<(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル>
前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは、塗布時のべたつき、塗布後のしっとり感、及び凍結復元安定性を向上させる目的で添加される。
前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、8〜16が好ましく、10〜12がより好ましい。前記HLBが、8未満及び16を超える場合には、凍結復元安定性が悪くなることがある。
【0017】
ここで、HLB値は、界面活性剤を構成している親水基と、疎水基との強さのバランスを示す値であり、一般に、1〜8が疎水性であり、8超10未満が親水性と疎水性との中間の性質であり、10以上が親水性を示すが、界面活性剤の構造により異なる場合もある。
HLBの測定方法は、「ハンドブック −化粧品・製剤原料− 改定版」、日光ケミカルズ株式会社、昭和52年2月1日改訂版発行、854−855頁に記載の乳化法によるHLB値の実測に準拠する。前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を求める具体的な方法としては、前記(C)成分と、乳化剤の標準物質としてモノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS−10、HLB4.7)とを組み合わせ、これらの2種の乳化剤の全量は一定にし、割合のみを変えて被乳化物である流動パラフィン(HLB10.1)を乳化し、一昼夜放置後、クリーミング量、白濁度、下層の水分離などから安定性のあるところの最適な乳化剤の割合を求め、前記(C)成分のHLB値xを下記式(1)により算出する。
y=(x×使用量(質量%)+z×使用量(質量%))/100・・・式(1)
ただし、前記式(1)中、「x」は、前記(C)成分のHLB値を示し、「y」は、流動パラフィンのHLB値を示し、「z」は、モノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS−10)のHLB値を示す。
なお、前記流動パラフィンのHLB値は、モノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS−10、HLB4.7)と、モノステアリン酸POEソルビタン(NIKKOL TS−10、HLB14.9)との組合せにより、同様の方法で求めることができる。
【0018】
前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソステアリン酸ポリグリセリル−10(HLB=12)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10(HLB=10)、ステアリン酸ポリグリセリル−10(HLB=12)、トリステアリン酸ポリグリセリル−10(HLB=7.5)、ステアリアン酸ポリグリセリル−6(HLB=9)、ラウリン酸ポリグリセリル−10(HLB=15.5)(いずれも、日本サーファクタント工業株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、前記水中油型皮膚化粧料全体に対し、0.5質量%〜5質量%が好ましく、1質量%〜3質量%がより好ましい。前記含有量が、0.5質量%未満であると、乳化不良で、凍結復元安定性が劣ることがあり、5質量%を超えると、凍結復元安定性が劣り、塗布時にべたつくことがある。
【0019】
前記(B)成分の水膨潤性粘土鉱物の含有量と、前記(C)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量との質量比(B/C)は、0.1〜3であり、凍結復元安定性の点で、0.75〜2が好ましい。前記質量比(B/C)が、低すぎても高すぎても、凍結復元安定性が低下してしまうことがある。
【0020】
<(D)オリゴ糖>
前記(D)成分のオリゴ糖とは、単糖が、2〜10個結びついた糖を意味し、これらの誘導体も含まれる。
前記(D)成分のオリゴ糖としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蔗糖、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、マルトオクタオース、マルトノナオース、スレイトール、ラフィノースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、マルトテトラオース、マルトトリオース、マルトース、ラフィノース、マルトペンタオースが好ましく、凍結復元安定性、及び塗布時のべたつきのなさの点で、マルトテトラオースが特に好ましい。
前記(D)成分のオリゴ糖としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばマルトテトラオース(商品名:テトラップ−H、マルトテトラオース74%以上含有品、株式会社林原商事製)、マルトペンタオース(商品名:ペントラップ、マルトペンタオース74%以上含有品、株式会社林原商事製)、マルトース(サンマルト、マルトース89±2%含有品、株式会社林原商事製)、マルトトリオース(マルトトリオース、キシダ化学株式会社製)などが挙げられる。
前記(D)成分のオリゴ糖の含有量は、前記水中油型皮膚化粧料全体に対し、0.1質量%〜5質量%であり、凍結復元安定性、及び塗布時のべたつきのなさの点で、0.5質量%〜3質量%が好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、凍結復元安定性が低下してしまうことがあり、5質量%を超えると、塗布時にべたつくことがある。
【0021】
<(E)キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース塩>
前記(E)成分のカルボキシメチルセルロース塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、などが挙げられる。これらの中でも、カルボキシメチルセルロースナトリウムが特に好ましい。
前記カルボキシメチルセルロースナトリウムの重量平均分子量は、塗布時のべたつきのなさ、凍結復元安定性の点から、10,000〜300,000が好ましく、20,000〜70,000がより好ましい。前記重量平均分子量が、300,000を超えると、塗布時にべたつくことがあり、10,000未満であると、凍結復元安定性の向上効果が十分に得られないことがある。
ここで、前記重量平均分子量は、一般的なGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィーで、分子量既知のポリマーと比較する方法によって測定することができる。前記カルボキシメチルセルロースナトリウムの重量平均分子量は、GPC−MALLSを用いて測定した値であり、ポリマーの純分濃度が約1,000ppmの移動相で希釈した試料溶液をTSK−GELαカラム(東ソー株式会社製)を用い、0.5moL/Lの過塩素酸ナトリウム溶液を移動相として、約633nmの波長を多角度光散乱検出器により測定する。標準品としては分子量既知のポリエチレングリコールを用いる。
前記(E)成分のキサンタンガム及びカルボキシメチルセルロース塩としては、市販品を使用してもよい。該市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、キサンガンガムとしては、商品名:エコーガムT(大日本住友製薬株式会社製)、カルボキシメチルセルロースナトリウムとしては、商品名:セロゲンF−5A(重量平均分子量:13,000、第一工業製薬株式会社製)、セロゲンF−815A(重量平均分子量:50,000、第一工業製薬株式会社製)などが挙げられ、凍結復元安定性の点から、カルボキシメチルセルロース塩がより好ましい。
前記(E)成分のキサンタンガム及びカルボキシメチルセルロース塩から選択される少なくとも1種の含有量は、前記水中油型皮膚化粧料全体に対し、0.1質量%〜1質量%が好ましく、塗布後のしっとり感、凍結復元安定性、塗布時のべたつきのなさの点から、0.2質量%〜0.7質量%がより好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、塗布後のしっとり感、凍結復元安定性が劣ることがあり、1質量%を超えると、塗布時にべたつきが生じることがある。
【0022】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(A)成分を除く油脂成分、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、前記(C)成分を除く非イオン界面活性剤等の界面活性剤、無機粉体、有機粉体等の水不溶性粉体、保湿剤、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、紫外線吸収剤、冷感付与剤、酸化防止剤、着色剤、香料、制汗剤、殺菌剤、消臭剤、防腐剤、包接化合物、溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
<製造方法>
本発明の水中油型皮膚化粧料の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下の(1)工程から(6)工程を含む方法が好適である。
(1)精製水を攪拌しながら、これに(B)成分を徐々に添加して、均一な分散液を調製する。
(2)精製水を攪拌しながら、これに、必要に応じて、(E)成分を徐々に添加して、均一な分散液を調製する。
(3)精製水を攪拌しながら、これに(D)成分を添加し、これに前記(1)で得た液、及び前記(2)で得た液を添加し、均一な分散液を調製し、60℃に加熱する。
(4)(A)成分に(C)成分を添加し、65℃で加熱溶解する。
(5)前記(3)に、前記(4)で得た液を徐々に添加し、ホモミキサーにて乳化する。
(6)攪拌しながら30℃まで冷却して水中油型皮膚化粧料を得た。
【0024】
−pH−
前記水中油型皮膚化粧料のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、肌への負担を低くするため、健常皮膚表面のpHである4.5〜6.0が好ましい。
前記pHは、例えば化粧品原料基準一般試験法pH測定法に準拠して測定することができる。
【0025】
−粘度−
前記水中油型皮膚化粧料の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃で、500mPa・s〜10,000mPa・sが好ましく、1,000mPa・s〜8,000mPa・sがより好ましく、2,000mPa・s〜5,000mPa・sが更に好ましい。前記粘度が、500mPa・s未満であると、凍結復元安定性が悪く、液ダレしやすく塗布性が低下することがあり、10,000mPa・sを超えると、塗布時にべたつくことがある。
前記25℃での粘度は、例えば、化粧品原料基準一般試験法粘度測定法第2法に準拠して測定することができる。
【0026】
−用途−
前記水中油型皮膚化粧料は、塗布時のべたつきがなく、塗布後のしっとり感が高く、凍結復元安定性が改善したので、例えば、乳液、クリームなどに好適に利用可能である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に記載の成分量は全て純分換算である。
【0028】
(実施例1〜40及び比較例1〜7)
−水中油型皮膚化粧料の調製−
下記表1に示す組成(単位:質量%)について、常法により、実施例1〜40及び比較例1〜7の水中油型皮膚化粧料を調製した。最後に、クエン酸を添加し、pHを5.2に調整した。pHは、pHメーター(ホリバpHメーターD−52、株式会社堀場製作所)を用い、25℃にしたサンプルを、2分間安定化させて測定した。
また、粘度測定は、BH型粘度計(医薬部外品原料規格、粘度測定法、第2法などに規定)を用い、25℃、20rpm、1分後の値を測定する。ローターは、6号ローターを用いた。なお、BH型粘度計は、東京計器BH型粘度計を用いた。
【0029】
次に、得られた各水中油型皮膚化粧料について、以下のようにして、使用感(塗布時のべたつきのなさ、塗布後のしっとり間)、及び凍結復元安定性の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0030】
<使用感の評価方法>
被験者20名に対し、前腕内側部全体に試料0.3gを手で塗り伸ばし、塗り伸ばした時のべたつきのなさ、塗布後のしっとり感を評価した。下記の評価基準に基づき官能評価を行い、結果を、被験者20名の官能評価平均点に基づいて、下記の判断基準に基づき示す。
−塗布時のべたつきのなさ−
〔評価基準〕
5点:非常にべたつきがない
4点:べたつきがない
3点:ややべたつきがない
2点:べたつく
1点:非常にべたつく
−塗布後のしっとり感−
〔評価基準〕
5点:非常にしっとりする
4点:しっとりする
3点:ややしっとりする
2点:あまりしっとりしない
1点:しっとりしない
〔判断基準〕
−塗布時のべたつきのなさ、及び塗布後のしっとり感−
A:被験者20名の平均点が4.5点以上5点以下
B:被験者20名の平均点が4.0点以上4.5点未満
C:被験者20名の平均点が3.0点以上4.0点未満
D:被験者20名の平均点が2.0点以上3.0点未満
E:被験者20名の平均点が1.0点以上2.0点未満
【0031】
<凍結復元安定性>
450mLの軟質透明ガラス瓶に上記で調製した水中油型皮膚化粧料を350g充填し、−20℃に1日保存して完全に凍結させた後、室温にて1日放置し自然解凍した。この操作を5回繰り返した後、凍結復元安定性を下記の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:離水、分離が全く認められない
B:ごく僅かに離水が認められるが、分離は認められない
C:離水が認められ、僅かに分離も認められる
D:完全に離水、分離が認められる
【0032】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0033】
【表2-1】
【表2-2】
【0034】
なお、実施例1〜40及び比較例1〜7で用いた水中油型皮膚化粧料の原料の具体的な内容は、下記表3に示すとおりである。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の水中油型皮膚化粧料は、塗布時のべたつきがなく、塗布後のしっとり感が高く、凍結復元安定性が向上しているので、例えば、乳液、クリームなどに好適に利用可能である。