(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明の実施例に係る運転補助装置が搭載される作業機械であるショベル50の構成例を示す概略図である。ショベル50の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられ、ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が取り付けられる。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。さらに、上部旋回体3には、ショベル50の向きに関する向き情報を取得する向き情報取得装置22、及び、ショベル50の周囲を撮像する撮像装置24が搭載される。キャビン10の内部には、制御装置20、記憶装置26、及び表示装置27が搭載され、キャビン10の天井部には、本体位置情報取得装置21が搭載される。掘削アタッチメントには、掘削アタッチメントの姿勢に関する姿勢情報を取得する姿勢情報取得装置23が搭載される。なお、制御装置20、本体位置情報取得装置21、向き情報取得装置22、姿勢情報取得装置23、撮像装置24、記憶装置26、及び表示装置27の詳細は後述する。
【0011】
図2は、本発明の実施例に係る運転補助装置100の構成を示す機能ブロック図である。運転補助装置100は、制御装置20を含み、本体位置情報取得装置21、向き情報取得装置22、姿勢情報取得装置23、撮像装置24、記憶装置26、及び表示装置27に接続される。
【0012】
制御装置20は、運転補助装置100の動作を制御する装置であり、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えるコンピュータである。具体的には、制御装置20は、マーカー認識部200、マーカー解読部201、補助内容決定部202、及び動作制御部203の各機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、各機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0013】
本体位置情報取得装置21は、作業機械本体の位置に関する本体位置情報を取得する装置である。本実施例では、本体位置情報取得装置21は、GPS(Global Positioning System)受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力する信号を受信して本体位置情報(例えば、緯度、経度、高度である。)を測位・演算するGPS装置である。具体的には、本体位置情報取得装置21は、ショベル50の天井部に搭載されるGPS装置であり、例えば、ショベル50の基準位置(例えば、旋回中心である。)に対応する本体位置情報を取得し、取得した本体位置情報を制御装置20に対して出力する。
【0014】
向き情報取得装置22は、作業機械の向きに関する向き情報を取得する装置である。本実施例では、向き情報取得装置22は、掘削アタッチメントが位置する側を前側としてショベル50の向き(方位)を取得する地磁気センサであり、検出した向き情報を制御装置20に対して出力する。
【0015】
また、向き情報取得装置22は、本体位置情報取得装置21としてのGPS装置の設置位置とは異なるショベル50上の位置に搭載される別のGPS装置であってもよい。2つのGPS装置のそれぞれが取得する位置情報に基づいてショベル50の向きを特定できるためである。
【0016】
姿勢情報取得装置23は、作業機械の姿勢に関する姿勢情報を取得する装置である。本実施例では、姿勢情報取得装置23は、ショベル50の掘削アタッチメントの姿勢情報を取得するためのセンサである。具体的には、姿勢情報を取得するためのセンサは、上部旋回体3に対するブーム4の傾きを検出するブーム角度センサ23a、ブーム4に対するアーム5の傾きを検出するアーム角度センサ23b、及び、アーム5に対するバケット6の傾きを検出するバケット角度センサ23cを含む。また、姿勢情報は、バケット6の先端の位置、掘削アタッチメントの旋回半径等を含む。姿勢情報取得装置23は、取得した姿勢情報を制御装置20に対して出力する。
【0017】
撮像装置24は、作業機械の周囲を撮像する装置であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備えたカメラである。本実施例では、撮像装置24は、ショベル50の左側方を撮像する左側方カメラ24L、ショベル50の右側方を撮像する右側方カメラ24R、及び、ショベル50の後方を撮像する後方カメラ24Bを含む。撮像装置24は、撮像した画像(以下、「周囲画像」とする。)を制御装置20に対して出力する。
【0018】
記憶装置26は、各種情報を記憶するための装置である。記憶装置26は、例えば、ハードディスク、光学ディスク、又は半導体メモリ等である。
【0019】
表示装置27は、各種情報を表示する装置である。本実施例では、表示装置27は、キャビン10内に設置される液晶ディスプレイである。
【0020】
次に、制御装置20における各種機能要素について説明する。
【0021】
マーカー認識部200は、作業現場におけるマーカーに対応するマーカー画像を認識する機能要素である。
【0022】
「マーカー」とは、所定の幾何学的な形状又は模様を有する物体であり、例えば、AR(Augmented Reality)技術で用いられるARマーカー、QRコード(登録商標)等の二次元コードを含む。
【0023】
また、マーカーは、作業現場の所定位置に固定的に設置される固定マーカー、作業現場内を移動する物体(例えば作業員のヘルメットである。)に取り付けられる移動マーカー、作業員が必要に応じて提示する携帯可能な指示マーカー等を含む。なお、固定マーカーは、地面や壁面に取り付けられていてもよく、三次元空間上に独立して配置されるよう杭等の先端に取り付けられてもよい。
【0024】
具体的には、マーカー認識部200は、パターンマッチング等の画像処理技術を用いて、撮像装置24が撮像した周囲画像における、マーカーに対応するマーカー画像を認識する。
【0025】
また、マーカー認識部200は、認識したマーカー画像の大きさに基づいて、撮像装置24とマーカーとの間の距離を算出し、認識したマーカー画像の周囲画像内における位置に基づいて、撮像装置24から見たマーカーの方向を算出する。この場合、マーカーは、所定の大きさを有する。
【0026】
マーカー解読部201は、マーカー認識部200が認識したマーカー画像が表す内容を解読する機能要素である。
【0027】
マーカー画像が表す内容は、例えば、進入禁止領域に関する情報、目標法面に関する情報、後退継続指示や後退停止指示等の指示に関する情報、作業員の周囲に設定される接触予防距離に関する情報等を含む。
【0028】
進入禁止領域に関する情報は、例えば、進入禁止領域を定めるマーカーの数、進入禁止領域の位置(例えば、緯度及び経度によって表される三次元座標である。)、進入禁止領域の大きさ、高さ、又は深さ、進入禁止領域が設定される時間帯又は有効期限、進入禁止方向、進入禁止領域が適用される作業機械の種類等を含む。なお、進入禁止領域は、歩行者や作業員が通る通路、保護対象となる建物の周辺、穴や崖等の危険な地形が存在する領域等を含む。
【0029】
目標法面に関する情報は、例えば、目標法面を定めるマーカーの数、目標法面の幅、高さ、又は水平面に対する傾斜角度等を含む。
【0030】
具体的には、マーカー解読部201は、記憶装置26等に予め記憶された、マーカー画像とそのマーカー画像が表す内容との対応関係を保持するテーブルを参照し、認識されたマーカー画像が表す内容を解読する。
【0031】
なお、マーカー解読部201は、1つのマーカー画像に基づいて1つの内容を解読してもよく、複数のマーカー画像の組み合わせに基づいて1つの内容を解読してもよい。
【0032】
補助内容決定部202は、マーカー解読部201が解読した内容に基づいてショベル50の運転を補助する際の補助内容を決定する機能要素である。
【0033】
例えば、マーカー解読部201により、作業現場に設置された固定マーカーに対応するマーカー画像が表す内容が、ショベル50の進入禁止領域に関する情報であった場合を想定する。
【0034】
この場合、補助内容決定部202は、マーカー解読部201が解読した内容であるショベル50の進入禁止領域に関する情報を随時読み出し可能に記憶装置26に記憶する。そして、補助内容決定部202は、本体位置情報取得装置21が取得するショベル50の基準位置が進入禁止領域に入った場合にショベル50の下部走行体1の動きを停止させる処理を補助内容として決定する。
【0035】
動作制御部203は、補助内容決定部202が決定した補助内容にしたがってショベル50の動きを制御する機能要素である。具体的には、動作制御部203は、補助内容決定部202が決定した補助内容に対応するプログラムを実行する。
【0036】
例えば、ショベル50の基準位置が進入禁止領域に入った場合にショベル50の下部走行体1の動きを停止させるという機能が補助内容として決定された場合を想定する。
【0037】
この場合、動作制御部203は、本体位置情報取得装置21の出力に基づいてショベル50の基準位置が進入禁止領域に入ったと判定した場合に、下部走行体1の動きを自動的に停止させる。なお、動作制御部203は、下部走行体1の動きを自動的に停止させる代わりに或いはそれに加えて、キャビン10内の図示しないスピーカから警報を出力してもよく、表示装置27に警告メッセージを表示してもよい。
【0038】
次に、
図3及び
図4を参照しながら、ショベル50が所定領域へ進入するのを防止する処理(以下、「進入禁止処理」とする。)について説明する。なお、
図3は、進入禁止処理の流れを示すフローチャートであり、運転補助装置100は、この進入禁止処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0039】
また、
図4は、運転補助装置100が進入禁止処理を実行する際の作業現場の状況を示す図である。
図4に示すように、作業現場には、太線で示す境界線BLで区切られる作業可能領域R1と作業不可領域R2とが存在する。また、境界線BLの作業可能領域R1側には、境界線BLに沿って固定マーカーMK1〜MK5が固定的に設置されている。固定マーカーMK1〜MK5は、隣接するマーカー同士を結ぶ想像線によって、
図4の斜線ハッチングで示す進入禁止領域を定める。本実施例では、固定マーカーMK1〜MK5のそれぞれは、同じ大きさ及び同じ模様を有し、その模様は、特定数のマーカーによって進入禁止領域が定められていることを表す二次元コードを構成する。
【0040】
最初に、制御装置20のマーカー認識部200は、撮像装置24が出力する周囲画像内における、固定マーカーMK1〜MK5のそれぞれに対応するマーカー画像の認識を試みる(ステップS1)。具体的には、マーカー認識部200は、パターンマッチングにより、周囲画像内に含まれるマーカー画像を認識する。
【0041】
また、マーカー認識部200は、認識したマーカー画像の大きさに基づいて、ショベル50の基準位置と固定マーカーMK1〜MK5のそれぞれとの間の距離を算出する。さらに、マーカー認識部200は、認識したマーカー画像の周囲画像内における位置に基づいて、ショベル50の基準位置から見た固定マーカーMK1〜MK5のそれぞれの方向を算出する。
【0042】
マーカー認識部200が未認識のマーカー画像を認識した場合(ステップS1のYES)、制御装置20のマーカー解読部201は、マーカー画像が表す内容を解読する(ステップS2)。具体的には、マーカー解読部201は、固定マーカーMK1〜MK5のそれぞれに対応する5つのマーカー画像によって定められる進入禁止領域に関する情報を取得する。
【0043】
その後、制御装置20の補助内容決定部202は、マーカー解読部201が解読した内容に基づいてショベル50の運転を補助する際の補助内容を決定する(ステップS3)。具体的には、補助内容決定部202は、マーカー解読部201が解読した内容であるショベル50の進入禁止領域に関する情報を随時読み出し可能に記憶装置26に記憶する。例えば、補助内容決定部202は、本体位置情報取得装置21の出力に基づく現在のショベル50の基準位置(例えば緯度及び経度で表される二次元座標である。)から固定マーカーMK1〜MK5のそれぞれの位置(例えば緯度及び経度で表される二次元座標である。)を算出する。そして、補助内容決定部202は、それら位置情報を用いて定められる進入禁止領域を記憶装置26に記憶する。なお、マーカーMK1〜MK5のそれぞれが進入禁止領域の詳細な位置情報を保持する場合、補助内容決定部202は、その位置情報をそのまま記憶装置26に記憶すればよい。そして、補助内容決定部202は、ショベル50が進入禁止領域に入った場合にショベル50の動きを停止させる機能(以下、「進入禁止機能」とする。)を補助内容として決定する。
【0044】
なお、マーカー認識部200が未認識のマーカー画像を認識しない場合(ステップS1のNO)、運転補助装置100は、ステップS2及びステップS3を実行することなく、以下のステップS4を実行する。
【0045】
その後、制御装置20は、記憶装置26を参照して進入禁止領域が設定されているか否かを判定する(ステップS4)。
【0046】
制御装置20により進入禁止領域が設定されていると判定された場合(ステップS4のYES)、制御装置20の動作制御部203は、進入禁止機能に対応するプログラムを実行し、ショベル50が進入禁止領域に入ったか否かを判定する(ステップS5)。
【0047】
ショベル50が進入禁止領域に入ったと判定した場合(ステップS5のYES)、動作制御部203は、ショベル50の動きを停止させる(ステップS6)。ショベル50が作業不可領域R2に進入するのを防止するためである。
【0048】
例えば、動作制御部203は、本体位置情報取得装置21の出力に基づいてショベル50の基準位置を取得し、その基準位置から進入禁止領域までの最短距離を算出する。そして、動作制御部203は、その算出した最短距離が所定距離を下回った場合に、ショベル50が進入禁止領域に入ったと判定する。この場合、動作制御部203は、下部走行体1の動きを停止させる。ショベル50の基準位置は下部走行体1を動作させることにより、すなわちショベル50を移動させることにより変化するためである。
【0049】
或いは、動作制御部203は、本体位置情報取得装置21、向き情報取得装置22、及び姿勢情報取得装置23のそれぞれの出力に基づいてエンドアタッチメントであるバケット6のバケット位置(例えば緯度及び経度で表される二次元座標である。)を取得し、上述の最短距離の代わりに、そのバケット位置から進入禁止領域までの最短距離を算出してもよい。この場合、動作制御部203は、掘削アタッチメントの動き又は上部旋回体3の動きを停止させる。バケット位置は掘削アタッチメントを動作させることにより、或いは、上部旋回体3を旋回させることにより変化するためである。
【0050】
一方、進入禁止領域が設定されていないと制御装置20が判定した場合(ステップS4のNO)、或いは、ショベル50が進入禁止領域に入っていないと動作制御部203が判定した場合(ステップS5のNO)、運転補助装置100は、ステップS6を実行することなく、今回の進入禁止処理を終了させる。
【0051】
なお、上述の実施例では、複数の固定マーカーによって進入禁止領域が設定されているが、1つの固定マーカーによって進入禁止領域が設定されてもよい。
【0052】
以上の構成により、運転補助装置100は、固定マーカーMK1〜MK5によって定められる進入禁止領域を検知することによって、ショベル50が進入禁止領域に入った場合にショベル50の動きを自動的に停止させることができる。このようにして、運転補助装置100は、ショベル50が誤って作業不可領域R2に進入してしまわないように、ショベル50の運転を適切に補助することができる。
【0053】
次に、
図5及び
図6を参照しながら、ショベル50による法面の形成を支援する処理(以下、「法面形成支援処理」とする。)について説明する。なお、
図5は、法面形成支援処理の流れを示すフローチャートであり、運転補助装置100は、この法面形成支援処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0054】
また、
図6は、運転補助装置100が法面形成支援処理を実行する際の作業現場の状況を示す図である。
図6に示すように、作業現場には、3つの固定マーカーMK11〜MK13が設置されている。3つの固定マーカーMK11〜MK13のそれぞれが示す三次元空間上の3点は、高さH、幅W、及び傾斜角度θを有する目標法面R11を定める。それら3点は、例えば、固定マーカーMK11〜MK13のそれぞれの模様の中心にある点であってもよく、その中心にある点から所定距離(例えば1メートル)だけ鉛直下方にある点であってもよい。なお、マーカーMK11〜MK13のそれぞれは、同じ大きさ及び同じ模様を有し、その模様は、特定数のマーカーによって目標法面が定められていることを表す二次元コードを構成する。
【0055】
最初に、マーカー認識部200は、撮像装置24が出力する周囲画像内における、固定マーカーMK11〜MK13のそれぞれに対応するマーカー画像の認識を試みる(ステップS11)。具体的には、マーカー認識部200は、パターンマッチングにより、周囲画像内に含まれるマーカー画像を認識する。
【0056】
また、マーカー認識部200は、認識したマーカー画像の大きさに基づいて、ショベル50の基準位置と固定マーカーMK11〜MK13のそれぞれとの間の距離を算出する。さらに、マーカー認識部200は、認識したマーカー画像の周囲画像内における位置に基づいて、ショベル50の基準位置から見た固定マーカーMK11〜MK13のそれぞれの方向を算出する。
【0057】
マーカー認識部200が未認識のマーカー画像を認識した場合(ステップS11のYES)、マーカー解読部201は、マーカー画像が表す内容を解読する(ステップS12)。具体的には、マーカー解読部201は、3つのマーカーMK11〜MK13によって定められる目標法面R11に関する情報を取得する。
【0058】
その後、補助内容決定部202は、マーカー解読部201が解読した内容に基づいてショベル50の運転を補助する際の補助内容を決定する(ステップS13)。具体的には、補助内容決定部202は、マーカー解読部201が解読した内容である目標法面R11に関する情報を随時読み出し可能に記憶装置26に記憶する。例えば、補助内容決定部202は、本体位置情報取得装置21の出力に基づく現在のショベル50の基準位置(例えば、緯度、経度、及び高度で表される三次元座標である。)からマーカーMK11〜MK13のそれぞれの位置(例えば、緯度、経度、及び高度で表される三次元座標である。)を算出する。そして、補助内容決定部202は、それら三次元情報を用いて定められる目標法面R11を記憶装置26に記憶する。なお、マーカーMK11〜MK13のそれぞれが自身又は目標法面R11の三次元情報を保持する場合、補助内容決定部202は、その位置情報をそのまま記憶装置26に記憶すればよい。そして、補助内容決定部202は、バケット6(例えば法面バケットである。)が目標法面R11に達した場合に、目標法面R11よりも深く掘削しようとする掘削アタッチメントの動きを制限する機能(以下、「法面形成支援機能」とする。)を補助内容として決定する。
【0059】
なお、マーカー認識部200が未認識のマーカー画像を認識しない場合(ステップS11のNO)、運転補助装置100は、ステップS12及びステップS13を実行することなく、以下のステップS14を実行する。
【0060】
その後、制御装置20は、記憶装置26を参照して目標法面R11が設定されているか否かを判定する(ステップS14)。
【0061】
制御装置20により目標法面R11が設定されていると判定された場合(ステップS14のYES)、動作制御部203は、法面形成支援機能に対応するプログラムを実行し、バケット位置が目標法面R11に達したか否かを判定する(ステップS15)。
【0062】
バケット位置が目標法面R11に達したと判定した場合(ステップS15のYES)、動作制御部203は、バケット位置が目標法面R11を越えるような掘削アタッチメントの動きを制限する(ステップS16)。バケット6が目標法面R11より深く掘削してしまうのを防止するためである。
【0063】
例えば、動作制御部203は、本体位置情報取得装置21、向き情報取得装置22、及び姿勢情報取得装置23のそれぞれの出力に基づいてバケット6のバケット位置を算出する。そして、動作制御部203は、その算出したバケット位置(緯度、経度)におけるバケット6の高さが、そのバケット位置(緯度、経度)における目標法面R11の高さに達した場合に、バケット6が目標法面R11に達したと判定する。この場合、動作制御部203は、バケット位置が目標法面R11を越える方向への掘削アタッチメントの動きを制限する。バケット位置は掘削アタッチメントを動作させることにより変化するためである。なお、動作制御部203は、バケット6を目標法面R11から遠ざけるための掘削アタッチメントの動きを制限することはない。目標法面R11より深く掘削することがないためである。また、動作制御部203は、バケット位置が目標法面R11に沿って移動する方向への掘削アタッチメントの動きについても制限しない。
【0064】
一方、目標法面R11が設定されていないと制御装置20が判定した場合(ステップS14のNO)、或いは、バケット位置が目標法面に達していないと動作制御部203が判定した場合(ステップS15のNO)、運転補助装置100は、ステップS16を実行することなく、今回の法面形成支援処理を終了させる。
【0065】
以上の構成により、運転補助装置100は、固定マーカーMK11〜MK13によって定められる目標法面R11を検知することによって、バケット6が目標法面R11に達した場合に掘削アタッチメントの動きを自動的に制限することができる。このようにして、運転補助装置100は、目標法面R11にしたがった法面を操作者が容易に形成できるように、ショベル50の運転を適切に補助することができる。なお、バケット位置が目標法面R11に達したと判断した場合(ステップS15のYES)、動作制御部203は、操作者の掘削操作に応じて、掘削アタッチメントのバケット位置が目標法面R11に沿って移動する方向への動きを積極的に作り出すようにしてもよい。
【0066】
次に、
図7及び
図8を参照しながら、ショベル50の周囲にいる作業者が行う指示に応じてショベル50の運転を支援する処理(以下、「指示応答処理」とする。)について説明する。なお、
図7は、指示応答処理の流れを示すフローチャートであり、運転補助装置100は、この指示応答処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0067】
また、
図8は、運転補助装置100が指示応答処理を実行する際の作業現場の状況を示す図である。
図8に示すように、作業現場には、ショベル50の後方からショベル50に向かって指示を出す作業者が存在し、その作業者は必要に応じて指示マーカーMK21又はMK22をショベル50に向けて提示する。指示マーカーMK21及びMK22は、それぞれ異なる模様を有する。指示マーカーMK21の模様は、ショベル50の後退が可能であることを表す二次元コードを構成し、指示マーカーMK21の模様は、ショベル50の後退が不可能であることを表す二次元コードを構成する。なお、
図8において、点線は過去の状態を示し、実線は現在の状態を示す。
【0068】
最初に、マーカー認識部200は、撮像装置24が出力する周囲画像内における、指示マーカーMK21又はMK22に対応するマーカー画像の認識を試みる(ステップS21)。具体的には、マーカー認識部200は、パターンマッチングにより、周囲画像内に含まれるマーカー画像を認識する。
【0069】
マーカー認識部200がマーカー画像を認識した場合(ステップS21のYES)、マーカー解読部201は、マーカー画像が表す内容を解読する(ステップS22)。具体的には、マーカー解読部201は、記憶装置26に予め記憶されたテーブルを参照し、指示マーカーMK21に対応するマーカー画像がショベル50の後退を許容する意味であり、指示マーカーMK22に対応するマーカー画像がショベル50の後退を禁止する意味であることを解読する。
【0070】
その後、補助内容決定部202は、マーカー解読部201が解読した内容に基づいてショベル50の運転を補助する際の補助内容を決定する(ステップS23)。
【0071】
具体的には、補助内容決定部202は、指示マーカーMK21が提示された場合にショベル50の後退を許容し、指示マーカーMK22が提示された場合にショベル50の後退を停止させる。
【0072】
その後、動作制御部203は、ショベル50の後方にいる作業者によって指示マーカーMK21が提示されたならば(ステップS24の後退継続指示)、下部走行体1の動きを停止させることなく、後退が可能であることを示すテキストメッセージを表示装置27に表示する(ステップS25)。なお、動作制御部203は、音声メッセージを出力させてもよい。
【0073】
一方、ショベル50の後方にいる作業者によって指示マーカーMK22が提示されたならば(ステップS24の後退停止指示)、動作制御部203は、下部走行体1の動きを自動的に停止させ、ショベル50の後退を自動的に停止させる(ステップS26)。
【0074】
なお、マーカー認識部200がマーカー画像を認識しない場合には(ステップS21のNO)、運転補助装置100は、ステップS22〜ステップS26の処理を実行することなく、今回の指示応答処理を終了させる。
【0075】
以上の構成により、運転補助装置100は、指示マーカーMK21又はMK22によって表される指示内容を検知することによって、ショベル50の後退を継続させ、或いは、ショベル50の後退を停止させることができる。このようにして、運転補助装置100は、ショベル50の後方にいる作業者が大声を出す必要なくショベル50の後退を誘導できるように、ショベル50の操作者とショベル50の周囲にいる作業者との間のコミュニケーションを適切に補助し、且つ、ショベル50の運転を適切に補助することができる。
【0076】
次に、
図9及び
図10を参照しながら、ショベル50の周囲にいる作業者がショベル50に接触するのを予防する処理(以下、「接触予防処理」とする。)について説明する。なお、
図9は、接触予防処理の流れを示すフローチャートであり、運転補助装置100は、この接触予防処理を所定周期で繰り返し実行する。
【0077】
また、
図10は、運転補助装置100が接触予防処理を実行する際の作業現場の状況を示す図である。
図10に示すように、作業現場には、ショベル50の周辺で作業する3人の作業者が存在し、それら作業者はそれぞれ所定の形状及び模様を有する移動マーカーMK31〜MK33としてのヘルメットを装着している。本実施例では、移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれは、同じ大きさ及び同じ模様を有し、その模様は、移動マーカーが示す位置とショベル50との間に所定の接触予防距離を置くべきことを表す二次元コードを構成する。
【0078】
最初に、マーカー認識部200は、撮像装置24が出力する周囲画像内における、移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれに対応するマーカー画像の認識を試みる(ステップS31)。具体的には、マーカー認識部200は、パターンマッチングにより、周囲画像内に含まれるマーカー画像を認識する。
【0079】
また、マーカー認識部200は、認識したマーカー画像の大きさに基づいて、ショベル50の基準位置と移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれとの間の距離を算出する。さらに、マーカー認識部200は、認識したマーカー画像の周囲画像内における位置に基づいて、ショベル50の基準位置から見た移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれの方向を算出する。
【0080】
マーカー認識部200がマーカー画像を認識した場合(ステップS31のYES)、マーカー解読部201は、マーカー画像が表す内容を解読する(ステップS32)。具体的には、マーカー解読部201は、マーカーMK31〜MK33のそれぞれとショベル50との間に設定される所定の接触予防距離に関する情報を取得する。
【0081】
その後、補助内容決定部202は、マーカー解読部201が解読した内容に基づいてショベル50の運転を補助する際の補助内容を決定する(ステップS33)。具体的には、補助内容決定部202は、移動マーカーMK31〜MK33の何れかとショベル50との間の距離が所定の接触予防距離以下となった場合にショベル50の動きを停止させる機能(以下、「接触予防機能」とする。)を補助内容として決定する。
【0082】
その後、動作制御部203は、接触予防機能に対応するプログラムを実行し、ショベル50の周辺で作業する作業者、すなわち移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれとショベル50の基準位置との間の距離D31〜D33が接触予防距離以下であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0083】
距離D31〜D33のうちの少なくとも1つが接触予防距離以下であると判定した場合(ステップS34のYES)、動作制御部203は、ショベル50の動きを停止させる(ステップS35)。作業者とショベル50とが接触するのを防止するためである。
【0084】
例えば、動作制御部203は、本体位置情報取得装置21の出力に基づいてショベル50の基準位置を取得し、その基準位置と移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれとの間の距離D31〜D33を算出する。そして、動作制御部203は、その算出した距離D31〜D33のうちの少なくとも1つが接触予防距離以下となった場合に、下部走行体1の動きを停止させる。ショベル50の基準位置は下部走行体1を動作させることによって、すなわちショベル50を移動させることによって変化するためである。
【0085】
或いは、動作制御部203は、本体位置情報取得装置21、向き情報取得装置22、及び姿勢情報取得装置23のそれぞれの出力に基づいてエンドアタッチメントであるバケット6のバケット位置(緯度、経度)を取得し、上述の距離D31〜D33の代わりに、そのバケット位置と移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれとの間の距離を算出してもよい。この場合、動作制御部203は、掘削アタッチメントの動き又は上部旋回体3の動きを停止させる。バケット位置は掘削アタッチメントを動作させることにより、或いは、上部旋回体3を旋回させることにより変化するためである。
【0086】
一方、マーカー認識部200がマーカー画像を認識しない場合(ステップS31のNO)、或いは、移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれとショベル50との間の距離が何れも所定の接触予防距離より大きい場合(ステップS34のNO)、運転補助装置100は、ステップS35を実行することなく、今回の接触予防処理を終了させる。
【0087】
以上の構成により、運転補助装置100は、移動マーカーMK31〜MK33のそれぞれとショベル50との間の距離を検知することによって、作業者がショベル50に接近した場合にショベル50の動きを自動的に停止させることができる。このようにして、運転補助装置100は、ショベル50を周囲の作業者に接触させてしまわないように、ショベル50の運転を適切に補助することができる。
【0088】
次に、
図11を参照しながら、運転補助装置100における表示装置27の機能について説明する。ここでは、表示装置27としてHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を採用する。なお、
図11は、HMD26を装着した操作者が視認するキャビン10内の様子を示す図である。また、キャビン10のピラーに設置されるHMD姿勢捕捉用ターゲットT1、T2は、HMD26に搭載されるカメラが認識可能なターゲットであり、HMD26が自身の姿勢を認識して適切な画像表示位置を決定できるように設置される。
【0089】
図11に示すように、運転補助装置100は、進入禁止処理における進入禁止領域を表す画像G1、法面形成支援処理が稼働中であることを示す画像G2、及び、指示応答処理における後退が可能であることを表す画像G3をHMD26上に表示する。また、運転補助装置100は、接触予防処理におけるショベル50と作業者のそれぞれとの位置関係を示す画像G4a、及び、接触予防処理において認識された作業者を特定するための画像G4bをHMD26上に表示する。さらに、運転補助装置100は、埋設物の存在を表す固定マーカーMK41に関する情報である画像G5をHMD26上に表示する。
【0090】
この構成により、運転補助装置100は、進入禁止処理、法面形成支援処理、指示応答処理、接触予防処理等の種々の処理に関する情報を分かり易く操作者に提示することができ、現在どのような補助が行われているかを操作者に分かり易く伝えることができる。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0092】
例えば、上述の実施例において、運転補助装置100は、旋回機構2を備えたショベル50に適用されるが、ホイールローダ等の旋回機構のない作業機械に適用されてもよい。