(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755627
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】射出成形機のノズルタッチ方法およびタッチ装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20150709BHJP
B29C 45/20 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/20
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-243239(P2012-243239)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91259(P2014-91259A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2013年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀治
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−336951(JP,A)
【文献】
特開2004−306360(JP,A)
【文献】
特開2000−238110(JP,A)
【文献】
特開2013−056516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出ユニットの射出ノズルをノズルタッチ装置により型締ユニットのスプルブッシュのタッチ部にタッチさせ、そしてタッチ力を徐々に増して所定の設定タッチ力で圧接するノズルタッチ工程において、
事前工程として、前記射出ノズルを前記タッチ部に正常に当接させ、そして前記設定タッチ力に達するまでのタッチ力の変化のパターンを基準パターンとして得、
前記ノズルタッチ工程において得られるタッチ力の変化である計測パターンを前記基準パターンと比較し、前記測定パターンにおいて、タッチ力が前記設定タッチ力近傍に達した後に前記設定タッチ力に達するまでの時間が、前記基準パターンに比して長いとき、前記射出ノズルと前記タッチ部との間に異物が挟まれていると判定することを特徴とする射出成形機のノズルタッチ方法。
【請求項2】
射出ユニットの射出ノズルをノズルタッチ装置により型締ユニットのスプルブッシュのタッチ部にタッチさせ、そしてタッチ力を徐々に増して所定の設定タッチ力で圧接するノズルタッチ工程において、
事前工程として、前記射出ノズルを前記タッチ部に正常に当接させ、そして前記設定タッチ力に達するまでのタッチ力の変化のパターンを基準パターンとして得、
前記ノズルタッチ工程において得られるタッチ力の変化である計測パターンを前記基準パターンと比較し、前記測定パターンにおいて、タッチ力が途中で減少し、その後増加する場合には、前記射出ノズルと前記タッチ部の軸心が不整合になっていると判定することを特徴とする射出成形機のノズルタッチ方法。
【請求項3】
コントローラを備えた射出成形機において、射出ユニットの射出ノズルを型締ユニットのスプルブッシュのタッチ部にタッチさせ、そしてタッチ力を徐々に増して所定の設定タッチ力で圧接するノズルタッチ工程を実施するノズルタッチ装置であって、
前記コントローラは、前記射出ノズルが型締ユニットのスプルブッシュのタッチ部に正常に当接し前記設定タッチ力で圧接されるまでのタッチ力の変化パターンである基準パターンを記憶する記憶手段と、前記ノズルタッチ工程毎にタッチ力の変化である計測パターンを得る演算手段と、前記基準パターンと前記計測パターンとを比較する比較手段と、前記計測パターンが前記基準パターンに対して所定の許容範囲を超えてずれているとき警報を発する警報手段とを有し、請求項1または2のノズルタッチ方法を実施することを特徴とする射出成形機のノズルタッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出ノズルをノズルタッチ装置によりスプルブッシュのタッチ部にタッチさせ、そしてタッチ力を徐々に増して所定のタッチ力で圧接する、射出成形機のノズルタッチ方法およびタッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように、概略、射出ユニットと、型締ユニットとから構成されている。射出ユニットは、加熱シリンダ、この加熱シリンダの内部に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ、このスクリュを駆動する駆動装置等からなり、加熱シリンダの前方には射出ノズルが設けられている。一方、型締ユニットは、固定盤に取り付けられている固定側金型、可動盤に同様に取り付けられている可動側金型から構成されており、可動側金型が固定側金型に対して型締めされるようになっている。したがって、射出ユニットのスクリュを回転駆動し、射出材料を加熱シリンダに供給すると、従来周知のようにして射出材料は加熱シリンダの前方の計量室に可塑化計量される。そこで、スクリュを軸方向に駆動し、計量室の射出材料を型締めされた金型のキャビテイに射出し、冷却固化を待って可動側金型を開くと、所定形状の成形品が得られる。
【0003】
上記のようにして、計量し射出するときは、射出ノズルは、ノズルタッチ装置により固定側金型のスプルブッシュのノズルタッチ部に所定のタッチ力あるいは圧接力、例えば計量時の背圧、射出時の射出圧等により受ける反力に抗するタッチ力で圧接されるようになっている。このようにして射出ノズルを固定側金型にタッチさせて射出する成形法には、シフト成形方法とタッチ成形方法とが知られている。すなわち、射出ノズルを固定側金型のスプルブッシュに圧接すると、低温の金型から熱が奪われ、ノズルの先端部において溶融樹脂が固まることがある。これを防ぐために、計量完了後、射出ノズルを金型から離し、射出直前に上記のように再びタッチさせて成形するシフト成形方法と、射出ノズルをノズルタッチ部にタッチさせたまま成形するタッチ成形方法とが知られている。このような射出ノズルは、加熱シリンダアセンブリの交換時等には金型のノズルタッチ部から離間される。
【0004】
【特許文献1】特開平11−320611号公報
【特許文献2】特開2003−231166号公報
【特許文献3】特開平6−226787号公報
【0005】
ノズルタッチ装置には、油圧式、電動式等色々のタイプが知られているが、特許文献1により油圧式の一例を、電動式の例を特許文献2、3のそれぞれにより説明する。特許文献1に記載の油圧式のノズルタッチ装置は、射出ユニットを進退させる移動シリンダ、該シンリンダに供給する圧油を切り換える電磁切換弁、第1、2のリリーフ弁、前記移動シリンダ内の圧力を検出する圧力スイッチ等からなっている。したがって、電磁切換弁により回路を切り換えることにより、移動シリンダにより射出ノズルを金型のタッチ部にタッチさせ、また退避させることができる。このときのタッチ力は第1、2のリリーフ弁のいずれかの弁の設定圧により決められ、タッチの持続時間は圧力スイッチが所定の圧力を検出してからのタイマーの計時で決められるようになっている。
【0006】
特許文献2に記載のノズルタッチ装置は、射出ユニットの駆動源として誘導電動機が適用されている。この誘導電動機に印加される電流値と電圧値を検出し、該検出値から電力値を演算することにより該誘導電動機の負荷を制御するようになっている。誘導電動機の負荷を正確に制御することにより、ノズルタッチ力を広範囲に、且つ、正確に制御できる。
【0007】
特許文献3に記載のノズルタッチ方法の実施にはサーボモータが適用されている。そして、射出ノズルのタッチ力は、溶融樹脂を射出するときはノズルの先端部から溶融樹脂が洩れない最小のタッチ力とし、これに対し射出以外の保圧時等には射出ユニットが受ける反力に上記最小のタッチ力を加算した大きさに選定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の説明から理解されるように、射出ノズルのスプルブッシュへの圧接力あるいはタッチ力が弱いと、射出時に樹脂がノズルの先端部から洩れ、これが固化してタッチ不良を起こすこともあり、さらにはショートショットの原因にもなる。これに対して強すぎると、射出ノズル、スプルブッシュ、ひいては金型等を傷める。ところで、特許文献1に記載のノズルタッチ装置によると、移動シリンダに供給する作動油の圧力は、リリーフ弁により制御されているので、タッチ力不足も、過剰タッチ力も避けることができる。また、特許文献2に記載のノズルタッチ制御方法によると、射出ノズルを駆動する誘導電動機の電流値と圧力値とを検出して電力値を演算し、そして負荷を制御するようになっているので、一応上記のような問題はないと思われる。さらには、特許文献3に記載の発明によると、タッチ力は2段に設定され、射出時には充填圧により溶融樹脂がノスルの先端部とスプルブッシュのタッチ部の間から洩れることが防止され、保圧時等において型締ユニットが傾くようなこともないという効果が得られる。
【0009】
上記のように、従来のノズルタッチ装置においても、良好なノズルタッチ力が得られているので、圧接不足も、また過剰圧接も避けることができている筈であるが、現実には問題が生じている。しかし、その問題は見逃されている。なぜならば、例えば、ノズルの先端部が異常に摩耗している場合、ノズルの先端部に樹脂がこびりついている場合、ノズルの先端部が曲がっている場合、スプルブッシュが凹んでいる場合等には樹脂漏れを起こすが、ノズルタッチ完了時には所定の設定されたタッチ力で圧接されているからである。また、
図3に示されているように、固定側金型KKのスプルブッシュSBのノズルタッチ部NTは、半球状面になっており、一方射出SNの先端部の形状も半球状面になって、その径はノズルタッチ部NTの径よりも小さいので、射出ノズルSNの軸心がノズルタッチ部NTの軸心とずれていても、タッチが進行すると、射出ノズルSNはノズルタッチ部NTの球面に強制的に案内されて軸心は一致するようになる。そして、所定のタッチ力で圧接される。結果的には所定のタッチ力で圧接されているが、タッチ完了までには遅れが生じ、またノズルタッチ部NTと射出ノズルSNの先端部との間には大きな摩擦が生じているので、これらの間に摩耗が生じ、早期に破損する。しかし、このような場合も、最終的には所定のタッチ力で圧接されているので、従来のノズルタッチ方法では検出できない。
【0010】
したがって、本発明は、所定のノズルタッチ力で射出ノズルの先端部を金型に設けられているスプルブッシュのノズルタッチ部に圧接するノズルタッチ工程を実施するとき、異物の挟み込み、樹脂漏れ、射出ノズルの芯ずれ等の異常を検出できる射出成形機のノズルタッチ方法およびこの方法の実施に使用されるノズルタッチ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、射出ノズルが金型のスプルブッシュのノズルタッチ部に当接してから所定のタッチ力で圧接されるまでには所定のパターンを示すという、知見に基づいてなされたものであり、このパターンをコントローラの記憶部に記憶させておき、ノズルタッチ工程において検出される計測パターンと比較して、許容値を越えたかどうかによって判断するように構成される。
【0012】
すなわち、
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、射出ユニットの射出ノズルをノズルタッチ装置により型締ユニットのスプルブッシュのタッチ部にタッチさせ、そしてタッチ力を徐々に増して所定の設定タッチ力で圧接するノズルタッチ工程において、事前工程として、前記射出ノズルを前記タッチ部に正常に当接させ、そして前記設定タッチ力に達するまでのタッチ力の変化のパターンを基準パターンとして得、前記ノズルタッチ工程において得られるタッチ力の変化である計測パターンを前記基準パターンと比較し、前記測定パターンにおいて、タッチ力が前記設定タッチ力近傍に達した後に前記設定タッチ力に達するまでの時間が、前記基準パターンに比して長いとき、前記射出ノズルと前記タッチ部との間に異物が挟まれていると判定することを特徴とする射出成形機のノズルタッチ方法として構成される。
請求項
2に記載の発明は、
射出ユニットの射出ノズルをノズルタッチ装置により型締ユニットのスプルブッシュのタッチ部にタッチさせ、そしてタッチ力を徐々に増して所定の設定タッチ力で圧接するノズルタッチ工程において、事前工程として、前記射出ノズルを前記タッチ部に正常に当接させ、そして前記設定タッチ力に達するまでのタッチ力の変化のパターンを基準パターンとして得、前記ノズルタッチ工程において得られるタッチ力の変化である計測パターンを前記基準パターンと比較し、前記測定パターンにおいて、タッチ力が途中で減少し、その後増加する場合には、前記射出ノズルと前記タッチ部の軸心が不整合になっていると判定することを特徴とする射出成形機のノズルタッチ方法として構成される。
請求項
3に記載の発明は、コントローラを備えた射出成形機において、射出ユニットの射出ノズルを型締ユニットのスプルブッシュのタッチ部にタッチさせ、そしてタッチ力を徐々に増して所定の設定タッチ力で圧接するノズルタッチ工程を実施するノズルタッチ装置であって、前記コントローラは、前記射出ノズルが型締ユニットのスプルブッシュのタッチ部に正常に当接し前記設定タッチ力で圧接されるまでのタッチ力の変化パターンである基準パターンを記憶する記憶手段と、前記ノズルタッチ工程毎にタッチ力の変化である計測パターンを得る演算手段と、前記基準パターンと前記計測パターンとを比較する比較手段と、前記計測パターンが前記基準パターンに対して所定の許容範囲を超えてずれているとき警報を発する警報手段とを有
し、請求項1または2のノズルタッチ方法を実施することを特徴とする射出成形機のノズルタッチ装置として構成される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によると、異常のない正常なノズルタッチから所定のタッチ力である設定タッチ力を得るまでの間の、所定の時間とノズルタッチ力との関係からなるデータすなわち基準パターンを事前工程で得ておく。そして通常のノズルタッチ工程において計測される計測パターンと比較して、許容値を超えているときはノズルタッチ異常であると判定している。従って、異物の挟み込み、樹脂漏れ、射出ノズルの芯ずれ等の異常を容易に知ることができる。
そして請求項
1に記載の発明によって、樹脂等の異物が射出ノズルとタッチ部との間に挟まれている異常が、請求項
2に記載の発明によって、射出ノズルとタッチ部の軸心が不整合になっている異常が、それぞれ検出できるので、正確かつ確実に異常を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る射出成形機の一部を断面にして示す正面図である。
【
図2】ノズルタッチ工程における経過時間とノズルタッチ力との関係を示すグラフである。
【
図3】従来の射出ノズルとノズルタッチ部との関係を一部断面にして示す正面図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、前述したような油圧式でも実施できるが、初めに、電動式のバネの復元力によるノズルタッチ装置の実施の形態を説明し、他の電動式および油圧式については最後に簡単に説明する。
図1に示されているように、本実施の形態に係る射出成形機は、外形的には従来の射出成形機と同様に射出ユニット1と、型締ユニット10と、ノズルタッチ装置30とから構成されている。射出ユニット1は、加熱シリンダ2を備えている。この加熱シリンダ2の内部には、従来周知のように回転方向と軸方向とに駆動可能にスクリュが挿入されている。加熱シリンダ2の前方には、射出ノズル3が、後方寄りにはホッパ4が、最後尾にはスクリュの駆動装置5が設けられている。このように構成されている射出ユニット1は、架台6に前後方向に移動可能に支持されている。したがって、射出ノズル3の先端部を固定的に設けられている型締ユニット10の固定側金型のスプルブッシュ21にタッチさせることができ、また離間させることもできる。
【0016】
型締ユニット10は、型締台11に固定的に設けられている固定盤12、軸方向に移動可能に設けられている可動盤13、固定盤12に取り付けられている固定側金型14、可動盤13に取り付けられている可動側金型15、図示されない型締装置等からなっている。固定側金型14と可動側金型15のパーテイングラインの間には、成形品を成形するためのキャビテイ16が構成されている。固定盤12には、射出ノズル3が挿通される透孔17が形成され、この透孔17に対応した固定側金型14にスプルブッシュ20が嵌められている。スプルブッシュ20の、射出ノズル3に対応した部分がノズルタッチ部21となっている。このノズルタッチ部21は半球形になり、その径は、射出ノズル3の先端部の半球径の径よりも大きい。このように構成されているノズルタッチ部21からキャビテイ16に連通したスプル22が形成されている。
【0017】
ノズルタッチ装置30は、本実施の形態によると、停止時にブレーキ32がかかるブレーキ付き電動モータ31、ボールネジ34、このボールネジ34に螺合しているボールナット35、バネ38等からなっている。ボールネジ34は電動モータ31により減速装置等を介して駆動される。このボールネジ34は、前後方向に所定長さを有し、その一方は固定盤12に取り付けられているスラスト荷重も受ける軸受33に、そして他方は図示されない軸受に回転自在に軸受されている。ボールナット35は、軸方向には移動可能であるが、回転方向は図示されない部材で規制されている。したがって、ボールネジ34が回転駆動されると、これに螺合しているボールナット35の方が軸方向に駆動される。このような動きをするボールナット35には、駆動部材37が一体的に取り付けられている。
【0018】
射出ユニット1の、型締ユニット10に面した部分には、継手40が取り付けられ、この継手40に駆動棒41の一方の端部が取り付けられている。駆動棒41は型締ユニット10の方へ所定量だけ延びている。そして、下方へ鍵型に延びた部分が荷重受部42となっている。この荷重受部42と、前述した駆動部材37との間にバネ38が介在されている。
【0019】
このように構成されている駆動部材37に、型締ユニット10の方へ延在したセンサ棒45が取り付けられ、このセンサ棒45に関連して、軸方向の変位にともないパルスを出力するエンコーダ46が荷重受部42に設けられている。センサ棒45とエンコーダ46とにより、駆動部材37と荷重受部42との間隔すなわちバネ38の圧縮量したがって射出ノズル3のタッチ力が計測される。
【0020】
本実施の形態によると、射出成形機あるいはノズルタッチ装置30は、コントローラ47も備えている。コントローラ47は、作用の箇所でも説明するように比較機能、演算機能、タイマー機能、各種設定手段等を有する。例えば、タイマーがスタートしてから設定時間後のバネ38の圧縮量すなわちタッチ力を演算する機能等を備えている。このようなコントローラ47は、エンコーダ46とは信号ラインaで、ブレーキ付き電動モータ31とは信号ラインbでそれぞれ接続されている。
【0021】
次に、上記実施の形態の作用を説明する。初めに事前工程として、射出ノズル3がノズルタッチ部21に当接してから所定のタッチ力である設定タッチ力で圧接されるまでの時間と、その時間内における所定の時間におけるタッチ力との関係からなる基準パターンを求める。このとき、射出ノズル3はノズルタッチ部21に正常にタッチするようにする。つまり異物の挟み込み、樹脂漏れ、射出ノズルの芯ずれ等の異常のない正常なノズルタッチを実施する。そして以後の、実工程のノズルタッチ工程において判断基準となるべき基準パターンを求める。
【0022】
具体的には次のようにする。コントローラ47に所定の設定タッチ力が得られる射出ユニット1の位置を設定する。つまり、電動モータ31を停止させる位置の数値を設定する。タッチ力をパターンとして測定するためのサンプリング周期を設定する。例えば0.1秒間隔を設定する。そして、ブレーキ付き電動モータ31を起動する。電動モータ31によりボールネジ34が回転駆動され、ボールナット35、したがって駆動部材37が型締ユニット10の方へ駆動され、射出ユニット1はバネ38を介して型締ユニット10の方へ駆動される。射出ノズル3がノズルタッチ部21にタッチするまではバネ38は圧縮されない。すなわち、駆動部材37と荷重受部材42との間隔は変わらない。したがって、エンコーダ46からはパルス信号は出ない。
【0023】
やがて、例えば2.5秒経過すると、射出ノズル3がスプルブッシュ20のノズルタッチ部21にタッチし、バネ38が圧縮され始める。駆動部材37と荷重受部材42との間隔は狭くなり始めるので、エンコーダ46はパルス数をカウントを始め、コントローラ47に入力される。このパルス数すなわちバネ38の圧縮量からタッチ力が演算される。以下、同様にして0.1秒毎のタッチ力が演算される。
【0025】
このようにして得られる時間とタッチ力との関係を表1に、そしてグラフを
図2において曲線Sで示す。この曲線Sが基準パターンを示している。基準パターンの曲線Sは、射出ノズル3がノズルタッチ部21にタッチした直後から、最終的なタッチ力である設定タッチ力Spに達するまで、滑らかに上昇している。このような基準パターンをコントローラ47に記憶すると共に、この基準パターンに対する許容値あるいは閾値を設定する。事前工程を完了する。
【0026】
実工程、つまり実際の成形工程を実施するときは、射出ユニット1を起動してホッパ4中のペレットを可塑化する。そうして、射出ノズル3の先端部をノズルタッチ部21に圧接する。あるいは、圧接してから可塑化する。射出ユニット1のスクリュを軸方向に駆動して型締ユニット10のキャビティ16に射出・充填する。冷却固化を待って、可動側金型15を開いて成形品を得る。
【0027】
ノズルタッチ工程において、射出ノズル3の先端部をノズルタッチ部21に圧接するとき、前述したようにして、コントローラ47は0.1秒経過毎にタッチ力を演算し、タッチ力の変化である測定パターンを得る。
図2において曲線Xは、樹脂等の異物が射出ノズル3とノズルタッチ部21の間に挟まれているときの測定パターンの例を示している。曲線Xにおいて、漏れた樹脂が射出ノズル3の先端部、ノズルタッチ部21等で固化しているとき、あるいは固形物が付着しているときはその分だけ早くタッチし、バネ38は圧縮を始め、タッチ力が生じ始める。しかしながらタッチ力の上昇カーブの立ち上がりについては、その曲率の変化は基準パターンとほぼ一致している。つまり測定パターンを時間軸方向に並行移動すれば、基準パターンにほぼ一致する。しかしながらタッチ力が設定タッチ力Sp近傍に近づくと、固化した樹脂が潰れるなどの変化をし、タッチ力の上昇が鈍り(Xp点)、所定時間遅れて設定タッチ力に達する。なお漏れた樹脂が射出ノズル3の先端部に付着しているときには、符号Xqで示されているように、タッチ力の上昇中に、一時的にタッチ力の変化が基準パターンからずれる場合もある。
【0028】
図2において曲線Yは、射出ノズル3とノズルタッチ部21との軸心がずれているときの測定パターンの例を示すグラフである。曲線Yにおいては、射出ノズル3とノズルタッチ部21との軸心がずれているので、同様に早期にバネ38は圧縮を始める。しながらタッチ力の上昇カーブの立ち上がりについては、その曲率の変化は、基準パターンとほぼ一致している。つまり測定パターンを時間軸方向に並行移動すれば、基準パターンにほぼ一致する。しかしながら、ある程度タッチ力が大きくなると、射出ノズル3はノズルタッチ部21の球面に強制的に案内されて軸心が一致する方向に緩やかに滑り出す。この緩やかな滑りの間バネ38の圧縮は停止し、(Yp点)タッチ力は増加しない。この後緩やかな滑りに耐えられずに射出ノズル3が、ノズルタッチ部21の軸心と一致する方向に素早く滑る。すなわちノッキング現象を生じる。これによってタッチ力はYq点のように急激に低下する。その後タッチ力は再び上昇する。
【0029】
測定パターンは、このように色々な異常に応じて基準パターンからずれるので、ズルタッチ工程毎に測定パターンを得、これと基準パターンと比較して、基準パターンからのずれが許容範囲を超えていれば異常が発生していると判断することができる。測定パターンと基準パターンとの比較は色々な方法で比較することができるが、本実施の形態に係るノズルタッチ方法においては、例えば次のようにして異物の挟み込みの異常を検出する。予めコントローラ47において設定タッチ力Spの近傍のしきい値タッチ力Stを設定する。しきい値タッチ力Stは例えば設定タッチ力Spの90%のように決定する。基準パターンにおいて、しきい値タッチ力Stに達してから設定タッチ力Spに達するまでの時間Tsが得られる。ノズルタッチ工程の測定パターンにおいて、しきい値タッチ力Stに達してから設定タッチ力Spに達するまでの時間Txを得る。時間Txが基準パターンの時間Tsに比して所定時間だけ長くなっていれば、射出ノズル3とノズルタッチ部21との間に異物が挟まれていると判定し、コントローラ47は警報を発する。
【0030】
射出ノズル3とノズルタッチ部21の軸心の不整合の異常については例えば、次のように検出することができる。ノズルタッチ工程の測定パターンにおいて、タッチ力が急激に減少し、その後タッチ力が増加している場合、射出ノズル3とノズルタッチ部21の軸心が不整合であると判定し警報を発する。なお、タッチ力が急激に減少することをもって軸心の不整合であると判定してもよい。
【0031】
測定パターンと基準パターンとの比較は、上記の実施の形態に限定されることなく、色々な比較が可能である。例えばタッチ力の上昇中のカーブにおいて、符号Xqに見られるように、基準パターンからのずれが発生したら、何らかの異常が発生していると判定することができる。また、タッチ力の発生タイミングが基準パターンに比して早い場合にも、何らかの異常が発生していると判定することができる。
【0032】
本実施の形態では、タッチ力はバネの圧縮量あるいは復元力で発生するようになっているので、射出ノズル3の先端部がノズルタッチ部21に当接するときの衝撃が小さくなる利点があるが、電動モータに供給する電流値から電動モータの駆動力を得、これによってタッチ力を得ることもできる。あるいは歪みセンサ等からタッチ力を得ることもできる。射出ユニットを油圧シリンダユニットで駆動する油圧式の射出成形機の場合には、油圧の圧力センサによってタッチ力を監視することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 射出ユニット 3 射出ノズル
10 型締ユニット 14 固定側金型
20 スプルブッシュ 21 ノズルタッチ部
30 ノズルタッチ装置 34 ボールネジ
35 ボールナット 38 バネ
45 センサ棒 46 エンコーダ
47 コントローラ