【実施例】
【0068】
抗酸化及びフリーラジカル捕捉に対する本発明のサルビアノール酸Lの好適な効果はさらに、下記の具体的な実験データにより示される。
【0069】
別記されない限り、本発明で言及される単位%及び‰は重量比を表す。
【0070】
実施例1 サルビアノール酸Lの調製
タンジン煎じ片を、抽出器中に入れた。生薬の容積の4倍の水(0.45%重炭酸ナトリウムを含有する)を抽出器へ加えて、2時間煎じて、濾過した。薬物残渣は、薬物残渣の容積の3倍の水で1時間煎じ続けて、濾過して、濾液を組み合わせて、濃縮して、相対密度1.2(80℃)を有する抽出物を得た。最終エタノール含有量が70%(25℃)になるまで95%エタノールを抽出物に添加して、沈殿を実施して、12時間以上の間、静置させた。エタノールを減圧条件下で回収して、相対密度1.37(60℃)を有する抽出物を得た。
【0071】
上述の抽出物を水で溶解させた後、AB−8多孔質吸収性樹脂カラム上に適用させて、カラムを総容積の12倍の水で溶出させて、水溶出液を得た。水溶出液のpHは、塩酸でpH3.0に調整した。再び、酸性にした水溶出液をAB−8多孔質吸収性樹脂カラム上へ適用させた。pH値3.0を有する酸性水溶液を使用して、溶出液がほぼ無色になるまで、カラムを洗浄した。さらに、総容積の4倍の容積を有する95%エタノールを使用して、溶出させて、溶出液を得た後、溶出液を濃縮して、アルコール臭を伴わない粘度の高い抽出物を得た。
【0072】
得られた抽出物をメタノールで溶解させて、ここで200メッシュ〜300メッシュのクロマトグラフィシリカゲルを添加して、混合して、添加されるクロマトグラフィシリカゲルの重量は、抽出物の重量に等しい。混合サンプルを十分に充填されたシリカゲルカラム上に置き、カラムをクロロホルム:メタノール:ギ酸(容積比は85:15:3である)の移動相で溶出させる。TLCを使用して、全溶出プロセスをモニタリングして、特徴的に類似した溶出液を組み合わせて、サルビアノール酸Lを得た。
【0073】
高分解能質量分析法(QFT−ESI)を使用することによって、擬分子イオンピークは[M−H]
+m/z 537.1034であった。
【0074】
【表1】
【0075】
DEPTスペクトルは、分子中に1×CH
2、12×CH及び14×Cが存在することを示した。
【0076】
実施例2 サルビアノール酸Lの調製
タンジン及びサンシチ(Sanqi)の煎じ片を、抽出器中に入れた。生薬の容積の6倍の水(0.45%重炭酸ナトリウムを含有する)を抽出器へ加えて、3時間煎じて、濾過した。薬物残渣は、薬物残渣の容積の5倍の水で2時間煎じ続けて、濾過して、濾液を組み合わせて、濃縮して、相対密度1.25(80℃)を有する抽出物を得た。最終エタノール含有量が68%(25℃)になるまで95%エタノールを抽出物に添加して、沈殿を実施して、12時間以上の間、静置させた。エタノールを減圧条件下で回収して、相対密度1.32(60℃)を有する抽出物を得た。
【0077】
上述の抽出物を水で溶解させた後、AB−8多孔質吸収性樹脂カラム上に適用させて、カラムを総容積の12倍の水で溶出させて、水溶出液を得た。水溶出液のpHは、塩酸でpH2.5に調整した。再び、酸性にした水溶出液をAB−8多孔質吸収性樹脂カラム上へ適用させた。pH値3.0を有する酸性水溶液を使用して、溶出液がほぼ無色になるまで、カラムを洗浄した。さらに、総容積の5倍の95%エタノールを使用して、溶出させて、溶出液を得た後、溶出液を濃縮して、アルコール臭を伴わない粘度の高い抽出物を得た。
【0078】
得られた抽出物をメタノールで溶解させて、ここで200メッシュ〜300メッシュのクロマトグラフィシリカゲルを添加して、混合して、添加されるクロマトグラフィシリカゲルの重量は、抽出物の重量に等しい。混合サンプルを十分に充填されたシリカゲルカラム上に置き、カラムをクロロホルム:メタノール:ギ酸(容積比は85:15:3である)の移動相で溶出させる。TLCを使用して、全溶出プロセスをモニタリングして、特徴的に類似した溶出液を組み合わせて、サルビアノール酸Lを得た。
【0079】
高分解能質量分析法(QFT−ESI)を使用することによって、擬分子イオンピークは[M−H]
+m/z 537.1027であった。
【0080】
【表2】
【0081】
DEPTスペクトルは、分子中に1×CH
2、12×CH及び14×Cが存在することを示した。
【0082】
実施例3 サルビアノール酸Lの調製
タンジン煎じ片を抽出器に入れた。生薬の容積の6倍の85%エタノールを抽出器に加えて2回、各回毎に2時間煎じて、濾過した。エタノール抽出溶液は廃棄した。
【0083】
薬物残渣を、薬物残渣の容積の4倍の水(0.45%重炭酸ナトリウムを含有する)で2時間煎じて、濾過し、薬物残渣を、薬物残渣の容積の3倍の水で1時間、煎じ続けて、濾過した。濾液を組み合わせて、濃縮して、相対密度1.2(80℃)を有する抽出物を得た。最終エタノール含有量が70%(25℃)になるまで95%エタノールを抽出物に添加して、沈殿を実施して、12時間以上の間、静置させた。エタノールを減圧条件下で回収して、相対密度1.37(60℃)を有する抽出物を得た。
【0084】
上述で得られた抽出物を水で溶解させた後、AB−8多孔質吸収性樹脂カラム上に適用させて、カラムを総容積の12倍の水で溶出させて、水溶出液を得た。水溶出液のpHは、塩酸でpH3.0に調整した。再び、酸性にした水溶出液をAB−8多孔質吸収性樹脂カラム上へ適用させた。pH値3.0を有する酸性水溶液を使用して、溶出液がほぼ無色になるまで、カラムを洗浄した。さらに、総容積の4倍の95%エタノールを使用して、溶出させて、溶出液を得て、溶出液を濃縮して、アルコール臭を伴わない粘度の高い抽出物を得た。
【0085】
得られた抽出物をメタノールで溶解させて、ここで200メッシュ〜300メッシュのクロマトグラフィシリカゲルを添加して、混合して、添加されるクロマトグラフィシリカゲルの重量は、抽出物の重量に等しい。混合サンプルを十分に充填されたシリカゲルカラム上に置き、カラムをクロロホルム:メタノール:ギ酸(容積比は85:15:3である)の移動相で溶出させる。TLCを使用して、全溶出プロセスをモニタリングして、特徴的に類似した溶出液を組み合わせて、サルビアノール酸Lを得た。
【0086】
実施例4 サルビアノール酸Lの錠剤の調製
配合:
サルビアノール酸L 100g
微結晶性セルロース 50g
ラクトース 50g
デンプン 51g
ナトリウムカルボキシメチルデンプン 12g
5% PVP無水エタノール 適量
ステアリン酸マグネシウム 3g
【0087】
上記配合物を1000個の錠剤に調製した。
【0088】
調製プロセス:
1.造粒
サルビアノール酸L及び配合中に列挙した他の補助剤を、それぞれ100メッシュの篩に通して篩過した。配合投与量に従って、サルビアノール酸L、微結晶性セルロース、デンプン及びナトリウムカルボキシメチルデンプンを、同等に漸増する方法を用いることによって十分ブレンドした。適量の5% PVP無水エタノールを使用して、軟質材料を製造して、14メッシュの篩を用いて造粒して、50℃〜60℃で1時間乾燥させた。配合投与量に従ってステアリン酸マグネシウムを添加して、14メッシュの篩で顆粒を篩過した。
【0089】
2.錠剤の加圧成型
得られた顆粒を、特定のダイアモンド形状のパンチで加圧成型して、錠剤を調製した。
【0090】
実施例5 サルビアノール酸Lのカプセルの調製
配合:
サルビアノール酸 100g
デンプン 200g
ナトリウムカルボキシメチルデンプン 12g
5% PVP無水エタノール 適量
ステアリン酸マグネシウム 3g
【0091】
上記配合物を1000個のカプセルに調製した。
【0092】
調製プロセス:
1.造粒
サルビアノール酸L及び配合中に列挙した他の補助剤を、それぞれ100メッシュの篩に通して篩過した。配合投与量に従って、サルビアノール酸L、デンプン及びナトリウムカルボキシメチルデンプンを、同等に漸増する方法に従って十分ブレンドした。適量の5% PVP無水エタノールを使用して、軟質材料を製造して、14メッシュの篩を用いて造粒して、50℃〜60℃で1時間乾燥させた。配合投与量に従ってステアリン酸マグネシウムを添加して、14メッシュの篩で顆粒を篩過した。
【0093】
2.封入
得られた顆粒をカプセルへ充填した。
【0094】
実施例6 サルビアノール酸Lの注射剤の調製
配合:
サルビアノール酸L 100g
マンニトール 100g
注射用の水 2500mlまで
【0095】
上記配合物を1000ユニットに調製した。
【0096】
調製プロセス:
サルビアノール酸Lを取り出して、注射用の水1000mlで溶解させて、一様に攪拌した。マンニトールを、注射用の水500mlで溶解させて、上述のサルビアノール酸L溶液に添加して、一様に攪拌して、そこへ活性炭0.5gを添加して、不変温度で20分間攪拌して濾過した。濾液のpHを4.5〜5.0へ調整して、注射用の水で2500mlまで希釈して、滅菌濾過して、別個に充填して製品を得た。
【0097】
実施例7 サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末の調製
配合:
サルビアノール酸L 100g
マンニトール 100g
注射用の水 2000ml
【0098】
上記配合物を1000ユニットに調製した。
【0099】
調製プロセス:
サルビアノール酸L及びマンニトールを秤量して、攪拌することによって注射用の水1500mlで溶解させて、そこへ20分間攪拌することにより脱色のために活性炭0.5gを添加して、溶液を微小空洞フィルターフィルム(0.45μm)に通して濾過して、炭素を除去して、注射用の水で2000mlまで希釈した。得られた溶液を滅菌濾過して、別個に充填して、凍結乾燥させて、製品を得た。
【0100】
薬力学的実施例
薬力学的実施例1 フサルビアノール酸Lのフリーラジカル捕捉反応
フリーラジカルは、活性の高い物質の一種であると考えられている。フリーラジカルは、細胞の代謝プロセス中に順次生成され得る。それらの直接的又は間接的な酸化効果に起因して、フリーラジカルは、生理学的プロセス及び病理学的プロセスに広く関与することが示されている。過剰量のフリーラジカルの存在下で、フリーラジカルは常に、酸化により身体中の高分子(例えば、核酸、タンパク質、糖類及び脂質等)を攻撃する。酸化によるこれらの物質の変性(架橋及び破壊)により、フリーラジカルは細胞構造及び機能に損傷を引き起こして、身体の組織破壊及び変性変化をもたらす。多くの研究により示されているように、フリーラジカルは、多数の疾患の病理学的プロセスに寄与しており、心臓血管疾患、幾つかのがん、老人性白内障及び黄斑変性症、幾つかの炎症及び多様なタイプのニューロン疾患のような多くの疾患を引き起こす。
【0101】
化学構造分析は、サルビアノール酸化合物がフェノール性ヒドロキシル基の供与体であり、それらの抗酸化活性に対する構造基盤を有することを示す。この研究では、サルビアノール酸Lのフリーラジカル捕捉活性を観察するのに、1,1−ジフェニル−2−ピクリル−ヒドラジル(DPPH)フリーラジカル捕捉反応モデルを使用している。
【0102】
1.試薬及び装置
95%を超える純度を有するサルビアノール酸Lは、Tianjin Tasly Group Academyにより提供され、実施例1の方法に従って調製した。
【0103】
ビタミンC及びDPPHは、SIGMA Inc.から購入した。
【0104】
紫外線分光光度計(UV−1800)は、Beijing Rayleigh Analytical Instrument Co., Ltd.から購入した。
【0105】
2.実験方法
総反応容積は2mlであった。80%メタノール(v/v)中の種々の濃度でのサンプル溶液1mlを、100μMのDPPHメタノール溶液に添加して、一様に混合して、暗所で25℃で20分間溶液を反応させた。反応溶液の吸光度を517nmで測定した。この研究では、ビタミンCを陽性対照とみなした。フリーラジカル捕捉率を下記方程式に従って算出した:
フリーラジカル捕捉率(%)=[1−A
サンプル/A
対照)/A
対照]×100%
(式中、A
サンプルは、試験サンプルの吸光度を意味し、A
対照は、ブランク対照の吸光度を意味する)。
【0106】
3.実験結果
表3及び
図9は、種々の濃度でのサルビアノール酸L及びビタミンCのDPPHフリーラジカル捕捉率を示す。サルビアノール酸Lは、ビタミンCのフリーラジカル捕捉率よりもはるかに高いフリーラジカル捕捉率を有していた。
【0107】
【表3】
【0108】
薬力学的実施例2 サルビアノール酸Lの還元力の測定
或る程度までは、予防的抗酸化に関する潜在能力は、薬物の還元力により表わされる。本発明のサルビアノール酸Lの還元力に関して研究が行われた。
【0109】
1.試薬及び装置
95%を超える純度を有するサルビアノール酸Lは、Tianjin Tasly Group Academyにより提供され、実施例1の方法に従って調製した。
【0110】
分析上純粋なフェリシアン化カリウムは、Tianjin No.1 Chemical Reagent Factoryから購入した。
【0111】
分析上純粋なトリクロロ酢酸は、Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.から購入した。
【0112】
分析上純粋な塩化第二鉄は、Tianjin Fengchuan Chemical Reagent Science and Technology Co., Ltd.から購入した。
【0113】
ビタミンCは、SIGMA Inc.から購入した。
【0114】
紫外線分光光度計(UV−1800)は、Beijing Rayleigh Analytical Instrument Co., Ltd.から購入した。
【0115】
冷却遠心機(Z323K)は、HEMMLE(ドイツ)から購入した。
【0116】
2.実験方法
種々の濃度のサルビアノール酸L及び1.0%フェリシアン化カリウム溶液を含有する200mM リン酸緩衝液(pH6.8)0.5mlを、それぞれ吸い取って、水浴(50℃)で20分間加熱した後に氷浴上で冷却した。トリクロロ酢酸溶液(10%)0.5mlを添加して、1000g/分で10分間遠心分離した。得られた上清1.0mlを採取して、そこへ蒸留水1.0ml及び塩化第二鉄溶液(0.1%)0.2mlを添加して、さらに10分間静置させて、吸光度を700nmで測定した。同時に、ブランク実験を実行した。ビタミンCは、強力な還元物質であり、この研究において陽性対照として役割を果たす。サンプルの還元力は、試験サンプルの吸光度から、ブランク対照の吸光度を差し引くことにより表わされる。したがって、吸光度が高いほど、還元力が強力であることを意味する。
【0117】
3.実験結果
図10に示されるように、両方の物質が濃度依存的な吸光度を有し、サルビアノール酸Lの還元力は、ビタミンCの還元力よりもはるかに強力であった。
【0118】
下記薬力学的実験例3〜5で使用されるNo.1抽出物及びNo.2抽出物の成分の決定並びに調製
実験で使用される材料は全て、Tianjin Tasly Group Academy TCM Instituteにより提供された。No.1抽出物の含有量は、生薬 6.825g/g(No.1抽出物)であり、No.2抽出物は、生薬 4.162g/g(No.2抽出物)であった。
【0119】
調製プロセス
No.1抽出物の調製プロセス:
89.8wt%の丹参(中国名:タンジン)及び9.6wt%のラディックス・ノトギンセング(中国名:サンシチ)の混合物を水(0.45%重炭酸ナトリウムを含有する)で2回(5倍の水で2時間、また4倍の水で1時間)、順次抽出した。95%エタノール(v/v)を使用して、還流を用いて水抽出溶液を濃縮した。エタノール抽出溶液中の最終エタノール含有量が70%になるまで、エタノール沈殿を実施した。さらに一晩静置した後、上清を採取して、濃縮して、No.1抽出物を得た。
【0120】
No.2抽出物の調製プロセス:
89.8wt%の丹参(中国名:タンジン)及び9.6wt%のラディックス・ノトギンセング(中国名:サンシチ)の混合物を水で2回(5倍の水で2時間、また4倍の水で1時間)、順次抽出した。95%エタノール(v/v)を使用して、還流を用いて水抽出溶液を濃縮した。エタノール抽出溶液中の最終エタノール含有量が70%になるまで、エタノール沈殿を実施した。さらに一晩静置した後、上清を採取して、濃縮して、No.2抽出物を得た。
【0121】
サルビアノール酸Lを本発明の実施例1の方法により調製した。
【0122】
検出方法
分析条件は下記の通りであった:Waters製の2695 HPLC、Agilent製のZorbax SB−C18(4.6mm×250mm、5μm)クロマトグラフィカラム、0.02%リン酸水溶液を移動相Aとして使用し、0.02%リン酸を含有する80%(v/v)アセトニトリル溶液を移動相Bとして使用し、勾配溶出は、下記表4に従って実施し、流速は1ml/分であり、検出波長は280nmであり、カラム温度は30℃であり、記録時間は50分であった。
【0123】
【表4】
【0124】
No.1抽出物及びNo.2抽出物中の各成分の含有量を、下記表5及び表6に提示した。
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
薬力学的実施例3 単離ラット胸部大動脈に対するサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末の効果
実験材料
1.試験材料及び試薬:サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末は、Tianjin Tasly Group Academy TCM Instituteにより提供された。クエン酸ノルエピネフリン(NA)及びアセチルコリン(ACH)はSigma Inc.から購入して、バッチ番号は、1377511及び44908131であった。クレブス溶液を調製するための原材料には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二水素カリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グルコース及び塩化カルシウムが含まれていた。
【0128】
2.主な装置:MedLab(登録商標)単離組織トラフ及びMedlab−U/8C獲得システムは、Nanjing Medease Science and Technology Co., Ltd.により製造された。他の装置としては、張力変換器、デジタル制御超恒温槽SC−15、化学天秤、浄水器及び酸素ボンベが挙げられた。
【0129】
3.実験動物:適正な体重のSDラット(雄又は雌)は、証明書番号SCXK(Jing)2007−0001とともにBeijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.から提供された。ラットは全て、動物給餌室で室温20℃〜25℃でラット特別食(Beijing Keaoxieli Diet CO., Ltd.により製造)及び水道水が与えられ、12時間照射した。
【0130】
実験方法
1.投与用量の設計
サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末の用量は、他のサルビアノール酸の薬力学的実験に基づいて確認された。この研究では、用量は、0.1mg/mlであった。
クレブス溶液(mol/L):NaCl(120)、NaHCO
3(25)、KH
2PO
4(1.2)、MgSO
4(1.2)、KCl(4.5)、CaCl
2(1.25)、C
6H
12O
6(グルコース11.1)。
KCl:各時点でKCl(3mol/L)100μlを添加した(最終濃度は60mmol/L)。
NA:10
-4mol/L(最終濃度は10
-6mol/L)は、総計4つの勾配で希釈した。
ACH:10
-3mol/L(最終濃度は10
-5mol/L)は、総計4つの勾配で希釈した。
【0131】
2.グループ分け
ラットには、その日に薬物の調製に従って、無作為に群に配置した自由食を与えた。各群には8匹のラットが存在し、各ラットから入手可能な4つの血管輪データが存在することを確認した。この研究では、ラットを3つの群:正常群、低酸素モデル群及びサルビアノール酸L+低酸素モデル群に分けた。
【0132】
3.実験方法
SDラットには、その日に薬物の調製に従って、無作為に群に配置した自由食を与えた。各群には8匹のラットが存在した。ラットを頸椎の脱臼により屠殺して、迅速に開胸して、胸部大動脈を取り出した。0℃で、胸部大動脈を、酸素を吹き込んだクレブス溶液へ入れて、ここで結合組織を除去して、胸部大動脈を、直径約2mmを有する血管輪にして、血管輪を、一定温度37℃で分離浴トラフ中で慎重に付した。酸素をトラフへ吹き込み、そこへ張力変換器及びマルチチャネル生理学的記録計を接続させた。基礎張力は2gであり、血管輪は45min
-1時間平衡化させて、クレブス溶液を15分間隔で交換した。平衡化させた後、血管輪を塩化カリウム溶液で20分間前処理して、溶出させた。15分の平衡化後、血管輪を再び塩化カリウム溶液でもう1回前処理して、生理学的に極値の血管収縮を達成した。次に、種々の勾配レベル(10
-7mol/L、10
-6mol/L、10
-5mol/L、10
-4mol/L)を踏まえてNAを添加して、血管収縮を観察した。ピーク値に到達すると、値は定常期で安定化した。続いて、種々の勾配レベル(10
-5mol/L、10
-4mol/L、10
-3mol/L、10
-2mol/L)を踏まえてACHを添加して、血管拡張を観察した。NA及びACHを添加するプロセス中は、クレブス溶液は交換することができない。
【0133】
低酸素モデル群では、酸素の供給は、塩化カリウム溶液により2回前処理した後に、20分間懸濁した。同時に、サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末又はクレブス溶液(等量で)を添加して、一緒に浸して、その後種々の勾配レベルを踏まえてNA及びACHを添加した。クレブス溶液は、低酸素の始まりから、ACHの最終濃度勾配の添加の終わりまで交換することができない。
【0134】
結果は、t検定を使用することにより統計学的に解析した。
【0135】
実験結果
1.血管収縮に対する効果
結果で示されるように、サルビアノール酸Lの乾燥粉末は、本実験条件下では正常群と比較して血管収縮に対して有意な効果が見られず、血管−張力曲線の明らかな右側シフトが見られた。データは表7に見られた。
【0136】
【表7】
【0137】
血管収縮に対するサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末の効果は
図11に見られた。
【0138】
2.血管拡張に対する効果
この結果で示されるように、正常群と比較して、血管拡張は、本実験条件下では低酸素モデル群における4つのACH勾配レベルで明らかに減衰した(P<0.01)のに対して、サルビアノール酸L群及び正常群において有意な差は見られなかった。低酸素モデル群と比較して、血管拡張は、サルビアノール酸L群における3つのACH勾配レベルで明らかに増強した(P<0.05)。このことにより、サルビアノール酸L群が、低酸素誘導性血管拡張の機能不全を有意に改善させることができることが示唆された。データは表8に見られた。
【0139】
【表8】
【0140】
血管拡張に対するサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末の効果は
図12に見られた。
【0141】
実験的な結論:
サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末は、或る程度はNAの血管収縮曲線の右側シフトを引き起こすことに対して効果があったが、有意な差は観察されなかった。20分間の低酸素は、モデル群においてACHにより引き起こされる血管輪の勾配拡張において有意な低下を引き起こす可能性があり(P<0.01)、拡張機能障害が発生した。対比して、サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末は、ACHの3つの勾配レベル(10
-5mol/L、10
-4mol/L、10
-3mol/L)で無酸素血管輪の拡張において有意な増強を示した(p<0.05)。サルビアノール酸Lが、低酸素により引き起こされる血管拡張機能障害に対して有意な改善効果を有することが確認された。
【0142】
注意点に関する論述:
1.クレブス溶液を調製する際、混濁を防止するために他の物質を全て添加するまで、塩化カルシウム及びグルコースは添加しなかった。クレブス溶液は綿状沈殿を回避するため、長時間、室温で維持することができない。最終的に、クレブス溶液は要時調製した。
【0143】
2.心臓大動脈は、できる限り早く、氷浴中に取り出して、装置により引き起こされる血管輪への傷害を低減させるべきである。心臓大動脈は、血管活性の低減を防止する目的で、血管アーチに十分に密接して取り出されるべきである。
【0144】
3.酸素は、小泡の形態で排気され、特大の泡が、張力変換器に影響を与える場合があり、データの歪みをもたらすため、できるだけ小さくなければならない。
【0145】
薬力学的実施例4 in vitroでの神経細胞に対するサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末及びその抽出物の保護効果
実験材料
1.主な装置:スーパークリーンベンチは、Antai Cleaning Equipment Inc.により製造され、定温CO
2インキュベータは、Heraeus(ドイツ)から購入し、ELISA読取計は、BIO-RAD Inc.(米国)から購入し、平坦振とう台は、Jiangsu Guangming Experimental Apparatus Manufacturerで購入し、倒立生物顕微鏡は、オリンパス株式会社(日本)から購入した。
【0146】
2.主な試薬:DMEM高グルコース培地及びDMEMグルコース非含有培地は、GIBCOにより調製され、トリプシンは、SIGMAから購入し、ウシ胎児血清は、PAAから購入し、MTT及びDMSOは、Sigmaから購入し、LDH試験キットは、Nanjing Jiangcheng Bioengineering Instituteから購入した。
【0147】
3.使い捨て材料:96ウェル細胞培養マイクロプレートは、CORNINGにより調製された。
4.細胞染色:PC12。
【0148】
実験方法:
1.MTT法
a.MTTを、各ウェル中に20μlで96ウェルマイクロプレートに添加して、インキュベータ中で4時間反応させた。
b.上清を廃棄して、続いて各ウェル中でDMSO 150μlを添加して、平坦振とう台上で10分間振とうさせた。
c.各ウェルの吸光度を波長570nmでELISA読取計により測定して、細胞生存率を算出した。
細胞生存率%=(薬物投与群のOD値/陰性対照群のOD値)×100%
【0149】
2.LDH活性の測定
測定実験は、Nanjing Jiangcheng Bioengineering Instituteにより提供されるLDH試験キットの仕様に従って実行した。詳細な工程は表9に提示した。
【0150】
【表9】
【0151】
LDH活性(U/L)=(OD
U−OD
C)/(OD
S−OD
B)×C
S×N×1000
(式中、OD
Uは、試験サンプルの吸光度を表し、OD
Cは、対照サンプルの吸光度を表し、OD
Bは、ブランクの吸光度を表し、OD
Sは、標準溶液の吸光度を表し、C
Sは、2mmol/Lの標準濃度を表し、Nは、測定前のサンプルの希釈倍数を表す)。
【0152】
実験結果:
1.過酸化水素で損傷させたモデルの確立
a.良好な条件での指数増殖期にあるPC12細胞を、PBSで2回洗浄した後に、0.25%トリプシン消化溶液を添加して、37℃で約1分間消化を実施した。この反応は、血清含有培養培地の添加により終了させて、遠心分離して再懸濁させて、続いて細胞を計数して、2×10
4細胞/ml〜4×10
4細胞/mlの細胞密度を有する懸濁液を調製した。
b.得られた細胞懸濁液を、各ウェル中に180μlで96ウェルマイクロプレートへ接種して(n=3)、定温CO
2インキュベータ中で37℃で24時間インキュベートした。
c.グループ分け及び処理:ブランク対照群(PBS)、溶媒対照群(DMSO)、モデル群(H
2O
2)及び陽性対照群(エダラボン)の4つの群が存在した。
ブランク対照群:PBSの添加のみ。
溶媒対照群:0.1%DMSOの添加。
モデル群:過酸化水素(H
2O
2)の濃度はそれぞれ、0.25mM、0.5mM及び1mMあり、反応時間は1時間であった。
陽性対照群:エダラボン(2μg/ml)を陽性薬物として添加して、続いて6時間前処理して、そこへ0.5mM過酸化水素を添加して、1時間損傷させて、新たに調製したDMEM+10%FBS培養培地(ウェル1つ当たり200μl)と交換した。
d.細胞活性をMTT法により測定した。
【0153】
【表10】
【0154】
表10で示されるように、0.5mM H
2O
2で1時間処理した後に、PC12細胞生存率は40%であり、阻害率は60%であった。過酸化水素で損傷させたモデルは、0.5mM H
2O
2で1時間処理したPC12細胞であった。
【0155】
2.酸素−グルコース欠乏(OGD)モデルの確立
a.良好な条件での指数増殖期にあるPC12細胞を、PBSで2回洗浄した後に、0.25%トリプシン消化溶液を添加して、37℃で約1分間消化を実施した。この反応は、血清含有培養培地の添加により終了させて、遠心分離して再懸濁させて、続いて細胞を計数して、2×10
4細胞/ml〜4×10
4細胞/mlの細胞密度を有する懸濁液を調製した。
b.得られた細胞懸濁液を、各ウェル中に180μlで96ウェルマイクロプレートへ接種して(n=3)、定温CO
2インキュベータ中で37℃で24時間インキュベートした。
c.グループ分け及び処理:ブランク対照群(酸素正常状態+0.1%DMSO)、モデル群(OGD+0.1%DMSO、酸素−グルコース欠乏)及び陽性対照群(エダラボン)の3つの群が存在した。
モデル群:培養マイクロプレート中の細胞を、グルコース非含有DMEM培地を用いて培養し、これを低酸素チャンバ中に入れて、O
2%が2.6未満になったら0.5時間、時間を数え始めて、続いて日常的なインキュベータへ移した。インキュベーションの期間後に、測定を実行した。
陽性対照群:エダラボン(2μg/ml)を陽性薬物として使用した。薬物を添加して、6時間前処理した後、グルコース非含有培地(ウェル1つ当たり180μl)と交換した。薬物を再び添加して、低酸素チャンバ中に入れて、O
2%が2.6未満になったら0.5時間、時間を数え始めて、続いて日常的なインキュベータへ移した。インキュベーションの期間後に、測定を実行した。
d.細胞活性はMTT法により測定した。
【0156】
【表11】
【0157】
表11に示されるように、酸素−グルコース欠乏で損傷させたPC12細胞の生存率は、ちょうど42%であり、阻害率は58%であった。したがって、この研究での酸素−グルコース欠乏モデルは、細胞を培養するように選択されたグルコース非含有DMEMであり、これを低酸素チャンバ中に入れて、O
2%が2.6未満になったら0.5時間、時間を数え始めて、続いて日常的なインキュベータへ移した。インキュベーションの期間後に、測定を実行した。
【0158】
3.H
2O
2で損傷させたPC12細胞の細胞生存率に対する薬物の効果
a.良好な条件での指数増殖期にあるPC12細胞を、PBSで2回洗浄した後に、0.25%トリプシン消化溶液を添加して、37℃で約1分間消化を実施した。この反応は、血清含有培養培地の添加により終了させて、遠心分離して再懸濁させて、続いて細胞を計数して、2×10
4細胞/ml〜4×10
4細胞/mlの細胞密度を有する懸濁液を調製した。
b.得られた細胞懸濁液を、各ウェル中に180μlで96ウェルマイクロプレートへ接種して(n=3)、定温CO
2インキュベータ中で37℃で24時間インキュベートした。
c.グループ分け及び処理:ブランク対照群(PBS)、溶媒対照群(DMSO又は酢酸エチル)、モデル群(H
2O
2)、陽性対照群(エダラボン)及び薬物処理群の5つの群が存在した。
モデル群:0.5mM過酸化水素(H
2O
2)を使用して、1時間処理した。
陽性対照群:陽性薬物として使用されるエダラボン(2μg/ml)を細胞に添加して、6時間前処理して、そこへ0.5mM過酸化水素を添加して、1時間損傷させて、新たに調製したDMEM+10%FBS培地と交換した。
薬物処理群:細胞を培養マイクロプレートへ接種して、まず種々の濃度での種々の試験薬物を添加して、ウェル1つ当たり20μlで6時間前処理して、そこへ0.5mM H
2O
2を添加して、1時間損傷させて、続いて新たに調製したDMEM+10%FBS培養培地と交換した。
d.LDH活性の測定のために、上清を収集した(ウェル1つ当たり20μl)。
e.細胞マイクロプレートにおける細胞の活性をMTT法により測定した。
【0159】
【表12】
【0160】
薬物濃度はそれぞれ、0.1%、0.01%及び0.001%でDMSOを用いて調製し、これらは、相当する濃度を有する溶媒対照群と比較するものとする。ここで、薬物処理群はモデル群(0.5mM H
2O
2+EtOAc)と比較し、モデル群(H
2O
2+EtOAc)は溶媒対照群(EtOAc)と比較した。
【0161】
【表13】
【0162】
ここで、薬物処理群はモデル群(0.5mM H
2O
2+EtOAc)と比較した一方で、モデル群(H
2O
2+EtOAc)は溶媒対照群(EtOAc)と比較した。
【0163】
4.酸素−グルコース欠乏のPC12細胞の生存率に対する薬物の効果
a.良好な条件での指数増殖期にあるPC12細胞を、PBSで2回洗浄した後に、0.25%トリプシン消化溶液を添加して、37℃で約1分間消化を実施した。この反応は、血清含有培養培地の添加により終了させて、遠心分離して再懸濁させて、続いて細胞を計数して、2×10
4細胞/ml〜4×10
4細胞/mlの細胞密度を有する懸濁液を調製した。
b.得られた細胞懸濁液を、各ウェル中に180μlで96ウェルマイクロプレートへ接種して(n=3)、定温CO
2インキュベータ中で37℃で24時間インキュベートした。
c.グループ分け及び処理:ブランク対照群(酸素正常状態+0.1%DMSO)、モデル群(OGD+DMSO、酸素−グルコース欠乏)、陽性対照群(エダラボン)及び薬物処理群の4つの群が存在した。
モデル群:マイクロプレート中の細胞用の培養培地を、グルコース非含有DMEMへ変更し、低酸素チャンバ中に入れて、O
2%が2.6未満になったら0.5時間、時間を数え始めて、続いて日常的なインキュベータへ移して、一晩培養した。
陽性対照群:エダラボン(2μg/ml)を陽性薬物として使用した。薬物を添加して、6時間前処理した後、培養培地を、グルコース非含有DMEM培地(ウェル1つ当たり180μl)と交換した。薬物を再び添加して、低酸素チャンバ中に入れて、O
2%が2.6未満になったら0.5時間、時間を数え始めて、続いて日常的なインキュベータへ移して、一晩培養した。
薬物処理群:種々の濃度での薬物を添加して、6時間前処理して、培養培地をグルコース非含有DMEM培地(ウェル1つ当たり180μl)へ変更した。薬物を再び添加して、低酸素チャンバ中に入れて、O
2%が2.6未満になったら0.5時間、時間を数え始めて、続いて日常的なインキュベータへ移して、一晩培養した。
d.翌日に、得られた上清をウェル1つ当たり20μl収集して、これをLDH活性の測定に使用した。
e.細胞の活性をMTT法により測定した。
【0164】
【表14】
【0165】
ここで、薬物処理群をブランク対照群(OGD+EtOAc)と比較し、モデル群(OGD+EtOAc)をブランク対照群(酸素正常状態+DMSO)と比較した。
【0166】
f.LDH活性
【0167】
【表15】
【0168】
ここで、薬物処理群をブランク対照群(OGD+EtOAc)と比較した一方で、モデル群(OGD+EtOAc)をブランク対照群(酸素正常状態+EtOAc)と比較した。
【0169】
結論:
実験の結果:0.02μg/mlの投与量でサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末を用いて処理した場合、H
2O
2で損傷させたPC12細胞の細胞生存率は47%(P<0.05)であったのに対して、0.2μg/mlの投与量では、LDH活性は474(P<0.05)であった。0.02μg/ml、0.2μg/ml及び2μg/mlの投与量でのサルビアノール酸LのNo.1抽出物に関しては、LDH活性はそれぞれ、483(P<0.01)、416(P<0.01)及び465(P<0.05)であったのに対して、0.2μg/ml及び2μg/mlの投与量でのサルビアノール酸LのNo.2抽出物に関しては、LDH活性はそれぞれ、407(P<0.01)及び488(P<0.01)であり、モデル群と比較して、ともにLDH活性を低減させる効果を有していた。
【0170】
0.02μg/ml及び0.2μg/mlの投与量でサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末を用いて処理した場合、OGD細胞の細胞生存率はそれぞれ、48%(P<0.01)及び37%(P<0.05)であった。0.2μg/ml及び2μg/mlの投与量でのサルビアノール酸LのNo.1抽出物に関して、生存率はそれぞれ、40%(P<0.01)及び42%(P<0.01)であったのに対して、0.02μg/ml、0.2μg/ml及び2μg/mlの投与量でのサルビアノール酸LのNo.2抽出物については、生存率はそれぞれ、47%(P<0.01)、47%(P<0.01)及び41%(P<0.05)であった。2μg/mlの投与量でサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末を用いて処理した場合、LDH活性は40(P<0.05)であった。さらに、2μg/mlの投与量でのサルビアノール酸LのNo.1抽出物に関して、LDH活性は31(P<0.01)であったのに対して、0.2μg/mlの投与量でのサルビアノール酸LのNo.2抽出物については、LDH活性は31(P<0.05)であった。
【0171】
実験で示されるように、サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末は、OGD又はH
2O
2により引き起こされるin vitroでの神経障害に対して有意な改善効果を有していただけでなく、細胞の生存率も増加させた。したがって、サルビアノール酸Lは、酸素欠乏、グルコース欠乏及び過酸化の条件において神経細胞を保護する機能を有することが確認された。
【0172】
薬力学的実施例5 ラットにおける実験的急性心筋虚血に対するサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末及び抽出物の保護効果
実験材料:
1.試験材料及び試薬:ピツイトリン(Pit)注射剤は、Nanjing Xinbai Pharmaceutical Co., Ltd.により製造され、バッチ番号は070302であった。生理食塩水は、Tianjin Tian’an Pharmaceutical Co., Ltd.により製造され、バッチ番号は200605241(仕様:500ml/瓶)であった。
【0173】
2.主な装置:MedLab(登録商標)8チャネル生理学的記録計は、Nanjing Medease Science and Technology Co., Ltd.により製造された。
【0174】
3.動物:SDラット(適正な体重の雄又は雌)は、証明書番号SCXK(Jing)2007−0001とともにBeijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.により提供された。ラットには全て、20℃〜25℃の室温での動物給餌室中でラット特別食(Beijing Keaoxieli Diet Co., Ltd.により製造)及び水道水が与えられ、12時間照射した。
【0175】
実験方法
1.投与用量の設計
No.1抽出物の含有量は、生薬6.825g/gであり、No.2抽出物の含有量は、生薬4.162g/gであった。
【0176】
No.1抽出物及びNo.2抽出物の両方に関して、高用量及び低用量:それぞれ生薬1.086g/kg及び生薬0.543g/kgの2つの群が存在した。生薬の用量変換に従って、高用量No.1抽出物中のサルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末の投与用量は4.67mg/kgであり、低用量群では2.33mg/kgであった。サルビアノール酸Lは、No.2抽出物では見出されなかった。
【0177】
サルビアノール酸の凍結乾燥粉末の投与用量は10.0mg/kg及び5.0mg/kgであった。
【0178】
2.グループ分け
2.1 動物のスクリーニング
正式の実験の前に、ラットに尾側静脈を介してピツイトリン(Pit)(1U/kg)を注射した。正常ECG及び注射の5分後のECGを記録して、J点の上昇及びT波異常を観察した。注射前に異常ECGが見られた動物又はPitに対して非感受性である動物は拒絶した。
【0179】
2.2 動物のグループ分け
望ましいラットを7群に分けた:(1)モデル対照群、(2)タンジンのNo.1抽出物低用量群(A群)、(3)タンジンのNo.1抽出物高用量群(B群)、(4)タンジンのNo.2抽出物低用量群(C群)、(5)タンジンのNo.2抽出物高用量群(D群)、(6)サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末低用量群(E群)及び(7)サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末高用量群(F群)。
【0180】
3.実験方法
SDラット(半分が雄で、半分が雌)を、無作為に群に分けた(各群中に動物8匹)。処理群中のラットを、種々のサンプルの水性懸濁液を毎日投与したのに対して、モデル対照群中のラットは、等量の生理食塩水を投与した。動物は全て、7日間連続して投与された。最終投与の40分後に、ラットに麻酔して、リードII正常ECGを記録するためのデバイスに接続した。ピツイトリン(Pit)を、尾側静脈を介して1U/kg(体重)の投与量で一定速度で約10秒以内に注射した。ECG変化を、投与の0秒後、5秒後、10秒後、15秒後、30秒後、45秒後、1分後、2分後、3分後、4分後、5分後、10分後及び15分後に記録した。各群のPitの注射前と注射後との間の差、並びに処理群とモデル対照群との差を比較して、J点及びT波の変化を分析して、データをt検定により解析した。
【0181】
実験結果
1.J点に対する効果
結果で示されるように、モデル対照群と比較して、F群(サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末高用量群)におけるECGのJ点の上昇度は、ピツイトリンにより引き起こされる急性心筋虚血において15秒、30秒及び45秒でより小さく、その差は、本実験条件下では統計学的有意性を有していた(P<0.05)。モデル対照群と比較して、B群(タンジンのNo.1抽出物高用量群)におけるECGのJ点の上昇度は15秒でより小さく、その差は統計学的有意性を有していた(P<0.05)。しかしながら、モデル対照群と比較して、他の群は、各時点で有意な差を示さなかった。データは表16に見られた。
【0182】
【表16】
【0183】
2.T波に対する効果
結果で示されるように、モデル対照群と比較して、15秒及び30秒でのF群(サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末高用量群)のECGのT波の上昇度はより小さく、その差は、本実験条件下では統計学的有意性を有していた(P<0.05)。同様に、モデル対照群と比較して、15秒でのB群(タンジンのNo.1抽出物高用量群)におけるECGのT波の上昇度はより小さく、その差は統計学的有意性を有していた(P<0.05)。しかしながら、モデル対照群と比較して、他の群は、各時点で有意な差を示さなかった。データは表17に見られた。
【0184】
【表17】
【0185】
結論:
モデル対照群と比較して、F群(サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末高用量群)におけるECGのJ点及びT波の上昇度は、15秒及び30秒でより小さく、その差は統計学的有意性を有していた(P<0.05)。
【0186】
モデル対照群と比較して、15秒でのJ点及びT波はともに、B群(タンジンのNo.1抽出物高用量群)において有意に減少する(P<0.05)。
【0187】
モデル対照群と比較して、他の群は、各時点でJ点及びT波において有意な減少を示さなかった。
【0188】
結果で示されるように、この研究の下では、サルビアノール酸Lの凍結乾燥粉末(10mg/kg)及び4.67mg/kgの濃度でのサルビアノール酸Lを含有するNo.1抽出物は、抗急性心筋虚血の効果を有していたが、サルビアノール酸Lを含有しないNo.2抽出物における実験的投与量の下では、抗急性心筋虚血の効果は観察されなかった。
【0189】
注意点に関する論述:
1.J点の定義:QRS波群の終点とSTセグメントとの組合せ点。
【0190】
2.ピツイトリンの冠状血管に対する収縮効果に起因して、ピツイトリンの静脈内注射は、正常ラットにおいて急性心筋虚血を誘導することができ、ECGにおけるJ点及びT波の両方の明らかな上昇をもたらす。薬物処理群においてJ点のシフトが有意に回復し、T波は、試験薬物が投与された後に徐々に正常レベルへ減少しており、これにより、薬物が、冠状血管に対するピツイトリンの収縮効果により誘導される急性心筋虚血に対して拮抗作用を有することが示唆された。I期異常(0秒〜45秒以内でピツイトリンにより誘導される)に対してもII期異常(45秒〜15分以内でピツイトリンにより誘導される)に対しても治療上の効果を有する薬物は通常、抗心筋虚血の効果を有すると考えられた。
【0191】
3.実験中、同じバッチ番号のピツイトリンを使用して、実験結果に対する薬物の効力単位の影響を回避すべきである。ピツイトリンは、2時間を超える間隔で注射して、薬物耐性を回避すべきである。好ましくは、選択した動物を1日おきに使用する。