特許第5755714号(P5755714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5755714アクリル系膜およびこれから製造されるアクリル系裏打ちシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755714
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】アクリル系膜およびこれから製造されるアクリル系裏打ちシート
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20150709BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20150709BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150709BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20150709BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20150709BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20150709BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20150709BHJP
【FI】
   C08J5/18CEY
   C08L51/00
   C08K3/00
   C08F2/44
   C08F265/06
   B32B27/30 A
   H01L31/04 500
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-258687(P2013-258687)
(22)【出願日】2013年12月13日
(62)【分割の表示】特願2009-282415(P2009-282415)の分割
【原出願日】2009年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-51681(P2014-51681A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2013年12月13日
(31)【優先権主張番号】61/204,694
(32)【優先日】2009年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイラン・クオ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・オリビエ・ソナッティ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・リー・ポスト
(72)【発明者】
【氏名】デービッド・エルマー・ビエッティ
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−114595(JP,A)
【文献】 特開2002−331619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/00
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系膜であって、
当該アクリル系膜は、当該膜の重量を基準にして70重量%〜99重量%の多段階アクリル系ポリマー、および当該膜の重量を基準にして1重量%〜20重量%の顔料を含み;
前記多段階アクリル系ポリマーは、当該多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%の第1ポリマー、および当該多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%の第2ポリマーを含み;
前記第1ポリマーは、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%含み;
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜97重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するモノマーを当該第2ポリマーの重量を基準にして重量%〜30重量%含む;
アクリル系膜。
【請求項2】
アクリル系膜を形成する方法であって、
膜の重量を基準にして70重量%〜99重量%の多段階アクリル系ポリマー、および前記膜の重量を基準にして1重量%〜20重量%の顔料を含む組成物を形成する工程であって、
前記多段階アクリル系ポリマーは、当該多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%の第1ポリマー、および当該多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%の第2ポリマーを含み、
前記第1ポリマーは、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%含み、
前記第2ポリマーは、前記第1ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜97重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するモノマーを当該第2ポリマーの重量を基準にして重量%〜30重量%含む、工程;並びに
カレンダー成形またはキャスト膜形成によって、前記組成物から前記アクリル系膜を形成する工程;
を含むアクリル系膜を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル系膜に関する。より詳細には、本発明はアクリル系膜であって、当該膜は、膜の重量を基準にして70重量%〜99重量%の多段階(multi−stage)アクリル系ポリマー、および膜の重量を基準にして1重量%〜20重量%の顔料を含み;前記多段階アクリル系ポリマーは、多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%の第1ポリマー、および多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%の第2ポリマーを含み;前記第1ポリマーは、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%含み;前記第2ポリマーは第1ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するモノマーを第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜30重量%含む;アクリル系膜に関する。本発明はアクリル系膜を形成する方法、アクリル系膜およびポリエステル層を含む太陽電池アレイ(photovoltaic array)のための裏打ちシート(backsheet)、並びに裏打ちシートを形成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2008/0264484号は、架橋可能な非晶質フルオロポリマーを含む層を含む太陽電池モジュールのための裏打ち保護シートを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0264484号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
代わりのポリマー組成物、特により低い原価基準および容易な加工をもたらす適用において充分に機能する物質を含む層を含む太陽電池アレイのための裏打ちシートに対する必要性が存在している。本発明のアクリル系膜は容易な形成を可能にし、望ましい日射反射率および低い収縮率を示し、かつ太陽電池アレイに有用な裏打ちシートに形成される部品として使用されうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、アクリル系膜であって、
当該アクリル系膜は、当該膜の重量を基準にして70重量%〜99重量%の多段階アクリル系ポリマー、および当該膜の重量を基準にして1重量%〜20重量%の顔料を含み;
前記多段階アクリル系ポリマーは、当該多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%の第1ポリマー、および当該多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%の第2ポリマーを含み;
前記第1ポリマーは、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%含み;
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するポリマーを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜30重量%含む;
アクリル系膜が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様においては、アクリル系膜を形成する方法であって、
膜の重量を基準にして70重量%〜99重量%の多段階アクリル系ポリマー、および前記膜の重量を基準にして1重量%〜20重量%の顔料を含む組成物を形成する工程であって、
前記多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%の第1ポリマーであって、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%含む第1ポリマーを形成し;
前記多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%の第2ポリマーであって、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するポリマーを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜30重量%含む第2ポリマーを前記第1ポリマーの存在下で形成する;ことを含む工程;並びに
カレンダー成形またはキャスト膜形成によって、前記組成物から前記アクリル系膜を形成する工程;
を含む方法が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様においては、
多段階アクリル系ポリマーと、膜の重量を基準にして1重量%〜20重量%の顔料とを含む膜;並びに、これにとり付けられたポリエステル層;を含む太陽電池アレイ裏打ちシートであって、
前記多段階アクリル系ポリマーが、当該多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%の第1ポリマー、および当該多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%の第2ポリマーを含み;
前記第1ポリマーは、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%含み;
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するポリマーを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜30重量%含む;
太陽電池アレイ裏打ちシートが提供される。
【0008】
本発明の第4の態様においては、
多段階アクリル系ポリマーが、当該多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%の第1ポリマー、および当該多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%の第2ポリマーを含み;
前記第1ポリマーは、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%含み;
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するポリマーを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜30重量%含む;
多段階アクリル系ポリマーと、膜の重量を基準にして1重量%〜20重量%の顔料とを含むアクリル系膜組成物を形成し;
カレンダー成形またはキャスト膜形成によって前記組成物からアクリル系膜を形成し;並びに
これにポリエステル層をとり付ける;
ことを含む、太陽電池アレイ裏打ちシートを形成する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、膜の重量を基準にして70重量%〜99重量%、好ましくは85重量%〜95重量%の多段階アクリル系ポリマーを含むアクリル系膜に関する。本明細書において、「アクリル系ポリマー」とは、重合単位として、アクリルまたはメタクリル酸の酸、エステル、アミドおよびニトリルから選択されるモノマーをポリマー重量を基準にして少なくとも70重量%含むポリマーを意味する。本明細書において、「多段階アクリル系ポリマー」とは、2種以上の異なる組成物が逐次的に重合される乳化重合によって製造されるポリマーを意味する。
【0010】
本発明の多段階アクリル系ポリマーは、多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%、好ましくは15重量%〜40重量%の第1ポリマー、および多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%、好ましくは60重量%〜85重量%の第2ポリマーを含み;当該第1ポリマーは重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを、第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、好ましくは0重量%〜10重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを、第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%、好ましくは90重量%〜100重量%含み;第2ポリマーは第1ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、好ましくは60重量%〜80重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、好ましくは2重量%〜10重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するモノマーを第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜30重量%、好ましくは3重量%〜25重量%含む。
【0011】
ある実施形態においては、多段階アクリル系ポリマーは4つの段階を含むことができる。典型的な4つの段階のポリマーは、(1)多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜35重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の第1段階ポリマー;当該第1段階ポリマーは重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、好ましくは0重量%〜10重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%、好ましくは90重量%〜100重量%含む;(2)多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜35重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の第2段階ポリマー;当該第2段階ポリマーは第1段階ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを第2段階ポリマーの重量を基準にして50重量%〜90重量%、好ましくは50重量%〜70重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを第2段階ポリマーの重量を基準にして0重量%〜50重量%、好ましくは30重量%〜50重量%含む;(3)多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜35重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の第3段階ポリマー;当該第3段階ポリマーは第2段階ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを第3段階ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、好ましくは60重量%〜80重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを第3段階ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、好ましくは2重量%〜10重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するモノマーを第2ポリマーの重量を基準にして0〜30重量%、好ましくは3重量%〜25重量%含む;並びに(4)多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜35重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の第4段階ポリマー;当該第4段階ポリマーは第3段階ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを第4段階ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、好ましくは60重量%〜80重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを第4段階ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、好ましくは2重量%〜10重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するモノマーを第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜30重量%、好ましくは3重量%〜25重量%含む:を含む。
【0012】
アクリル系モノマーには、モノマーであるアクリルもしくはメタクリルエステルが挙げられる。好適なアクリラートモノマーには、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソ−オクチル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、およびアクリル酸ベンジルが挙げられる。好適なメタクリラートモノマーには、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソ−オクチル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸イソボルニル、およびメタクリル酸ドデシルが挙げられる。他の有用なモノマーには、スチレン、α−メチルスチレン、およびビニルトルエン;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル;並びに酸無水物、例えば無水マレイン酸が挙げられる。
【0013】
ある実施形態においては、ある段階は、独立して、その段階のポリマーの重量を基準にして0%〜10%、好ましくは0%〜5%、より好ましくは0%〜2%の共重合された多エチレン性不飽和モノマーを含む。ある実施形態においては、最終段階ポリマー以外の全ての段階が、0.1%〜5%、より好ましくは0.1%〜2%の共重合された多エチレン性不飽和モノマーを含む。ある実施形態においては、最終段階ポリマーは、独立して、共重合された多エチレン性不飽和モノマーを含まない。多エチレン性不飽和モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,3−ブタンジオールジメタクリラート、シアヌル酸トリアリル、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラートおよびジビニルベンゼンが挙げられる。
【0014】
ある実施形態においては、ある段階は、独立して、第1ポリマーの重量を基準にして、0%〜5%、好ましくは0%〜1%の共重合されたモノエチレン性不飽和酸モノマーを含む。酸モノマーには、カルボン酸モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノブチルおよび無水マレイン酸;並びに、硫黄含有酸モノマーおよびリン含有酸モノマーが挙げられる。
【0015】
ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、Interscience Publishers、J.BrandrupおよびE.H.Immergutにより編集された「ポリマーハンドブック」に認められうる。
【0016】
多段階乳化重合プロセスにおいては、組成が異なる少なくとも2つの段階が逐次的な様式で形成される。このような多段階水性エマルションポリマーを製造するのに使用される重合技術は、当該技術分野において、例えば、米国特許第3,562,235号;第4,141,935号;第4,325,856号;第4,654,397号;および第4,814,373号に開示されるように周知である。例えば、アルキル硫酸アルカリ金属塩またはアンモニウム塩、アルキルスルホン酸、脂肪酸およびオキシエチレン化アルキルフェノールのようなアニオン性乳化剤および/または非イオン性乳化剤のような従来の界面活性剤が使用されることができる。使用される界面活性剤の量は、通常、全モノマーの重量を基準にして0.1重量%〜6重量%である。熱もしくはレドックス開始プロセスが使用されうる。例えば、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、過硫酸アンモニウム塩および/または過硫酸アルカリ塩のような従来のフリーラジカル開始剤が、典型的には、全モノマーの重量を基準にして0.01重量%〜3.0重量%の量で使用されうる。好適な還元剤、例えば、ナトリウムスルホキシラートホルムアルデヒド、ナトリウムハイドロサルファイト、イソアスコルビン酸、硫酸ヒドロキシルアミン、および重亜硫酸ナトリウムなどと共に同じ開始剤を使用するレドックス系が同様の量で、場合によっては、例えば、鉄および銅のような金属イオンと組み合わせて、場合によってはさらに金属の錯化剤を含んで使用されうる。例えば、メルカプタンのような連鎖移動剤が、段階モノマーの重量を基準にして0重量%〜5重量%の量で使用されることができ、1つ以上のポリマー段階の分子量を低減させることができる。最終段階において好ましいのは、段階モノマー重量の重量を基準にして、0.1重量%〜2重量%の連鎖移動剤量である。ある段階のためのモノマー混合物はそのままで、または水中のエマルションとして添加されうる。ある段階のためのモノマー混合物は一回の添加、または複数回の添加、またはその段階について割り当てられた反応期間にわたって均一なもしくは変化する組成を用いて連続的に添加されることができ;好ましいのは、一回の添加としての、第1および/または第2ポリマーのためのモノマーエマルションの添加である。追加の成分、例えば、フリーラジカル開始剤、酸化剤、還元剤、連鎖移動剤、中和剤、界面活性剤および分散剤などが、いずれかの段階の前に、その段階中にまたはその段階に続いて添加されうる。例えば、米国特許第4,384,056号および第4,539,361号に開示されるような多モード(polymodal)粒子サイズ分布を生じさせるプロセスが使用されうる。
【0017】
多段階乳化重合プロセスは、通常、少なくとも2種の相互に非混和性のポリマー組成物を形成し、それにより、少なくとも2つの相が形成される。相互に非混和性の2種のポリマー組成物および得られた複数相構造のポリマー粒子は、当該技術分野で知られた様々な方法で決定されうる。例えば、複数相の間の違いを強調するための染色技術を使用する走査型電子顕微鏡の使用がこのような技術である。
【0018】
多段階アクリル系ポリマー粒子の平均粒子直径は、典型的には、30ナノメートル〜500ナノメートルである。
【0019】
本発明のアクリル系膜は、膜の重量を基準にして1重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜10重量%の顔料を含む。本明細書において、「顔料」には、本明細書において記載される多段階アクリル系ポリマーに埋め込まれる場合に、太陽光スペクトルの少なくともいくつかのフラクションを散乱させることができる固体粒子状物質が挙げられる。有用な顔料粒子サイズは、典型的には、100nm〜50マイクロメートルの範囲であり;顔料直径はアクリル系膜の厚みを超えてはならない。無機粒子には、金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、二酸化チタン;炭酸塩、例えば、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、およびコロイド状炭酸カルシウム;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、シリカ、焼成シリカ、カーボンブラック、グラファイト、硫化亜鉛、リトポン(lithopone)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、クレイ、焼成クレイ、ナノクレイ、長石、ネフェリン閃長岩、珪灰石、珪藻土、アルミナシリケート、タルク、ナトリウムカリウムアルミニウムシリケート粒子、ガラスビーズ、セラミック球状粒子;ソーダ石灰粒子;中空ガラス粒子;セラミック中空球体、ガラス繊維、炭素繊維および金属繊維が挙げられる。任意の有機粒子には、着色顔料、例えば、青色顔料、プラスチック顔料、例えば、中実ビーズ顔料、および空隙または小胞を含む微小球体顔料が挙げられる。中実ビーズ顔料の例としては、ポリスチレンおよびポリ塩化ビニルビーズが挙げられる。1以上の空隙を含むポリマー粒子をはじめとする微小球体顔料の例としては、Ropaque商標不透明ポリマーが挙げられる。他の好適な顔料には、例えば、アクリロニトリル/塩化ビニル膨張粒子;CaCO粒子で覆われたポリ塩化ビニリデンコポリマー;およびポリアミド繊維のような有機繊維が挙げられる。顔料は、太陽電池アレイ裏打ちシート性能を向上させるために、並びに独立して、場合によって、このような構成物においてアクリル系シートが使用される場合に、太陽電池アレイの外観(色)を制御するために後方散乱特性をもたらすように選択される。顔料の混合物が使用されうる。
【0020】
中空ガラス微小球体が、膜の重量を基準にして0重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜10重量%の量で、本発明のアクリル系膜において使用されうる。このような中空ガラス微小球体の直径は、典型的には、10〜100マイクロメートルであり、あるいは、20〜80マイクロメートルである。微小球体の混合物が使用されうる。好適な市販の中空ガラス微小球体の例としては、Potters Industriesから、SPHERICEL商標110P8またはSPHERICEL商標60P18の表示で入手可能なものが挙げられる。
【0021】
滑剤、難燃剤、帯電防止剤、曇り防止剤(anti fogging agent)、抗微生物剤、酸化防止剤(膜の重量を基準にして、0重量%〜1.5重量%、好ましくは0.2重量%〜0.8重量%の量で)、UV吸収剤/安定剤(膜の重量を基準にして、0重量%〜3重量%、好ましくは1重量%〜2重量%の量で)、および可塑剤(例えば、DEHP)をはじめとする添加剤が、場合によっては、アクリル系膜に添加されうる。
【0022】
本発明において有用な滑剤には、例えば、純粋な炭化水素滑剤、例えば、液体パラフィン、天然パラフィン、微結晶ワックス、合成パラフィンおよび低分子量ポリエチレン;ハロゲン化炭化水素滑剤;脂肪酸滑剤、例えば、高級脂肪酸およびヒドロキシ脂肪酸;脂肪酸アミド滑剤、例えば、脂肪酸アミドおよびビス(脂肪酸アミド);およびエステル滑剤、例えば、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル(例えば、グリセリド)、脂肪酸のポリグリコールエステル、および脂肪酸の脂肪アルコールエステル(すなわち、エステルワックス)が挙げられる。さらに、滑剤には、金属石けん、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールとに由来する部分エステル、並びに脂肪酸とポリグリコールまたはポリグリセロールとに由来する部分エステルも挙げられる。これらの滑剤は、単独で使用されることができ、または2種以上の混合物で使用されうる。滑剤は、典型的には、溶融ポリマーのレオロジーを改変するために使用される。内部滑剤は、溶融ポリマーの剪断粘度を主として低減させるものとして周知であり、一方、外部滑剤は、溶融ポリマーと加工装置の金属壁との間に起こる摩擦を低減させるものとして周知であ。滑剤は、最終プラスチック製品の表面を改変するために使用されうる。本発明において、滑剤は、膜の重量を基準にして、0重量%〜5重量%、あるいは1重量%〜2重量%で存在することができる。滑剤の混合物が使用されうる。
【0023】
難燃剤には、塩素化パラフィン、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモンおよびハロゲン化合物が挙げられる。好適な難燃剤の例としては、Clariant Corporation(シャルロッテ、ノースカロライナ州)から市販されているもの、例えば、EXOLIT商標IFR23、EXOLIT商標AP750、有機リン化合物をベースにした物質EXOLIT商標OPグレード、赤リン物質のEXOLIT商標RPグレードの表示のもの;非ハロゲン化難燃剤、例えば、FIREBRAKE商標ZBおよびBORGARD商標ZB、およびイスラエル、ビアシバのDead Sea Bromine Groupから入手可能なFR370(トリス(トリブロモネオペンチル)ホスファート)が挙げられる。熱伝導顔料としても機能する好適な難燃剤の例には、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムが挙げられる。難燃剤の混合物が使用されうる。
【0024】
本発明のアクリル系膜は、上述のような多段階ポリマーおよび顔料を含む組成物から形成される。典型的には、高い寸法安定性の値なので、処理技術の選択が重要である。高い寸法安定性は、このケースの場合、後処理操作中に膜が加熱される場合における低い収縮を意味する。
【0025】
収縮は、主として、溶融処理によって誘導される分子配向に関連すると考えられている。あるプロセスにおいては、この分子配向は、押し出された膜の素早い冷却によって「凍結」される。言い換えれば、収縮問題は膜の処理中の膜の「応力下での冷却」に関連する。カレンダー成形またはキャスト膜プロセスによって本アクリル系膜を製造するのが好ましい。可能な他の膜処理技術(例えば、インフレーションフィルムまたはフラットダイ押出)よりもこれを選択する理由はカレンダー成形およびキャスト膜は最も低い分子配向の膜をもたらすことが知られているからである。さらに、カレンダー成形およびキャスト膜は一配向膜(機械方向)を生じさせるが、インフレーションフィルムのようなプロセスは二配向膜(機械方向および横断方向の両方)をもたらす。
【0026】
しかし、一般的なカレンダー成形およびキャスト膜プロセスは依然として、現在のEUおよびUS標準で定義される低収縮率(150℃で30分後に1%未満)よりも大きな収縮率(150℃で30分後に約10%)を持つ膜を提供する。
【0027】
冷却をゆっくりにする(例えば、加熱ロールの使用によるなどして)か、または応力を低下させる(例えば、低速テイクオフ(take−off)速度またはドローダウン(drawdown)比率およそ1、すなわち溶融速度=膜速度の使用によるなどして)ことがさらに好ましい。
【0028】
残留応力はアニーリング(別名、応力緩和、テンパリング、物理エージング、熱処理)と称される追加の処理工程を統合することにより緩和されうる。アクリル系膜が形成された後でのインラインアニーリングプロセスの使用が好ましい。分子的観点からは、応力緩和は、伸ばされかつ高度に配向された配置からランダムコイル配置へのポリマー鎖の緩和に対応すると考えられる。応力のかかっていないポリマーがそのガラス転移温度(Tg)より高く加熱される場合にこの現象は自然に起こる。
【0029】
アニーリング工程は、任意の連続/オンライン加熱システムによってもたらされうる。加熱システムは40℃〜230℃、好ましくは130℃〜200℃の膜表面温度を提供できるあらゆる放射、対流または伝導加熱装置をベースにすることができる。
【0030】
本発明において有用な加熱システムには、例えば、電気赤外システム、ガス火炎赤外システム、セラミクスヒーター、加熱空気送風機、水/オイル/電気加熱ロールなどが挙げられる。これらの加熱システムは単独でまたは2以上の組み合わせで使用されうる。
【0031】
好適な市販のものの例としては、加熱システムには、Blasdel Enterprises,Inc.から入手可能なセラミックジェネレーター、Coil−O−Rod商標ジェネレーター、セラミックパネルヒーター、クオーツチューブ、シリーズFSヒーター、Vシリーズヒーター、ガスキャタリティックヒーターの表示のものが挙げられる。
【0032】
実験室的実験は、カレンダー成形を模倣すると考えられる2本ロールミル上でなされた。2本ロールミルは、反対方向に回転する2本の加熱金属ロールで基本的に構成されている。ロール間の間隔は0.15mm〜5.0mmに調節されうる。ペレットまたは粉体形態のポリマーおよび添加剤を含む配合物が直接このロールに添加される。可塑化および混合の後、溶融物質はフロントロールの周りに均一な膜を形成した。特定の時間後で、膜は「テイクオフ」法に従って、フロントロールから取り外された。操作者が膜を「テイクオフ」させる速度を低下させると、収縮が有意に低減されたことを本発明者は示した。工業スケールにおいて、これは低いアウトプットおよび/または低いドローダウン比率であると言い換えられる。収縮を最小化させるための処理の前に、アクリル系ポリマーおよび顔料(例えば、二酸化チタンなど)をあらかじめ乾燥させるのが好ましい。
【0033】
本発明のある態様においては、アクリル系層、およびこれにとり付けられたポリエステル層を含む太陽電池アレイ裏打ちシートであって;
前記アクリル系層は多段階アクリル系ポリマーおよび当該層の重量を基準にして1重量%〜20重量%の顔料を含み;
前記多段階アクリル系ポリマーは、当該多段階ポリマーの重量を基準にして10重量%〜75重量%の第1ポリマー、および当該多段階ポリマーの重量を基準にして25重量%〜90重量%の第2ポリマーを含み;
前記第1ポリマーは、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第1ポリマーの重量を基準にして80重量%〜100重量%含み;
前記第2ポリマーは前記第1ポリマーの存在下で形成され、重合単位として、60℃〜120℃のホモポリマーガラス転移温度(Tg)を有するC1−C6アルキルメタクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして50重量%〜100重量%、10℃未満のホモポリマーTgを有するC1−C12アルキルアクリラートを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜20重量%、および120℃を超えるホモポリマーTgを有するポリマーを当該第2ポリマーの重量を基準にして0重量%〜30重量%含む;
太陽電池アレイ裏打ちシートが提供される。
多段階アクリル系ポリマーおよび顔料は上述の通りである。裏打ちシートの構成は、(米国特許出願公開第2007/0166469号、および第2008/0264484号;並びに、特開2007−007885号に記載されるような)1以上のポリエステル層を含み、これは、場合によってはコロナ放電処理されており、1以上のアクリル系層にとり付けられており、当該アクリル系層は場合によってはコロナ放電処理されており、当該ポリエステル層は典型的には好適な接着剤の使用によりアクリル系層にとり付けられ、この構造は典型的には、少なくとも1つのアクリル系膜および少なくとも1つのポリエステル膜を使用する積層技術によって形成される。アクリル系層の全体の厚みは、典型的には、50マイクロメートル〜250マイクロメートルであり、ポリエステル層全体の厚みは、典型的には、25マイクロメートル〜250マイクロメートルである。
【実施例】
【0034】
実験方法
処理方法
アクリル系膜組成物は、ペレットまたは粉体形態の全ての成分をミキサー中でブレンドすることにより製造された。実施例において使用された市販の物質および供給者は以下に示される。
【0035】
【表1】
【0036】
膜カレンダー成形
膜はコリン(Collin)2本ロールミル(W.H.Collin GmbH、Maschienefabrik、Aichach、ドイツ)を用いて製造された。フロントロールの温度は185℃に設定され、一方、リアロールの温度は183℃に設定された。110gの組成物が、2本ロールミルの近接した加熱ロール上に直接注がれた。それぞれの膜を製造するための全体の処理時間は300sであり、次のパラメータの2つの連続したフェーズに分割された。
【0037】
フェーズ1
フェーズ時間:280s
ロール間の間隔:0.25mm
フロントロール速度:26rpm
摩擦:−23%
【0038】
フェーズ2
フェーズ時間:20s
ロール間の間隔:0.15mm
フロントロール速度:5rpm
摩擦:−23%
【0039】
処理後、フロントロールの周りに形成されたシートが、後述する一般的なテイクオフ法または低速テイクオフ法に従って、ロールから取り外された。
【0040】
一般的なテイクオフ法
一般的なテイクオフ法は次の6つの工程を含む:
操作者は、ロール間の間隔が依然として閉じられている双方のロールの回転を停止させる。
操作者は、操作者の前で木製ナイフを用いて横断方向に膜を切断する。
操作者は、切断した膜の下半分のそれぞれの端部をその手に取る。
第2の操作者が双方のロールの回転を再始動させる(5rpmの速度で設定)。
操作者は、膜とロールとの間の接触前面を、米国特許第6,551,688号に記載されるような30°〜60°を含む好適な角度に保つように試みつつ、膜をテイクオフし引き伸ばす。
全体が離れたら、操作者は膜を平らな金属面上に置き、その膜を応力なしに冷却させる。
【0041】
低速テイクオフ法
低速テイクオフ法は次の7つの工程を含む:
操作者はロール間の間隔をあける。
操作者は、ローリングバック(別名、フラックス)が操作者の前にあるときに、フロントロールの回転を停止させる。
操作者は、木製ナイフを用いて横断方向に、そしてローリングバック(別名、フラックス)上で膜を切断する。
操作者は、ローリングバック(別名、フラックス)のそれぞれの端部をその手に取る。
第2の操作者がフロントロールの回転を再始動させる(5rpmの速度で設定)。
操作者は、膜とロールとの間の接触前面を、米国特許第6,551,688号に記載されるような60°〜90°を含む好適な角度に保つように試みつつ、膜を引き伸ばすことなく、膜をゆっくりとテイクオフする。
全体が離れたら、操作者は膜を平らな金属面上に置き、その膜を応力なしに冷却させる。
【0042】
試験方法
以下の試験方法および実施例においては、サンプル寸法(典型的には長さ)が測定ツールの正確さで測定された。実施例および明細書における全ての部、パーセンテージ、比率などは他に示されない限りは重量基準である。
【0043】
熱収縮試験
それぞれのサンプルについて、76.2mm×76.2mmの5つの標本が準備された。0.01mmの正確性を持つ電子キャリパー(Brown&Sharpe,Model Digit−CAL MM2000)を用いて、機械方向(MD)および横断方向(TD)の双方における初期厚みおよび長さが正確に測定された。5つの標本のそれぞれは、150℃の設定温度の通風オーブン中に30分間一緒に置かれた。
【0044】
本明細書においては、熱収縮率(S)は、150℃のオーブン中30分後での、特定の一方向における長さの変化のパーセンテージとして定義され、次のように計算される:
【数1】
式中:
:特定の一方向における標本の初期長さ(mm)
L:150℃の通風オーブン中30分後での、特定の一方向における標本の長さ(mm)。
5つの繰り返しの結果が平均化され、熱収縮率をもたらす。
【0045】
日射反射率測定
それぞれのサンプルについて、約76.2mm×76.2mmの標本1つが準備された。日射反射率は、Solar Spectrum Reflectometer Model SSR−ERを用いてASTM標準C1549−02に記載される方法に従って決定された。
太陽光スペクトルの4つの波長(380nm、500nm、650nmおよび1220nm)における日射反射率(エアマス0)の平均値が、各標本の3つの異なる点において測定された。3つの測定の結果が平均化され日射反射率をもたらした。
【0046】
膜特性試験
IEC61215:結晶シリコン太陽電池(PV)モジュールのための国際試験基準
温度サイクル試験:温度−40℃±2℃、および85℃±2℃
高温−高湿試験:温度85℃±2℃、相対湿度85%±5%
結露−凍結試験:温度−40℃±2℃、および85℃±2℃、85℃での相対湿度85%±5%
【0047】
アクリル系ポリマーおよび粉体の形成
米国特許第4,141,935号の実施例1の教示に従うが、変更された第3段階および第4段階組成、すなわち、25(MMA/BA:93/7)および25(MMA/BA/n−DDM:9.5/7/0.5)を有して作られたアクリル系エマルションコポリマー(ポリマーA)が製造された。このエマルションは次いで実験室的噴霧乾燥機(NIRO Inc.、ソーバーグ、デンマーク)を用いて噴霧乾燥されて、ポリマーA粉体を生じた。
米国特許第4,141,935号の実施例1の教示に従うが、変更された第3段階および第4段階組成、すなわち、25(MMA/EA/アルファ−メチルスチレン:71/4/25)//25(MMA/EA/アルファ−メチルスチレン/n−DDM:70.5/4/25/0.5)を有して作られたアクリル系エマルションコポリマー(ポリマーB)が製造された。このエマルションは次いで実験室的噴霧乾燥機(NIRO Inc.、ソーバーグ、デンマーク)を用いて噴霧乾燥されて、ポリマーB粉体を生じた。
【0048】
実施例1−4:アクリル系膜の形成および評価
ポリマーAおよびB粉体は次いで様々な量のTiOと配合され、次いで処理された。それぞれの実施例について使用された組成物およびテイクオフ方法の詳細は表2.1に示される。
【0049】
【表2】
【0050】
カレンダー成形後、得られた膜は次いで熱収縮について試験された。結果の詳細は表2.2に示される。
【0051】
【表3】
【0052】
実施例3および4のアクリル系膜は、湿潤オーブン中にも配置され、上記条件下で、IEC61215(結晶シリコン太陽電池(PV)モジュールのための国際試験基準)によって必要とされる試験を行った。結果は表2.3にまとめられる。
【0053】
【表4】
【0054】
実施例5−8:アクリル系膜の形成および評価
ポリマーAは中空ガラス微小球体と配合され、次いで処理された。それぞれの実施例について使用された配合物およびテイクオフ方法の詳細は表5.1に示される。
【0055】
【表5】
【0056】
カレンダ成形後、得られた膜は次いで熱収縮について試験された。結果の詳細は表5.2に示される。
【0057】
【表6】
【0058】
実施例9−12および比較例A
アクリル系膜の形成および評価
ポリマーA粉体が様々な量のTiOと配合され、次いで上記方法に従って処理された。それぞれの実施例について使用された配合物およびテイクオフ方法の詳細は表9.1に示される。
【0059】
【表7】
【0060】
カレンダー成形後、得られた膜は次いで、上記対応する試験方法に従って日射反射率について試験された。結果の詳細は表9.2に示される。
【0061】
【表8】
【0062】
本発明の実施例9〜12のアクリル系膜は、太陽電池アレイ裏打ちシートにおける使用に有用な水準の日射反射率を示したが、比較例Aのアクリル系膜はそうではなかった。
【0063】
比較例B:アクリル系膜の形成
米国特許第4,141,935号の実施例1の教示に従うが、変更された第3段階および第4段階組成、すなわち、25(MMA/EA:96/4)//25(MMA/EA/n−DDM:95.5/4/0.5)を有して作られたアクリル系エマルションコポリマー(ポリマーC)が製造された。このエマルションは次いで実験室的噴霧乾燥機(NIRO Inc.、ソーバーグ、デンマーク)を用いて噴霧乾燥されて、ポリマーC粉体を生じた。
ポリマーCの粉体は次いで30mm二軸押出機および4mm3−ストランドダイ(Werner&Pfleiderer、ラムゼー、ニュージャージー)でペレット化された。バレル温度は200℃に設定され、供給速度は20 lbs/時に設定され、スクリュー速度は150rpmに設定された。
ポリマーCのペレットは次いで、30mmダイを備えたインフレート膜ライン(Dr.Collin GmbH、エバーズバーグ、ドイツ)を用いて処理され、単一層インフレート膜を生じさせた。
インフレート膜押出後、得られた膜は次いで、上記対応する試験方法に従って熱収縮について試験された。
【0064】
【表9】
【0065】
インフレート膜押出による比較例Bからのアクリル系膜の形成は、許容できない熱収縮率の結果をもたらした。
【0066】
実施例13−17:アクリル系膜の形成および試験
ポリマーA粉体は4重量%のPARALOID商標K−130Dおよび0.5重量%のIRGANOX商標245と配合された。組成物は次いで30mm二軸押出機および4mmの3−ストランドダイ(Werner&Phleiderer、ラムゼー、ニュージャージー)を用いてペレットにされた。この組成物は顔料を使用せずに製造されたが、本発明のアクリル系膜の処理を模倣すると考えられる。バレル温度は200℃に設定され、供給速度は50 lbs/時に設定され、スクリュー速度は210rpmに設定された。
このペレットは次いで、3.5インチ一軸押出機(30:1L/D)および60インチ幅フラットダイを備えたキャスト膜ライン(Black Clawson、フルトン、ニューヨーク)を用いて処理され、単一層膜を生じさせた。押出機は6つの加熱/冷却領域を有しており、これらはそれぞれ395F/425F/450F/450F/480F/480Fに設定された。さまざまな供給パイプエレメントの温度は490Fに設定された。ダイは横断方向に5つの異なる加熱領域を有しており、これらはそれぞれ490F/480F/470F/480F/490Fに設定された。チルロール温度は180Fに設定された。
5つの膜が異なる処理パラメータで押し出された。「アウトプット」は1時間あたりに製造された膜の重量(kg単位)に対応する。スクリュー速度およびライン速度は所望のアウトプットを生じさせるために調節された。
【0067】
「ドローダウン比率」(DDR)は次のように定義される:
【数2】
式中、
:ダイのリップでの間隔(mm)
:最終膜厚(mm)
【0068】
「アニーリング温度」は、巻き取りの前に膜をアニーリングするために使用されるオンライン放射加熱システムの前を膜が通り過ぎた後の膜表面温度として定義される。「アニーリング温度」の値がNA(適用なし)の場合には、それはオンライン放射加熱システムが停止していたことを意味する。
得られた膜は、次いで、試験時間が30分ではなく10分であったことを除いて、上記試験方法に従って熱収縮について試験された。処理パラメータおよび結果の詳細は表13.1に示される。
【0069】
【表10】
実施例15−17の低いドローダウン比率(<2)は優れた熱収縮率の結果を提供する。
【0070】
実施例18−21:太陽電池アレイ裏打ちシートの形成および試験
約9”×12”のシートが、約0.003インチ厚のポリマーA膜から、および0.005インチ厚のポリエステル膜(MYLAR商標A)から切り出された(アクリル系膜に顔料は存在しないが、本発明の裏打ちシートを形成するための方法を表すと考えられる)。ポリエステルのシートはコロナ処理された。ポリマーA膜のサンプルのいくつかはコロナ処理され、いくつかのサンプルは処理なしで試験された。ロームアンドハースの接着剤ADCOTE商標76R36B−33がCoreactant9L7と、推奨比率100/3.3(重量部)で混合された。この接着剤は、#6ワイヤ巻きロッドを用いてポリエステル膜に適用され、塗布されたシートを80℃のオーブン中に1分間置くことにより溶媒を蒸発させた。塗布重量は1.5〜1.7ポンド/リームであった。ポリマーA膜はフラットベッド積層機において加熱されたロールを用いて、表18.1に示されたニップ温度で、ポリエステルに積層された。積層シートは試験前に室温で少なくとも3日間保持された。このシートから1インチ幅のストリップが切り出され、T−ピール試験が10”/分の速度で行われた。結果は表にまとめられる。
【0071】
【表11】
【0072】
実施例22:太陽電池アレイ裏打ちの形成
約9”×12”のシートが、8重量部のポリマーAおよび92重量部のTiOを含む0.003インチ厚のアクリル系膜から、および0.005インチ厚のポリエステル膜(MYLAR商標A)から切り出される。アクリル系シートおよびポリエステルシートはコロナ処理される。接着剤ADCOTE商標76R36B−33がCoreactant9L7と、比率100/3.3(重量部)で混合される。この接着剤は、#6ワイヤ巻きロッドを用いてポリエステル膜に適用され、塗布されたシートを80℃のオーブン中に1分間置くことにより溶媒を蒸発させる。塗布重量は1.5ポンド/リームである。ポリマーA膜はフラットベッド積層機において、175Fに加熱されたニップロールを用いてポリエステル膜に積層され、本発明の太陽電池アレイ裏打ちシートを提供する。