(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
炭素酸化物、特に炭酸ガスは、燃料として使用する水素の製造やメタノール合成または燃料の製造または合成ガスを使用する他の用途のための一酸化炭素と水素の混合物の使用のために上記ガスから除去される。
【0004】
CO
2は地球温暖化の原因となると考えられている温室効果ガス(GHG)の組成物を形成する。京都プロトコールでは署名先進国に2008~2012年の間にGHGエミッションを平均して5.2%減らすことを求めている。Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)によると地球全体のエミッションを2050年までに半分に減らさなければならない。
【0005】
大気中のCO
2の含有量は19世紀初めには280ppmであったが、ここ50年で60ppm増加し、今日では370ppmである。今日、大気中にはCO
2が約700Gt含まれている。
【0006】
CO
2は大気中に長時間とどまり、ゆっくり海中に溶けて、海を酸性化する。人為発生的(anthropogenic)なエミッションにより発される全てのCO
2の30%〜50%が海に閉込められると見積もられる。
【0007】
運送、電気、工業、家庭で化石エネルギー(石炭、石油、ガス)の燃焼で地球規模で年に250億トンのCO
2が大気中へ放出される。例えば一つの火力発電所はCO
2を年間600万トン放出する。
【0008】
大型発電所および重工業産業の発生源でCO
2を捕捉し、貯蔵することはグローバルスケールで京都議定書を守るための最も有望な研究経路の一つである。IPCCレポートもこれらの工業技術が気候変動の問題の一つの解決手段であることを認めている。
【0009】
石炭の埋蔵量は数百年と見積もられているが、石油の埋蔵量は何十年の単位であると言われている。例えば火力発電所で使われる石炭はCO
2の排出量がメタンより多く、キロワット時当たりの750gのCO
2を出す。2020年までに実行されるプロジェクトの数は約100と見積もられている。
【0010】
CO
2を捕捉(補収、capture)するための公知の工業的方法としては各プロセスの各種温度および圧力条件に対応した3つの技術ルートが競い合っている。
【0011】
最初のルートは後燃焼(post-combustion)方法で、これは排ガス中に放出される燃焼ガスからCO
2を除去することに本質がある。火力発電所から出されるガスは窒素、CO
2およびNOxまたはSO
2タイプの不純物から成る。石炭火力発電所の場合、CO
2含有量は12〜15%、ガス燃焼発電所の場合には6〜8%である。化学プロセス、例えばセメント製造プラントなはCO
2含有量は30%近くまで上昇する。これらの排出ガスの圧力はほぼ大気圧である。
【0012】
この後燃焼による捕捉方法の目的は、希釈したCO
2を取り出し、プラント設備全体を再設計することによって既存施設の中に一体化することにある。しかし、CO
2回収セクションを既存の設備と一体化することは最適条件から外れることを意味し、設備の当初プロジェクトで考えた全体のインテグレーションで得られる回収エネルギーのコストを低下させることになる。しかし、この後燃焼方法は現在最も管理された方法である。
【0013】
第2のルートは予備(プレ)燃焼方法で、その目的は燃料の製造プロセス中にCO
2を捕捉することにあり、燃料(石炭、ガス、バイオマス)を一酸化炭素と水素の混合物に変換する。使用する技術は水の存在下でのスチームリフォーミングまたは酸素の存在下での部分酸化法である。混合物中に存在するCOが水と反応してCO
2と水素が作られる(シフト反応として知られる反応)。次いで、25%〜40%の比率で存在するCO
2が水素から分離される。水素はCO
2のエミッションが無いエネルギーを製造するのに使われる。
【0014】
第3のルートは酸化剤(オキシダント)として純酸素を使用する方法(オキシ−燃料(oxy-fuel)燃焼法)で、この方法は厳密にはCO
2を捕捉する方法ではない。この方法では実質的に純粋な酸素を用いて燃焼を実行することで90%のCO
2を含む煙道ガスを製造する。オキシ−燃料法では、空気からの窒素の代替としてCO
2の一部を再循環するので、ボイラーやバーナーが再設定する必要がある。その他のかなり大きい問題点は酸素のコストが高いことである。オキシ−燃料法はまだデモ段階の技術である。
【0015】
後燃焼法で最も広く使用されているプロセスは化学吸収法である。化学吸収法では化学溶剤(一般にアミンから成る)を使用してCO
2を捕捉する。アミンの使用はガスの脱酸において古くから公知であり、H
2Sおよび/またはCO
2がリッチな天然ガスが処理されてきた。
【0016】
「化学溶剤」という用語はCO
2と強い化学作用(反応性)と高い親和性とを有する溶剤を意味する。この溶剤の一つの欠点は反応熱が高いことと、その再生に多くのエネルギー(一般に120℃での加熱)を必要とする点にある。逆に、親和性は高い。
【0017】
後燃焼法で化学吸収を用いてCO
2を回収する従来方法では、処理する煙道ガスを吸収塔(アブソーバ)に送り、そこで化学溶剤と混合する。溶剤は煙道ガス中の他の構成物(特に窒素)よりはるかに大きなCO
2分子との親和性を有するので、溶剤はCO
2を捕捉し(「濃縮された(enriched)」溶剤)、他の分子は放出される(処理済み煙道ガス)。
【0018】
煙道ガスのCO
2のほぼ90%は溶剤によって捕らえられ、濃縮された溶剤は再生装置へ送られ、CO
2と溶剤との間の結合を破壊するために再生装置中で120℃に加熱される。分離されたCO
2は貯蔵地域まで移送される。溶剤は、初期状態へ戻された溶剤(「希薄化(depleted)溶剤」)は被処理煙道ガスと一緒に吸収塔へ再噴射される。
【0019】
化学溶剤を構成するアミンには第一、第二および第三アミンの3つのカテゴリがある。モノエタノールアミン(MEA)は立体障害製の強いアミン(第二または第三アミン)より反応性が強いため、市場ではこれが主流である。使用されているヒンダードアミンは2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)または2−ピペリジンエタノール(PE)で、これらはCO
2との相互作用が弱く、再生も容易である(非特許文献1)。
【0020】
EXXON社が開発した他のタイプのヒンダードアミン(KS1アミン)はマレーシアの尿素プラントで使われている(非特許文献2)。
【0021】
アミンで最も問題になるのは沸点である。沸点が低く過ぎると多量の溶剤がロスすることになり、回収が必要になる。また、アミンを使用する化学吸収プロセスの欠点は腐食、劣化および酸素、SO
2またはNO
2の存在下での酸化の問題である。
【0022】
最後に、化学溶剤の再生エネルギーは大きく、CO
2捕捉プロセスのエネルギーの80%に達することがある(非特許文献3)。
【0023】
アミンの他に一定の無機化合物を化学溶剤として使うこともできる。例えば、バンフールド(Banfield)プロセスではカリウム塩またはソーダ塩を用いてCO
2を捕捉する。一般には溶剤中で20%〜30%の炭酸カリウムを2〜3MPaの圧力で用いる。無機化合物の欠点は、得られたガス中にナトリウム塩および/またはカリウム塩が含まれる点にある。
【0024】
アンモニアでCO
2を捕捉することもできる。特に、アンモニアは活性物質1kg当たりMEAよりより多くのCO
2を捕捉でき、再生も容易である(非特許文献4)。しかし、アンモニアはその揮発性が問題になる。
【0025】
予備燃焼では、後燃焼法と比べて圧力(2.5MPaから50MPa)が非常に異なるため、物理吸収がCO
2を回収するベストの方法である
【0026】
物理吸収では物理溶媒を使用する。「物理溶媒」という用語はCO
2との化学相互作用が適度な溶剤を意味する。その欠点および利点は化学溶剤とは逆である。物理吸収では溶剤の能力は理想気体混合物のヘンリーの法則に従うが、化学吸収の溶剤の能力は圧力とリニアーな関係にない(非特許文献5)。従って、物理吸収は「高圧」プロセスに適している。
【0027】
従って、工業的技術の選択は多くのファクタ:CO
2の分圧、回収するCO
2のパーセンテージ、温度、不純物に対する感度、粒子の存在、腐食性や汚損性を最小にするための添加剤のコスト等に依存する。
【0028】
物理溶媒の例としてはメタノール(Rectisol、登録商標)、N−メチルピロリドン(Purisol、登録商標)、ポリエチレングリコール・ジメチルエーテル(Selexol、登録商標)が挙げられる。Lurgi社のRectisol(登録商標)プロセスでは−40℃のメタノールを使用し、再生のための再加圧段階数は高い。これはこのプロセスがエネルギーを多く消費することを意味する。
【0029】
化学溶剤と物理溶媒とを組み合わせたハイブリッド吸収プロセスもある。シェル社のSulfinol(登録商標)プロセスおよびLurgi社のAmisol(登録商標)プロセスが公知で、これらはそれぞれスルホランと、DIPAと、水との混合物(一つの変形例ではDIPAをMDEAに代える)およびメタノールと、MEAまたはDEAとの混合物を使用する。ハイブリッド・プロセスの強みは処理されるガスが高圧の場合である。
【0030】
これらの条件下で物理溶媒の一部を化学溶剤に代えることで吸収能力を大きく低下させずに再生エネルギーのコストを地球規模で減らすことができる。しかし、ハイブリッド溶剤を再生させるエネルギーコストは純粋な物理溶媒の場合よりはるかに高くなる(混合物中の化学溶剤の比率に依存する)。
【0031】
大規模貯蔵へのチャレンジではプロセスのエネルギー使用量を減らすことに本質がある。捕捉コストを30ユーロ/トン以下に引き下げるために欧州カストール・プロジェクトの一環としてデンマークで実験が行なわれている。
【0032】
エネルギー消費の以外の他の技術的課題は溶剤の酸化、設備の腐食、気相のロスで、これらの問題は今日の主要な回収コストに関係する。これらの課題の全てに対して多数の添加剤の使用を必要とする。
【0033】
従って、大規模な捕捉プロセスはこれらの全ての条件に依存するということは明らかである。実際のCO
2の捕捉、運搬および貯蔵の最適コストは1トン当たり60〜70ユーロで、その70〜80%は捕捉期に使う。投資額が大きいため、CO
2の捕捉技術は低濃度源よりも高エミッション源(火力発電所、セメント工場、生成設備、肥料製造プラント、製鉄、製鋼設備、CO
2の生産が集中する石油化学プラント)に適している。
【0034】
アミンまたはアミン混合物を用いた化学吸収の場合、CO
2の捕捉設備を備えた効率的なユニットは一定のエネルギー限界値を考慮に入れなければならない。欧州の規制では放出エネルギー量は捕捉したCO
21トン当たり200万キロジュール(120℃で加熱)を上回ってはならないことが必要である。
【0035】
冷却したアンモニアを使用する方法で煙道ガスから90%のCO
2を回収することができる。しかし、アンモニアの冷却に製造されるエネルギーの約10%を消費し、その後それをCO
2から分離しなければならない。
【0036】
現在使われている物理溶媒による吸収にも欠点がある。例えば、Rectisolプロセスでは非常に低い温度で高圧下のメタノールを使用し、そのエネルギーは再生と吸収との間の熱と圧力の差に依存する。
【0037】
従来法で使用される溶剤の中には高粘度のものがある。そのため、溶剤の循環により高いエネルギーコストを必要とし、再生階段でガスの速度が減速され、脱着が難しくなる。
【0038】
これら全ての点から、炭素酸化物、特にCO
2を捕捉する分野では技術の開発が必要であることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0042】
「ガス流」とは、燃焼煙道ガスまたは一般に産業設備で製造される任意ガスおよび/または蒸気のエミッションを意味する。このガス流は一般にCOおよび/またはCO
2を含むガス混合物であり、これはさらに窒素、水素、酸素、硫化水素、亜硫酸ガス、スチーム、その他を含むことができる。
【0043】
本発明方法は例えば大気圧より高い圧力を有するガス中に含まれるCOおよび/またはCO
2、好ましくはCO
2の回収に関するものである。このガスは一般に石炭のガス化(C+H
20<−>CO+H
2)または天然ガスのリフォーミング(CH
4+H
20<−>CO+3H
2)と、それに続く「水性ガスシフト反応」(CO+H
2+H
20<−2H
2+CO
2)によって製造される合成ガスである。例えば、炭酸ガスは水素を燃料として使用する目的で得られるガスから除去しなければならない。
【0044】
本発明者は、炭素酸化物、特にCO
2の捕捉(トラッピング)剤としてポリオキシメチレンジアルキルエーテルまたはPOMタイプの有機化合物を使用することによって上記目的の全でまたは少なくともその一部が達成できるということを発見した。
【0045】
P0M化合物自体は公知のものであるが、異なる用途で使用されている。例えばフランス特許第FR2881750号ではPOMは燃料電池の燃料として使用されている。欧州特許第EP1938684号公報および国際公開第W02010/001048号公報ではPOMをエンバーミングの分野で使用している。
【0046】
本本発明による炭素酸化物の捕捉(またはトラッピング)は、(ポリ)オキシメチレンジアルキルエーテル・タイプの一種以上の有機化合物から成る溶剤中への炭素酸化物の移動をベースにした吸収原理に基づいている。
【0047】
本発明の最初の観点に従うと、本発明は下記の式(1)の少なくとも一つの化合物の、炭素酸化物、特にCO
2の捕捉剤としての使用に関するものである:
X−(OCR
2)n−OX' (1)
(ここで、
nは1〜20、好ましくは1〜8の整数、
XおよびX'はそれぞれ独立してC
mH
2m+1基を表し、互いに同一でもことなっていてもよく、ここで、mは1〜20、好ましくは1〜10の数であり(この数は両端を含む)、
Rは水素またはXである)
【0048】
本発明で「(ポリ)オキシメチレンジアルキルエーテル」という表現は式(1)の化合物を含み、より詳しくはnが1である時のオキシメチレン・ジアルキルエーテルと、nが厳密に1より大きいときのポリオキシメチレ
ンジアルキルエーテルとを含む。
【0049】
式(1)の化合物でR基は互いに同一でも異なってもよい。RがXを表す場合、それはC
mH
2m+1を表し、mの値は1〜10、好ましくは1〜6(両端の値を含む)である。
【0050】
本発明の好ましい一つの実施例ではXおよびX'基は同一である。本発明の他の実施例ではRはHを表す。一つの特に好ましい具体例は、式X−(OCH
2)n−0Xの少なくとも一つの化合物(Xおよびnは上記で定義のもの)の炭素酸化物の捕捉薬剤としての使用にある。
【0051】
式(1)の化合物自体は公知で、メタノールおよびホルムアルデヒドから容易に製造できる。これら自体はメタノールから、またはホルムアルデヒド、トリオキサンの三量体から製造できる。この点に関しては下記文献の研究が参照できる。
【非特許文献6】J.F. Walker, ≡Formaldehyde≡, Robert E. Krieger Publishing Company, Huntington, New York, 3rd Edition from 1975
【0052】
すなわち、上記の合成方法は第167頁と第264頁に記載されている。これらの合成方法はアルコール(メタノールまたはエタノール)またはアセタール(メチラールまたはエチラール)とホルモールまたはその均等化合物との酸触媒を用いた反応を屁―スにしたものである。このタイプの合成方法は例えば下記とにも記載されている。
【特許文献1】米国特許第US2449469号明細書
【特許文献2】日本特許第JP47−40772号公報
【0053】
下記特許にはメチルまたはエチルアルキル基を有する対称なポリオキシメチレン・ジアルキルエーテル・タイプの化合物の合成方法が記載されている。
【特許文献3】米国特許第US6350919号明細書
【0054】
ルイス酸タイプの触媒をベースにした他の合成方法も公知である。ルイス酸タイプのイオン触媒を用いた安定したポリオキシメチレン・ジエーテルの合成方法は下記特許に記載されている。
【特許文献4】英国特許第GB1120524号公報
【0055】
本発明の好ましい一つの実施例では、式(1)の化合物の合成を溶剤なしで、トリオキサンとアセタールを含む混合物を酸触媒、例えば酸性樹脂(Amberlyst(登録商標)A15グレードは効果的な触媒の一つである)を使用して実行する。反応温度は一般に20〜80℃、好ましくは40〜50℃で、反応は大気圧で行うのが好ましい。
【0056】
トリオキサン/アセタールのモル比は一般に0.75程度である。一般にこの合成方法で得られる製品はメチレン基の数nが比較的大きく分布したものから成る。蒸留による分離で「軽質」成分と「重質」成分とを回収することができる。
【0057】
メチラールを使用した場合、Mがメチル基を表すポリオキシメチレン/MMが作られ、エチラールをし卯した場合、Eがエチル基を表すポリオキシメチレン/EEが作られる。もちろん、アセタールの混合物も可能で、その場合に形成された製品は混合物からなり、それを蒸留によって分離する。
【0058】
XとX'が異なる非対称POMすなわち一般式(1)に対応するものは、上記プロセスに従って直接合成するか、2つの異なる対称なPOM(XとX'が同じ)のトランスアセタール化(transacetalization)で得られる。
【0059】
メチラールまたはジメトキシメタンは式(1)の化合物の第1メンバーを表し、この場合、nは1で、式CH
3−0−CH
2−OCH
3に対応する。ポリオキシメチレン・ジメチルエーテルはnの値が1以外の上記定義の数を表す式CH
3−(OCH
2)
n−OCH
3に対応する。
【0060】
式(1)の化合物の他の例は(ポリ)オキシメチレンジエチルエーテル、式(1)(XとX'が同一)の対称化合物のための(ポリ)オキシメチレン・ジプロピル・エーテル、(ポリ)オキシメチレンジブチルエーテルおよび例えば式(1)(XとX'が異なる)の不斉化合物のための(ポリ)オキシメチレンメチル・エチルエーテル、CH
3−(OCH
2)
5−0C
2H
5であるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明の一つの有利な具体例は、CH
3−(OCH
2)−OCH
3、CH
3−(OCH
2)
2−OCH
3、CH
3−(OCH
2)
3−OCH
3、CH
3−(OCH
2)
4−OCH
3、CH
3−(OCH
2)
5−OCH
3、CH
3−(OCH
2)
6−OCH
3、CH
3−(OCH
2)
7−OCH
3、CH
3−(OCH
2)
8−OCH
3、0
2H
5−(OCH
2)−0C
2H
5、C
2H
5−(OCH
2)
2−OC
2H
5、C
2H
5−(OCH
2)
3−OC
2H
5、C
2H
5−(OCH
2)
4−OC
2H
5、C
2H
5−(OCH
2)
5−OC
2H
5、C
2H
5−(OCH
2)
6−OC
2H
5、C
2H
5−(OCH
2)
7−OC
2H
5、C
2H
5−(OCH
2)
8−OC
2H
5、C
4H
9−(OCH2)−OC
4H
9、CH
3−(OCH
2)−0C
2H
5、1,1,2,2−テトラエトキシエタン、1,1,3,3−テトラエトキシプロパン、1,1,3,3−テトラメトキシプロパンおよびこれらの任意比率の混合物の中から選択される少なくとも一つの化合物、特に好ましくはCH
3−(OCH
2)−OCH
3、CH
3−(0CH
2)
2−OCH
3、C
2H
5−(0CH
2)−0C
2H
5、C
4H
9−(OCH
2)−OC
4H
9、l,1,2,2−テトラエトキシエタン、1,1,3,3−テトラエトキシプロパン、1,1,3,3−テトラメトキシプロパンおよびこれらの任意比率の混合物の中から選択されるものの使用にある。
【0062】
本発明の他の実施例では、本発明の必要条件としてnが2〜20、好ましくは2〜8の整数である式(1)の少なくとも一つの化合物を使用するのが好ましい。
【0063】
nが厳密に1より大きい上記定義の式(1)の化合物は沸点が高いので、完全に適した化合物である。すなわち、すでに述べたように、本発明の必要条件として、高い沸点、より詳しくは沸点が50℃以上、好ましくは100℃以上の化合物を使用するのが好ましい。
【0064】
本発明のさらに他の好ましい具体例は、本発明は式(1)の少なくとも一つの対称化合物(すなわちXとX'が同一)の使用にある。他の好ましい実施例では、本発明は、Xがメチル基かエチル基を表し、nが2〜8(両端を含む)である式(1)の化合物の混合物の使用にある。
【0065】
本発明の一つのより好ましい実施例では、本発明はnが2〜8(両端を含む)で、下記のモルパーセン特許で表される組成を有する式CH
3−(OCH
2)n−0CH
3の化合物の混合物である式(1)の少なくとも一つの化合物の使用にある。
【0066】
本発明の特に好ましい実施例の組成物はnが2〜8(両端を含む)で、下記のモルパーセン特許で表される組成を有する式CH
3−(OCH
2)n−0CH
3の化合物の混合物である式(1)の化合物の混合物の使用にある。
【0067】
本発明のさらに他の好ましい実施例では、本発明はnが2〜8(両端を含む)で、下記のモルパーセン特許で表される組成を有する式CH
3−(OCH
2)n−0CH
3の化合物の混合物である式(1)の化合物の混合物の使用にある。
【0068】
上記の式(1)の化合物または式(1)の化合物の混合物はそれ単独で使用するか、一種以上の溶剤との混合物として使用することができる。
【0069】
一般に、式(1)の化合物またはその混合物は化合物の混合物または式(1)の化合物と少なくとも一種の溶剤とのの総重量に対して0.1〜99重量%の量で存在する。
【0070】
本発明で使うことができる溶剤の例は直鎖アルコール類から成り、好ましくは直鎖アルコール、ケトン、ポリエチレングリコール、硫黄含有溶剤、例えばスルホラン、窒素含有溶剤、例えばN−メチルピロリドン、その他である。
【0071】
本発明の他の観点から、本発明は少なくとも一つの炭素酸化物を含むガス流を式(1)の少なくとも一種の化合物と接触させる階段を少なくとも一つ含む、炭素酸化物、例えばCOおよび/またはCO
2、好ましくはCO
2を捕捉する方法に関するものである。
【0072】
上記の接触段階の前に、ガス流中に存在する炭素酸化物以外の化合物の少なくとも一つを除去するために、ガス流を前処理することもできる。
【0073】
本発明方法でCOおよび/またはCO
2を捕捉する前のガス流のCOおよび/またはCO
2のような炭素酸化物の含有量は、−40℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃の温度かつ0.1MPa〜8MPa、好ましくは0.1MPaか5MPaの圧力下で、1〜100容積%、好ましくは1〜90容積%、好ましくは1〜50容積%含むのが有利である。
【0074】
本発明の一実施例では、炭素酸化物の捕捉プロセスを−40℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃の温度で吸収塔で実行する。カラムの圧力は0.1MPa〜8MPa、好ましくは0.1〜5MPaにする。
【0075】
使用するカラムは任意タイプのものにすることができ、例としては多孔板塔、バルブ・カラム、泡鐘塔、ランダムなパッキンを収容したカラムまたは構造化パッキンを収容したカラムを挙げることができる。
【0076】
本発明の捕捉方法の一つの実施例では、0.1MPaかつ25℃での[式(1)の化合物/炭素酸化物]の比は、炭素酸化物、例えばCO
2の1NTPリットル当たりに対する式(1)の化合物のkgで0.1〜0.33の間にあるのが有利である。この比はCO
2のNTPリットル当たり式(1)の化合物が0.10〜0.20kgであるのが好ましい。
【0077】
本発明方法では、炭素酸化物の捕捉が炭素酸化物の物理吸収によって行われる。すなわち、炭素酸化物と物理吸収溶剤(式(1)の化合物)との間には化学反応がない。従って、本発明の溶剤の再生は容易である。
【0078】
本発明者は、驚くことに、式(1)の化合物が炭素酸化物、特にCO
2を完全に物理的機構で、極めて顕著に、吸収できるということを発見した。さらに、この化合物は沸点が十分に高く、炭素酸化物、特にCO
2をアミンよりも化学的に安定して捕捉でき、腐食現象はほとんどない。
【0079】
本発明方法では、式(1)の少なくとも一つの化合物、好ましくはCH
3−(OCH
2)
2-9−OCH
3、CH
3−(OCH
2)
2-4−OCH
3およびCH
3−(OCH
2)
4-8−OCH
3の中から選択される化合物を使用するのが有利である。
【0080】
本発明方法は、ガス流中に含まれる炭素酸化物を捕捉し、最後に、式(1)の少なくとも一つの化合物と、少なくとも一種の炭素酸化物、一酸化炭素および/または二酸化物、好ましくは炭酸ガスとから成る吸着剤(すなわち「濃縮された溶剤」となる。
【0081】
本発明のさらに他の観点から、発明は、濃縮された溶剤」の圧力を減圧する、好ましクレームは大気圧に下げる階段、および/または、「濃縮された溶剤」の温度を100℃以下、好ましくは50℃以下の温度に下げる階段を少なくとも一つ有する、濃縮された溶剤の再生プロセスに関するものである。
【0082】
本発明の一つの好ましい実施例では、濃縮された溶剤の再生、特に、炭素酸化物の捕捉圧力(吸収圧力)が0.1MPa以上の場合の再生を溶剤の減圧で実行する。この放圧膨張による再生は従来法では濃縮された溶剤をフラッシュドラムに送ることで実行される。
【0083】
すなわち、炭素酸化物が極めてリッチなガス混合物(その含有量は処理されるガス流中の他の化合物に対する溶剤の選択性に依存する)または炭素酸化物の量か減少した溶剤が得られ、その炭素酸化物の残存含有量は膨張圧力に依存する。
【0084】
炭素酸化物がリッチなガス混合物および/または炭素酸化物が減少した溶剤を、必要に応じて、一回または複数の減圧および/または温度上昇の再生階段で処理することもできる。
【0085】
本発明のさらに他の観点から、本発明はかきの段階を交互または連続して有する、炭素酸化物、COおよび/またはCO
2を連続的に捕捉する連続方法にも関するものである:
(1)少なくとも一種の炭素酸化物を含むガス流を、その炭素酸化物の吸収剤としての式(1)の化合物と接触させる少なく一回の階段、
(2)濃縮された溶剤を減圧する、および/または、濃縮された溶剤の温度を上昇させて溶剤を再生させる少なくとも一つの階段。
【0086】
上記プロセスで再生された溶剤は、炭素酸化物の吸収(捕捉段階)で再び使用され、それから再生され、これを繰り返す。
【0087】
この連続プロセスは炭素酸化物を多量に製造する工業設備に組み込んで、炭素酸化物を大気中に放出するのではなく、捕らえて貯蔵するのに有利である。従って、本発明方法は地球温暖化の原因となる炭素酸化物のエミッションを効果的に減少させることができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例1
ポリオキシメチレン/MM2−8(DMPOM2−8)の合成
凝縮器、攪拌機および温度計を備えたジャケット付きの500ml丸底フラスコ中に、100gのメチラールと、30gのトリオキサンと、5gのアンバーライト(Amberlyst、登録商標)A15樹脂とを導入する。混合物全体を50℃にし、この温度を1時間維持する。
【0090】
次いで、反応液を10gの苛性ソーダの15重量%溶液で洗浄し、残存するメチラールを200hPa下90℃の回転乾燥フラスコ中に回収する。蒸留することによって32gのnが2〜8であるポリオキシメチレン/MMを得た。
【0091】
実施例2
DMPOM2−4およびDMPOM4−8の合成
実施例1で得た製品を蒸留してCH
3−(OCH
2)
2-4−OCH
3が濃縮された「軽質」留分と、CH
3−(OCH
2)
4-8−0CH
3が濃縮された「重質」留分とを得る。
【0092】
実施例3
メチラールを使用したCO2の捕捉テスト
真空ポンプに連結され、吐出弁と細かい目盛を有するマノメータとを備えた絶対圧力が10バールのCO
2を収容した一リットルのバラストに連結された、温度計を備えたジャケット付きスチールの1リットルの反応装置中に250gのメチラールを入れる。
【0093】
最初に、反応装置を真空下に(<10mmHg)に置いて脱気して、溶剤と最初から存在するか、減圧して溶剤から脱気した空気とを追い出す。
【0094】
反応装置を密封し、溶剤を真空下にしたまま、温度を25℃にセットし、CO
2を導入し、吐出弁をコントロールして溶剤を収容した反応装置を絶対1バールに維持する。溶剤の攪拌を始めると直ぐにCO
2の可溶化に対応する圧力減少が観測される。CO
2は初期の圧力が20.0絶対バールのバラストから来る。
【0095】
溶剤が00
2で飽和するとバラスト中の圧力減少はなくなり、最終圧力に達する。バラストの圧力差((P初期−P最終)と、設備の(溶剤なしの)空容積と、溶剤容積と、反応装置中の圧力および温度とが分かれば、理想気体の法則を適用して、溶剤によって可溶化されたCO
2の容積を演繹することができる。
【0096】
1バールの圧力下で計測した後、圧力を段階的に増加し、15バールの圧力まで新たに計測を行う。CO
2の圧力を関数としたCO
2の可溶性曲線(純粋な溶剤1kg当たりのガスの標準リットル数)は起点を通り、低下する。得られた直線係数を[表1]に示す。
実施例4
DMPOM2−8を使用したCO2の捕捉テスト
250gのメチラールを250gの実施例1で得られた製品(DMPOM2−8という)に代えて実施例3を繰り返した。結果は[表1]に示した。
実施例5
DMPOM2−4を使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gの実施例2で得た製品(DMPOM2−4という)に代えた。結果は[表1]に示した。
実施例6
DMPOM4−8を使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gの実施例2で得た製品(DMPOM4−8という)に代えた。結果は[表1]に示した。
【表1】
【0097】
上記の実施例3〜6のテスト結果から、平均分子量が低下するとCO
2可溶性が高くなるということが容易に観測される。CO
2の量と圧力との間に完全な直線関係があることも分かる。
【0098】
実施例7(比較例)
NMPを使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gのN−メチルピロリドン(NMP)に代えた。結果は[表2]に示した。
【0099】
実施例8(比較例)
DMSOを使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gのジメチルスルホキシド(DMSO)に代えた。結果は[表2]に示した。
【0100】
実施例9(比較例)
テトラリンを使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gのテトラヒドロナフタレン(テトラリン)に代えた。結果は[表2]に示した。
【表2】
【0101】
本発明のPOM誘導体は、比較例7〜9の従来の物理溶媒と比較して、実質的により大きな可溶性を示すことが分かる。
【0102】
実施例10(比較例)
DMDEGを使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gのジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDEG)に代えた。結果は[表3]に示した。
【0103】
実施例11(比較例)
DMTriEGを使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gのトリエチレングリコール・ジメチルエーテル(DMTRiEG)に代えた。結果は[表3]に示した。
【0104】
実施例12(比較例)
DMTetraEGを使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gのテトラエチレングリコール・ジメチルエーテル(DMTetraEG)に代えた。結果発明[表3]に示した。
【0105】
実施例13(比較例)
DMPEG150を使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gの平均分子量が150グラム/モルのポリ(エチレングリコール・ジメチルエーテル)(DMPEG150))に代えた。結果発明[表3]に示した。
【0106】
実施例14(比較例)
DMPEG250を使用したCO2の捕捉テスト
実施例3を繰り返したが、250gのメチラールを250gの平均分子量が250グラム/モルのポリ(エチレングリコール・ジメチルエーテル)(DMPEG250)に代えた。結果発明[表3]に示した。
【表3】
【0107】
ジメチル・エチレングリコールのファミリーでは、分子量がより低い化合物がCO
2の可溶性が低いことが観測される。しかし、本発明のPOMのファミリーの中の化合物では、DMPOM2−4(分子量152グラム/モル)がDMDEG(分子量134グラム/モル)より良い結果を示す。
【0108】
従って、特定の理論に拘束されるものではないが、O−C−O−Cの繰り返しがO−C−C−Oの繰り返しよりより有効であると本発明者は考える。
【0109】
繰返し単位の数が同じ場合、POM(本発明のもの)が常にジエチレングリコール(DEG)より良い結果を与えることが観察ささる。
【0110】
さらに、POMはDEGより粘度が小さく、それによって炭素酸化物、特にCO
2を捕捉する用途ではエネルギーの観点から利点になるという点にも注目されたい。。