(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
伝搬特性がシングルモード、あるいは、マルチモードにかかわらず、近年、複数の光ファイバーを細密充填で例えば7本束ねることで、出力に制限のあるレーザー光源7基の出力光を結束し、実効出力を7倍にする技術が実用化されている。
【0003】
また、光情報通信分野や光ファイバーセンシングの分野では、シングルモード光ファイバー多芯化の研究が進められている。
【0004】
通常のシングルモード光ファイバーは屈折率の異なるコアとクラッドからなり、相対的に屈折率の高いコア材からなるコアを、相対的に屈折率の低いクラッド材からなるクラッドで覆った構成である。従って、コアの断面は円形であり、またクラッドの断面はドーナッツ型である。また、屈折率の異なるコアとクラッドを用いる代わりに、光が進行する実質的コア部分の周辺を「空孔(ホール;屈折率は極めて低い)」で取り囲んだ「ホーリーファイバー」の開発も進められている。このような「コア・クラッド型シングルモード光ファイバー」および「ホーリーファイバー」ともに、光の透過するコア部分の直径約数μmないし10μmに対して、1本の光ファイバー全体としての外径・直径は、通常100μm以上である(非特許文献1)。この直径は、光学的な要請でなく、製造上、断線を避けるための強度を維持するために大きさが定められており、1本の光ファイバーとして、非常に注意深く製造する場合、直径80μm程度までは小さくすることができるとされている。
【0005】
一方、光通信および光情報伝送分野において、通常、「多芯光ファイバー」とは、通常の光ファイバーを、単純に束ねたものをいう。一般にシングルモードあるいはマルチモードにかかわらず、個々のクラッド直径125μmの多芯光ファイバーが広く用いられている。特許文献1には、光ケーブルのコンパクト性を改善することを可能とするとともに通信ケーブル用の多重導波路型光伝導体の製造を容易にする製造方法を提供することを目的として、前記伝導体が、円筒形シリカブロック内に埋設された複数の円筒形基本光ファイバーを有し、各々の円筒形基本ファイバーがコアおよびクラッドにより形成され、前記基本ファイバーのすべてのコアが前記円筒形ブロックと同じ軸線を有する円筒体の母線上に規則的に配置される方法において、前記方法が以下の段階:複数の円筒形基本プレフォームと共に円筒形シリカロッドからプレフォ−ムを形成する段階であって、前記円筒形シリカロッドはその外側表面上の母線に沿って走る複数の溝を有し、前記円筒形基本プレフォームの各々がクラディングガラスにより囲まれたコアガラスから形成され、かつ部分的に前記円筒形シリカロッド内に収容されており、前記プレフォームが、形成されるべき基本ファイバーと同数の基本プレフォームを含み、かつ製造されるべき伝導体と同一の形状を有する段階と、この方法で形成された前記プレフォームにプラズマ技術被覆方法を用いてシリカ粒子を加えることにより均一な円筒形外側表面形状を与える段階と、このように得られたアセンブリからファイバー線引作業を行い、前記ファイバー線引作業の後、基本ファイバーが前記シリカブロックに埋設された前記伝導体を得る段階とからなる通信ケーブル用の多重導波路型円筒形光伝導体の製造方法が開示されており、コアおよびクラッドの直径としては、ファイバー線引作業の後、コアが約8μmから10μmの直径を有し、クラッドが25μmから35μmの範囲にある外径を有する基本ファイバ−を得るように基本プレフォームの横断寸法を選択する、と記載されている。この製造方法で作成される多芯光ファイバー(特許文献1においては「多重導波路型円筒形光伝導体」と記載されている)は、その製法から明らかなように両端面が束ねられた状態で製造されるため、一方の端面において個々の光ファイバー(導波路型円筒形光伝導体)を1本ずつ独立させて取り扱うこと、例えば、1本ずつ別々の単独光ファイバーに接続させることは事実上不可能である。
【0006】
特許文献2には、コアと、直径が約40μm以下のクラッドとを有し、コアとクラッドの比が約1対3以上である複数本の光ファイバーと、少なくとも先端部を集束することにより該複数本の光ファイバーを所定の位置関係でフェルールに収納固定した集束部と、を備えることを特徴とするバンドルファイバーが開示されている。
【0007】
特許文献3,4および5においては、一方の端面において複数の隣接するシングルモード光ファイバーの中心間距離を特定の値以下(40μm程度)に接近させて並行に束ねて配置し、一方から制御光を、他方から信号光を出射させることによって、熱レンズ方式光制御式光路偏向光路偏向スイッチを極めて効率的に動作させることができることが開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概略構成図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。
【
図3】比較実施例2の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。
【
図4】本発明の第3の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。
【
図5】本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。
【
図6】比較実施例3の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。
【
図7】本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーのファイバー被覆部をバンドルした部分の概念構成図である。
【
図8a】本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの一例を示す光学研磨面から見た構成図である。
【
図8b】本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの一例であって、
図8aのA部分の拡大模式図である。
【
図8c】本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの一例の側面図である。
【
図8d】本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの一例の上面図である。
【
図9】本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーに用いられる上側W字型溝基板と下側W字型溝基板を石英基板上に複数形成した後、切り出す製法を表す概念図であり、(A)は切り出す前の平面図であり、(B)は切り出し前の(A)の側面図であり、(C)は切り出し後の上側W字型溝基板の斜視図であり、(D)は切り出し後の下側W字型溝基板の斜視図である。
【
図10】本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーに用いられる上側W字型溝基板と下側W字型溝基板を石英基板上に複数形成した構造の一例の斜視図である。
【
図11】本発明の第5の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。
【
図12】本発明の第6の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。
【
図13】本発明の第7の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。
【
図14a】本発明の第1の実施の形態における端面近接多芯光ファイバーの製造工程の一部を表す概念図である。
【
図14b】本発明の第1の実施の形態における端面近接多芯光ファイバーの製造工程の一部を表す概念図である。
【
図14c】本発明の第1の実施の形態における端面近接多芯光ファイバーの製造工程の一部を表す概念図である。
【
図14d】本発明の第1の実施の形態における端面近接多芯光ファイバーの製造工程の一部を表す概念図である。
【
図14e】本発明の第1の実施の形態における端面近接多芯光ファイバーの製造工程の一部を表す概念図である。
【
図15a】本発明の第1の実施の形態における端面近接多芯光ファイバーの製造に用いられる製造装置を表す概念構成図である。
【
図15b】
図15a内の鎖線1411で囲った部分を拡大した図であり、
図15cのB−B’線に沿った断面図である。
【
図15c】
図15a内の鎖線1411で囲った部分を拡大した図であり、
図15bのA−A’線に沿った断面図である。
【
図16】比較実施例1の端面近接多芯光ファイバー断面の光学顕微鏡写真をトレースした図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1、
図14a〜14e、
図15a〜15cを用いて、本発明の第1の実施形態に係る端面近接多芯光ファイバーの構成の一例を以下に説明し、併せて端面近接多芯光ファイバーの製造方法を説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態の端面近接多芯光ファイバー100の概略構成図であり、下側V字型溝基板101に設けられたV字型断面の案内溝11に、実線、鎖線および点線で表示される3種類の光ファイバー、各々、6本(121,122,131,133,142,143)、3本(111,141,144)および1本(132)の合計10本、および上側平面基板102のすべてが組み立てられた状態を表している。ここでは載置される光ファイバーが3種類の場合を例示したが、載置される3本以上の光ファイバーの種類が同一であっても差し支えない。
【0017】
図14a〜14eは、端面近接多芯光ファイバー100の製造工程の要点を表す概念図である。また、
図15aは本発明の第1の実施の形態における端面近接多芯光ファイバーの製造に用いられる製造装置を表す概念構成図であり、
図15bおよび15cは
図15aの一部を拡大した断面図である。
【0018】
端面近接多芯光ファイバー100の製造工程の第1段階では、
図14aに示す加工前の基板1301の表面に、
図14bに示すように、切削加工により案内溝11を形成し、下側V字型溝基板101を作成する。基板1301の材質としては石英ガラス(天然石英ガラス、合成石英ガラスなど)を好適に使用することができる。外径が同一の光ファイバーを複数結束・載置するにあたり、V字型断面の案内溝11を構成する案内壁151および152のなす角は幾何学的な考察から正確に60度であることが好ましい。この角度のV字型溝を切削加工するためのダイアモンド・ダイス(図示せず)の切削部分の角度60度に許される公差は、+0.01度〜−0度以下であることが推奨される。言うまでもなく、この角度の公差が上記よりも大きいと、光ファイバーを数段重ねて載置したとき、光ファイバー中心間隔が所定の値よりも大きくなり、一方、角度の公差が上記の値よりも小さいと、溝の間隔が狭くなって、光ファイバーを数段、積み重ねることができなくなる。このダイスの先端は例えば、半径rの円に内接する曲面であることが好ましい。ダイス先端の半径rは、載置する光ファイバーの外径を2Rとすると、r:Rは1:2〜3程度であることが好ましい。例えば、光ファイバーの外径が30μmの場合、ダイス先端の半径rは10〜15μmであることが好適である。この値よりも小さいとダイス先端の損耗が激しくなり、一方、大きいと第1層に載置する光ファイバー111と接触する案内壁151および152の精度が悪化するおそれがある。V字型断面の案内溝11の切削精度(進直度)を3次元で表示するにあたり、案内溝の中心線11(
図1および
図13bにおける縦方向の一点破線)をy軸、このy軸に垂直で
図1の平面に平行な方向をx軸、同じく
図1の平面に垂直な方向をz軸と定義し、案内溝11に載置される光ファイバー(例えば111)の中心のx軸方向の変位をdx、また、y軸方向の変位をdyと表記し、載置する光ファイバーの外径を2Rとすると、dx:Rまたはdy:Rは1:30ないし300であることが好ましい。dx:Rまたはdy:Rが30よりも小さいと、光ファイバーを案内壁に押しつけて接着するとき光ファイバーが小さな屈曲を起こし、光の透過損失が大きくなってしまう。一方、dx:Rまたはdy:Rの上限は加工精度の上限に依存する。V字型断面の案内溝11の進直度に加え、案内壁151および152の表面粗さについては、通常の光学研磨された石英基板表面と同程度であれば好適である。
【0019】
基板101の寸法としては、案内溝の中心線11(
図1および
図14bにおける縦方向の一点破線)をy軸、このy軸に垂直で
図1の平面に平行な方向をx軸、同じく
図1の平面に垂直な方向をz軸と定義したとき、例えば、載置する光ファイバーの長手方向(z軸方向)において、案内溝11の全長は2〜10mm、クラッド径が太くなる部分までの長さ5〜20mm、更に光ファイバー被覆部分までの長さ8〜20mm、合計15〜50mmである。幅(x軸方向の長さ)については例えば1〜10mm、案内溝のない部分の厚さ(y軸方向の長さ)は例えば0.5〜5mmである。
【0020】
基板101の案内溝11に複数本数、載置される光ファイバーは、<外径が同一>という条件さえ満足すれば、任意の組成および伝搬特性のものを使用することができる。また、組成および伝搬特性の異なる複数種類の光ファイバーを所望の配置で載置することができる。例えば、コアおよびクラッドが石英製のシングルモードまたはマルチモードの光ファイバー、透過波長特性の異なる石英製シングルモードまたはマルチモードファイバー、プラスチック製光ファイバー、などを任意の所望の配置で載置可能である。更にまた、一部のファイバーを、光伝送には用いず、単にその他の光ファイバーの配置を維持するためのダミーファイバーとして載置することもできる。例えば、端面近接多芯光ファイバー100を熱レンズ方式1×7型光制御光スイッチとして利用する場合、中心に位置する光ファイバー132として透過波長特性が1310〜1550nmの光通信帯域に適したシングルモード光ファイバーを用い、その周辺の6本のファイバー121,122,131,133,142,143として透過波長特性が960〜1060nmの熱レンズ制御光に適したシングルモード光ファイバーを用い、更に、光ファイバー111,141,144を、全体の位置決めのためのダミーファイバーとすることができる。
【0021】
基板101の案内溝11に載置される光ファイバーは、<外径が同一>という条件を満足する必要がある。ここで、当該外径を<2R>で表した場合、基板101の案内溝11に載置される光ファイバーは以下の基準で選別される。なお、案内溝の中心線11(
図1および
図13bにおける縦方向の一点破線)をy軸、このy軸に垂直で
図1の平面に平行な方向をx軸、同じく
図1の平面に垂直な方向をz軸と定義する。
【0022】
(1)案内溝11の長さ方向(z軸方向)において、外径が2R以内であること;2Rを越えるものは一切使用してはならない。
【0023】
(2)案内溝11の長さ方向(z軸方向)において、外径が2Rよりも小さい場合、その公差をrで表すと、公差rの設定次第で、端面近接多芯光ファイバー100全体の精度および製造上の歩留まりが決定される。即ち、公差rの設定は必須条件ではなく、設計条件である。例えば、端面近接多芯光ファイバー100を熱レンズ方式1×7型光制御光スイッチとして利用する場合、公差rはできる限り小さいことが好ましく、r:Rは1:100以下であれば好適である(例えば、光ファイバー外径30.0μmの場合、公差+0、−0.3μm)。一方、光パワーコンバイナーとして、光ファイバーを結束する場合であれば、r:Rは1:10であっても差し支えない場合もある。
【0024】
以上のように、用途・目的に応じて選別された光ファイバーを、以下、3本以上、案内溝11へ載置する。
【0025】
図14cは、下側V字型溝基板101の案内溝11へ、第1層(最下層)の光ファイバー111を載置する際の概念図である。光ファイバー111は矢印1111および1112の指示する2点(断面図上は点であるが、実際は2本の線)で各々案内壁151および152に直接、接触する。この接触を案内溝11の全長に渡って確実に達成するため、本発明の製造方法においては、光ファイバー押しつけ治具106の先端部分105を介して、光ファイバー111を案内溝11へ押しつける方法を採用している。光ファイバー押しつけ治具106は、例えば内径が30.2μmの金属パイプ内を前後に移動可能な直径30.0μmの金属棒を微細電磁石によって前後に移動するものであって、光ファイバー111の押しつけ応力を電流量で監視することによって、過度な押しつけによって光ファイバー111が破損することを避けながら、最適な応力で押しつけを可能とするものである。光ファイバー押しつけ治具106の先端部分105は、治具106の動作を忠実に光ファイバー111へ伝えるための重要な部材である。先端部分105の材質としては、フッ素化ポリエチレン誘導体、架橋シリコーン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂などの、強度を持った合成ゴムを好適に用いることができる。また、先端部分105の断面形状は、
図14cに示すような逆V字型が好ましい。このような断面形状によって、光ファイバー押しつけ治具106の押しつける力を忠実に光ファイバー111へ伝達することができる。なお、光ファイバー押しつけ治具106を複数用いて、光ファイバー111の微細屈曲を避けて、正しく載置・接着する方法および装置については、後に詳しく述べる。
【0026】
図14dに示すように、案内溝11の全長に渡って、光ファイバー111が正しく載置・接着された後、第2層の第1番目の光ファイバー121が、案内壁151と第1層に載置された光ファイバー111の側面に対し、各々矢印1211および1212の指示する位置で直接接触するよう、光ファイバー押しつけ治具106の先端部分105によって位置を確定され、載置される。ここで、光ファイバー押しつけ治具106の中心軸は、先に定義した基板101の方位x,y,zのy軸に対し、15度傾けることによって、押しつける力を有効に作用させることができる。
【0027】
図14eに示すように、案内溝11の全長に渡って、光ファイバー121が正しく載置・接着された後、第2層の第2番目の光ファイバー122が、案内壁152と第1層に載置された光ファイバー111の側面に対し、各々矢印1221および1222の指示する位置で直接接触するよう、光ファイバー押しつけ治具106の先端部分105によって位置を確定され、載置される。ここで、光ファイバー押しつけ治具106の中心軸は、先に定義した基板101の方位x,y,zのy軸に対し、15度傾けることによって、押しつける力を有効に作用させることができる。
【0028】
以下、案内壁151と光ファイバー121の側面を基準として光ファイバー131を、光ファイバー121と122の側面を基準として光ファイバー132を、光ファイバー122と案内壁152を基準として光ファイバー133を載置・固定し、更に、同様にして、光ファイバー141〜144を載置・固定する。
【0029】
以上のようにして、配置を規定して載置・固定、結束した多芯光ファイバーは、通常、結束した側の端面の出射面の各々を整え、かつ、個々の光ファイバー端面を同一平面に揃えるため、端面研磨工程にかけられる。端面研磨を行う場合、研磨の際に個々の光ファイバーにかかる応力に耐え、光ファイバーの位置が変化しないようにするため、最上層の光ファイバー141〜144および下側V字型溝基板101の上面へ、上側平面基板102を強固に接着することが強く推奨される。さもないと、研磨の応力に負けて光ファイバーが脱落したり、光ファイバー端面が同一にならなかったりする。なお、研磨を行う必要がない用途の場合、上側平面基板102は無用である。
【0030】
図15aは発明の第1の実施の形態における端面近接多芯光ファイバーの製造に用いられる製造装置を表す概念構成図であり、
図15bおよび15cは
図15aの鎖線1411で囲われた部分を拡大した断面図である。剛性の高い光学基盤1401の上に、下側基板固定用架台1402を介して、下側基板1410(これは
図1および
図14b〜14dにおける下側V次型溝基板101に相当する)を確実かつ堅固に固定する。また、光学基盤1401の上に、架台1404および1405を介して取り付けられた、光ファイバー押しつけ治具の微動機構1406から下方に伸びた光ファイバー結束部分用押しつけ治具1451と1452,1453および1454(これらは
図14c〜14dにおける光ファイバー押しつけ治具106に相当する)は、光ファイバー結束部分1441、同クラッド径拡大部分1442、同被覆部分1443を下側基板1410へ押しつけるものである。なお、光ファイバー結束部分1441を押しつける治具は1451と1452の2基のみ図示しているが、例えば0.5mm間隔で多数設けても良い。
図15bに示すように、光ファイバー結束部分用押しつけ治具1451と1452,1453および1454は、各々の先端に取り付けられた光ファイバー押しつけ治具の先端部分1461,1462,1463,1464(これらは
図14c〜14dにおける光ファイバー押しつけ治具の先端部分105に相当する)を介して、光ファイバー結束部分1441、同クラッド径拡大部分1442、同被覆部分1443を下側基板1410へ押しつける。光ファイバー押しつけ治具の微動機構1406は、例えば前述のように磁力によって、光ファイバー結束部分用押しつけ治具1451〜1454(
図14c〜14dにおける光ファイバー押しつけ治具106に相当する)を精密に駆動する。また、光ファイバーを下側基板1410の案内溝へ最初に載置するにあたり、上方に引き上げられた光ファイバー結束部分用押しつけ治具1453と1454、および、各々の先端部分1463と1464の内部に各々設けられた吸気孔(図示せず)を用い、エアーチャッキング方式にて光ファイバークラッド径拡大部分1442および同被覆部分1443を吸引・固定した後、光ファイバーを下方に移動させることによって、光ファイバーの取り付けを円滑に行うことができる。
【0031】
図15aに示すように、架台1405には紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線光源1480、および、光ファイバーの載置状況を監視するための顕微鏡1470が取り付られている。
【0032】
以上の工程において、光ファイバー相互および案内壁の固定に用いられる接着材としては、例えば、光ファイバー接着用として公知の紫外線硬化樹脂を任意に使用することができる。ここで、接着される光ファイバー相互および案内壁は空間を介さず、直接(2本の線)で密着しているため、紫外線硬化樹脂の硬化収縮に対する配慮は、ほぼ無用である(硬化収縮が大きく、接着層にひび割れが起こることは避ける必要がある)。ここで、光ファイバーと下側基板の案内溝との隙間、例えば隙間1440の内部へ接着剤を注入するには、後工程で重要となる案内壁および光ファイバー側面を汚染しないよう、注入方法および注入量には細心の注意が必要である。具体的には、粘度が低く流動性の高い接着剤を、位置を精密に移動可能な注入ノズル1430から毛管現象を利用して浸透させた後、光源1480から紫外線を照射し、硬化させる方法が有効である。
【0033】
図15aに示すように、光ファイバーの非結束端は、当該光ファイバーの透過波長特性に応じたレーザー光源1420へ接続され、以下のようにして、光透過特性および出射ビームの方位を確認しながら、光ファイバー結束部分1441を下側基板1410へ押しつける力と分布を微調整し、接着剤注入ノズル1430から注入される紫外線硬化樹脂を紫外線で硬化させることによって載置・固定される。光透過特性については、光学基盤1401へ光検出器用微動架台1403を介して取り付けられた光パワーメーター受光器(またはビームプロファイラー受光器)1421によって、光ファイバーを透過してくる光パワーを監視し、光ファイバーの押しつけ具合によって光ファイバーが屈曲して光透過損失が増大することを避けるよう、光ファイバー結束部分用押しつけ治具1451〜1454に対する微動機構1406の出力を調整する。
【0034】
光パワーメーター受光器またはビームプロファイラー受光器1421は、1つのセンサーで受光パワーの定量と、光強度の分布が測定できると、センサーを取り替える手間が省ける。ビームプロファイラー受光器1421の受光波長特性は、使用する光ファイバーの透過波長特性に対応する必要がある。光検出器用微動架台1403は光ファイバー1441からの出射ビーム(光ファイバーの開口数に応じて、拡散しながら出射する)をビームプロファイラー受光器1421が垂直方向に受光し、かつ、出射端面と受光器の距離を、距離L1と距離L2の2水準に規定してビーム中心位置を3次元空間中の特定位置として計測するに足る、調整機能(x,y,z軸方向の直進移動およびx,y,z軸を中心とする回転を可能とする)を有するものとする。受光器と出射端面の距離L1は例えば1.00mm、距離L2は例えば11.00mmで実施される。
図15aにおいて矢印で示すような、出射端面から距離L1およびL2の平面(z軸14に直交)を通過する出射ビームの光パワーの強度分布を解析することによって、<ビーム中心>の位置を3次元空間上、距離L2−L1離れた位置で把握し、これによって出射ビームの出射方位を、光ファイバー1441の中心軸となす角度θとして測定することが可能となる。この角度θの値を公差として設定し、例えば<±0.01度>の範囲に収まるよう、光ファイバー結束部分1441を下側基板1410へ押しつける力と分布を微調整することが可能となる。
【0035】
本発明の第1の実施の形態の端面近接光ファイバー(結束部分を含め全長1m)の透過損失を測定した一例を表1に示す(ダミーファイバー111,141,144を除く)。優れた透過特性が達成されていることが判る。
【0036】
本発明の第1の実施の形態の端面近接光ファイバー結束端面から出射するビーム7本各々の中心位置を、出射端面から1.00mmおよび11.00mmの位置で前記の方法で計測し、出射ビームの傾きを計算した結果を表2に示す。出射ビームの傾きが個々の光ファイバーにおいて、同時に、0.1度以内に調整されていることが判る。
【0039】
(比較実施例1)
特許文献2に記載の方法に従い、クラッド径125μmのシングルモード光ファイバーのクラッドをフッ化水素水溶液にてエッチングし、クラッド外径39.0μmのものを選別した。これを7本束ね、エポキシ樹脂とともに、孔径118.0μm(クラッド外径39.0の3倍の117.0μmに1.0μmを加えた値)のセラミック製フェルールへ挿入し、樹脂を硬化させた。硬化完了後、出射端の光学研磨を行った。
図16は、このようにして製造された、比較実施例1の端面近接光ファイバー1500の出射端面の光学顕微鏡写真(光ファイバーの非結束末端からも光照射)をトレースしたものである。一見すると7本の光ファイバーはきれいに整列しているように見えるが、詳細に観察すると、例えば矢印1521〜1525の指示する部位において、光ファイバー間およびフェルール内壁との間に、ランダムに、隙間が存在することが判る。従来の方法<孔に光ファイバー束を挿入>においては、この隙間をゼロにすることは不可能である。
【0040】
比較実施例1の端面近接光ファイバー(結束部分を含め全長1m)の透過損失を測定した一例を表3に示す。通常の光ファイバーであれば、長さ1mの透過損失は0.00dBに限りなく近い。比較実施例1の端面近接光ファイバーにおいては、長さ1mにもかかわらず、1dBを超える透過損失が観測された。これは、結束部分の光ファイバーがエポキシ樹脂の硬化収縮または光ファイバーの捻れによって、微細な屈曲を起こしていることに起因するものと推測される。光ファイバーの周辺に<隙間>が存在することが、このような不具合の根本原因である。
【0041】
比較実施例1の端面近接光ファイバーの結束側端面から出射するビームの進行方向が所定の直進方向から傾いている角度を測定した結果(例)を表4に示す。一部のファイバーにおいて、1度を超える大きな偏向が観察された。これは、当該光ファイバーの出射端面近傍における光ファイバーの屈曲および/または出射端面研磨の不備によるものと推測される。いずれにしても、光ファイバーの周辺に<隙間>が存在することが、このような不具合の根本原因となることは言うまでもない。
【0044】
[第2の実施の形態]
図2は本発明の第2の実施の形態の端面近接多芯光ファイバー200の概略構成図であり、下側W字型溝基板201に設けられた第1のV字型断面の案内溝21に光ファイバー211を、隣接する第2のV字型断面の案内溝22に光ファイバー212を載置し、その上に第1の実施の形態と同様に光ファイバー221〜223、231〜234および上側平面基板202のすべてが組み立てられた状態を表している。
【0045】
2つのV字型断面の案内溝21と22は、合わせてW字型断面の案内溝を形成している。
【0046】
最初に切削されて形成される第1のV字型断面の案内溝21に隣接して、第2のV字型断面の案内溝22を形成することは容易であるため、本発明の第1の実施の形態における第1層の光ファイバー111をダミーファイバーとして使用する場合は、本発明の第2の実施の形態の下側W字型溝基板201を採用することで、ダミーファイバーを削減することがきる。
【0047】
(比較実施例2)
本発明の第1の実施の形態におけるV字型断面の案内溝の代わりに、矩形の案内溝を用いる方法について比較すると、
図3に例示する場合、第1層に載置する光ファイバー311は、案内壁351,352,353の内、底面の案内壁352を必須として、光ファイバー外径の公差を考慮すると、案内壁351または353の、どちらか1つとしか接触できず、結果的に、載置位置を特定することはできない。
【0048】
更に、第2層以降においては、各層の両端に位置する光ファイバー321,322,331,333,341,344は、矩形の案内壁、例えば361および362の他、下層の光ファイバー311の側面と接触する可能性があり、結果的に、載置位置を特定することはできない。
【0049】
以上のような、幾何学的考察に加え、V字型断面の溝を掘削するよりも、矩形断面の溝を掘削することは容易でない。これは、切削で生じた屑をV字型断面では2つの壁に沿って左右対称に排出可能であることに対し、矩形断面の切削では、底辺で発生した切削屑を排出する方向が定まらず、切削治具の左右の位置が不定期に変動しやすい、という実施上の制約である。
【0050】
(比較実施例3)
本発明の第1の実施の形態におけるV字型断面の案内溝の代わりに、矩形の案内溝を用いる方法の、もう1つの可能性について比較すると、
図6に例示する場合、第1層に載置する光ファイバー611および612は、各々、案内壁641と642、および同643と642の<2つ>のみで位置が決定される。しかしながら、第2層以降では、比較実施例2の場合と同様な制約が生じる。
【0051】
いずれにしても、本発明のV字ないしW字型断面の案内壁に比べ、矩形の案内壁は切削加工の面において利点がない。
【0052】
[第3の実施の形態]
図4は、本発明の第3の実施の形態の端面近接多芯光ファイバー400の概念構成図である。
【0053】
本発明の第1および第2の実施の形態では、下側基板に対して接着される上側基板は平面であったが、本発明の第3の実施の形態における下側基板401に対向する上側基板402は同一の断面を有している。
【0054】
上側基板402の案内溝は、本発明の第3の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの載置が完了した後、端面研磨に際しての剛性を高めるために載置されるものである。
【0055】
即ち、第3層の光ファイバー431,432,433の上に第4層の光ファイバー441,442、次いで第5層の光ファイバー451を載置するには、下層の光ファイバー側面を基準とすれば良い。しかるに、結束された光ファイバー末端を光学研磨するにあたっては、個々の光ファイバーを高い剛性で保持する必要がある。本実施の形態における上側V字型溝基板402はこの目的に最も適するものである。
【0056】
第5層の光ファイバー451を載置した後、上側V字型溝基板402を載置し、下側V字型溝基板401と既に載置された光ファイバーと接着することで、端面近接多芯光ファイバー400の端面研磨に際して、全体の剛性を高めることができる。
【0057】
[第4の実施の形態]
図5は、本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバー500の概念構成図である。
【0058】
本発明の第1および第2の実施の形態では、下側基板に対して接着される上側基板は平面であったが、本発明の第4の実施の形態における下側基板501に対向する上側基板502は同一の断面を有している。
【0059】
上側基板502の案内溝は、本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの載置が完了した後、端面研磨に際しての剛性を高めるために載置されるものである。
【0060】
即ち、第2層の光ファイバー521,522,523の上に第3層の光ファイバー531および532を載置するには、下層の光ファイバー側面を基準とすれば良い。しかるに、結束された光ファイバー末端を光学研磨するにあたっては、個々の光ファイバーを高い剛性で保持する必要がある。本実施の形態における上側W字型溝基板502はこの目的に最も適するものである。
【0061】
第3層の光ファイバー531および532を載置した後、上側W字型溝基板502を載置し、下側V字型溝基板501と既に載置された光ファイバーと接着することで、端面近接多芯光ファイバー500の端面研磨に際して、全体の剛性を高めることができる。
【0062】
本発明の第4の実施の形態では、結束される光ファイバーの一端だけでなく、結束される光ファイバー部分に隣接し、例えば、クラッド径が大きくなる部分(即ち、クラッドがエッチングされていない部分)および、クラッドが被覆されている部分をも考慮した下側基板について、以下に記述する。
【0063】
いうまでもなく、クラッド径を40μm以下にエッチングした光ファイバーは非常に脆弱なもので、破損しやすい。また、簡単に屈曲し、光透過損失を招く。これらの不都合を避けるためには、被覆された光ファイバー部分から、被覆を除いた光ファイバー部分(クラッド径の大きい部分)を経由し、光ファイバー結束部分までを、緩やかな曲線で配置し、固定する必要がある。そのため、被覆された光ファイバー部分は、例えば、
図7に示すような、余裕のある固定溝で緩やかに結束・固定することが好適である。
【0064】
また、被覆を除去した光ファイバーをエッチングすることなく、通常のクラッド径125μmのまま、W字型案内溝を設けた基板で載置する例を
図8aから
図8dに示す。
図8cおよび
図8dに示す端面近接多芯光ファイバーにおいて、下側W字型溝基板801の上面、および上側W字型溝基板802の光学研磨面810に対する裏面側における網線で示した部分は、硬化収縮のない紫外線硬化樹脂で、むき出しのクラッド部分を保護・固定したものである。
【0065】
図9は、本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーに用いられる上側W字型溝基板902と下側W字型溝基板901を石英基板上に複数形成した後、切り出す製法を表す概念図である。特に、
図9(A)は切り出す前の平面図であり、
図9(B)は切り出し前の(A)の側面図であり、
図9(C)は切り出し後の上側W字型溝基板の斜視図であり、
図9(D)は切り出し後の下側W字型溝基板の斜視図である。また、
図10は、本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーに用いられる上側W字型溝基板と下側W字型溝基板を石英基板上に複数形成した構造の一例の斜視図である。大きな石英基板の所定の位置に、被覆された光ファイバーを載置する部分と被覆のない光ファイバーを載置するW字型案内溝910を切削加工した後、
図9(A)に示す一点鎖線で示す個所で切り離し、更に、上側W字型溝基板802と下側W字型溝基板801を、
図9(A)に示す一点鎖線で切り離すことにより、高い精度で、
図9(C)に示す上側W字型溝基板802と
図9(D)に素雌下側W字型溝基板801とを1単位として、複数単位のW字型溝基板を作成することができる。
【0066】
[第5の実施の形態]
図11は、本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバー1001に隣接して設けられた2筋のV字型断面の案内溝1011および1012にダミーファイバーを載置することで、下側および上側のW字型案内溝基板の接合を、より確実に行うための、本発明の第5の実施の形態を表したものである。
【0067】
図11に示すような端面形状を採用することで、端面研磨の際の剛直性を担保し、優れた端面研磨精度を達成することができる。
【0068】
[第6の実施の形態]
図12は本発明の第6の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。ここで、下側基板と上側基板については案内溝部分のみ表示している。
【0069】
本発明の第6の実施の形態においては、下側基板に7筋のV字型断面案内溝を設け、第1層に7本、第2層に8本、第3層に9本、第4層に8本、第5層に7本、合計39本を結束したものである。これを用いることで、例えば、熱レンズ方式1×7光制御光スイッチを3系列独立に束ねた動作が可能である。
【0070】
[第7の実施の形態]
図13は本発明の第7の実施の形態の端面近接多芯光ファイバーの概念構成図である。本発明の第4の実施の形態の端面近接多芯光ファイバー3組を、並列配置したものである。