(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5755786
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】打ち継ぎ目地の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-183650(P2014-183650)
(22)【出願日】2014年9月9日
【審査請求日】2014年11月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益社団法人土木学会第69回年次学術講演会講演概要集(平成26年8月1日)第III−04第187−188頁に発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】徳永 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】長津 辰男
(72)【発明者】
【氏名】車田 佳範
(72)【発明者】
【氏名】本多 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 寿一
(72)【発明者】
【氏名】大西 常康
(72)【発明者】
【氏名】田口 博文
(72)【発明者】
【氏名】久保 滋
(72)【発明者】
【氏名】東 祥二
【審査官】
鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特公平03−059210(JP,B2)
【文献】
特開昭59−210122(JP,A)
【文献】
特開平04−143310(JP,A)
【文献】
特開2001−317038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなり、
前記空打ち部を形成する工程時に固化材に代えて水を吐出して直前の先行改良杭のオーバーラップ部を拡散するようにし、
水の吐出量は、最低限先行改良杭の構築時における固化材の量としたことを特徴とする打ち継ぎ目地の施工方法。
【請求項2】
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなり、
前記空打ち部を形成する工程時に固化材に代えて水を吐出して直前の先行改良杭のオーバーラップ部を拡散するようにし、
水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲としたことを特徴とする打ち継ぎ目地の施工方法。
【請求項3】
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなり、
前記空打ち部を形成する工程時に固化材に代えて水を吐出して直前の先行改良杭のオーバーラップ部を拡散するようにし、
水の吐出量は、最低限先行改良杭の構築時における固化材の量とし、
水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲としたことを特徴とする打ち継ぎ目地の施工方法。
【請求項4】
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなり、
前記空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程は、先行改良杭よりも固化材を割増して直前の先行改良杭と空打ち部の跡に構築した後行改良杭とのオーバーラップ部における境界の打ち継ぎ目地の強度を上昇させるようにしたことを特徴とする打ち継ぎ目地の施工方法。
【請求項5】
固化材の割増しは、先行改良杭の構築時の1.2倍を上限としたことを特徴とする請求項4記載の打ち継ぎ目地の施工方法。
【請求項6】
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなり、
前記空打ち部を形成する工程時に固化材に代えた水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲とし、かつ、空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程時に固化材を割増す量は、先行改良杭の構築時の1.2倍を上限として直前の先行改良杭と空打ち部の跡に構築した後行改良杭とのオーバーラップ部における境界の打ち継ぎ目地の強度を上昇させるようにしたことを特徴とする打ち継ぎ目地の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系などの固化材を使用した原位置地盤改良工法において、隣接する改良杭間の打ち継ぎ目地に所定の強度が得られるように構築するための打ち継ぎ目地の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント系の固化材を用いた原位置地盤改良工法の1つとして深層混合処理工法が知られている。この深層混合処理工法は、
図13に示すように、改良しようとする地盤19に、撹拌軸11の先端に掘削刃14を備えた深層混合処理機を直立させ、撹拌軸11を電動モータ12で回転させながら掘削刃14で地盤19を掘削し、注入管15の先端から固化材16を吐出し、撹拌翼13で地盤19を撹拌しながら固化材16を地盤19に混合し、所定の深さまで改良杭17を造成し、撹拌軸11を逆回転して引き抜き、引き抜いた後、深層混合処理機を改良杭17の略直径分だけ移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する方法である。
【0003】
この深層混合処理工法において、先行改良杭17aと後行改良杭17bを確実に一体化するためには、
図13(d)に示すように、固化材16の水和反応が進行する前にオーバーラップ部18が生じるように施工し、順次連結して改良杭17の壁を構築することが要求される。
オーバーラップ部18が生じるように構築するには、先行改良杭17aを構築してから後行改良杭17bを構築するまでの待機時間(接合間隔)は、可能な限り短くする必要がある。具体的には、この接合間隔を通常は、24時間以内とすることが好ましく、最大でも48時間以内として管理されている。
【0004】
しかし、台風などの荒天待機により工事が中断し、接合のための管理された接合間隔以内では工事の再開が不可能になる場合がある。特に、海上工事においては、作業船を退避させる必要があることから、接合間隔が7日を超えることがある。
【0005】
接合間隔が管理時間以上になると、先行改良杭17aの固化が進行するため、オーバーラップ部18が生じるように深層混合処理機を貫入することが不可能になる。このような場合には、
図13(b)に示すように、先行改良杭17aと後行改良杭17bを点接触するように打設せざるを得ず、打ち継ぎ目地20が点又は線接触状態で形成されるので、改良壁としての一体性の評価が困難であり、また、設計図書で定めた改良率(改良面積)を満足させることはできない。
そこで、
図13(c)に示すように、先行改良杭17aと後行改良杭17bとの隙間部分に高圧噴射工法等により固化改良材21を打設し、一体性の向上を図る工法がある。しかし、このような対策では、深層混合処理機以外の機械を用い、かつ、固化改良の作業が増えるため、大幅な施工コストの増加、工程の遅延が生じるという問題がある。
【0006】
接合間隔が管理時間以上になると予測される場合に、待機直前の改良杭17に使用する固化材16として遅硬セメントや遅延材を使用して固化の進行を抑え、接合間隔を長くする方法がある。この方法は、
図13(c)に示す方法に比較してコストや作業工程に与える影響は少ないが、予め遅硬セメント、遅延材の他に、これらを添加する装置を用意しておかなければならない。しかも、得られる遅延効果も3〜5日程度と限界がある。
【0007】
これらの方法以外に、深層混合処理機の空打ちにより打ち継ぎ目地20を結合する方法が提案されている(特許文献1、2及び3)。
特許文献1に記載の方法は、
図10(a)に示すように、第1番目のパイルAは、撹拌翼の回動範囲内に地盤改良材を噴出又は吐出させるとともに、回転軸を回転させつつ下降及び上昇させることにより造成する。次に、第2、第3のパイルB,Cを順次部分的にオーバーラップさせて造成する。パイルCを造成した後、次のパイルDを直ちに造成できないときには、
図10(b)に示すように、パイルDが造成される位置において、地盤改良材は供給しないで回転軸を回転しながら下降及び上昇させて、撹拌翼による撹拌を行う。このようにして空打ち部bを形成すると、パイルCのオーバーラップ部分aの地盤改良材は、回転翼の回動範囲である空打ち部bまで拡散され、濃度が薄くなる。
図10(c)に示すように、後に空打ち部bにパイルDを造成する。
【0008】
特許文献2に記載の方法は、
図11(a)に示すように、2軸の深層混合処理機10を進行方向に並べて改良杭17を形成する場合、第Iの工程では、進行方向の内側の回転軸のみ改良杭17を形成し、外側の回転軸では固化材16を吐出しないで撹拌部のみの空打ちbを形成する。次いで、深層混合処理機を移動して第IIの工程では、内側の回転軸で先の撹拌部のみの空打ちbの位置に改良杭17を形成し、外側の回転軸で撹拌部のみの空打ちbを形成する。以下、順次深層混合処理機10を移動させて連続壁を形成する。
図11(b)は、3軸の深層混合処理機10を使用し、内側の2軸に改良杭17を形成し、外側の1軸に撹拌部のみの空打ち部bを形成する例を示し、
図11(c)は、4軸の深層混合処理機10を使用し、内側の3軸に改良杭17を形成し、外側の1軸に撹拌部みの空打ち部bを形成する例を示し、
図11(d)は、4軸の深層混合処理機10を使用し、内側の2軸に改良杭17を形成し、外側の2軸に撹拌部のみの空打ち部bを形成する例を示している。
【0009】
特許文献3の第2頁左下欄には、
図10または
図11に示すような空打ち部を形成する場合において、掘削時に、水又は貧配合の固化材16(低比重)の注入を行い、再度の掘削時に注入される高比重の固化材16との置換を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平3−59210号公報
【特許文献2】特開平6−173252号公報
【特許文献3】特開平4−143310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1及び2に示す方法では、空打ちによりオーバーラップ部18の固化材16を拡散させ、濃度を薄めて固化させることで、後行改良杭17bの打設が可能になるとしている。
しかし、これらの従来の方法では、掘削する進行方向が直列の1列であるため、空打ちによる固化材16の拡散が不十分なことが多く、オーバーラップ部18が残った固化材16により不完全に固結して、後行改良杭17bの打設の際に深層混合処理機10が
図12(b)に示すように残った固化部分によって中心点がO1からO2に跳ねられ、後行改良杭17bの芯が先行改良杭17aに対してずれる等の支障をきたす場合があった。
また、掘削する進行方向が直列の1列であるため、
図12(a)に示すように、隣接する先行改良杭17aと後行改良杭17bに水平方向の外力が作用すると、打ち継ぎ目地20を境にせん断(ずれや回転)力が発生し易いため、構造上の弱点となる恐れがあるという問題があった。
さらに、特許文献3には、空打ち時に水を加えることが記載されているが、この水を加える量は、土質にもよるが少なすぎると固化が進んで空打ちの効果が得られず、多すぎると強度発現率が急激に落ち、適正な加水量が望まれていた。
【0012】
本発明は、空打ち部を形成して後行改良杭17bを打設する際、先行改良杭17aとの芯がずれる等の支障をきたすことがなく、また、打ち継ぎ目地20を境にせん断(ずれや回転)力が発生することのない打ち継ぎ目地の施工方法を提供することを目的としている。
さらに、本発明は、空打ち時の適正な加水量を設定する方法と固化材の適正な割増量を設定する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による打ち継ぎ目地の施工方法は、深層混合処理機10の撹拌軸11を回転させながら掘削刃14で地盤19を掘削し、注入管15の先端から固化材16を吐出し、撹拌翼13で撹拌混合し、改良杭17を造成し、撹拌軸11を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部18を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸11を用いて先行改良杭17aを構築する工程と、
直前の先行改良杭17aの固化前に、オーバーラップ部18を有するように空打ち部17cを形成して固化材16を拡散させる工程と、
空打ち部17cの跡に後行改良杭17bを構築する工程と
からなることを特徴とする。
【0014】
前記空打ち部17cを形成する工程時に、固化材16に代えて水を吐出して直前の先行改良杭17aのオーバーラップ部18を拡散する。
水の吐出量は、最低限先行改良杭17aの構築時における固化材16の量とする。
また、水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m
3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲とする。
【0015】
前記空打ち部17cの跡に後行改良杭17bを構築する工程は、先行改良杭17aよりも固化材16を割増して直前の先行改良杭17aと空打ち部17cの跡に構築した後行改良杭17bとのオーバーラップ部18における境界の打ち継ぎ目地20の強度を上昇させるようにする。
【0016】
固化材16の割増しは、先行改良杭17aの構築時の1.2倍を上限とする。
空打ち部17cを形成する工程時に固化材16に代えた水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m
3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲とし、かつ、空打ち部17cの跡に後行改良杭17bを構築する工程時に固化材16を割増す量は、先行改良杭17aの構築時の1.2倍を上限として直前の先行改良杭17aと空打ち部17cの跡に構築した後行改良杭17bとのオーバーラップ部18における境界の打ち継ぎ目地20の強度を上昇させるようにする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなるので、
空打ち部を形成して後行改良杭を打設する際、先行改良杭との芯がずれる等の支障をきたすことがなく、また、打ち継ぎ目地を境にせん断(ずれや回転)力が発生することのなく、打ち継ぎ目地の強度を上昇させることができる。
また、空打ち部を形成する工程時に固化材に代えて水を吐出して直前の先行改良杭のオーバーラップ部の固化材を拡散するようにしたので、オーバーラップ部の固化の進行を確実に抑えることができる。
さらに、水の吐出量は、最低限先行改良杭の構築時における固化材の量としたので、直前の先行改良杭のオーバーラップ部の固化材を押し出して水と置換され、固化の進行を抑えることができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなるので、
空打ち部を形成して後行改良杭を打設する際、先行改良杭との芯がずれる等の支障をきたすことがなく、また、打ち継ぎ目地を境にせん断(ずれや回転)力が発生することのなく、打ち継ぎ目地の強度を上昇させることができる。
また、空打ち部を形成する工程時に固化材に代えて水を吐出して直前の先行改良杭のオーバーラップ部の固化材を拡散するようにしたので、オーバーラップ部の固化の進行を確実に抑えることができる。
水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲としたので、東京湾粘土の地盤で最良の打ち継ぎ目地の施工方法を実施できる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなり、
前記空打ち部を形成する工程時に固化材に代えて水を吐出して直前の先行改良杭のオーバーラップ部を拡散するようにし、
水の吐出量は、最低限先行改良杭の構築時における固化材の量とし、水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲としたので、請求項1記載の発明の効果に加えて東京湾粘土の地盤で最良の打ち継ぎ目地の施工方法を実施できる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなるので、
空打ち部を形成して後行改良杭を打設する際、先行改良杭との芯がずれる等の支障をきたすことがなく、また、打ち継ぎ目地を境にせん断(ずれや回転)力が発生することのなく、打ち継ぎ目地の強度を上昇させることができる。
また、前記空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程は、先行改良杭よりも固化材を割増したので、直前の先行改良杭と空打ち部の跡に構築した後行改良杭とのオーバーラップ部における境界の打ち継ぎ目地の強度を上昇させることができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、
請求項4記載の発明の効果に加えて、固化材の割増しは、先行改良杭の構築時の1.2倍を上限としたので、打ち継ぎ目地を設けた場合でも、打ち継ぎ目地なしの圧縮強さを得ることができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、
深層混合処理機の撹拌軸を回転させながら掘削刃で地盤を掘削し、注入管の先端から固化材を吐出し、撹拌翼で撹拌混合し、改良杭を造成し、撹拌軸を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭を構築する工程と、
直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部を有するように空打ち部を形成して固化材を拡散させる工程と、
空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程とからなるので、
空打ち部を形成して後行改良杭を打設する際、先行改良杭との芯がずれる等の支障をきたすことがなく、また、打ち継ぎ目地を境にせん断(ずれや回転)力が発生することのなく、打ち継ぎ目地の強度を上昇させることができる。
また、前記空打ち部を形成する工程時に固化材に代えた水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲とし、かつ、空打ち部の跡に後行改良杭を構築する工程時に固化材を割増す量は、先行改良杭の構築時の1.2倍を上限として直前の先行改良杭と空打ち部の跡に構築した後行改良杭とのオーバーラップ部における境界の打ち継ぎ目地の強度を上昇させるようにしたので、東京湾粘土の地盤等において、直前の先行改良杭のオーバーラップ部の固化材を押し出して水と置換され、固化の進行を抑えることができる。しかも、打ち継ぎ目地を設けた場合でも、打ち継ぎ目地なしの圧縮強さを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による打ち継ぎ目地の施工方法の実施例1を示す工程図である。
【
図2】一般的な4軸の深層混合処理機による深層混合処理工法の説明図である。
【
図3】東京湾で採取した海成粘土の物性を表わす図である。
【
図7】圧縮強さの平均値とセメント添加量の関係を示すグラフである。
【
図8】打ち継ぎ目地を有する供試体の圧縮試験結果を表わす図である。
【
図9】本発明の他の実施例を示すもので、(a)は、実施例2の説明図、(b)は、実施例3の説明図、(c)は、実施例3の説明図である。
【
図10】特許文献1に表された従来の深層混合処理工法の説明図である。
【
図11】特許文献2に表された従来の深層混合処理工法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明打のち継ぎ目地の施工方法は、深層混合処理機の撹拌軸11を回転させながら掘削刃14で地盤19を掘削し、注入管15の先端から固化材16を吐出し、撹拌翼13で撹拌混合し、改良杭17を造成し、撹拌軸11を引き抜いた後、深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部18を有するように移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、
連続構築する進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸11を用いて先行改良杭17aを構築する工程と、
直前の先行改良杭17aの固化前に、オーバーラップ部18を有するように空打ち部17cを形成して固化材16を拡散させる工程と、
空打ち部17cの跡に後行改良杭17bを構築する工程と
からなる。
【0026】
空打ち部17cを形成する工程時に固化材16に代えて水を吐出して直前の先行改良杭17aのオーバーラップ部18を拡散する。
水の吐出量は、最低限先行改良杭17aの構築時における固化材16の量とする。
水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m
3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲とする。
【0027】
空打ち部17cの跡に後行改良杭17bを構築する工程は、先行改良杭17aよりも固化材16を割増して直前の先行改良杭17aと空打ち部17cの跡に構築した後行改良杭17bとのオーバーラップ部18における境界の打ち継ぎ目地20の強度を上昇させる。
固化材16の割増しは、先行改良杭17aの構築時の1.2倍を上限とする。
【0028】
空打ち部17cを形成する工程時に固化材16に代えた水の吐出量は、粘性土土壌の場合、固化処理土1m
3に対し15%を限度とし、強度発現率が水を吐出しない場合の90%を下回らない範囲とし、かつ、空打ち部17cの跡に後行改良杭17bを構築する工程時に固化材16を割増す量は、先行改良杭17aの構築時の20%を上限として直前の先行改良杭17aと空打ち部17cの跡に構築した後行改良杭17bとのオーバーラップ部18における境界の打ち継ぎ目地20の強度を上昇させる。
【実施例1】
【0029】
本発明による実施例1では、
図2に示すような縦方向(進行方向に直交する方向)に2軸、横方向(進行方向と同じ方向)に2軸の4軸の深層混合処理機を用いて行う本発明の打ち継ぎ目地の施工方法を説明する。
図2において、
(a):改良しようとする地盤19に、撹拌軸11の先端に掘削刃14を備えた深層混合処理機を直立させる。
(b):撹拌軸11を電動モータ12で回転させながら掘削刃14で地盤19を掘削し、注入管15の先端から固化材16を吐出し、撹拌翼13で地盤19を撹拌しながら固化材16を地盤19に混合する。
(c):所定の深さまで改良杭17を造成する。
(d):撹拌軸11を逆回転して引き抜く。
(e):引き抜いた後、深層混合処理機をオーバーラップ部18を見込んで移動して上記動作を繰り返して連続する壁等を構築する
【0030】
前述したように、この深層混合処理工法において、先行改良杭17aと後行改良杭17bを確実に一体化するためには、固化材16の水和反応が進行する前にオーバーラップ部18が生じるように移動して施工し、順次連結して改良杭17の壁を構築することが要求される。
オーバーラップ部18が生じるように構築するには、先行改良杭17aを構築してから後行改良杭17bを構築するまでの待機時間(接合間隔)は、可能な限り短くする必要がある。具体的には、この接合間隔を通常は、24時間以内とすることが好ましく、最大でも48時間以内として管理されている。
【0031】
待機時間(接合間隔)が管理時間を超える可能性がある場合における本発明の打ち継ぎ目地の施工方法を
図1に基き説明する。
図1の(I)において、4軸の深層混合処理機10により先行改良杭17aが打設形成されたものとし、この後、台風の接近などで、先行改良杭17aに連続する後行改良杭17bの構築まで管理時間を超える恐れがあるものとする。このような場合、連続する後行の位置に点線で示すような空打ち部17cを形成するための位置決めをする。このとき、改良杭17は4本の円柱の連続として構築されるので、先行と後行の改良杭17の間に空洞が生じないようなオーバーラップ部18のできる位置とする。
【0032】
(II)において、前工程で位置決めされた場所に固化材16を注入せずに撹拌軸11を回転させて先行のオーバーラップ部18と一緒に地盤を拡散(空打ち)して空打ち部17cとし、固化材16を希釈化させてオーバーラップ部18部分の固形化を防止する。この空打ち時に固化材16の代わりに水を吐出する。水を吐出する注入管15は、オーバーラップ部18を拡散するための注入管15b1と注入管15b2だけとし、オーバーラップ部18を含まない注入管15b3と注入管15b4は、水の吐出を行わない。水の吐出は、深層混合処理機の貫入のときだけ行い、引き抜き時には必要がない。水の吐出は、先行して打設されたセメントスラリーを押し出し、水で置換することを目的としているため、水の吐出量は、セメントスラリーと同量を最低吐出量とする。ただし、粘性土の地盤19の場合、吐出水は、粘性土と混合されるだけで排水、置換されない。吐出水の撹拌混合によるセメントスラリーの希釈効果に期待することになる。このとき、吐出水の量を増やし過ぎると、粘性土が必要以上に乱され、後行改良杭17bを施工する際に、必要な固化強度が得られなくなる。従って、粘性土の場合は、吐出水量は、処理土1m
3に対して体積比で15%を限度とする。詳細は、後述する。
【0033】
(III)空打ち部17cを形成すると、オーバーラップ部18部分が弧状に切り取られた先行改良杭17aが得られる。
【0034】
(IV)空打ち部17cの箇所への後行改良杭17bの施工は、先行改良杭17aと同様手順で打設する。このとき、固化材16の添加量は、質量比で1.2倍を上限とした範囲で割り増す。この後行改良杭17bの打設が終了すると、2箇所に円弧状の凹部を有する打ち継ぎ目地20が形成される。打ち継ぎ目地20には、進行方向に対して直交する位置に2箇所の円弧状の凹部ができるが、隣接する撹拌軸11の回転方向が互いに逆方向であるから、打ち継ぎ目地20において、
図12(a)(b)で示したようなせん断力発生や回転軸ずれなどによる不具合は発生しない。固化材16の割増の根拠については、後述する。
【0035】
前記
図1(II)において、粘性土の場合の吐出水量は、処理土1m
3に対して体積比で15%を限度とした理由は、次の通りである。
東京湾で採取した海成粘土(東京湾粘土)の物性は、
図3に示す通りである。
配合試験(1)は、
図1の東京湾粘土の含水比をw=128.6%(=液性限界)に調整したものを母材料として母材量1m
3に対してセメントを粉体で150kg/m
3の割合で添加して直径5cm、高さ10cmの固化処理土供試体を作成した。これをケース1とし、このケース1に対して外割体積比で5%の水を加えたものをケース2、以下同様に、ケース1に対して外割体積比で10%,15%、20%、30%の水を加えたものをそれぞれケース3,4,5,6とした。各ケースで作成した固化処理土供試体は、材令28日で圧縮試験を実施して圧縮強さを求めた。
図4は、その試験結果である。
図4において、強度発現率とは、各ケースの一軸圧縮強さの値を、ケース1の圧縮強さの値で除して百分率とした値である。
【0036】
図5は、
図4に表した加水率と強度発現率の関係を表わしたグラフである。
この
図5から加水率が15%で強度発現率は90%であり、これより加水率が増すと急激に強度発現率が低下する傾向にあり、従って、東京湾粘土の場合、加水率の上限値を15%とした。逆に、母材にもよるが、強度発現率は90%以下にならない範囲で加水率の上限値を設定することが望ましい。
【0037】
前記
図1(IV)において、固化材16の添加量は、質量比で1.2倍を上限とした範囲で割り増すとした理由は、次の通りである。
東京湾で採取した海成粘土(東京湾粘土)の物性は、
図3に示す通りである。
配合試験(2)では、
図1の東京湾粘土の含水比をw=128.6%(=液性限界)に調整したものを母材料として母材量1m
3に対し、セメント添加量を120、150、180、210、240kg/m
3の5水準として直径5cm、高さ10cmの固化処理土供試体を作成し、材令28日において一軸圧縮試験を実施し、圧縮強さとセメント添加量の関係を求めた。
図6は、その試験結果である。
【0038】
図6に示す圧縮強さの平均値とセメント添加量の関係を
図7に示す。この
図7により、セメント添加量xと圧縮強さyの関係は、
y=23.689x−2141.6 (1)
と求めることができる。この
図7からセメント添加量xと圧縮強さyの関係は略正比例していることが分かる。
【0039】
配合試験(3)を実施した。この配合試験(3)は、配合試験(2)における180kg/m
3のケースについて、本発明の打ち継ぎ目地の施工方法を模擬して人為的に打ち継ぎ目地20を設けた直径5cm、高さ10cmの固化処理土供試体を作成した。このとき、待機時間(打ち継ぎ間隔)を0,3,5,7,28日の5水準として5ケース分作成した。この供試体を用いた圧縮強度試験により材令28日及び91日について、待機時間(打ち継ぎ間隔)と圧縮試験の関係を調べた結果を
図8に示す。
【0040】
この
図8において、強度比とは、各ケースの平均の圧縮強さを、ケース1(打ち継ぎ目地20なし)の平均圧縮強さで除した値である。即ち、打ち継ぎ目地20の有無による強度発現率を表わしている。この結果より、打ち継ぎ目地20があると、圧縮強さは、0.72〜1.00倍の間で低減することが明らかになった。そこで、打ち継ぎ目地20を設ける場合は、圧縮強さが低減することを見越した圧縮強さを目指し、セメント添加量を割り増すことが必要である。ケース1の圧縮強さを強度比で除した値を目標強度とする。
次に、前記式(1)を用いて目標強度に対応するセメント添加量を求める。このセメント添加量をケース1のセメント添加量180kg/m
3で除した値がセメント割増率となる。
図8に示すように、セメント割増率は、1.00〜1.17となった。このことから打ち継ぎ目地20を設ける際は、安全性を考慮して、最も圧縮強さが低減するケースに合わせて、セメント添加量を1.2倍(≒1.17)とすることが望ましい。
【実施例2】
【0041】
前記実施例1では、
図2に示すような縦方向(進行方向に直交する方向)に2軸、横方向(進行方向と同じ方向)に2軸の4軸の深層混合処理機を用いた本発明の打ち継ぎ目地の施工方法を説明した。
しかし、これに限られるものではなく、本発明は、打ち継ぎ目地20において、
図12(a)(b)で示したようなせん断力発生や回転軸ずれなどによる不具合が発生しないようにするため、進行方向に対して直交する方向に2箇所以上の円弧状の凹部ができるような深層混合処理機10が用いられる。このような処理機を用いると、隣接する撹拌軸11の回転方向が互いに逆方向であるから、縦方向(進行方向に直交する方向)に複数軸であればよい。したがって、横方向(進行方向と同じ方向)は単軸であっても複数軸であってもよい。
【0042】
具体的には、
図9(a)は、縦方向(進行方向に直交する方向)に2軸、横方向(進行方向と同じ方向)に1軸の2軸の深層混合処理機10を用いた例を示しており、工程Iでは、先行改良杭17aを形成した後、水を吐出しながら空打ち部17cを形成しておき、工程IIにおいて、固化材16の添加量を割り増しして後行改良杭17bを打設する。
【実施例3】
【0043】
図9(b)は、縦方向(進行方向に直交する方向)に3軸、横方向(進行方向と同じ方向)に1軸の3軸の深層混合処理機10を用いた例を示しており、工程Iでは、先行改良杭17aを形成した後、水を吐出しながら空打ち部17cを形成しておき、工程IIにおいて、固化材16の添加量を割り増しして後行改良杭17bを打設する。
【実施例4】
【0044】
図9(c)は、縦方向(進行方向に直交する方向)に2軸、横方向(進行方向と同じ方向)に4軸の8軸の深層混合処理機10を用いた例を示しており、工程Iでは、先行改良杭17aを形成した後、水を吐出しながら空打ち部17cを形成しておき、工程IIにおいて、固化材16の添加量を割り増しして後行改良杭17bを打設する。
【0045】
以上の実施例以外でも、進行方向に対して直交する方向に2箇所以上の円弧状の凹部ができるようにすればよく、横方向(進行方向と同じ方向)の軸の数は単軸であっても複数軸であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…深層混合処理機、11…撹拌軸、12…電動モータ、13…撹拌翼、14…切削刃、15…注入管、16…固化材、17…改良杭、17a…先行改良杭、17b…後行改良杭、17c…空打ち部、18…オーバーラップ部、19…地盤、20…打ち継ぎ目地、21…固化改良材。
【要約】 (修正有)
【課題】空打ちをして後行改良杭を打設する際、打ち継ぎ目地にせん断力が発生することがなく、また、空打ち時の適正な加水量と固化材の割増量を設定する方法を提供する。
【解決手段】深層混合処理機を進行方向にオーバーラップ部を有するように移動して連続する改良杭を構築する打ち継ぎ目地の施工方法において、進行方向と直交する方向に複数軸を有する撹拌軸を用いて先行改良杭17aを構築し、直前の先行改良杭の固化前に、オーバーラップ部18を有するように空打ちをして固化材を拡散させ、空打ちの跡に後行改良杭17bを構築し、空打ち時に、水を吐出してオーバーラップ部の固化剤を拡散し、空打ち跡の後行改良杭の構築時に、固化材を割増して打設する。
【選択図】
図1