(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5755792
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】犬の糞尿処理具
(51)【国際特許分類】
A01K 23/00 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
A01K23/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-260335(P2014-260335)
(22)【出願日】2014年12月24日
【審査請求日】2014年12月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514259749
【氏名又は名称】株式会社イサム商会
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】溝淵 勇
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−318256(JP,A)
【文献】
特開2006−067882(JP,A)
【文献】
特開2007−166933(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3126528(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿の受け皿(10)と、その受け皿(10)から上方に伸びる柄(20)とを有し、前記受け皿(10)は、その下部に尿を溜める上面開口のポケット(12)を有し、そのポケット(12)の背内面は前記受け皿(10)の受け面と連続しており、かつ、前記ポケット(12)の前壁上縁全長に亘り前方に延びる鍔(16)を設けたことを特徴とする犬の糞尿処理具。
【請求項2】
上記ポケット(12)内に尿吸収材(14、14b)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の犬の糞尿処理具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペットである犬の散歩時における糞尿を処理する糞尿処理具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、人間社会の多様化、複雑化等から、犬や猫等と暮らす人が増えている。その際、愛犬が市民の一員として社会から認められるためには、犬と飼い主はさまざまなルールを守らなければならない。そのルールの一つとして、犬の散歩時の糞尿の処理である。糞尿は他人から嫌がられ、環境を劣化させる。
【0003】
このような状況下、従来から、種々の犬の糞尿処理具が提案されている。
その一つとして、尿の受け皿にその上縁から伸びる柄を設けた糞尿処理具がある。この糞尿処理具は、犬が糞又は尿をする際、その受け皿を糞又は尿の排泄位置に導いて受け取る(特許文献1、参照)。このとき、受け皿には吸水シートを設けることもできる(同文献1、
図6参照)。
また、受け皿を椀状とした糞尿処理具もある(特許文献2、
図1参照)。この糞尿処理具は、椀状受け皿の中にプラスチック袋を入れ、その袋によって糞尿を受けて廃棄する。
さらに、受け皿に起伏可能なカバーを設け、その受け皿とカバーの内面にそれぞれ尿吸収体を設け、排尿後、カバーを受け皿に被せるものもある(特許文献3、
図1)。この糞尿処理具は、受け皿とカバーの両内面の尿吸収体で排尿を受け取るため、その捕捉範囲が広くその捕捉が確実としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−235763号公報
【特許文献2】特開2012−34588号公報
【特許文献3】特開2007−166933号公報
【特許文献4】特開2004−154344号公報
【特許文献5】実開平7−348号公報
【特許文献6】実用新案登録第3050968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
犬は、散歩に出かけると、電柱や木、ブロック塀、大きな石等の、散歩コースのポイント、ポイントに少しずつ排尿して歩く、マーキングを行う。このとき、一回のマーキングによる排尿量は少ないが、多くのマーキングをすると、その総排尿量はかなりのものとなる。
このため、特許文献1記載の糞尿処理具は、受け皿の尿収容量が少ないため、大量の排尿がなされると、溢れ出る恐れがある。また、受け皿表面に直接に排尿した場合、拭き取っても、尿の臭いを完全に消すことはできない。さらに、吸水シートで溜尿しても、受け皿の受け面がフラットに近いため、その吸収シートの溜尿が漏れ出て(流下して)周りを汚す恐れがある。
特許文献2記載の糞尿処理具は、尿の受け取りが椀状皿のため、大量の排尿を溜めることができるが、椀状であることから、嵩が大きい(受け皿が深い)ため、その椀状受け皿を尿の排泄位置に円滑に導きにくい。特に、小型犬の場合は困難である。
特許文献3記載の糞尿処理具は、尿吸収体の溜尿量を超えると、その溜尿が漏れ出て周りを汚す恐れがある。
【0006】
この発明は、以上の実状の下、尿の排泄位置に円滑に導き易く、かつ、大量の排尿であっても漏れ出すことなく貯留できる糞尿処理具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、この発明は、尿の受け皿の下部に尿を溜めるポケットを有するものとしたのである。
受け皿を薄くすれば(扁平にすれば)、その受け皿を排泄位置に導きやすく(
図5参照)、その下部のポケットに尿は垂れ落ち、そのポケットで貯留されるため、一回の散歩におけるマーキング時の排尿量を十分に貯留できる。一方、ポケットは受け皿面から突出するが、そのポケットは、尿又は糞の排泄時には、犬の腹部に臨むため、排泄の邪魔にならない(
図5参照)。
【0008】
この発明の構成としては、尿の受け皿と、その受け皿から上方に伸びる柄とからなり、前記受け皿は、その下部に尿を溜める上面開口のポケットを有し、そのポケットの背内面は前記受け皿の受け面と連続している構成を採用することができる。
この糞尿処理具は、犬の散歩時、付き人(飼い主)はその柄を持って移動するため、通常、ポケットが最下位に位置する。このため、犬が排泄しようとした際、その排泄位置に受け皿を導いてその受け皿の受け面に排尿又は排糞させる。このとき、ポケットの背内面が受け皿の受け面と連続しているため、その排尿は受け面を伝ってポケット内に円滑に至る。この作用を、マーキング時の排尿毎に行って、電柱や壁に排尿がされないようにする。糞は袋に入れて持ち帰る。
この構成において、上記ポケットの前壁上縁全長に亘り前方に延びる鍔を設ければ、この鍔によっても排泄された尿や糞を受け取ることができる。
また、上記ポケット内に尿吸収材を設ければ、ポケット内の溜尿がその尿吸収材に吸収されて飛び散ることがない。尿吸収材は、受け皿の受け面にも設けることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、以上のように構成し、受け皿を薄くし得るようにしたので、犬の排尿を確実に捕捉でき、さらに、ポケットによって溜尿するようにしたので、一回の散歩におけるマーキング時の排尿量を十分に貯留することができる。このため、糞尿による社会環境の悪化改善に貢献し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明に係る犬の糞尿処理具の一実施形態の斜視図
【
図3】同実施形態の尿吸収材を除去した横置き斜視図
【
図6】他の実施形態の尿吸収材を除去した横置き斜視図
【
図8】さらに他の実施形態を示し、(a)は要部分解斜視図、(b)は同切断側面図
【
図9】さらに他の実施形態の尿吸収材を除去した要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明に係る犬の糞尿処理具の一実施形態を
図1〜
図3に示し、この実施形態の犬の糞尿処理具P1は、尿の受け皿10と、その受け皿10から上方に伸びる柄20とからなる。
受け皿10は、四角状平板11の下部にポケット12を有する。ポケット12は、平板11の下縁を前方に折り曲げ、その後、上方に延ばし、その側面を閉じた形状であり、ポケット12の背内面は受け皿の受け面(平板11の表面)と連続している(面一となっている)。そのポケット12の前方への突出長さs、上方への延長長さhは、一回の散歩でのマーキングで排尿される量に応じて適宜に設定すれば良いが、小、中型犬であれば、例えば、幅L:150〜180mm、奥行き(突出長さ)s:10〜25mm、高さ(延長長さ)h:25〜40mm程度とする。
【0012】
平板11とポケット12(受け皿10)は、金属製、木製、樹脂製等とし得るが、樹脂成型品とすることが好ましい。ポケット12の下面コーナー部12aを円弧状とすると、ゴミが着きにくく洗い易い。また、そのコーナー部12aの内面(ポケット12の内面)も円弧状とすると、排尿が留まり難く、また、洗い易い。
平板11の上側には掛け桟13が設けられており、この掛け桟13にタオル等からなる尿吸収材14が引っ掛けられ、この尿吸収材14によって平板11の前面が覆われるとともに、その尿吸収材14の下部がポケット12内に丸めて収納される。掛け桟13はその両端13aを平板11を突き抜けて曲げることによって平板11に取り付けている。
【0013】
柄20は、2本の杆21a、21bとからなり、下方の杆21aが平板11の裏面に止め輪22を介しビス止めによって固定されている(
図2参照)。両杆21a、21bは、一方の杆21aが他方の杆21bに出没自在となっており、特許文献4〜6等で示される周知の接続・固定機構23でもって、
図4(a)に示す最大長から、同(b)に示す最小長までの長さが調節自在である。その柄20の最大長、最小長は、使用者に応じて適宜に設定する。柄20(杆20a)の上端には、適宜形状の握り部25を設けている。
【0014】
この実施形態の犬の糞尿処理具P1は以上のように簡単軽量の構成であり、犬の散歩時に携帯する。その散歩時、
図5(a)、(b)に示すように、犬がマーキングのために、排尿しようとした際、その位置に速やかに受け皿10を導いてその排尿を受け皿10の尿吸収材14で受ける。
このとき、付き人(飼い主)は、立ったままで(座ることなく)その尿の受け取り動作を行うことができるため、素早く対応できる。また、尿を受ける面は、受け皿10の表面であり、その裏面には排尿が至らないため、受け皿10の裏面を電柱やブロック塀等に接触させてもそれらを尿で汚すことはない。このため、円滑かつ安心して排尿処理を行うことができる。
また、尿吸収材14に受け止められた排尿の尿吸収材14で貯留できなかった尿は下方に伝ってポケット12内の尿吸収材14に捕捉される。このため、この糞尿処理具P1を持ち歩いても、尿が飛散することはない。
【0015】
糞の場合も同様に、付き人は立ったままで糞の受け取り動作を行うことができ(
図5参照)、受け皿10で受けた後、その受け皿10に載せた状態で移動すれば、道路等を汚すことはない。好ましくは、手にビニール袋を被せてその糞を掴み、袋を反転させて処理する。
【0016】
以上の作用によって、犬の糞尿を道路等に残さず、快適な環境を維持できる。
散歩が終われば、尿吸収材14は受け皿10から取り出して洗濯すれば、何回でも使用が可能である。
【0017】
図6、
図7に示す実施形態の犬の糞尿処理具P2は、掛け桟13を平板11下部のポケット12上方にも設けたものであり、平板11上の尿吸収材14aとポケット12内の尿吸収材14bが切り離されている。このため、各尿吸収材14a、14bを個別に取り替え・洗濯することができる。
【0018】
図8に示す実施形態の犬の糞尿処理具P3は、平板11に側壁15を設けると共に、ポケット12の前壁上縁全長に亘り前方に延びる鍔16を設けている。また、側壁15の上縁下側に前方に延びる鍔17を設けると共に、残りの同上縁全長及び両側壁15、15の上端間に亘り内側に向く突片18を設けている。鍔16の突出長さは、糞尿を受ける際、犬の排泄に邪魔にならない程度を考慮して適宜に設定すれば良いが、例えば30mm程度とする。
この実施形態の平板11、側壁15、鍔16、17及び突片18も、金属製、木製、樹脂製等とし得るが、上記と同様に樹脂一体成型品とすることが好ましい。
この実施形態の尿吸収材14は、一枚のスポンジとして平板11上及びポケット12内に納めているが、平板11とポケット12を別々の尿吸収材14a、14bにしても良く、タオル等の他の各種の吸水性材を採用できる。
【0019】
この実施形態の犬の糞尿処理具P3は、上記と同様にして、排尿、排糞を受けるが、鍔16、17によって、飛散する尿を受け止めるともに糞を受け取ることができる。このため、犬が多少動いても排泄の尿や糞を確実に受け取ることができ、また、勢いの無い尿であっても、その鍔16で受け得るため、道路等を汚すことも少なくなる。また、側壁15及び突片18によってこの糞尿処理具P3から尿や糞が側方にこぼれ落ちることが少なくなる。
なお、鍔16の傾斜角度θは、
図5(a)に示すこの犬の糞尿処理具P3を斜めにして尿等を受ける際、鍔16が水平より少し上向きとなって受け取った尿が垂れ落ちないように適宜に設定する。この実施形態では、鍔16はポケット12の前壁に対し垂直より少し上向きとしている。
【0020】
平板11、ポケット12は、
図9に示すように、その各辺を棒材19aで形成し、その棒材からなる枠19aの各辺にプラスチックシート19bを貼って上記平板11及びポケット12の形態の犬の糞尿処理具P4とすることもできる。このとき、鍔16、17も、同様に棒材19a及びプラスチックシート19bで追加構成することができる。
また、受け皿10への柄20の取付は、止め輪22を介さず、ビスで直接に止めたり、柄20(杆21a)の下部にその軸方向に両側開口の溝を形成し、その溝に平板11を嵌め込み固定したりする等を採用することができる。
【0021】
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0022】
P1、P2、P3、P4 犬の糞尿処理具
10 受け皿
11 受け皿の平板
12 受け皿のポケット
13 掛け桟
14、14a、14b 尿吸収材
15 側壁
16、17 鍔
18 突片
20 柄
21a,21b 柄の杆
25 柄の握り部
【要約】
【課題】尿の排泄位置に円滑に導き易く、かつ、大量の排尿であっても漏れ出すことなく貯留できる。
【解決手段】尿の受け皿10と、その受け皿から伸びる柄20とからなる犬の糞尿処理具P1である。受け皿は、その下部に尿を溜める上面開口のポケット12を有する。受け皿の平板上及びポケット内にタオル等の尿吸収材14を設ける。犬の散歩時に携帯し、犬がマーキングのために、排尿しようとした際、その位置に速やかに受け皿を導いてその排尿を受け皿の尿吸収材で受ける。その尿吸収材に受け止められた排尿は下方に伝ってポケット内の吸収材に捕捉される。このため、この糞尿処理具を持ち歩いても、尿が飛散することはない。糞の場合は、受け皿で受けた後、手にビニール袋を被せてその糞を掴み、袋を反転させて処理する。散歩が終われば、尿吸収材を受け皿から取り出して洗濯すれば、何回でも使用が可能である。
【選択図】
図1