(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755819
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】耐高温腐食特性を備えたNi−Cr−Co系合金とそれを用いて表面改質したポペットバルブ
(51)【国際特許分類】
C22C 27/06 20060101AFI20150709BHJP
C22C 30/00 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
C22C27/06
C22C30/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-544399(P2014-544399)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(86)【国際出願番号】JP2013077308
(87)【国際公開番号】WO2014069180
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-240724(P2012-240724)
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000239426
【氏名又は名称】福田金属箔粉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227157
【氏名又は名称】日鍛バルブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乙部 勝則
(72)【発明者】
【氏名】西村 信一
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 一憲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳弘
【審査官】
川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−98719(JP,A)
【文献】
米国特許第4066448(US,A)
【文献】
特開2003−136279(JP,A)
【文献】
特開平9−108888(JP,A)
【文献】
特開平5−271841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C27/06
C22C30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Crを40.0〜50.0質量%、Coを10.0〜20.0質量%、Nbを0.5〜5.0質量%、Feを0.01〜5.0質量%、Siを0.1〜3.0質量%含有し、残部が26.0〜40.0質量%のNiおよび不可避不純物からなることを特徴とする耐高温腐食特性を備えたNi−Cr−Co系合金。
【請求項2】
さらに、Mo、W、Mn、Ti、Al、Bから選択される元素を合計で5.0質量%以下含有し、かつ、Ti、Alがそれぞれ3.0質量%以下、Bが1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の耐高温腐食特性を備えたNi−Cr−Co系合金。
【請求項3】
請求項1ないし請求項2のいずれか記載の組成からなる耐高温腐食特性を備えたNi−Cr−Co系合金を用い、溶射、盛金、蒸着法のいずれかの施工プロセスにて表面改質を施したことを特徴とするポペットバルブ。
【請求項4】
請求項3に記載のポペットバルブにおいて、前記表面改質が少なくとも傘表部面に施されていることを特徴とするポペットバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速フレーム溶射、プラズマ溶射、PTA粉末肉盛溶接、蒸着法などの各種施工プロセスに用いられる表面改質用材料に関するものであり、特に耐高温腐食特性が要求される部材に用いられる耐高温腐食特性を備えたNi-Cr-Co系合金と、それを用いて表面改質したポペットバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐高温腐食特性が必要なポペットバルブでは、バルブ基材に耐熱合金が一般的に用いられている。しかし、近年は使用する燃料の粗悪化やエンジンの高出力化に伴う燃焼ガスの高温化によって高温腐食環境がより過酷化しており、バルブの寿命が短くなっている。即ち、吸気・排気バルブの傘表部には、さらなる耐高温腐食特性が要求されているものの、耐熱鋼、耐熱合金は高温下での機械的特性を優先した組成となっており、高温腐食などの化学的特性が不十分であり、単一材料で機械的特性、化学的特性を同時に満足するには限界があった。このため、従来の問題点を解決するために材料の機械的特性を生かしつつ、さらなる耐高温腐食特性を付与する方法として、発電ボイラーなどのコーティングに用いられるNi-50Crとクロムカーバイドの混合粉の溶射(特許文献1、2)や、タービンなどのコーティングに用いられるMCrAlY合金やイットリア安定化ジルコニアの溶射(特許文献2〜7)の転用、エンジンバルブの表面コーティング用に断熱材(セラミックス)の溶射(特許文献8)、高クロム合金(特許文献9〜15)の適応、などの表面改質技術が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−305159号公報
【特許文献2】特開2009−41059号公報
【特許文献3】特開平9−316622号公報
【特許文献4】特表2002−530525号公報
【特許文献5】特開平10−25578号公報
【特許文献6】特開平7−90619号公報
【特許文献7】特開平7−292453号公報
【特許文献8】特開2003−307105号公報
【特許文献9】特開平10−226841号公報
【特許文献10】特開平9−227980号公報
【特許文献11】特許第3148340号公報
【特許文献12】特開2006−22358号公報
【特許文献13】特開平7−18365号公報
【特許文献14】特開2006−193762号公報
【特許文献15】特開平7−41926号公報
【0004】
しかし、クロムカーバイドやイットリア安定化ジルコニアなどのセラミックスを用いたコーティングでは、コーティング層が剥離した際に、硬質であるセラミックスがバルブとバルブシートの間に噛み込み、バルブやバルブシートの損傷を招く恐れがある。
【0005】
また、特許文献9〜15に示す高Cr系の溶射材料では、Crリッチ固溶体がマトリックスとなるため、熱衝撃に対する抵抗性が低く、コーティング層に割れや剥離が生じて、満足する耐久性が得られない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンバルブの長寿命化を目的とした表面改質技術では、耐高温腐食特性のみが要求される部材の表面改質においても、従来技術(従来材料)では硬質なクロムカーバイドなどのセラミックスあるいは高Cr系合金が溶射材料として適応もしくは検討されている。しかし、これらのコーティング材料は、優れた耐高温腐食特性を備えているものの、靭性が低いため、強い熱衝撃が加わる用途では、コーティング層の割れ発生や、それに伴う剥離が生じ、本来の目的とする耐高温腐食特性が機能しない可能性がある。そこで、耐割れ性や耐剥離特性を備え、かつ、耐高温腐食特性の優れたコーティング材料の開発が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では耐高温腐食特性に優れたコーティング材料の開発を行うための合金組成の検討にあたって、下記の目標値を設定し、これを全て満足することを条件とした。
(目標値)
(1)シャルピー衝撃値 → 30J/cm
2 以上
(2)高温腐食特性/バナジウムアタック → 腐食減量が45.0mg/cm
2未満
(3)高温腐食特性/硫化腐食 → 腐食による侵食深さが20μm以下
(4)溶射皮膜の熱衝撃試験 → (600℃→水冷)で割れ・剥離なきこと
(5)溶射皮膜の密着強さ → 70MPa以上
【0008】
即ち、上記の目標(1)〜(5)を満足する本発明の耐高温腐食特性を備えたNi-Cr-Co系合金の組成は、Crが40.0〜50.0質量%、Coが10.0〜20.0質量%、Nbが0.5〜5.0質量%、Feが0.01〜5.0質量%、Siが0.1〜3.0質量%であり、残部が26.0〜40.0質量%のNiおよび不可避不純物からなることを特徴とする。ここで、不可避不純物とは、意図的に添加していないのに、各原料の製造工程等で不可避的に混入する不純物のことであり、このような不純物としては、Mg、Ca、S、O、N、V、Zr、Snなどが挙げられ、これらの総和は通常0.3質量%以下であり、本発明の作用に影響を及ぼす程ではない。
【0009】
もしくは、耐高温腐食特性を備えたNi-Cr-Co系合金の組成は、Crが40.0〜50.0質量%、Coが10.0〜20.0質量%、Nbが0.5〜5.0質量%、Feが0.01〜5.0質量%、Siが0.1〜3.0質量%であり、さらに、Mo、W、Mn、Ti、Al、Bから選択される元素を合計で5.0質量%以下含有し、かつ、Ti、Alがそれぞれ3.0質量%以下、Bが1.0質量%以下であり、残部が26.0〜40.0質量%のNiおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
【0010】
次に、本発明合金の各成分を限定した理由を述べる。
【0011】
Crは、Ni固溶体に固溶して耐高温腐食特性を向上させるが、40.0質量%未満では高温腐食耐性が不十分となり、50.0質量%を超えるとCrリッチの固溶体を形成し、熱衝撃特性が大幅に低下するため、Crは40.0〜50.0質量%の範囲に規定した。
【0012】
Coは、Ni固溶体に固溶して靭性を高め、耐割れ性や耐剥離性を向上させる。しかし、10質量%未満では、その効果は薄く、また、20質量%を超えると、Crリッチな固溶体を新たに形成して大幅な靭性の低下を招く。そのため、Coは10.0〜20.0質量%の範囲に規定した。
【0013】
Nbは、Ni固溶体に固溶して粒界強化に寄与することで、耐高温腐食特性を改善する。しかし、0.5質量%未満では、粒界強化が不十分となり、5.0質量%を超えると、大幅な靭性の低下を招く。そのため、Nbは0.5〜5.0質量%の範囲に規定した。
【0014】
Feは、合金製造の際のNb添加にフェロニオブを用いる場合、不可避的に0.01質量%程度混入される。特性への寄与はないが、FeはNi固溶体に固溶し、5質量%を超えると、衝撃値が低下するため、0.01〜5.0質量%の範囲に規定した。
【0015】
Siは、Ni固溶体に固溶して合金材料の融点を下げ、さらに溶融した合金の湯流れを向上するため、溶射や肉盛施工において皮膜中に介在する空隙などの欠陥を低減する作用がある。特に溶射施工では、未溶融粒子を軽減する働きがあり、耐剥離性の向上に寄与する。しかし、0.1質量%未満では、その効果が得られず、また、3.0質量%を超えると、シリサイドを形成して大幅に靭性が低下するため、0.1〜3.0質量%の範囲に規定した。
【0016】
本発明の耐高温腐食特性を備えたNi-Cr-Co系合金において、物性に悪影響を及ぼさない添加元素として、Mo、W、Mnをそれぞれ5.0質量%以下、Ti、Alをそれぞれ3.0質量%以下、Bを1.0質量%以下含むことができる。ただし、Mo、W、Mn、Ti、Al、Bのそれぞれ規定量を超えたり、それら合計が5.0質量%を超えると、金属間化合物を形成して靭性の低下を招くため、Mo、W、Mn、Ti、Al、Bの合計は5.0質量%以下に規定した。
【発明の効果】
【0017】
本発明のNi-Cr-Co系合金は、シャルピー衝撃値が30J/cm
2以上であり、十分な熱衝撃特性を備え、かつ、優れた高温腐食耐性を備えているので、過酷な高温腐食環境に対応する表面改質材料として用いることができる。特に、この粉末ないしは棒材を種々材質のポペットバルブにコーティングすることで耐高温腐食特性を向上することができ、さらに、それ以外の広範囲な用途への適応が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ポペットバルブの傘表部に本発明のNi-Cr-Co系合金のコーティングを実施した際の一例を示す模式図である。
【
図2】
図1とは形状の異なるポペットバルブに、本発明のNi-Cr-Co系合金のコーティングを実施した際の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ベースのNi及び添加成分としてのCr、Co、Nb、Fe、Siと、必要に応じて添加するMo、W、Mn、Ti、Al等の夫々が所定の質量%になるよう調整・配合した地金を、溶解炉中のルツボ内で加熱・溶融し、液状の合金とした後、アトマイズ法や溶融粉砕法により粉末とするか、所定の型に鋳造して棒状や板状などとして本発明合金を得ることができる。
【0020】
特にアトマイズ法で製造した合金粉末は、目的の施工方法に適した粒度に調整することにより、溶射やPTA肉盛などの表面改質施工に、連続鋳造法で製造した肉盛溶接棒はガス肉盛などの表面改質施工に、インゴットとした合金は蒸着法の蒸発源とすることで表面改質施工に適用することができる。また、この粉末ないしは棒材を種々材質のポペットバルブにコーティングすることで、ポペットバルブに耐高温腐食特性を付与することができる。
【0021】
図1及び
図2はいずれも、本発明のNi-Cr-Co系合金がコーティングされたポペットバルブの一例を示す模式図であり、これらポペットバルブ1においては、軸部2の一端側に傘部4が設けられ、この傘部4の傘表部4aに、上記合金をコーティングして形成されたコーティング層5が設けられている。尚、符号3はフェース部であり、符号4bは傘裏部である。本発明のポペットバルブにおいては、上記Ni-Cr-Co系合金により形成されたコーティング層5が少なくとも傘表部面に設けられていればよく、本発明は、図面に例示した構造のものに限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
上記のように調整・配合した本発明の実施例合金及び比較例合金を溶製し、以下に示す方法で、シャルピー衝撃値を測定し、高温腐食試験を実施した。また、アトマイズ法で作製した合金粉末を用いて、溶射施工後の皮膜特性の評価も実施した。
【0023】
(1)シャルピー衝撃試験;各合金の配合組成を有する100gの地金を、電気炉を用いアルゴン気流中で約1600℃に加熱、溶解し、シェル鋳型に鋳造して、JIS Z 2242:2005記載の試験片(ノッチなし)に機械加工した。そして、シャルピー衝撃試験機を用いJIS Z 2242:2005に準拠した衝撃試験を行って衝撃値を測定した。
なお、特許文献9〜15において、Cr量が60質量%を超える合金では、約1600℃設定の電気炉では溶融できなかったため、比較検討を断念した(比較検討した特許は特許文献11と15のみ)。
【0024】
(2)高温腐食試験(バナジウムアタック試験);上記(1)と同じ方法で溶製した鋳造片をφ12×3mmの円柱形状に機械加工し、試験片を作製した。また、「試験前の試験片重量」を測定した。この試験片の全面に、85質量%V
2O
5と15質量%Na
2SO
4を乳鉢ですり潰した粉末を混合試薬として、JIS Z2292:2004に準じた方法で腐食試験を行った。800℃の大気炉で20時間加熱・保持した後、アルカリ洗浄により、脱スケールを行い、「試験後の試験片重量」を測定した。
[腐食減量(mg/cm
2)]={(試験前の試験片重量)―(試験後の試験片重量)}÷ (試験片表面積)とし、腐食減量を測定した。また、以下の判定基準を設け、判定A、Bを合格とした。
判定A:腐食減量が22.5mg/cm
2未満
判定B:腐食減量が22.5mg/cm
2以上、45.0mg/cm
2未満
判定C:腐食減量が45.0mg/cm
2以上
【0025】
(3)高温腐食試験(硫化腐食試験);上記(2)と同じ方法で試験片を作製し、試験片の全面に90質量%Na
2SO
4と10質量%NaClを乳鉢ですり潰した粉末を混合試薬として、JIS Z2292:2004に準じた方法で腐食試験を行った。800℃の大気炉で20時間加熱・保持した後、冷却し、アルカリ洗浄により、脱スケールを行い、試験片を切断し、その切断面を研磨して断面状態の観察を行った。なお、断面状態において、以下の判定基準を設け、判定○を合格とした。
判定○:侵食深さが20μm以下。
判定×:侵食深さが20μmを超える。
【0026】
(4)熱衝撃試験;各合金の配合組成を有する100kgの地金を、高周波溶解炉を用いアルゴン気流中で約1600℃に加熱、溶解し、ガスアトマイズ法により、粉末化させ、振搗篩機にて10〜45μmに粒度調整した。この合金粉末を高速フレーム溶射により、Fe-Ni-Cr系耐熱鋼で作製し、ブラスト処理を施したポペットバルブ傘表部に約200μmの膜厚になるように溶射施工した。施工したポペットバルブ軸部を切断し、傘部のみを試験片とした。試験片を所定温度雰囲気の大気炉に入れ、1時間保持後水冷し、浸透探傷・外観状態により溶射皮膜の割れ及び剥離の有無を確認した。試験温度は300℃から100℃毎に上げて行き、溶射皮膜の割れ及び剥離が生じるまで試験を行った。なお、溶射皮膜の割れ及び剥離発生温度より以下の判定を設け、判定○を合格とした。
判定○:試験温度600℃又はそれ以上で溶射皮膜の割れ・剥離無し
判定×:試験温度500℃以下で溶射皮膜の割れ・剥離発生
【0027】
(5)溶射皮膜の密着強さ試験;上記(4)と同じ方法で合金粉末を作製し、高速フレーム溶射によりJIS K 6849:1994記載の試験片(丸棒形引張接着強さ試験片)の片側に溶射施工した。そして、引張試験機を用いJIS K 6849:1994に準拠した引張試験を行って溶射皮膜の密着強さを測定した。なお、以下の判定基準を設け、判定○を合格とした。
判定○:70MPa以上
判定×:70MPa未満
【0028】
表1に本発明の実施例を、表2に比較例を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示す比較例合金(A)〜(F)は本発明の請求範囲外の組成である。合金(A)はCrが請求範囲の下限を下回り、Siが請求範囲の上限を超えたもの、合金(B)はCrが請求範囲の上限を超え、さらにNiが請求範囲の下限を下回ったもの、合金(C)はCoが請求範囲の下限を下回り、さらにNiが請求範囲の上限を超えたもの、合金(D)はCo、MoとWとTiの合計が請求範囲の上限を超え、さらにNiが請求範囲の下限を下回ったもの、合金(E)はNbが請求範囲の下限を下回ったもの、合金(F)はNb、Feが請求範囲の上限を超え、さらにNiが請求範囲の下限を下回ったものであり、合金(E)以外はシャルピー衝撃値が目標を満足しておらず、合金(A)、(E)では、高温腐食特性が目標を満足していなかった。また、衝撃値が目標を満足していない合金は、溶射皮膜の熱衝撃特性や溶射皮膜の密着強さが目標を満足していなかった。
【0032】
表2に示す比較例合金(G)〜(J)は、他の特許文献に記載された組成を有するものであり、シャルピー衝撃値と高温腐食特性、熱衝撃試験、密着強さの目標を全て満足する合金はなかった。
【0033】
これに対し、表1に示すように、本発明合金である実施例1〜8は、シャルピー衝撃値と高温腐食特性、熱衝撃試験、密着強さのいずれも目標値を満足しており、高温腐食が過酷な環境に対するコーティング材料として期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上、述べたように、本発明によるNi-Cr-Co系合金は、表面改質材料として優れた耐高温腐食特性を備えており、本発明合金を各種部材に表面コーティングすることにより、これら部材は著しい耐食性の向上が期待できる。また、本発明のNi-Cr-Co系合金は、高い靭性を有するため、コーティング層の耐剥離性にも優れている。したがって、特にその粉末ないしは棒材を種々材質のポペットバルブにコーティングすることで耐高温腐食特性を向上させることができ、それ以外のより広い範囲へも適応することができる。
【0035】
また、本発明合金は、溶射や盛金、蒸着法に限定されることなく、粉末冶金や鋳造によって、耐高温腐食特性の良好な機械部品を形成することにも活用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 ポペットバルブ
2 軸部
3 フェース部
4 傘部
4a 傘表部
4b 傘裏部
5 コーティング層