【文献】
Antiviral Chemistry & Chemotherapy, 2000, Vol.11, No.1, pages 41−49
【文献】
Journal of infectious diseases, 1999, Vol.180, No.6, pages 1939−1949
【文献】
Journal of applied microbiology,2000, Vol.89, No.3,pages 397−403
油相が大豆、アボカド、スクアレン、オリーブ、アブラナ、トウモロコシ、菜種、サフラワー、ヒマワリ、魚、フレーバー、および水不溶性ビタミンからなる群より選択される油を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫原性組成物。
ポリソルベート界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項記載の免疫原性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本発明の理解を容易とするために、多数の用語およびフレーズを以下に定義する。
【0034】
本明細書中で用いるように、「微生物」という用語とは、微視的生物および藻、細菌、真菌(地衣類を含む)、原生動物、ウイルスおよびウイルス成分剤のカテゴリー内の分類学的に関連する微視的生物をいう。微生物という用語は、それ自体がもう1つの生物(例えば、ヒトを含めた動物、および植物)に対して病原性である生物、および当該生物それ自体は他の生物に対して直接的に病原性または感染性ではないが、もう1つの生物に対して病原性である物質を生じる生物を共に含む。本明細書中で用いるように、「病原体」という用語および文法的同等物は、他の生物に直接的に感染することによって、またはもう1つの生物に病気を引き起こす剤を生じさせることによって(例えば、病原性毒素などを生じる細菌)、もう1つの生物(例えば、動物および植物)に病気を引き起こす微生物を含めた生物をいう。
【0035】
本明細書中で用いるように、「病気」という用語とは、種または群のメンバーに普通または平均とみなされる状態からの逸脱をいい、これは、その種または群の個体の大部分にとって有害ではない条件下で罹患した個体に有害である(例えば、下痢、嘔吐、発熱、疼痛、および炎症等)。病気は微生物および/または病原体による接触から引き起こされるか、またはそれに由来し得る。
【0036】
本明細書中で用いるように、「宿主」または「対象」という用語とは、本発明の組成物および方法によって処置されるべき生物をいう。そのような生物は、一つまたは複数の病原体に曝露した、または曝露したことが疑われる生物を含む。そのような生物は、病原体への望まない曝露を防止するように処置される生物も含む。生物は、限定されるものではないが、動物(例えば、ヒト、家畜動物種、野生動物)および植物を含む。
【0037】
本明細書中で用いるように、「不活化する」という用語および文法的同等体は、感染しおよび/または宿主において病理学的応答を引き起こす病原体を死滅させ、排除し、またはその能力を低下させる能力を有することを意味する。
【0038】
本明細書中で用いるように、「融合性」という用語とは、微生物剤(例えば、細菌または細菌の胞子)の膜と融合することができるエマルジョンをいう。融合性エマルジョンの具体的な例は限定されるものではないが、その各々を参照として本明細書にその全体を組み入れられる、米国特許第5,618,840号;第5,547,677号;および第5,549,901号に記載されたW
808Pおよび米国特許第5,700,679号に記載されたNP9を含む。NP9は分岐したポリ(オキシ−1,2エタネオリル),α−(4−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシ−界面活性剤である。以下のものに限定されないが、本発明で有用であり得るNP9および他の界面活性剤は、本明細書に、参照としてその全体を組み入れられる米国特許第5,662,957号の表1に記載されている。
【0039】
本明細書中で用いるように、「溶解性」という用語とは、微生物剤(例えば、細菌または細菌の胞子)の膜を破壊することができるエマルジョンをいう。本発明の好ましい態様において、同一組成物中における溶解性剤および融合性剤双方の存在は、いずれかの剤単独よりも増強された不活化効果を生じる。この改良された抗微生物組成物を用いる方法および組成物(例えば、ワクチン)を本明細書に詳細に記載する。
【0040】
本明細書中で用いる「エマルジョン」という用語は、古典的な水中油型または油中水型分散液または液滴、ならびに水非混和性油性相を水相と混合する場合に、非極性残基(すなわち、長い炭化水素鎖)を水から排除し、極性頭部基を水に向ける疎水性力の結果として形成できる他の脂質構造を含む。これらの他の脂質構造は、限定されるものではないが、一層、小層、および多層脂質小胞、ミセル、およびラメラ相を含む。同様に、本明細書中で用いる「ナノエマルジョン」という用語とは、小さな脂質構造を含む水中油型分散液をいう。例えば、好ましい態様においては、ナノエマルジョンはほぼ0.1〜5ミクロンの平均粒子サイズを持つ液滴を有する油相を含むが、より小さいおよびより大きい粒子サイズも考えられる。「エマルジョン」および「ナノエマルジョン」という用語は、本明細書中においては、本発明のナノエマルジョンをいうのに相互交換的にしばしば用いられる。
【0041】
本明細書中で用いるように、「接触した」および「曝露した」という用語とは、本発明の組成物が、存在する場合には、微生物または病原性剤を不活化できるように、本発明の一つまたは複数の組成物を病原体または病原体に対して保護すべき対象と接触させることをいう。本発明では、開示された組成物を充分な容量および/または濃度にて病原体または微生物剤と接触させて病原体または微生物剤を不活化することが考えられる。
【0042】
「界面活性剤」という用語とは、水による溶媒和をエネルギー的に好む極性頭部基、および水によって充分には溶媒和されない疎水性尾部の双方を有するいずれの分子もいう。「カチオン性界面活性剤」という用語とは、カチオン性頭部基を持つ界面活性剤をいう。「陰イオン性界面活性剤」という用語とはアニオン性頭部基を持つ界面活性剤をいう。
【0043】
「親水性−親油性バランス指標数」および「HLB指標数」という用語とは、界面活性剤分子の化学的構造をその表面活性と相関させるための指標をいう。前記HLB指標数は、参照として本明細書に組み入れられるMeyers(Meyers,Surfactant Science and Technology,VCH Publishers Inc.,New York,pp.231−245[1992])によって記載されているように種々の経験的な式によって計算することができる。本明細書中で用いるように、界面活性剤のHLB指標数は、McCutcheonの第1巻:Emulsifiers and Detergents North American版,1996(参照として本明細書に組み入れられる)においてその界面活性剤に帰属されたHLB指標数である。HLB指標数は市販の界面活性剤では0から約70の範囲である。水に対する高い溶解度および可溶化特性を持つ親水性界面活性剤は等級の高い方の端部にあり、他方、油への水の良好な可溶化剤である水に対して低い溶解度を持つ界面活性剤は等級の低い方の端部にある。
【0044】
本明細書中で用いるように、「発芽エンハンサー」という用語は、細菌のある種の系統の発芽を増強するように作用する化合物(例えば、L−アミノ酸[L−アラニン]、CaCl
2、イノシン等)を記載する。
【0045】
本明細書中で用いるように、「相互作用エンハンサー」という用語とは、細菌(例えば、グラム陰性菌)の細胞壁とエマルジョンとの相互作用を増強するように作用する化合物をいう。意図される相互作用エンハンサーは、限定されるものではないが、キレート化剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸[EDPA]、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)テトラ酢酸[EGTA]等)およびある種の生物学的物質(例えば、ウシ血清アルブミン[BSA]等)を含む。
【0046】
「緩衝液」または「緩衝剤」という用語とは、溶液に添加された場合に、前記溶液がpHの変化に抵抗するようにする物質をいう。
【0047】
「還元剤」および「電子供与体」という用語とは、電子を第2の物質に供給して、第2の物質の原子の一つまたは複数の酸化状態を低下させる材料をいう。
【0048】
「一価塩」という用語とは、金属(例えば、Na、KまたはLi)が溶液中で正味1+電荷を有する(すなわち、電子よりも1多いプロトン)いずれの塩もいう。
【0049】
「二価塩」という用語とは、金属(例えば、Mg、CaまたはSr)が溶液中で正味2+電荷を有するいずれの塩もいう。
【0050】
「キレーター」または「キレート化剤」という用語とは、金属イオンに結合できる電子の孤立対を持つ2つ以上の原子を有するいずれの物質もいう。
【0051】
「溶液」という用語とは、水性または非水性混合物をいう。
【0052】
本明細書中で用いるように、「治療剤」という用語とは、病原性微生物と接触した宿主において感染率、罹患率または死亡率の開始を減少させるか、または病原性微生物と接触した宿主において感染率、罹患率または死亡率の開始を防止する組成物をいう。そのような剤は、加えて、薬学的に許容される化合物(例えば、アジュバント、賦形剤、安定化剤、希釈剤等)を含むことができる。いくつかの態様においては、本発明の治療剤(例えば、ワクチン)は、局所エマルジョン、注射組成物、摂取可能溶液などの形態で投与される。経路が局所である場合、前記形態は例えばスプレー(例えば、鼻スプレー)であり得る。
【0053】
本明細書中で用いるように、「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語とは、宿主(例えば、動物またはヒト)に投与した場合、有害なアレルギーまたは免疫学的反応を実質的に生じない組成物をいう。本明細書中で用いるように、「薬学的に許容される担体」は、いずれかのおよび全ての溶剤、分散媒体、コーティング、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、等張化剤および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉または澱粉グリコール酸ナトリウム)等を含む。
【0054】
本明細書中で用いるように、「局所的に」という用語とは、皮膚および粘膜細胞および組織の表面に本発明の組成物を適用することをいう(例えば、歯槽、頬、舌、蘇軾、または鼻粘膜、および中空器官または体腔を整列化する他の組織および細胞)。
【0055】
本明細書中で用いるように、「局所的活性剤」という用語とは、適用(接触)の部位における薬理学的応答を宿主に対して誘導する本発明の組成物をいう。
【0056】
本明細書中で用いるように、「全身的活性薬物」という用語は、適用点または対象への進入、から離れた部位において薬理学的応答を生じさせる物質または組成物を示すために広く用いられる。
【0057】
本明細書中で用いるように、「アジュバント」という用語とは抗原(例えば、病原体)に対する免疫応答を増加させる物質をいう。本明細書中で用いるように、「免疫応答」という用語とは、対象の免疫系が外来として認識する免疫原(すなわち、抗原)に対する免疫系による対象(例えば、ヒトまたはもう1つの動物)応答をいう。免疫応答は、細胞媒介免疫応答(免疫系の抗原特異的T細胞および非特異的細胞によって媒介させる応答)および体液性免疫応答(血漿リンパおよび組織体液に存在する抗体によって媒介される応答)を共に含む。「免疫応答」という用語は、免疫原(例えば、病原体)に対する初期の応答ならびに「獲得免疫」の結果である記憶応答を共に含む。
【0058】
本明細書中で用いるように、「免疫」という用語とは、病原体への曝露に際しての病気からの保護をいう。免疫は先天性である(抗原への曝露の不存在化で存在する免疫応答)および/または獲得したもの(抗原への曝露に続いてBおよびT細胞によって媒介され、抗原に対して特異性を呈する免疫応答)ものであり得る。
【0059】
本明細書中で用いるように、「免疫原」という用語とは、対象において免疫応答を誘導することができる抗原をいう。好ましい態様においては、免疫原は、本発明のナノエマルジョンと組み合わせて投与された場合に免疫原(例えば、病原体または病原体産物)に対して免疫を誘導する。
【0060】
本明細書中で用いるように、「病原体産物」という用語とは、限定されるものではないが、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、核酸、膜画分および多糖を含めた病原体に由来するいずれの成分または産物もいう。
【0061】
本明細書中で用いるように、「増強された免疫性」という用語とは、本発明のワクチンが投与されていない場合の獲得された免疫性のレベルに対する本発明のワクチンの投与に続く与えられた病原体に対する獲得された免疫性のレベルの増加をいう。
【0062】
本明細書中で用いるように、「精製された」または「精製する」という用語とは、試料または組成物から汚染物または望まない化合物を除去することをいう。本明細書中で用いるように、「実質的に精製された」という用語とは、試料または組成物から汚染物または望まない化合物の約70〜90%、100%まで除去することをいう。
【0063】
本明細書中で用いるように、「表面」という用語は、その最も広い意味で用いられる。1つの意味においては、前記用語は、本発明の組成物が接触することができる(例えば、動物では、皮膚、頭髪および毛など、および植物では、葉、幹、花の部分、および結実体など)生物または無生物物体(例えば小胞、ビルディング、および食品加工器具等)の最も外側の境界をいう。もう1つの意味においては、前記用語は、多数の経皮送達経路(例えば、注射、摂取、経皮送達、吸入等)のうちのいずれかによって組成物が接触することができる動物および植物の内膜および表面(例えば、動物では、消化管、血管組織等、および植物では、維管束組織等)もいう。
【0064】
本明細書中で用いるように、「試料」という用語はその最も広い意味で用いられる。1つの意味においては、それは動物細胞または組織をいうことができる。もう1つの意味においては、それは、生物学的および環境的試料のような任意の供給源から得られた検体または培養物を含めることを意図する。生物学的試料は植物または動物(ヒトを含む)から得ることができ、流体、固体、組織および気体を含む。環境的試料は、表面物質、土壌、水および産業試料のような環境物質を含む。これらの例は、本発明に適用することができる試料タイプを限定するものと解釈されるべきではない。
【0065】
発明の詳細な説明
本発明は、特異的な免疫応答の刺激のための方法および組成物を提供する。従って、いくつかの態様においては、本発明は病原体に対する免疫性の刺激用のワクチンを提供する。いくつかの態様においては、本発明は、不活化病原体およびナノエマルジョンを含むナノエマルジョンワクチン組成物を提供する。本発明はいずれかの特定のナノエマルジョンまたは病原体に限定されない。例示的なワクチン組成物およびワクチン組成物を投与する方法は後により詳細に記載する。
【0066】
I.抗病原体組成物としてのナノエマルジョン
本発明のいくつかの態様で使用されるナノエマルジョン組成物は抗病原体作用を示した。例えば、ナノエマルジョン組成物は細菌(栄養および胞子形態双方)、ウイルスおよび真菌を不活化することが示されている。本発明の好ましい態様においては、ワクチンとして投与される前にナノエマルジョンへの曝露によって病原体が不活化される。
【0067】
A.殺微生物および静微生物活性
ナノエマルジョン組成物を用いて、細菌を迅速に不活化することができる。ある態様においては、組成物は、グラム陽性菌を不活化するのに特に効果的である。好ましい態様においては、細菌の不活化は約5〜10分後に起こる。従って、細菌をエマルジョンと接触させることができ、迅速かつ効果的に不活化されると考えられる。接触および不活化の間の時間は5〜10分と短くすることができると予測され、この際、細菌はエマルジョンに直接的に曝露される。しかし、ナノエマルジョンを治療で用い、全身適用した場合、不活化は、限定されるものではないが、適用後5分、10分、15分、20分、25分、30分、60分を含めた時間にわたって起こることができる。さらに、追加の態様においては、不活化が起こるのに2時間、3時間、4時間、5時間または6時間かかると考えられる。
【0068】
ナノエマルジョンは、本発明のワクチンを作製するのに用いるためにある種のグラム陰性菌を迅速に不活化することもできる。そのような方法においては、細菌不活化エマルジョンを、細胞壁によるエマルジョンの相互作用を増加させる化合物と予め混合する。本発明のワクチン組成物におけるこれらのエンハンサーの使用は後に本明細書中で議論する。ある種のエマルジョン(例えば、エンハンサーを含むもの)はある種のグラム陽性および陰性菌に対して効果的であることに注意すべきである。
【0069】
特別な例示的な例(実施例3〜4)においては、本発明の組成物および方法でいうようなナノエマルジョンは、栄養細菌に対する毒性は最小であり、優れた選択的殺生物活性を有することが示された。例えば、X8Pはバチルス・セレウス、バチルス・シルカランスおよびバチルス・メガテレウム、ウェルシュ菌、インフルエンザ菌(H.influenzae)、淋菌、ステレプトコッカス・アガラクティエ、肺炎球菌、化膿連鎖球菌並びにコレラ菌古典型およびエルトール型に対してかなり効果的であった(
図26)。この不活化は接触直後に開始し、罹患性の微生物のほとんどでは15〜30分以内に完了する。
【0070】
B.殺胞子および静胞子活性
ある特別の例(例えば、実施例5および11)では、ナノエマルジョンが抗殺胞子活性を有することが示された。いずれの理論にも拘束されないが(機序の理解は本発明を実施するのに必要ではなく、本発明はいずれかの特定の機序に限定されない)、これらのエマルジョンの殺胞子活性は、エマルジョンによる破壊に罹りやすい胞子を残す栄養形態への完全な復帰なくして発芽の開始を経て起こることが提案される。発芽の開始は、エマルジョンまたはその成分の作用によって媒介され得る。
【0071】
電子顕微鏡研究の結果は、X8P処理に続く中心内容物の崩壊を伴う胞子コートおよび皮質の崩壊を示す。殺胞子活性はトライトン X−100およびリン酸トリ−n−ブチル成分双方によって媒介されるように見える。というのは、いずれかの成分を欠くナノエマルジョンはインビボで不活性であるからである。効率が1%漂白剤と同様であるエマルジョンのこの独特な作用は興味深い。なぜならば、バチルス(Bacillus)胞子は、一般に、多くの通常使用される洗剤を含めたほとんどの消毒剤に対して抵抗性であるからである(Russell,Clin.Micro.3;99[1990])。
【0072】
本発明のある種の例示的な例は、マウスへの注射前のX8Pとバチルス・セレウス(B.cereus)胞子との混合はバチルス・セレウスの病理学的効果を妨げることを示す(実施例5)。さらに、本発明の例示的な例は、汚染された刺激創傷のバチルス・セレウス胞子でのX8P処理は、マウスにおいて感染の危険および死亡率を顕著に低下させたことを示す(実施例5)。1:10に希釈したX8P単独を注射した対照動物はいずれの炎症効果も示さず、従って、X8Pはマウスにおいて皮膚毒性を有さないことを示した。これらの結果は、曝露前または後の胞子の即時処理は、実験的皮膚感染の組織損傷の重傷度を効果的に低下させることができることを示唆する。
【0073】
本発明の開発の間に行った他の実験は、異なるバチルス胞子を不活化するX8PおよびX8Pに由来する他のエマルジョンの効果を比較した(実施例11)。1:1000(v/v)まで希釈したX8Pは4時間以内に炭疽菌(B.anthracis)胞子の90%超を不活化し、胞子コートの見掛けの破壊を通じて3つの他のバチルス種に対して殺胞子性でもあった。1:1000に希釈されたX8W
60PCは炭疽菌、バチルス・セレウスおよび枯草菌(B.subtilis)に対してより大きな殺胞子活性を有し、30分未満の作用の開始を有した。マウスにおいては、胞子接種1時間後におけるX8Pでの皮下注射または創傷刺激前にX8Pをバチルス・セレウス混合すると、皮膚病巣サイズは98%を超えて低下した。後者の実験において死亡率は4倍低下した。本発明の組成物は、他の入手可能な殺胞子剤と比較して、安定で、容易に分散され、非刺激性であって非毒性である。
【0074】
本発明のいくつかの態様で用いる細菌不活化水中油型エマルジョンを用いて、接触すると種々の細菌および細菌胞子を不活化することができる。例えば、現在開示されたエマルジョンを用いて、クロストリジウム(Clostridium )(例えば、ボツリヌス菌(C.botulinum)および破傷風菌(C.tetani))も含み、バチルス・セレウス、バチルス・シルクランス(B.circulans)および巨大菌(B.megatetium)を含めたバチルスを不活化することができる。本発明のいくつかの態様で使用したナノエマルジョンは、ある種の生物兵器病原菌(例えば、炭疽菌)を不活化するのに特に有用であり得る。加えて、本発明の製剤は、ウェルシュ菌(C.perfringens)、インフルエンザ菌、エヌクレオチド・ゴノレエ(N.gonorrhoeae)、ステレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)、肺炎球菌(S.pneumonia)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)並びにコレラ菌古典型およびエルトール型と戦うのにも用途がある(
図1)。
【0075】
C.殺ウイルスおよび静ウイルス活性
本発明のさらなる例示的な例(例えば、実施例12)において、本発明のナノエマルジョン組成物は抗ウイルス特性を有することが示された。これらのウイルス剤に対するこれらのエマルジョンの効果はプラーク減少アッセイ法(PRA)、細胞酵素結合免疫吸着検定(ELISA)、β−ガラクトシダーゼアッセイ法、および電子顕微鏡(EM)を用いてモニターし、脂質調製物の細胞毒性は(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT)染色アッセイ法を用いて評価した(Mosmann,J.Immunol.Methods.,65:55[1983])。
【0076】
細胞ELISAによって測定し、引き続いてPRAで確認して、MDCK細胞のインフルエンザA型感染率が顕著に低下した。1:10の希釈のX8PおよびSSはウイルス感染率を95%を超えて低下させた。2つの他のエマルジョンは、希釈1:10においてほぼ40%だけウイルス減少感染率に対する即時効果を示したに過ぎなかった。X8Pは最も優れた調製物であり、希釈1:100においてさえ減少しなかった殺ウイルス効果を示した。動態実験は、1:10希釈におけるX8Pと共にウイルスの5分間のインキュベーションがその感染率を完全に無くしたことを示した。希釈1:5000におけるトライトン X−100、X8Pの活性化合物は、X8Pと比較してウイルスの感染率を部分的に阻害したに過ぎず、これは、ナノエマルジョンそれ自体が抗ウイルス効果に寄与することを示す。X8Pの抗ウイルス特性をさらに調べるために、非エンベロープウイルスに対するその作用を調べた。β−ガラクトシダーゼアッセイ法で測定すると、X8P処理は293細胞においてlacZアデノウイルス構築物の複製に影響しなかった。EMで調べると、アデノウイルスは無傷であったにかかわらず、インフルエンザA型ウイルスはX8Pとのインキュベーションの後に完全に破壊された。
【0077】
加えて、PBS中での10%及び1%X8Pとのウイルスのプレインキュベーションは、プラーク減少アッセイ法によって評価すると、ヘルペス、センダイ、シンドビスおよびワクシニアウイルスを完全に排除する(
図2)。経時的分析は、不活化の開始が迅速であり、10%X8Pとのインキュベーションの5分以内、および1%X8Pとの30分以内に完了することを示した。X8Pの異なる希釈で処理したアデノウイルスは感染率の減少を示さなかった。
【0078】
種々のウイルス猛攻撃に対するあるX8Pベースの組成物の効果および粘膜に対するその最小毒性は、効果的な消毒剤およびエンベロープウイルスでの感染に由来する病気の予防用剤としてのその可能性を示す。
【0079】
D.殺真菌および静真菌活性
本発明のいくつかの態様で用いたナノエマルジョンのさらにもう1つの特性は、それが抗真菌活性を保有することである。真菌感染の通常の病原体はカンジダ属およびアスペルギルス属の種々の種、およびそのタイプ、ならびにその他を含む。外部真菌感染は比較的重要でないが、全身真菌感染は深刻な医学的結果を生じ得る。損なわれた免疫系を有する増加する数の患者に帰すことができるヒトにおける真菌感染の増大する発生がある。特に全身である場合、真菌病は損なわれた免疫系を有する患者に対して生命を脅かしかねない。
【0080】
本発明の開発の間に行われた実験は、鵞口瘡カンジダ(Candida albicans)に適用した場合に、1%X8Pが92%より大きな静真菌活性を有することを示した。カンジダは37℃において1晩増殖させた。次いで、細胞を洗浄し、血球計を用いて計測した。既知量の細胞を異なる濃度のX8Pと混合し、24時間インキュベートした。次いで、カンジダをデキストロース寒天上で増殖させ、1晩インキュベートし、コロニーをカウントした。X8Pの静真菌効果は以下のように決定した。
【0081】
(例えば後に記載する)本発明の方法および組成物で有用な他のナノエマルジョン製剤も静真菌性であると考えられる。当業者であれば、(例えば、本明細書中に記載した方法を用いて)さらなる製剤を、真菌を不活化するその能力につき試験することができると考えられる。
【0082】
E.インビボ効果
本発明の他の例示的な例において、ナノエマルジョン製剤は動物において病原体感染と戦いそれを妨げることが示された。実験動物におけるバチルス・セレウス感染は、炭疽の研究のためにモデル系として既に用いられている(例えば、BurdonおよびWende,J.Infect.Diseas.170(2);272[1960];LamannaおよびJohns,J.Bact.85:532[1963];およびBurdonら、J Infect.Diseas.117:307[1967]参照)。実験的にバチルス・セレウスで感染させた動物で誘導させた病気症候群は炭疽菌と同様である(Drobniewski,Clin.Microbio.Rev.6:324[1993];及びFritzら、Lab.Invest.73:691[1995])。本発明の開発の間に行った実験は、マウスに注射する前にX8Pをバチルス・セレウス胞子と混合すると、バチルス・セレウスの病理学的効果を妨げることを示した。さらに、汚染したシミュレート創傷のバチルス・セレウス胞子でのX8P処理は、マウスにおいて感染の危険および死亡率を顕著に低下させることが示された。1:10に希釈されたX8P単独で注射された対照動物はいずれの炎症効果も示さず、これは、X8Pがマウスにおいて皮膚毒性を有さないことを証明した。これらの結果は、曝露前または後における胞子の即時処理が、実験的皮膚感染の組織損傷の重傷度を効果的に低下させることができることを示唆する。
【0083】
特別な例において、ウェルシュ菌感染の研究用の実験動物としてモルモットを使用した。1.5cmの皮膚創傷を作成し、基部筋肉を破壊し、さらに処理することなく5×10
7cfuのウェルシュ菌で感染させた。もう1つのグループを同一数の細菌で感染させ、次いで、1時間後に、それを生理食塩水またはX8Pいずれかで灌注して、曝露後脱汚染を刺激した。生理食塩水での実験的に感染させた創傷の灌注の結果、いずれの明らかな利点も生じなかった。しかし、ウェルシュ菌で感染させた創傷のX8P灌注は浮腫、炎症反応および壊死の顕著な低下を示した。従って、ある種のナノエマルジョン製剤は細菌感染と戦うことができることが示された。
【0084】
さらに、10%X8Pの皮下注射は実験動物で傷害を引き起こさず、全体の組織学的組織損傷をもたらさなかった。鼻毒性研究における全てのラットは、研究期間にわたって体重増加を示した。有害な臨床的兆候は認められず、全ての組織は全ての実験において正常な限界内にあるように見えた。処理動物の糞からの細菌培養は未処理動物のそれとは有意に異ならなかった。
【0085】
II.ナノエマルジョンワクチン組成物
いくつかの態様において、本発明は、ナノエマルジョンおよび一つまたは複数の不活化病原体または病原体産物を含むワクチン組成物を提供する。本発明は任意の数の病原体用のワクチンを提供する。本発明はいずれかの特定のナノエマルジョン製剤に限定されない。事実、種々のナノエマルジョン製剤が考えられる(例えば、以下の記載および例示的実施例、および参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第20020045667号参照)。
【0086】
本発明の免疫原(例えば、病原体または病原体産物)およびナノエマルジョンは、種々の送達方法を使用して任意の適当な量で合わせることができる。限定されるものではないが、本明細書中に開示されるものを含めたいずれの適当な医薬製剤も使用することができる。適当なワクチン製剤は、いずれかの適切な方法を用いて免疫原性につき試験することができる。例えば、いくつかの態様において、免疫原性は、抗体の力価および特異的T細胞応答双方を定量することによって調べる。また、ナノエマルジョンワクチンを感染症状態の動物モデルで試験することができる。適当な動物モデル、病原体、および免疫原性についてのアッセイ法は、限定されるものではないが、後に記載されるものを含む。
【0087】
A.免疫アジュバントとしてのナノエマルジョン
創傷、皮膚または粘膜いずれかに適用した場合に予防的方法で感染を妨げるナノエマルジョンの能力は記載されている(Hamoudaら、J.Infect.Dis.,180:1939[1999];Donovanら、Antivir Chem Chemother.,11:41[2000])。本発明の開発の間に、いくつかの研究において、インフルエンザウイルスへの曝露前にマウスを鼻適用ナノエマルジョンで予め処理して、吸入インフルエンザ肺炎を妨げるナノエマルジョンの能力を記録した。ナノエマルジョンでの予備処理からの罹患率は対照動物と比較して最小であり、死亡率は大いに減少した(予備処理での20%に対し対照において80%;実施例13)。生存するエマルジョン予備処理動物のいくつかは、エマルジョンで処理したがウイルスに曝露されなかった対照動物には存在しない肺における免疫反応性および巨大細胞形成の少ない面積の証拠を有することが判明した。予備処理動物の全ては、肺マクロファージへの脂質取込の証拠を有した。本発明はいずれかの1つの機序に限定されない。事実、機序の理解は本発明を実施するのに必要でない。それにもかかわらず、ナノエマルジョン/ウイルス組成物での処理の結果、インフルエンザウイルスに対する免疫性は発生すると考えられる。
【0088】
従って、1つの例示的な例(実施例13)において、曝露した動物の血清中でのインフルエンザウイルスに対する抗体力価を調べた。エマルジョンおよびウイスルを受け取った動物は高い力価のウイルス特異的抗体を有することが判明した(
図6)。この免疫反応は、予備処理なくしてウイルスに曝露した対照動物では観察されなかった。
【0089】
実験を行ってエマルジョンおよびウイルスの投与が毒性なくして保護的免疫性を生じるかを調べた(実施例13)。ウイルス(LD
80:5×10
4pfu)とナノエマルジョンとの混合物を二週間放して二つの場合に動物に投与した。対照として、動物に等量のホルマリン死滅ウイルス、ナノエマルジョン単独または生理食塩水いずれかを与えた。これらの研究の結果は、エマルジョン/ウイルス混合物のみが、動物の鼻腔に投与した場合に有意な抗体応答を誘導することを示した。力価は極端に高く、ウイルスに特異的な血清IgGおよび気管支IgA応答双方を含んだ(
図7および8)。より重要なことには、2つの反復された実験において、死滅からの完全な保護がエマルジョン/ウイルス予備処理グループで観察された(表25)。15匹の動物のいずれも、ナノエマルジョン中に混合した5×10
4pfuのウイルスの2回投与後にLD
80のウイルスへの曝露で死亡せず、他方、対照動物の予測された80%がこの曝露で死亡した。鼻腔に適用されたホルマリン死滅ウイルスの同一用量は死滅からの保護を与えず、ウイルス特異的抗体のかなり低い力価をもたらした(
図7および8)。
【0090】
また、実験を行なって、ナノエマルジョン中の少量の残存する生きたウイルスが免疫性を提供する臨床下感染を生じつつある可能性を調べた(実施例13)。さらなるグループの動物には、低レベルの感染を誘導する試みにおいてほぼ100pfuの生きたウイルスを鼻腔内に投与した(ナノエマルジョンでの処理の15分後に存在する前記量の生きたウイルスのほぼ4倍)。これらの動物の死亡率のわずかな低下があり、臨床下感染を示唆するが、観察された保護の量はエマルジョン処理グループで見られたものよりも有意に低く、これらの動物でウイルス特異的抗体を生じたものはなかった(表25)。これは、それが単に免疫応答を媒介する亜致死性ウイルス感染ではなく、エマルジョンはウイルス特異的免疫応答を特異的に増強しつつあったことを物語った。保護免疫性がエマルジョン/ウイルス混合物の唯2回適用後に得られ、各適用後に増加したようであり、ブースター効果を示唆した。ウイルス特異的抗体力価は、エマルジョン/ウイルス混合物の投与後6週間維持された。
【0091】
例示的実施例15は、鼻腔投与インフルエンザウイルス/ナノエマルジョンの能力は、生きたウイルスでのさらなる抗原投与に対してマウスにおいて免疫性を誘導できることであった。
【0092】
本発明は、ワクチン化合物の鼻腔内投与に限定されない。また、非経口投与方法も考えられる。例えば、例示的実施例16は、HIV gp120タンパク質/ナノエマルジョンの非経口投与がマウスにおいて免疫応答を誘導したことを示す。また、本発明は、全病原体を含むワクチンの使用に限定されない(例えば、限定されるものではないが、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、膜画分、および多糖を含めた)病原体産物の使用が考えられる。例示的実施例16は、HIV gp120タンパク質に対する免疫応答の発生を示す。
【0093】
B.病原体
本発明は、病原体のいずれか1つの特異的タイプの使用に制限されない。事実、種々の病原体に対するワクチンは本発明の範囲内のものである。従って、いくつかの態様において、本発明は、(例えば、限定されるものではないが、バチルス・セレウス、バチルス・シルクランス、および巨大菌、炭疽菌・ウェルシュ菌、コレラ菌、化膿連鎖球菌、ステレプトコッカス・アガラクティエ、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、淋菌、インフルエンザ菌、大腸菌、ネズミチフス菌、志賀赤痢菌、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、エンテロコリチカ菌および偽結核菌を含めた)栄養または胞子形態の細菌病原体に対するワクチンを提供する。他の態様において、本発明は、(例えば、限定されるものではないが、インフルエンザA型、単純疱疹ウイルスI、単純疱疹ウイルスII、センダイ、シンドビス、ワクシニア、パルボウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、およびヒトパピローマウイルス、ピコルナウイルス、ハンタウイルス、フニンウイルス、およびエボラウイルスを含めた)ウイルス病原体に対するワクチンを提供する。なおさらなる態様において、本発明は、限定されるものではないが、鵞口瘡カンジダおよびパラシロシス、アスペルギルス・フミガーツスおよび黒色アスペルギルス、フザリウム spp.、トリコフィートンspp.を含めた真菌病原体に対するワクチンを提供する。
【0094】
本発明のワクチンを製剤化するのに用いられる細菌は、限定されるものではないが、アメリカンタイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)を含めた商業的供給源から得ることができる。いくつかの態様において、細菌はナノエマルジョンと混合されるに先立って動物中で継代されて、5〜10継代で各特定の動物宿主につきそれらの病原性を増強させる(Sinaiら、J.Infect.Dis.,141:193[1980])。いくつかの態様において、次いで、細菌を宿主動物から単離し、培養で拡大し、−80℃にて保存する。ちょうど使用前に、細菌を解凍し、適当な細菌固形培地上で一晩増殖させる。翌日、細菌を寒天プレートから収集し、適当な液体溶液(例えば、ブレイン・ハート・インフュージョン(BHI)ブロス)に懸濁させる。細菌の濃度は、殺菌試験のためのマクファーランド(McFarland)標準(HendrichsonおよびKrenz,1991)に基づき、細菌カウントがml当たりほぼ1.5×10
8コロニー形成単位(CFU/ml)となるように調整する。
【0095】
本発明のワクチンを製剤化するのに用いられるウイルスは、限定されるものではないが、ATCCを含めた商業的供給源から得ることができる。いくつかの態様において、ウイルスは予見動物モデルにおいて5〜10回継代して、各特定の動物につき病原性を増強させる(GinsbergおよびJohnson、Infect.Immun.,13:1221[1976])。いくつかの態様において、ウイルスを収集し、組織培養で増殖させ、次いで、密度勾配濃縮および超遠心分離を用いて精製する。(Garlinghouseら、Lab Anim Sci.,37:437[1987];およびMahy,Br.Med.Bull.,41:50[1985])。プラーク形成単位(PFU)は適当な組織培養細胞で計算される。
【0096】
各病原体についての致死量および/または感染量は、限定されるものではないが、感染経路により動物に異なる用量の病原体を投与し、以前の刊行物(Fortierら、Infect.Immun.,59:2922[1991];Jacoby,Exp.Gerontol.,29:89[1994];およびSalitら、Can J Microbiol.,30:1022[1984])に基づき、動物の病気または死亡いずれかの予測される結果をもたらす用量を同定することによるのを含め、いずれかの適当な方法を用いて計算することができる。
【0097】
C.ナノエマルジョン
本発明のナノエマルジョンワクチン組成物はいずれかの特定のナノエマルジョンに制限されない。限定されるものではないが、Hamoudaら、J.Infect Dis.,180:1939[1999];HamoudaおよびBaker,J.Appl.Microbiol.,89:397 [2000];およびDonovanら、Antivir.Chem.Chemother.,11:41[2000]に開示されたもの、ならびに表1および2および
図4および9に示されたものを含めた、任意の数の適当なナノエマルジョン組成物を本発明のワクチン組成物で使用することができる。本発明の好ましいナノエマルジョンは、病原体を死滅させまたは不活化するのに効果的であり、動物に対して非毒性であるものである。従って、好ましいエマルジョン製剤はエタノールのような非毒性溶媒を使用し、より低い濃度のエマルジョンでより効果的な死滅を達成する。好ましい態様において、本発明の方法で使用するナノエマルジョンは安定であり、長い保存期間(例えば、1年またはそれ以上)後でさえ分解しない。加えて、好ましいエマルジョンは、高温および凍結への曝露の後でさえ安定性を維持する。もしそれらが極端な条件で適用されるものであれば(例えば、戦場)、これは特に有用である。いくつかの態様において、表1および/または
図4または9に記載されたナノエマルジョンのうちの1つを使用する。
【0098】
いくつかの好ましい態様において、エマルジョンは(i)水相;(ii)油相;および少なくとも1つのさらなる化合物を含む。本発明のいくつかの態様において、これらのさらなる化合物を、組成物の水相または油相いずれかに混合する。他の態様において、これらのさらなる化合物は、前に乳化させた油相および水相の組成物に混合する。これらの態様のあるものにおいて、一つまたは複数のさらなる化合物を、その使用直前に、存在するエマルジョン組成物に混合する。他の態様において、一つまたは複数のさらなる化合物を、組成物の即座の使用に先立って、存在するエマルジョン組成物に混合する。
【0099】
本発明の組成物で用いるのに適したさらなる化合物は、限定されるものではないが、一つまたは複数の、有機物、より特別には、有機リン酸ベースの溶媒、界面活性剤および洗剤、第四級アンモニウム含有化合物、カチオン性ハロゲン含有化合物、発芽エンハンサー、相互作用エンハンサー、および薬学的に許容される化合物を含む。本発明の組成物で用いることが考えられる種々の化合物のある例示的態様を以下に掲げる。
【0102】
本発明のいくつかの態様はエタノールを含有する油相を使用する。例えば、いくつかの態様において、本発明のエマルジョンは(i)は水相および(ii)有機溶媒としてのエタノールおよび選択的に発芽エンハンサーを含有する油相、および(iii)界面活性剤としてのチロキサポール(好ましくは2〜5%、より好ましくは3%)を含有する。この製剤は微生物に対してかなり効果的であり、また、哺乳動物使用者に対して非刺激性であり非毒性である(従って、粘膜と接触させることもできる)。
【0103】
いくつかの他の態様において、本発明のエマルジョンは第2のエマルジョン内で乳化させた第1のエマルジョンを含み、ここに、(a)第1のエマルジョンは(i)水相;および(ii)油および有機溶媒を含む油相;および(iii)界面活性剤を含み;(b)第2のエマルジョンは(i)水相;および(ii)油およびカチオン含有化合物を含む油相;および(iii)界面活性剤を含む。
【0104】
以下の記載は、組成物X8PおよびX
8W
60PCのための製剤を含めた多数の例示的エマルジョンを提供する。X8Pは油中水型ナノエマルジョンを含み、ここに、油相は大豆油、リン酸トリ−n−ブチル、および80%水中のトライトン X−100から作成された。X
8W
60PCは等容量のX8PとW
808Pとの混合物を含む。W
808Pはモノステアリン酸グリセロール、精製大豆ステロール(例えば、ジーンロール(GENEROL)ステロール)、ツィーン 60、大豆油、カチオンハロゲン含有CPCおよびペパーミント油より作成されたリポソーム様化合物である。ジーンロールファミリーはポリエトキシル化大豆ステロールのグループである(Henkel Corporation,Ambler,Pennsylvania)。エマルジョン製剤は、本発明のある態様につき表1に掲げる。これらの特定の製剤は、その全体を参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,700,679号(NN);第5,618,840号;第5,549,901号(W
808P);および第5,547,677号に見出すことができる。
【0105】
前記X8W
60PCエマルジョンは、まず、W
808PエマルジョンおよびX8Pエマルジョンを別々に作成することによって製造される。次いで、これらの2つのエマルジョンの混合物を再度乳化させて、X8W
60PCという新鮮なエマルジョン組成物を得る。そのようなエマルジョンを生じさせる方法は(その全体を参照として本明細書に組み入れられる)米国特許第5,103,497号および第4,895,452号に記載されている。これらの化合物は幅広いスペクトルの抗微生物活性を有し、膜破壊を通じて栄養型細菌を不活化することができる。
【0106】
前記で列挙した組成物は例示的なものに過ぎず、当業者であれば、化合物の量を変化させて、本発明の目的に適したナノエマルジョン組成物に到達できると考えられる。当業者であれば、水に対する油相の比率ならびに個々の油性担体、界面活性剤CPCおよび有機リン酸緩衝液、各組成物の成分を変化させることができることを理解すると思われる。
【0107】
X8Pを含むある組成物は4:1の油に対する水の比率を有するが、X8Pを多かれ少なかれ水相を有するように製剤化できることが理解される。例えば、いくつかの態様においては、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の部の油相の各部分に対する水相がある。それはW
808P製剤でも当てはまる。同様に、リン酸トリ(N−ブチル):トライトン X−100:大豆油の比率も変化させることができる。
【0108】
表1は、W
808Pにつき、モノオレイン酸グリセロール、ポリソルベート60、ジーンロール 122、塩化セチルピリジニウムおよび担体油の具体的量を列挙するが、これらは単に例示的なものである。同一機能を満たすと考えられるこれらの成分または事実異なる成分の各々の異なる濃度を有する、W
808Pの特性を有するエマルジョンを製剤化することができる。例えば、前記エマルジョンは、初期の油相に約80〜約100gの間のモノオレイン酸グリセロールを有することができる。他の態様において、前記エマルジョンは、初期の油相に約15〜約30gの間のポリソルベート60を有することができる。さらにもう1つの態様において、前記組成物は、初期の油相中に、約20〜約30gの間のジーンロールステロールを含むことができる。
【0109】
本発明のエマルジョンのある態様のナノエマルジョン構造は、それらの殺生物活性ならびにこれらのエマルジョンの非毒性に対する寄与に働くことができる。例えば、X8P中の活性成分、トライトン−X100は11%X8Pと同等な濃度においてウイルスに対してより低い殺生物活性を示す。洗剤および溶媒への油相の添加は、同一濃度において組織培養中のこれらの病原体の毒性を顕著に低下させる。いずれの理論にも拘束されないが(機序の理解は本発明を実施するのに必要でなく、本発明はいずれかの特定の機序に制限されない)、ナノエマルジョンはその成分と病原体との相互作用を増強させ、それにより、病原体の不活化を促進させ、個々の成分の毒性を低下させると示唆される。X8Pの全成分をナノエマルジョン構造中ではなく1つの組成物中で合わせると、混合物が、成分がナノエマルジョン構造中にある場合と同程度の抗微生物的に効果的であることに注意すべきである。
【0110】
組成物のような製剤のクラスに提示した多数のさらなる態様を以下に示す。抗病原体物質としての多数のこれらの組成物の効果を
図9に掲げる。以下の組成物は活性成分の種々の比率および混合物を引用する。当業者であれば、以下の引用した製剤は例示的なものであって、引用した成分の同様なパーセント範囲を含むさらなる製剤は本発明の範囲内であることを認識すると思われる。
【0111】
本発明のある態様において、本発明の製剤は、約3〜8容量%のチロキサポール、約8容量%エタノール、約1容量%の塩化セチルピリジニウム(CPC)、約60〜70容量%の油(例えば、大豆油)、約15〜25容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)、およびいくつかの製剤においては約1容量%未満の1N NaOHを含む。これらの態様のいくつかはPBSを含む。これらの態様のあるものにおける1N NaOHおよび/またはPBSの添加により、使用者は、約4.0〜約10.0、より好ましくは約7.1〜8.5のpH範囲が達成されるように製剤のpHを有利に制御することができることが考えられる。例えば、本発明の1つの態様は約3容量%のチロキサポール、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約24容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではY3ECと命名する)。もう1つの同様な態様は約3.5容量%のチロキサポール、約8容量%のエタノール、および約1容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約23.5容量%のDiH
2Oを含む(Y3.5ECと命名する)。さらにもう1つの態様は約3容量%のチロキサポール、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、製剤のpHが約7.1になるように約0.067容量%の1N NaOH、約64容量%の大豆油、および約23.93容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではY3EC pH7.1と命名する)。なおもう1つの態様は約3容量%のチロキサポール、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、製剤のpHが約8.5となるような約0.67容量%の1N NaOH、および約64容量%の大豆油、および23.33容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではY3EC pH8.5と命名する)。もう1つの同様な態様は約4%のチロキサポール、約8容量%のエタノール、約1%のCPC、約64容量%の大豆油、および約23容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではY4ECと命名する)。さらにもう1つの態様において、製剤は約8%のチロキサポール、約8%のエタノール、約1容量%のCPC、および約64容量%の大豆油、および約19容量%のDiH
2Oを含む(Y8ECと本明細書では命名する)。さらなる態様は約8容量%のチロキサポール、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約19容量%の1×PBSを含む(本明細書ではY8EC PBSと命名する)。
【0112】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は約8容量%のエタノール、および約1容量%のCPC、および約64容量%の油(例えば、大豆油)、および約27容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む(ECと本明細書では命名する)。
【0113】
本発明においては、いくつかの態様は約8容量%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、約8容量%のリン酸トリブチル(TBP)、および約64容量%の油(例えば、大豆油)、および約20容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む(本明細書ではS8Pと命名する)。
【0114】
本発明のある態様において、本発明の製剤は約1〜2容量%のトライトン X−100、約1〜2容量%のチロキサポール、約7〜8容量%のエタノール、約1容量%の塩化セチルピリジニウム(CPC)、約64〜57.6容量%の油(例えば、大豆油)、および約23容量%の水相を含む(例えば、DiH
2OまたはPBS)。加えて、これらの製剤のいくつかは、さらに、約5mMのL−アラニン/イノシン、および約10mMの塩化アンモニウムを含む。これらの製剤のいくつかはPBSを含む。これらの態様のいくつかにおけるPBSの添加により、使用者は、製剤のpHを有利に制御することができることが検討されている。例えば、本発明の1つの態様は約2容量%のトライトン X−100、約2容量%のチロキサポール、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約23容量%の水相DiH
2Oを含む。もう1つの態様において、製剤は、約1.8容量%のトライトン X−100、約1.8容量%のチロキサポール、約7.2容量%のエタノール、約0.9容量%のCPC、約5mMのL−アラニン/イノシン、および約10mMの塩化アンモニウム、約57.6容量%の大豆油、および残りの1×PBSを含む(本明細書では90%X2Y2EC/GEと命名する)。
【0115】
本発明の別の態様において、製剤は約5容量%のツィーン 80、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、約64容量%の油(例えば、大豆油)、および22容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではW
805ECと命名する)。
【0116】
本発明のさらに他の態様において、製剤は約5容量%のツィーン 20、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、約64容量%の油(例えば、大豆油)、および約22容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではW
205ECと命名する)。
【0117】
本発明のさらに他の態様において、製剤は約2〜8容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、約60〜70容量%の油(例えば、大豆油、またはオリーブ油)、および約15〜25容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む。例えば、本発明では、約2容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約64容量%の大豆油、および約26容量%のDiH
2Oを含む製剤が考えられる(本明細書ではX2Eと命名する)。他の同様な態様において、製剤は約3容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約64容量%の大豆油、および約25容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX3Eと命名する)。なおさらなる態様において、製剤は約4容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約64容量%の大豆油、および約24容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX4Eと命名する)。さらに他の態様において、製剤は約5容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約64容量%の大豆油、および約23容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX5Eと命名する)。本発明のもう1つの態様は約6容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約64容量%の大豆油、および約22容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX6Eと命名する)。本発明のなおさらなる態様において、製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約64容量%の大豆油、および約20容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8Eと命名する)。本発明のなおさらなる態様において、製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約64容量%のオリーブ油、および約20容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8E Oと命名する)。さらにもう1つの態様において、8容量%のトライトン X−100、約8容量%のエタノール、約1容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約19容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8ECと命名する)。
【0118】
本発明の別の態様において、製剤は約1〜2容量%のトライトン X−100、約1〜2容量%のチロキサポール,約6〜8容量%のTBP、約0.5〜1.0容量%のCPC、約60〜70容量%の油(例えば、大豆)、および約1〜35容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む。加えて、これらの製剤のあるものは約1〜5容量%のトリプティカーゼ大豆ブロス、約0.5〜1.5容量%の酵母抽出物、約5mMのL−アラニン/イノシン、約10mMの塩化アンモニウム、および約20〜40容量%の液体ベビー製剤を含むことができる。液体ベビー製剤を含む態様のいくつかにおいて、前記製剤はカゼイン加水分解物(例えば、ニュートラミゲン(Neutramigen)またはプロゲスチミル(Progestimil)等)を含む。これらの態様のいくつかにおいて、本発明の製剤は、さらに、約0.1〜1.0容量%のチオ硫酸ナトリウム、および約0.1〜1.0容量%のクエン酸ナトリウムを含む。これらの基本的成分を含む他の同様な態様はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を水相として使用する。例えば、1つの態様は、約2容量%のトライトン X−100、約2容量%のチロキサポール、約8容量%のTBP、約1容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約23容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX2Y2ECと命名する)。さらに他の態様において、本発明の製剤は約2容量%のトライトン X−100、約2容量%のチロキサポール、約8容量%のTBP、約1容量%のCPC、約0.9容量%のチオ硫酸ナトリウム、約0.1容量%のクエン酸ナトリウム、約64容量%の大豆油、および約22容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX2Y2PC STS1と命名する)。もう1つの同様な態様において、製剤は約1.7容量%のトライトン X−100、約1.7容量%のチロキサポール、約6.8容量%のTBP、約0.85%のCPC、約29.2%のニュートラミゲン(NEUTRAMIGEN)、約54.4容量%の大豆油、および4.9容量%のDiH
2Oを含む(本明細書では85% X2Y2PC/ベイビーと命名する)。本発明のさらにもう1つの態様において、製剤は約1.8容量%のトライトン X−100、約1.8容量%のチロキサポール、約7.2容量%のTBP、約0.9容量%のCPC、約5mMのL−アラニン/イノシン、約10mMの塩化アンモニウム、約57.6容量%の大豆油、および残りの容量%の0.1×PBSを含む(90% X2Y2 PC/GEと命名する)。さらにもう1つの態様において、製剤は約1.8容量%のトライトン X−100、約1.8容量%のチロキサポール、約7.2容量%のTBP、約0.9容量%のCPC、および約3容量%のトリプティカーゼ大豆ブロス、約57.6容量%の大豆油、および約27.7容量%のDiH
2Oを含む(本明細書では90% X2Y2PC/TSBと命名する)。本発明のもう1つの態様において、製剤は約1.8容量%のトライトン X−100、約1.8容量%のチロキサポール、約7.2容量%のTBP、約0.9容量%のCPC、約1容量%の酵母抽出物、約57.6容量%の大豆油、および約29.7容量%のDiH
2Oを含む(本明細書では90% X2Y2PC/YEと命名する)。
【0119】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は約3容量%のチロキサポール、約8容量%のTBP、および約1容量%のCPC、約60〜70容量%の油(例えば、大豆またはオリーブ油)、および約15〜30容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む。本発明の特定の態様において、本発明の製剤は約3容量%のチロキサポール、約8容量%のTBP、および約1容量%のCPC、約64容量%の大豆、および約24容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではY3PCと命名する)。
【0120】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は約4〜8容量%のトライトン X−100、約5〜8容量%のTBP、約30〜70容量%の油(例えば、大豆またはオリーブ油)、および約0〜30容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む。加えて、これらの態様のあるものは、さらに、約1容量%のCPC、約1容量%の塩化ベンザルコニウム、約1容量%の臭化セチルピリジニウム、約1容量%の臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、500μMのEDTA、約10mMの塩化アンモニウム、約5mMのイノシン、および約5mMのL−アラニンを含む。例えば、これらの態様のあるものにおいて、本発明の製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約64容量%の大豆油、および約20容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8Pと命名する)。本発明のもう1つの態様において、本発明の製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約1%のCPC、約64容量%の大豆油、および約19容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8PCと命名する)。さらにもう1つの態様において、製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTPB、約1容量%のCPC、約50容量%の大豆油、および約33容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではATB−X1001と命名する)。なお、もう1つの態様において、製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約2容量%のCPC、約50容量%の大豆油、および約32容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではATB−X002と命名する)。本発明のもう1つの態様は、約4容量%のトライトン X−100、約4容量%のTBP、約0.5容量%のCPC、約32容量%の大豆油、および約59.5容量%のDiH
2Oを含む(本明細書では50% X8PCと命名する)。なおもう1つの関連する態様は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約0.5容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約19.5容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8PC
1/2と命名する)。本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約2容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約18容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8PC2と命名する)。他の態様において、本発明の製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8%のTBP、約1%の塩化ベンザルコニウム、約50容量%の大豆油、および約33容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8P BCと命名する)。本発明の別の態様において、製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約1容量%の臭化セチルピリジニウム、約50容量%の大豆油、および約33容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8P CPBと命名する)。本発明のもう1つの例示的態様において、製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約1容量%の臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、約50容量%の大豆油、および約33容量%DiH
2Oを含む(本明細書ではX8P CTABと命名する)。なお更なる態様において、本発明は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約1容量%のCPC、約500μMのEDTA、約64容量%の大豆油、および約15.8容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8PC EDTAと命名される)。さらなる同様な態様は8容量%のトライトン X−100、約8容量%のTBP、約1容量%のCPC、約10mMの塩化アンモニウム、約5mMのイノシン、約5mMのL−アラニン、約64容量%の大豆油、および約19容量%のDiH
2OまたはPBSを含む(本明細書ではX8PC GE
1xと命名する)。本発明のもう1つの態様において、本発明の製剤は、さらに、約5容量%のトライトン X−100、約5%のTBP、約1容量%のCPC、約40容量%の大豆油、および約49容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX5P
5Cと命名する)。
【0121】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は約2容量%のトライトン X−100、約6容量%のチロキサポール、約8容量%のエタノール、約64容量%の大豆油、および約20容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX2Y6Eと命名する)。
【0122】
本発明のさらなる態様において、製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のグリセロール、約60〜70容量%の油、(例えば、大豆またはオリーブ油)、および約15〜25容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む。ある関連する態様は、さらに、約1容量%のL−アスコルビン酸を含む。例えば、1つの特別な態様は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のグリセロール、約64容量%の大豆油、および約20容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8Gと命名する)。さらにもう1つの態様において、本発明の製剤は約8容量%のトライトン X−100、約8容量%のグリセロール、約1容量%のL−アスコルビン酸、約64容量%の大豆油、および約19容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8GV
Cと命名する)。
【0123】
なおさらなる態様において、本発明の製剤は約8容量%のトライトン X−100、約0.5〜0.8容量%のツィーン 60、約0.5〜2.0容量%のCPC、約8容量%のTBP、約60〜70容量%の油(例えば、大豆またはオリーブ油)、および約15〜25容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む。例えば、1つの特別な態様において、製剤は約8容量%のトライトン X−100、約0.70容量%のツィーン 60、約1容量%のCPC、約8容量%のTBP、約64容量%の大豆油、および約18.3容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8W60PC
1と命名する)。もう1つの関連する態様は約8容量%のトライトン X−100、約0.71容量%のツィーン 60、約1容量%のCPC、約8容量%のTBP、約64容量%の大豆油、および約18.29容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではW60
0.7X8PCと命名する)。なお他の態様において、本発明の製剤は約8容量%のトライトン X−100、約0.7容量%のツィーン 60、約0.5容量%のCPC、約8容量%のTBP、約64〜70容量%の大豆油、および約18.8容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではX8W60PC
2と命名する)。さらに他の態様において、本発明は約8容量%のトライトン X−100、約0.71容量%のツィーン 60、約2容量%のCPC、約8容量%のTBP、約64容量%の大豆油、および約17.3容量%のDiH
2Oを含む。本発明のもう1つの態様において、製剤は約0.71容量%のツィーン 60、約1容量%のCPC、約8容量%のTBP、約64容量%の大豆油、および約25.29容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではW60
0.7PCと命名する)。
【0124】
本発明のもう1つの態様において、本発明の製剤は、約60〜70容量%の油(例えば、大豆またはオリーブ油)、および20〜30容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)に加えて、約2容量%のスルホコハク酸ジオクチル、約8容量%のグリセロールもしくは約8容量%のTBPいずれかを含む。例えば、本発明の1つの態様は約2容量%のスルホコハク酸ジオクチル、約8容量%のグリセロール、約64容量%の大豆油、および約26容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではD2Gと命名する)。もう1つの関連する態様において、本発明の製剤は約2容量%のスルホコハク酸ジオクチル、および約8容量%のTBP、約64容量%の大豆油、および約26容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではD2Pと命名する)。
【0125】
本発明のさらに他の態様において、本発明の製剤は約8〜10容量%のグリセロール、および約1〜10容量%のCPC、約50〜70容量%の油(例えば、大豆またはオリーブ油)、および約15〜30容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む。加えて、これらの態様のあるものにおいて、組成物は、さらに、約1容量%のL−アスコルビン酸を含む。例えば、1つの特別な態様は、約8容量%のグリセロール、約1容量%のCPC、約64容量%の大豆油、および約27容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではGCと命名する)。さらなる関連する態様は約10容量%のグリセロール、約10容量%のCPC、約60容量%の大豆油、および約20容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではGC10と命名する)。本発明のなおもう1つの態様において、本発明の製剤は約10容量%のグリセロール、約1容量%のCPC、約1容量%のL−アスコルビン酸、約64容量%の大豆、または油、および約24容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではGCV
Cと命名する)。
【0126】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は約8〜10容量%のグリセロール、約8〜10容量%のSDS、約50〜70容量%の油(例えば、大豆またはオリーブ油)、および約15〜30容量%の水相(例えば、DiH
2OまたはPBS)を含む。加えて、これらの態様のあるものにおいて、組成物は、さらに、約1容量%のレシチン、および約1容量%のp−ヒドロキシ安息香酸メチルエステルを含む。そのような製剤の例示的態様は約8容量%のSDS、8容量%のグリセロール、約64容量%の大豆油、および約20容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではS8Gと命名する)。関連する製剤は約8容量%のグリセロール、約8容量%のSDS、約1容量%のレシチン、約1容量%のp−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、約64容量%の大豆油、および約18容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではS8GL1B1と命名する)。
【0127】
本発明のなおもう1つの態様において、本発明の製剤は約4容量%のツィーン 80、約4容量%のチロキサポール、約1容量%のCPC、約8容量%のエタノール、約64容量%の大豆油、および約19容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではW
804Y4ECと命名する)。
【0128】
本発明のいくつかの態様において、本発明の製剤は約0.01容量%のCPC、約0.08容量%のチロキサポール、約10容量%のエタノール、約70容量%の大豆油、および19.91容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではY.08EC.01と命名する)。
【0129】
本発明のなおもう1つの態様において、本発明の製剤は約8容量%のラウリル硫酸ナトリウム、および約8容量%のグリセロール、約64容量%の大豆油、および約20容量%のDiH
2Oを含む(本明細書ではSLS8Gと命名する)。
【0130】
前記した特別な製剤は、本発明を用いる種々の組成物を説明するための単なる例である。本発明では、前記製剤の多くの変形、ならびにさらなるナノエマルジョンが本発明の方法で用いられると考えられる。候補エマルジョンが本発明に関して用いるのに適切であるかを判断するには、3つの基準を分析することができる。本明細書中で記載した方法および標準を用い、候補エマルジョンを容易に試験してそれらが適切かを判断することができる。まず、本明細書中に記載した方法を用いて所望の成分を調製して、エマルジョンを形成できるかを判断する。もしエマルジョンが形成できない場合には、前記候補が拒絶される。例えば、4.5%のチオ硫酸ナトリウム、0.5%のクエン酸ナトリウム、10%のn−ブタノールの64%大豆油、および21%のDiH
2Oから作成された候補組成物はエマルジョンを形成しなかった。
【0131】
第2に、好ましい態様においては、候補エマルジョンは安定なエマルジョンを形成するはずである。もしそれがその意図した使用を可能とするのに充分な期間エマルジョン形態に留まる場合には、エマルジョンは安定である。例えば、保存され、出荷されるなどを予定されるエマルジョンでは、組成物は数ヶ月〜数年の間エマルジョンの形態に留まるのが望ましい場合がある。比較的不安定な典型的なエマルジョンは1日以内にその形態を失うと考えられる。例えば、8%の1−ブタノール、5%のツィーン 10、1%のCPC、64%の大豆油、および22%のDiH
2Oから作成された候補組成物は安定なエマルジョンを形成しなかった。以下の候補エマルジョンは本明細書中に記載した方法を用いて安定であることが示された:0.08%のトライトン X−100、0.08%のグリセロール、0.01%の塩化セチルピリジニウム、99%のバター、および0.83%のdiX
2O(本明細書では1% X8GCバターと命名する);0.8%のトライトン X−100、0.8%のグリセロール、0.1%の塩化セチルピリジニウム、6.4%の大豆油、1.9%のdiH
2O、および90%のバター(本明細書では10% X8GCバターと命名する);2%のW
205EC、1%のナトロゾル(Natrosol)250L NF、および97%のdiH
2O(本明細書では2% W
205EC L GELと命名する);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%の70粘度鉱油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205EC 70鉱油と命名する);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%の350粘度鉱油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205EC 350鉱油と命名される)。
【0132】
第3に、候補エマルジョンは、その意図した使用につき効果を有するはずである。例えば、抗菌性エマルジョンは病原体を検出できるレベルまで死滅させるまたは能力を奪うはずである。本明細書中に示すように、本発明のあるエマルジョンは特定の微生物に対して効果を有するが、他の微生物に対しては有さない。本明細書中に記載した方法を用い、所望の微生物に対する特定の候補エマルジョンの適当性を決定することができる。一般に、これは、適当な対照試料(例えば、水のような陰性対照)での1対1実験において、一つまたは複数の期間微生物をエマルジョンに曝露し、エマルジョンが微生物を死滅させるかまたは能力を奪うか、およびどの程度までそれを行なうかを判断することを含む。例えば、1%の塩化アンモニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%の大豆油、および22%のDiH
2Oから作成された候補組成物は効果的なエマルジョンではないことが示された。以下の候補エマルジョンは本明細書中に記載された方法を用いて効果的であることが示された。5%のツィーン 20、5%の塩化セチルピリジニウム、10%のグリセロール、60%の大豆油、および20%のdiH
2O(本明細書ではW
205GC5と命名する);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、10%のグリセロール、64%の大豆油、および20%のdiH
2O(本明細書ではW
205GCと命名する);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%のオリーブ油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205ECオリーブ油と命名する);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%のアマニ油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205ECアマニ油と命名する);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%のトウモロコシ油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205ECトウモロコシ油と命名する);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%のヤシ油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205ECヤシ油と命名する);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%の綿実油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205EC綿実油と命名する);8%のデキストロール、5%のツィーン 10、1%の塩化セチルピリジニウム、64%の大豆油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205Cデキステロースと命名する);8%のPEG 200、5%のツィーン 10、1%の塩化セチルピリジニウム、64%の大豆油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205C PEG 200と命名する);8%のメタノール、5%のツィーン 10、1%の塩化セチルピリジニウム、64%の大豆油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205C メタノールと命名される);8%のPEG 1000、5%のツィーン 10、1%の塩化セチルピリジニウム、64%の大豆油、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205C PEG 1000と命名される);2%のW
205EC、2%のナトロゾル(Natrosol)250H NF、および96%のdiH
2O(本明細書では2% W
205EC ナトロゾル2と命名される、また2% W
205EC GELとも呼ばれる);2%のW
205EC、1%のナトロゾル250H NF、および97%のdiH
2O(本明細書では2% W
205ECナトロゾル1と命名される);2%のW
205EC、3%のナトロゾル250H NF、および95%のdiH
2O(本明細書では2%のW
205ECナトロゾル3と命名される);2%のW
205EC、0.5%のナトロゾル250H NF、および97.5%のdiH
2O(2% W
205ECナトロゾル0.5と命名される);2%のW
205EC、2%のメトセル(Methocel)A、および96%のdiH
2O(本明細書では2% W
205ECメトセルA);2%のW
205EC、2%のメトセルK、および96%のdiH
2O(本明細書では2% W
205ECメトセルKと命名される);2%のナトロゾル、0.1%のX8PC、0.1×PBS、5mMのL−アラニン、5mMのイノシン、10mMの塩化アンモニウム、およびdiH
2O(本明細書では0.1% X8PC/GE+2%ナトロゾルと命名される);2%のナトロゾル、0.8%のトライトン X−100、0.8%のリン酸トリブチル、6.4%の大豆油、0.1%の塩化セチルピリジニウム、0.1×PBS、5mMのL−アラニン、5mMのイノシン、10mMの塩化アンモニウム、およびdiH
2O(本明細書では10%X8PC/GE+2%ナトロゾルと命名される);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%のラード、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205Ecラードと命名される);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のエタノール、64%の鉱油、および22%のdiH
2O(W
205EC鉱油と命名される);0.1%の塩化セチルピリジニウム、2%のネロリドール(Nerolidol)、5%のツィーン 20、10%のエタノール、64%の大豆油、および18.9%のdiH
2O(本明細書ではW
205EC
0.1Nと命名される);0.1%の塩化セチルピリジニウム、2%のファルネゾル(Farnesol)、5%のツィーン 20、10%のエタノール、64%の大豆油、および18.9%のdiH
2O(本明細書ではW
205EC
0.1Fと命名される);0.1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、10%のエタノール、64%の大豆油、および20.9%のdiH
2O(本明細書ではW
205EC
0.1と命名される);10%の塩化セチルピリジニウム、8%のリン酸トリブチル、8%のトライトン X−100、54%の大豆油、および20%のdiH
2O(本明細書ではX8PC
10と命名される);5%の塩化セチルピリジニウム、8%のトライトン X−100、8%のリン酸トリブチル、59%の大豆油、および20%のdiH
2O(本明細書ではX8PC
5と命名される);0.02%の塩化セチルピリジニウム、0.1%のツィーン 20、10%のエタノール、70%の大豆油、および19.88%のdiH
2O(本明細書ではW
200.1EC
0.02と命名される);1%の塩化セチルピリジニウム、5%のツィーン 20、8%のグリセロール、64%のモービル(Mobil)1、および22%のdiH
2O(本明細書ではW
205GCモービル1と命名される);7.2%のトライトン X−100、7.2%のリン酸トリブチル、0.9%の塩化セチルピリジニウム、57.6%の大豆油、0.1×PBS、5mMのL−アラニン、5mMのイノシン、10mMの塩化アンモニウム、および25.87%のdiH
2O(本明細書では90% X8PC/GEと命名される);7.2%のトライトン X−100、7.2%のリン酸トリブチル、0.9%の塩化セチルピリジニウム、57.6%の大豆油、1%のEDTA、5mMのL−アランン、5Mmのイノシン、10mMの塩化アンモニウム、0.1×PBS、およびdiH
2O(本明細書では90% X8PC/GE EDTAと命名される);および7.2%のトライトン X−100、7.2%のリン酸トリブチル、0.9%の塩化セチルピリジニウム、57.6%の大豆油、1%のチオ硫酸ナトリウム、5mMのL−アラニン、5mMのイノシン、10mMの塩化アンモニウム、0.1×PBS、およびdiH
2O(本明細書では90% X8PC/GE STSと命名される)。
【0133】
1.水相
いくつかの態様において、エマルジョンは、水相を含む。ある好ましい態様においては、前記エマルジョンの合計容量に基づき、(他の濃度も考えられるが)エマルジョンは約5〜50、好ましくは10〜40、より好ましくは15〜30容量%の水相を含む。好ましい態様において、水相は、約4〜10、約6〜8のpHの水を含む。水は好ましくは脱イオン化されている(以後、「DiH
2O」)。いくつかの態様において、水相はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含む。いくつかの好ましい態様において、水相は滅菌されており、かつ発熱物質なしである。
【0134】
2.油相
いくつかの態様において、エマルジョンは油相を含む。ある好ましい態様において、(他の濃度も考えられるが)本発明のエマルジョンの油相(例えば、担体油)は、前記エマルジョンの合計容量に基づき、30〜90容量%、好ましくは60〜80容量%、より好ましくは60〜70容量%の油を含む。適当な油は、限定されるものではないが、大豆油、アボカド油、スクワレン油、スクワレン油、オリーブ油、アブラナ油、トウモロコシ油、菜種油、サフラワー油、ヒマワリ油、魚油、フレーバー油、水不溶性ビタミンおよびその混合物を含む。特に好ましい態様において、大豆油を用いる。本発明の好ましい態様において、油相は、好ましくは、約1〜2ミクロン、より好ましくは0.2〜0.8ミクロン、最も好ましくは約0.8ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有する液滴としての水相の全体に分配される。他の態様において、水相は油相中に分配することができる。
【0135】
いくつかの態様において、油相は、エマルジョンの合計容量に基づき、3〜15容量%、および好ましくは5〜10容量%の有機溶媒を含む。本発明はいずれかの特定の機序に限定されないが、エマルジョンで使用される有機リン酸ベースの溶媒が、病原体の膜中の脂質を除去または破壊するように働くと考えられる。従って、微生物膜中のステロールまたはリン脂質を除去するいずれの溶媒も本発明の方法で用いられる。適当な有機溶媒は、限定されるものではないが、有機リン酸ベースの溶媒またはアルコールを含む。いくつかの好ましい態様において、非毒性アルコール(例えば、エタノール)が溶媒として使用される。油相、および油相中に提供されるいずれかのさらなる化合物は好ましくは滅菌されており、かつ発熱物質なしである。
【0136】
3.界面活性剤および洗剤
いくつかの態様において、エマルジョンは、さらに、界面活性剤または洗剤を含む。いくつかの好ましい態様において、(他の濃度も考えられるが)エマルジョンは、約3〜15%、および好ましくは約10%の一つまたは複数の界面活性剤または洗剤を含む。本発明はいずれかの特定の機序に限定されないが、エマルジョン中に存在すると、界面活性剤はエマルジョンを安定化させるように助けると考えられる。非イオン性(非アニオン)およびイオン性界面活性剤双方が考えられる。加えて、界面活性剤のBRIJファミリーからの界面活性剤は本発明の組成物の使用が見出されている。界面活性剤は水相または油相いずれか中に提供することができる。エマルジョンで用いるのに適した界面活性剤は種々のアニオン性およびノニオン性界面活性剤ならびに水中油型エマルジョンの形成を促進することができる他の乳化化合物を含む。一般に、乳化化合物は比較的親水性であり、乳化化合物の混和を用いて必要な品質を達成することができる。いくつかの製剤において、ノニオン性界面活性剤は、それらが広いpH範囲に実質的により適合し、しばしば、イオン性(例えば、石鹸型)乳化剤よりも安定なエマルジョンを形成する点でイオン性乳化剤よりも優れた利点を有する。従って、ある好ましい態様において、本発明の組成物はポリソルベート界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンエーテル)、ポリソルベート洗剤、フェノキシポリエトキシエタノールなどのような一つまたは複数の非イオン性界面活性剤を含む。本発明で有用なポリソルベート洗剤の例は、限定されるものではないが、ツィーン 20、ツィーン 40、ツィーン 60、ツィーン 80等を含む。
【0137】
ツィーン 20、ツィーン 40およびツィーン 80と共にツィーン 60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸)は、多数の薬学的組成物中で乳化剤として用いられるポリソルベートを含む。本発明のいくつかの態様において、これらの化合物はアジュバントと共に共成分としても用いられる。また、ツィーン界面活性剤は脂質−エンベロープウイルスに対して殺ウイルス効果を有するようである(例えば、Erikssonら、Blood Coagulation and Fibtinolysis 5(Suppl.3):S37−S44[1994]参照)。
【0138】
本発明で有用なフェノキシポリエトキシエタノールおよびそのポリマーの例は、限定されるものではないが、トライトン(例えば、X−100、X−301、X−165、X−102、X−200)およびチロキサポールを含む。トライトンX−100は、生物学的構造から脂質およびタンパク質を抽出するのに広く用いられる強力な非イオン性洗剤および分散剤である。また、それはエンベロープウイルスの幅広いスペクトルに対して殺ウイルス効果を有する(例えば、MahaおよびIgarashi,Southeast Asia J.Trop.Med.Pub.Health 28:718[1997];およびPortocalaら、Virologie 27:261[1976]参照)。この抗ウイルス活性のため、それは、新鮮な凍結ヒト血漿中のウイルス病原体を不活化させるのに使用される(例えば、Horowitzら、Blood 79:826[1992])。
【0139】
本発明は本明細書に開示された界面活性剤に限定されない。本発明の組成物で有用なさらなる界面活性剤および洗剤は(例えば、限定されるものではないが、McCutheon's Volume 1:Emulsions and Detergents−North American Edition,2000を含めた)参考文献および商業的供給源から確認することができる。
【0140】
4.カチオン性ハロゲン
いくつかの態様において、エマルジョンは、さらに、カチオン性ハロゲン含有化合物を含む。いくつかの好ましい態様において、(他の濃度も考えられるが)エマルジョンは、前記エマルジョンの合計重量に基づき、約0.5〜1.0重量%またはそれ以上のカチオン性ハロゲン含有化合物を含む。好ましい態様において、カチオン性ハロゲン含有化合物は好ましくは油相と予め混合され;しかし、カチオン性ハロゲン含有化合物は別個の製剤においてエマルジョン組成物と組み合わせて提供することができると理解されるべきである。適当なハロゲン含有化合物は塩化物、フッ化物、臭化物およびヨウ化物イオンを含む化合物より選択することができる。好ましい態様において、適当なカチオン性ハロゲン含有化合物は、限定されるものではないが、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスフォニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、またはハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウムを含む。いくつかの特別な態様において、適当なカチオン性ハロゲン含有化合物は、限定されるものではないが、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム(CPB)、および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスフォニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、および臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムを含む。特に好ましい態様において、本発明の組成物はいずれかの特定なカチオン含有化合物での製剤化に制限されないが、カチオン性ハロゲン含有化合物はCPCである。
【0141】
5.発芽エンハンサー
本発明の他の態様において、ナノエマルジョンは、さらに、発芽エンハンサーを含む。いくつかの好ましい態様において、(他の濃度も考えられるが)エマルジョンは約1mM〜15mM、およびより好ましくは約5mM〜約10mMの一つまたは複数の発芽エンハンサー化合物を含む。好ましい態様において、発芽増強化合物はエマルジョンの形成に先立って水相に提供される。本発明では、発芽エンハンサーがナノエマルジョン組成物に添加されると、ナノエマルジョンの殺胞子特性が増強されると考えられる。本発明では、さらに、そのような発芽エンハンサーは中性pH(pH6〜8の間、好ましくは7)の近くで殺胞子活性を開始すると考えられる。そのような中性pHエマルジョンは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈することによって、または中性エマルジョンの調製によって得ることができる。ナノエマルジョンの殺胞子活性は、胞子が発芽を開始した場合に優先的に起こる。
【0142】
特別な態様において、本発明のワクチンで使用されるエマルジョンは殺胞子活性を有することが証明された。本発明はいずれかの特定の機序に限定されず、かつ機序の理解は本発明を実施するのに必要ではないが、エマルジョンの融合性成分が発芽を開始するように作用し、栄養型形態の復帰が完了する前に、エマルジョンの溶原性成分が新たに発芽する胞子を溶解させるように作用すると考えられる。従って、エマルジョンのこれらの成分は共同して作用して、エマルジョンによる破壊に対して胞子が感受性であるようにする。発芽エンハンサーの添加は、さらに、例えば、殺胞子活性が起こる速度を早めることによってエマルジョンの抗殺胞子活性を促進する。
【0143】
細菌内生胞子および真菌胞子の発芽は増大した代謝および熱および化学反応体に対する減少した抵抗性に関連する。発芽が起こるには、胞子は、環境が成長および再生を支持するのに適したことを感知しなければならない。アミノ酸L−アラニンは細菌胞子発芽を刺激する(例えば、Hills,J.Gen.Micro.4:38[1950];およびHalvorsonおよびChurch,Bacteriol Rev.21:112[1957]参照。また、L−アラニンおよびL−プロリンは真菌胞子発芽を開始させると報告されている(Yanagita,Arch Mikrobiol 26:329[1957])。グリシンおよびL−アラニンのような単純なα−アミノ酸は代謝において中枢的な位置を占める。α−アミノ酸のトランスアミノ化または脱アミノ化は代謝および成長に必要な糖原性またはケト原性炭水化物および窒素を生じる。例えば、L−アラニンのトランスアミノ化または脱アミノ化は解糖代謝の最終生成物であるピルビン酸を生じる(エムデン−マイヤーホフ−パルナス経路)。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によるピルビン酸の酸化はアセチル−CoA、NADH、H
+およびCO
2を生じる。アセチル−CoAは、ミトコンドリア電子輸送鎖を供給するトリカルボン酸回路(クレブス回路)についての開始伝達基質である。また、アセチル−CoAは脂肪酸合成並びにステロール合成についての究極的な炭素源である。単純α−アミノ酸は続く発芽および代謝活性に必要な窒素、CO
2、糖原性および/またはケト原性同等体を提供することができる。
【0144】
ある態様において、本発明の適当な発芽増強剤は、限定されるものではないが、グリシンならびにアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、リジン、フェニルアラニン、チロシンおよびそのアルキルエステルのL−エナンチオマーを含むα−アミノ酸を含む。発芽に対するアミノ酸の効果に対するさらなる情報は、その全体を参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,510,104号に見出すことができる。いくつかの態様において、グルコース、フルクトース、アスパラギン、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アンモニウム(NH
4Cl)、塩化カルシウム(CaCl
2)および塩化カリウム(KCl)の混合物を用いることもできる。本発明の特に好ましい態様において、製剤は発芽エンハンサーL−アラニン、CaCl
2、イノシンおよびNH
4Clを含む。いくつかの態様において、組成物は、さらに、加えて、それ自体が発芽エンハンサーおよび緩衝液を含んでも含まなくてもよい一つまたは複数の共通形態の成長培地(例えば、トリプティカーゼ大豆ブロス等)を含む。
【0145】
前記化合物は単に例示的な発芽エンハンサーであり、他の公知の発芽エンハンサーは本発明のいくつかの態様で用いられるナノエマルジョンで用いられると理解される。候補発芽エンハンサーは本発明の組成物に含めるための2つの基準を満足すべきである。それは本明細書中に開示したエマルジョンに関連できるべきであり、それは、本明細書中に開示したエマルジョンに配合すると標的胞子の発芽の速度を増加させるべきである。当業者であれば、本明細書中に開示したナノエマルジョンと組み合わせてそのような剤を標的に適用し、前記剤なくして本発明の組成物によって標的の不活化と混合によって接触した場合の標的の不活化を比較することによって、特定の剤が発芽エンハンサーとして作用する所望の機能を有するか否かを判断することができる。発芽を増加させ、それにより、生物の増殖を減少または阻害するいずれの剤も、本明細書中に開示したナノエマルジョン組成物で用いる適当なエンハンサーと考えられる。
【0146】
さらに他の態様において、中性エマルジョン組成物への発芽エンハンサー(または増殖培地)の添加は、本発明のワクチン組成物で用いられるエンベロープウイルス、グラム陰性菌およびグラム陽性菌に加えて、細菌胞子を不活化するのに有用な組成物を生じる。
【0147】
6.相互作用エンハンサー
なお他の態様において、ナノエマルジョンは、組成物(すなわち、「相互作用エンハンサー」)と標的病原体(例えば、ビブリオ(Vibrio)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)およびシュードモナス(Pseudomonas)のようなグラム陰性菌の細胞壁)との相互作用を増加させることができる一つまたは複数の化合物を含む。好ましい態様において、相互作用エンハンサーは、好ましくは、油相と混合するが、他の態様においては、相互作用エンハンサーは、乳化後、組成物と組み合わせて提供する。ある好ましい態様において、相互作用エンハンサーはキレート化剤(例えば、緩衝液[例えば、トリス緩衝液]中のエチレンジアミンテトラ酢酸[EDTA]またはエチレンビス(オキシエチレンニトリロ)テトラ酢酸[EGTA])。キレート化剤は単に例示的な相互作用増強化合物であると理解される。事実、微生物剤および/または病原体と本発明のいくつかの態様で用いるナノエマルジョンの相互作用を増加させる他の剤が考えられる。特に好ましい態様を用いて、相互作用エンハンサーは約50〜約250μMの濃度におけるものである。当業者であれば、本発明の組成物と組み合わせたそのような剤を標的に適用し、前記剤なくして本発明の組成物による標的の不活化と、混合により接触した場合の標的の不活化を比較することによって、特定の剤が相互作用エンハンサーとして作用する所望の機能を有するか否かを決定することができると考えられる。エマルジョンと細菌との相互作用を増加させ、それにより、その不存在下におけるそのパラメーターと比較して細菌の増殖を減少または阻害するいずれの剤も相互作用エンハンサーと考えられる。
【0148】
いくつかの態様において、相互作用エンハンサーのナノエマルジョンへの添加は、本発明のワクチン組成物で用いるエンベロープウィルス、いくつかのグラム陽性菌およびいくつかのグラム陰性菌を不活化するのに有用な組成物を生じる。
【0149】
7.第四級アンモニウム化合物
いくつかの態様において、本発明のナノエマルジョンは第四級アンモニウム含有化合物を含む。例示的な第四級アンモニウム化合物は、限定されるものではないが、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルおよび塩化ジアルキルジメチルアンモニム、塩化N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムポリマー、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化n−アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化n−アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化n−アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化n−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム一水和物、塩化n−アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)s−トリアジン、塩化ミリスタルコニウム(および)カントリニウム(Quat RNIUM) 14、塩化アルキルビス(2−ヒドロキシエチル)べジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチル3,4−ジクロロベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、アルキルジメチルベンジルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルジメチルベンジルアンモニウム、臭化アルキルジメチルエチルアンモニウム、臭化アルキルジメチルエチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルイソプロピルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル1または3ベンジル−1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリニウム、塩化ジアルキルメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化2−(2−(p−(ジイソブチル)クレゾスキシ)エトキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化2−(2−(p−(ジイソブチル)フェノキシ)エトキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルハイドロジェンアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ドデシルカルバモイルメチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘプタデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウム、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、塩化オクチルデシルジメチルアンモニウム、塩化オクチルドデシルジメチルアンモニウム、塩化オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウム、オキシジエチレンビス(アルキルジメチルアンモニウムクロライド)、第四級アンモニウム化合物、塩化ジココアルキルジメチル、トリメトキシシリルクワッツおよび塩化トリメチルドデシルベンジルアンモニウムを含む。
【0150】
8.ナノエマルジョンの製造
本発明のワクチン組成物に用いるナノエマルジョンは古典的なエマルジョン形成技術を用いて形成することができる。簡単に述べれば、(例えば、高い水圧および機械的力を用い)比較的高い剪断力下で油相を水相と混合して、直径がほぼ0.5〜5ミクロン、および好ましくは1〜2ミクロンである油液滴を含有する水中油型エマルジョンを得る。エマルジョンは、約1:9〜5:1、好ましくは約5:1〜3:1、最も好ましくは4:1の水相に対する油相の範囲の容量対容量の単位で、油相を水相と混和することによって形成される。フレンチプレスまたは高剪断ミキサー(例えば、FDAに認可された高剪断ミキサーは、例えば、Admix,Inc.,Manchester,NHから入手できる)のようなエマルジョンを形成するのに充分な剪断力を生じさせることができるいずれかの装置を用い、油相および水相を混和することができる。そのようなエマルジョンを製造する方法は、参照としてその全体を組み入れられる米国特許第5,103,497号および第4,895,452号に記載されている。
【0151】
エマルジョンの少なくとも一部は、限定されるものではないが、単層、多層およびパウクリアメラー(paucliamellar)脂質小胞、ミセル、およびラメラ相を含めた脂質構造の形態とすることができる。ナノエマルジョン化合物は大量に製造することができ、広い範囲の温度にて数ヶ月の間安定である。希釈しなければ、それらは半固体クリームのテキスチャーを有する傾向にあり、手によって局所適用することができるか、または水と混合することができる。希釈すれば、それらは脱脂乳と同様な粘稠性および外観を有する傾向にある。
【0152】
D.動物モデル
いくつかの態様において、潜在的ナノエマルジョンワクチンを感染症の動物モデルで試験する。良く開発された動物モデル使用は、ヒト対象への投与に先立ってワクチンの有効性および安全性を測定する方法を提供する。例示的な病気の動物モデルを表3に示す。それらの動物は(例えば、Jackson Laboratories Charles River;Portage,MIから)商業的に入手可能である。
【0153】
(炭疽菌と密接に関連する)バチルス・セレウスの動物モデルを使用して本発明の炭疽(Anthrax)ワクチンを試験する。双方の細菌は胞子形成グラム陽性桿菌であり、各細菌によって生じる病気症候群は大いに毒素生産および感染した宿主に対するこれらの毒素の効果による(Brownら、J.Bact.,75:499[1958];BurdonおよびWende,J.Infect.Dis.,107:224[1960];Burdon、らJ.Infect.Dis.,117:307[1967])。バチルス・セレウスの感染は炭疽菌によって引き起こされた病気症候群を模倣する。マウスはバチルス・セレウスの毒素を迅速にその作用に屈すると報告されており、急性感染に対する有用なモデルである。モルモットは、炭疽の皮膚形態に似ているバチルス・セレウスでの皮下感染に続いて皮膚病巣を生じる。
【0154】
マウスおよびモルモット双方におけるクロストリジウム・フェルフリンゲンス感染は抗生物質薬物のインビボ試験でモデル系として用いられてきた(Stevensら、Antimicrob.Agents Chemother.,31:312[1987];Stevensら、J.Infect.Dis.,155:220[1987];Alttemeierら、Surgery,28:621[1950];Sanduskyら、Surgery 28:632[1950])。クロストリジウム・テタニは種々の哺乳動物種に感染し、そこで病気を引き起こすことがよく知られている。マウス、モルモットおよびウサギはすべて実験的に用いられてきた(Willis,Topley and Wilson's Principles of Bacteriology,Virology and Immunity,Wilson,G.,A.MilesおよびM.T.Parker編,442−475頁、1983)。
【0155】
コレラ菌感染はマウス、モルモットおよびウサギにおいて首尾よく開始された。公表された報告によると、これらの実験宿主で確立されるべき感染についての正常な腸細菌フローラを変更するのが好ましい。これは、抗生物質を投与して正常な腸フローラを抑制しおよび、ある場合には、動物から食物を差し控えることによって達成される。(Buttertonら、Infect.Immun.,64:4373[1996];Levineら、Microbiol.Rev.,47:510[1983];Finkelstinら、J.Infect.Dis.,114:203[1964];Freter,J.Eep.Med.104:411[1956];およびFreter,J.Infect.Dis.,97:57[1955])。
【0156】
シゲラ・フレクスネリ感染はマウスおよびモルモットにおいて首尾よく開始されている。ビブリオ感染で当てはまるように、正常な腸細菌フローラはこれらの実験宿主において感染の確立を助けるように改変するのが好ましい。これは、抗生物質を投与して正常な腸フローラを抑制しおよび、ある場合には、動物から食物を差し控えることによって達成される。(Levineら、Microbiol.Rev.,47:510[1983];Freter,J.Exp.Med.,104:411[1956];Formalら、J.Bact.,85:119[1963];LaBrecら、J.Bact.88:1503[1964];Takeuchiら、Am.J.Pathol.,47:1011[1965]
【0157】
マウスおよびラットはネズミチフス菌および腸炎菌(Salmonella enteriditis)に関する実験研究で広く用いられたきた。(Naughtonら、J.Appl.Bact.,81:651[1996];CarterおよびCollins,J.Exp.Med.,139:1189[1974];Collins,Infect.Immun.,5:191[1972];CollinsおよびCarter,Inter.Immum.,6:451[1972])。
【0158】
マウスおよびラットはセンダイウイルスへの感染用のよく確立された実験モデルである。(Jacobyら、Exp.Gerontol.,29:89[1994];Massionら、Am J.Respir.Cell Mol.Biol.9:361[1993];Castlemanら、Am.J.Path.,129:277[1987];Castleman,Am.J.Vet.Res.,44:1024[1983];MimsおよびMurphy,Am.J.Path.,70:315[1973])。
【0159】
マウスのシンドビスウイルス感染は、通常、新生マウスの脳内接種によって達成される。または、乳離れをしたばかりのマウスが足に皮下接種される。(Johnsonら、J.Infect.Dis.,125:257[1972];Johnson,Am.J.Path.,46:929[1965])。
【0160】
動物は3〜5日間収容して、出荷を差し控え、実験で用いる前に新たな収容環境に適合させるのが好ましい。各実験の開始時に対照動物を犠牲にし、組織を収穫してベースラインパラメーターを確立する。動物を(例えば、限定されるものではないが、短い処置のためのイソフルオランの吸入またはより長い処置のためのケタミン/キシラジン注射を含めた)任意の適当な方法によって麻酔する。
【0162】
E.ワクチンの評価のためのアッセイ法
いくつかの態様において、候補ナノエマルジョンワクチンはいくつかの適当なモデル系のうちの1つを用いて評価する。例えば、細胞媒介免疫応答はインビトロで評価することができる。加えて、動物モデルを用いてインビボ免疫応答および病原体攻撃に対する免疫性を評価することができる。限定されるものではないが、表3に開示されたものを含めた任意の適当な動物モデルを使用することができる。
【0163】
動物系においてナノエマルジョンワクチンを試験する前に、病原体を不活化するのに充分なナノエマルジョンへの病原体の曝露の量を調べる。細菌胞子のような病原体は、充分に中和して免疫化を可能とするために、ナノエマルジョンによる不活化に長い時間を要すると考えられる。不活化に必要な時間は、限定されるものではないが、後記の例示的な例に記載したものを含めたいずれかの適当な方法を用いて調べることができる。
【0164】
加えて、エマルジョン開発ワクチンの安定性は、特に経時的にかつ保存条件下で評価して、ワクチンが長期間効果的であることを保証する。ワクチンの安定性および免疫原性を増強する他の安定化物質(例えばデンドライトポリマー)の能力も評価する。
【0165】
一旦与えられたナノエマルジョン/病原体ワクチンが製剤化されて病原体不活化がもたらされると、免疫応答を誘導し、免疫性を提供するワクチンの能力を最適化する。ワクチンの有効性を検定するための方法の非限定的例は後に実施例14に記載する。例えば、ワクチンのタイミングおよび投与は変更することができ、最も効果的な投与および投与スケジュールが決定される。免疫応答のレベルは、血清抗体レベルを測定することによって定量される。加えて、インビトロアッセイ法を用いて、H
3−チミジン取り込みを測定することによって増殖活性をモニターする。増殖に加え、(例えば、限定されるものではないが、IL−2、TNF−γ、IFN−γ、IL−4、IL−6、IL−11、IL−12等のレベルを含めた)Th1およびTh2サイトカイン応答を測定して、免疫応答を定性的に評価する。
【0166】
最後に、動物モデルを使用して、ナノエマルジョン粘膜ワクチンの効果を評価する。精製された病原体をエマルジョン中に混合し、(またはエマルジョンを予め感染させた動物と接触させ)、投与し、免疫応答を測定する。次いで、動物を特異的病原体で抗原投与し、引き続いて、病気兆候のレベルを評価することによって、保護のレベルを評価する。免疫性のレベルを経時的に測定して、ブースター免疫化の必要性および間隔を決定する。
【0167】
III.治療剤
本発明はワクチンとして使用するのに適したナノエマルジョン/病原体製剤を提供する。前記組成物は、ヒトおよび動物対象を含めた対象に、任意の効果的な薬学的に許容される形態で投与することができる。一般に、これは、本質的にパイロジェンならびにヒトまたは動物に有害であり得る他の不純物を含まない組成物を調製することを含む。
【0168】
薬学的に許容される形態の具体的な例は、限定されるものではないが、鼻腔、頬、直腸、膣、局所もしくは鼻腔スプレー、または所与の部位に本発明の活性なワクチン組成物を送達するのに効果的ないずれの他の形態も含む。好ましい態様において、投与経路は、(例えば、限定されるものではないが、鼻および胃領域の粘膜を含めた)粘膜免疫系と組成物の直接的接触が得られるように設計される。他の態様において、投与は正常位、皮内、皮下、筋肉内または腹腔内注射によることができる。また、組成物は対象に非経口または腹腔内投与することもできる。そのような組成物は、通常、薬学的に許容される組成物として投与されると考えられる。いずれかの慣用的薬学的に許容される媒体または剤が本発明のワクチンに適合しない限りを除き、これらの特別の態様における公知の薬学的に許容される媒体および剤の使用が考えられる。さらなる態様において、補助的有効成分も組成物に配合することができる。
【0169】
局所投与には、薬学的に許容される担体は液体、クリーム、フォーム、ローションまたはゲルの形態をとることができ、加えて、有機溶媒、乳化剤、ゲル化剤、モイスチャライザー、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、保存剤、時間放出剤、少量の保湿剤、隔離剤、染料、香料、および局所投与のために医薬組成物で通常使用される他の成分も含むことができる。
【0170】
組成物および組成物中のいずれかの増強剤の実際の量は、病原体を不活化し、免疫性を生じさせるのに効果的な治療部位におけるエマルジョンおよび増強剤の量を得るように変化させることができる。従って、選択された量は治療の性質および部位、所望の応答、殺生物作用の所望の持続および他の因子に依存すると考えられる。一般に、本発明のエマルジョン組成物は液体組成物1ml当たり少なくとも0.001%〜100%、好ましくは0.01〜90%のエマルジョンを含む。製剤は液体組成物1ml当たり約0.001%、約0.0025%、約0.005%、約0.0075%、約0.01%、約0.025%、約0.05%、約0.075%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1.0%、約2.5%、約5%、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%のエマルジョンを含むことができると考えられる。前記列挙したいずれかの二つの数字の間の範囲は、本発明の境界内に含まれると具体的に考えられる。投与量のいくつかの変形が、具体的病原体および免疫化すべき対象の条件に応じて必然的に起こると考えられる。
【0171】
投与に責任のある人とは、いずれにしても個々の対象についての適切な容量を決定する。さらに、ヒト投与では、調製物はFDA Office of Biologics基準によって必要とされるように、不妊症、パイロジェン原性、および一般的な安全性および純度基準に適合すべきである。
【実施例】
【0172】
以下の実施例は、本発明のある好ましい態様および局面を説明するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0173】
以下の実験開示において、以下の省略を適用する。eq(当量);μ(ミクロン);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);mM(ミリモル濃度);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメーター);nM(ナノモル濃度);℃(度摂氏);およびPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)。
【0174】
実施例1
エマルジョンを製剤化する方法
エマルジョンは以下の通り製造される。有機溶媒、油および界面活性剤を混和し、得られた混合物を37〜90℃にて一時間まで加熱することによって油相が作成される。エマルジョンは往復シリンジ器具またはシルバーソン(Silverson)高剪断ミキサーいずれかで形成される。水相を油相に添加し、1〜30分間、好ましくは5分間混合する。揮発性成分を含有するエマルジョンでは、揮発性成分を水相と共に添加する。
【0175】
一つの例において、エマルジョンは以下の通り形成された。リン酸トリブチル、大豆油および界面活性剤(例えば、トライトン X−100)を混和し、次いで、得られた混合物を86℃にて一時間加熱することによって油相を作成した。次いで、4部の水に対する1部の油相の容量/容量比率にて水を油相に注入することによってエマルジョンを製造した。エマルジョンは往復シリンジ器具、またはバッチもしくは連続流動器具を用いて手動で製造することができる。これらのエマルジョンを製造する方法は当業者によく知られており、例えば、(その全体を参照として本明細書に組み入れられる)米国特許第5,103,497号および第4,895,452号に記載されている。表4は、各成分の割合、pH、および循環水浴を備えたコールター(Coulter)LS 130レーザーサイジング装置で測定したエマルジョンのサイズを示す。
【0176】
(表4)
※このエマルジョンは、1:9の比率でX8Pエマルジョンを水で希釈することによって得られた。
【0177】
本発明で用いたエマルジョンはかなり安定である。事実、エマルジョンは前記したように製造し、密閉した異なるサイズのポリプロピレンチューブ、ビーカーまたはフラスコ中に室温で一晩放置した。次いで、エマルジョンを分離の兆候につきモニターした。分離の兆候を示さなかったエマルジョンを「安定」と考えた。次いで、安定なエマルジョンを一年間にわたってモニターし、安定性を維持することが判明した。
【0178】
エマルジョンを前記したように再度製造し、密閉した50mLのポリプロピレンチューブ中にて−20℃で一晩放置した。次いで、エマルジョンを分離の兆候につきモニターした。分離の兆候を示さなかったエマルジョンを「安定」と考えた。前記X8PおよびX8P0.1エマルジョンは、室温における少なくとも24ヶ月の保存後に実質的に不変であることが判明した。
【0179】
実施例2
脂質液滴中に形成された乳化リポソームとしての例示的細菌不活化エマルジョンの特徴付け
脂質含有水中油型エマルジョンをX8Pと混合することによってX8W
60PCと命名した細菌不活化エマルジョンを形成した。特に、一次脂質としてのモノオレイン酸グリセロール(GMO)および陽性電荷生成剤としての塩化セチルピリジニウム(CPC)を有する脂質含有水中油型エマルジョン(本明細書ではGMO/CPC脂質エマルジョンまたは「W
808P」という)およびX8Pを1:1(容量vs容量)比で混合した。(その全体を参照として本明細書に組み入れられる)米国特許第5,547,677号は、GMO/CPC脂質エマルジョン、およびX8Pと組み合わせて本発明のワクチンで使用される細菌不活化水中油型エマルジョンを提供することができる他の関連脂質エマルジョンを記載する。
【0180】
実施例3
インビトロ殺菌効果の研究I−グラム陽性菌
本発明のワクチンで使用されるエマルジョンの殺菌効果を研究するために、エマルジョンを種々の細菌と10分間混合し、次いで、種々の希釈にて標準微生物学的培地上で平板培養した。次いで、コロニーのカウントを未処理培養と比較して、処理によって死滅された細菌のパーセントを決定した。表5は実験の結果をまとめる。
【0181】
(表5)
【0182】
バチルス種の種々の栄養形態に対するエマルジョンの殺菌効果を研究するために、3つの希釈のエマルジョンを4つのバチルス種と10分間で混合し、次いで、微生物学的培地上で平板培養した。次いで、コロニーのカウントを未処理培養物と比較して、処理によって死滅された細菌のパーセントを決定した。表6は、括弧に入れた平均パーセンテージ死滅と共に、いくつかの実験からの殺菌結果のまとめを含む。
【0183】
(表6)
【0184】
実施例4
インビトロ殺菌効果の研究II−グラム陰性菌
グラム陰性菌の細胞壁による細菌不活化エマルジョンの取り込みを増加させ、それにより、抵抗性グラム陰性菌に対するエマルジョンの殺微生物効果を増強させるため、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)をエマルジョンと予め混合した。前記EDTAは低濃度(50〜25μM)で用い、前記混合物を種々のグラム陰性菌と共に15分間インキュベートした。次いで、前記混合物の殺微生物効果をトリプティカーゼ大豆ブロス上で測定した。結果を以下の表7に記載する。1/100希釈中のX8Pを用い、細菌カウントの99%を超える減少があった。カウントのこの減少は、250μMのEDTA単独が15分以内に細菌カウントを減少させることができなかった対照群から示されたように、EDTA単独の死滅効果によるものではなかった。
【0185】
(表7)
【0186】
実施例5
インビトロ殺菌効果の研究III−栄養および胞子形態
バチルス・セレウス(B. cereus ATCC#14579)を炭疽菌についてのモデル系として使用した。バチルス・セレウスの(活発に増殖しつつある)栄養形態に対する本発明の化合物の殺菌効果を研究するためのX8P希釈調製物での実験を行なった。37℃における10分間の培地中での処理を評価した。表8にまとめるように、X8Pエマルジョンはバチルス・セレウスの栄養形態に対して効果的である。この調製物での10分間の曝露は、1:100と高い希釈を含めた試験した全ての濃度においてバチルス・セレウスの栄養形態の実際に完全な死滅に効果的である。
【0187】
(表8)
実験数=4
【0188】
炭疽菌の胞子形態は、生物兵器として用いられるべき最も可能性の高い生物のうちの1つである。胞子はほとんどの消毒剤に対してかなり抵抗性であることが知られている。前記したように、胞子の効果的な死滅は、通常、ホルムアルデヒドまたは次亜塩素酸ナトリウム(すなわち、漂白)のような毒性かつ刺激性化学物質の使用を必要とする。従って、同実験をバチルス・セレウスの胞子形態で行なった。表9に示すように、37℃における10分間の双方の培地における処理はバチルス・セレウスの胞子を死滅させるのに充分ではなかった。
【0189】
(表9)
実験数=2
【0190】
バチルス・セレウスの胞子形態に対する本発明のワクチンで使用したナノエマルジョン化合物のある期間にわたる効果を評価するために、X8Pを1:100の希釈にて固体寒天培地に組み込み、胞子を表面に均一に広げ、37℃にて96時間インキュベートした。X8Pを組み込んだ固体寒天培地では増殖が96時間まで起こらなかった(すなわち、>99%死滅、平均>99%死滅、3実験)。
【0191】
X8Pによる胞子の死滅が起こる時点をより綿密に否定する試みにおいて、以下の実験を行なった。簡単に述べれば、胞子調製物を1:100の希釈にてX8Pで処理し、未処理対照と比較した。ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU/ml)を0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間および8時間後に定量した。未処理対照におけるCFU/mlは最初の4時間のインキュベーションにわたって増加し、次いで、プラトーに到達した。時刻0時間、1時間、2時間、4時間および6時間において調製し、胞子構造につき染色した細菌スミアにより、2時間まで、胞子構造は残らないことが明らかとなった(
図2A〜2C)。従って、2時間の時点までに、胞子の100%発芽が未処理対照で起こった。X8Pで処理した胞子調製物において、CFU/mlは最初の2時間にわたった増加を示さず、次いで、2〜4時間にわたって迅速に低下した。2〜4時間にわたるベースラインCFU/mlからの減少はほぼ1000倍であった。同時点で調製し、胞子構造につき染色した細菌スミアにより、胞子構造は8時間における実験の最後まで残ることが明らかとなった。よって、発芽プロセスの阻害、または胞子が損傷され、発芽できないゆえのいずれかにより、胞子の発芽はX8P処理培養では起こらなかった。バチルス・セレウスに加えて他のバチルス種を死滅させるにおいてエマルジョンが効果的であるか否かを判断するために、前記したのと同様な実験を行ない、ここに、胞子調製物をエマルジョンで処理し、4時間のインキュベーション後に未処理対照と比較した。以下の表10は、数字がいくつかの実験からの平均殺胞子活性を表す結果を示す。
【0192】
(表10)
【0193】
実施例6
インビボ殺菌効果の研究
動物研究を行なって、インビボでのエマルジョンの保護および治療効果を証明した。実験動物におけるバチルス・セレウス感染は、以前、炭疽の研究用のモデル系として用いられた(BurdonおよびWende,1960;Burdonら、1967;LamannaおよびJones,1963)。炭疽と同様ないくつかの点において、バチルス・セレウスで実験的に感染させた動物で誘導した病気兆候(Drobniewski,1993;Fritzら、1995)。マウスへの注射前に、エマルジョンをバチルス・セレウス胞子と混合した。
【0194】
皮膚創傷への灌注
1cmの皮膚創傷を2.5×10
7バチルス・セレウス胞子で感染させ、次いで、いずれのさらなる処理もなく閉じた。他の群を同一数の胞子で感染させた。1時間後、創傷を本発明のエマルジョンまたは生理食塩水のいずれかで灌注して、曝露後、脱汚染を刺激した。48時間までに、創傷を囲む大きな壊死領域があり、平均面積は4.86cm
2であった。加えて、この群における動物の60%は感染の結果として死亡した。これらの病巣の組織学は、皮膚および皮膚下ならびに多数の栄養型バチルス生物の全壊死を示した。生理食塩水での実験的に感染させた創傷の灌注の結果、いずれの明らかな利点もなかった。
【0195】
バチルス・セレウス胞子で感染させた創傷のエマルジョンでの灌注は実質的な利点を示し、4.86cm
2から0.06cm
2への病巣サイズの継続的な98%減少をもたらした。処理または生理食塩水灌注を受けなかった実験動物と比較すると、病巣サイズのこの減少は死亡率の3倍の低下が伴った(60%から20%)。これらの創傷の組織学が、栄養型バチルス生物の証拠は示さず、表皮の最小破壊を示した(Hamoudaら、1999)。
【0196】
皮下注射
CD−1マウスに対照としての生理食塩水中に1:10希釈したエマルジョンを注射し、肉眼または組織学的分析いずれかにおいて、苦痛または炎症反応の兆候を示さなかった。インビボでのバチルス・セレウス胞子の病原効果およびエマルジョンの殺胞子効果を試験するために、4×10
7バチルス・セレウス胞子の懸濁液を生理食塩水または1:10の最終希釈の本発明のエマルジョンと混合し、次いで、直ちに、CD−1マウスの背中に皮下注射をした。
【0197】
エマルジョンなくしてバチルス・セレウス胞子を皮下注射したマウスは6〜8時間においてひどい浮腫を発生した。これに続いて18〜24時間において注射部位を囲う灰色の壊死が出現し、48時間までに存在する皮膚がひどいかさぶたとなり、乾燥した赤色病巣が残った。
【0198】
胞子およびエマルジョンの同時注射の結果、胞子を本発明のエマルジョンと予め混合すると、1.68cm
2から0.02cm
2へと壊死病巣のサイズは98%を超えて減少した。これは最小浮腫または炎症と関連した(Hamoudaら、1999)。
【0199】
ウサギ角膜
ウサギの角膜を種々の濃度のエマルジョンで灌注し、24時間および48時間にモニターした。組成物を治療量で用いた場合、刺激または異常は観察されなかった。
【0200】
粘膜
鼻腔当たり4%のナノエマルジョンの25μLの注入によって、鼻腔内毒性をマウスにおいて行なった。これらのマウスにおいて臨床的または組織病理学的変化は観察されなかった。
【0201】
ラットにおける鼻腔毒性試験は、25%ナノエマルジョン1kg当たり8mLまで胃管処理することによって行なった。ラットは体重が減少しないか、または臨床的または組織病理学的に毒性の兆候を示さなかった。エマルジョンの鼻腔投与の結果として腸細菌フローラの変化は観察されなかった。
【0202】
特別な態様において、バチルス・セレウスを血液寒天(5%ヒツジ血液を含むTSA、REMEL)上で三回継代した。バチルス・セレウスを第3継代プレートから掻き取り、(BBLから入手可能な)トリプティカーゼ大豆ブロス(TSB)に再懸濁した。バチルス・セレウス懸濁液を2つの試験管に分けた。等容量の滅菌生理食塩水を1つの試験管に加え、バチルス・セレウス懸濁液/生理食塩水の混合した0.1mlを5匹のCD−1マウスに皮下注射した。等容量の(滅菌生理食塩水中に1:5希釈した)X8Pを1つの試験管に添加し、混合し、1:10のX8Pの最終希釈を得た。バチルス・セレウス懸濁液/X8Pの混合された0.1mlを5匹のCD−1マウスに皮下注射しつつ、バチルス・セレウス懸濁液/X8Pを37℃にて10分間インキュベートした。等容量の(滅菌生理食塩水中に1:5希釈した)X8PおよびTSBを混合し、1:10のX8Pの最終希釈を得た。X8P/TSBの0.1mlを5匹のCD−1マウスに皮下注射した。
【0203】
接種物中のバチルス・セレウスのコロニー形成単位(cfu)の数は以下の通りに定量した。バチルス・セレウスの10倍段階希釈およびバチルス・セレウス/X8P懸濁液を蒸留水で作成した。TSAの二枚のプレートを各希釈(プレート当たり10μl)から接種した。TSAプレートを37℃にて一晩インキュベートした。コロニーをカウントし、cfu/mlの数を計算した。X8Pで予め処理したバチルス・セレウスで接種したマウスにおいて、壊死病巣はより小さく見えた。以下の表11は実験の結果を示す。
【0204】
(表11)
【0205】
胞子形成の誘導用の0.1%酵母エキス(Difco)および50μg/mlのMnSO
4を含む栄養寒天(Difco)上でバチルス・セレウスを増殖させた。プレートを掻き取り、滅菌50%エタノールに懸濁させ、攪拌しつつ室温で2時間インキュベートして、残りの栄養型細菌を溶解させた。懸濁液を2,500×gにて20分間遠心分離し、上澄みを捨てた。ペレットをdiH
2Oに再懸濁し、2,500×gで20分間遠心分離し、上澄みを捨てた。胞子懸濁液を分けた。ペレットをTSBに再懸濁させた。生理食塩水で1:2希釈した0.1mlのビー・セレウス胞子懸濁液を3匹のCD−1マウスに皮下注射した。等容量の(滅菌生理食塩水中に1:5希釈した)X8Pおよびバチルス・セレウス胞子懸濁液を混合し、1:10のX8Pの最終希釈を得た(プレインキュベーション時間)。0.1mlのX8P/バチルス・セレウス胞子懸濁液を3匹のCD−1マウスに皮下注射した。接種物中のバチルス・セレウスのコロニー形成単位(cfu)の数を以下の通りに定量した。バチルス・セレウスの10倍段階希釈およびバチルス・セレウス/H8P懸濁液を蒸留水中で作成した。TSAの二枚のプレートを各希釈から接種した(プレート当たり10μl)。前記TSAプレートを37℃にて一晩インキュベートした。コロニーのカウントをなし、cfu/mlの数を計算した。X8Pで予め処理したバチルス・セレウス胞子を接種したマウスでは、壊死病巣はより小さく見えた。これらの実験からの観察を表12に示す。
【0206】
(表12)
【0207】
胞子形成の誘導用の0.1%酵母エキス(Difco)および50g/ml MnSO
4を含む栄養寒天(Difco)上でバチルス・セレウスを増殖させた。プレートを掻き取り、滅菌50%エタノールに懸濁し、攪拌しつつ室温にて2時間インキュベートして、残りの栄養型細菌を溶解させた。懸濁液を2,500×gにて20分間遠心分離し、上澄みを捨てた。ペレットを蒸留水に再懸濁し、2,500×gにて20分間遠心分離し、上澄みを捨てた。ペレットをTSBに再懸濁させた。バチルス・セレウス胞子懸濁液を3つの試験管に分けた。等容量の滅菌生理食塩水を1つの試験管に加え、混合した。0.1mlのバチルス・セレウス懸濁液/生理食塩水を10匹のCD−1マウスに皮下注射した。等容量の(滅菌生理食塩水中に1:5希釈した)X8Pを第2の試験管に加え、混合し、1:10のX8Pの最終希釈を得た。バチルス・セレウス胞子懸濁液/X8P(1:10)を混合しつつ37℃にて4時間インキュベートした。0.1mlのバチルス・セレウス胞子懸濁液/X8P(1:10)を10匹のCD−1マウスに皮下注射した。等容量の(滅菌生理食塩水中に1:50希釈した)X8Pを第3の試験管に加え、混合し、1:100のX8Pの最終希釈を得た。バチルス・セレウス胞子懸濁液/X8P(1:100)を混合しつつ37℃にて4時間インキュベートした。0.1mlのバチルス・セレウス胞子懸濁液/X8P(1:100)を10匹のCD−1マウスに皮下注射した。等容量の(滅菌生理食塩水中に1:5希釈した)X8PおよびTSBを混合し、1:10のX8Pの最終希釈を得た。0.1mlのX8PFTSBを10匹のCD−1マウスに皮下注射した。等容量の(滅菌生理食塩水中に1:50希釈した)X8PおよびTSBを混合し、1:100のX8Pの最終希釈を得た。0.1mlのX8P/TSBを10匹のCD−1マウスに皮下注射した。これらの研究からの観察を表13および表14に示す。
【0208】
(表13)
注:浮腫を伴う灰色の皮膚病巣、浮腫、壊死領域赤色/乾燥
【0209】
(表14)
【0210】
バチルス・セレウスの再単離を皮膚病巣、血液、肝臓および脾臓から試みた(表15)。皮膚病巣をベタジン、続いて70%滅菌イソプロピルアルコールで洗浄した。病巣の縁部で切り出しを行い、綿棒で拭った。胸をベタジン、続いて70%滅菌イソプロピルアルコールで洗浄した。血液を心臓穿刺で吸った。腹部をベタジン、続いて70%滅菌イソプロピルアルコールで洗浄した。皮膚および腹部筋肉を別々の滅菌器具で開いた。別々の滅菌器具を用いて肝臓および脾臓の試料を摘出した。肝臓および脾臓試料を火炎に軽く通し、滅菌器具を用いて切断した。新たに曝露した表面を培養のために用いた。BHI寒天(Difco)を接種し、37℃にて好気的に一晩インキュベートした。
【0211】
(表15)
※これらのマウスにおいて病巣は存在しなかったが、注射部位から生物が摘出された。
【0212】
栄養型バチルス・セレウスおよびバチルス・セレウス胞子の予備処理は、実験動物に導入した場合に病気兆候を引き起こすそれらの能力を減じる。これは、皮膚病巣のより小さなサイズおよび前記病巣から取り出したバチルス・セレウスの一般的により少ない数に反映される。加えて、血液、肝臓および脾臓からのバチルス・セレウスの頻度の低い再単離が起こり、これは、敗血症が予防可能であることを示唆する。
【0213】
実施例7
インビボ毒性実験I
CD−1マウスに0.1mlのナノエマルジョンを皮下注射し、炎症および/または壊死の兆候につき4日間観察した。化合物の希釈は滅菌生理食塩水中で行なった。マウスからの組織試料は組織病理学検査のために10%中性緩衝化ホルマリン中に保存した。組織学的再検査のために送付された(未希釈化合物を注射したマウスからの)皮膚および筋肉からの試料は、組織壊死の兆候を示すと報告された。希釈化合物を注射したマウスからの組織試料は組織学的には調べなかった。表16および17は2つの個々の実験の結果を示す。
【0214】
(表16)
【0215】
(表17)
【0216】
モルモットに部位当たり本発明の化合物の1.0mlを(後脚双方に)筋肉内注射し、炎症および/または壊死の兆候につき4日間観察した。化合物の希釈は滅菌生理食塩水中で行なった。
【0217】
モルモットからの組織試料を組織学的検査のために10%中性緩衝化ホルマリン中に保存した。組織試料は組織学的には調べなかった。
【0218】
(表18)
【0219】
インビボ毒性実験Iの結果は、試験した化合物の皮下および筋肉内注射の結果、肉眼で観察できる組織損傷は起こらず、実験動物では苦痛を引き起こすように見えなかったことを示す(表18)。
【0220】
実施例8
インビボ毒性実験II
各々5匹のオスおよび5匹のメスよりなるSD(Sprague−Dawley)ラットの1つの群を個々のケージに入れ、投与前に5日間前馴化させた。ラットに14日間毎日投与した。0〜13日には、14日間続けて、グループ1における各ラットは、各々、3ミリリットルのX8P、1:100濃縮の胃管処理を受けた。3ミリリットルの容量は、ラットについての最大許容鼻腔容量であると判断された。投与に先立ち、0日および7日に、各々のラットの体重を測った。その後、ラットは研究の継続中に毎週体重を測った。動物は病気または死亡率につき毎日観察した。動物を14日間休息させた。28日に、ラットの体重を測り、安楽死させた。鼻腔毒性実験の平均体重結果を表19に示す。0日、7日、および14日、21日および28日におけるオスおよびメスについての平均体重ならびに0日〜28日の平均体重増加も表18に示す。1匹のラットが、14日の投与の間に胃管挿入の操作から機械的外傷のため死亡した。全ての生存するラットは28日にわたる研究の間体重を増加し、病気の報告はなかった。従って、リン酸トリブチル単独は毒性であって粘膜に刺激性であることが知られているが、本発明のワクチンで使用するエマルジョンに配合すると、これらの特徴は明らかではない。X8Pエマルジョン、1:100濃縮を、米国連邦規則集16(16CFR)§1500.3に規定されたプロトコルに従ってウサギにおける皮膚毒性についても試験した。エマルジョンは試験した動物において皮膚に対して刺激性でなかった。
【0221】
(表19)
【0222】
実施例9
炭疽菌でのインビトロ実験
炭疽菌の胞子形態に対する本発明の化合物の殺菌効果を研究するためのX8W
60PC調製物での実験を行なった。炭疽菌の6つの異なる系統に対するX
8W
60PC(水中)の異なる希釈の殺胞子活性を試験した。X
8W
60PCは4時間以内に炭疽の7つの異なる系統(デルリオ(Del Rio)、テキサス(Tx);バイソン(Bison)、カナダ(Canada):サウスアフリカ(South Africa)2系統);モザンビーク(Mozambique);サススダコタ(S.Dakopa);およびエイムス(Ames)、ウサムリッド(USAMRID))の98%を超えて死滅させ、1〜10%漂白として効果的である。同様な殺胞子活性が培地中のX
8W
60PCの異なる希釈で見出される(1:10、1:100、1:1000および1:5000)。X
8W
60PCは30分と短い時間で炭疽胞子を死滅させることができる。
【0223】
実施例10
作用機序
以下の実施例は、いくつかのナノエマルジョンの提案された作用機序に対する洞察を提供する。また、本実施例は、本発明のワクチンで使用されるいくつかのナノエマルジョンの殺胞子活性を示す。この機序は本発明の範囲を限定することを意図しない。機序の理解は本発明を実施するのに必要でなく、本発明はいずれかの特定の機序に限定されない。大腸菌に対するGMO/CPC脂質エマルジョン(「W
808P」)およびX8Pの効果を調べた。W
808Pは(脱イオン水中で)大腸菌を死滅させたが、X8Pはこの生物に対して効果的でなかった。X8P処理大腸菌は正常に見え、規定された構造および無傷脂質膜を備えている。W
808P処理大腸菌は内部に空砲を有し、生物の規定された構造が失われるように内容物が膨潤している。特定の理論に拘束されないが(機序の理解は本発明を実施するのに必要ではなく、本発明はいずれかの特定の機序に限定されない)、この観察は、W
808Pはそれらを溶解することなく細菌を死滅させ、その代わり、内部構造の変化を引き起こすことを示唆し、空胞化および膨潤によって明らかである。第2の研究はコレラ菌で行なった。コレラ菌は大腸菌に密接に関連するにもかかわらず、X8P、W
808PおよびX8W
60PCは全てこの生物を死滅させた。対照と比較し、W
808P処理コレラ菌は、再度、生物の内部の膨潤および変化を示すが、細胞は無傷のままである。対照的に、X8P処理コレラ菌は残りの細胞片のみで完全に溶解される。X8W
60PCは効果の組合せを示し、ここに、生物のいくつかは膨潤するが、無傷であり、あるものは溶解する。これは、明らかに、X8P、W
808PおよびX8W
60PCが異なる機序によって働くことを示唆する。
【0224】
第3の比較実験を行なって、種々の濃度におけるエマルジョンの効率を評価した。表20に示すように、X8W
60PCは、W
808PまたはX8Pいずれかに対して感受性の細菌においてより低い濃度(より高い希釈)で殺生物剤としてより効果的である。加えて、W
808PおよびX8Pに対して抵抗性の6つの他の細菌は全てX8W
60PCに対して罹患性である。この活性の差は、インフルエンザ感染性アッセイ法においてW
808PおよびX8PおよびX8W
60PCを比較する場合にも観察される。X8PおよびX8W
60PC双方は1:10および1:100希釈において効果的であり、加えて、X8W
60PCは最低濃度、1:1,000希釈において効果的である。対照的に、W
808Pは1:10希釈においてさえほとんど活性を有さず、それはこのエンベロープ生物に対する効果的な処理ではないことを示唆する。加えて、X8W
60PCは、W
808PまたはX8Pのいずれかによって殺されない酵母種を死滅させる。
【0225】
(表20)選択された微生物の90%を超えて死滅させるのに必要な最低ナノエマルジョン濃度
※低濃度のデータ入手できず
#脱イオン水中を除き死滅なし
10 ND=測定せず
【0226】
実施例11
バチルス種に対するナノエマルジョンの殺胞子活性のさらなる証拠
本実施例は、異なるバチルス胞を不活化するナノエマルジョンの能力のさらなる検査の結果を提供する。これらの実験の方法および結果を下に概略を示す。
【0227】
界面活性剤脂質調製物:
油相が大豆油、リン酸トリ−n−ブチル、および80%水中のトライトン X−100から作成されたX8P、油中水型ナノエマルジョン。X8W
60PCは、グリセロールモノステアリン酸、精製大豆ステロール、ツィーン 60、大豆油、カチオンハロゲン含有CPCおよびペパーミント油から作成されたリポソーム様化合物であるW
808Pと等しい容量のX8Pを混合することによって調製した。
【0228】
胞子調製物:
胞子形成の誘導のために、バチルス・セレウス(ATTC 14579)、バチルス・シルクランス(ATCC 4513)、巨大菌(ATCC 14581)、および枯草菌(ATCC 11774)をNAYEMn寒天(0.1%酵母エキスおよび5mg/l MnSO
4を含む栄養寒天)上で37℃にて一週間増殖させた。プレートを掻き取り、細菌/胞子を滅菌50%エタノールに懸濁させ、攪拌しつつ室温(27℃)にて2時間インキュベートして、残りの栄養型細菌を溶解させた。懸濁液を2,500×gにて20分間遠心分離し、ペレットを冷diH
2O中で2回洗浄した。胞子ペレットをトリプティカーゼ大豆ブロス(TSB)に再懸濁させ、直ちに、実験で用いた。炭疽菌胞子、エイムスおよびボラム(Vollum) 1B系統はBruce Ivins博士(USAMRIID,Fort Detrick,Frederick,MD)の好意により提供され、以前に記載されているように調製した(Ivinsら、Vaccine 13:1779[1995])。炭疽の4つの他の系統はMartin Hugh−Jones博士(LSU,Baton Rouge,LA)の好意により提供された。これらの系統は、サウスアフリカ;モザンビーク;バイソン、カナダ;およびデルリオ、テキサスからの高い対立遺伝子非類似性を持つ単離体を表す。
【0229】
インビトロ殺胞子アッセイ法:
固体培地の殺胞子活性の評価のために、トリプティカーゼ大豆寒天(TSA)をオートクレーブ処理し、55℃まで冷却した。X8Pを1:100最終希釈にてTSAに加え、プレートを注ぐ間に連続的に攪拌した。胞子調製物を段階的に希釈し(10倍)、10μlのアリコットを二通りで平板培養した(最高接種はプレート当たり10
5胞子であった)。プレートを37℃にて好気的に48時間インキュベートし、増殖につき評価した。
【0230】
液体培地中での殺胞子活性の評価のため、胞子をTSBに再懸濁させた。2×10
6胞子(最終濃度10
6胞子/ml)を含有する1ml胞子懸濁液を、試験管中で、1mlのX8PまたはX8W
60PC(diH
2O中2×最終濃度)と混合した。試験管を37℃の試験管ローテータ中で4時間インキュベートした。処理の後、懸濁液をdiH
2O中で10倍希釈した。各希釈からの二つのアリコット(25μl)をTSA上に画線培養し、37℃にて一晩インキュベートし、次いで、コロニーをカウントした。パーセンテージ死滅として表した殺胞子活性を計算した。
【0231】
実験は少なくとも3回反復し、パーセンテージ死滅の平均を計算した。
【0232】
電子顕微鏡観察:
37℃振とう培養機中のエルレンマイヤーフラスコを用い、バチルス・セレウス胞子をTSB中1:100最終希釈のX8Pで処理した。50ml試料を間隔をおいて採取し、2,500×gにて20分間遠心分離し、上澄みを捨てた。ペレットを0.1Mカコジレート(pH7.3)中の4%グルタルアルデヒドで固定した。胞子ペレットを透過型電子顕微鏡のために処理し、酢酸ウラニルおよび酢酸鉛での染色の後に薄い切片を調べた。
【0233】
発芽阻害剤/刺激剤:
(最終濃度10
6胞子/mlの)バチルス・セレウス胞子を、発芽阻害剤D−アラニン(最終濃度1μm)または発芽刺激剤L−アラニン+イノシン(各々、最終濃度50μM)(TitballおよびManchee,J.Appl Bacteriol.62:269[1987];Shibataら、Jpn J.Microbiol.20:529[1976])いずれかを含むTSBに懸濁させ、次いで、直ちに(1:100の最終希釈にて)X8Pと混合し、種々の間隔でインキュベートした。次いで、混合物を段階的に希釈し、平板培養し、一晩インキュベートした。翌日、プレートをカウントし、パーセンテージ殺胞子活性を計算した。
【0234】
インビボ殺胞子活性:
2つの動物モデルを開発した。最初のものにおいて、(滅菌生理食塩水に懸濁させた)ビー・セレウス胞子を1:10の最終希釈にて等容量のX8Pと混合した。対照として、同一ビー・セレウス胞子懸濁液を等容量の滅菌生理食塩水と混合した。次いで、4×10
7胞子を含有する100μlの懸濁液を直ちにCD−1マウスに皮下注射した。
【0235】
第2のモデルにおいて、マウスの背中の皮膚中に切開を作成することによって、シミュレートした創傷を作成した。平滑切開によって皮膚を下の筋肉から分離した。「ポケット」を(生理食塩水中の)2.5×10
7胞子を含有する200μlで接種し、創傷クリップを用いて閉じた。1時間後、クリップを取り外し、創傷を2mlの滅菌生理食塩水または2mlのX8P(滅菌生理食塩水中1:10)いずれかで灌注した。次いで、創傷クリップを用いて創傷を閉じた。動物を臨床的兆候につき観察した。動物を5日後に安楽死させた時に、肉眼観察および組織病理学的観察を行なった。以下の式によって創傷サイズを計算した。
(式中、aおよびbは創傷の2つの垂直方向直径である)
【0236】
インビトロ殺胞子活性:
X8Pの殺胞子活性を評価するために、バチルス属の4つの種、バチルス・セレウス、バチルス・シルクランス、巨大菌および枯草菌からの胞子を試験した。1:100希釈におけるX8Pは、4時間で、バチルス・セレウスおよび巨大菌に対して91%を超える殺胞子活性を示した。バチルス・シルクランスはX8Pに対して感受性は低く、胞子カウントの80%減少を示し、他方、枯草菌は4時間でX8Pに対して抵抗性のように見えた。バチルス・セレウス胞子に対する(1:10および1:100の希釈における)X8Pの殺胞子効果の比較を、漂白剤の1:100希釈(すなわち、0.0525%次亜塩素酸ナトリウム)で行い、殺胞子効果の率または程度いずれかにおいて有意な差は明らかでなかった。他のナノエマルジョンX8W
60PCはバチルス胞子を死滅させるのにより効果的であった。1:1000希釈においては、それは(X8Pの1:1000希釈での47%と比較して)4時間以内のバチルス・セレウス胞子の98%死滅を示した。1:1000希釈におけるX8W
60PCの結果、X8Pに対するその抵抗性とは対照的に、4時間以内の枯草菌胞子の97.6%死滅をもたらした。
【0237】
バチルス・セレウス殺胞子経時的観察:
バチルス・セレウス殺胞子経時的観察を行なって、8時間にわたるバチルス・セレウスに対する1:100希釈X8Pおよび1:1000希釈X8W
60PCの殺胞子活性を分析した。バチルス・セレウス胞子と一緒にした1:100希釈X8Pのインキュベーションの結果、1時間以内に生きた胞子の数が77%減少し、4時間後に95%減少した。再度、1:1000希釈X8W
60PCは1:100希釈X8Pよりも効果的であり、30分後にはカウントが約95%減少した。
【0238】
X8Pの炭疽菌殺胞子活性:
初期インビトロ実験に続き、X8P殺胞子活性を炭疽菌の2つのビルレント系統(エイムスおよびボラム 1B)に対して試験した。増殖培地に配合された1:100最終希釈のX8Pは1×10
5炭疽菌胞子の増殖を完全に阻害することが判明した。また、エイムスまたはボラム 1B胞子いずれかと一緒にした1:1000までの希釈のX8Pでの4時間のインキュベーションの結果、混合物を室温でインキュベートした場合には91%を超える殺胞子活性となり、混合物を37℃でインキュベートした場合には96%を超える殺胞子活性となった(表21)。
【0239】
表21:コロニー減少アッセイ法によって決定された炭疽菌胞子の2つの異なる系統に対するX8Pの殺胞子活性(%死滅)
1:1000までの希釈のX8Pは、27または37℃(胞子発芽の程度が顕著に異なる条件)いずれかにおいて、4時間以内に双方の胞子系統の>91%を効果的に死滅させた。殺胞子活性は1×10
6/mlまでの胞子濃度において合致した。
【0240】
(表21)
【0241】
X8W
60PCの炭疽菌殺胞子活性:
X8W
60PCはより高い希釈にてX8Pよりもバチルス胞子のより多くの種に対して効果的であるので、それを室温にて1:10,000までの希釈にて炭疽菌の4つの異なる系統に対して試験して、発芽を妨げた。X8W
60PCは1:1000希釈において86%および99.9%の間の最大死滅を示した(表22)。
【0242】
表22:異なる臨床的単離体を代表する炭疽菌の4つの異なる系統に対するX8W
60PC殺胞子活性
胞子を室温において異なる希釈にてX8W
60PCで処理して、発芽を妨げた。低い希釈では有意な死滅はなかった。最大殺胞子効果は1:1000希釈で観察された。
【0243】
(表22)
【0244】
胞子の電子顕微鏡検査:
バチルス・セレウスは炭疽菌に最も密接に関連するので、それを用いて検査を行なった。TSB中に1:100希釈したX8Pで処理したバチルス・セレウス胞子の4時間の透過型電子顕微鏡検査により、中心の歪みおよび密度の喪失を伴う胞子外皮および皮質の広範な破壊を含めたバチルス・セレウス胞子に対する物理的損傷が明らかとなった。
【0245】
発芽の刺激および阻害:
バチルス胞子に対するX8Pの殺胞子効果に与える発芽の阻害の効果を調査するために、発芽阻害剤D−アラニン(TitballおよびManchee,1987,前記)、および発芽刺激剤L−アラニンおよびイノシン(Shibataら、1976,前記)を胞子およびX8Pと共に1時間インキュベートした。X8Pの殺胞子効果は10mMのD−アラニンの存在下では遅延し、50μMのL−アラニンおよび50μMのイノシンの存在下では加速された。
【0246】
インビボ殺胞子活性:
実験動物におけるバチルス・セレウス感染は、以前、炭疽の実験用のモデル系として用いられており、実験的炭疽感染と類似の病気を引き起こす(Welkosら、Infect Immun.51:795[1986];Drobniewski,Clin Microbiol Rev.6:324[1993];Burdonら、J Infect Dis.117:307[1967];Fritzら、Lab Invest.73:691[1995];WelkosおよびFriedlander,Microb Pathog 5:127[1988])。皮膚バチルス・セレウス病の2つの動物モデルを開発して、X8Pのインビボ効果を評価した。これらのモデルはナノエマルジョンの皮下投与を含むので、X8Pのインビボ毒性試験をこの適用に先立って行なった。対照としての生理食塩水中に1:10希釈したX8Pを注射したCD−1マウスは、肉眼または組織学的観察において苦痛または炎症反応の兆候を呈しなかった。インビボでのバチルス・セレウス胞子の病原効果およびX8Pの殺胞子効果を試験するために、4×10
7バチルス・セレウス胞子の懸濁液を生理食塩水または1:10の最終希釈のX8Pと混合し、次いで、CD−1マウスの背中に直ちに皮下注射した。X8Pなくしてバチルス・セレウス胞子を皮下注射したマウスは6〜8時間において重篤な浮腫を生じた。これに続き、18〜24時間において注射部位を囲う灰色の壊死領域が現れ、48時間までには存在する皮膚はひどいかさぶたとなり、乾燥した赤色病巣が残った。胞子およびX8Pの同時注入の結果、胞子をX8Pと予め混合すると、1.68cm
2から0.02cm
2への壊死病巣のサイズの98%を超える減少があった。これは最小浮腫または炎症に関連した。
【0247】
さらなる実験において、1cmの皮膚創傷を2.5×10
7バチルス・セレウス胞子で感染させ、次いで、いずれのさらなる処理もなくして閉じた。他の群を同一数の胞子で感染させ、次いで、1時間後に、創傷をX8Pまたは生理食塩水で灌注して、曝露後脱汚染を刺激した。生理食塩水での実験的に感染させた創傷の灌注の結果、いずれの明らかな利点ももたらされなかった。バチルス・セレウス胞子で感染させた創傷のX8P灌注は実質的利点を示し、4.86cm
2から0.06cm
2への病巣サイズの合致した98%減少がもたらされた。処理または生理食塩水灌注いずれも受けなかった実験動物と比較すると、病巣サイズのこの減少には死亡率の4倍低下が伴っていた(80%から20%)。
【0248】
実施例12
インビトロでのインフルエンザA型ウイルス感染性に対する界面活性剤脂質調製物(SLPS)の効果
以下の実施例は、インフルエンザA型ウイルス感染性に対するエマルジョンの効果を記載する。エンベロープウイルスは病原体として非常に関心がある。それは迅速に広がり、長期間宿主で生存できる。インフルエンザA型ウイルスはそれが抗ウイルス剤を試験するためのよく受け入れられたモデルであるので選択した(KaraivanovaおよびSpiro,Biochem J.329(Pt3):511[1998];Mammenら、J.Med Chem 38:4179[1995])。インフルエンザは、高度に伝染性であって、重篤な流行性病気の原因である臨床的に重要な呼吸器系病原体である。
【0249】
エンベロープ糖タンパク質であるヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)はインフルエンザサブタイプの抗原特異性を決定するのみならず、それらは容易に突然変異し、その結果、ウイルスが宿主防御系を侵すようにしかねない。この結果、密接な近縁系統に対して免疫性である個体における病気の開始をもたらす可能性がある。以下に、インフルエンザA型感染性を防ぐ際のSLPの効果を測定するのに用いる方法および組成物を記載する。
【0250】
界面活性剤脂質調製物(SLA):
SLPを2工程手法で作成した。油相は、大豆油を表1に列挙した試薬と混和し、86℃にて1時間加熱することによって調製した(Florence,1993)。次いで、水または水中の1%ビスマス(SS)を、往復シリンジポンプを用いて一定容量/容量比率にて油相に注入することによってSLPを形成した。
【0251】
ウイルス:
インフルエンザウイルスA/AA/6/60はHunein F.Maassab博士(School of Public Health,University of Michigan)によってご好意により提供された。インフルエンザA型ウイルスは、標準的な方法(BarrettおよびInglis,1985)を用い、受精した病原体不含めんどり卵(SPAFAS,Norwich,CT)の尿膜腔中で増殖させた。ウイルスストックを−80℃にて感染性尿膜流体のアリコット(10
8pfu/ml)中で維持した。アデノウイルスベクター(AD.RSV ntlacZ)はVector Core Facility(University of Michigan Medical Center,Ann Arbor,MI)によって提供され、アリコット中で維持した(−80℃にて10
12pfu/ml)。前記ベクターは、E1AおよびE1Bにわたるヌクレオチド配列およびE3領域の一部を欠失したヒトアデノウイルス(セロタイプ5)ゲノム骨格に基づくものである。これは、非許容性細胞を複製または形質転換させるウイルスの能力を与える。それは、ラウス肉腫ウイルスロング末端リピート(RSV−LTR)からのプロモーターの制御下にあるβ−ガラクトシダーゼをコードする大腸菌LacZ遺伝子を運ぶ。また、前記ベクターはタンパク質発現の検出を容易とするためにLacZ遺伝子の5’末端に連結された核標的化(ntと命名)エピトープを含む(Baragiら、1995)。
【0252】
細胞:
Madin Darby Canine Kidney(MDCK)細胞はAmerican Type Culture Collection(ATCC;Rockville,MD)から購入し、273細胞(CRL 1573;形質転換された初代胚ヒト腎臓)はVector Core Facility(University of Michigan Medical Center,Ann Arbor、MI)から入手した。前記293細胞はアデノウイルス5の形質転換性遺伝子を発現し、従って、宿主細胞において複製するAd.RSV ntlacZベクターの能力を回復する。
【0253】
細胞維持培地:
MDCK細胞は10%胎児ウシ血清(FBS;Hyclone Laboratories,Logan,UT)を含有するアール(Earle)塩、2mMのL−グルタミンおよび1.5g/lの炭酸水素ナトリウム(Mediatech,Lnc.,Hemdon,VA)を含むイーグルの最小必須培地中で維持した。前記培地には0.1mMの非必須アミノ酸、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、100Uペニシリン/mlおよびストレプトマイシン100μg/mlを補足してあった(Life Technologies,Gaithersburg,MD)。293細胞を、2mMのL−グルタミン、0.1mMの非必須アミノ酸、および1.0mMのピルビン酸ナトリウムを含有するダルベッコ改変イーグル培地(Mediatech,Inc.,Herndon,VA)中に維持した。また、それは100Uペニシリン/mlおよびストレプトマイシン100μg/mlを含有し(Life Technologies,Gaithersburg,MD)を含有し、10%FBSを補足してあった(Hyclone Laboratories,Logan,UT)。
【0254】
ウイルス感染培地:
インフルエンザA型感染培地は3.0μg/mlのトリルスルホニルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理トリプシン(Worthington Biochemical Corporation,Lakewood,NJ)を補足したMDCK細胞維持培地であった(FBSを含まず)。アデノウイルス感染培地は血清の濃度を減少させた(2%FBS)293T細胞維持培地であった。
【0255】
インフルエンザA型重層培地:
重層培地は等量の2×感染培地および1.6%シーケム(SEAKEM)MEアガロースよりなるものであった(FMC Bio Products,Rockland,MD)。染色アガロース重層培地は、TPCK処理トリプシンを含まない、アガロース重層培地+0.01%ニュートラルレッド溶液(Life Technologies,Gaithersburg,MD)よりなるものであった。
【0256】
プラーク減少アッセイ法(PRA):
プラーク減少アッセイ法はその他の所で記載された方法(Haydenら、1980)を改変して行なった。MDCK細胞を12ウェルファルコン(FALCON)プレート中1×10
5細胞/ウェルにて接種し、37℃/5%CO
2にて3日間インキュベートした。ほぼ1×10
8pfuのインフルエンザA型ウイルスを後記するように界面活性剤脂質調製物と共にインキュベートした。インフルエンザA型ウイルス−SLP処理物および対照を感染培地中に希釈して、30〜100pfu/250μlを含むようにした。密集細胞単層を3つのプレート上で三連で接種し、37℃/5%CO
2にて1時間インキュベートした。接種物/培地を吸引し、1mlのアガロース重層培地/ウェルを加え、プラークが出現するまでプレートを37℃/5%CO
2でインキュベートした。単層をアガロース重層培地で染色し、インキュベーションを37℃/5%CO
2で継続した。プラークを染色から6〜12時間後にカウントした。脂質調製物濃度と共に9ウェルからの平均プラークカウントを未処理ウイルスウェルの平均プラークカウントと比較した。
【0257】
インサイチュー細胞酵素結合免疫吸着検定法(ELISA):
インフルエザAウイルスで感染したMDCK細胞におけるウイルスタンパク質を検出し、定量するために、前記インサイチュー細胞ELISAを最適化した。簡単に述べれば、100μlの完全培地中の2×10
4MDCK細胞を平底96ウェルマイクロタイタープレートに加え、1晩インキュベートした。翌日、培地を取り出し、細胞を無血清維持培地で洗浄した。100μlのウイルス接種物をウェルに加え、1時間インキュベートした。ウイルス接種物を除去し、100μlのMDCK細胞維持培地+2%FBSで置き換えた。感染したMDCK細胞をさらに24時間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで1回洗浄し、氷冷エタノール:アセトン混合物(1:1)で固定し、−20℃で保存した。アッセイの日に、固定した細胞のウェルをPBSで洗浄し、37℃にてPBS中の1%乾燥ミルクで30分間ブロックした。(Hunein F.Maassab博士(Scool of Public Health,University of Michigan)の好意によって提供された)100μlの1:1000希釈のフェレット抗インフルエンザA型ウイルスポリクローナル抗体を37℃にて1時間でウェルに添加した。細胞を洗浄乾燥液(PBSおよび0.05%ツィーン−20)で4回洗浄し、37℃にて、100μlの1:1000希釈のヤギ抗フェレットペルオキシダーゼ標識抗体(Kirkegaard & Perry Laboratories Gaithersburg,MA)と共に30分間インキュベートした。細胞を4回洗浄し、発色するまで100μlの1工程ターボTMB-ELISA(1−STEP TURBO TMB−ELISA)基質(Pierce,Rockford,IL)と共にインキュベートした。反応を1N硫酸で停止させ、ELISAマクロタイターリーダーにて450nmの波長でプレートを読んだ。
【0258】
β−ガラクトシダーゼアッセイ法:
β−ガラクトシダーゼアッセイ法はその他の所で記載されているように(Lim,1989)細胞抽出物で行なった。簡単に述べれば、ほぼ4×10
4細胞/ウェルにて、293細胞を96ウェルの「U」底組織培養プレート上に接種し、37℃/5%CO
2にて維持培地中で1晩インキュベートした。翌日、培地を除去し、細胞を100μlのダルベッコウのリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS)で洗浄した。アデノウイルスストックを感染培地中で5×10
7pfu/mlの濃度まで希釈し、後記するように異なる濃度のX8Pと混合した。X8Pでの処理の後、ウイルスを1×10
4pfu/mlの濃度まで感染培地で希釈し、293細胞に重ねた。細胞を37℃/5%CO
2にて5日間インキュベートし、その後、プレートを遠心分離し、培地を取り出し、細胞をCa++およびMg++を含まないPBSで3回洗浄した。3回目の洗浄の後、PBSを吸引し、100μlの1×レポーター溶解緩衝液(Promega,Madison,WI)を各ウェルに入れた。細胞溶解を増強するため、プレートを凍結させ、3回解凍し、若干改変した、β−ガラクトシダーゼの販売者(Promega,Madison,WI)によって提供された指示書に従ってβ−ガラクトシダーゼアッセイ法を行なった。5マイクロリットルの細胞抽出物を96ウェルの平底プレートに移し、45μlの1×レポーター溶解緩衝液と混合した(1:10)。引き続いて、50μlの2×アッセイ緩衝液(120mM Na
2HPO
4,80mM NaH
2PO
4,2mM NgCl
2,100mM β−メルカプトエタノール、1.33mg/ml ONPG(Sigma,St.Louis,MO))を加え、細胞抽出物と混合した。弱い黄色が発色するまで、プレートを室温でインキュベートした。その時点で、100μlの1M炭酸水素ナトリウムを添加することによって反応を停止させた。ELISAマイクロプレートリーダにて420nmの波長でプレートを読んだ。標準におけるレベルと参照することによる回帰分析によって各細胞抽出物のβ−ガラクトシダーゼの単位を計算し、細胞抽出物試料中のタンパク質のミリグラムで割った。
【0259】
細胞の毒性および脂質調製物でのウイルス処理:
ウイルス罹患性試験に先立ち、MDCKおよび293細胞に対するSLPの細胞傷害性を、顕微鏡観察およびMTTアッセイ法によって評価した。罹患性試験において適用したウイルスおよびSLPの混合物の希釈は、アッセイしたSLPの安全な濃度よりも少なくとも1桁大きくなるようにした。ほぼ1×10
8pfuのインフルエンザA型またはアデノウイルスいずれかを、振とう機上の結果に示したように異なる時点に1:10、1:100、および1:1000の最終濃度で脂質調製物と共にインキュベートした。インキュベーションの後、SLP/ウイルス混合物の段階希釈を適当な感染培地中で行い、前記したようにMDCK(インフルエンザA型)または293(アデノウイルス)細胞に重ねて、PRA、細胞ELISAまたはβ−ガラクトシダーゼアッセイ法を行なった。
【0260】
電子顕微鏡観察:
超遠心分離機(20,000rpmでの16時間のBeckmanローターSW 28 Ti)を用いてGTNE(グリシン200mL,トリス−HCl 10mM(pH8.8),NaCl 100mM,およびEDTA 1mM)で調製した30%ショ糖クッションを通すことによって、インフルエンザA型ウイルスを尿膜流体から半精製した。ペレット化されたウイルスをGTNE中で再構築した。10マイクロリットルの各試料(アデノウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス+X8P、インフルエンザウイルス+X8P)を15および60分間インキュベートし、次いで、パロジアン被覆200メッシュ銅グリッド上に2分間置いた。5μlの2%カコジル化緩衝グルタルアルデヒドを次いで加えた。3分後、流体を濾紙で除去した。10マイクロリットルの7%酢酸ウラニルをグリッドに加え、30秒後に、濾紙で吸い取った。グリッドを10分間乾燥させ、フィリップス(Philips) EM400t透過型電子顕微鏡で調べた。顕微鏡写真を200,000×の倍率でフジ(Fuji)FGフィルムに記録した。
【0261】
SLPSに対するインフルエンザA型の罹患性試験:
MDCK細胞のインフルエンザA型感染に対する4つの界面活性剤脂質調製物(X8P,NN,W
808PおよびSS)の効果を調べた。全ての試験した調製物は、種々の程度インフルエンザA型ウイルス感染を阻害した。X8PおよびSSは、1:10希釈にてインフルエンザA型感染の95%を超える阻害を呈した。NNおよびW
808PはインフルエンザA型ウイルスに対して中程度の効果を示したに過ぎず、ほぼ40%だけ感染を低下させた。X8Pの殺ウイルス効果は1:100希釈においてさえ減少しなかった。SSは55%だけインフルエンザA型感染を阻害する1:100希釈にあまり効果的でなかった。1:1000希釈におけるこれらの2つの脂質調製物は、22〜29%の範囲のウイルス感染性に対する弱い阻害効果を示したにすぎなかった。
【0262】
X8PおよびSSは共にウイルス感染性に対して強力な阻害効果を示したので、PRAを用いて、細胞ELISAから得られたデータを確認した。PRAによりX8PおよびSSの効果が確認された。X8Pは1:10希釈において平均50.88から0までプラークの数を減少させた(表23)。希釈1:100において、X8Pは殺ウイルス効率を維持した。希釈1:100において、未処理ウイルスと比較し、SSはほぼ7%だけプラークの数を減少させた。
【0263】
(表23)
aウイルスはSLPと共に30分間インキュベートした。
bプラークの数
【0264】
インフルエンザA型ウイルスに対するX8P作用の速度論:
X8PがインフルエンザA型感染性に作用する時間条件を調べるために、2つの希釈(1:10、1:100)および4つの異なる時間間隔(5分、10分、15分、30分)においてウイルスをX8Pと共にインキュベートした。引き続いて、プラーク減少アッセイ法を行なった。表24に示すように、いずれかの希釈におけるX8Pとのインキュベーションから5分後、MDCK細胞のインフルエンザA型ウイルス感染性は完全になくなった。濃度または時間に拘わらず、X8PとインフルエザAウイルスの相互作用の間に有意な差はなかった。
【0265】
(表24)X8P処理/希釈後におけるプラーク形成単位
【0266】
X8Pの抗インフルエンザA型効率:
トライトン X−100界面活性剤は抗ウイルス活性を有するので(MahaおよびIgarashi,Southeast Asian J Trop Med Public Health 28:718[1997])、トライトン X−100単独または個々のX8P成分と組み合わせたトライトン X−100がX8Pと同程度だけインフルエンザA型感染性を阻害するかを調べた。インフルエンザA型ウイルスを:1)X8P、2)リン酸トリ(n−ブチル)、トライトン X−100、および大豆油(TTO)の組合せ、3)トライトン X−100および大豆油(TO)、または4)トライトン X−100(T)単独で処理した。X8Pは、トライトン X−100単独または試験した他の成分と混合したトライトン X−100よりも1:10および1:100希釈(1:500および1:5000のトライトン X−100希釈)においてインフルエンザA型ウイルスに対して有意により効果的であった。希釈1:1000において、X8P(1:50,000のトライトン X−100希釈)はほぼ50%だけMDCK細胞のインフルエンザA型感染を低下させることができ、他方、同一濃度におけるトライトン X−100単独は完全に効果的でなかった。
【0267】
X8Pは非エンベロープウイルスの感染性に影響しない:
X8Pが非エンベロープウイルスの感染性に影響し得るか調べるために、β−ガラクトシダーゼをコードするLacZ遺伝子を含有する遺伝子工学により作成したアデノウイルスを用いた。このアデノウイルス構築物は形質転換する遺伝子を欠き、従って、複製でき、アデノウイルス5の形質転換するウイルスを含有する許容性細胞のみを形質転換させることができる。構成的に形質転換性遺伝子を発現する293細胞を使用して、アデノウイルス複製およびβ−ガラクトシダーゼ酵素の生産を促進させた。X8P処理は293細胞においてβ−ガラクトシダーゼ活性を複製し、それを発現するアデノウイルスの能力に影響しなかった。X8P処理および未処理アデノウイルスは共にほぼ0.11単位のβ−ガラクトシダーゼ酵素を生産した。
【0268】
エンベロープウイルスに対するX8Pの作用:
X8Pはエンベロープウイルスの感染性を改変したのみだったので、エンベロープウイルス完全性に対するこのエマルジョンの作用を電子顕微鏡を用いてさらに調べた。X8Pの1:100希釈での60分のインキュベーションの後、アデノウイルスの構造は不変であった。X8Pとの15分のインキュベーションの後に少数の認識可能なインフルエンザA型ビリオンが位置したが、1時間のインキュベーションの後に認識可能なインフルエンザA型ビリオンは見出されなかった。インフルエンザA型ウイルスに対するX8Pの効率および粘膜に対するその最小毒性は、エンベロープウイルスでの感染に由来する病気を予防するための効果的な消毒剤および剤としてのその可能性を示す。
【0269】
実施例13
マウスにおいて免疫応答を誘導するナノエマルジョン/インフルエンザ組成物の能力
本実施例は、マウスにおいて特異的免疫応答誘導する例示的ナノエマルジョン組成物の能力を記載する。
【0270】
A.インフルエンザA型に対する免疫応答に与えるナノエマルジョンでの予備処理の効果
霧化されたエアロゾルによるインフルエンザウイルス(5×10
5p.f.u/ml)への曝露の90分前に、マウスを鼻腔適用したナノエマルジョン(1.0%8N8および1.0%または0.2%20N10)で予め処理した。ナノエマルジョンでの予備処理からの罹患率は最小であり、対照動物と比較して、死亡率は多いに減少した(予備処理の20%に対し対照において80%、Donovanら、Antivir Chem Chemother.,11:41[2000])。生存するエマルジョン予備処理動物のいくつかは、エマルジョンで処理したがウイルスに曝露しなかった対照動物に存在しない肺における免疫応答および巨大細胞形成の証拠を有した。予備処理した動物の全ては肺マクロファージにおける脂質取り込みの証拠を有した。
【0271】
図6は、ウイルスの異なる調製物で処理したマウスにおける血清抗インフルエンザ力価を示す。その鼻腔をウイルス/ナノエマルジョンに曝露した。動物のみが有意なIgG力価を示す。予備処理無しのウイルスまたはエマルジョン単独に曝露した動物においては、インフルエンザウイルスに対する免疫応答は観察されなかった。曝露された動物の血清におけるインフルエンザウイルスに対する抗体力価を測定し、エマルジョンで予備処理し、かつウイルスに曝露した動物はウイルス特異的抗体の高い力価を有することが判明した(
図6)。この免疫応答は、予備処理なくしてウイルスに曝露した対照動物で観察されなかった。これらの動物における抗体の高い力価は、エマルジョンおよびウイルスの共投与が毒性なくして保護免疫性を生じるか否かを判断する実験を早めた。
【0272】
B.免疫応答にナノエマルジョン/インフルエンザA型ウイルス共投与の効果
X8Pエマルジョンをウイルスと予め混合した。最終エマルジョン濃度は2%であって、ウイルス濃度は2×10
6pfu/mlであった。エマルジョン/ウイルス溶液のエマルジョン/ウイルス溶液(25μl)を温和な麻酔下のマウスの鼻腔に投与した。対照群には、3日間インキュベートしたホルムアルデヒド溶液の1:4000希釈を用いて不活化した同一ウイルス用量を与えて、完全な不活化を確実にした。もう1つの対照群は、低下した用量のウイルス(100pfu/マウス)を与えたマウスを含んだ。さらなる対照はナノエマルジョン単独または生理食塩水単独を与えた。
【0273】
3週間後、マウスには第2用量のエマルジョン/ワクチンを与えた。前記群の代表を血清抗体の発生につき試験し、いくつかを致死用量のインフルエンザA型のウイルスで抗原投与して、いずれかの発生した免疫性につき調べた。2週間後、マウスをその血清における保護免疫応答の発生につき試験した。いくつかのマウスを致死用量のインフルエンザウイルスで抗原投与して、保護免疫性の発生につきチェックした。全ての抗原投与したマウスを病気の兆候につき14日間観察した。インフルエンザウイルスに対する特異的抗体の存在について血清を試験した。
【0274】
実験の結果を表25および
図7〜8に示す。ナノエマルジョン中に混合した5×10
4pfuのウイルスの2回の投与の後には、15匹の動物のいずれもLD80のウイルスに対する曝露で死亡せず、他方、対照動物の予期された80%がこの曝露で死亡した。同一用量のホルマリンは鼻腔に投与されたウイルスを死滅させたが、但し、死亡からの保護はなく、ウイルス特異的のかなり低い力価がもたらされた。
【0275】
図7は、ウイルスの異なる調製物で処理したマウスにおける気管支IgA抗インフルエンザ力価を示す。その鼻腔がウイルス/ナノエマルジョンに曝露された動物は有意なIgA力価を示す。死滅されたウイルスまたはエマルジョン単独に曝露された動物においては、かなり低いIgA力価が観察された。
【0276】
図8は、ウイルスのいくつかの異なる調製物の2つの用量で処理したマウスにおける血清抗インフルエンザ力価を示す。
図6における動物と比較して、前記力価は、特にウイルス/エマルジョン処理動物においてかなり高い。これは第2投与に対する「ブースター」応答を示す。本実施例は、ナノエマルジョンおよび死滅されたウイルス双方の投与が、マウスにおいて特異的免疫応答を誘導するのに必要かつ充分であることを示す。
【0277】
(表25)鼻腔内予備処理を受けるインフルエンザ曝露動物の死亡率
【0278】
さらなる実験を行なって、ナノエマルジョン中の少量の残存生ウイルスが免疫性を提供する臨床下感染を生じつつある可能性を調べた。動物のさらなる群に、低レベルの感染を誘導する試みにおいて(ナノエマルジョンでの処理から15分後に存在する生ウイルスの量のほぼ4倍)ほぼ100pfuの生ウイルスを鼻腔内投与した。これらの動物の死亡率は低下したが、観察された保護量は有意ではなく、これらの動物のいずれもウイルス特異的抗体を生じなかった(表25)。この結果は、それは単に免疫感染を媒介する亜致死性ウイルス感染ではなく、エマルジョンがウイルス特異的免疫応答を特異的に増強しつつあったことを示す。保護免疫性はエマルジョン/ウイルス混合物のただ2回の適用(免疫化)後に得られ、各適用後に増加するように見え、「ブースター効果」を示唆した。ウイルス特異的抗体力価は、実験の最後まで6週間維持された。
【0279】
実施例14
ナノエマルジョンワクチンの試験
本実施例は、その安全性および効率につき潜在的ナノエマルジョンワクチンを試験するのに有用な実験を記載する。
【0280】
A.予備曝露予防および免疫性の誘導
鼻腔内予防:
動物の6群(表26)に、その間15〜60分の間隔で鼻腔内処理の以下のスケジュールを与える。動物を病気のいずれかの兆候につきモニターする。血液、気管肺胞胃管流体および鼻洗浄液を集め、ELISAを用いて病原体特異的抗体力価につき試験した(Fortierら、[1991];Jacobyら、[1983],およびTakaoら、[1997])。二週間後、生存する動物を致死用量の病原体で抗原投与して、保護免疫応答の発生につき試験した。実験の最後(抗原投与から少なくとも2週間後)に全ての他の動物に当てはまるように、最後に病気の動物を同定されるや否や人道的に犠牲にする。血液および組織を組織病理学的検査のために収穫し、血清学的および細胞媒介免疫応答双方を測定する。
【0281】
(表26)曝露試験における動物の処理群
【0282】
B.ナノエマルジョンのアジュバント活性の評価
細胞媒介免疫応答をインビトロで評価する。評価は、前記した(セクションA)実験から得られた安楽死させた動物から収穫した免疫担当細胞で行なう。抗原での再刺激の後に、T細胞増殖応答を評価する。細胞を全病原体またはDNA、RNAもしくはタンパク質のような病原体構成物の単独またはナノエマルジョンと混合したもので再刺激する。増殖活性はH
3−チミジン取り込みまたは細胞増殖ELISA化学発光によって測定する。増殖に加えて、Th1およびTh2サイトカイン応答を測定して、免疫応答を定性的に評価する。これらはIL−2、TNF−γ、IFN−γ、IL−4、IL−6、IL−11、IL−12等を含む。
【0283】
増殖およびサイトカイン応答パターンを前記セクションAと得られた結果と比較する。データの注意深い分析の後、特異的成分を他の油、洗剤または溶媒で置き換えることによってナノエマルジョンを修飾する。CpG、ケモカインおよびデンドリマーのような他の所望のアジュバントをエマルジョン/病原体混合物に加えて、潜在的毒性と共に免疫応答のその増強を評価する。
【0284】
C.迅速かつ効果的な粘膜ワクチンの開発
本実施例は、本発明のナノエマルジョンワクチンを試験する方法の非限定的例を提供する。鼻腔内ワクチン接種:動物を6つの群に分ける。各群に異なる鼻腔内抗原投与を与えて、得られた免疫応答を評価する。
1.ナノエマルジョン単独(陰性対照)
2.病原体単独(陽性対照)
3.投与直前に調製されたナノエマルジョン/病原体混合物
4.投与三日前に調製されたナノエマルジョン/病原体混合物
5.ホルムアルデヒドで死滅させた病原体
【0285】
表27はワクチン実験のための抗原投与プロトコルを示す。全ての抗原投与した動物は病気の任意の兆候につき毎日モニターする。血清はELISAを用いて病原体特異的抗体力価につき試験する(Fortierら、Infect.Immun.,59:2922[1991],Jacobyら、Lab.Anim.Sci.,33:345[1985]およびTakaoら、J.Virol.,71:832[1997])。全ての最後に病気の動物は人道的に安楽死させ、抗体力価のため血清は収穫し、組織病理学的検査のため組織は収集する。収穫された脾臓細胞およびリンパ節細胞懸濁液を用いて、細胞媒介免疫応答を測定する。実験の最後において、全ての残りの動物を同様な分析のために人道的に犠牲にする。
【0286】
(表27)ワクチン実験のための抗原投与プロトコル
【0287】
実施例15
インフルエンザA型およびナノエマルジョンでの鼻腔内免疫化後におけるウイルス肺炎からのマウスの保護
A.材料および方法
動物
雌C3H/HeNHsd(Harlan,Indianapolis,IN)(5週齢の特異的病原体の内マウス)を全ての実験で用いる。
【0288】
ウイルス
インフルエンザA型/アナーバー/6/60ウイルス(H2N2)、マウス適合化F
−14−95、E
1、M
3、E
1、SE
1はHunein Maassab博士(School of Public Health,University of Michigan,Ann Arbor,MI)によって提供された。インフルエンザA型/プエルトリコ/8/34ウイルス(H1M1)、マウス適合化F
8、M
593、E
173、SE
1はATCC(Rockville,MD)からのものであった。その他の所で記載された標準的な方法(Herlocherら、Virus Res.,42:11[1996])を用い、全てのウイルスは受精病原体不含雌鳥卵(SPAFAS,Norwich,CT)の尿膜腔中で増殖させた。ウイルスストックを−80℃において感染性尿膜流体のアリコット中で維持した。以前記載されたように(Mertonら、Production of influenza virus in cell cultures for vaccine preparation.In.Novel Strategies in Design and Production of vaccines,S.Cohenおよび A.Shafferman編、Plenum Press,New York,1996,頁141−151)、ウイルスを4℃における90分間の100,000gのショ糖勾配15〜60%溶液で精製した。ウイルスを含むバンドを収集し、NTE緩衝液(100mM NaCl,10mM トリス−HCl,1mM EDTA,pH=7.5)中に希釈し、4℃にて60分間100,000×gで回転沈降させた。ウイルスペレットをNTE緩衝液に再懸濁し、−80℃で保存した。
【0289】
ホルムアルデヒドでのウイルスの不活化
以前記載されたように(Chenら、J.Virol.61:7[1987];Novakら、Vaccine 11:1[1993])、ウイルス不活化を行なった。簡単に述べれば、異なる用量(10
3〜10
5pfu)のウイルスをホルムアルデヒド溶液(希釈1:4000)中で3日間インキュベートし、引き続いて動物に投与した。
【0290】
X8Pナノエマルジョンでのウイルスの不活化
2×10
4〜5×10
5pfuの種々の濃度における無傷インフルエンザA型ウイルスを等用量の4%X8Pナノエマルジョンと混合し(最終濃度:2%)、37℃にて60分間インキュベートした。
【0291】
ナノエマルジョンの調製および毒性試験
X8P界面活性剤ナノエマルジョンを2工程手法で調製した。油相は以下の成分:TBP(最終濃度8%)、トライトン X−100(8%)および大豆油(64%)を混和し、70℃にて30分間加熱することによって調製した(例えば、その各々を参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,015,832号および米国特許出願第20020045667号参照)。次いで、シルバーソンL4RTミキサー(Silverson L4RT Mixer)を用いて10,000rpmにて水(20%)と3分間混合することによって界面活性剤ナノエマルジョンを形成した。トライトン X−100はシグマ ケミカルズ(Sigma Chemicals)(St.Louis,MO)から購入し、TBPはアルドリッチ(Aldrich)(Milwaukee,WI)から購入し、大豆油はクロダ(Croda Inc.)(Mill Hill,PA)から購入した。以前記載されたように(例えば、前記実施例参照)、X8Pナノエマルジョンを動物毒性につき試験した。簡単に述べれば、マウスをメトファンで麻酔し、50μl(25μl/鼻腔)の容量の異なる濃度のナノエマルジョン(1、2および4%)をマウスに鼻腔内投与した。マウスにおける直接的鼻腔内吸入の後、全ての試験した濃度のナノエマルジョンは充分に許容された。これらのデータに基づき、免疫化実験のために2%X8Pを選択した。
【0292】
プラークおよびプラーク減少アッセイ法
以前記載されたように(Mycら、J.Virol.Meth.77:165[1999])、プラークアッセイ法(PA)は6ウェルプレートにてMDCK単層細胞で行なった。プラーク減少アッセイ法(PRA)はHaydenらによって記載されている方法(Antimicrob.Agents and Chemother.,17:865[1980])を改変して行なった。MDCK細胞を150×25mmペトリ皿中で80%密集度まで増殖させた。ほぼ1×10
8pfuのインフルエンザA型ウイルスを室温(RT)30分間、ナノエマルジョンまたはPBSいずれかと共にインキュベートした。インキュベーションの後、ナノエマルジョン処理および未処理ウイルスを250mlの培地に再懸濁し、全容量のウイルス懸濁液を別々の細胞単層上に置き、従前に記載された(MYCら、前記)プラークアッセイ方法に従って1時間インキュベートした。
【0293】
免疫化および実験の設計
後記結果セクションに記載するように、全ての群のマウスを、全容量の50μl(25μl/鼻腔)中のウイルスまたは対照溶液で鼻腔内処理した。簡単に述べれば、各マウスをハロタンで麻酔し、外部鼻腔に適用されたエマルジョンの液摘が完全に吸入されるまで鼻を倒置した。全てのマウスを実験の第1日に1回処理した。21日に、マウスを(鼻腔内処理に用いた)共通遺伝子系統ウイルスまたは異種遺伝子系統ウイルスいずれかでLD
100にて抗原投与した。抗原投与の後、マウスを病気の臨床的兆候につき14日間毎日モニターした。病気の臨床的兆候を0〜3のスケールで等級分類し、ここに、0は有意な臨床的異常無しを示し;1は増殖、丸まった背中および運動の減少を含めた温和な兆候を示し;2はチアノーゼ、呼吸困難、循環妥協、頻呼吸および直腸温度<33℃を示し;および3は動物の脂肪を示した。直腸コア体温はRET−3型Tマウス直腸プローブを供えたモデルBAT−12デジタル温度計(Physitem,Clifton,NJ)で記録した(Rozenら、Meth.Mol.Biol.,132:365[2000])。33℃未満のコア体温を持つマウスは最後には死に掛かっていると判断され、人道的に安楽死させた(Stevensonら、J.Immunol.,157:3064[1996])。抗原投与から14日後に生存したマウスは正常な体温を有し、病気の臨床的兆候は有さなかった。
【0294】
血液および組織試料の収集
血液試料は実験の間に異なる時間間隔での心臓穿刺によって尾静脈からまたは安楽死させた動物から得た。肺、局所的リンパ節、脾臓および肝臓の試料は安楽死させた動物から収集し、後記するようにRT PCRまたは増殖アッセイプロトコルに従って処理した。
【0295】
ウイルスRNAのRT−PCR検出
A系統で保存されたM遺伝子の246bp断片についての以下のプライマーを、以前記載されたように(Schweigerら、J.Clin.Microbiol.,38:1552[2000])、PCRで用いた。
および
。プライマーはオペロン テクノロジーズ(Operon Technologies,Inc.)(Alameda,CA)に注文した。ウイルスRNAはTri試薬(MRC,Cincinnati,OH)の使用により組織ホモジネートから単離した。肺、縦隔リンパ節、脾臓および肺をRNA抽出で用いた。cDNA合成は、5.0mMのMgCl
2、500μMの各dNTP、2.5μMランダムヘキサマープライマー、0.4U/μlのRNase阻害剤および2.5U/μlのスーパースクリプトII RT(Suparscript II RT)(Invitrogen,Rockville,MD)を用いて2.0μgの全組織RNAで行なった。熱サイクルは、12分間の25℃における、50分間の42℃における、次いで15分間の70℃における3単一サイクル(GeneAmp PCR System2400/Perkin Elmer)を用いて全容量20μlで行なった。PCR増幅は0.2μMの各プライマー、0.2mMの各dNTP、1.5mMのMgCl
2、0.1U/μlのTaq DNA ポリメラーゼ(Roche Molecular Biochmicals,Indianapolis,IN)を用いて0.01〜0.1μgのcDNAで行なった。20μlの全容量でのPCR反応を94℃にて2分間インキュベートし、次いで、62℃におけるアニーリング、72℃における伸長および94℃における変性にて35サイクルを行なった。電気泳動用のトリス酢酸緩衝液およびDNA染色用の臭化エチジウムを用い、ポストPCR分析を2%ナッシブ(Nusive)/1%アガロースゲルで行なった。バイオラッド(BioRad)(Hercules,CA)からのフォトイメージングカメラおよびソフトウエアを用いて分析を行なった。
【0296】
特異的抗ウイルスIgG測定
IgG特異的Ab力価をELISAで測定した。マイクロタイタープレート(NCNC)を56℃にてPBS中の0.5%グルタルアルデヒド(Sigma,St.Louis,MO)で1時間予備処理し、PBSで4回洗浄した。PBS中のインフルエンザA型ウイルス(5×10
3pfu/ウェル)を予備処理したプレート上に置き、37℃にて2時間または4℃にて1晩インキュベートした。ウイルスを吸引し;プレートをPBSで洗浄し、−20℃にてエタノール−アセトン(1:1)固定剤で15分間固定した。固定の後、プレートを再度洗浄し、ブロッキング緩衝液(PBS中の1%乾燥ミルク)で30分間ブロックした。ブロッキング緩衝液を除去し、プレートを密閉し、使用するまで4℃で保存した。血清試料および陽性および陰性対照血清を希釈緩衝液(PBS中0.1%BSA)に段階的に希釈し、37℃にてウイルス被覆プレート上でインキュベートした。洗浄緩衝液(PBS中0.05%ツィーン20)での洗浄の後、ビオチニル化抗マウスIgG抗体を加え、37℃にて30分間インキュベートした。洗浄およびAP基質(Sigma,St.Louis,MO)でのインキュベーションに続き、プレートを再度洗浄し、ストレプトアジビン−AP(SIGMA,St.Louis,MO)と共にインキュベートした。発色するまでプレートを室温でインキュベートした。1N NaOHで反応を停止させ、プレートを405nmにおいてELISAリーダーで読んだ。抗体力価を最高血清希釈として任意に測定し、バックグラウンドを3倍超える吸光度を得た(Kremerら、Infection and Immunity 66:5669[1998])。
【0297】
増殖アッセイ法
マウス脾臓をPBS中で破壊して、単細胞懸濁液を得た。細胞をBPS中で洗浄し、塩化アンモニウム溶解緩衝液を用いて赤血球細胞を溶解させた。次いで、脾臓細胞を培地(10%FBS、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補足したRPMI 1640)に再懸濁させ、96ウェルマイクロタイタープレートに1.5×10
5細胞/250μl/ウェルで接種した。次いで、一晩のBrdU標識に続き、細胞を分裂促進因子PHA−P(2.5μg/ウェル)と共に3日間(Stevensonら、前記)または6×10
3pfu/ウェルの濃度のインフルエンザA型のウイルスと共に6日間インキュベートした。製造業者の指示(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)に従い、細胞増殖化学発光ELISAを用いて細胞増殖を測定した。相対的光単位の測定は標準ルミノメーターを用いて行なった。
【0298】
インビトロサイトカイン生産
脾臓細胞を培地(10%FBS、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補足したRPMI 1640)に再懸濁し、マイクロタイター平底プレートに1.5×10
5細胞/250μl/ウェルで接種した。次いで、細胞を分裂促進因子PHA−P(2.5μg/ウェル)と共に3日間(Stevensonら、前記)または6×10
3pfu/ウェルの濃度のインフルエンザA型ウイルスと共に6日間インキュベートした。次いで、上清を収穫し、サイトカイン濃度を定量した。
【0299】
サイトカインの定量
血清および脾臓細胞上清中のIL−2、IL−4、IL−12およびIFN−γサイトカインレベルは、製造業者の指示に従い、クアンティカイン M ELISA(QUANTIKINE M ELISA)キット(R&D Systems,Inc.)を用いて行なった。
【0300】
フローサイトメトリー分析
PEまたはFITCいずれかで直接的に標識したマウス分子CD3、CD4、CD8およびCD19(BD PharMingen,San Diego,CA)に対して特異的な抗体をフローサイトメトリー分析で用いた。脾臓細胞の単細胞懸濁液を抗体と共に氷上で30分間インキュベートし、0.1%BSAを含有するBPSで洗浄した。コールターエピックス−XL MCL ベックマン−コールター(Coulter EPICS−XL MCL Beckman−Coulter)フローサイトメーターで試料を獲得し、Expo32ソフトウエア(Beckman−Coulter,Miami,FL)を用いてデータを解析した。
【0301】
組織学
1mlの10%中性緩衝化ホルマリンでの膨張によって肺を固定し、ひとまとめに切開し、中性緩衝化ホルマリンに浸漬させた。パラフィン包埋の後、5μmの切片を切断し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、光学顕微鏡で観察した。
【0302】
統計学的方法
Yateの修正を施した平均、標準偏差、標準誤差およびχ
2解析を計算した。対照群を実験群と比較するために、Cox回帰を用いた(Coxら、Journal of the Royal Statistical Society Series B,34.187[1972])。実験群および対象群の間の差は、LOG尤度比率検定を用いて試験した。
【0303】
B.結果
インフルエンザA型ウイルスに対するナノエマルジョンの殺ウイルス活性
インフルエンザA型ウイルス、アナーバー系統に対するX8Pナノエマルジョンの殺ウイルス効果を、ウイルス/ナノエマルジョン混合物での動物の鼻腔内処理に先立って試験した。合計容量50μl中の2%X8Pナノエマルジョン中の2×10
4、5×10
4、2×10
5および5×10
5pfuの濃度のウイルスを、インフルエンザ感受性細胞の接種に先立って37℃にて60分間インキュベートした。ナノエマルジョンのプラーク減少質はMDCK細胞を用いてアッセイした。
図10aに示すように、ナノエマルジョンは、3logを超えてプラークを形成するウイルスの能力を低下させた。ナノエマルジョンとのウイルスの延長されたインキュベーションは、時間依存的にプラーク形成単位の数を減少させた(
図10b)。ナノエマルジョンとの5×10
5pfuのウイルスのインキュベーションから3時間後に、pfuは検出されなかった(
図10b)。同一時点においてウイルス/ナノエマルジョン調製物で行なったRT−PCRは、プラーク減少アッセイ法(PRA)との完全な相関を示した。ウイルスRNAは依然として2時間において検出可能であったが、3時間および4時間ではいずれも存在しなかった。(
図10c)。
【0304】
インフルエンザA型ウイルス/ナノエマルジョン混合物はウイルスの共通遺伝子系統での致死的抗原投与からマウスを保護する
マウスを2%ナノエマルジョン単独、ホルマリンで死滅させたインフルエンザA型ウイルス「AA」系統(5×10
5pfu)、2%ナノエマルジョンと混合したホルマリンで死滅させたウイルスまたは2%ナノエマルジョンで不活化したウイルス(5×10
5pfu)いずれかで鼻腔内処理した。20日後、全ての4つの実験群を共通遺伝子系統ウイルスの致死容量(2×10
5pfu)で抗原投与した。インフルエンザ/ナノエマルジョン混合物で処理した動物は病気のいずれの兆候も有さなかった。それらのコア体温は実験器官まで正常な範囲内にあり(
図11)、全ての動物は抗原投与から生き延びた。ナノエマルジョン単独で処理した動物は抗原投与後にウイルス肺炎に罹り、全て27日(抗原投与後6日)までに死亡した。ホルマリンで死滅させたウイルスおよびナノエマルジョンで処理した全ての動物は26日(抗原投与後5日)までに死亡した。ホルマリンで死滅させたウイルス単独で処理した群においては、ただ1匹のマウスが生き延びた(
図12)。
【0305】
また、実験により、ナノエマルジョンと混合し、鼻腔内投与されたウイルスRNAが致死的抗原投与からマウスを保護するか否かが調べられた。ウイルスRNA(0.5μg;当量の10
5pfuのウイルス)単独またはウイルスRNA/ナノエマルジョン混合物も、致死用量のウイルスで抗原投与した動物に対していずれの保護的効果も有さなかった。
【0306】
無傷ウイルス粒子がナノエマルジョン/ウイルス混合物と同一保護効果を模倣できるかを調べるために、動物を5用量のウイルス(2×10
5、2×10
4、2×10
3、2×10
2および2×10
1pfu)単独またはナノエマルジョンと混合したウイルスで動物を処理した(
図28および29)。処理から最初の14日以内に、2×10
5pfuウイルスで処理した全ての動物は肺炎にかかった。ただ1匹のマウスが2×10
4pfuウイルスでの処理から生き延びた。他の実験群における全ての動物は処理から生き延び、14日後には健康になった。21日には、全ての生き延びた動物を致死用量のウイルスで抗原投与し、さらに14日間観察した。5×10
5pfuのウイルスおよびナノエマルジョンで処理したマウスは抗原投与から生き延び;2×10
5pfuのウイルスおよびナノエマルジョンで予備処理した動物の群においては、7匹のマウスの内4匹のみが生き延びた。全ての他の実験群からの動物は肺炎を引き起こし、全て28日までに死亡した。
【0307】
(表28および29)異なる用量のインフルエンザA型ウイルスでの鼻腔内処理(表28)および共通遺伝子系統ウイルスでの致死的抗原投与(表29)後におけるマウスの生存
表28
【0308】
表29
【0309】
処理されたマウスの肺組織学
ナノエマルジョン単独で処理された、およびインフルエンザA型ウイルスアナーバー系統の致死用量(5×10
5pfu)で抗原投与した動物の組織学的検査は、実験の25〜27日(感染後5〜7日)にひどい葉肺炎を示した。肺組織の大きな領域が、肺胞空間を満たし、間質に浸潤する炎症性細胞(好中球およびマクロファージ)のかなりの流入によって引き起こされた均一な硬化を示した。肺胞内出血、中央壊死を伴う腫瘍の存在、および痕跡量の細胞デブリスが満ちた空の洞の形成によって証明される肺組織破壊の領域が観察された。加えて、線維症の領域がこれらのマウスの肺で見出され、増殖する繊維芽細胞によって置き換えられるようになる肺組織のかなりの破壊を示唆する。従って、これらのマウスで観察された重い肺炎および肺組織損傷の組織学的特徴は、インフルエンザ感染によって引き起こされた動物の迅速な肺死滅と合致する。
【0310】
無傷ウイルス/ナノエマルジョン混合物で処理した動物からのウイルス感染肺の病理学は、ナノエマルジョン単独で処理した動物からの病理学よりも顕著ではなかった。これらの動物においては、病理学的に変化しない肺の領域および残りの病理学を持つ領域の双方が見出された。侵された領域は肺間質(肺胞中隔)における炎症性浸潤を示したが、肺胞空間には浸潤物または炎症細胞はなかった。間質浸潤物は圧倒的に単核細胞を含んだ。残りの肺組織はよく保存された肺構造を保有し、未感染動物からの肺と同様に見えた。この組織学的特徴はこれらのマウスで観察された重篤ではない感染および感染からの回復と合致する。
【0311】
特異的抗インフルエンザA型ウイルスIgGの血清レベル
ウイルス/ナノエマルジョンまたはナノエマルジョン単独いずれかでの単一処理後に、特異的抗インフルエンザIgG抗体のレベルを調べた。初期ワクチン接種(または処理)後10、20および35日に、IgG抗体のレベルを動物の血清において評価した。10日に、全てのマウスは血清中の抗インフルエンザA型 IgGのバックグラウンドレベルを示した。(力価1:100)。20日に、ウイルス/ナノエマルジョンで処理されたマウスは、ナノエマルジョン単独で処理した対照群と比較して有意に高い抗体応答を生じた(p<0.05)。35日に抗原投与から生き延びたウイルス/ナノエマルジョン処理マウスは、抗原投与前の同一動物内で見出されたレベルと比較して10倍高いIgG抗体の血清レベルを生じた(
図13)。
【0312】
インフルエンザA型ウイルスおよびナノエマルジョン製剤で処理したマウスにおけるウイルスRNAの検出
全肺RNAからのRT−PCR結果は、処理6日後までウイルス/ナノエマルジョン接種動物におけるインフルエンザA型ウイルスRNAの存在を示したが、7日およびそれ以後は示さなかった(
図14a)。処理から最初の6日後の間におけるマウス肺からの0.1μgの全RNAからのRT−PCR反応で生じたシグナルは、合計10プラーク形成単位(pfu)未満のウイルスに相関した(
図14b)。
【0313】
インフルエンザA型ウイルス/ナノエマルジョン製剤で免疫化したマウスの初期免疫状態
種々のウイルス調製物で処理したマウスにおける初期免疫応答の特異性をサイトカインの分析によって特徴付けた。動物によって生じたサイトカインのレベルを、培養した脾臓細胞からの培地中、および実験動物の血清中双方で測定した。(
図16aおよび
図16b)。ウイルス/ナノエマルジョン調製物での処理から4日後、上昇したレベルのIL−12、IL−2、TNF−αおよび特にIFN−γの上昇したレベルが検出された(
図16a)。動物の対照群において、検出されたレベルのこれらのサイトカインはなかった。上昇したレベルのIL−10および検出されなかったレベルのIL−4が全ての実験群にわたって観察された。
【0314】
上昇したIFN−γは初期免疫応答を示すことが示されているので、実験動物の血清中のIFN−γレベルを初期処理後20日までモニターした。ウイルス/ナノエマルジョンで処理したマウスから得られた血清中のIFN−γのレベルは24時間において230pg/mlを超えて到達し、20日間にわたって徐々に検出できないレベルまで減少した。他の実験群のIFN−γレベルは、対照群で検出されたレベルと比較して低かった(
図15g)。
【0315】
ウイルス/ナノエマルジョンで処理したマウスにおける免疫応答の抗原特異性
脾臓細胞増殖およびサイトカイン不活化アッセイ法を用い、免疫応答の抗原特異性を評価した。ウイスル/ナノエマルジョンおよびナノエマルジョン単独で処理したマウスからの実験の20日に、脾臓細胞を収穫した。細胞を共通遺伝子系統ウイルス(鼻腔内処理で用いたAA系統)で5日間刺激した。
図16に示すように、インフルエンザA型/AA系統は、共通遺伝子系統ウイルス/ナノエマルジョン混合物で処理したマウスから収穫された脾臓細胞を特異的に刺激し、他方、動物のいずれかの他の群から収穫された脾臓細胞では増殖は検出されなかった。刺激指標は1未満であり、これは、インキュベーションの5日間の間に、ウイルスが組織培養におけるいくらかの細胞を死滅させたことを示す。実験の35日(致死的抗原投与から14日後)に、抗原投与から生き延びた動物から収穫された脾臓細胞は、20日に動物の同一群から得られた脾臓細胞の増殖応答と比較してより大きな増殖指標を示した。
【0316】
サイトカイン産生を分析して、免疫応答の性質を特徴付け、抗原特異性を確認した。増殖アッセイ法と同一方法で処理し、72時間インキュベートした脾臓細胞から得られた条件培地を用いて、サイトカイン濃度を定量した。20日に、ウイルス/ナノエマルジョンで処理したマウスから得られた脾臓細胞は高レベルのIFN−γを生じ、IL−2のレベルをわずかに増加させた(
図17aおよび17b)。休止またはウイルス刺激細胞においてIL−4の検出可能な生産はなかった(
図17c)。抗原投与後に動物から得られた脾臓細胞において、ウイルス刺激の結果、IFN−γがさらに増幅され、IL−2が発現され、抗原投与前の動物におけるよりも少なくとも5倍高い濃度に到達した(20日)。また、主な差はIL−4発現で検出された。それらの抗原投与前状態とは対照的に、IL−4は非刺激で検出され、共通遺伝子系統ウイルス刺激脾臓細胞で5倍を超えて増大した(
図17c)。ナノエマルジョン単独、ウイルスRNA/ナノエマルジョンまたはホルマリンで死滅させたウイルス/ナノエマルジョンで処理した動物から得られた脾臓細胞におけるIFN−γまたは他のサイトカインの特異的活性化は観察されなかった。
【0317】
免疫担当細胞の特徴
実験動物の脾臓におけるT:B(CD3:CD19)およびTh:Tc(CD4:CD8)細胞の比率を調べた。未処置マウスの脾臓において、免疫染色およびフローサイトメトリー分析を用い、T細胞の32%およびCD8陽性細胞の39%が検出された。鼻腔内ワクチン接種から21日後、T細胞のパーセンテージは、ウイルス/ナノエマルジョン混合物およびナノエマルジョン単独で処理した動物の群では不変のままであり、他方、CD8陽性細胞はこれらの群においては、各々、48%および44%まで上昇した。致死的抗原投与から14日後(免疫化から35日後)、生き残った動物はわずかイルス/ナノエマルジョン混合物で処理した群におけるものだけであった。全ての動物は、抗原投与前の同一群と比較して、有意に(p<0.0001)上昇したT細胞およびわずかに上昇したCD8陽性細胞を有した(
図18)。T細胞は同一レベルに留まったが、ナノエマルジョン単独およびナノエマルジョンでプレインキュベートしたウイルスで処理した群ではCD8陽性細胞が増大した。
【0318】
エピトープ認識の拡大
ウイルスアナーバー系統/ナノエマルジョンまたはナノエマルジョン単独の鼻腔内吸入から20日後、マウスをウイルスの共通遺伝子(AA)または異種遺伝子(プエルトリコ)系統いずれかで抗原投与し、14日間観察した。ウイルスアナーバー系統/ナノエマルジョンで処理し、共通遺伝子系統ウイルスで抗原投与した動物は生き残り、回復し、全ての他の群からの動物は肺炎に罹り、実験の26日までに死亡した(
図19)。抗原投与後における動物でのIFN−γサイトカイン生産の分析は、この動物群からの脾臓細胞が、サイトカインのかなりの生産による共通遺伝子および異種遺伝子系統ウイルス双方でのインビトロ刺激に応答することを明らかとした(
図20b)。本発明は特定の機序に限定されない。事実、機序の理解は本発明を実施するのに必要ではない。それにもかかわらず、共通遺伝子系統ウイルスでの抗原投与から生き延びた動物は異種ウイルスに対しての免疫性を獲得し、それにより、そのエピトープ認識を拡大したことが考えられる。そのような可能性を調べるために、共通遺伝子系統ウイルスでの抗原投与から生き延びた動物を再度異種ウイルス(プエルトリコ系統)で抗原投与し、さらに14日間観察した。全ての動物は、病気のいずれの兆候もなくして異種ウイルスでの再抗原投与から生き延びた(表30)。
【0319】
結論として、本実施例は、鼻腔内投与されたインフルエンザワクチンについてのナノエマルジョンのインビボアジュバント性を証明する。結果は、ウイルスと混合したナノエマルジョンの単一鼻腔内投与がインフルエンザ肺炎に対して充分な保護を生じ、その結果、ウイルスの致死用量で抗原投与された全ての動物の生存をもたらすことを確立する。抗原投与の間に、免疫化された動物は病気のいずれの兆候も示さず、そのコア体温は14日間正常な範囲にあった。さらに、生存した動物の肺は、インフルエンザ肺炎に特徴的な肉眼での病理学的変化は示さなかった。
【0320】
(表30)インフルエンザA型ウイルスプエルトリコ系統でのワクチン接種、抗原投与および交差抗原投与後における動物の生存(%)
【0321】
実施例16
HIV gp120に対する免疫応答
本実施例は、組換えHIV−1エンベロープ糖タンパク質(gp120)に対するマウスの免疫応答を記載する。100μl容量中の変化させた濃度のX8Pナノエマルジョン(最終濃度:0.1〜1%)と混合した用量当たり2μgおよび20μgの濃度で組換えgp120糖タンパク質(最終濃度:0.1〜1%)をマウスに鼻腔内または筋肉内投与した。用量投与は最初の免疫化後3週間以内に反復した。対照動物の鼻では、生理食塩水中のタンパク質で置き換えた。また、GP120/X8Pを筋肉内注射して、それが筋肉内投与されたワクチンを補助できるかを決定した。
【0322】
結果を
図21および22に示す。特異的抗gp120 IgGの血清レベルを初期免疫化から6週間後に検出した。双方の免疫化経路で、増大したおよび匹敵するレベルの免疫応答が検出された。
図21は、gp120と共にしたX8Pナノエマルジョンの投与の結果、gp120を鼻腔内投与すると免疫応答が増大することを示す。
図22は、gp120と共にしたX8Pナノエマルジョンの投与の結果、gp120を筋肉内投与すると免疫応答が増大することを示す。
【0323】
前記明細書で言及した全ての刊行物および特許を、本明細書に、参照として組み入れられる。本発明の記載された方法およびシステムの種々の改変および変形は、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、当業者に明らかであると思われる。特別な好ましい態様との関係で本発明を記載してきたが、特許請求する本発明はそのような特別な態様に限定されるべきではないと理解されるべきである。事実、関連分野における当業者に明白な本発明を実施するための記載された局面の種々の改変は、請求の範囲の範囲内にあることが意図される。