(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第1および第2のワーク搬送用ロボットは、上記ワーク収納室の配列方向における中央位置から互いに同じ距離の位置に配置されている、請求項1に記載のワーク搬送システム。
上記各ワーク搬送用ロボットは、上記搬送室に対して固定される固定ベースと、昇降ベースと、この昇降ベースを上記固定ベースに対して昇降させる昇降機構と、一端が上記昇降ベースに対して第1の垂直軸周りに回動可能に支持された第1のアームと、上記第1のアームを上記第1の垂直軸周りに回動させる第1アーム駆動機構と、一端がこの第1のアームの他端に対して第2の垂直軸周りに回動可能に支持された第2のアームと、この第2のアームを上記第2の垂直軸周りに回動させる第2アーム駆動機構と、端部が上記第2のアームの他端に対して第3の垂直軸周りに回動可能に支持されたハンドと、このハンドを上記第3の垂直軸周りに回動させるハンド駆動機構と、を備える、請求項1または2に記載のワーク搬送システム。
上記各ワーク搬送用ロボットは、上記ワーク処理室に正対する位置から上記ワーク収納室の配列方向において偏倚した位置に配置されている、請求項1ないし3のいずれかに記載のワーク搬送システム。
上記コントローラは、上記第1および第2のワーク搬送用ロボットの駆動を統括的に制御する駆動制御手段と、上記第1および第2のワーク搬送用ロボットの故障を検出する故障検出手段と、上記故障検出手段によって検出した情報に基づいて上記第1および第2のワーク搬送用ロボットのいずれかへの通電を遮断する通電遮断手段と、を備える、請求項1ないし4のいずれかに記載のワーク搬送システム。
上記コントローラは、上記駆動制御手段に対する上記第1および第2のワーク搬送用ロボットの電気的接続状態を検出する接続検出手段と、上記故障検出手段によって検出した情報に基づいて上記第1および第2のワーク搬送用ロボットのいずれかについての上記接続検出手段による検出を無効にする接続検出無効化手段と、をさらに備える、請求項5に記載のワーク搬送システム。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野において、ウエハ等のワークを搬送する際に搬送用のロボットが用いられており、たとえば、ウエハが収納された容器(ワーク収納室)と、プロセスチャンバ(ワーク処理室)との間でワーク搬送用ロボットによりワークの搬送を行うように構成されたワーク搬送システムが知られている。
【0003】
図13に従来のワーク搬送システムの一例を示す。同図に示されたワーク搬送システムBは、2つのワーク収納室91と、搬送室92と、ワーク処理室93と、ワーク搬送用ロボット94とを備えている。ワーク収納室91は、たとえば、複数のワークWを保持したカセットを収容可能に構成されており、直線状に配列される。搬送室92は、複数のワーク収納室91に隣接して設けられており、この搬送室92内に1台のワーク搬送用ロボット94が配置される。ワーク搬送用ロボット94は、たとえば2段のアームおよびワーク保持用のハンドが互いに水平面内で回動自在に連結された水平多関節ロボットにより構成される。ワーク処理室93は、搬送室92に対してワーク収納室91とは反対側に隣接して設けられている。ワーク処理室93においては、加熱処理、加工処理、あるいは検査処理などの処理がワークWに対してなされる。ワーク搬送用ロボット94は、すべてのワーク収納室91およびワーク処理室93に対して、ワークWの搬出入が可能とされている。
【0004】
図13に示されたワーク搬送システムBにおけるワーク搬送処理の一例について説明する。まず、2つ並んだワーク処理室91のうちの一方のワーク収納室91から処理前のワークWを搬出し(
図14参照)、当該ワークWをワーク処理室93に搬入する。
図15は、ワーク処理室93においてワークWの受け渡しがなされる状態を示す。ワーク処理室93ではワークWに対して適宜処理がなされる。次いで、処理後のワークWをワーク処理室93から搬出し、他方のワーク収納室91に搬入する。このようなワークWの搬送が繰り返される。
【0005】
ワーク搬送用ロボット94は、ワーク搬送時の搬送経路が短くなるように、ワーク収納室91およびワーク処理室93の中間に配置されている。すなわち、ワーク搬送用ロボット94は、ワーク処理室93に対しては正対し、ワーク収納室91に対してはこれらの配列方向X1−X2における中央に位置するように配置される。搬送室92は、ワーク搬送用ロボット94との干渉を防止するために、ワーク収納室91とワーク処理室93とが離間する方向Y1−Y2の寸法が比較的に大きくされている。ワーク搬送用ロボット94は、方向Y1−Y2において対向する側壁92a,92bから所定の距離を隔てられ、当該方向Y1−Y2における中央に位置している。なお、ワーク収納室91の数が
図13に示された2つの場合、あるいは3つの場合、ワーク搬送用ロボット94は、上記のようにワーク収納室91およびワーク処理室93の中間に配置されるが、ワーク収納室91の数が4つ以上の場合、ワーク搬送用ロボット94は、たとえばワーク収納室91の配列方向X1−X2(搬送室92の長手方向)に沿ってスライド移動可能に設けられる。
【0006】
半導体製造においては、生産効率の改善およびフットプリント(製造装置等の占有床面積)の低減が要請されている。上記のようなワーク搬送システムにおいては、ワーク搬送経路が短くなるように、搬送室、ワーク処理室、ワーク収納室、およびワーク搬送用ロボットの配置が工夫されている。ワーク搬送経路が短縮されると、ワークの単位数量あたりの搬送処理に係る時間が短縮され、その結果、生産効率を改善することができる。
【0007】
しかしながら、従来のワーク搬送システムBにおいては、搬送室92は、方向Y1−Y2の寸法が比較的に大とされている。このことは、フットプリントの低減に対する阻害要因であり、ワーク搬送経路の短縮による生産効率の改善とフットプリントの低減とを両立させるのは困難であった。また、予測が困難な部品故障などに起因してワーク搬送用ロボット94が停止した場合、ワーク搬送システムBの稼働率が低下することになり、却って生産効率の低下を招いてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、ワーク収納室とワーク処理室との間でワーク搬送用ロボットによりワークの搬送を行うように構成されたワーク搬送システムにおいて、フットプリントの低減を図りつつ、システム全体を効率よく稼働させることをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0011】
本発明によって提供されるワーク搬送システムは、直線状に配列された
3つまたは5つのワーク収納室と、これらワーク収納室に隣接する搬送室と、この搬送室に対し、上記ワーク収納室とは反対側に隣接する1つのワーク処理室と、上記ワーク収納室と上記ワーク処理室との間でワークを搬送するために上記搬送室に配置された2台の第1および第2のワーク搬送用ロボットと、これらワーク搬送用ロボットの動作を制御するコントローラと、を備え、上記第1および第2のワーク搬送用ロボットは、上記ワーク収納室の配列方向に離間して配置されており、上記ワーク処理室は、上記ワーク収納室の配列方向において上記第1および第2のワーク搬送用ロボットの間に配置されており、上記各ワーク搬送用ロボットは、2つまたは3つの上記ワーク収納室に対してワークの搬送を行い、かつ上記ワーク処理室に対してワークの搬送を行
い、上記第1および第2のワーク搬送用ロボットのいずれもが、上記3つまたは5つのワーク収納室のうち中央に位置するものに対してワークの搬送を行うことを特徴としている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記第1および第2のワーク搬送用ロボットは、上記ワーク収納室の配列方向における中央位置から互いに同じ距離の位置に配置されている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記各ワーク搬送用ロボットは、上記搬送室に対して固定される固定ベースと、昇降ベースと、この昇降ベースを上記固定ベースに対して昇降させる昇降機構と、一端が上記昇降ベースに対して第1の垂直軸周りに回動可能に支持された第1のアームと、上記第1のアームを上記第1の垂直軸周りに回動させる第1アーム駆動機構と、一端がこの第1のアームの他端に対して第2の垂直軸周りに回動可能に支持された第2のアームと、この第2のアームを上記第2の垂直軸周りに回動させる第2アーム駆動機構と、端部が上記第2のアームの他端に対して第3の垂直軸周りに回動可能に支持されたハンドと、このハンドを上記第3の垂直軸周りに回動させるハンド駆動機構と、を備える。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記各ワーク搬送用ロボットは、上記ワーク処理室に正対する位置から上記ワーク収納室の配列方向において偏倚した位置に配置されている。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記コントローラは、上記第1および第2のワーク搬送用ロボットの駆動を統括的に制御する駆動制御手段と、上記第1および第2のワーク搬送用ロボットの故障を検出する故障検出手段と、上記故障検出手段によって検出した情報に基づいて上記第1および第2のワーク搬送用ロボットのいずれかへの通電を遮断する通電遮断手段と、を備える。
【0016】
好ましい実施の形態においては、上記コントローラは、上記駆動制御手段に対する上記第1および第2のワーク搬送用ロボットの電気的接続状態を検出する接続検出手段と、上記故障検出手段によって検出した情報に基づいて上記第1および第2のワーク搬送用ロボットのいずれかについての上記接続検出手段による検出を無効にする接続検出無効化手段と、をさらに備える。
【0017】
本発明に係るワーク搬送システムによれば、2台のワーク搬送用ロボットを備え、これら搬送用ロボットについて、コントローラによって互いの衝突を防止するように動作を制御することにより、並行して2系統でのワークの搬送処理を行うことができる。したがって、上記構成のワーク搬送システムによれば、より高いスループットを実現することができ、本システム全体を効率よく稼働させることができる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るワーク搬送システムの一例を示している。本実施形態のワーク搬送システムA1は、3つのワーク収納室1(以下、適宜、ワーク収納室1A,1B,1Cという)と、搬送室2と、ワーク処理室3と、2台の搬送用ロボット4(以下、適宜、搬送用ロボット4A,4Bという)と、これら搬送用ロボット4の動作を制御するコントローラ(図示略)と、を備え、たとえばウエハ等の薄板状のワークWの搬送を行うように構成されたものである。
【0022】
ワーク収納室1は、たとえば複数のワークWを保持したカセットを収納可能に構成されており、一定ピッチで直線状に配列されている。
【0023】
搬送室2は、上記3つのワーク収納室1に隣接して設けられており、これらワーク収納室1が並ぶ方向において長手状の略直方体形状とされている。
【0024】
ワーク処理室3は、加熱処理、加工処理あるいは検査処理などの処理をワークWに対して行うためのものである。ワーク処理室3は、搬送室2に対して、ワーク収納室1とは反対側に隣接して設けられている。ワーク処理室3は、ワーク収納室1の配列方向X1−X2における中央位置に設けられている。なお、ワーク処理室3と搬送室2との間には、必要に応じて開閉式のシャッタ(図示略)が設けられる。
【0025】
搬送用ロボット4は、ワーク収納室1とワーク処理室3との間でワークWの搬送を行うためのものであり、搬送室2内に配置されている。
図1および
図2に表れているように、搬送用ロボット4は、搬送室2の下部に対して台座を介して固定される固定ベース40と、昇降ベース41と、長手状の下段アーム42および上段アーム43と、ハンド44とを備えている。
【0026】
昇降ベース41は、固定ベース40に対して昇降可能に支持されている。具体的には、たとえば、固定ベース40の内部に図示しない上下方向の直線ガイドレールが設けられ、昇降ベース41に設けられた図示しないスライダが上記ガイドレールに対して上下方向にスライド移動可能に支持されている。また、固定ベース40の内部には図示しないネジ軸が回転自在に支持され、昇降ベース41には、上記ネジ軸に螺合するナットが設けられている。固定ベース40の下部には図示しない昇降用のサーボモータが設けられ、この昇降用モータの出力軸に設けられた出力プーリと、上記ネジ軸に設けられたプーリとの間にベルトが掛け回されている。かかる構成により、上記昇降用モータが駆動すると、上記ネジ軸が回転させられ、当該ネジ軸の回転により、昇降ベース41が昇降させられる。このようにして、昇降ベース41を固定ベース40に対して昇降させる昇降機構が構成される。
【0027】
下段アーム42は、たとえば中空状の略四角柱形状とされており、長手方向が水平となる姿勢で昇降ベース41に支持されている。たとえば、下段アーム42の基端42aには、図示しない垂直下向きの軸部が設けられており、当該軸部が昇降ベース41の上部に形成された孔に嵌挿された状態で垂直軸O1周りに回動可能に支持されている。また、昇降ベース41には図示しない下段アーム駆動用のサーボモータが設けられ、この下段アーム用モータの出力軸に設けられた出力プーリと、下段アーム42の上記軸部に設けられた従動プーリとの間にベルトが掛け回されている。かかる構成により、上記下段アーム用モータが駆動すると、下段アーム42は、垂直軸O1周りに回動させられる。このようにして、下段アーム42を垂直軸O1周りに回動させる下段アーム駆動機構が構成される。なお、本実施形態では、垂直軸O1は、固定ベース40の中心に対して所定の距離L1だけ偏倚した位置に設定される。
【0028】
上段アーム43は、たとえば中空状の略四角柱形状とされており、長手方向が水平となる姿勢で下段アーム42に支持されている。たとえば、上段アーム43の基端43aには、図示しない垂直下向きの軸部が設けられており、当該軸部が下段アーム42の先端上部に形成された孔に嵌挿された状態で垂直軸O2周りに回動可能に支持されている。また、昇降ベース41には図示しない上段アーム駆動用のサーボモータ(上段アーム用モータ)が設けられ、下段アーム42の軸部に対して相対回転可能に上段アーム用中継軸が設けられている。そして、上段アーム用モータの出力軸に設けられた出力プーリと上段アーム用中継軸の下端に設けられた下位中継プーリとの間、および上段アーム用中継軸の上端に設けられた上位中継プーリと上段アーム43の上記軸部に設けられた従動プーリとの間、にそれぞれベルトが掛け回されている。かかる構成により、上段アーム用モータが駆動すると、上段アーム43は、垂直軸O2周りに回動させられる。このようにして、上段アーム43を垂直軸O2周りに回動させる上段アーム駆動機構が構成される。
【0029】
ハンド44は、先端部が二股のフォーク状とされており、中心線が水平となる姿勢で上段アーム43に支持されている。ハンド44には、たとえばウエハなどの所定サイズの円形のワークWを載置保持するための部分円状の凹段部44bが形成されている。たとえば、ハンド44の基端44aには、図示しない垂直下向きの軸部が設けられており、当該軸部が上段アーム43の先端上部に形成された孔に嵌挿された状態で垂直軸O3周りに回動可能に支持されている。また、昇降ベース41には図示しないハンド駆動用のサーボモータ(ハンド用モータ)が設けられ、下段アーム42の軸部に対して相対回転可能に第1中継軸が設けられ、上段アーム43の軸部に対して相対回転可能に第2中継軸が設けられている。そして、ハンド用モータの出力軸に設けられた出力プーリと第1中継軸の下端に設けられた下位第1中継プーリとの間、第1中継軸の上端に設けられた上位第1中継プーリと第2中継軸の下端に設けられた下位第2中継プーリとの間、および第2中継軸の上端に設けられた上位第2中継プーリとハンド44の上記軸部に設けられた従動プーリとの間、にそれぞれベルトが掛け回されている。かかる構成により、ハンド用モータが駆動すると、ハンド44は、垂直軸O3周りに回動させられる。このようにして、ハンド44を垂直軸O3周りに回動させるハンド駆動機構が構成される。
【0030】
昇降ベース41、アーム42,43、およびハンド44の支持構造、ならびに昇降機構、各アーム駆動機構、およびハンド駆動機構については、詳細な図示説明は省略したが、たとえば特開2003−188231号公報記載の構造と同様の構造によって実現することができる。なお、各アーム駆動機構、およびハンド駆動機構の一例として、昇降ベース41にそれぞれの駆動用モータを設け、プーリ、中継軸、およびベルトの連係によりアーム42,43、およびハンド44が回動させられる場合について説明したが、これに代えて、アーム42,43、およびハンド44の軸部に駆動用モータの出力軸を直接つなげてもよい。
【0031】
なお、固定ベース40と昇降ベース41との間、昇降ベース41と下段アーム42との間、下段アーム42と上段アーム43との間、および上段アーム43とハンド44との間には、それぞれ、必要に応じて図示しないシール部材が介装される。これにより、搬送用ロボット4の内部空間は外部に対して気密シールされ、たとえば搬送用ロボット4内部のパーティクルが搬送室2へ拡散することは防止される。
【0032】
図1に表れているように、上記構成の2台の搬送用ロボット4は、ワーク搬送時に相互の干渉を防止しうる程度に離間させられ、たとえばワーク収納室1の配列方向X1−X2における中央位置から互いに同じ距離の位置に配置されている。ここで、「同じ距離」とは、設計上において、上記中央位置から図中右側の搬送用ロボット4Aまでの距離と、上記中央位置から図中左側の搬送用ロボット4Bまでの距離とを等しくしておくことを意味する。本実施形態では、搬送用ロボット4A,4Bは、ワーク処理室3に正対する位置から上記配列方向X1−X2において偏倚して位置し、かつ搬送室2のうちワーク処理室3に面した側壁2aに近接して位置する。また、2台の搬送用ロボット4A,4Bは、左右のワーク収納室1A,1Cに正対する位置よりも上記配列方向X1−X2の中央寄りに配置されている。
【0033】
また、詳細な図示説明は省略するが、搬送用ロボット4は、たとえば精密な位置調整が可能な治具を介して搬送室2に固定される。搬送室2に対する搬送用ロボット4の固定については、たとえば、てこの原理を利用するなどのボルト締結以外の手法を採用することができる。
【0034】
固定ベース40の下部側面には、上記各モータに対する給電や制御信号の伝送を行うためのコネクタ(図示略)が設けられている。
【0035】
図3は、搬送用ロボットの制御系の概略構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、2台の搬送用ロボット4A,4Bは、コントローラ5に接続されている。コントローラ5は、メイン制御部50と、搬送用ロボット4A,4Bにそれぞれ設けられたサーボモータを制御するサーボ制御部51A,51Bとを有している。
【0036】
メイン制御部50には、たとえば、ロボットの制御プログラム等を実行し演算処理を行うCPU、各種プログラムや設定データ等を格納したROM、データ等の一時的な記憶に用いられるRAM等が組み込まれており、これらがバスラインを介して接続されている。また、メイン制御部50には、搬送用ロボット4A,4Bに対するティーチング作業や手動操作(原点調整や手動入力操作)を行うためのティーチングペンダント52が接続されている。
【0037】
メイン制御部50には、サーボ制御部51A,51Bが接続されており、サーボ制御部51A,51Bは、搬送用ロボット4A,4Bに接続されている。サーボ制御部51A,51Bは、搬送用ロボット4A,4Bにそれぞれ設けられたサーボモータの駆動制御を行うとともにサーボモータの各軸の位置情報をエンコーダからのフィードバック信号として受ける。また、メイン制御部50は、搬送用ロボット4A,4Bとの電気的接続状態を検出しており、たとえば搬送用ロボット4A,4Bのいずれかとの電気的接続が断たれると、接続異常を検出する。なお、サーボ制御部51A,51Bには電源装置53が接続されており、電源装置53からの駆動電流は、サーボ制御部51A,51Bを介して搬送用ロボット4A,4Bのサーボモータへ供給される。
【0038】
電源装置53とサーボ制御部51A,51Bとの間には、スイッチ装置54が設けられている。スイッチ装置54は、メイン制御部50に接続されている。メイン制御部50は、たとえば、搬送用ロボット4A,4Bのいずれかから、サーボモータの駆動状態について、あらかじめ設定された適正範囲を超えた信号を受けると、当該搬送用ロボットが故障であると判定し、電源装置53から当該搬送用ロボットへの通電を遮断するようにスイッチ装置54を制御する。また、メイン制御部50は、いずれかの搬送用ロボットの故障を検出すると、当該搬送用ロボットとの電気的接続状態の検出を無効にする。このように、本実施形態では、コントローラ5(メイン制御部50)は、2台の搬送用ロボット4A,4Bの駆動を統括的に制御している。
【0039】
上記構成の搬送用ロボット4においては、上記した下段アーム用モータ、上段アーム用モータ、およびハンド用モータをそれぞれ独立して駆動制御することが可能であり、下段アーム42、上段アーム43、およびハンド44を垂直軸O1,O2,O3周りに回動させることができる。したがって、下段アーム42、上段アーム43、およびハンド44のそれぞれの回動を適宜制御することにより、これらが垂直軸O1,O2,O3周りに回動し得る範囲でハンド44を所望の位置に移動させることができる。また、上記した昇降用モータを一方向に回転させることにより、昇降ベース41を上昇させることができ、昇降用モータを他方向に回転させることにより、昇降ベース41を下降させることができる。これにより、ハンド44を所定範囲内で所望の高さに上下移動させることができる。
【0040】
本実施形態においては、2台の搬送用ロボット4A,4Bのうち、
図1における右側の搬送用ロボット4Aは、右側と中央の2つのワーク収納室1A,1Bに対してワークWの搬出入を行い、左側の搬送用ロボット4Bは、左側と中央の2つのワーク収納室1C,1Bに対してワークWの搬出入を行う。
【0041】
図4〜
図8は、右側の搬送用ロボット4Aについて、ワーク収納室1A,1Bおよびワーク処理室3に対してワークWを搬出入するときの状態変化を示す。
図4は、ハンド44がワーク収納室1Aの前に位置する状態である。
【0042】
図5は、ハンド44がワーク収納室1A内に進入して、ワークWの受け渡しを行う状態を示す。ハンド44は、
図4に示す状態から
図5に示す状態まで、略同じ姿勢を維持したまま略直線状に移動させられる。
【0043】
図6は、ハンド44がワーク処理室3の前に位置する状態である。ハンド44は、
図4に示す状態から
図6に示す状態まで、平面視において時計回りに約90°回動する姿勢変更をともないつつ移動させられる。
【0044】
図7は、ハンド44がワーク処理室3内に進入して、ワークWの受け渡しを行う状態を示す。ハンド44は、
図6に示す状態から
図7に示す状態まで、時計回りに90°回動する姿勢変更をともないつつ略直線状に移動させられる。ここで、搬送用ロボット4Aは、ワーク処理室3に正対する位置から配列方向X1−X2に偏倚した位置に配置されている。このため、搬送用ロボット4Aを搬送室2のうちワーク処理室3に面した側壁2aに近接させても、搬送用ロボット4Aと側壁2aとは干渉しない。
【0045】
図8は、ハンド44がワーク収納室1B内に進入して、ワークWの受け渡しを行う状態を示す。ハンド44は、
図6に示す状態から
図8に示す状態まで、反時計回りに90°回動する姿勢変更をともないつつ略直線状に移動させられる。
【0046】
なお、ワーク収納室1A,1Bおよびワーク処理室3内でのワークWの受け渡しは、昇降ベース41を適宜昇降させ、ハンド44を上下動させることにより行う。
【0047】
本実施形態では、下段アーム42、上段アーム43、およびハンド44がそれぞれ独立して回動可能であるため、
図4〜
図8を参照して上述したように、ハンド44に多様な動作を行わせることができる。
【0048】
次に、ワーク搬送システムA1において、2台の搬送用ロボット4A,4BによりワークWを搬送する際の搬送用ロボット4A,4Bの動作手順の一例について、
図9および
図10を参照して説明する。
【0049】
図9および
図10に示す例では、右側と左側のワーク収納室1A,1Cは、処理前のワークWを収納するためのものであり、ワーク収納室1A,1C内のワークWが1枚ずつワーク処理室3へ搬送される。中央のワーク収納室1Bは、処理済のワークWを収納するためのものであり、ワーク処理室3にて処理されたワークWがワーク収納室1Bへ搬送される。
【0050】
図9(a)では、右側の搬送用ロボット4Aによりワーク処理室3内の処理済みのワークWが受け取られ、左側の搬送用ロボット4Bにより左側のワーク収納室1C内の処理前のワークWが受け取られる。
【0051】
図9(b)では、右側の搬送用ロボット4Aによりワーク処理室3から処理済のワークWが搬出され、左側の搬送用ロボット4Bによりワーク収納室1Cから処理前のワークWが搬出される。
【0052】
図9(c)では、右側の搬送用ロボット4Aにより処理済のワークWが中央のワーク収納室1Bに搬入され、左側の搬送用ロボット4Bにより処理前のワークWがワーク処理室3の前に移動させられる。ここで、搬送用ロボット4A,4Bどうしの衝突を防止するために、これらロボット4A,4Bのアーム42,43ないしハンド44の高さが異ならせられている。このような搬送用ロボット4A,4Bの衝突防止は、
図9(d)および
図10(h)、(i)に示すときにもなされる。
【0053】
図9(d)では、右側の搬送用ロボット4Aにおいては、中央のワーク収納室1Bからハンド44が退避させられ、左側の搬送用ロボット4BによりワークWがワーク処理室3内に搬入される。
【0054】
図9(e)では、右側の搬送用ロボット4Aにおいては、右側のワーク収納室4Aの前にハンド44が移動させられ、左側の搬送用ロボット4Bにおいては、ワーク処理室3からハンド44が退避させられる。ここで、ワーク処理室3内では、ワークWに対して適宜処理が行われる。
【0055】
詳細な説明は省略するが、
図10(f)〜(j)において、
図9(a)〜(e)に対して左右が入れ替わった動作が行われる。右側の搬送用ロボット4Aについては、
図9(a)〜(e)における左側の搬送用ロボット4Bと同様の動作が行われ、左側の搬送用ロボット4Bについては、
図9(a)〜(e)における右側の搬送用ロボット4Aと同様の動作が行われる。
【0056】
そして、2台の搬送用ロボット4A,4Bについて、
図9(a)〜(e)および
図10(f)〜(j)の動作を繰り返すことにより、右側の搬送用ロボット4Aによるワーク収納室1A,1Bおよびワーク処理室3の間でのワークWの搬送と、左側の搬送用ロボット4Bによるワーク収納室1B,1Cおよびワーク処理室3の間でのワークWの搬送とが、タイミングをずらしつつ並行して行われる。すなわち、搬送用ロボット4A,4Bにより、2系統でのワークWの搬送処理が並行して行われる。
【0057】
なお、本実施形態では、左右のワーク収納室1A,1Cに処理前のワークWを収納し、中央のワーク収納室1Bに処理済のワークWを収納するようにワーク収納室1A,1B,1Cを割り当てたが、ワーク収納室1A,1B,1Cの割り当ては、これに限定されない。また、搬送用ロボット4A,4Bの具体的な動作手順についても、
図9(a)〜(e)および
図10(f)〜(j)を参照して上述したものに限定されない。
【0058】
上記構成のワーク搬送システムA1においては、2台の搬送用ロボット4A,4Bを備え、これら搬送用ロボット4A,4Bにより、ワーク収納室1A,1B,1Cと、ワーク処理室3との間でワークWの搬送を行う。そして、これら搬送ロボット4A,4Bについて、コントローラ5によって互いの衝突を防止するように動作を制御することにより、並行して2系統でのワークWの搬送処理を行うことができる。したがって、本実施形態のワーク搬送システムA1によれば、より高いスループットを実現することができ、本システム全体を効率よく稼働させることができる。
【0059】
また、ワーク搬送システムA1においては、ワークWの搬送が2台の搬送ロボット4(4A,4B)により行われるため、1台あたりの搬送用ロボット4の負荷は、1台のみのロボットを備える場合に比べて小さくなる。したがって、1台のロボットによりワークの搬送を行う場合に比べて、搬送用ロボット4のMTBF(平均故障間隔)が延長する。MTBFの延長は、本システム全体を効率よく稼働させるうえで適している。
【0060】
2台の搬送用ロボット4A,4Bは、ワーク収納室1の配列方向X1−X2における中央位置から同じ距離の位置に配置されている。このため、搬送用ロボット4A,4Bについて左右対称の動作をさせることが可能であり、搬送用ロボット4A,4Bの制御が比較的に容易である。
【0061】
搬送用ロボット4A,4Bは、ワーク処理室3に正対する位置から配列方向X1−X2に偏倚した位置に配置されている。このため、搬送室2の側壁2aに対する搬送用ロボット4A,4Bの干渉を防止しつつ、当該ロボット4A,4Bを側壁2aに近接させることができる。したがって、ワーク収納室91とワーク処理室93とが離間する方向Y1−Y2(
図1参照)の寸法を小さくすることができ、フットプリント(ワーク搬送システムA1の占有床面積)の低減を図ることができる。
【0062】
本実施形態のワーク搬送システムA1においては、2台の搬送用ロボット4A,4Bは、1台のコントローラ5によって統括的に制御されている。このため、2台の搬送用ロボット4A,4Bについての位置情報などを略リアルタイムに把握することができる。したがって、搬送用ロボット4A,4Bによるワーク搬送においては、これらロボット4A,4Bの衝突を回避しつつより近接させることができるので、ワーク搬送経路を短縮することが可能である。ワーク搬送経路の短縮は、本システム全体を効率よく稼働させるうえで適している。
【0063】
また、ワーク搬送システムA1においては、2台の搬送用ロボット4(4A,4B)により2系統のワーク搬送が行われるところ、仮に1台の搬送用ロボット4が部品故障などにより適正に動作しなくなった場合、当該故障した搬送用ロボット4への通電が遮断されるため、当該故障した搬送用ロボット4が暴走して制御不能に陥ることはない。したがって、2台のうち一方の搬送用ロボット4が故障しても、他方の搬送用ロボット4によりワークWの搬送処理を継続することができる。このことは、本システム全体を効率よく稼働するのに資する。
【0064】
さらに、ワーク搬送システムA1においては、いずれかの搬送用ロボット4の故障が検出されると、当該ロボット4の電気的接続状態の検出が無効化される。これにより、2台のうち一方の搬送用ロボット4が故障しても、他方の搬送用ロボット4によりワークWの搬送処理を継続しつつ、故障した搬送用ロボット4の交換等を行うことができる。このことは、本システム全体を効率よく稼働するのに資する。
【0065】
搬送用ロボット4は、精密な位置調整が可能な状態で搬送室2に固定されているため、ロボットの交換時に、挿げ替える搬送用ロボット4の個体差を考慮したうえで、略同一の位置に固定することができる。したがって、ロボット交換後において再ティーチングを行う必要はない。このことは、ロボット故障時のMTTR(平均修理時間)を短縮するうえで好ましい。MTTRの短縮は、本システム全体を効率よく稼働するのに資する。また、搬送室2に対する搬送用ロボット4の固定について、たとえばてこの原理などを利用したワンアクションによる手法を採用すれば、ボルト締結により固定する場合に比べて、MTTRを短縮することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るワーク搬送システムの各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【0067】
上記実施形態においては、3つのワーク収納室を具備する場合を例に挙げたが、ワーク収納室の数はこれに限定されず
、5つのワーク収納室を具備するワーク搬送システムにも本発明は適用可能である。
【0068】
図11は、4つのワーク収納室1を具備するワーク搬送システムを示す。
図11に示されたワーク搬送システムA2において、右側の搬送用ロボット4Aは、ワーク収納室1の配列方向X1−X2におけるワーク収納室1Aとワーク搬送室1Bとの中間位置に配置され、左側の搬送用ロボット4Bは、ワーク収納室1の配列方向X1−X2におけるワーク収納室1Cとワーク搬送室1Dとの中間位置に配置される。右側の搬送用ロボット4Aは、2つのワーク収納室1A,1Bとワーク処理室3との間でワークWを搬送し、左側の搬送用ロボット4Bは、2つのワーク収納室1C,1Dとワーク処理室3との間でワークWを搬送する。
【0069】
図12は、5つのワーク収納室1を具備するワーク搬送システムを示す。
図12に示されたワーク搬送システムA3において、右側の搬送用ロボット4Aは、右から2番目のワーク収納室1Bに正対する位置に配置され、左側の搬送用ロボット4Bは、左から2番目のワーク収納室1Dに正対する位置に配置される。右側の搬送用ロボット4Aは、3つのワーク収納室1A,1B,1Cとワーク処理室3との間でワークWを搬送し、左側の搬送用ロボット4Bは、3つのワーク収納室1C,1D,1Eとワーク処理室3との間でワークWを搬送する。
【0070】
ワーク搬送システムA2,A3においては、ワーク収納室1の数量、および各搬送用ロボット4A,4Bによりアクセス可能なワーク収納室1の関係が、上記実施形態のワーク搬送システムA1と異なっているが、その他の構成についてはワーク搬送システムA1と同様である。したがって、これらワーク搬送システムA2,A3においても、ワーク搬送システムA1に関して上述したのと同様の利点を享受することができる。