特許第5755846号(P5755846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755846
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】穴吊り治具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/66 20060101AFI20150709BHJP
   B66C 1/62 20060101ALI20150709BHJP
   B66C 1/34 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   B66C1/66 R
   B66C1/62 G
   B66C1/34 P
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-148767(P2010-148767)
(22)【出願日】2010年6月30日
(65)【公開番号】特開2012-12146(P2012-12146A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030328
【氏名又は名称】イーグルクランプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(72)【発明者】
【氏名】川島 利弘
(72)【発明者】
【氏名】津山 信治
(72)【発明者】
【氏名】平田 昇
(72)【発明者】
【氏名】津山 初雄
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−016777(JP,U)
【文献】 実開平01−180488(JP,U)
【文献】 特許第3593056(JP,B2)
【文献】 特開2006−124149(JP,A)
【文献】 特開2005−126205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00 − 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の脚部の間に下向きに開口するワーク挿入口を備えた本体と、本体の一対の脚部間に係脱自在に架け渡される吊ピンとを有して構成され、本体のワーク挿入口にワークの端部を挿入し且つ該ワークの端部を貫通する穴に吊ピンを通した状態で該ワークを吊り上げるように構成された穴吊り治具であって、本体に対して全周回転自在に装着される回転ロッドと、回転ロッドの軸穴を挿通する吊環ボルトを軸として回転自在に装着される吊環とを有し、回転ロッドは、略円柱形状の主部と該主部の下端においてテーパー面を介して拡径されている基部とを有しており、一方、前記本体にはこの回転ロッドの主部を収容する内径空間が本体上面に開口して形成されると共に該内径空間の下端がテーパー面を介して拡径されており、回転ロッドの主部を本体の内径空間に収容した状態においてテーパー面同士が摺接しながら回転ロッドが本体に対して全周回転自在とされていることを特徴とする穴吊り治具。
【請求項2】
前記本体上面に開口する雌ネジ部に略リング状のロッド装着部材が螺着され、このロッド装着部材に前記内径空間およびテーパー面が設けられることを特徴とする請求項1記載の穴吊り治具。
【請求項3】
前記回転ロッドは前記本体に全周回転自在に装着された状態で本体の上方に突出する上端板状部を有し、この上端板状部に前記軸穴が貫通形成されることを特徴とする請求項1または2記載の穴吊り治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付や組立などのためにあらかじめ形成された穴を利用して鋼材などのワークを吊り上げる穴吊り治具(穴吊りクランプ)に関する。
【背景技術】
【0002】
このような穴吊り治具は、たとえば特許文献1,2などに公知であり、一対の脚部の間に下向きに開口するワーク挿入口を備えた本体と、この本体の一対の脚部間に係脱自在に架け渡される吊ピンとから構成され、本体のワーク挿入口にワークの端部を挿入し且つ該ワークの端部を貫通する穴に吊ピンを通した状態で該ワークを吊り上げるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−335494号公報
【特許文献2】特許第3593056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来の穴吊り治具では、本体の上部にクレーンフックを係止するフック係止穴を設けて、縦吊りと横吊りの2方向吊り上げを可能にしているが、いずれにしてもフック係止穴にクレーンフックを係止した状態で本体が左右回転および全周回転可能な構造にはなっていない。このため、従来の穴吊り治具を用いる場合は、クレーンフックからシャックルやカップリングなどを介してスリング材でフック係止穴と連結して作業を行う必要があった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、穴吊り治具に左右回転および全周回転が可能な吊環部を設けて任意の方向に吊り上げ可能とすると共に、シャックルやカップリングなどを介さずにスリング材を直結して使用できるような構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1にかかる本発明は、一対の脚部の間に下向きに開口するワーク挿入口を備えた本体と、本体の一対の脚部間に係脱自在に架け渡される吊ピンとを有して構成され、本体のワーク挿入口にワークの端部を挿入し且つ該ワークの端部を貫通する穴に吊ピンを通した状態で該ワークを吊り上げるように構成された穴吊り治具であって、本体に対して全周回転自在に装着される回転ロッドと、回転ロッドの軸穴を挿通する吊環ボルトを軸として回転自在に装着される吊環とを有し、回転ロッドは、略円柱形状の主部と該主部の下端においてテーパー面を介して拡径されている基部とを有しており、一方、前記本体にはこの回転ロッドの主部を収容する内径空間が本体上面に開口して形成されると共に該内径空間の下端がテーパー面を介して拡径されており、回転ロッドの主部を本体の内径空間に収容した状態においてテーパー面同士が摺接しながら回転ロッドが本体に対して全周回転自在とされていることを特徴とする。
【0007】
(削除)
【0008】
請求項2にかかる本発明は、請求項1記載の穴吊り治具において、前記本体上面に開口する雌ネジ部に略リング状のロッド装着部材が螺着され、このロッド装着部材に前記内径空間およびテーパー面が設けられることを特徴とする。
【0009】
(削除)
【0010】
(削除)
【0011】
請求項3にかかる本発明は、請求項1または2記載の穴吊り治具において、前記回転ロッドは前記本体に全周回転自在に装着された状態で本体の上方に突出する上端板状部を有し、この上端板状部に前記軸穴が貫通形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる本発明によれば、回転ロッドが本体に対して全周回転自在に装着されると共に、この回転ロッドの軸穴を挿通する吊環ボルトを軸として吊環が回転自在に装着されるので、吊環にクレーンフックを係止した状態で本体が左右回転および全周回転可能である。したがって、任意の方向に吊り上げ可能であり、また、シャックルやカップリングなどを介さずにスリング材を直結して使用できる効果がある。
【0013】
また、回転ロッドを本体に対して全周回転自在に装着するための好適な構造が提供される。この構造によれば、ワークを吊り上げたときに、本体と回転ロッドの負荷を本体側のテーパー面(内径空間の下端に形成されるテーパー面)で受けることになる。
【0014】
請求項2にかかる本発明によれば、上記構造におけるより具体的な形態が提供される。この形態によれば、回転ロッドを装着した状態のロッド装着部材を本体の雌ネジ部に螺着するので、その組立や部品交換などを容易に行うことができる効果がある。
【0015】
(削除)
【0016】
(削除)
【0017】
請求項3にかかる本発明によれば、吊環を回転ロッドに対して、したがって本体に対して左右回転自在に連結するための好適な構造が提供される。この構造によれば、回転ロッドの上端板状部の軸穴に装着される吊環ボルトを回転軸として、本体の上方において自由に左右回転ないし起伏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による穴吊り治具の正面図である。
図2】この穴吊り治具の側面図である。
図3】この穴吊り治具の斜視図である。
図4】この穴吊り治具において抜き差しピンを本体から引き抜くときの操作状態を示す正面図である。
図5図4の状態後に抜き差しピンが本体から引き抜かれた状態を示す正面図である。
図6】この穴吊り治具に用いられる回転ロッドを示す正面図(a)および側面図(b)である。
図7】この穴吊り治具の回転ロッドを回転自在に収容するロッド装着部材を示す平面図(a)および同図中A−A線による断面図(b)である。
図8】この穴吊り治具を用いてワークを吊り上げる状態を示すと共に、この状態において吊環が左右回転自在であることを示す正面図である。
図9】この穴吊り治具を用いてワークを吊り上げる状態を示すと共に、この状態において吊環が全周回転自在であることを示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1図3を参照して実施例1の穴吊り治具10について説明する。この穴吊り治具10は、一対の脚部12a,12bの間に下向きに開口するワーク挿入口13を備えた本体11と、本体11の一対の脚部12a,12b間に係脱自在に架け渡される吊ピン14を有する。ワーク挿入口13は、この穴吊り治具10で吊り上げようとする鋼材などのワークWの厚さより大きな開口幅を有するものとして形成され、したがって該ワークWの端部を挿入可能とされている(図8参照)。また、ワーク挿入口13の深さ(言い換えれば脚部12a,12bの長さ)は該ワークWの端部に厚さ方向に貫通して形成されている穴に吊ピン14が挿入・通過できる深さとされている。
【0021】
吊ピン14の軸15は、本体11の脚部12a,12bの下端近くに形成されたピン挿通穴16a,16bを挿通して脚部12a,12b間に架け渡されるに十分な長さを有し、その基端にはチェーン係止穴17を有する頭部18が固着され、その先端にはストッパ19がスプリングピン20を介して吊ピン軸15に対して回動自在に設けられている。また、吊ピン14の頭部18と脚部12aとの間において軸15の回りにコーンスプリング21が巻装されており、頭部18を脚部12aから引き離す方向に吊ピン14を移動付勢している。
【0022】
吊ピン14は後述するように本体11の脚部12a,12bに対して抜き差し可能であるが、吊チェーン22を介して本体11に連結されているので、抜いたときであっても不意に脱落することなく本体11に付属する。この実施例では、吊チェーン22は、リング23,チェーン止め24および六角穴付きボルト25を介して本体11の脚部12a側の側面に連結されており、その先端がリング26を介して吊ピン頭部18のチェーン係止穴17に係止されている。
【0023】
図1図3は吊ピン14が本体脚部12a,12bのピン挿通穴16a,16bを通って装着されている状態を示している。この状態において、吊ピン14先端のストッパ19は吊ピン軸15に対して下向きに折り曲げられており、コーンスプリング21の付勢力を受けてその側面が脚部12bの外側面に接している。これにより吊ピン14の装着状態が維持され、吊り上げ作業時にはこの状態で使用される。
【0024】
この装着状態から吊ピン14を引き抜くには、コーンスプリング21の付勢力に抗して頭部18を矢印A方向に押し込み、これによって脚部12bの外側面から離れたストッパ19を矢印B方向に回転させて吊ピン軸15と平行にして引き抜けば良い(図4)。このようにして引き抜かれた吊ピン14は本体11の脚部12a,12bから離脱するが、前述のように吊チェーン22などを介して本体11に連結されているので、落下することなく本体11に付属する(図5)。
【0025】
説明するまでもないことであろうが、この状態から吊ピン14を本体脚部12a,12bのピン挿通穴16a,16bに順次通過させていき、コーンスプリング21の付勢力に抗して頭部18を最奥まで押し込んだ状態で先端のストッパ19を吊ピン軸15に対して下向きに折り曲げた状態にした後に頭部18から手を離せば、図1図3に示すような装着状態が得られる。なお、図4および図5では後述の吊環27を図示省略している。
【0026】
本体11の上方には吊環27が左右回転自在且つ全周回転自在に連結されている。以下、この吊環連結構造について、図1図3と共に図6図7を併せて参照して詳述する。
【0027】
本体11には上面開口の雌ネジ部28が形成され、この雌ネジ部28にロッド装着部材29の雄ネジ30を螺合させることによってロッド装着部材29が本体11に固定されている。図7に示されるように、ロッド装着部材29は略円柱形状に形成され、その上面には溝31,31が対向する2箇所に径方向に整列して延長するように形成されていて、これら溝31,31に適当な治具(図示せず)を当ててロッド装着部材29を本体11の雌ネジ部28に螺着固定する。符号32は、このようにして本体11に固定されたロッド装着部材29を抜け止めするための六角穴付止めネジである。ロッド装着部材29の内径空間33は下端部において徐々に拡径するテーパー面34を有している。
【0028】
本体11の雌ネジ部28に螺着固定されたロッド装着部材29に対して、回転ロッド35が全周回転自在に装着されている。図6に示されるように、回転ロッド35は、ロッド装着部材29の内径空間33と略同径または若干小径である円柱形状の主部36と、主部36の下端においてテーパー面37を介して徐々に拡径されている基部38と、主部36の上方に連続する上端板状部40とを有する。回転ロッド35は、ロッド装着部材29の内径空間33に下から挿入することにより、主部36が内径空間33に収容されると共にテーパー面34,37同士が接することとなって、ロッド装着部材29に組み付けられる。ロッド装着部材29は、上記のように回転ロッド35を組み付けた状態で、本体11の雌ネジ部28に螺着固定されているので、テーパー面34,37同士が摺接面となって、回転ロッド35はロッド装着部材29に対して(したがって本体11に対して)全周回転自在である。
【0029】
本体11の雌ネジ部28に螺着固定されたロッド装着部材29に対して回転ロッド35が上記のように全周回転自在に装着された状態において、回転ロッド35の上端板状部40は本体11の上方に突出しており(図1図3参照)、その軸穴39および吊環27の下端二股部における軸穴(符号なし)に吊環ボルト41を通して先端にナット42およびスプリングピン43を設けることによって、吊環27が左右回転自在に連結される。
【0030】
以上の構成により、吊環27は本体11に対して左右回転自在且つ全周回転自在である。ここで左右回転自在とは、吊環27が吊環ボルト41を回転軸として本体11の上方で約180度の角度範囲に亘って自由に回転することを意味し、言い換えれば略水平状態(図1仮想線状態)と略垂立状態(図1実線状態)との間で自由に起伏することを意味する(図1参照)。また、全周回転自在とは、回転ロッド35が本体11に対してその軸芯(垂直軸)を中心として両方向360度自由に回転することを意味する(図2参照)。この実施形態では、本体11と回転ロッド35の負荷をロッド装着部材29のテーパー面34で受けている。
【0031】
この穴吊り治具10を用いて鋼材などのワークWを吊り上げるときの状態図が図8および図9に示されている。取付用や組立用の穴(図示せず)があらかじめ端部に設けられている鋼材などのワークWを吊り上げるに際して、該端部を本体11のワーク挿入口13に挿入した状態において、吊ピン14を脚部12aのピン挿通穴16a、ワークWの穴および脚部12bのピン挿通穴16bに順次に通した後にストッパ19を折り曲げて抜け止め装着し、この状態で、クレーンからのスリング材をフック(いずれも図示せず)などを介して吊環27に係止して、ワークWを吊り上げる。このとき、前述のように、吊環27は左右回転自在(図8参照)且つ全周回転自在(図9参照)に本体11に連結されているので、シャックルやカップリングなどを用いる必要なしに、円滑に吊り作業を行うことができる。
【0032】
(削除)
【0033】
(削除)
【0034】
(削除)
【0035】
(削除)
【0036】
(削除)
【符号の説明】
【0037】
10 穴吊り治具(実施例1)
11 本体
12a,12b 脚部
13 ワーク挿入口
14 吊ピン
15 軸
16a,16b ピン挿通穴
17 チェーン係止穴
18 頭部
19 ストッパ
20 スプリングピン
21 コーンスプリング
22 吊チェーン
23 リング
24 チェーン止め
25 六角穴付ボルト
26 リング
27 吊環
28 雌ネジ部
29 ロッド装着部材
30 雄ネジ
31 溝
32 止めネジ
33 内径空間
34 テーパーメン
35 回転ロッド
36 主部
37 テーパー面
38 基部
39 軸穴
40 上端板状部
41 吊環ボルト
42 ナット
43 スプリングピン
W 端部に穴を有するワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9