(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1〜
図14を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光コネクタ100の全体構成を示す斜視図であり、
図2は、この光コネクタ100に光ファイバ200を組み付けてなるケーブル付き光コネクタの製造方法の一手順を示す図である。なお、以下では、便宜上、図示のように前後左右方向および上下方向を定義し、この定義にしたがい各部の構成を説明するが、方向はこれに限定されない。
【0011】
図1に示すように、光コネクタ100は、前後方向および左右方向に延在する平面視略L字形状の本体1と、本体1の後端部に回動可能に取り付けられたケーブル保持具2とを有する。本体1の前端面には略円筒形状のフェルール3が前方に突設されている。フェルール3の中央の貫通孔3aには、
図2に示す光ファイバ200の先端の光ファイバ素線201が挿通され、光コネクタ100に光ファイバ200が一体に組み付けられる。この光ファイバ200の組付作業は、光ファイバ100の架設作業現場等で行う。
【0012】
現場で光ファイバ200の組付作業を行う場合、まず、
図2に示すように本体1の前端部に治具300を取り付ける。次いで、ケーブル保持具2を介して後方から本体1内に光ファイバ素線201を挿入する。または、ケーブル保持具2を介して後方から本体1内に光ファイバ素線201を挿入後、本体1の前端部に治具300を取り付ける。挿入された光ファイバ素線201は、本体1のフェルール3を貫通して治具300に当接し、これにより後述するようにフェルール3の前端面からの光ファイバ素線201の突出量が規定される。この際、作業員は、光ファイバ素線201の撓み量を外部から目視することで、光ファイバ素線201の先端が治具300に当接しているか否か、すなわち光ファイバ素線201の先端がフェルール3の前端面から所定量だけ突出しているか否かを判断する。
【0013】
なお、本明細書において、光ファイバ素線201とは、コアとその周囲を覆うクラッドとを有する光ファイバ200をいい、光ファイバ200のクラッドの外面に軟質の被覆を施したものを光ファイバ心線202という。また、単心または多心の光ファイバ心線を抗張力体とともにシース(一般に樹脂外被)に内蔵したもの光ファイバケーブル203といい、これには広義で光ファイバコードも含む。
【0014】
図2では、光ファイバケーブル203の先端部に外被把持部材204が取り付けられ、外被把持部材204の先端から所定長さの光ファイバ心線202が突出し、さらに光ファイバ心線202の先端から所定長さの光ファイバ素線201が突出している。外被把持部材204の上下面には、ケーブル保持具2のガイド部24(
図9)に嵌合するスリット溝205が長手方向に形成され、光ファイバ素線201はケーブル保持具2にガイドされながら本体1に挿入される。なお、光ファイバケーブル203への外被把持部材204の取付および光ファイバケーブル203の被覆の除去は不図示の治具を用いて作業現場で行うことができるが、この点についての詳細な説明は省略する。外被把持部材204から突出された光ファイバ素線201の長さは、治具を用いて所定長さに設定されている。
【0015】
図3は、光コネクタ100に光ファイバ200を組み付つけてなるケーブル付き光コネクタ400の斜視図である。なお、
図3では、光コネクタ100から治具300を取り外したコネクタ使用状態を示している。このコネクタ使用状態においては、
図1の状態からケーブル保持具2が右方に回転されて本体1の内側に格納され、光ファイバケーブル203がフェルール11に対して直交する方向に延びる、いわゆるL字型光コネクタとして用いることができる。以下では、
図1に示すケーブル保持具2の位置を作業位置、
図3に示すケーブル保持具2の位置を使用位置と称する。
【0016】
図4は、ケーブル付き光コネクタ400をアダプタ500に嵌合した状態を示す斜視図である。アダプタ500は、その前後両端部にそれぞれ光コネクタが嵌合される被嵌合部501,502を有し、アダプタ500の内部には、被嵌合部501と被嵌合部502との間に、前後方向に沿って割スリーブ(不図示)が設置されている。被嵌合部501にケーブル付き光コネクタ400が嵌合され、被嵌合部502に他の光コネクタが嵌合されることで、アダプタ500を介して一対の光ファイバ200を接続できる。
【0017】
以下、光コネクタ100の構成をより詳細に説明する。
図1において、光コネクタ100の本体1は、前後方向および左右方向に延びる平面視略L字形状のハウジング10と、ハウジング10の前端面から突設されたフェルール3と、フェルール3を貫通した光ファイバ素線201をハウジング10内で固定する固定部20とを有する。
【0018】
図5(a),(b)は、それぞれハウジング10の斜視図であり、
図6は、
図3のケーブル付き光コネクタ400の水平方向断面図である。ハウジング10は、樹脂を構成材とした一体成形品であり、
図5(a),(b)に示すように治具300やアダプタ500が嵌合される前側の嵌合部11と、ケーブル保持具2を収容する後側の収容部12とを有する。嵌合部11の上面には、略矩形状の凹部13が設けられ、凹部13の周囲に前壁部111、後壁部112および左右一対の側壁部113,114が形成されている。これら前壁部111、後壁部112および側壁部113,114の上下端面は、平坦な嵌合面を構成する。なお、図示は省略するが、凹部13の底面には前後方向に細長の左右一対の貫通孔が開口され、貫通孔には後述するホルダー31の脚部33(
図7)が嵌入される。
【0019】
図6に示すように、ハウジング10の前壁部111の前端面には所定深さの溝部14が形成され、溝部14の中央に前後方向に貫通孔14aが開口されている。溝部14には、
図5(a)に示すように前方から略円柱形状のフェルール3が嵌合され、接着剤によりハウジング10に一体にフェルール3が固定される。フェルール3の中心部には、光ファイバ素線201が貫通する貫通孔3aが開口され、フェルール3の後端面には、貫通孔3aに連通してテーパ状の案内面3bが形成されている。フェルール3は、セラミックや樹脂等により構成することができる。
【0020】
後壁部112の前面には、台形状の切欠き115が上下方向にわたって設けられ、各側壁部113,114の内側面には、それぞれ略矩形のガイド部116が突設されている。
図6に示すように、後壁部112の前面および後面には、フェルール3と同軸上にそれぞれ円柱部117,118が突設されている。前側の円柱部117は後側の円柱部118よりも小径で、かつ、切欠き115の幅よりも小径である。後壁部112には、円柱部118の後端面から円柱部117の前端面にかけてフェルール3の貫通孔3aと同軸上に貫通孔112aが開口されている。貫通孔112aの径は、後方から前方にかけて徐々に小さくなっており、貫通孔112aの周面にテーパ状の案内面が形成されている。とくに、
図6では、案内面が直線的ではなく、凸状に湾曲して形成されている。
【0021】
側壁部113,114の後端部の左右外側面には、略L字形状の一対のアーム15が支持され、アーム15は前方に延設されている。アーム15の先端部には、治具300やアダプタ500の係合溝に係合する爪部151が設けられ、爪部151の後方のアーム15の左右外側面には、左右外側に向けて把持部152が突設されている。把持部152に圧縮力が付加されると、アーム15の弾性変形により爪部151が内側に変位し、治具300やアダプタ500との係合を解除することができる。
【0022】
図5(a),(b)に示すように、ハウジング10の収容部12は、後面および右面が開放された略ボックス形状をなしている。収容部12の内部にはケーブル保持具2を収容するための収容空間120が設けられ、収容空間120の周囲に上壁部121、底壁部122、左側壁部123、前壁部124が形成されている。上壁部121及び底壁部122は、それぞれ嵌合部11の後壁部112に連設されている。上壁部121の上端面および底壁部122の下端面は、それぞれ嵌合部11の上下端面(嵌合面)よりも上方および下方にて水平方向に延在し、嵌合面に対し段差を生じている。左側壁部123は、嵌合部11の左側壁部113に連設され、その高さ方向中央部に、後端面から後壁部112にかけて長孔状の切り欠き16が設けられている。前壁部124は、嵌合部11の右方において、上壁部121の前縁と底壁部122の前縁とを接続している。
【0023】
上壁部121および底壁部122には、フェルール3の軸線のやや右方に、ケーブル保持具2を回動可能に支持する支持孔17が上下方向同軸上に開口されている。上壁部121および底壁部122の左後端部には、ケーブル保持具2を作業位置(
図2)に保持するための貫通孔18が上下方向同軸上に開口され、右後端部には、ケーブル保持具2を使用位置(
図3)に保持するための貫通孔19が上下方向同軸上に開口されている。貫通孔18は円形であるのに対し、貫通孔19は貫通孔18よりも開口面積が大きな矩形状をなし、これにより作業位置では使用位置よりも弱い力でケーブル保持具2を保持可能である。
【0024】
図1において、固定部20は、ハウジング10の凹部13に上方から収容されるホルダー組立体30と、ホルダー組立体30の上方から収容されるキャップ40とを有する。
図7は、ホルダー組立体30の分解斜視図である。ホルダー組立体30は、樹脂等を構成材とした一体成形品であるホルダー31と、ホルダー31に内蔵されるエレメント35とを有する。ホルダー31は、略矩形状の基部32と、基部32の底面から下方に延在する断面略コ字状の左右一対の脚部33と、左右の脚部33の内側面に固設され、前後方向に延在するエレメント支持部34とを有し、全体が左右対称形状をなしている。
【0025】
ホルダー31の基部32の左右両端部は、脚部33よりも外側に突出し、基部32の外形形状はハウジング10の凹部13の外形形状と等しい。基部32および脚部33の後面には、ハウジング10の切欠き115に対応した突起部311が形成されている。脚部33の左右外側面には、前後方向に離間して一対の突起部312が設けられ、突起部312の内側にハウジング10のガイド部116が挿入される。基部32の中央には略矩形状の開口部310が設けられ、エレメント支持部34の上方は開口部310を介して開放されている。エレメント支持部34の上面には、前端面から後端面にかけて溝313が設けられている。
【0026】
エレメント35は、予め所定形状に加工された銅やアルミニウム等の薄板の金属を、前後方向に延在する折り曲げ部36を支点にして、左右対称形状となるようにV字状に折り曲げて形成される。エレメント35は、中心軸線の左右両側に配置される一対の翼部37を有し、各翼部37の基端部内側面に、互いに対向するように断面略半円状の溝部38が前後方向に延説され、溝部38に後述するように光ファイバ素線201が挿入される。溝部38への光ファイバ素線201の挿入を容易とするため、溝部38の断面積は前方にかけて徐々に小さくされている。エレメント35の折り曲げ部36は後方からホルダー31の溝部313に沿って挿入され、左右の脚部33の内側でエレメント35が支持され、ホルダー組立体30が構成される。
【0027】
図8は、キャップ40の斜視図である。キャップ40は、樹脂を構成材とした一体成形品であり略矩形状の基部41と、基部41の左右縁部よりも内側にて基部41の底面から突設された左右一対の脚部42とを有し、全体が左右対称形状をなしている。左右の脚部42の内側面にはそれぞれテーパ部43が設けられ、テーパ部43により左右の脚部42の内側の間隔が徐々に狭くなっている。
図1に示すようにホルダー組立体30の開口部310を介して上方からキャップ40を嵌入すると、エレメント35の翼部37の左右両側に脚部42が押し込まれる。なお、
図1の状態は、キャップ40が完全に嵌入されていない半嵌入状態であり、エレメント35の翼部37は開放されている。この状態からキャップ40を完全に嵌入することで、テーパ部43を介してエレメント35の翼部37に圧接力が付加されて翼部37が閉じられ、エレメント35の内部で光ファイバ素線201を固定することができる。
【0028】
図9は、ケーブル保持具2の斜視図である。ケーブル保持具2は、互いに対向する略矩形状の上板部21および下板部22と、上板部21と下板部22の一縁部を接続する側板部23とを有し、上下対称形状をなしている。上板部21および下板部22の内側面には長手方向にレール状のガイド部24が設けられ、上板部21および下板部22の内側面の長手方向端部には突起部25が設けられている。光ファイバ200の外被把持部材204(
図2)は、その先端部が突起部25に当接するまで、ガイド部24に沿ってケーブル保持具2内にスライドして挿入される。
図6に示すようにケーブル保持具2の側板部23には略コ字状にスリット穴が設けられ、スリット穴の内側に可撓性を有する薄板状の板部26が形成されている。板部26の先端部には係合爪部261が設けられ、係合爪部261が外被把持部材204の係合溝206に係合し、外被把持部材204がケーブル保持具2に保持される。
【0029】
図9に示すようにケーブル保持具2の上板部21の上面および下板部22の下面には、側板部23側の角部近傍に、それぞれハウジング10の支持孔17に対応した形状の軸部27が突設されている。さらに上板部21の上面および下板部22の下面には、ハウジング10の貫通孔18,19の形状および位置に対応してそれぞれ突起部28,29が突設されている。上板部21と下板部22の軸部27側の角部210は、ケーブル保持具2がハウジング10と干渉することなく回動するように円弧状に形成されている。
【0030】
ケーブル保持具2は、
図1に示すようにハウジング10の収容部12の内側に挿入され、上下の支持孔17にそれぞれ軸部27が嵌合されて、ハウジング10に回動可能に支持される。
図1の状態では、ケーブル保持具2の突起部28がハウジング10の貫通孔18に嵌合し、ケーブル保持具2が作業位置に位置決めされている。この作業位置では、
図13に示すようにケーブル保持具2による外被把持部材204の案内方向(ガイド部24の方向)、すなわち光ファイバ素線201の挿入時における光ファイバケーブル203の軸線L1が、フェルール3の軸線L0に対して右方に所定角度θ1(例えば15°程度)だけ傾斜している。一方、使用位置では、ケーブル保持具2の突起部29がハウジング10の貫通孔19に嵌合し、
図6に示すようにケーブル保持具2は、光ファイバケーブル201の軸線L1がフェルール3の軸線L0に対して右方に所定角度θ2(90度)だけ回動して収容されている。
【0031】
図10は、
図5(b)の矢視X図(後方から見た図)である。
図10に示すように、ハウジング10の上壁部121の下面および底壁部122の上面には、互いに向かい合うようにそれぞれ突起部125が突設されている。
図5(b)に示すように突起部125は、上壁部121および底壁部122の左前端部に設けられている。このため、
図1の状態からケーブル保持具2をさらに左方に回動させると、ケーブル保持具2の縁部が突起部125に当接し、ケーブル保持具2を作業位置に保持することができる。すなわち、本実施の形態では、突起部125によりケーブル保持具2の回動範囲が規制され、作業位置を越えたケーブル保持具2の回動が阻止される。
【0032】
以上のように構成された光コネクタ100に光ファイバ200を組み付けて、
図3のケーブル付き光コネクタ400を製造する手順について説明する。ケーブル付き光コネクタ400を製造する場合、まず、
図2に示すようにハウジング10の前側の嵌合部11に治具300が取り付けられる。
図11(a)は、治具300の斜視図であり、
図11(b)は、治具300の分解斜視図である。治具300は、樹脂を構成材とした一体成形品である治具本体301と、治具本体301に組み込まれる略円柱形状のフェルール302とを有し、全体がほぼ左右対称形状をなしている。
【0033】
図11(b)に示すように、治具本体301は、光コネクタ100が嵌合する被嵌合部310と、
図1のキャップ40に押圧力を付加する押圧部320と、治具300を把持するための左右一対の把持部330と、フェルール302を光コネクタ100のフェルール3と同軸上に支持するフェルール支持部340と、フェルール302に前方への付勢力を付与する付勢部材350とを有する。被嵌合部310は、ハウジング10の嵌合部11に対応した略ボックス形状をなし、後面が開放されている。フェルール支持部340は、フェルール302の周面形状に対応した略円弧状断面の前後方向に延在する溝形状をなし、フェルール支持部340に上方からフェルール302が収容される。
【0034】
図12は、光コネクタ100に光ファイバ200が挿入された状態を示す斜視図である。
図11,
図12に示すように、治具300の被嵌合部310の上壁部311には、左右方向所定幅の切り欠き312が後端面から前方にかけて形成され、左右の側壁部313には、上下方向所定幅の切り欠き314が後端面から前方にかけて形成されている。さらに、左右の側壁部313の外側面には切り欠き314をまたいで縦板部315が設けられ、縦板部315の前方に係合溝316が形成されている。
【0035】
図12に示すように、治具300の被嵌合部310の内側にハウジング10の嵌合部11を挿入すると、切り欠き312に沿ってハウジング上面のキャップ40が前進するとともに、切り欠き314に沿ってハウジング側面のアーム15が前進する。
図13(a)は、
図12の水平方向断面図である。
図13(a)に示すようにアーム先端の爪部151が縦板部315を超えて溝部316に係合すると、治具300がハウジング10に係止される。この状態からアーム15の把持部152に左右内側に圧縮力を付加すると、爪部151の係合が解除され、ハウジング10から治具300を取り外すことができる。
【0036】
図11(b)に示すように、左右の把持部330の下端部内壁面には左右一対のアーム321の一端部が支持されている。アーム321は、上方および後方に略L字状に湾曲して延在し、アーム321の他端部に治具300の押圧部320が取り付けられ、押圧部320は被嵌合部310の上壁部311から離間して略水平姿勢に保持されている。
図12において、押圧部320の上面に押圧力を付与すると、押圧部320はアーム321の弾性変形により下方に変位し、キャップ40を光コネクタ10のハウジング10内に押し込むことができる。
【0037】
図13(a)に示すように付勢部材350は、左右方向に延設されて平面視略J字形状をなし、左側の把持部330の後端部内側面に片持ち支持されている。光コネクタ100に治具300を取り付けると、フェルール3の前端面とフェルール302の後端面とが当接する。この際、付勢部材350の弾性変形によって、フェルール302を介してフェルール3に後方への付勢力が作用し、フェルール3の前端面とフェルール302の後端面は所望の押し付け力によって接触する。
【0038】
図13(b)は、
図13(a)のb部拡大図である。フェルール302の後端面には、光ファイバ素線201の突出長さに対応した所定深さDの溝303が形成されている。このため、
図13(b)に示すようにフェルール3,302同士が当接した状態で、光ファイバ素線201を溝303の底面に当接させると、光ファイバ素線201がフェルール3から所定長さDだけ突出する。この状態で、光ファイバ素線201をハウジング10に固定することで、光ファイバ素線201の突出量を所定値Dに設定できる。
【0039】
この場合、
図13(a)に示すように、ケーブル保持具2はフェルール3の軸線に対して右方に傾斜した作業位置に保持され、光ファイバ素線201はケーブル保持具2からハウジング10の円柱部118にかけて湾曲しており、光ファイバ素線201の先端がフェルール302の後端面(溝303の底面)に当接すると、光ファイバ素線201が左方に撓む。この撓みは、
図12に示すようにハウジング10の左側壁部123の切り欠き16を介して目視可能であり、光ファイバ素線201の先端がフェルール302の端面に当接しているか否かを作業員は容易に判断することができる。
【0040】
これに対し、ケーブル保持具2がフェルール3の軸線上に保持されている場合、光ファイバ素線201はまっすぐにハウジング10内を挿通する。このため、光ファイバ素線201の撓み方向が規定されず、光ファイバ素線201の先端がフェルール302の端面に当接すると、光ファイバ素線201が左方以外(例えば右方)に撓むおそれがある。この場合、光ファイバ素線201がハウジング10の奥方に向けて撓むため、作業員が光ファイバ素線201の撓み状態を目視することは困難となり、光ファイバ素線201の先端がフェルール302の端面に当接しているか否かを判断することができない。
【0041】
本発明の実施の形態に係るケーブル付き光コネクタ400の製造方法をまとめると次のようになる。まず、光コネクタ100の組立手順から説明する。光コネクタ100を組み立てる場合、まず、
図5(a)に示すようにハウジング10の前端面の溝部14にフェルール3を嵌合し、ハウジング10に一体にフェルール3を接着する。次いで、
図7に示すようにホルダー31のエレメント支持部34上面の溝313に沿ってエレメント35を挿入してホルダー組立体30を形成し、ホルダー組立体30をハウジング10の上面の凹部13に収容する。この際、ホルダー組立体30は、凹部13の切欠き115とガイド部116によって位置が規制される。
【0042】
その後、ホルダー31の上面の開口部310にキャップ40を嵌入する。この場合、キャップ40を完全には嵌入せず、エレメント35の翼部37が開放した半嵌入状態とする。最後に、
図1に示すように、ケーブル保持具2をハウジング10の収容部12に挿入して軸部27をハウジング10の支持孔17に嵌合するとともに、ケーブル保持具2を左方に回動させて突起部28を貫通孔18に嵌合し、ケーブル保持具2を作業位置に保持する。以上の光コネクタ100の組立は工場で行うことができる。
【0043】
光ファイバ200の敷設現場では、まず、治具を用いて光ファイバ200の先端部に外被把持部材204を取り付けるとともに、光ファイバケーブル203の被覆を除去し、
図2に示すように所定長さの光ファイバ素線201が突出した光コネクタ組付け用の光ファイバ200を形成する。次いで、光コネクタ100のハウジング10の嵌合部11に治具300を取り付ける。この状態で、ケーブル保持具2のガイド部24に沿って外被把持部材204のスリット溝205をスライドさせながら、ハウジング内に光ファイバ素線201を挿入する。ハウジング内に光ファイバ素線201を挿入した後に、ハウジング10の嵌合部11に治具300を取り付けてもよい。
【0044】
図13に示すようにケーブル保持具2が作業位置にあるとき、光ファイバケーブル203の軸線L1は、ハウジング10の後壁部112のテーパ状貫通孔112aの内周面に交差する。このため、ケーブル保持具2を介してハウジング内に光ファイバ素線201を挿入すると、光ファイバ素線201の先端が貫通孔112aの内周面に当接した後、貫通孔112aに案内されながら前進し、エレメント35の溝部38およびフェルール3を貫通する。このとき光ファイバ素線201および光ファイバ心線202はケーブル保持具2の内側で湾曲する。
【0045】
外被把持部材204がケーブル保持具2に完全に収容されると、光ファイバ素線201の先端が治具内のフェルール302の後端面に当接し、
図12に示すように光ファイバ素線201はフェルール302から反力を受けて左方に撓む。作業員は、この撓み状態を、ハウジング10の左側壁部123の切り欠き16を介して目視し、光ファイバ素線201の先端がフェルール302の端面に当接しているか否かを判断する。光ファイバ素線201の先端がフェルール302に当接していると判断すると、
図12の治具300の押圧部320に押圧力を付加し、キャップ40を最大に押し込む。これによりエレメント35の翼部37に圧接力が作用し、エレメント35の内部に光ファイバ素線201が固定される。
【0046】
その後、ハウジング10の左右の把持部152を把持して光コネクタ100から治具300を取り外し、ケーブル付き光コネクタ400の製造が完了する。ケーブル付き光コネクタ400の使用時には、
図3に示すようにケーブル保持具2を右方に回動させ、ハウジング10の内側の収容空間120(
図5)に収容する。さらに
図4に示すようにハウジング10の嵌合部11にアダプタ500を取り付け、アダプタ500を介して一対の光ファイバ200を接続する。
【0047】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)光コネクタ100の略L字形状の本体1にケーブル保持具2を回動可能に設けるとともに、本体1のハウジング10の内側面から突起部125を突設してケーブル保持具2の作業位置側の回動範囲を規制し、作業位置においてケーブル保持具2がフェルール3の軸線L0から使用位置側に所定角度θ1だけ傾斜して保持されるようにした。これにより光ファイバ素線201の先端を治具300のフェルール302に当接させた際に、光ファイバ素線201はハウジング10の反対側に撓み、作業員は光ファイバ素線201の撓み状態を容易に目視することができる。
【0048】
(2)ハウジング10の嵌合部11の後壁部112に後方に円柱部118を突設するとともに、後壁部112を貫通するテーパ状の貫通孔112aを設け、作業位置における光ファイバ200の挿入方向である軸線L1と貫通孔112aの内周面とが交差するようにした。これにより光ファイバ素線201の先端が貫通孔112aの周面に当接して貫通孔112aに沿って前方に案内され、光ファイバ素線201を固定部20に容易に導くことができる。
(3)光ファイバ素線201を、光コネクタ100の先端部のフェルール3を貫通させて治具300のフェルール302の端面に当接させ、その状態で、キャップ40を押し込んでエレメント35の内部に固定するようにした。このため、ハウジング10に予め所定長さの光ファイバ素線を有するフェルールを内装する必要がなく、光コネクタ100を短小化することができる。また、部品点数が少なく、光コネクタ100の組立も容易である。
【0049】
なお、上記実施の形態では、外部から挿入した光ファイバ素線201をフェルール3から所定量だけ貫通させて光コネクタ100を構成するようにしたが、略L字形状の本体を有するのであれば、光コネクタの構成はこれに限らず、例えば
図14に示すように光コネクタを構成してもよい。
図14は、コネクタ内に予め所定長さの光ファイバ素線601を有するフェルール602を組込み、その光ファイバ素線601と外部から導入される光ファイバ200の光ファイバ素線201とを先端突き合わせ状態で固定してケーブル付き光コネクタ600を構成したものである。固定部620は、上述の光コネクタ100と同様、キャップ640とキャップ640の押込みによって圧接されるエレメント(不図示)とを有し、エレメントの内側で一対の光ファイバ素線201,601が固定される。
【0050】
上記実施の形態では、ケーブル保持具2をハウジング10に回動可能に設けるようにしたが、作業位置において光ファイバケーブル203の先端部(外被把持部材204)がフェルール3の軸線L0に対して所定角度θ1だけ傾斜した方向に保持されるのであれば、ケーブル保持手段の構成はこれに限らない。例えば、ハウジング10の内面に外被把持部材204を案内するガイド部を設け、ガイド部に沿って外被把持部材204を作業位置と使用位置とに移動させるようにしてもよい。ケーブル保持部材としてのケーブル保持具2の構成も上述したものに限らない。突起部125以外の規制手段を設けてケーブル保持具2の回動範囲を規制するようにしてもよい。
【0051】
第1方向(例えば前後方向)に沿って形成された嵌合部11(第1ハウジング部)と、嵌合部11に連なり、第1方向に垂直な第2方向(例えば左右方向)に沿って形成された収容部12(第2ハウジング部)とを有するハウジング10の構成は上述したものに限らない。ハウジング10の後壁部112に円柱部118を突設してテーパ状の貫通孔112aを設けるようにしたが、作業位置における光ファイバ素線201の軸線L1と交差するように貫通孔112aが設けられるのであれば、光ファイバ素線201を固定部20に案内する案内部の構成はこれに限らない。
【0052】
作動部材としてのキャップ40を外部から押込力によりハウジング10の嵌合部11に嵌入し、圧接部材としてのエレメント35により光ファイバ素線201に圧接力を付与するようにしたが、嵌合部11内で光ファイバ素線201の先端部を固定する固定部20の構成はこれに限らない。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の光コネクタに限定されない。