特許第5755890号(P5755890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755890
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】リニアモータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   H02K41/03 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-5695(P2011-5695)
(22)【出願日】2011年1月14日
(65)【公開番号】特開2012-147627(P2012-147627A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】山中 修平
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−110373(JP,A)
【文献】 特開2009−247068(JP,A)
【文献】 実開昭51−007605(JP,U)
【文献】 特開2007−014096(JP,A)
【文献】 特開2006−304399(JP,A)
【文献】 実開昭49−101210(JP,U)
【文献】 特開2001−359269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向にN極及びS極が交互に形成されるマグネット軸と、前記マグネット軸を囲むように前記マグネット軸の軸線方向に配列される複数のコイルを含むコイル列と、及び前記コイル列が収容されるハウジングと、を備え、前記コイル列に電流を流すことによってマグネット軸が前記ハウジング及び前記コイル列に対して軸線方向に相対的に直線運動するリニアモータにおいて、
前記ハウジングは、
前記コイル列の軸線方向に伸びると共に前記コイル列を挟む第一部材及び第二部材と、
前記第一部材及び前記第二部材の軸線方向の両端部に結合されると共に前記マグネット軸が貫通する一対の端部材と、を備え、
前記第一部材は、断面U字形状に形成されると共に、底壁部と、この底壁部から前記第二部材に向かって突出し、互いに対向する一対の側壁部と、を有し、
前記第二部材は、断面U字形状に形成されると共に、底壁部と、この底壁部から前記第一部材に向かって突出し、互いに対向する一対の側壁部と、を有し、
前記コイル列の周囲の少なくとも一部が前記第一部材及び前記第二部材によって囲まれていないリニアモータ。
【請求項2】
前記一対の端部材が前記コイル列を前記軸線方向に挟むことを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記第一部材及び前記第二部材が磁性体の板部材で連結され、
前記板部材が前記第一部材及び前記第二部材によって囲まれていない前記コイル列の周囲の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記ハウジング内に前記コイル列を固定するための充填材が充填され、
前記充填材が前記第一部材及び前記第二部材によって囲まれていない前記コイルの周囲の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記軸線方向から見て、前記第一部材及び前記第二部材が前記コイル列を上下方向に挟むように配置したとき、前記第一部材及び前記第二部材の左右方向の幅寸法が前記コイル列の外径に実質的に等しいか又は前記コイル列の外径以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のリニアモータ。
【請求項6】
軸線方向にN極及びS極が交互に形成されるマグネット軸と、前記マグネット軸を囲むように前記マグネット軸の軸線方向に配列される複数のコイルを含むコイル列と、及び前記コイル列が収容されるハウジングと、を備え、前記コイル列に電流を流すことによってマグネット軸が前記ハウジング及び前記コイル列に対して軸線方向に相対的に直線運動するリニアモータの製造方法において、
前記コイル列の軸線方向に伸びる第一部材及び第二部材によって、前記コイル列の周囲の少なくとも一部を囲まないように前記コイル列を挟む工程と、
前記第一部材及び前記第二部材の軸線方向の両端部にマグネット軸が貫通する一対の端部材を結合する工程と、を備え
前記第一部材は、断面U字形状に形成されると共に、底壁部と、この底壁部から前記第二部材に向かって突出し、互いに対向する一対の側壁部と、を有し、
前記第二部材は、断面U字形状に形成されると共に、底壁部と、この底壁部から前記第一部材に向かって突出し、互いに対向する一対の側壁部と、を有するリニアモータの製造方法。
【請求項7】
前記第一部材及び前記第二部材によって囲まれていない前記コイル列の周囲の少なくとも一部をカバー部材で覆う工程と、
前記第一部材、前記第二部材、前記一対の端部材及び前記カバー部材で囲まれる空間内に流動性のある充填材を充填する工程と、
前記カバー部材を前記第一部材、前記第二部材及び前記一対の端部材から取り外す工程と、を更に備える請求項6に記載のリニアモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル列内に挿入されたマグネット軸がコイルに対して相対的に直線運動するリニアモータ及びリニアモータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のリニアモータとして、軸線方向に複数のコイルを積層し、積層したコイル列の中にロッドを挿入したシリンダ状のリニアモータが知られている。ロッドには軸線方向に交互にN極及びS極が形成される。コイル列は、三つで一組のコイルユニットを軸線方向に複数積層してなる。コイルユニットの三つのコイルにU相、V相、及びW相の120度ずつ位相がずれた三相交流を流すと、コイル列に移動磁界が発生する。コイル列の移動磁界によりロッドが推力を得て、軸線方向に直線運動する(特許文献1参照)。
【0003】
コイル列は筒状のハウジングに収納されるのが一般的である。コイル列を積層するにあたり、コイル列の内周側にはシャフトが通される。シャフトに通したコイル列をハウジング内に収容した後、ハウジング内には流動性のある接着剤が充填される。接着剤によりコイル列はハウジングに固定される。コイル列をハウジングに固定した後、コイル列の内周側のシャフトはコイル列から抜き取られる。
【0004】
コイル列をハウジングに収納する他の方法として、コイル列をコイルホルダで保持した後、コイルホルダと共にコイル列を金型にインサートし、金型内に流動性を持つ樹脂を充填することによってハウジングを製造する技術も提案されている(特許文献2参照)。ハウジングが射出成形されるのと同時にコイル列がハウジングと一体化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0075518号公報
【特許文献2】特開2009−247068号公報(段落0027〜0029参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のリニアモータにあっては、コイル列が筒状のハウジングによって囲まれるので、ハウジングの外径がコイル列の外径よりも大きくなるという問題がある。例えばマグネット軸の軸線を平行にして複数のリニアモータを並べたときなど、リニアモータの幅寸法を少しでも抑えることが要請される。
【0007】
特許文献2に記載のリニアモータにあっては、射出成形によりハウジングを形成するので、リニアモータの幅寸法を抑えることができるという利点がある。しかし、射出成形用の金型を必要とする。他品種のリニアモータを少量製作する場合など、費用面から金型を製作するのは困難な場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、リニアモータの幅寸法を抑えることができる組立て式のリニアモータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、軸線方向にN極及びS極が交互に形成されるマグネット軸と、前記マグネット軸を囲むように前記マグネット軸の軸線方向に配列される複数のコイルを含むコイル列と、及び前記コイル列が収容されるハウジングと、を備え、前記コイル列に電流を流すことによってマグネット軸が前記ハウジング及び前記コイル列に対して軸線方向に相対的に直線運動するリニアモータにおいて、前記ハウジングは、前記コイル列の軸線方向に伸びると共に前記コイル列を挟む第一部材及び第二部材と、前記第一部材及び前記第二部材の軸線方向の両端部に結合されると共に前記マグネット軸が貫通する一対の端部材と、を備え、前記第一部材は、断面U字形状に形成されると共に、底壁部と、この底壁部から前記第二部材に向かって突出し、互いに対向する一対の側壁部と、を有し、前記第二部材は、断面U字形状に形成されると共に、底壁部と、この底壁部から前記第一部材に向かって突出し、互いに対向する一対の側壁部と、を有し、前記コイル列の周囲の少なくとも一部が前記第一部材及び前記第二部材によって囲まれていないリニアモータである。
【0010】
本発明の他の態様は、軸線方向にN極及びS極が交互に形成されるマグネット軸と、前記マグネット軸を囲むように前記マグネット軸の軸線方向に配列される複数のコイルを含むコイル列と、及び前記コイル列が収容されるハウジングと、を備え、前記コイル列に電流を流すことによってマグネット軸が前記ハウジング及び前記コイル列に対して軸線方向に相対的に直線運動するリニアモータの製造方法において、前記コイル列の軸線方向に伸びる第一部材及び第二部材によって、前記コイル列の周囲の少なくとも一部を囲まないように前記コイル列を挟む工程と、前記第一部材及び前記第二部材の軸線方向の両端部にマグネット軸が貫通する一対の端部材を結合する工程と、を備え、前記第一部材は、断面U字形状に形成されると共に、底壁部と、この底壁部から前記第二部材に向かって突出し、互いに対向する一対の側壁部と、を有し、前記第二部材は、断面U字形状に形成されると共に、底壁部と、この底壁部から前記第一部材に向かって突出し、互いに対向する一対の側壁部と、を有するリニアモータの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハウジングの第一部材及び第二部材の幅寸法をコイルの外径に近い寸法まで抑えることができるので、リニアモータの幅寸法を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態におけるリニアモータの斜視図(図(a)はマグネット軸を引き込んだ状態を示し、図(b)はマグネット軸を引き出した状態を示す)
図2】ハウジングの分解斜視図
図3】リニアモータのマグネット軸の軸線に沿った断面図
図4】コイル列及び配線用の基板の斜視図
図5】ハウジングの詳細図(図(a)は平面図を示し、図(b)は側面図を示し、図(c)は断面図を示す)
図6図5VI部詳細図
図7】コイル列をハウジングの第一部材及び第二部材で挟んだ状態を示す断面図
図8】従来のリニアモータと本実施形態のリニアモータの幅寸法の比較図(図(a)は従来のリニアモータを示し、図(b)は本実施形態のリニアモータを示す)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態のリニアモータを詳細に説明する。図1はリニアモータの斜視図を示す。図1(a)はマグネット軸1をハウジング2内に引き込んだ状態を示し、図1(b)はマグネット軸1をハウジング2から引き出した状態を示す。
【0014】
例えば、このリニアモータはマグネット軸1の先端で吸着した電子部品をプリント基板に配置するマウンタに組み込まれる。リニアモータは単独で使用されることもあれば、幅方向に並べてユニットとして使用されることもある。ユニットとして使用される場合、複数のリニアモータはマグネット軸1の軸線が平行になるように並べられる。ユニットの幅寸法をできるだけ小さくするために、各リニアモータの幅寸法の最小化を図っている。複数のリニアモータをユニットとしてマウンタに組み込むことができれば、マグネット軸1の数に比例して処理速度を向上させることができる。
【0015】
図1に示すように、リニアモータにはマグネット軸1の回り止め機構が装備される。ハウジング2及びマグネット軸1によってもリニアモータを構成することができるが、付加的に回り止め機構が設けられている。回り止め機構は、マグネット軸1と一緒に直線運動すると共にマグネット軸1と平行な案内軸6と、案内軸6及びマグネット軸1の先端に取り付けられる連結部材7と、連結部材7が直線運動するのを案内するブッシュ(ブッシュはブッシュ収納部8に収納される)を備える。ハウジング2の一端部にはブラケット9が取り付けられ、ブラケット9にはブッシュ収納部8が取り付けられる。ブッシュ収納部8には案内軸6を案内するブッシュが収納される。案内軸6の先端とマグネット軸1の先端とは連結部材7によって連結される。マグネット軸1は連結部材7に回転不能に結合されている。案内軸6の他端にはマグネット軸1の位置を検出するためのリニアエンコーダ11が取り付けられる。ハウジング2にはリニアエンコーダ11と協働するリードヘッド(図示せず)が取り付けられる。
【0016】
図2はリニアモータのハウジング2の分解斜視図を示す。細長い直方体形状のハウジング2にはマグネット軸1を囲むコイル列3が収容される。コイル列3は3つで一組のコイルユニット3a〜3cを軸線方向に積層したものである。コイルユニット3a〜3cはU相のコイル3a、V相のコイル3b、及びW相のコイル3cを含む。コイル列3は、軸線方向にコイル3a〜3c及びスペーサ12を交互に多数積層してなる。コイル列3の軸線方向の両端部には、コイル列3の軸線方向の長さを調節するための調節スペーサ13が設けられる。コイル列3の端部の調節スペーサ13の軸線方向の厚さはコイル間のスペーサ12の厚さよりも厚い。調節スペーサ13は、コイル列3の軸線方向の長さが一対の端部材23,24間の距離に等しくなるようにコイル列3の長さを調節する。
【0017】
U相のコイル3a、V相のコイル3b、及びW相のコイル3cには120度位相の異なる三相交流が流される。マグネット軸1はコイル列3に発生する移動磁界により推力を得て、コイル列3に対して軸線方向に相対的に直線運動を行う。
【0018】
コイル列3はハウジング2で囲まれている。ハウジング2は、コイル列3の軸線方向に細長く伸びると共にコイル列3を上下方向に挟む第一部材21及び第二部材22と、第一部材21及び第二部材22の軸線方向に結合される一対の端部材23,24と、上下一対の第一部材21及び第二部材22の両側面を連結する一対の板部材26,27と、を備える。第一部材21、第二部材22、一対の端部材23,24、一対の板部材26,27はリニアモータの外形を形成する。
【0019】
第一部材21は、断面U字形状に形成され、底壁部21a(図2の上側)、及び底壁部21aから第二部材22に向かって(下方に)突出すると共に互いに対向する一対の側壁部21bを備える。第二部材22も、断面U字形状に形成され、底壁部22a、及び底壁部22aから第一部材21に向かって(上方に)突出すると共に互いに対向する一対の側壁部22bを備える。第一部材21及び第二部材22でコイル列3を挟んだとき、第一部材21の側壁部21b及び第二部材22の側壁部22bがコイル列3に当接する(図7参照)。第一部材21の側壁部21b及び第二部材22の側壁部22bの先端の断面はコイル列3の外径に合わせた円弧形状に形成される。第一部材21と第二部材22でコイル列3を挟んだとき、コイル列3と第一部材21との間、及びコイル列3と第二部材22との間にはコイル列3の軸線方向に伸びるすきまg1,g2(図7参照)が空く。このすきまg1,g2には、コイル列3に電気的に接続される基板29(図4参照)が挿入される。
【0020】
図2に示すように、第一部材21の長さ方向の両端部には、第一部材21に端部材23,24を結合するためのフランジ21cが形成される。一方のフランジ21cには、基板29のリード線をハウジング2の外側に引き出すための切欠き30が形成される。第二部材22の長さ方向の両端部にも、端部材23,24を結合するためのフランジ22cが形成される。
【0021】
フランジ21c,22cには、端部材を取り付けるためのねじ穴31が形成される。また、フランジ21c,22cには、第一部材21及び第二部材22に対して端部材23,24を位置決めするための位置決め穴32が形成される。第一部材21及び第二部材22の側壁部21b,22bの側面には、板部材26,27を取り付けるためのねじ穴33が形成される。さらに第一部材21には、リニアモータをマウンタ等の相手部品に取り付けるための取付け部として位置決めピン挿入穴36が形成される。第一部材21には、取付け部として位置決めピン挿入穴36の他にもねじ孔、取付け孔等が形成されてもよい。第二部材22にはリードヘッドを取り付けるためのねじ穴39(図5参照)が形成される。
【0022】
第一部材21及び第二部材22の長手方向の端部には、ねじ43等の締結部材を介して端部材23,24が結合される。端部材23,24は上下方向に細長い直方体形状に形成される。端部材23,24にはマグネット軸1が貫通する孔部41が形成される。孔部41にはマグネット軸1を案内するブッシュ(図示せず)が挿入される。このブッシュは端部材23,24に取り付けられるブラケット9(図1参照)によって端部材23,24内に押さえられる。図2に示すように、端部材23,24には締結部材としてのねじ43を通す通し孔44が形成される。端部材23,24には第一部材21及び第二部材22に設けた位置決め穴32に対応する位置決め穴45が形成される。位置決め穴32及び位置決め穴45にピンを通して第一部材21及び第二部材22に端部材23,24を位置決めし、その後、ねじ43を第一部材21及び第二部材22にねじ込むことで、端部材23,24が第一部材21及び第二部材22に結合される。端部材23,24にはブラケット9(図1参照)を取り付けるためのねじ穴47が形成される。
【0023】
コイル列3は第一部材21及び第二部材22によって上下方向に挟まれるので、コイル列3が半径方向に位置決めされる。また、コイル列3は一対の端部材23,24によって軸線方向に挟まれるので、コイル列3が軸線方向に位置決めされる。
【0024】
第一部材21及び第二部材22に対して端部材23,24を位置決めすることで、第一部材21及び第二部材22に挟まれるコイル列3に対して端部材23,24に支持されるマグネット軸1をこれらの中心線が一致するように位置決めすることができる。
【0025】
板部材26,27はコイル列3の軸線方向に細長い板状に形成される。板部材26,27は磁場の中に置くと磁化する鉄等の磁性体からなる。板部材26,27には締結部材としてのねじ51が通る通し孔52が形成される。板部材26,27はねじによって第一部材21及び第二部材22に取り付けられる。板部材26,27は互いに平行である。
【0026】
図3はマグネット軸1の軸線方向に沿った断面図を示す。マグネット軸1は中空のパイプ61、パイプ61内に挿入される多数のマグネット62、及びマグネット62間に介在される複数の磁極ブロック63を備える。複数のマグネット62は軸線方向に着磁され、軸線方向の端部にN極及びS極が形成される。複数のマグネット62はN極同士、S極同士が対向するように配列される。磁極ブロック63は鉄等の磁性体からなる。磁極ブロック63はマグネット軸1に発生する磁界を正弦波に近づける。
【0027】
マグネット軸1は軸線方向に交互にN極及びS極を形成するものであれば、その構造は上述のものに限定されない。例えば、マグネットには半径方向に着磁されたものを用いてもよいし、マグネット62間には磁極ブロック63を設けなくてもよいし、パイプ61の外側にリング状のマグネットを配置してもよい。
【0028】
リニアモータのハウジング2の組立て方法は以下のとおりである。図4に示すように、コイル3a、スペーサ12、コイル3b、スペーサ12…を軸線方向に交互に積層してコイル列3を構成する。コイル3a〜3c及びスペーサ12を積層する間、これらはシャフト66(図5参照)に通される。コイル列3の内径とこのシャフトの外径とは等しい。コイル列3をシャフトに通した後、コイル3a〜3cのリード線64は基板29のスルーホール29aに通される。基板29にはU相のコイル3a同士、V相のコイル3b同士、W相のコイル3c同士を接続するように電極パターンが形成されている。
【0029】
図7はシャフト66に通したコイル列3をハウジング2で囲んだ状態を示す。コイル列3は第一部材21及び第二部材22によって上下方向(コイル列3の半径方向)に挟まれる。第一部材21及び第二部材22の軸線方向の端部に端部材23,24を結合することで、第一部材21及び第二部材22がコイル列3を上下方向に挟んだ状態を維持できるようになる。端部材23,24にはシャフト66が通されるので、コイル列3とマグネット軸1の同軸が確保される。図6に示すように、端部材23,24を第一部材21及び第二部材22に結合すると、端部材23,24がコイル列3の軸線方向の端部に設けた調節スペーサ13に当接し、コイル列3が一対の端部材23,24間に軸線方向に挟まれる。
【0030】
図7に示すように、第一部材21及び第二部材22の幅寸法W1は互いに等しく、これらの幅寸法W1はコイル列3の直径φDに実質的に等しいか又はφD以下である。コイル3a〜3cを絶縁するためにコイル列3の周囲は絶縁テープで巻かれたり、接着剤や樹脂の膜で覆われたりする(接着剤や樹脂の膜でコイル列3を覆う例については後述する)。第一部材21及び第二部材22の幅寸法W1とコイル列3の直径φDとが実質的に等しいとは、幅寸法W1がコイル列3の外径に絶縁テープの厚さや接着剤や樹脂の膜の厚さを加えた寸法と等しいことを意味する。
【0031】
図5を参照しつつハウジング2内に充填材としての接着剤又は樹脂を充填する例を説明する。第一部材21及び第二部材22に端部材23,24を結合すると、図5(b)に示すようにコイル列3の側方からみてコイル列3が枠状のハウジング2で囲まれる。まず、コイル列3のハウジング2から露出した部分が図示しない板状のカバー部材で覆われる。カバー部材は上下一対の第一部材21及び第二部材22の側面に結合される。次に、ハウジング2内に流動性のある接着剤又は樹脂(熱硬化性樹脂)が充填される。接着剤又は樹脂は第一部材21の充填孔68を介してハウジング2内に充填される。
【0032】
図5(b)に示すように、第一部材21の側壁部21bの下端部には、上下方向の高さが異なる突出部71、非突出部72が軸線方向に交互に形成される。第二部材22の側壁部22bの上端部にも、上下方向の高さが異なる突出部73、非突出部74が軸線方向に交互に形成される。第一部材21の突出部71の軸線方向のピッチと第二部材22の突出部73の軸線方向のピッチとは異なっていて、流動性のある接着剤又は樹脂がコイル列3の露出した部分P1に流れ易くなっている。
【0033】
ハウジング2内に充填される接着剤又樹脂はコイル列3と第一部材21との間のすきま、及びコイル列3と第二部材22との間のすきまを埋める。そして、コイル列3の露出した部分P1、P2(図7参照)を覆う。これにより、コイル列3がハウジング2に強固に接着され、またコイル列3の露出した部分P1、P2が絶縁材料である接着剤又は樹脂の膜で覆われる。接着剤又は樹脂をハウジング2内に充填した後、カバー部材はハウジング2から取り外される。その後、シャフト66がコイル列3から抜かれる。
【0034】
図7に示すように、第一部材21及び第二部材22でコイル列3を挟んだとき、コイル列3の周囲の少なくとも一部、この実施形態ではコイル列3の左右の2か所P1,P2は第一部材21及び第二部材22によって囲まれていない。接着剤又は樹脂の膜で覆ってもコイル列は第一部材21及び第二部材22によって囲まれていない。すなわち、コイル列3の左右の2か所P1,P2は第一部材21及び第二部材22から露出している。コイル列3の露出した部分は磁性体の板部材26(図2参照)によって覆われる。板部材26はマグネット軸1の磁界を遮蔽するため、またマグネット軸1の磁界をコイル3a〜3cに鎖交させて推力を向上させるため(すなわち、リニアモータの磁気回路を構成するバックヨークとしての機能を発揮させるため)に設けられる。
【0035】
図8は、コイル列3をインサート成型した従来のリニアモータと本実施形態の組立て式のリニアモータの幅寸法を比較した図である。図中(a)が従来のリニアモータを示し、図中(b)が本実施形態のリニアモータを示す。従来のリニアモータでは、コイル列3をインサート成形することでハウジング2の左右方向の幅寸法W2を小さくしている。しかし、コイル列3の幅方向の左右もハウジング2の樹脂で覆われるので、その幅寸法W2はコイル列3の外径に樹脂の厚さを合算したものになる。
【0036】
これに対して、本実施形態においては、コイル列3は上下に分割された第一部材21及び第二部材22によって上下方向に挟まれ、コイル列3の左右は第一部材21及び第二部材22から露出する。このため、板部材26をハウジング2に取り付けたとしても、その左右方向の幅寸法は従来のリニアモータの幅寸法W2よりも小さいW3となり、リニアモータの左右方向の幅寸法W3をコイル列3の外径近くまで抑えることができる。しかもインサート成型のための金型を使用しない組立て式のリニアモータなので、様々な長さを持つ多品種で少量のリニアモータの製造に適する。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限られることなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変更できる。例えば、ハウジングは第一部材、第二部材、及び一対の端部材によって構成されればよく、その具体的な形状は様々に変更することができる。
【0038】
端部材はマグネット軸が貫通する孔部を有すればよく、端部材にはマグネット軸を案内するブッシュが設けられていなくてもよい。
【0039】
第一部材及び第二部材と端部材との結合はねじ結合の他に接着、溶着等の他の結合手段を採用してもよい。
【0040】
マグネット軸に発生する磁界が周囲に影響を及ぼさないならば、板部材をなくすことも可能である。板部材をハウジングに取り付けるときは、ハウジング内を接着剤や樹脂で充填しなくてもよい。
【0041】
コイル列に対するマグネット軸の直線運動は相対的なものであり、マグネット軸に対してコイル列が直線運動してもよい。
【0042】
第一部第とコイル列との間のすきま、及び/又は第二部材とコイル列との間のすきまはなくてもよい。基板が入ることがないので、特に第二部材とコイル列との間のすきまはなくてもよい。このすきまをなくせば、リニアモータの上下方向(縦方向)の寸法も小さくできる。
【0043】
コイルの総数は三つでもよい。二相モータの場合は二つでもよい。二相モータの場合、リニアモータを振動アクチュエータとして利用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…マグネット軸,2…ハウジング,3…コイル列,3a−3c…コイル,21…第一部材,22…第二部材,23,24…端部材,26,27…板部材
図1
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図7
図8