特許第5755896号(P5755896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755896
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】ロータ及びブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20150709BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   H02K1/28 A
   H02K1/22 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-21849(P2011-21849)
(22)【出願日】2011年2月3日
(65)【公開番号】特開2012-165490(P2012-165490A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】内海 暁弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章友
(72)【発明者】
【氏名】石野 行秀
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−308156(JP,A)
【文献】 特開2002−136073(JP,A)
【文献】 特開平10−112965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に外嵌されて固定された筒状の固定部及び前記固定部から径方向外側に突出した少なくとも1つの疑似磁極を有するロータコアと、
前記疑似磁極と周方向に交互となるように配置された一方の磁極のマグネットと、
を備え、前記疑似磁極が他方の磁極として機能するロータであって、
前記固定部は、周方向の何れの位置においても前記マグネットよりも径方向内側で前記回転軸の外周側に存在し前記疑似磁極よりも磁気抵抗が高い磁気抵抗部を有し、
前記ロータコアは、前記固定部となる環状の固定構成部と、前記固定構成部から径方向外側に突出し前記疑似磁極となる少なくとも1つの磁極構成部とを有する板状のコアシートを軸方向に複数枚積層して形成されており、
前記磁気抵抗部は、各前記コアシートの前記固定構成部に形成された前記回転軸と同心状の凹部であり、
前記凹部は、前記固定構成部の内周縁部を軸方向に凹設して形成され、該凹部の軸方向の深さは、前記コアシートの厚さの約半分となることを特徴とするロータ。
【請求項2】
回転軸と、
前記回転軸に外嵌されて固定された筒状の固定部及び前記固定部から径方向外側に突出した少なくとも1つの疑似磁極を有するロータコアと、
前記疑似磁極と周方向に交互となるように配置された一方の磁極のマグネットと、
を備え、前記疑似磁極が他方の磁極として機能するロータであって、
前記固定部は、周方向の何れの位置においても前記マグネットよりも径方向内側で前記回転軸の外周側に存在し前記疑似磁極よりも磁気抵抗が高い磁気抵抗部を有し、
前記ロータコアは、前記固定部となる環状の固定構成部と、前記固定構成部から径方向外側に突出し前記疑似磁極となる少なくとも1つの磁極構成部とを有する板状のコアシートを軸方向に複数枚積層して形成されており、
前記磁気抵抗部は、各前記コアシートの前記固定構成部に形成された前記回転軸と同心状の凹部であり、
前記磁気抵抗部における径方向内側の端は、前記固定構成部の内周縁よりも外周側に位置し、
前記固定構成部を軸方向に凹設してなる前記凹部は、軸方向の深さが前記コアシートの厚さの約半分となることを特徴とするロータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載のロータにおいて、
前記磁気抵抗部は、前記回転軸と同心状の円環状をなすことを特徴とするロータ。
【請求項4】
回転軸と、
前記回転軸に外嵌されて固定された筒状の固定部及び前記固定部から径方向外側に突出した少なくとも1つの疑似磁極を有するロータコアと、
前記疑似磁極と周方向に交互となるように配置された一方の磁極のマグネットと、
を備え、前記疑似磁極が他方の磁極として機能するロータであって、
前記固定部は、周方向の何れの位置においても前記マグネットよりも径方向内側で前記回転軸の外周側に存在し前記疑似磁極よりも磁気抵抗が高い磁気抵抗部を有し、
前記ロータコアは、前記固定部となる環状の固定構成部と、前記固定構成部から径方向外側に突出し前記疑似磁極となる少なくとも1つの磁極構成部とを有する板状のコアシートを軸方向に複数枚積層して形成されており、
前記磁気抵抗部は、各前記コアシートの前記固定構成部に周方向に複数形成され前記固定構成部を軸方向に貫通する磁気抵抗孔と、周方向に隣り合う前記磁気抵抗孔同士を連通するように前記固定構成部に軸方向に凹設された連通凹部とから構成され、
前記連通凹部は、前記固定構成部の径方向内側の端から前記マグネットの周方向の中央部まで径方向に沿って延びていることを特徴とするロータ。
【請求項5】
モータケースと、前記モータケースの内部に収容された環状のステータと、前記ステータの内側に配置された請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のロータとを備えたことを特徴とするブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンシクエントポール型のロータ、及び該ロータを備えたブラシレスモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスモータには、例えば特許文献1に記載されているように、環状のステータと、該ステータの内側に配置されたロータとを備えたものがある。径方向に対向するステータとロータとの間には、エアギャップが設けられている。また、特許文献1に記載されたロータは、回転軸と一体回転するロータコアに径方向外側に突出する疑似磁極を形成するとともに、該疑似磁極と周方向に交互となるように一方の磁極のマグネットを配置してなる所謂コンシクエントポール型のロータである。このロータでは、疑似磁極は、マグネットとは異なる磁極として機能する。そして、このようなコンシクエントポール型のロータでは、使用するマグネットの数を半分にできるため、省資源化や低コスト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−327139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、疑似磁極は、ロータに備えられたマグネットと異なる磁極として機能するものの、実際にはマグネットではない。また、マグネットの磁束は、マグネットから出てステータに流れ込んだ後に疑似磁極に至るためには、磁気抵抗の高いエアギャップを通り抜けることになる。従って、ステータに流れ込んだマグネットの磁束は、該ステータとの間にエアギャップが設けられた疑似磁極には強く引き込まれず、当該磁束の一部が軸方向に漏れてしまうという問題があった。そして、軸方向に漏れたマグネットの磁束の一部は、回転軸の方へ漏れてしまうことがある。マグネットの磁束が、ロータコアが固定された回転軸に流れ込むと、回転軸が磁化される虞がある。一般的に、回転軸の先端部は、モータの外部に露出されることが多いため、回転軸が磁化されると、該回転軸の先端部に異物が付着するという問題が出てくる。そのため、コンシクエントポール型のロータにおいて、回転軸の磁化を抑制することが望まれている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、磁束の軸方向の漏れを抑制することができるロータ、及び該ロータを備えたブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、回転軸と、前記回転軸に外嵌されて固定された筒状の固定部及び前記固定部から径方向外側に突出した少なくとも1つの疑似磁極を有するロータコアと、前記疑似磁極と周方向に交互となるように配置された一方の磁極のマグネットと、を備え、前記疑似磁極が他方の磁極として機能するロータであって、前記固定部は、周方向の何れの位置においても前記マグネットよりも径方向内側で前記回転軸の外周側に存在し前記疑似磁極よりも磁気抵抗が高い磁気抵抗部を有し、前記ロータコアは、前記固定部となる環状の固定構成部と、前記固定構成部から径方向外側に突出し前記疑似磁極となる少なくとも1つの磁極構成部とを有する板状のコアシートを軸方向に複数枚積層して形成されており、前記磁気抵抗部は、各前記コアシートの前記固定構成部に形成された前記回転軸と同心状の凹部であり、前記凹部は、前記固定構成部の内周縁部を軸方向に凹設して形成され、該凹部の軸方向の深さは、前記コアシートの厚さの約半分となることをその要旨としている。
請求項2に記載の発明は、回転軸と、前記回転軸に外嵌されて固定された筒状の固定部及び前記固定部から径方向外側に突出した少なくとも1つの疑似磁極を有するロータコアと、前記疑似磁極と周方向に交互となるように配置された一方の磁極のマグネットと、を備え、前記疑似磁極が他方の磁極として機能するロータであって、前記固定部は、周方向の何れの位置においても前記マグネットよりも径方向内側で前記回転軸の外周側に存在し前記疑似磁極よりも磁気抵抗が高い磁気抵抗部を有し、前記ロータコアは、前記固定部となる環状の固定構成部と、前記固定構成部から径方向外側に突出し前記疑似磁極となる少なくとも1つの磁極構成部とを有する板状のコアシートを軸方向に複数枚積層して形成されており、前記磁気抵抗部は、各前記コアシートの前記固定構成部に形成された前記回転軸と同心状の凹部であり、前記磁気抵抗部における径方向内側の端は、前記固定構成部の内周縁よりも外周側に位置し、前記固定構成部を軸方向に凹設してなる前記凹部は、軸方向の深さが前記コアシートの厚さの約半分となることをその要旨としている。
【0007】
請求項1及び請求項2に記載の発明の構成によれば、固定部においてマグネットよりも径方向内側且つ回転軸の外周側となる位置に磁気抵抗部を設けることにより、マグネットの磁束を軸方向に流れ難くすることができる。更に、磁気抵抗部は、周方向の何れの位置においても回転軸の外周側に存在するため、周方向の何れの位置においてもマグネットの磁束を軸方向に流れ難くすることができる。従って、マグネットの磁束が軸方向に漏れて回転軸に流れ込むことを抑制することができる。その結果、回転軸の磁化を抑制することができる。
【0009】
同構成によれば、磁気抵抗部は、回転軸と同心状の凹部であるため、簡単な形状である。従って、磁気抵抗部を設けたことによる固定部の複雑化が抑制される。また、磁気抵抗部を回転軸と同心状の凹部とすることにより、回転軸の外周を磁気抵抗部によって容易に囲むことができる。即ち、固定部において周方向の何れの位置においてもマグネットの径方向内側で回転軸の外周側となる位置に磁気抵抗部を容易に存在させることができる。
【0010】
また、請求項に記載の発明構成によれば、固定部におけるマグネットと疑似磁極との間の磁束の経路を確保しつつ固定部の外径を小さくすることができる。従って、外径の小さいロータにおいても、磁気抵抗部を設けることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明の構成によれば、磁気抵抗部を固定構成部に形成したとしても、固定構成部の内周縁部の厚さが薄くなることがない。従って、固定構成部の内周面と回転軸の外周面との接触面積が減少されないため、回転軸に対してロータコアを強固に固定することができる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項に記載のロータにおいて、前記磁気抵抗部は、前記回転軸と同心状の円環状をなすことをその要旨としている。
同構成によれば、磁気抵抗部の磁気抵抗を周方向に一様とすることができる。また、磁気抵抗部は、円環状という簡単な形状であるため、固定部の複雑化がより抑制される。
【0022】
請求項に記載の発明は、回転軸と、前記回転軸に外嵌されて固定された筒状の固定部及び前記固定部から径方向外側に突出した少なくとも1つの疑似磁極を有するロータコアと、前記疑似磁極と周方向に交互となるように配置された一方の磁極のマグネットと、を備え、前記疑似磁極が他方の磁極として機能するロータであって、前記固定部は、周方向の何れの位置においても前記マグネットよりも径方向内側で前記回転軸の外周側に存在し前記疑似磁極よりも磁気抵抗が高い磁気抵抗部を有し、前記ロータコアは、前記固定部となる環状の固定構成部と、前記固定構成部から径方向外側に突出し前記疑似磁極となる少なくとも1つの磁極構成部とを有する板状のコアシートを軸方向に複数枚積層して形成されており、前記磁気抵抗部は、各前記コアシートの前記固定構成部に周方向に複数形成され前記固定構成部を軸方向に貫通する磁気抵抗孔と、周方向に隣り合う前記磁気抵抗孔同士を連通するように前記固定構成部に軸方向に凹設された連通凹部とから構成され、前記連通凹部は、前記固定構成部の径方向内側の端から前記マグネットの周方向の中央部まで径方向に沿って延びていることをその要旨としている。
同構成によれば、固定部においてマグネットよりも径方向内側且つ回転軸の外周側となる位置に磁気抵抗部を設けることにより、マグネットの磁束を軸方向に流れ難くすることができる。更に、磁気抵抗部は、周方向の何れの位置においても回転軸の外周側に存在するため、周方向の何れの位置においてもマグネットの磁束を軸方向に流れ難くすることができる。従って、マグネットの磁束が軸方向に漏れて回転軸に流れ込むことを抑制することができる。その結果、回転軸の磁化を抑制することができる。
【0023】
同構成によれば、磁気抵抗部を、周方向に複数形成された磁気抵抗孔と、周方向に隣り合う磁気抵抗孔同士を連通する連通凹部とから構成とすることにより、該磁気抵抗部を、固定部において周方向の何れの位置においてもマグネットの径方向内側で回転軸の外周側となる位置に容易に存在させることができる。また、磁気抵抗孔は、固定構成部を軸方向に貫通しているため、磁気抵抗が高い。従って、磁束が軸方向に漏れて回転軸に流れ込むことをより抑制することができる。
【0025】
同構成によれば、連通凹部は、固定構成部の径方向内側の端からマグネットの周方向の中央部まで径方向に沿って延びるものであるため、複数枚のコアシートを軸方向に積層して形成されたロータコアにおいては、マグネットの径方向内側で複数の連通凹部が軸方向に並ぶことになる。そして、ロータコアにおいて連通凹部が軸方向に並んだ部位は、疑似磁極に比べて空間の割合が大きいため、磁気抵抗が大きくなっている。そのため、マグネットの磁束は、固定部において磁気抵抗孔と該磁気抵抗孔の周方向の両側に設けられた連通凹部とによって囲まれた部位を周方向に流れ易くなる。従って、ロータコアにおいて周方向に隣り合うマグネットと疑似磁極との間を磁束が流れ易くなる。また、マグネットの磁束は、ロータコアにおいてマグネットの周方向の中央部から径方向に沿って固定構成部の径方向内側の端に至る範囲を殆ど流れない。そのため、各コアシートに、固定構成部の径方向内側の端から径方向に沿ってマグネットの周方向の中央部まで延びる連通凹部を形成しても、当該連通凹部によって磁束の周方向の流れが阻害されることが抑制されている。
【0026】
請求項に記載の発明は、モータケースと、前記モータケースの内部に収容された環状のステータと、前記ステータの内側に配置された請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のロータとを備えたブラシレスモータとしたことをその要旨としている。
【0027】
同構成によれば、回転軸の磁化が抑制されているため、モータケースの外部に回転軸が露出した場合であっても、回転軸に異物が付着することが抑制される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、磁束の軸方向の漏れを抑制することができるロータ、及び該ロータを備えたブラシレスモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】モータの断面図。
図2】ロータの斜視図。
図3】(a)はコアシートの平面図、(b)はコアシートの断面図(図3(a)におけるA−A断面図)。
図4】ロータの断面図。
図5】別の形態のロータの断面図。
図6】別の形態のロータの断面図。
図7】別の形態のロータの断面図。
図8】別の形態のロータの断面図。
図9】(a)は別の形態のロータの平面図、(b)は別の形態のロータの断面図。
図10】別の形態のロータの平面図。
図11】別の形態のロータの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、ブラシレスモータは、モータケース1の内部にステータ2及びロータ3を収容して形成されている。
【0031】
モータケース1は、有底円筒状のケース本体5と、該ケース本体5の開口部を閉塞する略円板状のカバープレート6とから構成されている。ケース本体5の内周面には、円筒状のステータ2が固定されるとともに、該ステータ2の内側にロータ3が配置されている。ステータ2とロータ3との間には、エアギャップが設けられている。
【0032】
ロータ3は、円柱状の回転軸11と、該回転軸11に一体回転可能に固定されたロータコア12と、該ロータコア12にて保持された4個のマグネット13とから構成されている。
【0033】
回転軸11の基端部(図1において上側の端部)は、前記ケース本体5の底部中央に設けられた軸受15によって軸支される一方、同回転軸11の先端側の部位は、前記カバープレート6の径方向の中央部に設けられた軸受16によって軸支されている。また、回転軸11の先端部は、カバープレート6の径方向の中央部を貫通してモータケース1の外部に突出(露出)している。
【0034】
図2に示すように、前記ロータコア12は、筒状の固定部12aと、該固定部12aの外周に該固定部12aと一体に形成された4個の疑似磁極12bとを備えている。
固定部12aの径方向の中央部に形成された固定孔12cは、固定部12aを軸方向に貫通するとともに、該固定孔12cの内径は、回転軸11の外径よりも若干小さい値となっている。
【0035】
また、固定部12aにおける周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)となる4箇所から、前記疑似磁極12bがそれぞれ径方向外側に突出している。4個の疑似磁極12bは、何れも同じ形状をなしている。詳しくは、各疑似磁極12bの軸方向の長さは、固定部12aの軸方向の長さと等しいとともに、各疑似磁極12bの軸方向の両端面は、固定部12aの軸方向の両端面とそれぞれ同一平面内に位置する。そして、各疑似磁極12bは、径方向外側に向かうに連れて周方向の幅が広くなるように形成されている。また、各疑似磁極12bの周方向両側の周方向側面12dは、径方向に沿って延びるとともに軸方向と平行をなしている。更に、各疑似磁極12bの径方向外側の先端面12eは、ロータコア12の中心軸線L1(回転軸11の中心軸線L2に同じ)を中心とする円弧状の曲面となっている。
【0036】
また、固定部12aの外周面には、疑似磁極12b間となる部分にそれぞれ磁石配置面12fが形成されている。4つの磁石配置面12fは、周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)に形成されるとともに、それぞれ軸方向と平行な平面状をなしている。更に、各磁石配置面12fは、180°離間した位置にある磁石配置面12fと平行をなすとともに、周方向に隣り合う磁石配置面12fとは互いに90°をなすように形成されている。
【0037】
また、各磁石配置面12fの径方向外側には、磁石被覆部12gがそれぞれ形成されている。磁石被覆部12gは、磁石配置面12fの周方向の両側にある2つの疑似磁極12bの先端部を連結するように形成されている。また、各磁石被覆部12gの径方向外側の外側面12mは、各疑似磁極12bの先端面12eと同様に、ロータコア12の中心軸線L1を中心とする円弧状の曲面となっている。そして、ロータコア12の外周面は、4個の磁石被覆部12gの外側面12mと、4個の疑似磁極12bの先端面12eとによって円筒状に形成されている。また、各磁石被覆部12gの径方向内側の内側面には、前記磁石配置面12fと径方向に対向し且つ該磁石配置面12fと平行をなす磁石保持面12nが形成されている。磁石保持面12nの周方向の幅は、磁石配置面12fの周方向の幅と略等しく形成されている。そして、このような磁石被覆部12gが設けられることにより、周方向に隣り合う疑似磁極12b間には、ロータコア12を軸方向に貫通する保持孔12pが形成されている。
【0038】
このようなロータコア12は、磁性体よりなる板状のコアシート21を複数枚積層して形成されている。図3(a)及び図3(b)に示すように、コアシート21は、円環状の板状をなすとともに、環状の固定構成部21aと、該固定構成部21aの外周に該固定構成部21aと一体に形成された4個の磁極構成部21bとを備えている。
【0039】
固定構成部21aの径方向の中央部に形成された嵌入孔21cは、固定構成部21aを軸方向(コアシート21の厚さ方向に同じ)に貫通するとともに、該嵌入孔21cの内径は、回転軸11の外径よりも若干小さい値となっている。
【0040】
また、固定構成部21aには、磁気抵抗部としての磁気抵抗凹部21dが形成されている。磁気抵抗凹部21dは、固定構成部21aの内周縁部を、該固定構成部21aにおける厚さ方向の一方側の面から他方側の面に向かって軸方向に凹設して形成されている。そして、磁気抵抗凹部21dは、コアシート21の厚さ方向から見た形状が、前記嵌入孔21cと同心状の円環状をなしている。更に、磁気抵抗凹部21dは、固定構成部21aの内周縁部に形成されることにより、該磁気抵抗凹部21dの径方向内側の端は、固定構成部21aの内周面(即ち嵌入孔21cの内周面)上に位置する。そして、磁気抵抗凹部21dは、径方向内側に開口するとともに、嵌入孔21cに繋がっている。また、磁気抵抗凹部21dの軸方向の深さは、コアシート21の厚さの約半分となっている。更に、磁気抵抗凹部21dの径方向の幅は、周方向の何れの位置においても一定の値となっている。そして、この磁気抵抗凹部21dが形成されることにより、固定構成部21aには、磁気抵抗凹部21dと軸方向に隣り合う位置に、同固定構成部21aにおける磁気抵抗凹部21dの外周側の部位よりも厚さの薄い薄板部21eが形成される。薄板部21eは、磁気抵抗凹部21dが円環状をなすことにより、該磁気抵抗凹部21dと同様の円環状をなしている。更に、薄板部21eの厚さは、コアシート21の厚さの約半分の厚さとなっている。
【0041】
また、固定構成部21aにおける周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)となる4箇所から、前記磁極構成部21bがそれぞれ径方向外側に突出している。4個の磁極構成部21bは、何れも同じ形状をなしている。詳しくは、各磁極構成部21bの厚さは、固定構成部21aの厚さと等しい。そして、各磁極構成部21bは、径方向外側に向かうに連れて周方向の幅が広くなるように形成されている。また、各磁極構成部21bの周方向両側の側面は、径方向に沿って延びるとともに軸方向と平行をなしている。更に、各磁極構成部21bの径方向外側の先端面は、コアシート21の中心軸線L3を中心とする円弧状の曲面となっている。
【0042】
また、固定構成部21aの外周面には、磁極構成部21b間となる部分にそれぞれ配置構成面21fが形成されている。4つの配置構成面21fは、周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)に形成されるとともに、それぞれ軸方向と平行な平面状をなしている。また、各配置構成面21fは、180°離間した位置にある配置構成面21fと平行をなすとともに、周方向に隣り合う配置構成面21fとは互いに90°をなすように形成されている。
【0043】
更に、各配置構成面21fの径方向外側には、被覆構成部21gがそれぞれ形成されている。被覆構成部21gは、配置構成面21fの周方向の両側にある2つの磁極構成部21bの先端部を連結するように形成されている。また、各被覆構成部21gの径方向外側の側面は、各磁極構成部21bの先端面と同様に、コアシート21の中心軸線L3を中心とする円弧状の曲面となっている。そして、コアシート21の外周面は、4個の被覆構成部21gの径方向外側の外側面と、4個の磁極構成部21bの先端面とによって円筒状に形成されている。また、この被覆構成部21gが設けられることにより、周方向に隣り合う磁極構成部21b間には、コアシート21を軸方向に貫通する保持構成孔21pが形成されている。
【0044】
このようなコアシート21は、磁性体よりなる金属板材をプレス加工により打ち抜いて形成される。尚、金属板材をプレス加工により打ち抜く際、コアシート21を形成するための金型で金属板材を加圧することにより、前記磁気抵抗凹部21dを形成する。そして、図2及び図4に示すように、複数枚のコアシート21は、軸方向(コアシート21の厚さ方向に同じ)に積層される。複数枚のコアシート21は、固定構成部21a、4個の磁極構成部21b及び4個の被覆構成部21gがそれぞれ軸方向に積層されるように積層されている。また、複数枚のコアシート21は、厚さ方向の両面のうち磁気抵抗凹部21dが凹設された側の面が同じ方向を向くように積層されている。
【0045】
積層されたコアシート21は、かしめられることにより一体化されてロータコア12となる。コアシート21から形成されたロータコア12においては、軸方向に積層された複数の固定構成部21aによって固定部12aが形成されるとともに、軸方向に並ぶ複数の嵌入孔21cによって固定孔12cが形成されている。また、軸方向に積層された磁極構成部21bによって疑似磁極12bが形成されるとともに、軸方向に並ぶ複数の配置構成面21fによって磁石配置面12fが形成されている。また、軸方向に積層された被覆構成部21gによって磁石被覆部12gが形成されるとともに、軸方向に並ぶ複数の保持構成孔21pによって保持孔12pが形成されている。更に、ロータコア12の内周縁部では、磁気抵抗凹部21dと薄板部21eとが軸方向に交互に並んでいる。
【0046】
上記のように構成されたロータコア12は、前記固定孔12cに回転軸11が圧入されて該回転軸11に外嵌されることにより、該回転軸11に対して一体回転可能に固定されている。詳しくは、各コアシート21の薄板部21eにおける径方向内側の円環状の内周面が、回転軸11の外周面に圧接することにより、ロータコア12は回転軸11に対して軸方向に移動不能且つ周方向に移動不能に固定されている。また、回転軸11に固定されたロータコア12では、各磁気抵抗凹部21dの径方向の中心は、回転軸11の中心軸線L2上に位置する。従って、磁気抵抗凹部21dは、回転軸11と同心状となっている。
【0047】
そして、ロータコア12の4個の保持孔12pには、それぞれ前記マグネット13が挿入されている。各マグネット13は、ロータコア12の軸方向に長い直方体状をなすとともに、その軸方向の長さは、ロータコア12の軸方向の長さと等しく形成されている。また、各マグネット13の周方向の幅は、磁石保持面12nの周方向の幅と等しく形成されている。更に、各マグネット13の径方向の厚さは、磁石配置面12fと磁石保持面12nとの間の距離と等しく形成されている。そして、各マグネット13の径方向内側の側面は磁石配置面12fに当接する一方、各マグネット13の径方向外側の側面は磁石保持面12nに当接している。
【0048】
これらのマグネット13は、径方向外側の端部がN極、径方向内側の端部がS極となるようにそれぞれ着磁されている。従って、本実施形態のロータ3では、S極及びN極のうちN極の磁極のマグネット13がロータコアに対して周方向に4個配置されている。そして、各マグネット13が保持孔12pに挿入されることにより、周方向に隣り合うマグネット13間にそれぞれ疑似磁極12bが配置され、その結果、N極のマグネットと疑似磁極12bとが周方向に交互に配置される。疑似磁極12bを有するロータコア12に対してマグネット13がこのように配置されることにより、疑似磁極12bは、疑似的にS極として機能する。即ち、本実施形態のロータ3は、一方の磁極のマグネット13と他方の磁極として機能する疑似磁極12bとが周方向に交互に配置されたコンシクエントポール型のロータである。
【0049】
図1に示すように、前記回転軸11には、同回転軸11の先端面(図1において下側の端面)とロータコア12との間となる位置に、環状のセンサマグネット31が同回転軸11と一体回転可能に固定されている。センサマグネット31は、N極とS極とが周方向に交互となるように着磁されている。
【0050】
また、前記カバープレート6の内周面には、ブラシレスモータを制御するための図示しない回路素子が搭載された回路基板32が固定されている。この回路基板32上には、前記センサマグネット31と軸方向に対向する位置にホールセンサ33が配置されている。ホールセンサ33は、ホール素子を備えたホールICである。また、回路基板32は、ブラシレスモータの外部に設けられる駆動制御回路(図示略)に電気的に接続されている。
【0051】
そして、ブラシレスモータでは、ステータ2に電源が供給されると、該ステータ2にて発生される回転磁界に応じてロータ3が回転される。そして、ホールセンサ33は、ロータ3の回転軸11と一体回転するセンサマグネット31の磁界の変化を検出するとともに、検出した磁界の変化に応じたパルス信号である回転検出信号を駆動制御回路に出力する。駆動制御回路は、この回転検出信号に基づいて、ロータ3の回転情報(回転速度、回転位置等)を検出する。そして、駆動制御回路は、検出したロータ3の回転情報に基づいて、ロータ3の回転速度が所望の回転速度となるようにステータ2に供給する電源を制御する。従って、ロータ3の回転状態に応じて駆動制御回路からステータ2に電源が供給される。
【0052】
次に、前記したロータ3の作用を記載する。
図2及び図4に示すように、ロータコア12の内周縁部に設けられた円環状の磁気抵抗凹部21dは、周方向の何れの位置においてもマグネット13よりも径方向内側且つ回転軸11の外周側に存在する。また、磁気抵抗凹部21dの内部は、空気が存在する空間であるため、磁気抵抗凹部21dは、固定部12aにおける磁気抵抗凹部21dより外周側の部位及び疑似磁極12bよりも磁気抵抗が高くなっている。更に、磁気抵抗凹部21dと軸方向に並ぶ薄板部21eは、その厚さが、固定構成部21aにおける薄板部21eより外周側の部位の厚さ及び磁極構成部21bの厚さよりも薄いため、固定構成部21aにおける薄板部21eより外周側の部位及び磁極構成部21bよりも径方向の磁気抵抗が高くなっている。そのため、各マグネット13のN極から径方向外側に流れ出た磁束は、軸方向に流れて回転軸11を通り更にロータコア12からマグネット13のS極に流れる経路を辿り難くなる。即ち、周方向に並ぶマグネット13及び疑似磁極12bと回転軸11との間に疑似磁極12bよりも磁気抵抗の高い磁気抵抗凹部21dを設けることにより、磁束の軸方向の漏れを抑制することができる。更に、磁気抵抗凹部21dは、周方向の何れの位置においてもマグネット13よりも径方向内側且つ回転軸11の外周側に存在するため、周方向の何れの位置においても磁束の軸方向の漏れを抑制することができる。
【0053】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)固定部12aにおいてマグネット13よりも径方向内側且つ回転軸11の外周側となる位置に磁気抵抗凹部21dを設けることにより、マグネット13の磁束を軸方向に流れ難くすることができる。更に、磁気抵抗凹部21dは、周方向の何れの位置においても回転軸11の外周側に存在するため、周方向の何れの位置においてもマグネット13の磁束を軸方向に流れ難くすることができる。従って、マグネット13の磁束が軸方向に漏れて回転軸11に流れ込むことを抑制することができる。その結果、回転軸11の磁化を抑制することができる。
【0054】
(2)磁気抵抗凹部21dは、回転軸11と同心状の凹部であるため、簡単な形状である。従って、磁気抵抗凹部21dを設けたことによる固定部12aの複雑化が抑制される。また、磁気抵抗凹部21dを回転軸11と同心状の凹部とすることにより、回転軸11の外周を磁気抵抗凹部21dによって容易に囲むことができる。即ち、固定部12aにおいて周方向の何れの位置においてもマグネット13の径方向内側で回転軸11の外周側となる位置に磁気抵抗凹部21dを容易に存在させることができる。
【0055】
(3)磁気抵抗凹部21dは、固定構成部21aの内周縁部を軸方向に凹設して形成されている。そのため、固定部12aにおけるマグネット13と疑似磁極12bとの間の磁束の経路を確保しつつ固定部12aの外径を小さくすることができる。従って、外径の小さいロータ3においても、磁気抵抗凹部21dを設けることができる。
【0056】
(4)磁気抵抗凹部21dは、回転軸11と同心状の円環状をなすため、磁気抵抗凹部21dの磁気抵抗を周方向に一様とすることができる。その結果、ロータ3の回転時の振動・騒音の発生を抑制することができる。また、磁気抵抗凹部21dは、円環状という簡単な形状であるため、固定部12aの複雑化がより抑制される。
【0057】
(5)回転軸11の磁化が抑制されているため、モータケース1の外部に回転軸11が露出していても、回転軸11に異物が付着することが抑制される。
(6)磁気抵抗凹部21dは、ロータコア12を構成するコアシート21を軸方向に凹設して形成されたものである。従って、疑似磁極12bよりも磁気抵抗の高い部分を、周方向の何れの位置においてもマグネット13よりも径方向内側且つ回転軸11の外周側に存在するようにロータ3に設けるために、ロータコア12とは別の部品をロータ3に設けたり、疑似磁極12bとは別の材料で形成される部分をロータコア12に設けたりしなくてもよい。その結果、ロータ3の複雑化を抑制するとともに、製造コストの増大を抑制することができる。
【0058】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の磁気抵抗凹部21dに代えて、図5に示す第1の環状溝41及び第2の環状溝42を固定構成部21aに形成してもよい。第1の環状溝41は、各コアシート21の固定構成部21aの軸方向の一方の面(厚さ方向の一方の面であって、図5においては上側の面)に回転軸11と同心状に形成されている。この第1の環状溝41が形成されることにより、固定構成部21aには、第1の環状溝41と軸方向に隣り合う位置に、同固定構成部21aにおける第1の環状溝41及び第2の環状溝42よりも外周側の部位に比べて厚さの薄い第1の薄板部43が形成される。また、第1の環状溝41は、第1の薄板部43の軸方向の最小厚さが、該第1の環状溝41の軸方向の最大幅(最大深さ)よりも薄くなるように形成されている。また、第2の環状溝42は、各コアシート21の固定構成部21aの軸方向の他方の面(厚さ方向の他方の面であって、図5においては下側の面)に回転軸11と同心状に形成されている。この第2の環状溝42が形成されることにより、固定構成部21aには、第2の環状溝42と軸方向に隣り合う位置に、同固定構成部21aにおける第1の環状溝41及び第2の環状溝42よりも外周側の部位に比べて厚さの薄い第2の薄板部44が形成される。また、第2の環状溝42は、第2の薄板部44の軸方向の最小厚さが、該第2の環状溝42の軸方向の最大幅(最大深さ)よりも薄くなるように形成されている。
【0059】
そして、第1の環状溝41及び第2の環状溝42は、何れも固定構成部21aの内周縁付近を軸方向に凹設して形成されている。また、第2の環状溝42は、固定構成部21aにおいてマグネット13よりも径方向内側で第1の環状溝41よりも外周側に形成されている。また、図5に示す例では、第1の環状溝41及び第2の環状溝42は、何れも周方向と直交する断面形状が台形状をなしている。尚、第1の環状溝41を、マグネット13よりも径方向内側で第2の環状溝42よりも外周側に形成してもよい。また、第1の環状溝41及び第2の環状溝42の周方向と直交する断面形状は、台形状に限らず、矩形状や円弧状等であってもよい。
【0060】
このようにしても、上記実施形態の(1),(2),(4)〜(6)と同様の効果を得ることができる。また、マグネット13の磁束が固定構成部21aの内部を径方向に沿って流れる際、マグネット13の磁束の少なくとも一部は、第1の環状溝41及び第2の環状溝42を避けるように曲がりながら流れることになる。このように流れる磁束は、径方向に沿って直線的に流れる場合よりも磁束の経路が長くなる。また、固定構成部21aの内部を径方向に流れる磁束は、第1の環状溝の底部を形成する第1の薄板部43及び第2の環状溝の底部を形成する第2の薄板部44を径方向に流れることになる。従って、第1の薄板部43の軸方向の最小厚さが、第1の環状溝41の軸方向の最大幅よりも薄くなるように該第1の環状溝41を形成するとともに、第2の薄板部44の軸方向の最小厚さが、第2の環状溝42の軸方向の最大幅よりも薄くなるように該第2の環状溝42を形成することにより、磁束が径方向に一層流れ難くなっている。これらのことから、固定構成部21aにおける第1の環状溝41及び第2の環状溝42の近傍は、磁気抵抗が高くなっている。従って、磁束が軸方向に漏れて回転軸11に流れ込むことをより抑制することができる。
【0061】
また、図6に示すように、第1の環状溝41及び第2の環状溝42を、各コアシート21の固定構成部21aに複数本形成してもよい。図6に示す例では、第1の環状溝41は、固定構成部21aの軸方向の一方の面に4本形成されるとともに、第2の環状溝42は、固定構成部21aの軸方向の他方の面に3本形成されている。そして、第1の環状溝41と第2の環状溝42とは、固定構成部21aの軸方向の両側から互い違いに形成されている。従って、径方向に沿って見ると、第1の環状溝41と第2の環状溝42とが交互に形成されている。また、図6に示す例では、4本の第1の環状溝41は、径方向に離間することなく連続的に形成されている。同様に、3本の第2の環状溝42は、径方向に離間することなく連側的に形成されている。尚、複数本の第1の環状溝41及び複数本の第2の環状溝42は、径方向にそれぞれ離間していてもよい。また、図6に示す例では、第1の環状溝41及び第2の環状溝42は、周方向と直交する断面形状が三角形状をなしているが、円弧状や台形状等であってもよい。
【0062】
このようにすると、図5に示す例と同様に、上記実施形態の(1),(2),(4)〜(6)と同様の効果を得ることができる。また、固定構成部21aの内部を径方向に沿って流れる磁束の少なくとも一部は、互い違いに形成された複数の第1の環状溝41及び複数の第2の環状溝42を避けるように曲がりながら流れることにより、径方向に沿って直線的に流れる場合よりも磁束の経路がより長くなる。従って、固定構成部21aにおける第1の環状溝41及び第2の環状溝42の近傍は、磁気抵抗がより高くなっている。その結果、磁束が軸方向に漏れて回転軸11に流れ込むことを更に抑制することができる。また、コアシート21を径方向外側から径方向内側に流れる磁束は、複数の第1の環状溝41及び複数の第2の環状溝42を超えて径方向内側に流れ難いため、周方向に流れ易くなる。従って、ロータコア12において周方向に隣り合うマグネット13と疑似磁極12bとの間を磁束が流れ易くなる。
【0063】
尚、図5及び図6に示す例において、第1の環状溝41と第2の環状溝42とは、固定構成部21aにおける径方向の位置が同じとなるように(軸方向に並ぶように)形成されてもよい。また、第1の環状溝41は、必ずしも、第1の薄板部43の軸方向の最小厚さが、該第1の環状溝41の軸方向の最大幅よりも薄くなるように形成されなくてもよい。同様に、第2の環状溝42は、必ずしも、第2の薄板部44の軸方向の最小厚さが、該第2の環状溝42の軸方向の最大幅よりも薄くなるように形成されなくてもよい。
【0064】
・上記実施形態の磁気抵抗凹部21dに代えて、図7に示す磁気抵抗凹部51を固定構成部21aに形成してもよい。磁気抵抗凹部51は、上記実施形態の磁気抵抗凹部21dと比較すると、周方向と直交する断面形状が異なる。詳しくは、磁気抵抗凹部51は、固定構成部21aの内周縁付近を軸方向に凹設して形成された凹部であるとともに、周方向と直交する断面形状が円弧状をなしている。また、磁気抵抗凹部51は、回転軸11と同心状の円環状をなしている。このようにすると、上記実施形態の(1),(2),(4)〜(6)と同様の効果を得ることができる。また、磁気抵抗凹部51における周方向と直交する断面形状が矩形状や台形状である場合に比べて、磁気抵抗凹部51を容易に凹設することができる。例えば、磁気抵抗凹部51を、プレス加工により固定構成部21aに形成する場合、磁気抵抗凹部51における周方向と直交する断面形状が矩形状や台形状である場合に比べて、プレス加工に用いる金型に加える押圧力を小さく抑えることができる。従って、磁気抵抗凹部51を固定構成部21aに容易に形成することができる。また、磁気抵抗凹部51が凹設されたことによって固定構成部21aの厚さが最も薄くなる部分を最小の範囲に抑えることができる。従って、ロータコア12の剛性が小さくなることを抑制しつつ、疑似磁極12bよりも磁気抵抗の高い磁気抵抗凹部51を固定部12aに設けることができる。
【0065】
・上記実施形態では、磁気抵抗凹部21dは、回転軸11と同心状の円環状をなしている。しかしながら、磁気抵抗凹部21dは、必ずしも回転軸11と同心状の円環状でなくてもよい。例えば、磁気抵抗凹部21dは、各コアシート21の固定構成部21aに軸方向に凹設され、軸方向から見た形状が回転軸11の外周を囲繞するような楕円形状や、多角形状等をなすように形成されてもよい。また、磁気抵抗凹部21dは、必ずしも回転軸11と同心状でなくてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、磁気抵抗凹部21dは、固定構成部21aの内周縁部を軸方向に凹設して形成されている。しかしながら、固定構成部21aにおける磁気抵抗凹部21dの形成位置は、これに限らない。例えば、図8に示す磁気抵抗凹部61は、該磁気抵抗凹部61における径方向内側の端が、固定構成部21aの内周縁よりも外周側に位置している。尚、図8に示す磁気抵抗凹部61は、回転軸11と同心状の円環状をなしている。このようにすると、磁気抵抗凹部61を固定構成部21aに形成したとしても、固定構成部21aの内周縁部の厚さが薄くなることがない。従って、固定構成部21aの内周面と回転軸11の外周面との接触面積が減少されないため、回転軸11に対してロータコア12を強固に固定することができる。
【0067】
・上記実施形態では、磁気抵抗部として、回転軸11と同心状の円環状をなす磁気抵抗凹部21dを固定部12aに設けた。しかしながら、固定部12aが備える磁気抵抗部は、上記実施形態の磁気抵抗凹部21dに限らない。磁気抵抗部は、周方向の何れの位置においてもマグネット13よりも径方向内側で回転軸11の外周側に存在し疑似磁極12bよりも磁気抵抗が高いものであればよい。例えば、各コアシート21の固定構成部21aに、磁気抵抗部として回転軸11と同心状をなす複数の円弧状の溝を形成し、これらの円弧状の溝によって回転軸11の外周を囲繞するようにしてもよい。このようにすると、上記実施形態の(1),(2),(5),(6)と同様の効果を得ることができる。また例えば、各コアシート21の固定構成部21aに、回転軸11の外周を囲繞するように磁気抵抗部として複数の直線状の溝を形成してもよい。
【0068】
また、図9(a)及び図9(b)に示す例では、ロータコア71を構成する各コアシート81の固定構成部21aには、周方向に複数(図9(a)に示す例では4個)の磁気抵抗孔81aが形成されている。尚、図9(a)及び図9(b)では、上記実施形態と同一の構成に同一の符号を付している。4個の磁気抵抗孔81aは、固定構成部21aにおける周方向に等角度間隔(本例では90°間隔)となる4箇所に形成されるとともに、固定構成部21aを軸方向に貫通している。また、4個の磁気抵抗孔81aは、4個の磁極構成部21bと周方向の位置が等しく形成されており、各磁極構成部21bの径方向内側にそれぞれ磁気抵抗孔81aが位置している。更に、4個の磁気抵抗孔81aは、全て同じ形状をなすとともに、回転軸11と同心状の円弧状をなしている。また、固定構成部21aにおいて、周方向に隣り合う磁気抵抗孔81a間には、周方向に隣り合う磁気抵抗孔81a同士を連通するように該固定構成部21aを軸方向に凹設してなる連通凹部81bが形成されている。4個の連通凹部81bは、4個のマグネット13の周方向の中央部と周方向の位置が等しく形成されており、各マグネット13の周方向の中央部の径方向内側にそれぞれ連通凹部81bが位置している。
【0069】
このようなコアシート81を軸方向に複数枚積層してかしめることにより、ロータコア71が形成されている。複数枚のコアシート81は、各コアシート81の4個の磁気抵抗孔81a及び4個の連通凹部81bがそれぞれ軸方向に積層されるように積層されている。また、複数枚のコアシート81は、厚さ方向の両面のうち連通凹部81bが凹設された側の面が同じ方向を向くように積層されている。そして、ロータコア71においては、軸方向に積層された複数の磁気抵抗孔81aによって抵抗貫通孔71aが形成される。更に、固定部12aにおける周方向に等角度間隔となる4箇所で、連通凹部81bが軸方向に並んでいる。そして、このロータコア71においては、磁気抵抗孔81aと連通凹部81bとによって磁気抵抗部が構成されている。
【0070】
このようにすると、上記実施形態の(1),(5),(6)と同様の効果を得ることができる。また、磁気抵抗部を、周方向に複数形成された磁気抵抗孔81aと、周方向に隣り合う磁気抵抗孔81a同士を連通する連通凹部81bとから構成とすることにより、該磁気抵抗部を、固定部12aにおいて周方向の何れの位置においてもマグネット13の径方向内側で回転軸11の外周側となる位置に容易に存在させることができる。また、磁気抵抗孔81aは、固定構成部21aを軸方向に貫通しているため、固定構成部21aを軸方向に凹設して形成された凹部よりも磁気抵抗が高い。従って、磁束が軸方向に漏れて回転軸11に流れ込むことをより抑制することができる。
【0071】
また、図9に示す例の連通凹部81bに代えて、図10に示す連通凹部81cをコアシート81に備えてもよい。連通凹部81cは、連通凹部81bと同様に、周方向に隣り合う磁気抵抗孔81a同士を連通するように該固定構成部21aを軸方向に凹設して形成されている。更に、各連通凹部81cは、固定構成部21aの径方向内側の端から、各連通凹部81cの径方向外側に位置するマグネット13の周方向の中央部まで径方向に沿って延びている。即ち、各連通凹部81cは、固定構成部21aの径方向内側の端から、各連通凹部81cの径方向外側に位置する配置構成面21fの周方向の中央部まで径方向に沿って延びている。このようにすると、図9に示す例と同様に、上記実施形態の(1),(5),(6)と同様の効果を得ることができる。更に、連通凹部81cは、固定構成部21aの径方向内側の端からマグネット13の周方向の中央部まで径方向に沿って延びるものであるため、複数枚のコアシート81を軸方向に積層して形成されたロータコア71においては、マグネット13の径方向内側で複数の連通凹部81cが軸方向に並ぶことになる。そして、ロータコア71において連通凹部81cが軸方向に並んだ部位は、疑似磁極12bに比べて空間の割合が大きいため、磁気抵抗が大きくなっている。そのため、マグネット13の磁束は、固定部12aにおいて磁気抵抗孔81aと該磁気抵抗孔81aの周方向の両側に設けられた連通凹部81cとによって囲まれた部位を周方向に流れ易くなる。従って、ロータコア71において周方向に隣り合うマグネット13と疑似磁極12bとの間を磁束が流れ易くなる。また、マグネット13の磁束は、ロータコア71においてマグネット13の周方向の中央部から径方向に沿って固定構成部21aの径方向内側の端に至る範囲を殆ど流れない。そのため、各コアシート81に、固定構成部21aの径方向内側の端から径方向に沿ってマグネット13の周方向の中央部まで延びる連通凹部81cを形成しても、当該連通凹部81cによって磁束の周方向の流れが阻害されることが抑制されている。
【0072】
尚、図10に示す例において、各連通凹部81cは、固定構成部21aの径方向内側の端よりも外周側となる位置から、各連通凹部81cの径方向外側に位置するマグネット13の周方向の中央部まで径方向に沿って延びるように形成されてもよい。このようにすると、このようにすると、連通凹部81cを固定構成部21aに形成したとしても、固定構成部21aの内周縁部の厚さが薄くなることがない。従って、固定構成部21aの内周面と回転軸11の外周面との接触面積が減少されないため、回転軸11に対してロータコア12を強固に固定することができる。
【0073】
また、図11に示す例では、ロータコア91を構成する各コアシート101の固定構成部21aには、周方向に複数(図11に示す例では5本)の磁気抵抗溝101aが形成されている。尚、図11では、上記実施形態と同一の構成に同一の符号を付している。複数の磁気抵抗溝101aは、固定構成部21aの内周縁からそれぞれ径方向外側に延び周方向に互いに離間している。また、各磁気抵抗溝101aは、周方向に隣り合う磁気抵抗溝101aに径方向に重なるように湾曲している。詳しくは、各磁気抵抗溝101aは、その径方向内側の端部に対して径方向外側の端部が周方向の一方側にずれるように湾曲しており、周方向に隣り合う磁気抵抗溝101aにおいては、一方の磁気抵抗溝101aの径方向内側の端部と、他方の磁気抵抗溝101aの径方向外側の端部とが径方向に重なる。そして、これらの磁気抵抗溝101aによって磁気抵抗部が構成されている。
【0074】
このようにすると、上記実施形態の(1),(5),(6)と同様の効果を得ることができる。また、固定構成部21aにおいて周方向に隣り合う磁気抵抗溝101a間を流れるマグネット13の磁束は、径方向に沿って直線的に流れるよりも磁気抵抗溝101aに沿って曲がりながら流れるようになり易い。従って、ロータコア91における磁束の経路が長くなる。また、固定構成部21aにおいて磁気抵抗溝101aが形成された部位を径方向に横切る磁束の一部は、磁気抵抗溝101aを避けるように曲がりながら流れる。このように流れる磁束は、径方向に沿って直線的に流れる場合よりも磁束の経路が長くなる。そのため、固定構成部21aにおける磁気抵抗溝101aの近傍では、磁束が径方向に流れ難くなっている。即ち、固定構成部21aにおける磁気抵抗溝101aの近傍は、磁気抵抗が高くなっている。従って、磁束が軸方向に漏れて回転軸11に流れ込むことをより抑制することができる。更に、各コアシート101の固定構成部21aに形成された複数の磁気抵抗溝101aは、周方向に互いに離間しており繋がっていないため、磁気抵抗溝101aを設けたことによるコアシート101の強度の低下が小さく抑えられている。従って、ロータコア91の剛性の低下を抑制しつつ、磁束の軸方向の漏れを抑制することができる。
【0075】
・上記実施形態では、複数枚のコアシート21は、厚さ方向の両面のうち磁気抵抗凹部21dが凹設された側の面が同じ方向を向くように積層されている。しかしながら、コアシート21を軸方向に積層する際のコアシート21の向きは適宜変更してもよい。
【0076】
・マグネット13は、径方向外側の端部がS極、径方向内側の端部がN極となるようにそれぞれ着磁されたものであってもよい。この場合、ロータ3では、S極のマグネット13と疑似磁極12bとが周方向に交互に配置されるとともに、疑似磁極12bは、疑似的にN極として機能する。
【0077】
・ロータコア12は、磁石被覆部12gを備えない構成であってもよい。
・ロータ3に備えられるマグネット13の数及び疑似磁極12bの数は、4個に限らず、適宜変更してもよい。マグネット13及び疑似磁極12bは、それぞれ少なくとも1個ずつロータ3に備えられればよい。また、固定部12aから径方向外側に突出した疑似磁極12bと一方の磁極のマグネット13とが周方向に交互に配置されるとともに、疑似磁極12bが他方の磁極として機能するように構成されるのであれば、疑似磁極12b及びマグネット13の形状は適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…モータケース、2…ステータ、3…ロータ、11…回転軸、12,71,91…ロータコア、12a…固定部、12b…疑似磁極、13…マグネット、21,81,101…コアシート、21a…固定構成部、21b…磁極構成部、21d,51,61…磁気抵抗部としての磁気抵抗凹部、41…磁気抵抗部としての第1の環状溝、42…磁気抵抗部としての第2の環状溝、81a…磁気抵抗部を構成する磁気抵抗孔、81b,81c…磁気抵抗部を構成する連通凹部、101a…磁気抵抗部としての磁気抵抗溝。
図1
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