特許第5755906号(P5755906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5755906-電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755906
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/14 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   H02G3/14
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-46096(P2011-46096)
(22)【出願日】2011年3月3日
(65)【公開番号】特開2012-182965(P2012-182965A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100166110
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 良也
(72)【発明者】
【氏名】藤城 一善
(72)【発明者】
【氏名】井上 広道
【審査官】 月野 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−025134(JP,A)
【文献】 特開2008−131752(JP,A)
【文献】 特開2001−346314(JP,A)
【文献】 実開平05−070126(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/14 − 3/16
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続箱本体に嵌合検知ピンを該接続箱本体の上端よりも高く突出させて設け、該接続箱本体に嵌合するアッパカバーに、該嵌合検知ピンの先端部を挿入させる嵌合検知孔を設け、該アッパカバーの不完全嵌合時に該嵌合検知ピンの先端面が該嵌合検知孔の上端よりも低く位置し、該アッパカバーの完全嵌合時に該嵌合検知ピンの先端面が該嵌合検知孔の上端と同一高さ又は該嵌合検知孔の上端よりも高く位置し、
前記接続箱本体が内壁と外壁とで成る二重壁と、該二重壁の間の隙間とを有し、該二重壁の間において前記嵌合検知ピンが配設されたことを特徴とする電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造。
【請求項2】
接続箱本体に嵌合検知ピンを該接続箱本体の上端よりも高く突出させて設け、該接続箱本体に嵌合するアッパカバーに、該嵌合検知ピンの先端部を挿入させる嵌合検知孔を設け、該アッパカバーの不完全嵌合時に該嵌合検知ピンの先端面が該嵌合検知孔の上端よりも低く位置し、該アッパカバーの完全嵌合時に該嵌合検知ピンの先端面が該嵌合検知孔の上端と同一高さ又は該嵌合検知孔の上端よりも高く位置し、
前記接続箱本体が、内壁と外壁とで成る二重壁と、該内壁から該接続箱本体の内側に向けて突出した凹壁と、該二重壁の間と該凹壁の内側との隙間とを有し、該凹壁と該外壁との間において前記嵌合検知ピンが配設されたことを特徴とするアッパカバー嵌合検知構造。
【請求項3】
前記接続箱本体と前記アッパカバーとに各ロック部が上下対向して設けられ、該アッパカバーのロック部における上板部に前記嵌合検知孔が設けられ、該上板部から内外の壁部が、請求項記載の前記二重壁又は請求項記載の前記凹壁と前記外壁に沿って垂下されたことを特徴とする請求項又は記載の電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱のアッパカバーの嵌合状態を嵌合検知ピンの目視ないし手感で検知させる電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気接続箱のアッパカバーの不完全嵌合を検知又は防止するものとして、種々の構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、合成樹脂製のアッパカバー及びロアカバーと、ロアカバー内に装着される内部部品とを備える電気接続箱において、両カバーの一方の係止部と被係止部及び両カバーの他方の係合部と被係合部とを係合ロックさせて両カバーを嵌合させる際に、アッパカバーが不完全嵌合である場合に、係合部と被係合部との間の隙間からカバーとは色違いの内部部品を目視して、アッパカバーの不完全嵌合を検知させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、容器本体の内壁と外壁とで成る二重壁の間にアッパカバーの中壁をガイド部に沿って進入させて、カバーの係合枠部を容器本体の係合突起に係合させることが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、アッパカバーと接続箱本体との一方の係止手段を支点にカバーを閉止方向に回動させ、係止手段が不完全係合である場合に、係止手段を延長部に当接させて、アッパカバーを傾けて、他方の係止手段の係合を行えないようにしたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−182308号公報
【特許文献2】特開2003−219539号公報
【特許文献3】特開2010−124560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の各構造にあっては、アッパカバーと接続箱本体等とのロック(係止や係合)を前後ないし左右といった側部において行うために、例えば電気接続箱を自動車に搭載し、電気接続箱の周囲(前後左右)に他の部品等を取り付けた場合に、ロック部分や嵌合確認用の隙間(特許文献1)が隠れて、メンテナンス等においてアッパカバーが接続箱本体に完全に嵌合したか否かを目視等で確認することが困難になるという懸念があった。また、アッパカバーの嵌合検知のために電気接続箱の防水性が低下することは避けなければならないことであった。
【0008】
本発明は、上記した点に鑑み、例えば車両等の狭いスペース内で電気接続箱が他の部品等で囲まれた場合でも、アッパカバーが接続箱本体に完全に嵌合したか否か(確実にロックされたか否か)を上方から簡単且つ確実に検知することができ、それに加えて電気接続箱の防水性を確保することのできる電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造は、接続箱本体に嵌合検知ピンを該接続箱本体の上端よりも高く突出させて設け、該接続箱本体に嵌合するアッパカバーに、該嵌合検知ピンの先端部を挿入させる嵌合検知孔を設け、該アッパカバーの不完全嵌合時に該嵌合検知ピンの先端面が該嵌合検知孔の上端よりも低く位置し、該アッパカバーの完全嵌合時に該嵌合検知ピンの先端面が該嵌合検知孔の上端と同一高さ又は該嵌合検知孔の上端よりも高く位置し、前記接続箱本体が内壁と外壁とで成る二重壁と、該二重壁の間の隙間とを有し、該二重壁の間において前記嵌合検知ピンが配設されたことを特徴とする。
【0010】
上記構成により、アッパカバーの上側面に嵌合検知孔が位置し、アッパカバーの嵌合時に嵌合検知孔に進入する嵌合検知ピンの先端面が上方から目視ないし手指で接触可能となる。目視ないし手感で、嵌合検知ピンの先端面が嵌合検知孔の上端と同一面にある場合、又は嵌合検知ピンの先端面が嵌合検知孔よりも上方に突出している場合に、アッパカバーの完全嵌合が検知され、嵌合検知ピンの先端面が嵌合検知孔の上端よりも下がっている(低い)場合に、すなわち、接続箱本体に対してアッパカバーが正規の嵌合位置よりも上側に位置する場合に、アッパカバーの不完全嵌合が検知される。
【0012】
また、たとえ嵌合検知孔から嵌合検知ピンを伝わって水滴が浸入した場合でも、嵌合検知ピンが二重壁の間に位置するから、水滴が二重壁の間の隙間に落下して、接続箱本体の内側への水の浸入が防止される。嵌合検知ピンは二重壁の間の隙間と同等の径ないし隙間よりも小径に形成される。嵌合検知ピンは、内壁と外壁とを連結する垂直な連結リブの上端に立設されることが好ましい。
【0013】
請求項に係る電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造は、接続箱本体に嵌合検知ピンを該接続箱本体の上端よりも高く突出させて設け、該接続箱本体に嵌合するアッパカバーに、該嵌合検知ピンの先端部を挿入させる嵌合検知孔を設け、該アッパカバーの不完全嵌合時に該嵌合検知ピンの先端面が該嵌合検知孔の上端よりも低く位置し、該アッパカバーの完全嵌合時に該嵌合検知ピンの先端面が該嵌合検知孔の上端と同一高さ又は該嵌合検知孔の上端よりも高く位置し、前記接続箱本体が、内壁と外壁とで成る二重壁と、該内壁から該接続箱本体の内側に向けて突出した凹壁と、該二重壁の間と該凹壁の内側との隙間とを有し、該凹壁と該外壁との間において前記嵌合検知ピンが配設されたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、アッパカバーの上側面に嵌合検知孔が位置し、アッパカバーの嵌合時に嵌合検知孔に進入する嵌合検知ピンの先端面が上方から目視ないし手指で接触可能となる。目視ないし手感で、嵌合検知ピンの先端面が嵌合検知孔の上端と同一面にある場合、又は嵌合検知ピンの先端面が嵌合検知孔よりも上方に突出している場合に、アッパカバーの完全嵌合が検知され、嵌合検知ピンの先端面が嵌合検知孔の上端よりも下がっている(低い)場合に、すなわち、接続箱本体に対してアッパカバーが正規の嵌合位置よりも上側に位置する場合に、アッパカバーの不完全嵌合が検知される。また、既存の接続箱本体の内壁と外壁とで成る二重壁の内壁に凹壁が部分的に設けられ(一体樹脂成形され)、凹壁の内側に嵌合検知ピンの径方向の一部分が収容される。嵌合検知ピンは外壁と凹壁との間隔の範囲で所望の太さに形成可能となる。例えば、凹壁の内側における内壁の一段低く形成された部分に嵌合検知ピンが立設される。あるいは、凹壁と内壁と外壁とを連結する垂直な連結リブに嵌合検知ピンが立設される。
【0015】
請求項に係る電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造は、請求項又は記載の電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造において、前記接続箱本体と前記アッパカバーとに各ロック部が上下対向して設けられ、該アッパカバーのロック部における上板部に前記嵌合検知孔が設けられ、該上板部から内外の壁部が、請求項記載の前記二重壁又は請求項記載の前記凹壁と前記外壁に沿って垂下されたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、アッパカバーのロック部の上板部に嵌合検知孔が配置されたことで、アッパカバーと接続箱本体とのロック部相互の嵌合状態が直接(精度良く)、嵌合検知ピンと嵌合検知孔の係合で表示される。また、嵌合検知孔から浸入した水滴が、上板部から垂下された内外の壁部で内外への飛散なく隔離され且つ案内されて、接続箱本体の請求項記載の二重壁の間の隙間又は請求項記載の凹壁と外壁との間の隙間に確実に落下する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、例えば車両等の狭いスペース内で電気接続箱が他の部品等で囲まれた場合でも、アッパカバーが接続箱本体に完全に嵌合したか否かを上方から作業性良く簡単にしかも簡素で低コストな構造で確実に検知することができる。
【0018】
また、嵌合検知孔から浸入した水滴を二重壁の隙間に沿って落下させて、接続箱本体の内側への水滴の浸入を確実に防止して、接続箱本体内の電気部品のショート、リークや錆の発生を防ぐことができる。
【0019】
請求項記載の発明によれば、例えば車両等の狭いスペース内で電気接続箱が他の部品等で囲まれた場合でも、アッパカバーが接続箱本体に完全に嵌合したか否かを上方から作業性良く簡単にしかも簡素で低コストな構造で確実に検知することができる。また、既存の接続箱本体の一部分の形状を変えて(既存の樹脂成形金型の一部を変更して)、簡単に且つ低コストで太くて折れたり曲がったりすることのない嵌合検知ピンを形成することができ、太い嵌合検知ピンでアッパカバーの嵌合状態の検知精度を高めることができる。
【0020】
請求項記載の発明によれば、アッパカバーと接続箱本体とのロック部のロック状態(確実にロックされたか否か)を嵌合検知ピンと嵌合検知孔の係合で確実に検知することができる。また、嵌合検知孔から浸入した水滴を内外の壁部に沿って接続箱本体の二重壁の間や凹壁と外壁との間に確実に案内させて、防水性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造の一実施形態を示す分解斜視図(円内は要部拡大図)である。
図2】接続箱本体における嵌合検知ピンの配置構造の一形態を示す要部平面図である。
図3】電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造を示す要部平面図である。
図4】アッパカバーの不完全嵌合状態を示す、(a)は斜視図、(b)は縦断面図(図3のA−A相当断面図)である。
図5】アッパカバーの完全嵌合状態の一形態を示す、(a)は斜視図、(b)は縦断面図(図3のA−A相当断面図)である。
図6】アッパカバーの完全嵌合状態の他の形態を示す、(a)は斜視図、(b)は縦断面図(図3のA−A相当断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1図5は、本発明に係る電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造の一実施形態を示すものである。
【0023】
図1の如く、電気接続箱1は、合成樹脂製のフレーム(接続箱本体)2と、フレーム2の上部に装着される合成樹脂製のアッパカバー3とを備え、フレーム2とアッパカバー3とはそれぞれ対向するロック部4,5を有し、フレーム2は、内壁6と外壁7とで成る二重壁8の間において上向きに突出した嵌合検知ピン9をロック部4の近傍に有し、アッパカバー3はロック部5において上下に貫通した嵌合検知孔10を有している。
【0024】
フレーム2の下部には合成樹脂製の不図示のロアカバーが装着される。フレーム2の下部外面にロアカバーに対するロック部11が設けられている。フレーム2は上下に貫通した空間12を有し、フレーム2内にはリレーやヒューズ等の不図示の電気部品を上面側に装着する各装着部13を有する接続ブロック(カセット部)14がフレーム2の下部開口から上向きに挿着される。
【0025】
フレーム2は平面視で横長で略矩形状(図1で手前側の部分は幅広に、奥側は幅狭に)形成され、前後左右に垂直な内壁6と外壁7とで成る二重壁8を有し、外壁7は内壁6に垂直な連結リブ15(図2)で連結されている。外壁7の上部7aは外面に下側の段部7bを一体に有し、段部7bの上側に外壁7の薄肉の上部7aが突出し、上部7aは内壁6の上部6aよりも少し低く位置している。外壁7には不図示の車両パネル等に対する取付固定用の取り付け足17が一体に設けられている。図1で符号17’は電線出口部を示す。
【0026】
外壁7の上部外面にロック部4が設けられている。ロック部4は、前側の外壁7から立ち上げられた左右の垂直な幅狭の側板18と、両側板18を連結する前側の垂直な幅広の板部19と、幅広の板部19の上端内面に設けられた突起20とで構成され、ロック部4の上半側はフレーム2の上端よりも上方に突出している。突起20の左右端と左右の側板18との間には溝19aが形成されている。
【0027】
図1では前側のロック部4のみを示しているが、フレーム2の後側の外壁7にも同様な又は異なる形状のロック部4が設けられている。ロック部4は通常前後に計二つ又は四つ程度設けられる。明細書で前後左右の方向性は説明の便宜上のものである。
【0028】
ロック部4の後側においてフレーム2の内壁6に凹壁21が一体に形成され、凹壁21は左右の垂直な幅狭の壁部21aと後側の垂直な幅広の壁部21bとで成り、凹壁21はフレーム2の内側空間12に向けて突出し、凹壁21の内側の空間(凹溝ないし隙間)21cによって内壁6と外壁7との間の隙間22が部分的に拡幅され、凹溝21c内に嵌合検知ピン9の径方向の一部(半分程度)が収容されている。
【0029】
嵌合検知ピン9は横断面円形に形成され、外壁7と凹壁21との間の垂直な連結リブ15(図2)から垂直に且つ一体に立ち上げ形成され、内壁6や外壁7の上端よりも且つロック部4の上端よりも上方に高く突出している。嵌合検知ピン9の上端外周9aは少しテーパ状に面取されている。
【0030】
図2の如く、凹壁21と内壁6と外壁7とは垂直な連結リブ15で連結され、凹壁21の内側で内壁6は一段低く形成され、凹壁21の上端は内壁6の上端と同一高さであり、連結リブ15の上端は一段低い内壁部分6’の上端と同じ高さであり、連結リブ15と一段低い内壁部分6’とは十字に直交し、連結リブ15と一段低い内壁部分6’との直交部の上端に嵌合検知ピン9が立設されている。内壁6と外壁7とは所要箇所の他の連結リブ34でも連結して補強され、内壁6と外壁7との間の隙間22と、凹壁21と一段低い内壁部分6’との間の隙間21cとはフレーム2の下端まで貫通し、嵌合検知ピン9を伝わって各隙間22,21cに入った水滴はフレーム2の下側の不図示のロアカバーに落下し、ロアカバーの水抜き孔から外部に排出される。
【0031】
なお、図2において、一段低い内壁6’を排除して、外壁6と凹壁21とを連結リブ15で直接連結し、連結リブ15の上端の長手方向の所要(所望)の位置に嵌合検知ピン9を立設することも可能である。また、連結リブ15を排除して、一段低い内壁6’の上端に嵌合検知ピン9を立設することも可能である。
【0032】
図1の如く、アッパカバー3は、フレーム2の形状に合わせて横長に形成され、水平な天壁(上壁)23と前後左右の周壁(側壁)24とで成り、周壁24はフレーム2の高さ違いの二重壁(内壁6が外壁7よりも高い)に合わせて上下二段に形成され、上段部24aの内側にフレーム2の内壁6の上部6aが収容され、下段部24bの内側に外壁7の上部7aが収容される。
【0033】
フレーム2のロック部4の上側に対向してアッパカバー3の前側の側壁24にロック部5が設けられている。ロック部5は、側壁24に直交した左右の垂直な板部(保護壁)25と、左右の板部25の間で側壁24の上部から天壁23のほぼ延長上に水平に鍔状に突出した上板部26と、上板部26から下向きに垂下された可撓性のアーム板27と、アーム板27の下端外面に設けられた突起28とを備えるものである。
【0034】
ロック板27の内側には撓み空間29(図4)が設けられ、撓み空間29は矩形状の上部開口(型抜き孔)29aに連通し、上板部26に、嵌合検知ピン9の先端部(上端部)9bを進入係合させる円形の嵌合検知孔10が設けられている。
【0035】
図3の如く、フレーム2にアッパカバー3を正規に嵌合させた状態で、アッパカバー3のロック部5がフレーム2のロック部4に完全係合し、フレーム2の嵌合検知ピン9がアッパカバー3の嵌合検知孔10に完全係合する。
【0036】
図4(a)(b)は、フレーム2にアッパカバー3が不完全嵌合(半嵌合)した状態を示すものであり、アッパカバー3の前側の壁部24が低く、後側の壁部(図示せず)が高く位置して、アッパカバー3が前下がりに傾斜した状態となっている。フレーム2とアッパカバー3との前側の各ロック部4,5の突起20,28同士は隙間なく当接係合し、不図示の後側の各ロック部が不完全係合となっている。
【0037】
この状態で、嵌合検知ピン9の先端(上端)9bは嵌合検知孔10の下端側に位置し、嵌合検知ピン9の先端面9bと嵌合検知孔10の上端(上端縁)10aすなわちロック部5の上板部26の上面との間に段差(窪み)30を生じ、作業者は目視ないし手指の感触で段差(窪み)30を容易に認識することができ、アッパカバー3の不完全嵌合を容易に且つ確実に検知することができる。
【0038】
図4(b)の如く、嵌合検知孔10はアッパカバー3のロック部5の内側における平行な前後(内外)の壁部31,32で仕切られた空間33に連通しており、前壁(外壁)32は後壁(内壁)31よりも下向きに上板部26の前端から長く垂下形成され、且つ断面略クランク状(L字状)に屈曲した下端部32aを有し、後壁31は上板部26の後端から真直に垂下形成され、前壁32の下端部32aはフレーム2の外壁7の前面側に不完全に嵌合し、後壁31の下端部31aは内壁6の前面側に不完全に嵌合して正規位置(図5)よりも高く位置している。図4の内壁6は図1の凹壁21の後壁部21である。図4(b)は図3の矢視A−Aに相当する位置の断面である。
【0039】
図5(a)(b)は、フレーム2にアッパカバー3が完全嵌合した状態の一形態を示すものであり、嵌合検知ピン9の先端面9bが嵌合検知孔10の上端縁10aすなわちアッパカバー3のロック部5の上板部26の上面と同一水平面に位置し、作業者は目視ないし手指の感触で嵌合検知ピン9の先端9bと嵌合検知孔10の上端縁10aとに段差(図4の符号30)のないことを容易に認識することができ、アッパカバー3の完全嵌合を容易に且つ確実に検知することができる。
【0040】
垂直なフレーム2に対してアッパカバー3は水平に完全嵌合し、アッパカバー3のロック部5の内側における前後(内外)の壁部31,32は垂直に位置して、フレーム2の外壁7と内壁6とに嵌合している。すなわち、前壁(外壁)32の断面L字状に屈曲した下端部32aがフレーム2の外壁7の外面に若干の隙間を存して接し、且つ外壁7の下側の段部7bに当接係合し、後壁(内壁)31の真直な下端部31aがフレーム2の内壁6の外面にほぼ隙間なく接触する。前壁32の下端部32aは図1のアッパカバー3の下側の段部24bに連続する。
【0041】
また、アッパカバー3のロック部5の突起28はフレーム2のロック部4の突起20に若干の隙間(余裕代)を存して完全係合している。ロックに際してはロック板27が内向きに撓んでロック板27の下端の突起28がフレーム2のロック部4の上端の突起20を乗り越え、ロック板27の復元と同時に両突起20,28が係合する。ロック板27と前壁32との間にロック板27の撓み空間29が位置する。図5(a)のロック板27の左右両側の保護板25の下半の前向きの突出部分25aがフレーム2のロック部4の突起20と左右の幅狭の板部18との間の溝19aに係合する。
【0042】
嵌合検知ピン9の上端部(符号9bで代用)の外周面は嵌合検知孔10の内周面に殆ど隙間なく接触する。嵌合検知ピン9を伝わって水滴が侵入した場合でも、フレーム2の内壁6と外壁7との間の隙間22や凹壁21の内側の隙間21cに沿って水滴を落下させることで、フレーム2の内側空間12すなわちフレーム内のリレーやヒューズ等の電気部品への水の浸入が防止される。内壁6と外壁7と凹壁21は防水壁として機能する。水滴は隙間22,21cからフレーム2の下側の不図示のロアカバーの孔部を経て外部へ排出される。
【0043】
図6(a)(b)は、フレーム2にアッパカバー3が完全嵌合した状態の他の形態を示すものであり、嵌合検知ピン9’は図5の例の嵌合検知ピン9よりも長く形成され、アッパカバー3の完全嵌合時に、嵌合検知ピン9’の先端部9bが嵌合検知孔10を貫通してアッパカバー3の上板部26から上向きに外部に少し突出する。作業者は嵌合検知ピン9の先端9bが嵌合検知孔10から完全に突出したことを目視ないし手指の感触で簡単且つ確実に認識することができ、アッパカバー3の完全嵌合を容易に且つ確実に検知することができる。
【0044】
その他の構成は図5におけると同様であるので図5と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。嵌合検知孔10からの嵌合検知ピン9の先端部9bの突出量はアッパカバー3の上板部26の板厚の半分程度ないしそれ以下であり、手指で確実に嵌合検知ピン9の突出を認識できるものであればよい。
【0045】
図5及び図6の例はともに、嵌合検知ピン9の先端9bを上向きにアッパカバー3の天壁23側に位置させるものであるので、電気接続箱1を車両のエンジンルーム等の狭いスペースに配置した(電気接続箱1の前後左右に他の部品等が配置されている)場合でも、作業者は嵌合検知ピン9の先端9bの突出の有無や凹み30(図4)を目視ないし手指で容易に且つ確実に認識して、フレーム2へのアッパカバー3の嵌合不完全を容易に且つ確実に検知することができる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、内壁6の内側に凹壁21を設けて太めの嵌合検知ピン9を配置したが、図1の実施形態よりも細い嵌合検知ピン(9)を用いた場合には、凹壁21のない内壁6と外壁7との間に嵌合検知ピン(9)を配置可能である。その場合、嵌合検知ピン(9)は、内壁6と外壁7とを連結する連結リブ(15)に立設されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る電気接続箱のアッパカバー嵌合検知構造は、車両等における前後左右を他の部品等で囲まれた狭いスペースに電気接続箱を搭載した際に、アッパカバーが完全に閉止されたか否かを上方からの嵌合検知ピンの先端の目視や触手によって簡単且つ確実に検知し、それに加えて電気接続箱の防水性を確保するために利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 電気接続箱
2 フレーム(接続箱本体)
3 アッパカバー
4,5 ロック部
6 内壁
7 外壁
8 二重壁
9 嵌合検知ピン
9b 先端面
10 嵌合検知孔
10a 上端
21 凹壁
26 上板部
31,32 前後(内外)の壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6