【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る圧空成形用金型は、
下側に向かって突出した上型突出部が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔を有する上型、及び、
上型突出部に対向して、上側に向かって突出した下型突出部が外周部に設けられた下型、
から構成され、型締時、上型突出部と下型突出部とが圧空成形用材料を介して接する圧空成形用金型であって、
下型の底面の中央部には凸部が設けられており、
上型には、上下動する可動コア部が備えられており、
下型の底面と対向する可動コア部の底面には、下型に設けられた凸部の平面形状と相似形の内面を有するリング状の突出部が設けられていることを特徴とする。尚、可動コア部が最下方に位置するとき、可動コア部の底面に設けられたリング状の突出部は、下型に設けられた凸部を隙間を開けて取り囲む状態となる。
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る圧空成形方法は、
下側に向かって突出した上型突出部が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔を有する上型、及び、
上型突出部に対向して、上側に向かって突出した下型突出部が外周部に設けられた下型、
から構成され、
下型の底面の中央部には凸部が設けられており、
上型には、上下動する可動コア部が備えられており、
下型の底面と対向する可動コア部の底面には、下型に設けられた凸部の平面形状と相似形の内面を有するリング状の突出部が設けられている圧空成形用金型を用いた圧空成形方法であって、
可動コア部を上方に配置し、圧空成形用材料を下型突出部上に配して、圧空成形用材料を加熱し、次に、
上型と下型とを型締めして、加熱された圧空成形用材料を介して上型突出部と下型突出部とを接した状態とした後、
導入孔から圧縮気体を導入して、下型に設けられた凸部に基づき圧空成形用材料を賦形し、次いで、
可動コア部を最下方に移動させ、可動コア部の底面に設けられた突出部の内面を圧空成形用材料に接触させる、
各工程から成ることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の態様に係る圧空成形方法において、圧縮気体の圧力は1×10
6Pa乃至5×10
6Paとすることが好ましい。圧縮気体として、空気を例示することができるが、これに限定するものではなく、例えば、窒素ガス等を用いることもできる。以下の説明においても同様である。
【0009】
上記の好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る圧空成形方法にて使用される圧空成形用金型、あるいは又、本発明の第1の態様に係る圧空成形用金型(以下、これらを総称して、『本発明の第1の態様に係る圧空成形用金型等』と呼ぶ)において、下型に設けられた凸部の側面と、可動コア部に設けられた突出部の内面の間隔(L
S)は、成形すべき成形品の厚さt
Sに相当する形態とすることが好ましい。即ち、可動コア部が最下方に位置するとき、可動コア部の底面に設けられたリング状の突出部は、圧空成形用材料を挟んで、下型に設けられた凸部の側面と対向して配置された状態となる。これによって、下型の底面から凸部が立ち上がる領域に圧空成形用材料をより一層確実に密着させることができる結果、成形品に一層優れた賦形性を付与することができる。
【0010】
上記の好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る圧空成形用金型等において、可動コア部が最下方に配されたとき、可動コア部の底面と下型に設けられた凸部の頂面上に位置する圧空成形用材料の部分との間には隙間が存在することが望ましい。隙間が存在することで、可動コア部の底面と圧空成形用材料とが接触することが無くなり、しかも、下型に設けられた凸部の頂面上に位置する圧空成形用材料の部分との間に圧縮気体が巻き込まれることを防止できる結果、成形品に一層優れた外観を付与することができる。尚、この隙間として、0.5mm乃至5mmを例示することができる。
【0011】
更には、上記の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様に係る圧空成形用金型等において、凸部の表面上には剥離促進層が形成されている形態とすることができる。そして、この場合、剥離促進層は、SiC層、TiC層、TiN層、CrN層、DLC層、TiAlN層、TiSin層、AlCrN層、CrSiN層、TiBN層、AlCrSiN層、AlZrN層、AlZrSiN層及びCrBN層から成る群から選択された少なくとも1層から成る形態とすることができる。そして、これによって、凸部から成形品を容易に剥離することができる結果、優れた外観、高い寸法精度を有する成形品の成形が可能となる。後述する本発明の第2の態様に係る圧空成形方法にて使用される圧空成形用金型においても、同様とすることができる。
【0012】
更には、上記の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様に係る圧空成形用金型等において、可動コア部に設けられた突出部の底面には、成形すべき成形品を切断するための刃が配されている形態とすることができる。刃は、例えば、突出部の内面と同一仮想平面内に位置させればよい。そして、これによって、圧空成形用金型からの成形品に取り外しが極めて容易となる。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る圧空成形用金型は、
下側に向かって突出した上型突出部が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔を有する上型、及び、
上型突出部に対向して、上側に向かって突出した下型突出部が外周部に設けられた下型、
から構成され、型締時、上型突出部と下型突出部とが圧空成形用材料を介して接する圧空成形用金型であって、
下型の底面の中央部には凸部が設けられており、
凸部の表面上には剥離促進層が形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る圧空成形方法は、
下側に向かって突出した上型突出部が外周部に設けられており、圧縮気体を導入する導入孔を有する上型、及び、
上型突出部に対向して、上側に向かって突出した下型突出部が外周部に設けられた下型、
から構成され、
下型の底面の中央部には凸部が設けられており、
凸部の表面上には剥離促進層が形成されている圧空成形用金型を用いた圧空成形方法であって、
圧空成形用材料を下型突出部上に配して、圧空成形用材料を加熱し、次に、
上型と下型とを型締めして、加熱された圧空成形用材料を介して上型突出部と下型突出部とを接した状態とした後、
導入孔から圧縮気体を導入して、下型に設けられた凸部に基づき圧空成形用材料を賦形する、
各工程から成ることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の態様に係る圧空成形方法において、圧縮気体の圧力は1×10
6Pa乃至5×10
6Paとすることが好ましい。
【0016】
上記の目的を達成するための本発明の成形品は、
矩形の平面形状を有する底面、及び、底面の外縁部から上方に延びる側面を有し、継ぎ目の無い(シームレスの)箱状の成形品であって、
底面の縦方向の長さは、1cm乃至1m、好ましくは、5cm乃至35cmであり、横方向の長さは、1cm乃至80cm、好ましくは、5cm乃至35cmであり、
底面の厚さは、0.5mm乃至1.5mm、好ましくは、0.7mm乃至1.2mmであり、
外面の鉛筆硬度は、2H以上、好ましくは、3H以上であり、
反り量は、0.4mm以下、好ましくは、0.3mm以下であることを特徴とする。
【0017】
鉛筆硬度の測定は、JIS K5600−5−4:1999に準拠して行えばよい。また、反りは、成形品の底面にて測定すればよく、23゜C、相対湿度50%の環境に、24時間、放置した後の平面度(JIS B0419−1991に準拠)と、85゜C、相対湿度85%、120時間の環境試験を実行した後、23゜C、相対湿度50%の環境に、4時間、放置した後の平面度との変化量である。
【0018】
成形品は箱状の形状を有する。即ち、成形品の外観は、例えば、直方体であるが、側面と側面とが交わる部分は丸みを帯びていてもよい。即ち、底面は矩形の平面形状を有するが、この矩形の平面形状の四隅が丸みを帯びていてもよい。また、底面と側面とが交わる部分は丸みを帯びていてもよい。
【0019】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様に係る圧空成形用金型及び圧空成形方法、並びに、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る圧空成形用金型及び圧空成形方法において、圧空成形用材料は、アクリル系樹脂層とポリカーボネート樹脂層の積層構造を有し、ポリカーボネート樹脂層の外面(箱状の形状を有する成形品の内面を構成する面)の少なくとも一部分には印刷が施されている形態とすることができる。そして、この場合、ポリカーボネート樹脂層が下型に設けられた凸部と接することが好ましく、更には、これらの場合、圧空成形用材料は、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に、厚さが50μm乃至120μmのアクリル系樹脂層が共押出しによって積層されて成り、総厚が0.5mm乃至1.5mmであり、アクリル系樹脂層の鉛筆硬度が2H以上である形態とすることが好ましい。アクリル系樹脂層上にはハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層の形成は、成形に使用する前の圧空成形用材料に対して行ってもよいし、成形品に対して行ってもよい。また、本発明の成形品は、外側に位置するアクリル系樹脂層、及び、内側に位置するポリカーボネート樹脂層の積層構造を有する材料から成形されている形態とすることができ、この場合、アクリル系樹脂層の厚さは50μm乃至120μmであることが望ましく、更には、これらの場合、ポリカーボネート樹脂層の表面(箱状の形状を有する成形品の内面)の少なくとも一部分には印刷が施されている形態とすることが好ましい。ポリカーボネート樹脂は、高い靱性を有することが好ましく、具体的には、ISO179に規定されたシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)が50kJ/m
2以上の値を有することが好ましい。また、ポリカーボネート樹脂の数平均分子量は、2×10
4以上であることが望ましい。尚、PMMAのシャルピー衝撃強さは2kJ/m
2以下であり、高流動性のポリカーボネート樹脂のシャルピー衝撃強さは9kJ/m
2以下である。アクリル系樹脂層上にはハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層の形成は、成形に使用する前の圧空成形用材料に対して行ってもよいし、成形品に対して行ってもよい。
【0020】
本発明の成形品から電子機器や電子部品、自動車内装部品を構成することができ、具体的には、携帯電話やスマートフォンの筐体の他、タブレット型の含むパーソナルコンピュータの筐体、PDA(携帯情報端末,Personal Digital Assistant)の筐体、携帯型の音楽プレーヤの筐体、ゲーム機の筐体、電子ブックの筐体、電子辞書の筐体、デジタルカメラやビデオカメラの筐体、テレビジョン受像機の筐体、自動車用のヒータ等のコントロールパネルやスイッチ類、木目パーツの筐体を例示することができる。本発明の成形品から携帯電話やスマートフォンの筐体を構成する場合、筐体に設けられた透明な窓部分を本発明の成形品の透明な部分から構成し、筐体のそれ以外の部分を本発明の成形品の印刷された部分から構成すればよく、この場合、例えば、黒色インクを用いてポリカーボネート樹脂層の表面を印刷すればよい。透明なアクリル系樹脂層を介してポリカーボネート樹脂層の印刷面を眺めるので、印刷面の見栄えが格段に向上する。尚、筐体に設けられた透明な窓部分の下方には、通常、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置等が配される。成形品にプレス加工又はNC加工を施して、所望の外形形状への加工、穴部の加工等を行ってもよい。
【0021】
可動コア部の上下動や上型の上下動は、例えば、油圧シリンダや空気圧シリンダを用いて行うことができる。圧空成形用材料の加熱は、例えば、ヒータを用いて行えばよい。圧空成形用金型それ自体は、周知の構成、構造を有し、周知の材料、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、炭素鋼等から作製すればよく、耐久性の観点から、炭素鋼から作製することが好ましい。リング状の突出部を含む可動コア部は、例えば、圧空成形用金型を構成する材料と同じ材料から作製すればよい。
【0022】
本発明の成形品は、箱状の
基体を内側に備えている構成とすることができる。ここで、基体を構成する材料として、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金を挙げることができるし、あるいは又、基体として、例えば、射出成形法に基づき熱可塑性樹脂から作製、成形された成形品を挙げることもできる。尚、この場合、下型の底面の中央部に設けられた凸部に箱状の
基体を被せればよい。但し、これに限定するものではなく、本発明の成形品の裏面を基体(箱状であってもよいし、箱状でなくともよい)に、接着剤あるいは粘着剤を用いて接着してもよいし、あるいは又、超音波接合法に基づき接着してもよい。箱状の
基体に突起部やスナップ部、切欠部、凹部、印籠構造部等を設けることで、他の部品への取り付け、他の部品との嵌合等を容易に行うことができる。そして、これによって、ASSY(アッシー)化を図ることができる。