【実施例】
【0018】
先ず、主に
図1〜
図4を用いて、本実施例の構成を説明する。
図1に示されているように、本実施例の地板1は、平面外形形状が円形をしており、その中央には、本発明の第1開口に相当する開口部1aが形成されている。この開口部1aは、対物光学系に入射した被写体光の光軸を中心にして円形に形成されており、2次元画像の撮像時にも3次元画像の撮像時にも、その被写体光の光路に常に配置されており、2次元画像を撮像するときには、その略全領域を通過した被写体光が、結像光学系などを介して撮像素子に導かれるようになっている。
【0019】
また、カバー板2は、平面外形形状が、地板1よりも若干小さな円形をしており、その中央には地板1の開口部1aと同じ形状をした開口部2aが形成されている。そして、このカバー板2は、四つのねじ3,4,5,6によって地板1に取り付けられ、地板1との間に羽根室を構成しているが、
図1においては、羽根室内の構成の一部を見やすくするために、上方の一部を破断して示しており、
図2及び
図5〜
図7においては、その図示を省略している。
【0020】
図1においては各々が重なった状態で示されているため、個々の形状を理解するのが容易でないが、羽根室内には、
図3(a)〜(h)に示された形状をしている8枚の羽根7,8,9,10,11,12,13,14が、それらの一部を順に重ねるようにして配置されている。そして、それらのうち、羽根7,8,9,10は、開口部1aの左側の領域において、地板1の羽根室側の面に立設された羽根取付け軸1b,1c,1d,1eに対して回転可能に取り付けられ、羽根11,12,13,14は、開口部1aの右側の領域において、地板1の羽根室側の面に立設された羽根取付け軸1f,1g,1h,1iに対して回転可能に取り付けられている。尚、これらの8枚の羽根の外形形状と、それらの重なり関係は、本実施例の場合に限定されるものではない。
【0021】
そこで、それらの個々の羽根の形状と取付け構成を、一番地板1側に配置されている羽根から順に説明する。先ず、一番地板1側には、
図3(a)に示されている羽根7が配置されている。この羽根7は、円形の孔7aと長孔7bとを有していて、孔7aを羽根取付け軸1bに対して回転可能に嵌合させている。次に、
図3(b)に示された羽根8が配置されている。この羽根8は、円形の孔8aと長孔8bと開口形成縁8cとを有していて、孔8aを羽根取付け軸1cに対して回転可能に嵌合させている。
【0022】
その次に、
図3(c)に示された羽根9が配置されている。この羽根9は、上記の羽根8との共通部品であって、円形の孔9aと、長孔9bと、開口形成縁9cとを有している。そして、
図3(b)の状態にある上記の羽根8を上下方向へ回転させて裏返したのと同じ状態にしておいて、孔9aを羽根取付け軸1dに対して回転可能に嵌合させている。その次には、
図3(d)に示された羽根10が配置されている。この羽根10は、上記の羽根7との共通部品であって、円形の孔10aと長孔10bとを有している。そして、
図3(a)の状態にある上記の羽根7を上下方向へ回転させて裏返したのと同じ状態にしておいて、孔10aを羽根取付け軸1eに対して回転可能に嵌合させている。
【0023】
上記の羽根10の次には、
図3(e)に示された羽根11が配置されている。この羽根11は、上記の羽根7,10との共通部品であって、円形の孔11aと長孔11bとを有しており、
図3(a)の状態にある上記の羽根7を左右方向へ回転させて裏返した状態にしておいて、孔11aを羽根取付け軸1fに対して回転可能に嵌合させている。次に、
図3(f)に示された羽根12が配置されている。この羽根12は、上記の羽根8,9との共通部品であって、円形の孔12aと、長孔12bと、開口形成縁12cとを有している。そして、
図3(b)の状態にある上記の羽根8を左右方向へ回転させて裏返したのと同じ状態にしておいて、孔12aを羽根取付け軸1gに対して回転可能に嵌合させている。
【0024】
また、上記の羽根12の次には、
図3(g)に示された羽根13が配置されている。この羽根13は、上記の羽根8,9,12との共通部品であり、円形の孔13aと、長孔13bと、開口形成縁13cとを有している。そして、上記の羽根9を左右方向へ回転させて裏返したのと同じ状態にしておいて、孔13aを羽根取付け軸1hに対して回転可能に嵌合させている。最後に、
図3(h)に示された羽根14が、最もカバー板2側に配置されている。この羽根14は、上記の羽根7,10,11と共通部品であり、円形の孔14aと長孔14bとを有している。そして、上記の羽根10を左右方向へ回転させて裏返したのと同じ状態にしておいて、孔14aを羽根取付け軸1iに対して回転可能に嵌合させている。
【0025】
尚、羽根8,9の開口形成縁8c,9cは、3次元画像の撮像時において、本発明の第2開口及び第3開口のうちの一方に相当する開口を、両者によって形成するためのものであり、また、羽根12,13の開口形成縁12c,13cは、それらの開口の他方に相当する開口を、両者によって形成するためのものである。また、
図3以外の図面においては、これらの8枚の羽根7,8,9,10,11,12,13,14の孔7a,8a,9a,10a,11a,12a,13a,14aと、長孔7b,8b,9b,10b,11b,12b,13b,14bの符号を省略してある。
【0026】
地板1の被写体側の面には、全く同じ構成をした二つの電流制御式の電磁アクチュエータが取り付けられている。これらの電磁アクチュエータは、周知の電磁アクチュエータであって、例えば、特開2009−300661号公報などに記載されている電磁アクチュエータと実質的に同じ構成をしており、永久磁石を有している回転子が、固定子コイルに対する電流の通電方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内でだけ回転することの可能なものである。そこで、その構成を、
図1及び
図2を用いて簡単に説明する。
【0027】
先ず、各々の回転子15,16は、地板1の被写体側の面に立設された回転子取付け軸1j,1kに対して回転可能に取り付けられている。これらの回転子15,16は、径方向に2極に着磁された永久磁石からなる円筒状の本体部と、その本体部と一体であって径方向へ張り出して形成された合成樹脂製の腕部と、その腕部の先端に設けられた出力ピンとで構成されていて、本体部を回転子取付け軸1j,1kに対して回転可能に嵌合させているが、
図1においては、回転子15,16とそれらの出力ピン15a,16aにだけ符号を付け、
図2においては、回転子16の本体部16bと腕部16cにも符号を付けてある。
【0028】
そして、回転子15の出力ピン15aは、地板1に形成された図示していない円弧状の長孔を貫通して、羽根室内において、羽根7,8,9,10の長孔7b,8b,9b,10bの全てに挿入されている。そのため、
図1において、回転子15が反時計方向へ回転すると、羽根7,8は、時計方向へ回転させられ、相互の重なり量を少なくしつつ開口部1a内に進入してゆき、また、羽根9,10は、反時計方向へ回転させられ、相互の重なり量を少なくしつつ開口部1a内に進入していくようになっている。
【0029】
他方、回転子16の出力ピン16aも、地板1に形成された図示していない円弧状の長孔を貫通して、羽根室内において、上記した羽根11,12,13,14の長孔11b,12b,13b,14bに挿入されている。そのため、
図1において、回転子16が反時計方向へ回転すると、4枚の羽根11,12,13,14は、同時に回転を開始し、羽根11,12は、反時計方向へ回転させられ、相互の重なり量を少なくしつつ開口部1a内に進入し、また、羽根13,14は、時計方向へ回転させられ、相互の重なり量を少なくしつつ開口部1a内に進入するようになっている。
【0030】
また、地板1の被写体側の面には、合成樹脂製の固定子枠17,18が、それらの長さ方向(
図1における上下方向)の両端を、図示していないねじによって取り付けられ、地板1との間に上記の回転子15,16が配置されるようになっている。そして、これらの固定子枠17,18には、中空部が地板1側にあるようにして筒状のボビン部17a,18aが形成されており、その外側に固定子コイル19,20が巻回されている。また、二つの脚部を有していて全体として略U字形をしているヨーク21,22は、一方の脚部をボビン部17a,18aの中空部に貫通させていて、両方の脚部の先端を磁極部とし、回転子15,16の円周面に対向させている。
【0031】
このように構成されている本実施例の電磁アクチュエータは、上記したように、固定子コイル19,20に対する通電方向に対応した方向へ、回転子15,16が、所定の角度範囲内でだけ回転するようになっている。そして、固定子コイル19,20に対する非通電時においては、回転子15,16は、本体部の永久磁石の磁極と、ヨーク21,22の磁極部との間に作用する磁気吸引力によって、いずれか一方へ回転力が与えられているようにしている。そのため、本実施例の場合は、
図1の状態においては、固定子コイル19,20には通電されていないが、回転子15,16には、時計方向へ回転する力が与えられており、その回転は、各羽根が、地板1の外周部に形成された環状の壁部1mに接触していることにより、阻止されている。従って、この状態は、振動等に対して安定して維持される。
【0032】
尚、本実施例の電磁アクチュエータは、このような構成をしているが、本発明の駆動手段は、このような構成の電磁アクチュエータに限定されず、例えば、特開2007−174794号公報に記載されているタイプの構成をした電流制御式の電磁アクチュエータであっても構わない。しかしながら、周知のように、本実施例のように構成されているタイプの電磁アクチュエータの方が、扁平な構成をしているため、羽根駆動装置を全体として薄型化するのに好適である。
【0033】
また、本発明の駆動手段は、これらのような電流制御式の電磁アクチュエータに限定されない。従来から、カメラ用羽根駆動装置の駆動源としては、各種の小型のステッピングモータが採用されているが、それらのステッピングモータを採用しても構わない。それらの中には、装置全体を薄型化するのに適した扁平な構成のものも知られている。ステッピングモータは、一般的にはコストが高くなるが、大きい駆動力が得やすいので、撮像装置の仕様によっては、ステッピングモータを用いる方が好ましい場合がある。
【0034】
以上の構成説明からも分かるように、本実施例の場合には、地板1に取り付けられている構成部材は、カバー板2を除いて、全て共通部品化されている。そのため、低コスト化には、極めて好適な構成といえる。
【0035】
ところで、既に述べたように、本実施例の羽駆動装置は、2次元画像と3次元画像とを選択して撮像することの可能な撮像装置に用いるものである。そのため、その撮像装置は、2次元画像と3次元画像のいずれか一方を選択して、被写体(被写界)をモニターで観察するだけの製品に採用することもできるし、そのようにして観察しながら、被写体の撮像情報を、記憶装置に記憶させる(撮影する)製品にも採用することができる。
【0036】
更に、それらの場合、静止画と動画のいずれか一方についてだけの撮像を可能にした製品にも、また、両方の撮像を可能にした製品にも採用することができるし、さらには、2次元画像と3次元画像のいずれか一方を静止画として撮像でき、他方を動画として撮像可能な製品にも採用することができる。しかも、照明装置を併設すれば、直接肉眼で観察することのできない暗所の観察や探索用の製品などに採用することも可能である。従って、本実施例の羽根駆動装置を備えている撮像装置は、種々の産業分野における画像での認識装置に採用することが可能である。
【0037】
しかしながら、それらの製品の全てに採用された場合を説明するのは大変であるし、また、その必要もないと考えるので、以下においては、本実施例の羽駆動装置を備えた撮像装置が、静止画と動画の両方を撮影することの可能な、単体のデジタルカメラに採用された場合を想定して、その作動を説明する。そのため、図示していないが、その想定したデジタルカメラには、2次元画像を得るための撮影と3次元画像を得るための撮影とを選択するための選択手段と、静止画を撮影するための静止画用レリーズボタン(スイッチ)と、動画を撮影するための動画用レリーズボタン(スイッチ)とが、撮影者によって操作可能に設けられているものとする。
【0038】
そこで先ず、2次元の静止画を撮影する場合を説明する。
図1は、カメラの電源がオンになっていて、撮影者が、上記の図示していない選択手段によって、2次元画像の撮影を選択しているときの撮影待機状態を示したものである。このとき、二つの電磁アクチュエータの固定子コイル19,20には電流が供給されていない。しかしながら、既に説明したように、回転子15,16の永久磁石の磁極と、ヨーク21,22の磁極部との対向配置関係によって、回転子15,16には時計方向へ回転する力が与えられている。ところが、各羽根が地板1の壁部1mに接触しているため回転することができず、このような、開口部1aの全開状態が、安定的に維持されている。
【0039】
そのため、この
図1の状態においては、デジタルカメラの対物光学系(撮影レンズ)に入射して開口部1aを通過した被写体光が、図示していない撮像素子に到達しているため、周知のように、撮影者は、撮像素子によって撮像された被写体の2次元画像を、デジタルカメラに設けられた図示していないモニターで観察することが可能になっている。
【0040】
先ず、2次元の静止画を撮影する場合は、
図1の状態において、上記の図示していない静止画用レリーズボタンを押す。それによって、それまで撮像素子に蓄積されていた観察画像用の電荷が放出され、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、測光装置の測定結果によって決定された所定の時間が経過すると、図示していない露光時間制御回路からの信号によって、二つの電磁アクチュエータの固定子コイル19,20に対して、順方向の電流が供給され、回転子15,16は、反時計方向へ略同時に回転させられる。
【0041】
そのため、回転子15によって、羽根7,8は、相互の重なり量を少なくしながら時計方向へ回転させられ、また、羽根9,10は、相互の重なり量を少なくしながら反時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1aに進入させられていく。他方、回転子16によって、羽根11,12は、相互の重なり量を少なくしながら反時計方向へ回転させられ、また、羽根13,14は、相互の重なり量を少なくしながら時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1aに進入させられていく。そして、羽根8,9,12,13の先端が、地板1の壁部1mに当接することによって、二つの回転子15,16と8枚の羽根7〜14の回転が停止させられる。
図5は、その停止させられたときの状態を示したものであるが、このとき、開口部1aは、8枚の羽根7〜14によって、完全に閉鎖されている。
【0042】
即ち、
図5において、羽根8,9は、両方の開口形成縁8c,9cによって、開口部1a内における光軸の右側の領域に小さい楕円状の開口を形成しているが、その小さい開口は、少なくとも羽根12,13によって塞がれている。また、羽根12,13は、両方の開口形成縁12c,13cによって、開口部1a内における光軸より左側の領域に小さい楕円状の開口を形成しているが、その小さい開口は、少なくとも羽根8,9によって塞がれている。
【0043】
更に、開口部1aの上方領域においては、羽根8,12の開口形成縁8c,12cとは反対側の縁と、開口部1aの縁との間に、被写体光を通過させてしまう略三日月状の隙間が形成されているが、それらの隙間は、羽根7,11によって塞がれている。また、開口部1aの下方領域においては、羽根9,13の開口形成縁9c,13cとは反対側の縁と、開口部1aの縁との間に、被写体光を通過させてしまう略三日月状の隙間が形成されているが、それらの隙間は、羽根10,14によって塞がれている。
【0044】
ところで、本実施例の場合には、8枚の羽根7〜14によって、開口部1aを閉鎖するようにしているが、本発明は、羽根8,9,12,13の面積をもう少し大きくすることにより、羽根7,10,11,14を設けずに、上記の略三日月状の隙間を形成せず、開口部1aを閉鎖できるようにしても差し支えない。しかし、そのようにすると、開口部1aを全開にしているときに、そのように大きくされた羽根を収容しておくためのスペースを確保するため、本実施例の場合よりも、地板1の面積(即ち直径)を大きくせざるを得なくなる。そのため、本実施例のように、羽根を8枚にした方が、装置の小型化には有利である。
【0045】
このようにして、8枚の羽根7〜14によって開口部1aが閉鎖されると、図示していない撮像素子に蓄積された電荷は、撮像情報処理回路を介して撮像情報として、記憶装置に記憶され、2次元の静止画の撮影が終了する。尚、本実施例の場合には、このように、撮像情報が記憶装置に転送されている間も、二つの電磁アクチュエータの固定子コイル19,20には、順方向の電流を供給し続けている。しかしながら、本実施例の電磁アクチュエータの場合には、周知のように、
図5の状態において固定子コイル19,20に対する通電を断っても、回転子15,16の永久磁石の磁極と、ヨーク17,18の磁極部との対向配置関係により、回転子15,16には反時計方向への回転力が与えられている。そのため、本実施例の場合には、節電のために、この開口部1aの閉鎖中に、固定子コイル19,20に対する通電を断つようにしても差し支えない。
【0046】
撮影が終了すると、二つの電磁アクチュエータの固定子コイル19,20に対して、これまでの順方向の電流に代えて逆方向の電流が供給され、回転子15,16は、いずれも時計方向へ回転させられる。そのため、羽根7,8は、相互の重なり量を多くしつつ反時計方向へ回転させられ、羽根9,10は、相互の重なり量を多くしつつ時計方向へ回転させられ、開口部1aから退いていく。また、羽根11,12は、相互の重なり量を多くしつつ時計方向へ回転させられ、羽根13,14も、相互の重なり量を多くしながら反時計方向へ回転させられ、開口部1aから退いていく。そして、8枚の羽根7〜14が地板1の壁部1mに当接することによって、二つの回転子15,16と8枚の羽根7〜14の回転は停止させられる。その後、固定子コイル19,20に対する通電を断つと、
図1に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0047】
尚、本実施例の場合には、撮像素子がCCDの場合を前提にしているため、撮影ごとに、固定子コイル19,20に通電して、羽根7〜14に往復回転をさせ、開口部1aを開閉させている。しかし、本発明は、撮像素子がCCDであることに限定されない。そのため、例えば、撮像素子がCMOSの場合には、周知のように、撮影ごとに、羽根7〜14に往復回転をさせる必要がない。また、本実施例の場合には、
図1の状態において、次の撮影を行うつもりがなく、電源スイッチをオフにした場合には、開口部1aは全開状態のままになっていて、モニターでの観察が不可能になるだけである。しかしながら、電源スイッチをオフにしたときには、開口部1aを閉鎖させ、電源スイッチをオンにすると、開口部1aを全開状態にさせるようにしてもよく、そのようにすると、撮像素子の性能維持(劣化防止)などで有利になる。
【0048】
更に、通常のデジタルカメラは、被写体が非常に明るい場合には、撮像素子に達する被写体光量を減じるために、絞り装置やフィルタ装置を設けていることがあるが、本発明は、そのように構成することも可能である。そして、そのように構成したい場合は、本実施例の地板1を若干大きくし、絞り羽根用又はフィルタ羽根用の駆動源(ステッピングモータ又は電流制御式のアクチュエータ)を、本実施例の電磁アクチュエータのように、地板1の羽根室外の面に取り付けるようにするのが好ましい。また、絞り羽根又はフィルタ羽根の方は、本実施例の羽根と同じ羽根室に配置しても構わないが、地板1とカバー板2の間を、周知の中間板で仕切るようにし、一方の羽根室に本実施例の羽根を配置し、他方の羽根室にそのような絞り羽根又はフィルタ羽根を配置するようにするのが好ましい。
【0049】
次に、2次元の動画撮影を行う場合を説明する。この場合は、上記の選択手段が2次元画像での撮影を選択した状態になっているときには、そのままでよいが、3次元画像での撮影を選択した状態になっているときには、選択手段を操作して、2次元画像の撮影を選択した状態にする必要がある。しかしながら、本実施例の場合には、そのように選択手段を操作した場合であっても、二つの電磁アクチュエータの回転子15,16は回転されない。つまり、本実施例の場合には、2次元画像の撮影(静止画撮影及び動画撮影)のときも、3次元画像の撮影(静止画撮影及び動画撮影)のときも、撮影待機状態は同じであって、
図1に示された状態ということである。
【0050】
そのため、撮影を行う場合には、モニターによって、2次元画像の被写体を観察しておいてから、レリーズボタンを押し続けることになるが、そのレリーズボタンは、上記の静止画用レリーズボタンではなく、動画用レリーズボタンを押すことになる。それにより、羽根7〜14を全く回転させることなく、撮像素子の電荷の蓄積と放出とが短かい周期で繰り返され、放出の都度、その時点での撮像情報が記憶装置に記憶されていく。そして、動画用レリーズボタンを離すと、その信号で撮影が終了し、撮影待機状態になる。
【0051】
次に、3次元の静止画撮影の場合を説明する。この場合には、上記の選択手段が2次元画像での撮影を選択した状態になっているときは、選択手段を操作して、3次元画像での撮影を選択した状態にする必要がある。そして、本実施例の場合には、上記したように、3次元画像での撮影を選択した場合であっても、その撮影待機状態は、2次元画像での撮影を選択した場合の撮影待機状態と全く同じであり、
図1に示された状態である。そのため、この場合にも、撮影前においては、モニターによって、2次元画像の被写体を観察することになる。
【0052】
そして、撮影を行なうときは、3次元画像の撮影であっても、静止画の撮影であることには変わりがないので、上記の静止画用レリーズボタンを押すことになる。それにより、先ず、開口部1aの右側に設けられた電磁アクチュエータの固定子コイル20に対してだけ、順方向の電流が供給される。そのため、回転子16によって、羽根11,12は、相互の重なり量を少なくしながら反時計方向へ回転させられ、また、羽根13,14は、相互の重なり量を少なくしながら時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1a内に進入していく。そして、羽根12,13の先端が、地板1の壁部1mに当接することによって、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止させられる。
【0053】
図6は、そのようにして、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止させられた状態を示したものであるが、このとき、開口部1a内においては、開口部1aの中心より左側、即ち対物光学系に入射した被写体光の光軸の左側に、2枚の羽根12,13の開口形成縁12c,13cによって、楕円状の小さな開口が形成されている。そのため、この開口を通過した被写体光は、図示していない結像光学系などを介して撮像素子に導かれることになる。そして、この状態が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。
【0054】
そして、測光装置の測定結果によって決定された所定の時間が経過すると、図示していない露光時間制御回路からの信号によって、今度は、開口部1aの左側に設けられている電磁アクチュエータの固定子コイル19に対して、順方向の電流が供給される。そのため、回転子15によって、羽根7,8は、相互の重なり量を少なくしつつ時計方向へ回転させられ、また、羽根9,10は、相互の重なり量を少なくしながら反時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1a内に進入していく。そして、羽根8,9の先端が、地板1の壁部1mに当接することによって、回転子15と4枚の羽根7〜10の回転が停止させられる。
【0055】
このようにして、回転子15と4枚の羽根7〜10の停止させられた状態は、
図5に示された状態である。即ち、このときには、
図6示されているような、羽根12,13の開口形成縁12c,13cによって形成された楕円状の小さい開口は、羽根8,9によって閉じられ、被写体光は8枚の羽根7〜14によって完全に遮断された状態になっている。そして、このような開口部1aの閉鎖状態が得られると、
図6の状態で撮像素子に蓄積された撮影用の電荷は、撮像情報処理回路を介して、撮像情報として記憶装置に転送され、記憶される。
【0056】
このようにして、記憶装置への転送が終了すると、次に、開口部1aの右側に設けられている電磁アクチュエータの固定子コイル20に対し、逆方向の電流が供給される。そのため、回転子16によって、羽根11,12は、相互の重なり量を多くしつつ時計方向へ回転させられ、また、羽根13,14は、相互の重なり量を多くしながら反時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1aから退いていく。そして、羽根11〜14が、地板1の壁部1mに当接することによって、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止させられる。
【0057】
図7は、そのようにして、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止させられた状態を示したものであるが、このとき、開口部1a内においては、被写体光の光軸の右側に、羽根8,9の開口形成縁8c,9cによって、楕円状の小さな開口が形成されている。そのため、この開口を通過した被写体光は、図示していない結像光学系などを介して撮像素子に導かれることになる。そして、この状態が得られると、撮像素子に蓄積されていた電荷を一旦放出して、新たに撮影画像用の電荷を蓄積させていく。
【0058】
その後、所定の時間が経過すると、今度は、開口部1aの右側に設けられている電磁アクチュエータの固定子コイル20に対して、順方向の電流が供給される。そのため、回転子15によって、羽根11,12は、相互の重なり量を少なくしつつ反時計方向へ回転させられ、また、羽根13,14は、相互の重なり量を少なくしつつ時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1a内に進入していく。そして、羽根12,13の先端が、地板1の壁部1mに当接することによって、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止させられる。
【0059】
このようにして、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止させられた状態は、
図5に示された状態である。即ち、このときも、
図7示されているような、羽根8,9の開口形成縁8c,9cによって形成された楕円状の小さい開口は、羽根12,13によって閉じられ、被写体光は完全に遮断された状態になる。そのため、このような開口部1aの閉鎖状態が得られると、
図7の状態のときに撮像素子に蓄積された撮影用の電荷は、撮像情報処理回路を介して、撮像情報として記憶装置に転送され、記憶される。その結果、光軸の左右に形成された二つの小さな開口を通過した被写体光によって、視差のある二つの静止画像が撮影されたことになる
【0060】
このようにして、視差のある二つの静止画像の撮影が終了すると、二つの電磁アクチュエータの固定子コイル19,20に対して、逆方向の電流が同時に供給される。そのため、回転子15,16は、時計方向へ回転させられるので、羽根7,8は、相互の重なり量を多くしつつ反時計方向へ回転させられ、羽根9,10は、相互の重なり量を多くしつつ時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1aから退いていく。また、羽根11,12は、相互の重なり量を多くしつつ時計方向へ回転させられ、羽根13,14は、相互の重なり量を多くしながら反時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1aから退いていく。そして、8枚の羽根8〜14が、地板1の壁部1mに当接することによって、回転子15,16と8枚の羽根7〜14の回転が停止させられる。その後、固定子コイル19,20に対する通電を断つと、
図1に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0061】
尚、既に述べたように、本実施例の撮像素子は、CCDであることを前提にしている。そのため、上記のように、この撮影中においては、8枚の羽根のうち4枚の羽根11〜14は、2往復の作動をさせられている。しかしながら、本発明の撮像素子は、CCDに限定されるものではない。そのため、本発明の撮像素子として、例えばCMOSを用いた場合には、周知のように、その性能上、4枚の羽根11〜14による上記の2回目の往復作動は不要になる。また、本実施例の場合には、羽根8,9によって形成される開口と、羽根12,13によって形成される開口とが、楕円状をしているが、円形であっても、方形であってもよいことは言うまでもない。
【0062】
最後に、3次元の動画撮影を行う場合を説明する。この場合にも、上記の選択手段が3次元画像での撮影を選択した状態になっているときは、そのままでよいが、2次元画像での撮影を選択した状態になっているときは、選択手段を操作して、3次元画像での撮影を選択した状態にする必要がある。そして、上記したように、3次元画像での撮影を選択した場合でも、その撮影待機状態は、
図1に示された状態である。そのため、この場合にも、撮影前においては、モニターによって、2次元画像の被写体を観察することになる。
【0063】
この場合において撮影するときは、上記の動画用レリーズボタンを押し、撮影を終了させるまで押し続けることになる。そこで先ず、動画用レリーズボタンを押すと、開口部1aの右側に設けられている電磁アクチュエータの固定子コイル20に対してだけ、順方向の電流が供給される。そのため、回転子16によって、羽根11,12は反時計方向へ回転され、羽根13,14は時計方向へ回転されて、いずれも開口部1a内に進入していく。その後、羽根12,13の先端が、地板1の壁部1mに当接して、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止させられると、
図6に示されているように、撮影レンズに入射した被写体光の光軸の左側に、2枚の羽根12,13の開口形成縁12c,13cによって、楕円状の小さな開口が形成される。
【0064】
図6の状態が得られると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、新たに撮影画像用の電荷が蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、今度は、開口部1aの左側に設けられている電磁アクチュエータの固定子コイル19に対して、順方向の電流が供給される。そのため、回転子15によって、羽根7,8は時計方向へ回転させられ、羽根9,10は反時計方向へ回転させられて、開口部1a内に進入していく。そして、羽根8,9の先端が、地板1の壁部1mに当接して、回転子15と4枚の羽根7〜10の回転が停止し、
図5の状態が得られると、
図6の状態で得られた撮像情報が、撮像情報処理回路を介して記憶装置に転送され、記憶される。
【0065】
このようにして、記憶装置への転送が終了すると、次に、開口部1aの右側に設けられている電磁アクチュエータの固定子コイル20に対して、逆方向の電流が供給される。そのため、回転子16によって、羽根11,12は時計方向へ回転させられ、羽根13,14は反時計方向へ回転させられて、開口部1aから退いていく。そして、その後、羽根11〜14が、地板1の壁部1mに当接して、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止すると、
図7に示されているように、被写体光の光軸の右側に、羽根8,9の開口形成縁8c,9cによって楕円状の小さな開口が形成される。
【0066】
図7の状態が得られると、撮像素子に蓄積された電荷を放出して、新たに撮影画像用の電荷を蓄積させていく。そして、所定の時間が経過すると、今度は、開口部1aの右側に設けられている電磁アクチュエータの固定子コイル20に対して、順方向の電流が供給される。そのため、回転子15によって、羽根11,12は反時計方向へ回転させられ、羽根13,14は時計方向へ回転させられて、開口部1a内に進入してゆき、羽根12,13の先端が、地板1の壁部1mに当接することによって、回転子16と4枚の羽根11〜14の回転が停止させられる。そのときの状態は、
図5に示された状態である。そのため、
図7の状態のときに得られた撮像情報は、この状態のときに、記憶装置に転送され、記憶される。その結果、これまでの作動で、視差のある二つの静止画像が撮影されたことになる。
【0067】
これまでの説明で分かるように、ここまでの作動は、上記の3次元の静止画を撮影する場合と同じである。しかしながら、このあとは、上記の3次元の静止画を撮影する場合のように、二つの電磁アクチュエータの固定子コイル19,20に対して、逆方向の電流を同時に供給するのではなく、開口部の左側にある電磁アクチュエータの固定子コイル19に対してだけ、逆方向の電流を供給する。そのため、回転子15は、時計方向へ回転させられるので、羽根7,8は反時計方向へ回転させられ、また、羽根9,10は時計方向へ回転させられて、いずれも開口部1aから退いていく。そして、羽根7〜10が、地板1の壁部1mに当接することによって停止させられ、再び
図6に示された状態になる。
【0068】
この2回目の
図6の状態が得られると、上記の1回目の
図6の状態での撮影と同様にして撮影が開始され、その撮影は、上記のようにして回転子15を反時計方向へ回転させ、
図5の状態にすることによって終了する。その次には、回転子16を時計方向へ回転させて2回目の
図7の状態にし、上記した1回目の
図7の状態での撮影と同様にして撮影を開始させるが、その撮影は、回転子16を時計方向へ回転させ、
図5の状態にすることによって終了する。そして、その後は、3回目の
図6の状態を得て撮影が行われ、それが終了すると、3回目の
図7の状態を得て撮影が行われるというように、
図6の状態での撮影と
図7の状態での撮影とが、短い周期で繰り返して行われることになる。
【0069】
このような短い周期で行われる連続撮影は、撮影者が、それまで押していた動画用レリーズボタンから、指を離すことによって終了する。そうすると、動画用レリーズボタンの復帰作動に伴って発せられる終了信号によって、本実施例の場合には、二つの電磁アクチュエータの固定子コイル19,20に対して、所定の時間だけ逆方向の電流が供給され、回転子15,16に、時計方向へ回転する力が与えられる。そのため、その終了時点において、例えば、
図5の状態が得られているときは、二つの回転子15,16が時計方向へ回転され、また
図6の状態が得られているときは、回転子16だけが時計方向へ回転され、さらに
図7の状態が得られているときには、回転子15だけが時計方向へ回転されることになる。その結果、開口部1aは全開にされ、8枚の羽根7〜14は、
図1に示された撮影待機状態に復帰する。
【0070】
尚、上記の作動説明においては、
図1の撮影待機状態で観察できる被写体画像は、いずれも2次元画像である場合で説明したが、そのような2次元画像のほかに、3次元画像でも観察できるようにすることは容易である。そのようにしたい場合は、デジタルカメラに、3次元画像での観察専用のボタンを備えておき、そのボタンを押しているときは、記憶装置に記憶させることなく、本実施例の羽根駆動装置を、上記した3次元の動画撮影の場合と同様に作動させ、撮像素子で撮像した画像をモニターに表示させるようにすればよい。
【0071】
しかし、そのように構成した場合には、3次元画像での観察後、直ちに3次元の静止画又は動画を撮影したい場合、3次元画像での観察専用ボタンから指を離し、静止画用レリーズボタン又は動画用レリーズボタンを選択して押し直す必要がある。そこで、そのように異なるボタンを押し直さなくても、3次元画像での観察後に、直ちに3次元の静止画又は動画を撮影できるようにすることも可能である。そのようにしたい場合には、静止画用レリーズボタン又は動画用レリーズボタンを半分押したときに3次元画像での観察が行え、撮影したい場合には、そのレリーズボタンを更に押し下げるようにすればよい。