特許第5756003号(P5756003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756003発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756003
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20150709BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20150709BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20150709BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   C08J9/16CET
   C08L25/04
   C08L91/00
   C08K3/00
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-275733(P2011-275733)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-82865(P2013-82865A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2014年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-211754(P2011-211754)
(32)【優先日】2011年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】地海 良輔
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−002268(JP,A)
【文献】 特開2002−356575(JP,A)
【文献】 特開2003−327739(JP,A)
【文献】 特開平02−034640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/16
C08K 3/00
C08L 25/04
C08L 91/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法によって製造された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有され、芳香族炭化水素がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内で均一に含有され、かつ無機発泡核剤がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内で均一に含有されていることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記無機発泡核剤がタルクであることを特徴とする請求項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記流動パラフィンが、オレフィン系飽和炭化水素の混合物であり、かつ平均炭素数が20〜35個の範囲内であり、常温で液体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、
ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、流動パラフィンを0.01〜5質量部の範囲内、芳香族炭化水素を0.15〜3.0質量部の範囲内、及び無機発泡核剤を0.05〜5質量部の範囲内で添加し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィン、芳香族炭化水素及び無機発泡核剤を均一に含有させたことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記無機発泡核剤がタルクであることを特徴とする請求項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記流動パラフィンが、オレフィン系飽和炭化水素の混合物であり、かつ平均炭素数が20〜35個の範囲内であり、常温で液体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱し発泡させて得られたポリスチレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項8】
請求項に記載のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を成形型のキャビティに充填し、加熱して型内発泡成形して得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体。
【請求項9】
発泡成形体全体に、流動パラフィンがポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有され、芳香族炭化水素がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内で均一に含有され、かつ無機発泡核剤がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内で均一に含有されていることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に関し、高発泡倍数で機械強度に優れた発泡成形体を得ることが可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、所謂、溶融押出法により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法に関して、例えば、特許文献1に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、押出機内で溶融された熱可塑性樹脂に発泡剤を圧入し、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に付設されたダイの多数の小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性粒子を得る熱可塑性樹脂発泡性粒子の製造方法であって、前記ダイの小孔ランド部を通過する際の発泡剤含有溶融樹脂の剪断速度が12000〜35000sec−1、且つ樹脂の見かけ溶融粘度が100〜700ポイズとなるように押し出すことを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂発泡性粒子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/028173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術によって製造された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、加熱して予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高めることが困難であり、高発泡倍数の発泡成形体を得ることが難しかった。
また、従来の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、特に、リサイクルされたポリスチレン系樹脂を用いて製造された発泡成形体は、曲げ強度などの機械強度が低くなる傾向があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、高発泡倍数で機械強度に優れた発泡成形体を得ることが可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するため、本発明は、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法によって製造された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有されたことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【0008】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に無機発泡核剤が均一に含有されたことが好ましい。
【0009】
また本発明は、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法によって製造された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有され、芳香族炭化水素がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内で均一に含有され、かつ無機発泡核剤がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内で均一に含有されていることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【0010】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記無機発泡核剤がタルクであることが好ましい。
【0011】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、前記流動パラフィンが、オレフィン系飽和炭化水素の混合物であり、かつ平均炭素数が20〜35個の範囲内であり、常温で液体であることが好ましい。
【0012】
また本発明は、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で流動パラフィンを添加して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンを均一に含有させたことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記ポリスチレン系樹脂に、さらに無機発泡核剤を添加することが好ましい。
【0014】
また本発明は、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、流動パラフィンを0.01〜5質量部の範囲内、芳香族炭化水素を0.15〜3.0質量部の範囲内、及び無機発泡核剤を0.05〜5質量部の範囲内で添加し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィン、芳香族炭化水素及び無機発泡核剤を均一に含有させたことを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記無機発泡核剤がタルクであることが好ましい。
【0016】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、前記流動パラフィンが、オレフィン系飽和炭化水素の混合物であり、かつ平均炭素数が20〜35個の範囲内であり、常温で液体であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱し発泡させて得られたポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を提供する。
【0018】
また本発明は、前記ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子を成形型のキャビティに充填し、加熱して型内発泡成形して得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【0019】
また本発明は、発泡成形体全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有されたことを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【0020】
また本発明は、発泡成形体全体に、流動パラフィンがポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有され、芳香族炭化水素がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内で均一に含有され、かつ無機発泡核剤がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内で均一に含有されていることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有された構成としたことによって、加熱して予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高めることができ、高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
また、リサイクルされたポリスチレン系樹脂を用いて製造した場合でも、曲げ強度などの機械強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
さらに、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有され、芳香族炭化水素がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内で均一に含有され、かつ無機発泡核剤がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内で均一に含有されている構成としたことによって、加熱して予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩発泡倍数をより一層高めることができ、より高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
【0022】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で流動パラフィンを添加して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンを均一に含有させるようにしたので、高発泡倍数の発泡成形体を得ることができ、またリサイクルされたポリスチレン系樹脂を用いて製造した場合でも、曲げ強度などの機械強度に優れた発泡成形体を得ることができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を効率よく製造することができる。
さらに、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、流動パラフィンを0.01〜5質量部の範囲内、芳香族炭化水素を0.15〜3.0質量部の範囲内、及び無機発泡核剤を0.05〜5質量部の範囲内で添加し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィン、芳香族炭化水素及び無機発泡核剤を均一に含有させたことによって、より高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有されたことを特徴としている。
【0025】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に用いられるポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0026】
また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0027】
また、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよく、添加する樹脂としては、例えば、発泡成形体の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0028】
原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、再生品ではないポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン)を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られた再生ポリスチレン系樹脂を使用することができる。
この再生ポリスチレン系樹脂としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したポリスチレン系樹脂を用いることができる。また、使用することができる再生ポリスチレン系樹脂は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたもの以外にも、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンターなど)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレットした再生ポリスチレン系樹脂を用いることができる。
【0029】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の脂肪族炭化水素、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC−123)、クロロジフルオロメタン(HCFC−22)、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC−124)等のクロロフルオロカーボン、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、ジフルオロメタン(HFC−32)等のフルオロカーボン、各種アルコール、二酸化炭素、水、及び窒素などの物理発泡剤が挙げられ、これらの中の1種又は2種以上を併用して使用することができる。これらのうち、特に好ましい発泡剤としては、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタンが挙げられる。発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して1〜15質量部の範囲とされ、より好ましくは3〜12質量部の範囲とされる。
【0030】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる流動パラフィンは、オレフィン系飽和炭化水素の混合物であり、かつ平均炭素数が20〜35個の範囲内であり、常温で液体であることが好ましい。
流動パラフィンの量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内であり、0.5〜2質量部の範囲内がより好ましい。流動パラフィンの量が0.01質量部未満であると、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果が十分に得られなくなる。流動パラフィンの量が5質量部を超えると、やはり予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果が十分に得られなくなる。
流動パラフィンは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体(粒子中に気泡を含む場合は、その気泡を含まない領域)にわたり均一に含有していることが好ましい。樹脂粒子の局部、例えば、樹脂粒子の表層部分に流動パラフィンが偏在していると、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果が十分に得られなくなる。
【0031】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、発泡剤及び流動パラフィンの他、無機発泡核剤が均一に含有されていることが好ましい。無機発泡核剤としては、タルク、シリカ、その他の無機粉体が挙げられ、これらの中でもタルクが好ましい。
無機発泡核剤の量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜2質量部の範囲がより好ましい。
使用する無機発泡核剤の平均粒径は、0.1〜30μmの範囲内であることが好ましく、0.5〜10μmの範囲内であることがより好ましい。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に流動パラフィンとともにタルクなどの無機発泡核剤を含有させることで、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果を高めることができる。
無機発泡核剤は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体にわたり均一に含有している必要がある。樹脂粒子の局部、例えば、樹脂粒子の表層部分にタルクが偏在していると、得られる発泡成形体の機械強度が低下するおそれがある。
【0032】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、物性を損なわない範囲内において、架橋剤、可塑剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤等の添加剤を添加してもよく、又、ジンクステアレート等の粉末状金属石鹸類を前記発泡性スチレン樹脂粒子の表面に塗布しておけば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡工程においてポリスチレン系樹脂予備発泡粒子同士の結合を減少させることができて好ましい。
【0033】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の粒径は、特に限定されないが、通常は0.5〜3.0mmの範囲が好ましく、0.7〜2.0mmの範囲がより好ましい。また、粒子の形状は、特に限定されないが、球状乃至略球状であることが好ましい。
【0034】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有された構成としたことによって、加熱して予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高めることができ、高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
また、リサイクルされたポリスチレン系樹脂を用いて製造した場合でも、曲げ強度などの機械強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
【0035】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の好ましい実施形態において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有され、芳香族炭化水素がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内で均一に含有され、かつ無機発泡核剤がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内で均一に含有されている構成とすることが好ましい。
本実施形態によれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有され、芳香族炭化水素がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内で均一に含有され、かつ無機発泡核剤がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内で均一に含有されている構成としたことによって、加熱して予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩発泡倍数をより一層高めることができ、より高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
【0036】
本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる流動パラフィンは、オレフィン系飽和炭化水素の混合物であり、かつ平均炭素数が20〜35個の範囲内であり、常温で液体であることが好ましい。
流動パラフィンの量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内であり、0.1〜2質量部の範囲内がより好ましい。流動パラフィンの量が0.01質量部未満であると、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果が十分に得られなくなる。流動パラフィンの量が5質量部を超えると、やはり予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果が十分に得られなくなる。
流動パラフィンは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体(粒子中に気泡を含む場合は、その気泡を含まない領域)にわたり均一に含有していることが好ましい。樹脂粒子の局部、例えば、樹脂粒子の表層部分に流動パラフィンが偏在していると、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果が十分に得られなくなる。
【0037】
本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる芳香族炭化水素としては、例えばスチレン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン等が挙げられ、これらの中でもスチレン、トルエンが好ましい。
前記芳香族炭化水素の量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内であり、0.2〜2質量部の範囲がより好ましい。芳香族炭化水素の量が前記範囲内であれば、加熱して予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩発泡倍数をより一層高めることができ、より高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
芳香族炭化水素は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体(粒子中に気泡を含む場合は、その気泡を含まない領域)にわたり均一に含有していることが好ましい。樹脂粒子の局部、例えば、樹脂粒子の表層部分に芳香族炭化水素が偏在していると、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果が十分に得られなくなる。
【0038】
本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる無機発泡核剤としては、タルク、シリカ、カルシウム塩、マグネシウム塩、粘土鉱物などが挙げられ、その中でもタルクが好ましい。また、使用するタルクの平均粒径は、0.1〜30μmの範囲が好ましく、0.5〜10μmの範囲内がより好ましい。
無機発泡核剤の量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内であり、0.5〜10μmの範囲内が好ましい。無機発泡核剤の量が前記範囲内であれば、加熱して予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩発泡倍数をより一層高めることができ、より高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
無機発泡核剤は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体(粒子中に気泡を含む場合は、その気泡を含まない領域)にわたり均一に含有していることが好ましい。樹脂粒子の局部、例えば、樹脂粒子の表層部分に無機発泡核剤が偏在していると、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高める効果や発泡成形体の機械強度向上効果が十分に得られなくなる。
【0039】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で流動パラフィンを添加して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンを均一に含有させたことを特徴としている。
【0040】
本発明の製造方法の好ましい実施形態において、樹脂供給装置内で溶融されたポリスチレン系樹脂に発泡剤を圧入・混練し、発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂供給装置先端に付設されたダイの小孔から直接冷却用液体中に押し出し、押し出すと同時に押出物を高速回転刃で切断するとともに、押出物を液体との接触により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、流動パラフィンを0.01〜5質量部の範囲内、芳香族炭化水素を0.15〜3.0質量部の範囲内、及び無機発泡核剤を0.05〜5質量部の範囲内で添加し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィン、芳香族炭化水素及び無機発泡核剤を均一に含有させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることが好ましい。ここで、流動パラフィン、芳香族炭化水素及び無機発泡核剤は、前述したものと同じでよい。
【0041】
図1は、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す構成図であり、本例の製造装置は、樹脂供給装置としての押出機1と、押出機1の先端に取り付けられた多数の小孔を有するダイ2と、押出機1内に樹脂原料等を投入する原料供給ホッパー3と、押出機1内の溶融樹脂に発泡剤供給口5を通して発泡剤を圧入する高圧ポンプ4と、ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面に冷却水を接触させるように設けられ、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7と、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッティング室7内に回転可能に設けられたカッター6と、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して運ばれる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る固液分離機能付き脱水乾燥機10と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて分離された冷却水を溜める水槽8と、この水槽8内の冷却水をカッティング室7に送る高圧ポンプ9と、固液分離機能付き脱水乾燥機10にて脱水乾燥された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を貯留する貯留容器11とを備えて構成されている。
【0042】
なお、押出機1としては、スクリュを用いる押出機またはスクリュを用いない押出機のいずれも用いることができる。スクリュを用いる押出機としては、例えば、単軸式押出機、多軸式押出機、ベント式押出機、タンデム式押出機などが挙げられる。スクリュを用いない押出機としては、例えば、プランジャ式押出機、ギアポンプ式押出機などが挙げられる。また、いずれの押出機もスタティックミキサーを用いることができる。これらの押出機のうち、生産性の面からスクリュを用いた押出機が好ましい。また、カッター6を収容したカッティング室7も、樹脂の溶融押出による造粒方法において用いられている従来周知のものを用いることができる。
【0043】
図1に示す製造装置を用い、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造するには、まず、原料の前記ポリスチレン系樹脂、流動パラフィン、芳香族炭化水素、無機発泡核剤や必要に応じて添加される発泡核剤などの所望の添加剤を秤量し、原料供給ホッパー3から押出機1内に投入する。原料のポリスチレン系樹脂は、ペレット状や顆粒状にして事前に良く混合してから1つの原料供給ホッパーから投入してもよいし、あるいは例えば複数のロットを用いる場合は各ロットごとに供給量を調整した複数の原料供給ホッパーから投入し、押出機内でそれらを混合してもよい。また、複数のロットのリサイクル原料を組み合わせて使用する場合には、複数のロットの原料を事前に良く混合し、磁気選別や篩分け、比重選別、送風選別などの適当な選別手段により異物を除去しておくことが好ましい。
【0044】
押出機1内にポリスチレン系樹脂、流動パラフィン、芳香族炭化水素、無機発泡核剤やその他の添加剤を供給後、樹脂を加熱溶融し、その溶融樹脂をダイ2側に移送しながら、発泡剤供給口5から高圧ポンプ4によって発泡剤を圧入して溶融樹脂に発泡剤を混合し、押出機1内に必要に応じて設けられる異物除去用のスクリーンを通して、溶融物をさらに混練しながら先端側に移動させ、発泡剤を添加した溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出す。
【0045】
ダイ2の小孔が穿設された樹脂吐出面は、室内に冷却水が循環供給されるカッティング室7内に配置され、且つカッティング室7内には、ダイ2の小孔から押し出された樹脂を切断できるようにカッター6が回転可能に設けられている。発泡剤添加済みの溶融物を押出機1の先端に付設したダイ2の小孔から押し出すと、溶融物は粒状に切断され、同時に冷却水と接触して急冷され、発泡が抑えられたまま固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子となる。
【0046】
形成された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、カッティング室7から冷却水の流れに同伴して固液分離機能付き脱水乾燥機10に運ばれ、ここで発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を冷却水と分離すると共に脱水乾燥する。乾燥された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、貯留容器11に貯留される。
【0047】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法において、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で流動パラフィンを添加して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンを均一に含有させるようにしたので、高発泡倍数の発泡成形体を得ることができ、またリサイクルされたポリスチレン系樹脂を用いて製造した場合でも、曲げ強度などの機械強度に優れた発泡成形体を得ることができる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を効率よく製造することができる。
さらに、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して、流動パラフィンを0.01〜5質量部の範囲内、芳香族炭化水素を0.15〜3.0質量部の範囲内、及び無機発泡核剤を0.05〜5質量部の範囲内で添加し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィン、芳香族炭化水素及び無機発泡核剤を均一に含有させたことによって、より高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
【0048】
(ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、水蒸気加熱等により加熱して予備発泡し、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子(以下、予備発泡粒子と記す)とする。この予備発泡粒子は、製造するべき発泡成形体の密度と同等の嵩密度となるように予備発泡される。本発明において、その嵩密度は限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cmの範囲内とし、0.015〜0.050g/cmの範囲内とするのが好ましい。
【0049】
なお、本発明において予備発泡粒子の嵩密度とは、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。
<予備発泡粒子の嵩密度>
先ず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させ、メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積VcmをJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて予備発泡粒子の嵩密度を測定する。
嵩密度(g/cm)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
【0050】
<予備発泡粒子の嵩発泡倍数>
また、予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出される数値である。
嵩発泡倍数=1/嵩密度(g/cm
【0051】
前記予備発泡粒子は、発泡樹脂成形体の製造分野において周知の装置及び手法を用い、該予備発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、水蒸気加熱等により加熱して型内発泡成形し、ポリスチレン系樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体と記す)を製造する。
本発明の発泡成形体の密度は特に限定されないが、通常は0.010〜0.10g/cmの範囲内とし、0.015〜0.050g/cmの範囲内とするのが好ましい。
【0052】
なお、本発明において発泡成形体の密度とは、JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した発泡成形体密度のことである。
<発泡成形体の密度>
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
【0053】
<発泡成形体の発泡倍数>
また、発泡成形体の発泡倍数は次式により算出される数値である。
発泡倍数=1/密度(g/cm
【0054】
本発明の発泡成形体は、前述した本発明に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱発泡させ、得られた予備発泡粒子を型内発泡成形して得られたものなので、高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。
また、リサイクルされたポリスチレン系樹脂を用いて製造した場合でも、曲げ強度などの機械強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製)
ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名「HRM−10N」)100質量部に対し、平均炭素数22の流動パラフィン(松村石油社製、スモイルP70)0.5質量部を加え、これらを口径90mmの単軸押出機に、時間当たり130kgで連続供給した。押出機内温度としては、最高温度210℃に設定し、樹脂を溶解させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して6質量部のペンタン(イソペンタン:ノルマルペンタン=20:80(質量比))を押出機の途中から圧入した。押出機内で樹脂と発泡剤を混練するとともに冷却し、押出機先端部での樹脂温度を170℃、ダイの樹脂導入部の圧力を12MPaに保持して、直径0.6mmでランド長さが3.0mmの小孔が200個配置されたダイより、このダイの吐出側に連結され30℃の水が循環するカッティング室に、発泡剤含有溶融樹脂を押し出すと同時に、10枚の刃を有する高速回転カッターにて押出物を切断した。切断した粒子を循環水で冷却しながら、粒子分離器に搬送し、粒子を循環水と分離した。さらに、捕集した粒子を脱水・乾燥してペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。得られたペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、変形、ヒゲ等の発生もなく、ほぼ完全な球体であり、平均粒径は約1.1mmであった。
得られたペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.15質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部を該樹脂粒子の表面全面に均一に被覆した。
【0056】
<発泡倍率の測定>
上記で得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を箱型発泡槽にて吹込み蒸気圧0.02MPaの水蒸気により3分間に亘って加熱し、得られた予備発泡粒子の嵩発泡倍数を前記の通り測定し、次の評価基準:
嵩発泡倍数65倍以上を最良(◎◎)、
嵩発泡倍数60倍以上65倍未満を特に良好(◎)、
嵩発泡倍数50倍以上60倍未満を良好(○)、
嵩発泡倍数50倍未満を不良(×)、に照らし、発泡倍率の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0057】
(発泡成形体の製造)
次いで、保冷庫に保管することなく、前記の通り製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.05MPaの水蒸気により加熱し、予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子は、嵩密度0.020g/cm(嵩発泡倍数50倍)であった。
続いて、得られた予備発泡粒子を室温雰囲気下、24時間に亘って放置した後、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に予備発泡粒子を充填し、その後、成形型のキャビティ内を水蒸気でゲージ圧0.08MPaの圧力で20秒間に亘って加熱し、その後、成形型のキャビティ内の圧力が0.01MPaになるまで冷却し、その後成形型を開き、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状の発泡成形体を取り出した。
得られた発泡成形体は、密度0.020g/cm(発泡倍数50倍)であった。
【0058】
<平均気泡径>
発泡成形体の平均気泡径は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定されたものをいう。具体的には実施例(及び比較例)で得られた発泡成形体を剃刀刃で切断し、その切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製 S−3000N)で拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙上に印刷し、任意の一直線上(長さ60mm)にある気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出した。但し任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにした(接してしまう場合は気泡数に含める)。計測は10ヶ所とし、その平均弦長を求めた後、気泡径を算出し、平均気泡径D(μm)とした。その結果を表1に記す。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
気泡径D=t/0.616×1000
【0059】
<曲げ強度の評価>
実施例(及び比較例)で得られた発泡成形体について、JIS A9511:2006「発泡プラスチック保温材」記載の方法に準じて曲げ強度を測定した。
すなわち、テンシロン万能試験機UCT−10T(オリエンテック社製)を用い、試験体サイズは75mm×300mm×50mmとし、圧縮速度を10mm/min、先端治具は加圧くさび10R、支持台10Rで、支点間距離200mmの条件として測定し、次式にて曲げ強度を算出した。試験片の数は3個とし、その平均値を求めた。
曲げ強度(MPa)=3FL/2bh
[ここで、Fは曲げ最大荷重(N)を表し、Lは支点間距離(mm)を表し、bは試験片の幅(mm)を表し、hは試験片の厚み(mm)を表す。]
このようにして曲げ強度の平均値を求め、次の評価基準:
曲げ強度が0.28MPa以上を特に良好(◎)、
曲げ強度が0.25MPa以上0.28MPa未満を凹(○)、
曲げ強度が0.25MPa未満を×、に照らし、強度を評価した。その結果を表1に記す。
【0060】
<判定>
前記<発泡倍率の測定>での評価結果と前記<曲げ強度の評価>の結果について、以下の判定基準により評価した。その結果を表1に記す。
良好(○):<発泡倍率の測定>での評価結果と前記<曲げ強度の評価>の結果が両方とも○、◎又は◎◎である場合。
不良(×):<発泡倍率の測定>での評価結果と前記<曲げ強度の評価>の結果のいずれか一方又は両方とも×である場合。
【0061】
<流動パラフィンの測定>
試料調整:
(1)加熱減量方法による残存ガス量の測定
試料(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体)の質量をA(g)とし、アルミホイルに包んで再度秤量し、これをB(g)とした。145℃のオーブンで1時間熱処理し、完全に該試料内のガスを除去した。その後、デジケーターにて10分静置し、ガスの抜けた試料表面に付着したガス分を吸着させ、このガスの抜けた試料をアルミホイルに包んだ状態で再度秤量し、これをC(g)とし、下記の計算式にて試料内に残っている残存ガス量を計算した。
残存ガス量 (%)=(B(g)−C(g))/A(g)×100
(2)樹脂中の流動パラフィンの測定
下記計算式によって算出された樹脂2.0gを含む試料A(g)をメチルエチルケトン15mlに溶解後、エタノールを15ml加え、更に溶解した。上澄み液を10ml採取し、テトラヒドロフラン(THF)10mlを加え攪拌し、得られた溶液を以下の条件で高速液体クロマトグラフィー法によって、樹脂100質量部に対する流動パラフィン含有量を測定した。
試料添加量: A(g)
= 樹脂 2.0g /〔 1−[ (1)によって算出された残存ガス量(%)]/100〕
測定条件
機器:高速液体クロマトグラフ HLC−802A
カラム:日本分光 Finepak GEL 101 2本
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
温度:カラム恒温槽 38℃
RI検出器 38℃
脱揮槽 45℃
流速:0.6ml/分
注入量:500μl
【0062】
実施例1について、樹脂100質量部に対する流動パラフィンの含有量(質量部)を測定した結果、
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子:0.5質量部
予備発泡粒子 :0.5質量部
発泡成形体 :0.5質量部
であった。
【0063】
<芳香族炭化水素の測定>
試料調整:
(1)加熱減量方法による残存ガス量の測定
試料(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)の質量をA(g)とし、アルミホイルに包んで再度秤量し、これをB(g)とした。145℃のオーブンで1時間熱処理し、完全に該試料内のガスを除去した。その後、デジケーターにて10分静置し、ガスの抜けた試料表面に付着したガス分を吸着させ、このガスの抜けた試料をアルミホイルに包んだ状態で再度秤量し、これをC(g)とし、下記の計算式にて試料内に残っている残存ガス量を計算した。
残存ガス量 (%)=(B(g)−C(g))/A(g)×100
(2)樹脂中の芳香族炭化水素の測定
下記計算式によって算出された樹脂0.2gを含む試料A(g)を20mLバイアルにジエチルベンゼン(DEB)入ジメチルホルムアミド(DMF)1mLで溶解し、90℃1時間加熱し、その後、気相を採取し、これをガスクロマトグラフ(島津製作所社製、GC−18A)によって、樹脂100質量部に対する芳香族炭化水素の含有量(質量部)を測定した。
試料添加量: A(g)
= 樹脂 0.2g /〔 1−[ (1)によって算出された残存ガス量(%)]/100〕
測定条件
機器:ガスクロマトグラフ(島津製作所社製、GC−18A)
カラム:J&W社製、DB−WAX(φ0.25mm×30m、膜厚0.25μm)
検出器:FID
カラム温度条件:50℃2分保持後、100℃まで10℃/分で昇温し、100℃5分間保持後、220℃まで40℃/分で昇温し、220℃2分間保持た。
注入口温度:150℃
検出器温度:250℃
測定試料注入量:2mL
スプリット比=70:1
カラム流量:1.6mL/min(He)
ガス圧力:122kPa
【0064】
[実施例2]
流動パラフィンを1.0質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0065】
[実施例3]
タルクを0.5質量部追加で添加したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0066】
[実施例4]
実施例1において発泡剤を添加させずに、流動パラフィンのみを含有したポリスチレン系樹脂粒子を作製した。次いで、得られたポリスチレン系樹脂粒子を押出機に投入し、タルク及びペンタンを添加したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0067】
[実施例5]
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製)
ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名「HRM−10N」)100質量部に対し、スチレン0.3質量部、タルク0.3質量部、流動パラフィン(松村石油社製、スモイルP70)0.5質量部を加え、これらを口径90mmの単軸押出機に、時間当たり130kgで連続供給した。押出機内温度としては、最高温度210℃に設定し、樹脂を溶解させた後、発泡剤として樹脂100質量部に対して6質量部のペンタン(イソペンタン:ノルマルペンタン=20:80(質量比))を押出機の途中から圧入した。押出機内で樹脂と発泡剤を混練するとともに冷却し、押出機先端部での樹脂温度を170℃、ダイの樹脂導入部の圧力を15MPaに保持して、直径0.6mmでランド長さが3.0mmの小孔が200個配置されたダイより、このダイの吐出側に連結され30℃の水が循環するカッティング室に、発泡剤含有溶融樹脂を押し出すと同時に、10枚の刃を有する高速回転カッターにて押出物を切断した。切断した粒子を循環水で冷却しながら、粒子分離器に搬送し、粒子を循環水と分離した。さらに、捕集した粒子を脱水・乾燥してペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。得られたペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、変形、ヒゲ等の発生もなく、ほぼ完全な球体であり、平均粒径は約1.1mmであった。
得られたペンタン含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、ポリエチレングリコール0.03質量部、ステアリン酸亜鉛0.15質量部、ステアリン酸モノグリセライド0.05質量部、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.05質量部を該樹脂粒子の表面全面に均一に被覆した。
【0068】
(発泡成形体の製造)
次いで、保冷庫に保管することなく、前記の通り製造した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、円筒型バッチ式予備発泡機に供給して、吹き込み圧0.05MPaの水蒸気により加熱し、予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子は、嵩密度0.0167g/cm(嵩発泡倍数60倍)であった。
続いて、得られた予備発泡粒子を室温雰囲気下、24時間に亘って放置した後、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状のキャビティを有する成形型内に予備発泡粒子を充填し、その後、成形型のキャビティ内を水蒸気でゲージ圧0.08MPaの圧力で20秒間に亘って加熱し、その後、成形型のキャビティ内の圧力が0.01MPaになるまで冷却し、その後成形型を開き、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの長方形状の発泡成形体を取り出した。
得られた発泡成形体は、密度0.0167g/cm(発泡倍数60倍)であった。
実施例1と同様に、平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0069】
[実施例6]
スチレンの替わりに、トルエン0.3質量部を加えたことこと以外は、実施例5と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、実施例1と同様にして平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0070】
[実施例7]
スチレンを1.0質量部加えたことこと以外は、実施例5と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、実施例1と同様にして平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0071】
[実施例8]
スチレンを0.1質量部加えたことこと以外は、実施例5と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、実施例1と同様にして平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0072】
[実施例9]
スチレンを0.16質量部加えたことこと以外は、実施例5と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、実施例1と同様にして平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0073】
[実施例10]
スチレンを2.5質量部加えたことこと以外は、実施例5と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、実施例1と同様にして平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0074】
[実施例11]
スチレンを3.5質量部加えたことこと以外は、実施例5と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、実施例1と同様にして平均気泡径、発泡倍率、曲げ強度、流動パラフィン量及び芳香族炭化水素量を測定した。その結果を表1に記す。
【0075】
[比較例1]
流動パラフィンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、平均気泡径、発泡倍率及び曲げ強度を測定した。その結果を表1に記す。
【0076】
[比較例2]
流動パラフィン量を0.005質量部としたこと以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、平均気泡径、発泡倍率及び曲げ強度を測定した。その結果を表1に記す。
【0077】
[比較例3]
流動パラフィン量を7.0質量部とした以外は実施例1と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造し、平均気泡径、発泡倍率及び曲げ強度を測定した。その結果を表1に記す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から、本発明に係る実施例1〜11は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有された構成としたことによって、加熱して予備発泡させて得られる予備発泡粒子の嵩発泡倍数を高めることができ、高発泡倍数の発泡成形体を得ることができる。また、曲げ強度などの機械強度に優れた発泡成形体を得ることができる。
また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子全体に流動パラフィンが、ポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部の範囲内で均一に含有され、芳香族炭化水素がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.15〜3.0質量部の範囲内で均一に含有され、かつ無機発泡核剤がポリスチレン系樹脂100質量部に対し0.05〜5質量部の範囲内で均一に含有された実施例5〜11は、実施例1〜4に比べて、より高い発泡倍率が得られ、高発泡倍数で曲げ強度の良好な発泡成形体が得られた。
ただし、実施例1〜4、8、11は、参考例である。
【0080】
一方、流動パラフィンを添加していない比較例1は、実施例1〜4と比べ、発泡倍率、曲げ強度が劣っていた。
また、流動パラフィンの添加量が本発明の範囲未満である比較例2、及び本発明の範囲を超える比較例3は、いずれも実施例1〜4と比べ、発泡倍率、曲げ強度が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、溶融押出法による発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法に関し、高発泡倍数で機械強度に優れた発泡成形体を得ることが可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とその製造方法、ポリスチレン系樹脂予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体に関する。
【符号の説明】
【0082】
1…押出機(樹脂供給装置)、2…ダイ、3…原料供給ホッパー、4…高圧ポンプ、5…発泡剤供給口、6…カッター、7…カッティング室、8…水槽、9…高圧ポンプ、10…固液分離機能付き脱水乾燥機、11…貯留容器。
図1