(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットシステムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態では、ロボットが、上段ハンドおよび下段ハンドの2個のハンドからなるハンドを備える場合の例について説明するが、ロボットは、ハンドを1個だけ備える構成であってもよい。その他、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るロボットシステムの構成について
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態に係るロボットシステムの構成を示す模式図である。
【0013】
なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定する。また、以下においては、Z軸正方向を鉛直上方とし、X軸方向およびY軸方向を水平方向とする。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態に係るロボットシステム1は、基板搬送部2と、基板供給部3と、基板処理部4とを備える。基板搬送部2は、ロボット10と、かかるロボット10を収容する筐体20とを備える。
【0015】
ロボット10は、搬送対象物であるウェハWを保持可能なハンド11と、ハンド11を水平方向に移動させるアーム12と、アーム12を昇降自在、かつ水平方向に旋回自在に支持する基台13とを備える。基台13は、筐体20の底壁部を形成する基台設置フレーム23上に設置される。
【0016】
かかるロボット10は、基板供給部3および基板処理部4間におけるウェハWの搬送動作、たとえば、基板供給部3からウェハWを受け取るとともに、受け取ったウェハWを基板処理部4へ引き渡す動作等を行う。
【0017】
また、ロボット10が備えるハンド11には、ウェハWを把持する把持機構が設けられている。かかる把持機構を含め、ロボット10の具体的な構成および動作については、
図2を用いて後述する。
【0018】
筐体20は、たとえばEFEM(Equipment Front End Module)と呼ばれる局所クリーン装置であり、上部に設けられるフィルタユニット24によってクリーンエアのダウンフローが形成される。かかるダウンフローにより、筐体20は、内部を高クリーン度状態に保たれる。
【0019】
なお、基台設置フレーム23の下面には脚具25が設けられており、かかる脚具25によって、筐体20と設置面100との間には所定のクリアランスが形成される。
【0020】
筐体20のX軸正方向側の側面21には、基板供給部3が筐体20の内部と連通可能に接続される。また、筐体20のX軸負方向側の側面22には、基板処理部4が筐体20の内部と連通可能に接続される。このように、ロボットシステム1では、基板供給部3および基板処理部4が、筐体20を介して相互に接続される。
【0021】
基板供給部3は、複数のウェハWを鉛直方向に多段に収納するフープ30と、フープ30を所定の高さに支持するテーブル31とを備える。フープ30には、図示しない蓋体を
筐体20側へ向けた状態で配置され、かかる蓋体の開閉を行うフープオープナ(図示せず)を介して筐体20と接続される。なお、フープ30は、テーブル31に対しY方向に沿って複数並設することができる。
【0022】
基板処理部4は、たとえば、洗浄処理や成膜処理、フォトリソグラフィ処理といった半導体製造プロセスにおける所定のプロセス処理をウェハWに対して施すプロセス処理部である。基板処理部4は、かかる所定のプロセス処理を行う処理装置40を備える。
【0023】
ロボットシステム1は、上記のように構成されており、ロボット10を用いて、フープ30に収容されたウェハWの処理装置40への搬送や、処理装置40によって処理されたウェハWのフープ30へ搬送等を行う。
【0024】
ここで、第1の実施形態に係るロボットシステム1では、ウェハWの把持を行う把持機構の動作タイミングや、ハンド11が辿る軌跡に工夫を凝らすことで、ウェハWの搬送に要する時間の短縮を図ったり、ウェハWのこすれを防止したりすることとしている。以下では、かかる点について具体的に説明する。
【0025】
図2は、ロボット10の構成を示す模式図である。
図2に示すように、第1の実施形態に係るロボット10は、ハンド11と、アーム12と、基台13とを備える。また、アーム12は、昇降部12aと、関節部12b,12d,12fと、第1アーム部12cと、第2アーム部12eとを備える。
【0026】
基台13は、基台設置フレーム23(
図1参照)上に設置されるロボット10のベース部である。昇降部12aは、かかる基台13から鉛直方向(Z軸方向)にスライド可能に設けられ(
図2の両矢印a0参照)、アーム12を鉛直方向に沿って昇降させる。
【0027】
関節部12bは、軸a1まわりの回転関節である(
図2の軸a1まわりの両矢印参照)。第1アーム部12cは、かかる関節部12bを介し、昇降部12aに対して回転可能に連結される。
【0028】
また、関節部12dは、軸a2まわりの回転関節である(
図2の軸a2まわりの両矢印参照)。第2アーム部12eは、かかる関節部12dを介し、第1アーム部12cに対して回転可能に連結される。また、関節部12fは、軸a3まわりの回転関節である(
図2の軸a3まわりの両矢印参照)。ハンド11は、かかる関節部12fを介し、第2アーム部12eに対して回転可能に連結される。
【0029】
ロボット10にはモータなどの図示しない駆動源が設けられており、関節部12b,12d,12fは、の駆動に基づいて回転する。アーム12は、これら関節部12b,12d,12fを回転させることによって動作して、ハンド11を水平方向に直線的に移動させる。
【0030】
なお、以下では、ハンド11のX軸正方向への移動を「前進」とし、ハンド11のX軸負方向への移動を「後退」とする。
【0031】
ハンド11は、ウェハWを保持するエンドエフェクタであり、それぞれ高さ位置の異なる上段ハンド11aと下段ハンド11bとの2個のハンドからなる。上段ハンド11aおよび下段ハンド11bは、軸a3を共通の旋回軸として近接して設けられ、それぞれ独立して軸a3まわりに旋回することができる。
【0032】
以下では、理解を容易にするため、ロボット10が、上段ハンド11aのみを用いてウェハWを1枚ずつ搬送する場合の例について説明する。ただし、ロボット10は、上段ハンド11aおよび下段ハンド11bを用いて2枚のウェハWを同時に搬送することも可能である。
【0033】
ロボット10は、LAN(Local Area Network)等の通信線を介してロボット制御装置50と相互通信可能に接続されており、かかるロボット制御装置50によって動作が制御される。ロボット制御装置50は、たとえば、筐体20(
図1参照)内部のロボット10の懐(ふところ)や筐体20の外部などに配設される。なお、ロボット10とロボット制御装置50とは、一体化していてもよい。
【0034】
ロボット制御装置50の行うロボット10の各種動作の動作制御は、あらかじめロボット制御装置50に格納される動作パターン情報に基づいて行なわれる。
【0035】
ロボット制御装置50は、さらに、LAN等の通信線を介して上位装置60と相互通信可能に接続される。上位装置60は、ロボットシステム1の全体制御を行う装置であり、たとえば、ロボット制御装置50に対してプロセス処理に関する処理情報を送信したり、ロボット10の状態監視を行ったりする。
【0036】
次に、ハンド11の構成の詳細について
図3を用いて説明する。
図3は、ハンド11の模式斜視図である。なお、
図3では、上段ハンド11aおよび下段ハンド11bの双方が、ともにその先端部をX軸の正方向へ向けた状態を示している。
【0037】
図3に示すように、ハンド11は、第2アーム部12eの先端部において、軸a3を共通の旋回軸として近接して設けられる上段ハンド11aおよび下段ハンド11bからなる。
【0038】
以下では、主に上段ハンド11aについて説明することとし、同一構成である下段ハンド11bについては詳しい説明を省略する。これに伴い、以下では、「上段ハンド11a」を「ハンド11」と呼ぶこととする。
【0039】
ハンド11は、プレート111と、先端側係止部112と、基端側係止部113と、押圧駆動部115と、押圧部114とを備える。プレート111は、ウェハWが載置される基底部もしくは基部にあたる部材である。なお、
図3には、先端側がV字状に成形されたプレート111を例示しているが、プレート111の形状は、図示のものに限定されない。
【0040】
先端側係止部112は、プレート111の先端部に配設される。また、基端側係止部113は、プレート111の基端部に配設される。これら先端側係止部112および基端側係止部113の間にウェハWは載置される。
【0041】
なお、ハンド11は、先端側係止部112および基端側係止部113のうち、先端側係止部112のみを備える構成であってもよい。また、先端側係止部112および基端側係止部113の形状については、少なくとも水平方向および鉛直方向でウェハWと当接する面を有していれば特に限定されない。
【0042】
押圧部114は、X軸正方向およびX軸負方向へ移動可能、すなわち、プレート111上に載置されたウェハWに対して進退可能に設けられる。なお、押圧部114は、X軸負方向へ付勢された状態でプレート111に設けられる。
【0043】
押圧駆動部115は、押圧部114を挟んでウェハWと反対側に固定的に設けられており、押圧部114へ向けて進退可能な突出部115aを備える。突出部115aは、たとえばエアシリンダなどを用いて構成される。
【0044】
押圧駆動部115は、突出部115aを押圧部114へ向けて突出させることによって、押圧部114をウェハWへ向けて移動させる。
【0045】
この結果、ウェハWは、押圧部114によって先端側係止部112へ向けて押し出され、押圧部114とは反対側の周縁部が先端側係止部112に突き当たる。これにより、ウェハWは、押圧部114と先端側係止部112とによって挟持された状態、言い換えれば、ハンド11によって把持された状態となる。
【0046】
このように、ロボットシステム1では、先端側係止部112、押圧部114および押圧駆動部115によって、ウェハWを把持する把持機構が構成される。なお、
図3に示す押圧部114や押圧駆動部115等の形状は一例であって、その形状を限定するものではない。
【0047】
また、ハンド11は、ウェハWの有無を確認するためのウェハ検知機構をさらに備える。具体的には、ハンド11は、押圧駆動部115に対して固定される光電センサ116と、押圧部114とともに前後移動可能な遮光部117とをさらに備え、これら光電センサ116および遮光部117によりウェハ検知機構が構成される。
【0048】
ここで、かかるウェハ検知機構の構成および動作について
図4A〜
図4Cを用いて具体的に説明する。
図4A〜
図4Cは、ウェハ検知機構の構成および動作の説明図である。
【0049】
図4Aに示すように、光電センサ116は、Y軸方向に沿って所定の間隔を空けて配設された一対の側壁部116a,116bを備える。これら側壁部116a,116bのうち、側壁部116aには、他方の側壁部116bへ向けて光Lを照射する発光部116cが設けられる。また、他方の側壁部116bには、発光部116cから照射された光Lを受光する受光部116dが設けられる。そして、光電センサ116は、受光部116dによる光Lの受光状態に関する情報をロボット制御装置50へ送信する。
【0050】
遮光部117は、一対の側壁部116a,116bよりも上方に設けられる第1部材117aと、第1部材117aの下部から鉛直下向きに突出する第2部材117bとを備える。
【0051】
遮光部117は、押圧部114(
図3参照)に固定されており、
図4Bに示すように、押圧部114の移動に伴って移動する。このとき、遮光部117の第2部材117bは、一対の側壁部116a,116bの間を移動し、ウェハWが押圧部114と先端側係止部112とによって把持された状態となった場合に、発光部116cからの光Lを遮る位置に配置される。
【0052】
かかる場合、受光部116dの受光状態は、「受光」から「遮光」へ変化することとなる。これにより、ロボット制御装置50は、受光状態が「遮光」である場合に、ハンド11上にウェハWが有ると判定することができる。
【0053】
一方、ハンド11上にウェハWが無い場合には、ウェハWが有る場合と比較して押圧部114(
図3参照)が移動し過ぎることとなる。この結果、
図4Cに示すように、遮光部117の第2部材117bは、発光部116cからの光Lを遮る位置よりも奥側(ハンド11の先端側)の位置で停止する。
【0054】
かかる場合、受光部116dの受光状態は、「受光」となる。したがって、ロボット制御装置50は、受光状態が「受光」であるならば、ハンド11上にウェハWが無いと判定することができる。
【0055】
このように、ロボットシステム1では、ウェハ検知機構を用いてウェハWの有無を確認することができる。なお、ここでは、光電センサ116と遮光部117によりウェハ検知機構が構成される場合の例について説明したが、ウェハ検知機構は、その他の構成であってもよい。
【0056】
たとえば、押圧部114あるいは突出部115aの移動量を検知するストロークセンサを用いてウェハ検知機構を構成してもよい。かかる場合、ロボット制御装置50は、押圧部114あるいは突出部115aの移動量が所定の閾値よりも多い場合に、ハンド11上にウェハWが無いと判定することができる。
【0057】
次に、ロボット制御装置50の構成について
図5を用いて説明する。
図5は、ロボット制御装置50の構成を示すブロック図である。なお、
図5では、ロボット制御装置50の特徴を説明するために必要な構成要素を示しており、一般的な構成要素についての記載を適宜省略している。
【0058】
図5に示すように、ロボット制御装置50は、制御部51と、記憶部52とを備える。また、制御部51は、処理情報取得部51aと、指示部51bと、有無確認部51cとを備える。また、記憶部52は、動作パターン情報52aを記憶する。
【0059】
制御部51は、ロボット制御装置50の全体制御を行う。処理情報取得部51aは、これからウェハWの供給および搬送の対象となる予定のプロセス処理に関する処理情報を上位装置60から取得する。処理情報取得部51aは、上位装置60から処理情報を取得すると、取得した処理情報を指示部51bへ通知する。
【0060】
指示部51bは、処理情報取得部51aから受け取った処理情報に基づき、ロボット10に対して動作指示を行う処理部である。
【0061】
かかる指示部51bは、処理情報取得部51aから処理情報を受け取ると、記憶部52に記憶された動作パターン情報52aに含まれる複数の動作パターンの中から、処理情報に応じた動作パターンを選択する。そして、指示部51bは、選択した動作パターンで動作するようにロボット10に対して動作指示を行う。
【0062】
また、指示部51bは、ウェハWの有無確認の実行を有無確認部51cに対して指示する処理も併せて行う。
【0063】
有無確認部51cは、指示部51bからの指示に従い、ハンド11上におけるウェハWの有無確認を行う処理部である。具体的には、有無確認部51cは、指示部51bから有無確認の実行を指示された場合に、ウェハ検知機構から受光部116d(
図4A参照)の受光状態に関する情報を取得し、取得した情報に基づいてウェハWの有無を判定する。
【0064】
具体的には、有無確認部51cは、受光状態が「遮光」であれば、ハンド11上にウェハWが有ると判定し、受光状態が「受光」であればウェハWが無いと判定する。
【0065】
さらに、有無確認部51cは、かかる判定結果に応じてウェハWの受け渡しに成功したか否かを判定し、判定結果を上位装置60へ通知する。
【0066】
たとえば、ロボット10に対してウェハWの受取動作を行わせた場合において、ウェハWが無いと判定したならば、有無確認部51cは、ウェハWの受け取りに失敗したと判定する。かかる場合、有無確認部51cは、ウェハWの受け取りに失敗した旨のエラー情報を上位装置60へ送信する。
【0067】
なお、有無確認部51cは、ウェハ受取動作時において、ウェハWの有無確認を複数回実行することとしている。そして、有無確認部51cは、1回目の有無確認と2回目以降の有無確認とで、上位装置60へ通知するエラーの内容を異ならせることとしている。かかる点については、後述する。
【0068】
記憶部52は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、動作パターン情報52aを記憶する。動作パターン情報52aは、ロボット10の動作を規定する情報である。
【0069】
なお、動作パターン情報52aを記憶することなく、たとえば、指示部51bが動作パターン情報52aを用いた場合と同等の処理を行えるように、プログラムロジックやワイヤードロジックなどを用いてロボット制御装置50を構成してもよい。また、
図4では、1つのロボット制御装置50を示したが、かかるロボット制御装置50を複数の独立した装置としたうえで、各装置が相互に通信するように構成してもよい。
【0070】
次に、第1の実施形態に係るロボット10の動作例について
図6Aおよび
図6Bを用いて説明する。
図6Aは、第1の実施形態に係るウェハ受取動作の説明図であり、
図6Bは、第1の実施形態に係るウェハ引渡動作の説明図である。
【0071】
ここで、ウェハ受取動作とは、ロボット10がプロセス処理装置(たとえば、フープ30)からウェハWを受け取る動作のことである。また、ウェハ引渡動作とは、ロボット10がプロセス処理装置(たとえば、処理装置40)へウェハWを引き渡す動作のことである。
【0072】
まず、ウェハ受取動作について
図6Aを用いて説明する。
図6Aに示すように、指示部51bは、処理情報および動作パターン情報52aに基づき、ハンド11を位置A1〜位置A5のルートで移動させるようにロボット10に対して指示する。
【0073】
ここで、位置A3は、ロボット10とプロセス処理装置との間でウェハWの受け渡しが行われる位置である。以下では、かかる位置A3を「受渡位置A3」と呼ぶ。
【0074】
また、位置A1は、ウェハ受取動作の開始位置であり、たとえば、ロボット10がアーム12を最も縮めた姿勢(ロボット10の旋回半径が最小となる姿勢)を取った場合にハンド11が配置される位置である。
【0075】
また、位置A5は、ウェハ受取動作の終了位置であり、たとえば、開始位置A1の直上に位置する。開始位置A1および終了位置A5は、受渡位置A3よりもX軸負方向側に位置する。また、開始位置A1は、受渡位置A3よりも下方にオフセットされ、終了位置A5は、受渡位置A3よりも上方にオフセットされる。
【0076】
また、
図6Aに示す位置Pbは、把持動作の実施位置(以下、「把持実施位置Px」と記載する)を指定するための基準位置である。基準位置Pbは、把持実施位置Pxが受渡位置A3よりもX軸正方向側とならない範囲において任意に設定可能である。
【0077】
指示部51bは、受渡位置A3の直下である上昇位置A2へ向けて、ハンド11を開始位置A1から水平移動(前進)させる。つづいて、指示部51bは、上昇位置A2から受渡位置A3までハンド11を上昇させる。これにより、ハンド11上には、ウェハWが載置される。
【0078】
ハンド11が受渡位置A3へ到達した後、指示部51bは、終了位置A5と同一高さ、かつ、受渡位置A3よりも後方にオフセットされた水平後退位置A4へ向けて、ハンド11をZ軸正方向に移動(上昇)させながらX軸負方向にも移動(後退)させる。なお、水平方向における基準位置Pbおよび上昇位置A2間のオフセットを「前方オフセット」と呼び、水平方向における基準位置Pbおよび水平後退位置A4間のオフセットを「後方オフセット」と呼ぶ。
【0079】
このように、第1の実施形態では、受渡位置A3から水平後退位置A4へ向けてハンド11を斜め後方に移動させる。したがって、ハンド11が受渡位置A3へ到達した後、ハンド11を受渡位置A3から鉛直方向に上昇させ、その後、ハンド11を後退させて位置A4まで到達させる場合と比較して、受渡位置A3から水平後退位置A4までのハンド11の移動距離を短くすることができる。したがって、第1の実施形態によれば、ウェハWの搬送に要する時間を短縮することができる。
【0080】
さらに、第1の実施形態では、受渡位置A3から水平後退位置A4へ向けてハンド11を斜め後方に移動させることで、ウェハWの受け取り時におけるウェハWのこすれを防止することもできる。
【0081】
たとえば、フープ30(
図1参照)に収容されたウェハWは、フープ30の奥側(X軸正方向)に設けられた支柱等の部材に側面が接触した状態で収容される場合がある。このような場合に、ハンド11を鉛直上向きに上昇させてウェハWを受け取ることとすると、ウェハWのフープ30との接触箇所がこすれ、ウェハWが破損したりパーティクルが発生したりするおそれがある。
【0082】
これに対し、第1の実施形態では、ハンド11を斜め後方へ移動させることにより、ウェハWがフープ30の奥側に対して離れる方向に移動しながら上昇するため、ウェハWがこすれることがなく、ウェハWの破損やパーティクルの発生を抑制することができる。
【0083】
ハンド11が水平後退位置A4へ到達した後、指示部51bは、ハンド11を終了位置A5まで後退させる。そして、指示部51bは、ハンド11が把持実施位置Pxに到達したタイミングで把持機構を動作させる。このように、指示部51bは、ハンド11を終了位置A5まで後退させながら把持機構によるウェハWの把持動作を行わせる。
【0084】
なお、ここでは、ハンド11が水平後退位置A4から終了位置A5へ向けての移動中にウェハWの把持動作を実施する場合の例について示したが、指示部51bは、受渡位置A3から水平後退位置A4への移動中に把持動作をロボット10に対して実施させてもよい。
【0085】
つづいて、指示部51bは、ロボット10に対してウェハWの把持動作を指示してからの時間を計測し、所定の時間が経過したと判定した場合に、有無確認部51cに対して有無確認の実行を指示する。
【0086】
ここで、「所定の時間」とは、押圧部114を前進させてからウェハWが把持された状態となるまでに要する時間と同じか僅かに長い時間である。このように、指示部51bは、押圧部114を前進させてからウェハWが把持された状態となるまでに要する時間に基づいて指定された時間が経過した場合に、有無確認の実行を指示する。これにより、指示部51bは、有無確認部51cに対して適切なタイミングで有無確認を実行させることができる。
【0087】
有無確認部51cは、指示部51bから指示を受けると、ウェハ検知機構から受光状態に関する情報を取得し、かかる情報に基づいてウェハWの有無を確認する。すなわち、有無確認部51cは、受光状態が「遮光」であれば、ハンド11上にウェハWが有ると判定し、受光状態が「受光」であれば、ハンド11上にウェハWが無いと判定する。
【0088】
このように、指示部51bは、ハンド11が受渡位置A3へ到達した後、ハンド11を後退させながら把持機構を動作させてウェハWの有無確認を行う。したがって、ウェハWの把持動作や有無確認をハンド11の後退動作と独立して行う場合と比較して、ウェハWの搬送に要する時間を短縮することができる。
【0089】
また、第1の実施形態では、把持機構として、ウェハWのX軸正方向側に設けられた先端側係止部112とウェハWのX軸負方向側に設けられた押圧部114とでウェハWを押さえ込むことによりウェハWを把持する構成を採用している。このため、ハンド11を後退させてから把持機構を動作させるまでの間にウェハWが落下してしまう事態を生じ難くすることができる。
【0090】
すなわち、ハンド11を後退させると、ウェハWは、慣性によってハンド11の先端側(X軸正方向側)へ相対的に移動しようとする。しかし、ハンド11の先端側には先端側係止部112が設けられているため、把持機構を動作させる前にハンド11を後退させたとしても、ウェハWがハンド11から落下する可能性は低い。
【0091】
ところで、ウェハWの受取動作をロボット10に対して行わせる場合、指示部51bは、ハンド11が終了位置A5へ到達するまでの間に、有無確認の実行を有無確認部51cに対して複数回指示する。そして、有無確認部51cは、1回目の有無確認と2回目以降の有無確認とで上位装置60へ通知するエラー情報の内容を異ならせることとしている。
【0092】
具体的には、有無確認部51cは、1回目の有無確認においてウェハWがハンド11上に無いことが確認された場合には、ウェハWの受け取りに失敗したと判定する。一方、2回目以降の有無確認においてウェハWがハンド11上に無いことが確認され場合、有無確認部51cは、ウェハWがハンド11から落下したと判定する。
【0093】
すなわち、仮に、1回目の有無確認後にウェハWがハンド11から落下したとすると、1回目の有無確認においてウェハWがハンド11上に有ることが確認されたとしても、2回目以降の有無確認においてウェハWがハンド11上に無いことが確認されることとなる。
【0094】
したがって、有無確認部51cは、2回目以降の有無確認においてウェハWがハンド11上に無いことが確認され場合には、ウェハWがハンド11から落下したと判定することができる。
【0095】
このように、1回目の有無確認と2回目以降の有無確認とで上位装置60へ通知するエラー情報の内容を異ならせることとで、上位装置60は、ウェハWの搬送状態の監視を容易に行うことが可能となる。
【0096】
次に、ウェハ引渡動作について説明する。
図6Bに示すように、指示部51bは、処理情報および動作パターン情報52aに基づき、位置B1〜位置B5のルートでハンド11を移動させるようにロボット10に対して指示する。
【0097】
ここで、位置B1は開始位置であり、位置B3は受渡位置であり、位置B4は水平後退位置であり、位置B5は終了位置である。また、ここでは、基準位置Pbを受渡位置C3と一致させた場合の例について示している。
【0098】
指示部51bは、受渡位置B3の直上である降下位置B2へ向けて、ハンド11を開始位置B1から前進させる。つづいて、指示部51bは、把持機構による把持状態を解除してウェハWをフリーにしたうえで、降下位置B2から受渡位置B3までハンド11を降下させる。これにより、ハンド11上に載置されたウェハWがプロセス処理装置(たとえば、処理装置40)へ引き渡される。
【0099】
ハンド11が受渡位置B3へ到達した後、指示部51bは、終了位置B5と同一高さ、かつ、受渡位置B3よりも前方にオフセットされた水平後退位置B4へ向けて、ハンド11をZ軸負方向に移動(降下)させながらX軸正方向にも移動(前進)させる。
【0100】
このように、指示部51bは、受渡位置B3から水平後退位置B4へ向けてハンド11を斜め前方に移動させる。これにより、ウェハWの引き渡し時におけるウェハWのこすれを防止することができる。
【0101】
すなわち、ウェハWの引き渡し時において、ウェハWは、把持機構の先端側係止部112と接触した状態となっている可能性がある。かかる場合、ハンド11を鉛直下向きに降下させてウェハWを引き渡すこととすると、ウェハWが先端側係止部112によってこすれ、ウェハWが破損したりパーティクルが発生したりするおそれがある。
【0102】
これに対し、第1の実施形態では、ハンド11を斜め前方へ移動させることにより、先端側係止部112がウェハWから離れる方向に移動しながら降下するため、ウェハWがこすれることがなく、ウェハWの破損やパーティクルの発生を抑制することができる。
【0103】
ハンド11が水平後退位置B4へ到達した後、指示部51bは、ハンド11を終了位置B5まで後退させる。そして、指示部51bは、ハンド11が把持実施位置Pxに到達したタイミングで、ウェハWの有無確認のために把持機構を動作させる。
【0104】
また、指示部51bは、把持動作を動作させてからの時間を計測し、所定の時間が経過したと判定した場合に、有無確認部51cに対して有無確認の実行を指示する。
【0105】
有無確認部51cは、指示部51bから指示を受けると、ウェハ検知機構から受光状態に関する情報を取得し、かかる情報に基づいてウェハWの有無を確認する。そして、有無確認部51cは、ウェハWがハンド11上に有ることが確認された場合には、ウェハWの引き渡しに失敗したと判定し、かかる判定結果を上位装置60(
図2参照)へ通知する。
【0106】
このように、指示部51bは、
図6Aを用いて説明したウェハ受取動作と同様、ハンド11が受渡位置B3へ到達した後、ハンド11を後退させながら把持機構を動作させてウェハWの有無確認を行うこととした。したがって、ウェハWの把持動作や有無確認をハンド11の後退動作と独立して行う場合と比較して、ウェハWの搬送に要する時間を短縮することができる。
【0107】
次に、ロボットシステム1の具体的動作について
図7および
図8を用いて説明する。まず、ウェハ受取処理の処理手順について
図7を用いて説明する。
図7は、ウェハ受取処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図7においては、ハンド11が水平方向への後退を開始した後に、把持機構を動作させる場合の処理手順について示すが、把持機構の動作タイミングは、ハンド11が水平方向への後退を開始する前であってもよい。
【0108】
図7に示すように、ロボット制御装置50の指示部51bは、開始位置A1から受渡位置A3までハンド11を移動させる(ステップS101)。そして、指示部51bは、ハンド11が受渡位置A3へ到達した後、水平後退位置A4へ到達するまでハンド11を斜め後方へ移動させる(ステップS102)。
【0109】
つづいて、指示部51bは、ハンド11が水平後退位置A4へ到達した後、ハンド11の水平方向への後退を開始させる(ステップS103)。また、指示部51bは、ハンド11が把持実施位置Pxに到達したタイミングで把持機構を動作させる(ステップS104)。
【0110】
つづいて、把持機構を動作させてから所定時間が経過すると、有無確認部51cは、ハンド11上にウェハWが有るか否かを判定する(ステップS105)。かかる処理において、ハンド11上にウェハWが無いと判定すると(ステップS105,No)、指示部51bは、ロボット10を停止させる(ステップS106)。また、有無確認部51cは、ウェハWの受け取りに失敗した旨のエラー情報を上位装置60へ通知する(ステップS107)。
【0111】
また、ステップS105においてハンド11上にウェハWが有ると判定すると(ステップS105,Yes)、指示部51bは、ハンド11が終了位置A5へ到達したか否かを判定する(ステップS108)。そして、ハンド11が終了位置A5へ到達していない場合(ステップS108,No)、有無確認部51cは、ハンド11上にウェハWが有るか否かを再度判定し(ステップS109)、ハンド11上にウェハWが有ると判定した場合には(ステップS109,Yes)、処理をステップS108へ戻す。なお、ステップS109の判定処理は、所定の時間間隔で行われるものとする。
【0112】
また、ステップS109において、ハンド11上にウェハWが無いと判定した場合(ステップS109,No)、指示部51bは、ロボット10を停止させる(ステップS110)。また、有無確認部51cは、ウェハWが落下した旨のエラー情報を上位装置60へ通知する(ステップS111)。
【0113】
一方、ステップS108においてハンド11が終了位置へ到達したと判定した場合(ステップS108,Yes)、ロボット制御装置50は、ハンド11の後退を停止し(ステップS112)、処理を終了する。なお、ロボット制御装置50は、ステップS107、ステップS111の処理を終えた場合にも、処理を終了する。
【0114】
次に、ウェハ引渡処理の処理手順について
図8を用いて説明する。
図8は、ウェハ引渡処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図8においては、ハンド11が水平方向への後退を開始した後に、把持機構を動作させる場合の処理手順について示すが、把持機構の動作タイミングは、ハンド11が水平方向への後退を開始する前であってもよい。
【0115】
図8に示すように、ロボット制御装置50の指示部51bは、開始位置B1から受渡位置B3までハンド11を移動させる(ステップS201)。そして、指示部51bは、ハンド11が受渡位置B3へ到達した後、水平後退位置B4へ到達するまでハンド11を斜め前方へ移動させる(ステップS202)。
【0116】
つづいて、指示部51bは、ハンド11が水平後退位置B4へ到達した後、ハンド11を水平方向への後退を開始させる(ステップS203)。また、指示部51bは、ハンド11が把持実施位置Pxに到達したタイミングで把持機構を動作させる(ステップS204)。
【0117】
つづいて、把持機構を動作させてから所定時間が経過すると、有無確認部51cは、ハンド11上にウェハWが無いか否かを判定する(ステップS205)。かかる処理において、ハンド11上にウェハWが有ると判定した場合(ステップS205,No)、指示部51bは、ロボット10を停止させる(ステップS206)。また、有無確認部51cは、ウェハWの引き渡しに失敗した旨のエラー情報を上位装置60へ通知する(ステップS207)。
【0118】
一方、ステップS205においてハンド11上にウェハWが無いと判定すると(ステップS205,Yes)、指示部51bは、ハンド11が終了位置B5へ到達したか否かを判定する(ステップS208)。そして、ハンド11が終了位置B5へ到達したと判定すると(ステップS208,Yes)、指示部51bは、ハンド11の後退を停止し(ステップS209)、処理を終了する。
【0119】
なお、ハンド11が終了位置B5へ到達していない場合には(ステップS208,No)、ハンド11が終了位置B5へ到達するまでステップS208の処理を繰り返す。また、ロボット制御装置50は、ステップS207の処理を終えた場合にも、処理を終了する。
【0120】
上述してきたように、第1の実施形態に係るロボットシステム1は、ロボット10と、ロボット制御装置50とを備える。ロボット10は、ウェハWを把持する把持機構を有するハンド11と、ハンド11を移動させるアーム12とを備える。また、ロボット制御装置50は、ロボット10を制御する。そして、ロボット制御装置50は、ロボット10を制御して受渡位置でのウェハWの受け渡しをロボット10に対して行わせる場合に、ハンド11が受渡位置へ到達した後、ハンド11を後退させながら把持機構を動作させてウェハWの有無確認を行うこととした。
【0121】
したがって、第1の実施形態に係るロボットシステム1によれば、ウェハWの搬送に要する時間を短縮することができる。
【0122】
また、第1の実施形態に係るロボット制御装置50は、ロボット10を制御して受渡位置でのウェハWの受け渡しをロボット10に対して行わせる場合に、ハンド11が受渡位置へ到達した後、ハンド11を鉛直方向に移動させつつ水平方向にも移動させることとした。
【0123】
したがって、第1の実施形態に係るロボットシステム1によれば、ウェハWの受け渡し時におけるウェハWのこすれを防止することができる。
【0124】
(第2の実施形態)
ところで、ウェハ受取動作およびウェハ引渡動作は、第1の実施形態において示した動作パターンに限定されない。
【0125】
そこで、以下では、ウェハ受取動作およびウェハ引渡動作の他の動作例について
図9Aおよび
図9Bを用いて説明する。
図9Aは、第2の実施形態に係るウェハ受取動作の説明図であり、
図9Bは、第2の実施形態に係るウェハ引渡動作の説明図である。
【0126】
まず、第2の実施形態に係るウェハ受取動作について
図9Aを用いて説明する。
図9Aに示すように、指示部51bは、処理情報および動作パターン情報52aに基づき、ハンド11を位置C1〜位置C6のルートで移動させるようにロボット10に対して指示する。
【0127】
ここで、位置C1は開始位置であり、位置C3は受渡位置であり、位置C5は水平後退位置であり、位置C6は終了位置である。また、ここでは、基準位置Pbを受渡位置C3と一致させた場合の例について示している。
【0128】
指示部51bは、受渡位置C3の直下である上昇位置C2へ向けて、ハンド11を開始位置C1から前進させる。つづいて、指示部51bは、上昇位置C2から受渡位置C3までハンド11を上昇させる。これにより、ハンド11上には、ウェハWが載置される。
【0129】
ハンド11が受渡位置C3へ到達した後、指示部51bは、受渡位置C3および終了位置C6間の高さにあり、かつ、水平後退位置C5の直下に位置する位置C4へ向けて、ハンド11を斜め後方へ移動させる。その後、指示部51bは、位置C4から水平後退位置C5へ向けてハンド11を上昇させた後、ハンド11を終了位置C6まで後退させる。
【0130】
次に、ウェハ引渡動作について
図9Bを用いて説明する。
図9Bに示すように、指示部51bは、処理情報および動作パターン情報52aに基づき、ハンド11を位置D1〜位置D6のルートで移動させるようにロボット10に対して指示する。
【0131】
ここで、位置D1は開始位置であり、位置D3は受渡位置であり、位置D5は水平後退位置であり、位置D6は終了位置である。
図9Aと同様、ここでは、基準位置Pbを受渡位置D3と一致させた場合の例について示している。
【0132】
指示部51bは、受渡位置D3の直上である降下位置D2へ向けて、ハンド11を開始位置D1から前進させる。つづいて、指示部51bは、把持機構による把持状態を解除してウェハWをフリーにしたうえで、降下位置D2から受渡位置D3までハンド11を降下させる。これにより、ハンド11上に載置されたウェハWがプロセス処理装置(たとえば、処理装置40)へ引き渡される。
【0133】
ハンド11が受渡位置D3へ到達した後、指示部51bは、受渡位置D3および終了位置D6間の高さにあり、かつ、水平後退位置D5の直上に位置する位置D4へ向けて、ハンド11を斜め前方へ移動させる。その後、指示部51bは、位置D4から水平後退位置D5へ向けてハンド11を降下させた後、ハンド11を終了位置D6まで後退させる。
【0134】
このように、第2の実施形態では、受渡位置からハンド11を鉛直方向に移動させつつ水平方向にも移動させた後、ハンド11をさらに鉛直方向に移動させたうえで、ハンド11を水平方向に後退させることとした。
【0135】
かかる動作パターンは、たとえば、作業スペースが比較的狭い場合等に有効である。すなわち、第2の実施形態に係る動作パターンを用いることで、ロボット10は、作業スペースが比較的狭い場合であっても、ウェハWのこすれを防止しつつ、ウェハWの受け渡しを行うことができる。
【0136】
たとえば、プロセス処理装置の形状や大きさによっては、奥行きが狭く、受渡位置から水平後退位置までの距離を有効に取ることができない場合がある。このような場合に
図9Bに示す動作パターンを用いることとすれば、プロセス処理装置の奥行きが狭い場合であっても、ハンド11を斜め前方に有効に移動させることができ、ウェハWのこすれを適切に防止することができる。
【0137】
なお、第1の実施形態では、受渡位置から水平後退位置に到達するまでハンド11を斜め方向に移動させることとしたが、このような動作パターンは、たとえば、作業スペースが比較的広い場合に有効である。すなわち、
図6Aおよび
図6Bに示す動作パターンを用いた場合、
図9Aおよび
図9Bに示す動作パターンと比較してハンド11の停止点が少なくなるため、ウェハWの搬送に要する時間を短縮することができる。
【0138】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態では、ハンド11が受渡位置に到達した後に、ハンド11を斜め移動させる場合の例について示した。しかし、ハンド11は、受渡位置に到達する前から斜め移動させてもよい。
【0139】
以下では、第3の実施形態に係るウェハ受取動作およびウェハ引渡動作について
図10Aおよび
図10Bを用いて説明する。
図10Aは、第3の実施形態に係るウェハ受取動作の説明図であり、
図10Bは、第3の実施形態に係るウェハ引渡動作の説明図である。
【0140】
まず、第3の実施形態に係るウェハ受取動作について
図10Aを用いて説明する。
図10Aに示すように、指示部51bは、処理情報および動作パターン情報52aに基づき、ハンド11を位置E1〜位置E5のルートで移動させるようにロボット10に対して指示する。
【0141】
ここで、位置E1は開始位置であり、位置E3は受渡位置であり、位置E4は水平後退位置であり、位置E5は終了位置である。第3の実施形態に係る動作パターンでは、位置E2、受渡位置E3および水平後退位置E4が、一直線上に並んで配置される。なお、ここでは、基準位置Pbを受渡位置E3と一致させた場合の例について示している。
【0142】
指示部51bは、受渡位置E3の下方かつ受渡位置E3よりも奥の位置E2へ向けて、ハンド11を開始位置E1から前進させる。つづいて、ハンド11が位置E2へ到達すると、指示部51bは、水平後退位置E4へ向けて、ハンド11を斜め後方に移動させる。
【0143】
このとき、位置E2、受渡位置E3および水平後退位置E4が一直線上に並んでいるため、ハンド11は、受渡位置E3を斜めに通過して水平後退位置E4へ到達することとなる。そして、ハンド11が受渡位置E3を通過することにより、ハンド11上には、ウェハWが載置される。
【0144】
ハンド11が水平後退位置E4へ到達した後、指示部51bは、ハンド11を終了位置E5まで後退させる。
【0145】
つづいて、第3の実施形態に係るウェハ引渡動作について
図10Bを用いて説明する。
図10Bに示すように、指示部51bは、処理情報および動作パターン情報52aに基づき、ハンド11を位置F1〜位置F5のルートで移動させるようにロボット10に対して指示する。
【0146】
ここで、位置F1は開始位置であり、位置F3は受渡位置であり、位置F4は水平後退位置であり、位置F5は終了位置である。
図10Aと同様に、位置F2、受渡位置F3および水平後退位置F4は、一直線上に並んで配置される。また、ここでは、基準位置Pbを受渡位置E3と一致させた場合の例について示している。
【0147】
指示部51bは、受渡位置F3の上方かつ受渡位置F3よりも手前の位置F2へ向けて、ハンド11を開始位置F1から前進させる。つづいて、ハンド11が位置F2へ到達すると、指示部51bは、水平後退位置F4へ向けて、ハンド11を斜め前方に移動させる。
【0148】
これにより、
図10Aに示した場合と同様、ハンド11は、受渡位置F3を斜めに通過して水平後退位置F4へ到達することとなる。そして、ハンド11が受渡位置F3を通過することにより、ハンド11上に載置されたウェハWは、プロセス処理装置(たとえば、処理装置40)へと引き渡される。ハンド11が水平後退位置F4へ到達した後、指示部51bは、ハンド11を終了位置F5まで後退させる。
【0149】
このように、第3の実施形態では、ハンド11が、受渡位置の上方かつ受渡位置よりも手前の所定位置(位置F2)または受渡位置の下方かつ受渡位置よりも奥の所定位置(位置E2)へ到達した後、ハンド11を鉛直方向に移動させつつ水平方向にも移動させることによってハンド11を受渡位置へ到達させることとした。これにより、ウェハWのこすれをより確実に防止することができる。
【0150】
すなわち、ロボットシステムにおいては、ロボット制御装置によって指定される受渡位置が、実際の受渡位置と僅かにずれる可能性がある。かかる場合であっても、ロボット制御装置50によって指定される受渡位置E3,F3を通過する前から通過した後にかけてハンド11を斜め移動させることとすれば、仮に、受渡位置のずれが生じたとしても、ウェハWのこすれを適切に防止することができる。
【0151】
また、第3の実施形態に係る動作パターンは、第1の実施形態に係る動作パターンと同様、作業スペースが比較的広い場合に有効である。すなわち、第3の実施形態に係る動作パターンを用いた場合、第2の実施形態に係る動作パターンと比較してハンド11の停止点が少なくなるため、ウェハWの搬送に要する時間を短縮することができる。
【0152】
さらに、第3の実施形態では、位置E2、受渡位置E3および水平後退位置E4、または、位置F2、受渡位置F3および水平後退位置F4が一直線上に配置される。このため、指示部51bは、受渡位置E3,F3においてハンド11を停止させることなく、そのまま斜め移動させることが可能である。これにより、第1の実施形態および第2の実施形態に係る動作パターンと比較して停止点をさらに少なくすることができ、ウェハWの搬送に要する時間を短縮することができる。
【0153】
ところで、上述してきた各実施形態では、ハンド11を斜め方向に移動させる場合の例について説明したが、指示部51bは、必ずしもハンド11を斜め方向に移動させることを要しない。以下では、かかる場合の例について
図11Aおよび
図11Bを用いて説明する。
図11Aは、ウェハ受取動作のその他の説明図であり、
図11Bは、ウェハ引渡動作のその他の説明図である。
【0154】
ウェハ受取動作をロボット10に対して行わせる場合、
図11Aに示すように、指示部51bは、ハンド11を位置G1〜位置G5のルートで移動させるようにロボット10に対して指示する。位置G1は開始位置、位置G2は上昇位置、位置G3は受渡位置、位置G4は水平後退位置、位置G5は終了位置である。
【0155】
上昇位置G2および水平後退位置G4は、何れも受渡位置G3と鉛直方向において重複する位置に配置される。したがって、ハンド11は、開始位置G1および上昇位置G2間、水平後退位置G4および終了位置G5間は、水平方向にのみ移動し、上昇位置G2および受渡位置G3間、受渡位置G3および水平後退位置G4間は、鉛直方向にのみ移動することとなる。
【0156】
また、ウェハ引渡動作をロボット10に対して行わせる場合、指示部51bは、
図11Bに示すように、ハンド11を位置H1〜位置H5のルートで移動させるようにロボット10に対して指示する。位置H1は開始位置、位置H2は降下位置、位置H3は受渡位置、位置H4は水平後退位置、位置H5は終了位置である。
【0157】
降下位置H2および水平後退位置H4は、何れも受渡位置H3と鉛直方向において重複する位置に配置される。したがって、ハンド11は、開始位置H1および降下位置H2間、水平後退位置H4および終了位置H5間は、水平方向にのみ移動し、降下位置H2および受渡位置H3間、受渡位置H3および水平後退位置H4間は、鉛直方向にのみ移動することとなる。
【0158】
このように、ロボットシステム1では、ハンド11を斜め移動させない動作パターンを備えていてもよい。
【0159】
また、上述してきた各実施形態では、ウェハ受取動作およびウェハ引渡動作について複数の動作パターンを用いて説明したが、ロボット制御装置50は、上述してきた各動作パターンを搬出元あるいは搬入先となるプロセス処理装置に応じて適宜切り替えてもよい。すなわち、プロセス処理装置の形状や大きさに応じて、それぞれに適した動作パターンを選択することとすれば、ウェハWのこすれをより確実に防止することができる。
【0160】
また、上述した各実施形態では、単腕に相当する1つのアームの先端部に2個のハンドが設けられている場合を例に挙げて説明したが、ハンドの個数を限定するものではなく、3個以上設けられていてもよいし、1個のみ設けられてもよい。
【0161】
また、上述した各実施形態では、単腕ロボットを例に挙げて説明したが、双腕以上の多腕ロボットに適用することとしてもよい。
【0162】
また、上述した各実施形態では、搬送対象である薄板状のワークがウェハである場合の例について説明したが、搬送対象であるワークは、たとえば、液晶パネルディスプレイのガラス基板などであってもよい。また、ワークは、薄板状であればよく、必ずしも基板であることを要しない。
【0163】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。