特許第5756041号(P5756041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756041
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20150709BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20150709BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20150709BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   H01L29/91 L
   H01L29/91 B
   H01L29/91 D
   H01L29/91 E
   H01L29/06 301F
   H01L29/06 301M
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-49256(P2012-49256)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-187240(P2013-187240A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 明
(72)【発明者】
【氏名】白木 聡
(72)【発明者】
【氏名】芦田 洋一
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−005443(JP,A)
【文献】 特開2011−082297(JP,A)
【文献】 特開2008−227474(JP,A)
【文献】 特開平10−321877(JP,A)
【文献】 特開2010−114248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/861−29/885
H01L 21/329
H01L 27/06−27/07
H01L 29/06−29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリシックICに組み込まれるダイオードであって、
溝部が設けられている半導体層と、第1絶縁層と、抵抗性フィールドプレートと、を備えており、
前記半導体層は、上面部に設けられているカソード領域と、上面部に設けられているとともに前記カソード領域から離れて設けられているアノード領域と、前記カソード領域と前記アノード領域との間に設けられているドリフト領域と、を有しており、
前記第1絶縁層は、前記半導体層の上面に設けられており、
前記抵抗性フィールドプレートは、前記第1絶縁層の上面に設けられており、一端が前記カソード領域に電気的に接続されており、他端が前記アノード領域に電気的に接続されており、
前記ドリフト領域は、前記半導体層のうちの前記溝部に対応する範囲に配置されており、
前記第1絶縁層と前記抵抗性フィールドプレートは、前記溝部の内部に設けられている、ダイオード
【請求項2】
前記半導体層の下面に接して設けられている第2絶縁層をさらに備え、
前記第2絶縁層と前記ドリフト領域と前記第1絶縁層とがこの順に積層している、請求項1に記載のダイオード
【請求項3】
前記カソード領域と前記アノード領域を通る断面で前記半導体層を断面視したときに、前記カソード領域と前記アノード領域の間に前記溝部が複数存在しているとともに、各溝部に1つの前記抵抗性フィールドプレートが存在しており、
前記溝部と前記溝部の間に前記ドリフト領域の一部が存在する、請求項1または2に記載のダイオード
【請求項4】
前記カソード領域と前記アノード領域を通る断面で前記半導体層を断面視したときに、前記カソード領域と前記アノード領域の間に前記溝部が1つ存在しているとともに、前記抵抗性フィールドプレートが複数存在している、請求項1または2に記載のダイオード
【請求項5】
請求項1に記載のダイオードの製造方法であって、
前記半導体層に前記溝部を形成する工程と、
前記溝部の内面に前記第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上面であって前記溝部の内部に、前記抵抗性フィールドプレートを形成する工程と、を備える、ダイオードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されている技術は、モノリシックICに組み込まれる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの半導体層に異なる種類の半導体装置を組み込んだモノリシックICが様々な用途で必要とされている。この種のモノリシックICに組み込まれる半導体装置の一例にダイオードが知られている。ダイオードは、半導体層の上面部に設けられているカソード領域と、半導体層の上面部に設けられているアノード領域と、カソード領域とアノード領域の間に設けられているドリフト領域を備えている。アノード領域は、カソード領域の周囲を一巡して配置されていることが多い。
【0003】
ダイオードはさらに、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)膜と抵抗性フィールドプレートを備えている。LOCOS膜は、半導体層の上面に設けられている。抵抗性フィールドプレートは、LOCOS膜の上面に設けられており、一端がカソード領域に電気的に接続されており、他端がアノード領域に電気的に接続されている。抵抗性フィールドプレートには微小電流が流れており、これにより、カソード領域とアノード領域の間に存在する半導体層の上面部の電位分布が均一化され、半導体層の表面電界を緩和することができる。この種のダイオードの一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−22175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイオードは、順バイアスが与えられているオン状態から、逆バイアスが与えられてオフ状態に移行する場合に、ドリフト領域に蓄積されたキャリアによって逆流電流が流れる。この逆流電流が流れる時間は、リカバリ時間(逆回復時間)と呼ばれている。リカバリ時間が長いと、損失が大きくなるなどの弊害が発生する場合があるため、リカバリ時間のさらなる短縮化が望まれている。なお、ダイオード以外の半導体装置においても、リカバリ時間の短縮化が望まれている。
【0006】
本明細書で開示される技術は、リカバリ特性に優れた半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される技術は、モノリシックICに組み込まれる半導体装置に具現化される。半導体装置は、溝部が設けられている半導体層と、第1絶縁層と、抵抗性フィールドプレートと、を備えている。半導体層は、上面部に設けられている第1半導体領域と、上面部に設けられているとともに第1半導体領域から離れて設けられている第2半導体領域と、第1半導体領域と第2半導体領域との間に設けられている第3半導体領域と、を有している。第1絶縁層は、第3半導体領域の上面に設けられている。抵抗性フィールドプレートは、第1絶縁層の上面に設けられており、一端が第1半導体領域に電気的に接続されており、他端が第2半導体領域に電気的に接続されている。第3半導体領域は、半導体層のうちの溝部に対応する範囲に配置されている。第1半導体領域と第2半導体領域は、半導体層のうちの溝部に対応する範囲に配置されていてもよく、半導体装置のうちの溝部以外に対応する範囲に配置されていてもよい。第1絶縁層と抵抗性フィールドプレートは、溝部の内部に設けられている。
【0008】
半導体装置と他の装置(例:IGBT等)とが同一基板に形成されている、いわゆるモノリシックICを製造する場合には、半導体層の厚さが他の装置によって規定されてしまう場合がある。上記態様の半導体装置によると、溝部に対応する範囲の半導体層の厚さは、他の装置が形成されている半導体層の厚さよりも薄くすることができる。また、半導体層の厚さが薄くなった範囲に対応して第3半導体領域が配置されている。これにより、第3半導体領域の体積を減少させることができるため、順方向バイアス時におけるキャリアの注入量を減少させることができる。その結果、リカバリ時の蓄積電荷を少なくできるため、リカバリ時間を短縮化することが可能となる。さらに、溝部の内部に第1絶縁層と抵抗性フィールドプレートが設けられているので、溝部に対応する範囲の半導体層の表面電界を緩和することが可能である。上記態様の半導体装置では、リカバリ時間の短縮化と高耐圧化の双方が実現されている。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示される技術によると、リカバリ特性に優れた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ダイオードの概略平面図を模式的に示す(明瞭化を目的として、SOI基板上の電極等を除去した状態で図示されている)。
図2図1のII-II線に対応した断面図を模式的に示す(実施例1)。
図3図1のII-II線に対応した断面図を模式的に示す(実施例2)。
図4図1のII-II線に対応した断面図を模式的に示す(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本明細書で開示する実施例の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0012】
(特徴1)モノリシックICに組み込まれる半導体装置は、溝部が設けられている半導体層と、第1絶縁層と、抵抗性フィールドプレートと、を備えていてもよい。半導体層は、上面部に設けられている第1半導体領域と、上面部に設けられているとともに第1半導体領域から離れて設けられている第2半導体領域と、第1半導体領域と第2半導体領域との間に設けられている第3半導体領域と、を有していてもよい。第1絶縁層は、第3半導体領域の上面に設けられていてもよい。抵抗性フィールドプレートは、第1絶縁層の上面に設けられており、一端が第1半導体領域に電気的に接続されており、他端が第2半導体領域に電気的に接続されていてもよい。第3半導体領域は、半導体層のうちの溝部に対応する範囲に配置されていてもよい。第1半導体領域と第2半導体領域は、半導体層のうちの溝部に対応する範囲に配置されていてもよく、半導体装置のうちの溝部以外に対応する範囲に配置されていてもよい。第1絶縁層と抵抗性フィールドプレートは、溝部の内部に設けられていてもよい。
【0013】
(特徴2)半導体層の下面に接して配置されている第2絶縁層をさらに備えていてもよい。第2絶縁層と第3半導体と第1絶縁層とがこの順に積層していてもよい。この態様半導体装置は、いわゆるSOI(Silicon on Insulator)基板を用いて実現される。
【0014】
(特徴3)第1半導体領域と第2半導体領域を通る断面で半導体層を断面視したときに、第1半導体領域と第2半導体領域の間に溝部が複数存在しているとともに、各溝部に1つの抵抗性フィールドプレートが存在してもよい。溝部と溝部の間に第3半導体領域の一部が存在していてもよい。抵抗性フィールドプレートは、第1絶縁層を介して接している第3半導体領域の表面の電位分布を均一化することで、半導体層の表面電界を緩和することができる。本明細書に開示されている半導体装置では、溝部と溝部の間に第3半導体領域の一部が存在している。よって、溝部の底面に配置されている抵抗性フィールドプレートに加えて、溝部の両側面に配置されている抵抗性フィールドプレートが、第1絶縁層を介して第3半導体領域に接している状態とすることができる。すなわち、第3半導体領域の上面に抵抗性フィールドプレートが配置されている場合に比して、抵抗性フィールドプレートと第3半導体領域とが第1絶縁層を介して接している面積を増加させることができる。これにより、第3半導体領域の電位分布を均一化する効果をより高めることが可能となる。
【0015】
(特徴4)第1半導体領域と第2半導体領域を通る断面で半導体層を断面視したときに、第1半導体領域と第2半導体領域の間に溝部が1つ存在しているとともに、抵抗性フィールドプレートが複数存在していてもよい。これにより、第1絶縁層と抵抗性フィールドプレートが、半導体層に形成された溝部の内部に設けられている領域では、その部分における半導体層の厚さを、他の装置が形成されている半導体層の厚さよりも薄くすることができる。
【0016】
(特徴5)本明細書で開示される技術は、本明細書で開示される半導体装置の製造方法に具現化される。製造方法は、半導体層に溝部を形成する工程を備えている。溝部の底面および側壁面に第1絶縁層を成膜する工程を備えている。第1絶縁層の表面上であって溝部の内部に、抵抗性フィールドプレートを形成する工程を備えている。これにより、第1半導体領域と第2半導体領域との間に設けられている半導体領域の体積を減少させることができるため、順方向バイアス時におけるキャリアの注入量を減少させることができる。その結果、リカバリ時間を短縮化することが可能となる。
【0017】
(特徴6)半導体装置は、第1半導体領域と第2半導体領域との間で整流作用を有する装置であってもよい。半導体装置は、整流作用以外の作用を有する他の装置と同一の基板上に一体に形成されていてもよい。
【実施例1】
【0018】
図1および図2に示されるように、横型のダイオード1は、n型又はp型の支持層12と埋込み絶縁層14とn型の活性層16が積層したSOI基板10に形成されている。図1に示されるように、ダイオード1は、絶縁分離トレンチ18で囲まれた活性層16の島領域内に形成されている。絶縁分離トレンチ18は、活性層16の表面から活性層16を貫通して埋込み絶縁層14まで達しており、平面視したときに活性層16の一部を一巡している。一例では、支持層12と活性層16の材料には単結晶シリコンが用いられており、埋込み絶縁層14の材料には酸化シリコンが用いられている。
【0019】
ダイオード1は、n型のカソード領域28とp型のアノード領域23とn型のドリフト領域26を備えている。カソード領域28とアノード領域23とドリフト領域26はダイオード構造を構成しており、活性層16を横方向に流れる電流を制御する。具体的には、カソード領域28とアノード領域23の間に順バイアスが印加されたときに(アノード領域23が高圧側に接続されたときに)、カソード領域28とアノード領域23の間に電流を導通させる。一方、カソード領域28とアノード領域23の間に逆バイアスが印加されたときに(カソード領域28が高圧側に接続されたときに)、カソード領域28とアノード領域23の間を非導通とする。
【0020】
図1に示されるように、カソード領域28は、島領域の中央部に配置されており、紙面左右方向に長く伸びて形成されている。カソード領域28は、例えばイオン注入技術を利用して、活性層16の表面部にリンイオンを注入して形成することができる。なお、この例ではカソード領域28が1つの拡散領域で形成されているが、この例に代えて、カソード領域28が紙面左右方向に分散した状態で形成されていてもよい。また、カソード領域28に接するように、p型の領域を部分的に形成してもよい。
【0021】
アノード領域23は、島領域の周辺部に配置されており、絶縁分離トレンチ18に接しながらカソード領域28の周囲を一巡して形成されている。アノード領域23は、高濃度アノード領域22と低濃度アノード領域24を有している。低濃度アノード領域24は、高濃度アノード領域22よりも深く形成されており、高濃度アノード領域22を取り囲んでいる。なお、高濃度アノード領域22と低濃度アノード領域24の形態はこの例に限られない。例えば、高濃度アノード領域22の面積がより小さく形成され、低濃度アノード領域24の一部がアノード電極32と接するような形態でもよい。また、低濃度アノード領域24の深さを部分的に変えたような形態でもよい。アノード領域23は、例えばイオン注入技術を利用して、活性層16の表面部にボロンイオンを注入して形成することができる。
【0022】
ドリフト領域26は、カソード領域28とアノード領域23の間に形成されている。ドリフト領域26は、活性層16にカソード領域28とアノード領域23を形成した残部である。またドリフト領域26は、溝部43〜45に対応する範囲に配置されている。ドリフト領域26には、必要に応じて、高耐圧化のための半導体領域(例えば、リサーフ領域)が形成されていてもよい。
【0023】
ダイオード1はさらに、溝部43〜45、絶縁層41、抵抗性フィールドプレート30、パッシベーション膜46、アノード電極32、カソード電極36を備えている。図1に示すように、内周側の溝部45は、島状領域の中央部を一巡するように配置されている。外周側の溝部43は、島状領域の周辺部を一巡するように配置されている。中間の溝部44は、内周側の溝部45と外周側の溝部43との間を接続するように形成されている。中間の溝部44は、溝部が互いに交わらないような、一筆書きの渦巻き形状を有している。図1および図2の例では、中間の溝部44が、内周側の溝部45と外周側の溝部43との間を4周している。また図2に示すように、カソード領域28およびアノード領域23を通る断面でダイオード1を断面視したときに、溝部43〜45が複数存在している。
【0024】
絶縁層41は、溝部43〜45の底面および側壁面に設けられている。また絶縁層41は、溝部43〜45が形成されていないドリフト領域26の上面に設けられている。絶縁層41が設けられている領域では、埋込み絶縁層14とドリフト領域26と絶縁層41とが、この順に積層している構造を有している。絶縁層41の材料には、例えば酸化シリコンが用いられている。
【0025】
抵抗性フィールドプレート30は、絶縁層41の表面上であって、溝部43〜45の内部に配置されている。抵抗性フィールドプレート30は、内周側の抵抗性フィールドプレート部35と、中間の抵抗性フィールドプレート部34と、外周側の抵抗性フィールドプレート部33を有している。内周側の抵抗性フィールドプレート部35は、島状領域の中央部を一巡するように配置されており、カソード電極36を介してカソード領域28に電気的に接続されている。外周側の抵抗性フィールドプレート部33は、島状領域の周辺部を一巡するように配置されており、アノード電極32を介してアノード領域23に接続されている。中間の抵抗性フィールドプレート部34は、内周側の抵抗性フィールドプレート部35と外周側の抵抗性フィールドプレート部33の双方に接続されている。抵抗性フィールドプレート30の材料には、例えばポリシリコンやCrSi(クロムシリコン)などの金属抵抗が用いられている。なお、抵抗性フィールドプレートの配置パターンは渦巻きパターンに限られず、例えば、折り返し抵抗パターンを用いてもよい。また、抵抗性フィールドプレートの形状は一筆書きの形状に限られず、例えば、分割された複数のフィールドプレートを備える形状であってもよい。
【0026】
パッシベーション膜46は、抵抗性フィールドプレート30およびドリフト領域26の上面に設けられている。パッシベーション膜46は、抵抗性フィールドプレート30およびドリフト領域26を保護する機能を有する。パッシベーション膜46の材料には、例えば酸化シリコンが用いられている。
【0027】
カソード電極36は、島領域の中央部に配置されている。カソード電極36は、カソード領域28に直接的に接触しているとともに、パッシベーション膜46に形成されているビア47を介して内周側の抵抗性フィールドプレート部35に接触している。アノード電極32は、島領域の周辺部に配置されている。アノード電極32は、アノード領域23に直接的に接触しているとともに、パッシベーション膜46に形成されているビア48を介して外周側の抵抗性フィールドプレート部33に接触している。
【0028】
また、SOI基板10には、ダイオード1以外の他の装置(不図示)が形成されている。他の装置の例としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が挙げられる。これによって、ダイオード1と他の装置とが同一基板に形成されている、いわゆるモノリシックICが構成されている。
【0029】
<実施例1の効果>
モノリシックICでは、複数種類の装置を同一基板上に形成するため、活性層16の厚さを、複数種類の装置の間で統一する必要がある。すると例えば、IGBTなどの他の装置によって活性層16の厚さが規定されてしまう場合がある。この場合、他の装置にとっては活性層16の厚さが適切であるが、ダイオード1にとっては活性層16の厚さが厚すぎる場合がある。実施例1で開示されているダイオード1によると、絶縁層41および抵抗性フィールドプレート部33〜35が溝部43〜45の内部に設けられている領域では、その部分におけるドリフト領域26の実効的な厚さD2(図2)を、活性層16の厚さD1よりも薄くすることができる。これにより、活性層16の厚さD1が他の装置によって規定されてしまう場合においても、カソード領域28とアノード領域23との間に設けられているドリフト領域26の厚さを薄くすることで、ドリフト領域26の体積を減少させることができる。よって、ダイオード1に順方向バイアスが印加されている場合における、キャリアの注入量を減少させることができる。その結果、リカバリ時の蓄積電荷を少なくできるため、ダイオード1のリカバリ時間を短縮化することが可能となる。
【0030】
抵抗性フィールドプレート30は、絶縁層を介して接しているドリフト領域26の表面の電位分布を均一化し、ドリフト領域26の表面電界を緩和することによって、ダイオードの耐圧を向上させる機能を有している。実施例1に開示されているダイオード1では、溝部43〜45の底面に配置されている抵抗性フィールドプレート30に加えて、溝部43〜45の両側面に配置されている抵抗性フィールドプレート30も、絶縁層41を介してドリフト領域26に接している状態とすることができる。すなわち、抵抗性フィールドプレート30を埋め込み型とすることで、抵抗性フィールドプレート30の側面部も、ドリフト領域26の電位分布を均一化するために用いることができる。よって、ドリフト領域26に溝部を形成せずにドリフト領域26の上面に抵抗性フィールドプレート30が配置されている場合に比して、抵抗性フィールドプレート30とドリフト領域26とが絶縁層41を介して接している面積を増加させることができる。これにより、ドリフト領域26の電位分布を均一化する効果をより高めることができるため、ダイオード1の耐圧をより向上させることが可能となる。
【0031】
ドリフト領域26の表面電位分布の均一性を向上させるためには、抵抗性フィールドプレート30の配線幅を狭くするとともに、抵抗性フィールドプレート30間のピッチを狭める必要がある。この場合、抵抗性フィールドプレート30の抵抗値の上昇を防ぐために、抵抗性フィールドプレート30の高さを高くして、抵抗性フィールドプレート30の断面積を確保する必要がある。実施例1に開示されているダイオード1では、溝部43〜45に導電層を埋め込むことで、抵抗性フィールドプレート30を形成している。よって、抵抗性フィールドプレート30の高さを高くするには、溝部43〜45の深さを深くすればよいため、抵抗性フィールドプレート30がドリフト領域26の上面から突出することがない。これにより、抵抗性フィールドプレート30の上面を覆うパッシベーション膜46の平坦性が確保され、パッシベーション膜46の信頼性を確保することができる。
【0032】
実施例1に開示されているダイオード1では、埋込み絶縁層14と絶縁層41との間に、ドリフト領域26が挟まれている形状を実現することができる。よって、ドリフト領域26に形成されている溝部43〜45の深さを深く形成するほど、その部分における埋込み絶縁層14と絶縁層41との間の距離を小さくすることができ、その部分におけるドリフト領域26の厚さを薄くすることが可能となる。
【0033】
<ダイオード1の製造方法>
ダイオード1の製造プロセスを説明する。支持層12、埋込み絶縁層14、n型の活性層16が積層したSOI基板10を用意する。次に、不純物拡散技術により、活性層16にアノード領域23およびカソード領域28を形成する。なお、不純物拡散技術とは、フォトリソグラフィからイオン打ち込み等までの一連の処理を意味する。不純物拡散技術では従来公知の方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0034】
活性層16の表面に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって酸化膜層(不図示)を形成し、酸化膜層の上面にレジスト層(不図示)を形成する。そしてフォトエッチング技術により、溝部43〜45に対応した開口部(不図示)を酸化膜層に形成する。なお、フォトエッチング技術とは、フォトリソグラフィからRIE(Reactive Ion Etching)等のエッチングまでの一連の処理を意味する。フォトエッチング技術では従来公知の方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。次に、酸化膜層をマスクとして、ドリフト領域26に対するドライエッチングを行う。これにより、ドリフト領域26の表面から下方側に向かって、溝部43〜45(図2)が形成される。
【0035】
熱酸化工程が行なわれることで、溝部43〜45の底部および側壁に絶縁層41が形成される。次に、SOI基板10の表面にポリシリコンが堆積される。ポリシリコンの堆積厚さは、溝部43の幅の半分以上、または、溝部45の半分以上とされる。そして、フォトエッチング技術により、溝部43〜45の内部以外の部分のポリシリコンが除去される。これにより、溝部43〜45の内部に、埋込み型の抵抗性フィールドプレート部33〜35が形成される。なお、溝部43〜45の内部以外の部分のポリシリコンは、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術によって除去しても良い。
【0036】
SOI基板10の表面に、パッシベーション膜46が堆積される。フォトエッチング技術により、カソード領域28およびアノード領域23の表面のパッシベーション膜46を選択的に除去するとともに、ビア47および48を形成する。最後に、カソード電極36およびアノード電極32を形成することにより、図1および図2に示したダイオード1が完成される。
【実施例2】
【0037】
<ダイオード1aの構造>
実施例2におけるダイオード1a(図3)の、実施例1におけるダイオード1(図2)との相違点は、カソード領域28およびアノード領域23を通る断面でダイオード1aを断面視したときに、溝部40の内部に絶縁層41aが充填されているとともに、絶縁層41aに形成されている溝部43a〜45aの各々の内部に抵抗性フィールドプレート部33a〜35aが形成されている点である。
【0038】
図3に示すように、溝部40は、島状領域の中央部と島状領域の周辺部とを接続するように形成されている。絶縁層41aは、溝部40の底面および側壁面に設けられている。また絶縁層41aは、隣接する抵抗性フィールドプレート部33〜35の間に設けられている。図1に示すように、内周側の溝部45aは、島状領域の中央部を一巡するように配置されている。外周側の溝部43aは、島状領域の周辺部を一巡するように配置されている。中間の溝部44aは、内周側の溝部45と外周側の溝部43との間を接続するように形成されている。抵抗性フィールドプレート30aは、絶縁層41の表面上であって、溝部43a〜45aの内部に配置されている。
【0039】
なお、実施例2のダイオード1a(図3)のその他の構成要素であって、実施例1のダイオード1(図2)と同様の構成要素には、同一の符号を付している。これらの構成要素については、説明を省略する。また、実施例2に係るダイオード1aにより得られる効果は、実施例1に係るダイオード1により得られる効果と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
<ダイオード1aの製造方法>
ダイオード1aの製造プロセスを説明する。支持層12、埋込み絶縁層14、n型の活性層16が積層したSOI基板10を用意する。次に、不純物拡散技術により、活性層16にアノード領域23およびカソード領域28を形成する。活性層16の表面に、CVD法によって酸化膜層(不図示)を形成し、酸化膜層の上面にレジスト層(不図示)を形成する。そしてフォトエッチング技術により、溝部40に対応した開口部(不図示)を酸化膜層に形成する。次に、酸化膜層をマスクとして、ドリフト領域26に対するドライエッチングを行う。これにより、溝部40(図3)が形成される。
【0041】
CVD法によって、SOI基板10の表面に酸化膜が堆積される。そして、フォトエッチング技術またはCMP技術により、溝部40の内部以外の部分の酸化膜が除去される。これにより、溝部40の内部に充填された、絶縁層41aが形成される。
【0042】
活性層16の表面に、CVD法によって酸化膜層(不図示)を形成し、酸化膜層の上面にレジスト層(不図示)を形成する。そしてフォトエッチング技術により、溝部43a〜45aに対応した開口部(不図示)を酸化膜層に形成する。次に、酸化膜層をマスクとして、絶縁層41aに対するドライエッチングを行う。これにより、絶縁層41aの表面から下方側に向かって、溝部43a〜45a(図3)が形成される。次に、SOI基板10の表面にポリシリコンが堆積される。そして、フォトエッチング技術またはCMP技術により、溝部43a〜45aの内部以外の部分のポリシリコンが除去される。これにより、溝部43a〜45aの内部に、埋込み型の抵抗性フィールドプレート部33a〜35aが形成される。以後のプロセスは、実施例1で説明したダイオード1の製造プロセスと同様であるため、説明を省略する。
【実施例3】
【0043】
<ダイオード1bの構造>
実施例3におけるダイオード1b(図4)の、実施例1におけるダイオード1(図2)との相違点は、カソード領域28およびアノード領域23を通る断面でダイオード1aを断面視したときに、溝部40bが1つ存在している点である。また、抵抗性フィールドプレート部33b〜35bが、溝部40bの上面に複数存在している点である。
【0044】
図4に示すように、溝部40bは、島状領域の中央部と島状領域の周辺部とを接続するように形成されている。絶縁層41bは、溝部40bの底面および側壁面に設けられている。抵抗性フィールドプレート30bは、絶縁層41bの表面上に配置されている。抵抗性フィールドプレート30bは、内周側の抵抗性フィールドプレート部35bと、中間の抵抗性フィールドプレート部34bと、外周側の抵抗性フィールドプレート部33bを有している。またパッシベーション膜46bは、抵抗性フィールドプレート部33b〜35bの上面に設けられるとともに、隣接する抵抗性フィールドプレート部33b〜35bの間に設けられている。
【0045】
なお、実施例3のダイオード1b(図4)のその他の構成要素であって、実施例1のダイオード1(図2)と同様の構成要素には、同一の符号を付している。これらの構成要素については、説明を省略する。また、実施例3に係るダイオード1bにより得られる効果は、実施例1に係るダイオード1により得られる効果と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
<ダイオード1bの製造方法>
ダイオード1bの製造プロセスを説明する。溝部40bを形成するまでのプロセスは、実施例2で説明した溝部40の製造プロセスと同様であるため、説明を省略する。溝部40bの形成後に熱酸化工程が行なわれることで、溝部40bの底部および側壁に絶縁層41bが形成される。 次に、SOI基板10の表面にポリシリコンが堆積される。そして、フォトエッチング技術により、抵抗性フィールドプレート部33b〜35b以外の部分のポリシリコンが除去される。これにより、溝部40bの内部に、抵抗性フィールドプレート部33b〜35bが形成される(図4)。以後のプロセスは、実施例1で説明したダイオード1の製造プロセスと同様であるため、説明を省略する。
【0047】
以上、本明細書に開示されている技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0048】
<変形例>
実施例3において、溝部40bはドリフト領域26に形成されるとしたが、この形態に限られない。アノード領域23およびカソード領域28を含むように溝部40bが形成される場合においても、ドリフト領域26の体積を減少させることができるため、リカバリ時間を短縮化することができる。
【0049】
上記実施例では半導体材料にシリコンを用いたものを例示したが、この例に代えて、ワイドギャップ半導体を用いてもよい。
【0050】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
1:ダイオード
10:SOI基板
12:支持層
14:埋込み絶縁層
16:活性層(半導体層の一例)
23:アノード領域(第2半導体領域の一例)
26:ドリフト領域
28:カソード領域(第1半導体領域の一例)
30:抵抗性フィールドプレート
33:外周側の抵抗性フィールドプレート部
34:中間の抵抗性フィールドプレート部
35:内周側の抵抗性フィールドプレート部
41:絶縁層(第1絶縁層の一例)
43〜45:溝部
図1
図2
図3
図4