【実施例1】
【0018】
図1および
図2に示されるように、横型のダイオード1は、n型又はp型の支持層12と埋込み絶縁層14とn
−型の活性層16が積層したSOI基板10に形成されている。
図1に示されるように、ダイオード1は、絶縁分離トレンチ18で囲まれた活性層16の島領域内に形成されている。絶縁分離トレンチ18は、活性層16の表面から活性層16を貫通して埋込み絶縁層14まで達しており、平面視したときに活性層16の一部を一巡している。一例では、支持層12と活性層16の材料には単結晶シリコンが用いられており、埋込み絶縁層14の材料には酸化シリコンが用いられている。
【0019】
ダイオード1は、n型のカソード領域28とp型のアノード領域23とn
−型のドリフト領域26を備えている。カソード領域28とアノード領域23とドリフト領域26はダイオード構造を構成しており、活性層16を横方向に流れる電流を制御する。具体的には、カソード領域28とアノード領域23の間に順バイアスが印加されたときに(アノード領域23が高圧側に接続されたときに)、カソード領域28とアノード領域23の間に電流を導通させる。一方、カソード領域28とアノード領域23の間に逆バイアスが印加されたときに(カソード領域28が高圧側に接続されたときに)、カソード領域28とアノード領域23の間を非導通とする。
【0020】
図1に示されるように、カソード領域28は、島領域の中央部に配置されており、紙面左右方向に長く伸びて形成されている。カソード領域28は、例えばイオン注入技術を利用して、活性層16の表面部にリンイオンを注入して形成することができる。なお、この例ではカソード領域28が1つの拡散領域で形成されているが、この例に代えて、カソード領域28が紙面左右方向に分散した状態で形成されていてもよい。また、カソード領域28に接するように、p
+型の領域を部分的に形成してもよい。
【0021】
アノード領域23は、島領域の周辺部に配置されており、絶縁分離トレンチ18に接しながらカソード領域28の周囲を一巡して形成されている。アノード領域23は、高濃度アノード領域22と低濃度アノード領域24を有している。低濃度アノード領域24は、高濃度アノード領域22よりも深く形成されており、高濃度アノード領域22を取り囲んでいる。なお、高濃度アノード領域22と低濃度アノード領域24の形態はこの例に限られない。例えば、高濃度アノード領域22の面積がより小さく形成され、低濃度アノード領域24の一部がアノード電極32と接するような形態でもよい。また、低濃度アノード領域24の深さを部分的に変えたような形態でもよい。アノード領域23は、例えばイオン注入技術を利用して、活性層16の表面部にボロンイオンを注入して形成することができる。
【0022】
ドリフト領域26は、カソード領域28とアノード領域23の間に形成されている。ドリフト領域26は、活性層16にカソード領域28とアノード領域23を形成した残部である。またドリフト領域26は、溝部43〜45に対応する範囲に配置されている。ドリフト領域26には、必要に応じて、高耐圧化のための半導体領域(例えば、リサーフ領域)が形成されていてもよい。
【0023】
ダイオード1はさらに、溝部43〜45、絶縁層41、抵抗性フィールドプレート30、パッシベーション膜46、アノード電極32、カソード電極36を備えている。
図1に示すように、内周側の溝部45は、島状領域の中央部を一巡するように配置されている。外周側の溝部43は、島状領域の周辺部を一巡するように配置されている。中間の溝部44は、内周側の溝部45と外周側の溝部43との間を接続するように形成されている。中間の溝部44は、溝部が互いに交わらないような、一筆書きの渦巻き形状を有している。
図1および
図2の例では、中間の溝部44が、内周側の溝部45と外周側の溝部43との間を4周している。また
図2に示すように、カソード領域28およびアノード領域23を通る断面でダイオード1を断面視したときに、溝部43〜45が複数存在している。
【0024】
絶縁層41は、溝部43〜45の底面および側壁面に設けられている。また絶縁層41は、溝部43〜45が形成されていないドリフト領域26の上面に設けられている。絶縁層41が設けられている領域では、埋込み絶縁層14とドリフト領域26と絶縁層41とが、この順に積層している構造を有している。絶縁層41の材料には、例えば酸化シリコンが用いられている。
【0025】
抵抗性フィールドプレート30は、絶縁層41の表面上であって、溝部43〜45の内部に配置されている。抵抗性フィールドプレート30は、内周側の抵抗性フィールドプレート部35と、中間の抵抗性フィールドプレート部34と、外周側の抵抗性フィールドプレート部33を有している。内周側の抵抗性フィールドプレート部35は、島状領域の中央部を一巡するように配置されており、カソード電極36を介してカソード領域28に電気的に接続されている。外周側の抵抗性フィールドプレート部33は、島状領域の周辺部を一巡するように配置されており、アノード電極32を介してアノード領域23に接続されている。中間の抵抗性フィールドプレート部34は、内周側の抵抗性フィールドプレート部35と外周側の抵抗性フィールドプレート部33の双方に接続されている。抵抗性フィールドプレート30の材料には、例えばポリシリコンやCrSi(クロムシリコン)などの金属抵抗が用いられている。なお、抵抗性フィールドプレートの配置パターンは渦巻きパターンに限られず、例えば、折り返し抵抗パターンを用いてもよい。また、抵抗性フィールドプレートの形状は一筆書きの形状に限られず、例えば、分割された複数のフィールドプレートを備える形状であってもよい。
【0026】
パッシベーション膜46は、抵抗性フィールドプレート30およびドリフト領域26の上面に設けられている。パッシベーション膜46は、抵抗性フィールドプレート30およびドリフト領域26を保護する機能を有する。パッシベーション膜46の材料には、例えば酸化シリコンが用いられている。
【0027】
カソード電極36は、島領域の中央部に配置されている。カソード電極36は、カソード領域28に直接的に接触しているとともに、パッシベーション膜46に形成されているビア47を介して内周側の抵抗性フィールドプレート部35に接触している。アノード電極32は、島領域の周辺部に配置されている。アノード電極32は、アノード領域23に直接的に接触しているとともに、パッシベーション膜46に形成されているビア48を介して外周側の抵抗性フィールドプレート部33に接触している。
【0028】
また、SOI基板10には、ダイオード1以外の他の装置(不図示)が形成されている。他の装置の例としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が挙げられる。これによって、ダイオード1と他の装置とが同一基板に形成されている、いわゆるモノリシックICが構成されている。
【0029】
<実施例1の効果>
モノリシックICでは、複数種類の装置を同一基板上に形成するため、活性層16の厚さを、複数種類の装置の間で統一する必要がある。すると例えば、IGBTなどの他の装置によって活性層16の厚さが規定されてしまう場合がある。この場合、他の装置にとっては活性層16の厚さが適切であるが、ダイオード1にとっては活性層16の厚さが厚すぎる場合がある。実施例1で開示されているダイオード1によると、絶縁層41および抵抗性フィールドプレート部33〜35が溝部43〜45の内部に設けられている領域では、その部分におけるドリフト領域26の実効的な厚さD2(
図2)を、活性層16の厚さD1よりも薄くすることができる。これにより、活性層16の厚さD1が他の装置によって規定されてしまう場合においても、カソード領域28とアノード領域23との間に設けられているドリフト領域26の厚さを薄くすることで、ドリフト領域26の体積を減少させることができる。よって、ダイオード1に順方向バイアスが印加されている場合における、キャリアの注入量を減少させることができる。その結果、リカバリ時の蓄積電荷を少なくできるため、ダイオード1のリカバリ時間を短縮化することが可能となる。
【0030】
抵抗性フィールドプレート30は、絶縁層を介して接しているドリフト領域26の表面の電位分布を均一化し、ドリフト領域26の表面電界を緩和することによって、ダイオードの耐圧を向上させる機能を有している。実施例1に開示されているダイオード1では、溝部43〜45の底面に配置されている抵抗性フィールドプレート30に加えて、溝部43〜45の両側面に配置されている抵抗性フィールドプレート30も、絶縁層41を介してドリフト領域26に接している状態とすることができる。すなわち、抵抗性フィールドプレート30を埋め込み型とすることで、抵抗性フィールドプレート30の側面部も、ドリフト領域26の電位分布を均一化するために用いることができる。よって、ドリフト領域26に溝部を形成せずにドリフト領域26の上面に抵抗性フィールドプレート30が配置されている場合に比して、抵抗性フィールドプレート30とドリフト領域26とが絶縁層41を介して接している面積を増加させることができる。これにより、ドリフト領域26の電位分布を均一化する効果をより高めることができるため、ダイオード1の耐圧をより向上させることが可能となる。
【0031】
ドリフト領域26の表面電位分布の均一性を向上させるためには、抵抗性フィールドプレート30の配線幅を狭くするとともに、抵抗性フィールドプレート30間のピッチを狭める必要がある。この場合、抵抗性フィールドプレート30の抵抗値の上昇を防ぐために、抵抗性フィールドプレート30の高さを高くして、抵抗性フィールドプレート30の断面積を確保する必要がある。実施例1に開示されているダイオード1では、溝部43〜45に導電層を埋め込むことで、抵抗性フィールドプレート30を形成している。よって、抵抗性フィールドプレート30の高さを高くするには、溝部43〜45の深さを深くすればよいため、抵抗性フィールドプレート30がドリフト領域26の上面から突出することがない。これにより、抵抗性フィールドプレート30の上面を覆うパッシベーション膜46の平坦性が確保され、パッシベーション膜46の信頼性を確保することができる。
【0032】
実施例1に開示されているダイオード1では、埋込み絶縁層14と絶縁層41との間に、ドリフト領域26が挟まれている形状を実現することができる。よって、ドリフト領域26に形成されている溝部43〜45の深さを深く形成するほど、その部分における埋込み絶縁層14と絶縁層41との間の距離を小さくすることができ、その部分におけるドリフト領域26の厚さを薄くすることが可能となる。
【0033】
<ダイオード1の製造方法>
ダイオード1の製造プロセスを説明する。支持層12、埋込み絶縁層14、n
−型の活性層16が積層したSOI基板10を用意する。次に、不純物拡散技術により、活性層16にアノード領域23およびカソード領域28を形成する。なお、不純物拡散技術とは、フォトリソグラフィからイオン打ち込み等までの一連の処理を意味する。不純物拡散技術では従来公知の方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0034】
活性層16の表面に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって酸化膜層(不図示)を形成し、酸化膜層の上面にレジスト層(不図示)を形成する。そしてフォトエッチング技術により、溝部43〜45に対応した開口部(不図示)を酸化膜層に形成する。なお、フォトエッチング技術とは、フォトリソグラフィからRIE(Reactive Ion Etching)等のエッチングまでの一連の処理を意味する。フォトエッチング技術では従来公知の方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。次に、酸化膜層をマスクとして、ドリフト領域26に対するドライエッチングを行う。これにより、ドリフト領域26の表面から下方側に向かって、溝部43〜45(
図2)が形成される。
【0035】
熱酸化工程が行なわれることで、溝部43〜45の底部および側壁に絶縁層41が形成される。次に、SOI基板10の表面にポリシリコンが堆積される。ポリシリコンの堆積厚さは、溝部43の幅の半分以上、または、溝部45の半分以上とされる。そして、フォトエッチング技術により、溝部43〜45の内部以外の部分のポリシリコンが除去される。これにより、溝部43〜45の内部に、埋込み型の抵抗性フィールドプレート部33〜35が形成される。なお、溝部43〜45の内部以外の部分のポリシリコンは、CMP(Chemical Mechanical Polishing)技術によって除去しても良い。
【0036】
SOI基板10の表面に、パッシベーション膜46が堆積される。フォトエッチング技術により、カソード領域28およびアノード領域23の表面のパッシベーション膜46を選択的に除去するとともに、ビア47および48を形成する。最後に、カソード電極36およびアノード電極32を形成することにより、
図1および
図2に示したダイオード1が完成される。
【実施例2】
【0037】
<ダイオード1aの構造>
実施例2におけるダイオード1a(
図3)の、実施例1におけるダイオード1(
図2)との相違点は、カソード領域28およびアノード領域23を通る断面でダイオード1aを断面視したときに、溝部40の内部に絶縁層41aが充填されているとともに、絶縁層41aに形成されている溝部43a〜45aの各々の内部に抵抗性フィールドプレート部33a〜35aが形成されている点である。
【0038】
図3に示すように、溝部40は、島状領域の中央部と島状領域の周辺部とを接続するように形成されている。絶縁層41aは、溝部40の底面および側壁面に設けられている。また絶縁層41aは、隣接する抵抗性フィールドプレート部33〜35の間に設けられている。
図1に示すように、内周側の溝部45aは、島状領域の中央部を一巡するように配置されている。外周側の溝部43aは、島状領域の周辺部を一巡するように配置されている。中間の溝部44aは、内周側の溝部45と外周側の溝部43との間を接続するように形成されている。抵抗性フィールドプレート30aは、絶縁層41の表面上であって、溝部43a〜45aの内部に配置されている。
【0039】
なお、実施例2のダイオード1a(
図3)のその他の構成要素であって、実施例1のダイオード1(
図2)と同様の構成要素には、同一の符号を付している。これらの構成要素については、説明を省略する。また、実施例2に係るダイオード1aにより得られる効果は、実施例1に係るダイオード1により得られる効果と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
<ダイオード1aの製造方法>
ダイオード1aの製造プロセスを説明する。支持層12、埋込み絶縁層14、n
−型の活性層16が積層したSOI基板10を用意する。次に、不純物拡散技術により、活性層16にアノード領域23およびカソード領域28を形成する。活性層16の表面に、CVD法によって酸化膜層(不図示)を形成し、酸化膜層の上面にレジスト層(不図示)を形成する。そしてフォトエッチング技術により、溝部40に対応した開口部(不図示)を酸化膜層に形成する。次に、酸化膜層をマスクとして、ドリフト領域26に対するドライエッチングを行う。これにより、溝部40(
図3)が形成される。
【0041】
CVD法によって、SOI基板10の表面に酸化膜が堆積される。そして、フォトエッチング技術またはCMP技術により、溝部40の内部以外の部分の酸化膜が除去される。これにより、溝部40の内部に充填された、絶縁層41aが形成される。
【0042】
活性層16の表面に、CVD法によって酸化膜層(不図示)を形成し、酸化膜層の上面にレジスト層(不図示)を形成する。そしてフォトエッチング技術により、溝部43a〜45aに対応した開口部(不図示)を酸化膜層に形成する。次に、酸化膜層をマスクとして、絶縁層41aに対するドライエッチングを行う。これにより、絶縁層41aの表面から下方側に向かって、溝部43a〜45a(
図3)が形成される。次に、SOI基板10の表面にポリシリコンが堆積される。そして、フォトエッチング技術またはCMP技術により、溝部43a〜45aの内部以外の部分のポリシリコンが除去される。これにより、溝部43a〜45aの内部に、埋込み型の抵抗性フィールドプレート部33a〜35aが形成される。以後のプロセスは、実施例1で説明したダイオード1の製造プロセスと同様であるため、説明を省略する。
【実施例3】
【0043】
<ダイオード1bの構造>
実施例3におけるダイオード1b(
図4)の、実施例1におけるダイオード1(
図2)との相違点は、カソード領域28およびアノード領域23を通る断面でダイオード1aを断面視したときに、溝部40bが1つ存在している点である。また、抵抗性フィールドプレート部33b〜35bが、溝部40bの上面に複数存在している点である。
【0044】
図4に示すように、溝部40bは、島状領域の中央部と島状領域の周辺部とを接続するように形成されている。絶縁層41bは、溝部40bの底面および側壁面に設けられている。抵抗性フィールドプレート30bは、絶縁層41bの表面上に配置されている。抵抗性フィールドプレート30bは、内周側の抵抗性フィールドプレート部35bと、中間の抵抗性フィールドプレート部34bと、外周側の抵抗性フィールドプレート部33bを有している。またパッシベーション膜46bは、抵抗性フィールドプレート部33b〜35bの上面に設けられるとともに、隣接する抵抗性フィールドプレート部33b〜35bの間に設けられている。
【0045】
なお、実施例3のダイオード1b(
図4)のその他の構成要素であって、実施例1のダイオード1(
図2)と同様の構成要素には、同一の符号を付している。これらの構成要素については、説明を省略する。また、実施例3に係るダイオード1bにより得られる効果は、実施例1に係るダイオード1により得られる効果と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
<ダイオード1bの製造方法>
ダイオード1bの製造プロセスを説明する。溝部40bを形成するまでのプロセスは、実施例2で説明した溝部40の製造プロセスと同様であるため、説明を省略する。溝部40bの形成後に熱酸化工程が行なわれることで、溝部40bの底部および側壁に絶縁層41bが形成される。 次に、SOI基板10の表面にポリシリコンが堆積される。そして、フォトエッチング技術により、抵抗性フィールドプレート部33b〜35b以外の部分のポリシリコンが除去される。これにより、溝部40bの内部に、抵抗性フィールドプレート部33b〜35bが形成される(
図4)。以後のプロセスは、実施例1で説明したダイオード1の製造プロセスと同様であるため、説明を省略する。
【0047】
以上、本明細書に開示されている技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0048】
<変形例>
実施例3において、溝部40bはドリフト領域26に形成されるとしたが、この形態に限られない。アノード領域23およびカソード領域28を含むように溝部40bが形成される場合においても、ドリフト領域26の体積を減少させることができるため、リカバリ時間を短縮化することができる。
【0049】
上記実施例では半導体材料にシリコンを用いたものを例示したが、この例に代えて、ワイドギャップ半導体を用いてもよい。
【0050】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。