(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の開閉手段を遮断状態から連通状態とし、前記廃液濃縮室で生成された炭化水素系洗浄剤の蒸気を前記洗浄室に導入させ、前記第1の開閉手段を連通状態から遮断状態とし、前記第2の開閉手段を遮断状態から連通状態として、前記廃液濃縮室で生成された炭化水素系洗浄剤の蒸気を前記第1の凝縮室に導入させる制御手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の真空洗浄装置。
前記第1の開閉手段を遮断状態から連通状態とし、前記廃液濃縮室で生成された炭化水素系洗浄剤の蒸気を前記洗浄室に導入させ、前記第1の開閉手段を連通状態から遮断状態とし、前記第4の開閉手段を遮断状態から連通状態として、前記廃液濃縮室で生成された炭化水素系洗浄剤の蒸気を前記第2の凝縮室に導入させる制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の真空洗浄装置。
前記蒸気室において、前記第2の熱交換器の下流側と、前記第1の熱交換器の上流側との間を流通する熱媒体と、前記炭化水素系洗浄剤とで熱交換を行うことで、該炭化水素系洗浄剤を気化させて蒸気を生成するとともに、該熱媒体を冷却する第3の熱交換器をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の真空洗浄装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(真空洗浄装置100)
図1は、真空洗浄装置100を説明するための概念図である。
図1中、炭化水素系洗浄剤の流れを実線の矢印で、熱媒体の流れを破線の矢印で示す。この図に示すように、真空洗浄装置100は、内部に洗浄室102が設けられた真空容器104を備えている。この真空容器104には、不図示の開口が形成されており、不図示の開閉扉によって開口が開閉可能となっている。したがって、ワークWを洗浄する際には、開閉扉を開放して開口から洗浄室102内にワークWを搬入して載置部108に載置するとともに、開閉扉を閉じてワークWを洗浄した後、再び開閉扉を開放して、開口からワークWを搬出することとなる。
【0020】
そして、上記の洗浄室102には、シャワー部110が設けられている。シャワー部110は、蒸気供給管114、凝縮室120(第3の凝縮室)、凝縮洗浄剤供給管122、洗浄剤貯留部124、凝縮洗浄剤供給管126を介して蒸気室200に接続されている。
【0021】
また、洗浄室102には、蒸気供給部130が設けられている。蒸気供給部130は、蒸気供給管114を介して蒸気室200に接続されている。
【0022】
蒸気室200は、ヒータ202および蒸気室熱交換器330(第3の熱交換器)を備えており、炭化水素系洗浄剤(溶剤)を、例えば、80℃〜140℃程度、好ましくは120℃程度に加熱して炭化水素系洗浄剤の蒸気(以下、単に蒸気と称する)を生成する。蒸気室200において生成された蒸気は、蒸気供給管114を介して凝縮室120に導入されたり、蒸気供給部130を通じて洗浄室102に供給されたりする。蒸気供給部130が供給した蒸気は、ワークWに付着することで凝縮される。
【0023】
なお、この炭化水素系洗浄剤の種類は特に限定されないが、安全性の観点から第3石油類の洗浄剤を使用することが望ましく、例えば、ノルマルパラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系、芳香族系の炭化水素系洗浄剤が挙げられる。具体的には、第3石油類の洗浄剤として、クリーニングソルベントと呼ばれるテクリーン(登録商標)N20、クリーンソルG、ダフニーソルベント等を使用するとよい。
【0024】
凝縮室120(第3の凝縮室)は、凝縮室熱交換器310(第1の熱交換器)を備えており、凝縮室120に導入された蒸気は、凝縮室熱交換器310によって冷却されて、液体の炭化水素系洗浄剤(以下、単に凝縮洗浄剤と称する)に凝縮される。そして、凝縮洗浄剤は、凝縮洗浄剤供給管122を介して、洗浄剤貯留部124に貯留された後、凝縮洗浄剤供給管126およびシャワー部110を介して、洗浄室102に供給されることとなる。凝縮室熱交換器310による冷却機構および蒸気室熱交換器330による加熱機構については、後に詳述する。
【0025】
そして、シャワー部110から供給されワークWを洗浄した凝縮洗浄剤や、蒸気供給部130から供給され、ワークWにおいて凝縮されることで生じた凝縮洗浄剤(使用済み洗浄剤)は、使用済み洗浄剤導入管140、開閉バルブ142を介して、再び蒸気室200に導入され、上述したヒータ202や蒸気室熱交換器330によって再び加熱されることで蒸気となる(再生)。
【0026】
また、洗浄室102および蒸気室200には、不図示の真空ポンプが接続されている。この真空ポンプは、ワークWの洗浄を開始する前の減圧工程において、真空容器104および蒸気室200内を真空引き(初期真空)によって減圧する(例えば、6kPa)ものである。さらに、洗浄室102には、当該洗浄室102を大気開放するための不図示の配管が接続されている。この配管には、大気と洗浄室102とを遮断または開放する大気開放弁が設けられており、ワークWの洗浄工程および乾燥工程が終了した後の搬出工程において、洗浄室102を大気開放して大気圧に復帰させるものである。
【0027】
そして、洗浄室102には、開閉バルブ150(第3の開閉手段)を介して乾燥室152(第2の凝縮室)が接続されており、開閉バルブ150を開弁すると洗浄室102と乾燥室152とが連通し、開閉バルブ150を閉弁すると洗浄室102と乾燥室152との連通が遮断されるように構成されている。この乾燥室152も、洗浄室102および蒸気室200と同様に、上記の真空ポンプに接続されており、減圧状態に保持可能な構成となっている。また、この乾燥室152には、熱交換器等からなる温度保持装置154(第2の温度保持手段)が設けられており、乾燥室152内の温度が洗浄室102内の温度よりも低い一定温度(5℃〜50℃、より好ましくは5℃〜10℃)に保持されるようにしている。
【0028】
したがって、制御手段が開閉バルブ150を開弁すると、洗浄室102内の蒸気は乾燥室152に移動して凝縮される。これにより、洗浄室102が減圧され、ワークWに付着している炭化水素系洗浄剤が全て気化して乾燥室152に移動し、ワークWが乾燥されることとなる。
【0029】
さらに、乾燥室152の底部には、リターン配管156、開閉バルブ158、を介して蒸気室200が接続されており、乾燥室152で凝縮した使用済み洗浄剤は、リターン配管156を介して再び蒸気室200に導入される。そして、リターン配管156を介して、蒸気室200に導入された使用済み洗浄剤は、上述したヒータ202や蒸気室熱交換器330によって加熱され、再び蒸気となる(再生)。
【0030】
また、蒸気室200内には、廃液濃縮室250が設けられている。廃液濃縮室250は、開閉バルブ252を介して蒸気室200が接続されており、開閉バルブ252を開弁すると蒸気室200と廃液濃縮室250とが連通し、開閉バルブ252を閉弁すると蒸気室200と廃液濃縮室250との連通が遮断されるように構成されている。したがって、開閉バルブ252が開弁すると、蒸気室200に収容されている使用済み凝縮液と炭化水素系洗浄剤との混合物(以下、単に廃液と称する)の一部が廃液濃縮室250へ導入されることとなる。
【0031】
また、廃液濃縮室250には、ヒータとしての濃縮室熱交換器320(第2の熱交換器)が設けられており、廃液を、例えば、80℃〜140℃程度、好ましくは120℃程度に加熱して蒸気を生成する。このようにして廃液が濃縮される。濃縮室熱交換器320による加熱機構については、後に詳述する。
【0032】
廃液濃縮室250は、開閉バルブ260(第1の開閉手段)、蒸気供給管262を介して洗浄室102に接続されており、開閉バルブ260を開弁すると廃液濃縮室250と洗浄室102とが連通し、開閉バルブ260を閉弁すると廃液濃縮室250と洗浄室102との連通が遮断されるように構成されている。したがって、開閉バルブ260を開弁すると廃液濃縮室250で生成された蒸気が洗浄室102へ導入されることとなる。
【0033】
さらに、廃液濃縮室250は、開閉バルブ270(第4の開閉手段)、蒸気供給管272を介して乾燥室152に接続されており、開閉バルブ270を開弁すると廃液濃縮室250と乾燥室152とが連通し、開閉バルブ270が閉弁すると廃液濃縮室250と乾燥室152との連通が遮断されるように構成されている。したがって、開閉バルブ270を開弁すると廃液濃縮室250で生成された蒸気が乾燥室152へ導入されることとなる。
【0034】
また、廃液濃縮室250は、開閉バルブ280(第2の開閉手段)、蒸気供給管282を介して凝縮室290(第1の凝縮室)に接続されており、開閉バルブ280が開弁すると廃液濃縮室250と凝縮室290とが連通し、開閉バルブ280が閉弁すると廃液濃縮室250と凝縮室290との連通が遮断されるように構成されている。したがって、開閉バルブ280を開弁すると廃液濃縮室250で生成された蒸気が凝縮室290へ導入されることとなる。
【0035】
換言すれば、廃液濃縮室250において生成された蒸気は、開閉バルブ260、蒸気供給管262を介して洗浄室102に導入されたり、開閉バルブ270、蒸気供給管272を介して乾燥室152に導入されたり、開閉バルブ280、蒸気供給管282を介して凝縮室290に導入されたりする。
【0036】
凝縮室290には、熱交換器等からなる温度保持装置292(第1の温度保持手段)が設けられており、凝縮室290内の温度が廃液濃縮室250内の温度よりも低い一定温度(例えば、30℃)に保持されるようにしている。温度保持装置292は、例えば、空気を冷却媒体とした熱交換器で構成されている。
【0037】
また、凝縮室290の底部は、リターン配管294、開閉バルブ296、を介して蒸気室200に接続されており、凝縮室290で凝縮した凝縮洗浄剤は、リターン配管294を介して再び蒸気室200に導入される。そして、リターン配管294を介して、蒸気室200に導入された凝縮洗浄剤は、上述したヒータ202や蒸気室熱交換器330によって加熱されることで蒸気となる。
【0038】
(ヒートポンプユニット300)
ヒートポンプユニット300は、凝縮室熱交換器310と、濃縮室熱交換器320と、蒸気室熱交換器330と、熱媒体循環ライン340(
図1中、340a〜340gで示す)と、圧縮機350と、減圧部360と、中間熱交換器370(第4の熱交換器)とを含んで構成される。ヒートポンプユニット300において、熱媒体は、
図1中破線の矢印で示すように、熱媒体循環ライン340を循環しており、熱媒体循環ライン340に設けられた凝縮室熱交換器310、中間熱交換器370、圧縮機350、濃縮室熱交換器320、蒸気室熱交換器330、中間熱交換器370、減圧部360を介して、凝縮室熱交換器310に再び導入される。なお、この熱媒体の種類は特に限定されないが、凝縮室熱交換器310において熱媒体の潜熱を利用することができる、フロン系の熱媒体を使用するとよい。
【0039】
凝縮室熱交換器310は、凝縮室120において、熱媒体と、蒸気室200から導入された蒸気とで熱交換を行うことにより、蒸気を冷却することで凝縮して凝縮洗浄剤にするとともに、熱媒体を加熱する。ここで、凝縮室熱交換器310よって加熱されることにより、熱媒体は気体(
図1中、Gで示す)となる。そして、凝縮室熱交換器310によって加熱された熱媒体は、中間熱交換器370によってさらに加熱される。中間熱交換器370による加熱機構については、後に詳述する。
【0040】
圧縮機350は、中間熱交換器370で加熱された熱媒体を断熱圧縮し、さらに昇温する。
【0041】
濃縮室熱交換器320は、廃液濃縮室250において、圧縮機350によって昇温された熱媒体と、液体の廃液とで熱交換を行うことで、廃液を加熱して、廃液中の炭化水素系洗浄剤を気化させて蒸気を生成するとともに、熱媒体を冷却する。
【0042】
このように、凝縮室120において凝縮室熱交換器310が蒸気を冷却することによって回収した熱(潜熱)を、廃液濃縮室250において濃縮室熱交換器320が直接利用することができ、熱の損失を最低限に抑えつつ、蒸気の凝縮と蒸気の生成を短時間で効率よく行うことが可能となる。
【0043】
また、濃縮室熱交換器320が廃液濃縮室250において廃液を加熱することにより、単位時間あたりの蒸気の生成量を、洗浄室102において蒸気洗浄を行うことができる程度にまで増加させることができる。従来は、単位時間あたりの蒸気の生成量が少なく、洗浄室102において蒸気洗浄を行うことができる程度の生成量に達しておらず、生成された蒸気を一旦凝縮しなければならなかったが、本実施形態にかかる真空洗浄装置100によれば、廃液濃縮室250で生成された蒸気を直接、蒸気洗浄に用いることが可能となる(後述する初期洗浄工程S140参照)。このため、従来、廃棄されていた凝縮で回収された熱エネルギーを削減することができる。
【0044】
また、濃縮室熱交換器320が、廃液濃縮室250において廃液と接触状態を維持している間(後述する第1濃縮工程)は、熱媒体と廃液とで熱交換を行うことができるため、蒸気が生成される。一方、蒸気の生成が進み、廃液濃縮室250における廃液の液面が低下してくると、廃液の液面が濃縮室熱交換器320の鉛直下方に位置するようになる。そうすると、濃縮室熱交換器320と廃液との接触が解除され、濃縮室熱交換器320において、熱媒体と廃液との間で熱交換が行われなくなる。つまり、濃縮室熱交換器320による廃液の加熱が停止されることとなる。
【0045】
したがって、廃液濃縮室250に濃縮室熱交換器320を設けることで、電気ヒータ等のヒータで加熱する場合とは異なり空焚きが生じる事態を回避することができる。
【0046】
また、濃縮室熱交換器320による廃液の加熱が停止されると、凝縮室120において凝縮室熱交換器310が蒸気を冷却することによって回収した熱を有する熱媒体は、濃縮室熱交換器320において放熱されることなく、濃縮室熱交換器320の下流側に設けられた蒸気室熱交換器330へ導入される。
【0047】
つまり、廃液濃縮室250において、蒸気の生成が進み、廃液と濃縮室熱交換器320との接触が解除されると、濃縮室熱交換器320の加熱機能は、自動的に蒸気室熱交換器330へ移動することとなる。一方、後述するが、上述した第1濃縮工程において、蒸気室200から廃液濃縮室250に廃液が導入されると、濃縮室熱交換器320と廃液が接触することとなり、蒸気室熱交換器330の加熱機能は、自動的に濃縮室熱交換器320へ移動することとなる。したがって、別途の切換手段を備えずとも、熱交換器の加熱機能を濃縮室熱交換器320から蒸気室熱交換器330へ切り換えることが可能となる。
【0048】
なお、ここで、廃液濃縮室250における濃縮室熱交換器320の設置位置は、廃液濃縮室250の底部近傍に設けられるとよい。かかる構成により、廃液濃縮室250における濃縮効率を向上させることができる。
【0049】
ここで、濃縮室熱交換器320と廃液とが接触状態を維持しており、濃縮室熱交換器320によって熱媒体が冷却されると、熱媒体は気液混合状態(
図1中、G、Lで示す)となる。そして、濃縮室熱交換器320によって冷却された熱媒体は、蒸気室熱交換器330によって、さらに冷却され、中間熱交換器370によってさらに冷却される。
【0050】
蒸気室熱交換器330は、濃縮室熱交換器320と廃液との接触が解除されている場合(後述する蒸気洗浄工程S150〜廃棄工程S190)、蒸気室200において、圧縮機350によって昇温された熱媒体と、液体の炭化水素系洗浄剤とで熱交換を行うことで、炭化水素系洗浄剤を加熱して蒸気を生成するとともに、熱媒体を冷却する。
【0051】
このように、凝縮室120において凝縮室熱交換器310が蒸気を冷却することによって回収した熱(潜熱)を、蒸気室200において蒸気室熱交換器330が直接利用することができ、熱の損失を最低限に抑えつつ、蒸気の凝縮と蒸気の生成を効率よく行うことが可能となる。したがって、蒸気室200におけるヒータ202の加熱量を抑えることができる。
【0052】
ここで、蒸気室熱交換器330によって冷却されることにより、熱媒体は気液混合状態(
図1中、G、Lで示す)となる。そして、蒸気室熱交換器330によって冷却された熱媒体は、中間熱交換器370によってさらに冷却される。
【0053】
減圧部360は、流体の圧力降下をもたらす弁である膨張弁で構成され、蒸気室熱交換器330で冷却された熱媒体を減圧膨張させてさらに冷却する。ここで、減圧部360によって冷却されることにより、熱媒体は液体(
図1中、Lで示す)となる。そして、減圧部360において冷却された熱媒体は、熱媒体循環ライン340gを通って再び凝縮室熱交換器310に導入される。
【0054】
中間熱交換器370は、熱媒体循環ライン340a、340b(凝縮室熱交換器310および圧縮機350の間)を流通する熱媒体と、熱媒体循環ライン340e、340f(蒸気室熱交換器330および減圧部360の間)を流通する熱媒体とで熱交換を行う。凝縮室熱交換器310によって加熱され、熱媒体循環ライン340aを流通する熱媒体が、完全に気化しておらず、気液混合流体となっている場合もある。この場合、液体の熱媒体が圧縮機350に導入されてしまうと、圧縮機350に不具合が生じるおそれがある。
【0055】
そこで、中間熱交換器370を設け、熱媒体循環ライン340aを流通する熱媒体を加熱して飽和温度よりも高温とすることで、圧縮機350に導入される熱媒体(熱媒体循環ライン340bを流通する熱媒体)を確実に気体のみにすることが可能となる。これにより、圧縮機350に不具合が生じてしまう事態を回避することができる。
【0056】
次に、上記の真空洗浄装置100におけるワークWの真空洗浄方法について
図1および
図2を用いて説明する。
【0057】
図2は、真空洗浄装置100の処理工程を説明するフローチャートである。真空洗浄装置100を利用するにあたっては、まず、準備工程(ステップS110)を1回行い、その後、1のワークWに対して、搬入工程(ステップS120)、減圧工程(ステップS130)、初期洗浄工程(ステップS140)、蒸気洗浄工程(ステップS150)、シャワー洗浄工程(ステップS160)、乾燥工程(ステップS170)、搬出工程(ステップS180)、廃棄工程(ステップS190)を行う。そして、以後、順次搬入されるワークWに対して、搬入工程S120〜廃棄工程S190の工程が行われることとなる。以下に、
図1を参照しながら、上記の各工程について説明する。
【0058】
(準備工程S110)
まず、真空洗浄装置100を稼働するにあたり、不図示の制御手段が、開閉バルブ132、142、150、158、252、260、270、280、296を閉弁して、不図示の真空ポンプを駆動し、乾燥室152および蒸気室200を真空引きにより10kPa以下に減圧する。なお、本実施形態において制御手段は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、真空洗浄装置100全体を管理および制御する。そして、制御手段は、温度保持装置154を駆動して、減圧状態にある乾燥室152を、洗浄室102よりも低い温度、より詳細には、使用する炭化水素系洗浄剤の凝縮点以下の温度(5℃〜50℃、より好ましくは5℃〜10℃)に保持する。
【0059】
また、制御手段は、ヒータ202およびヒートポンプユニット300を駆動し、蒸気室200に貯留されている炭化水素系洗浄剤をヒータ202および蒸気室熱交換器330によって加温して蒸気を生成させる。そして、蒸気室200で生成された蒸気は凝縮室120に導入されるとともに、凝縮室熱交換器310によって冷却され、凝縮洗浄剤に凝縮され、洗浄剤貯留部124に貯留される。また、蒸気室熱交換器330から供給される熱によって蒸気室200の温度が予め定められた温度に到達したら、ヒータ202を停止する。これにより、真空洗浄装置100の準備工程S110が終了し、真空洗浄装置100によるワークWの洗浄が可能となる。
【0060】
(搬入工程S120)
真空洗浄装置100によってワークWの洗浄を行う際には、まず、制御手段は、開閉扉を開放し、開口から洗浄室102にワークWを搬入して載置部108に載置する。そして、ワークWの搬入が完了したら、制御手段は、開閉扉を閉じて洗浄室102を密閉状態にする。なお、このとき、ワークWの温度は常温(15℃〜40℃程度)となっている。
【0061】
(減圧工程S130)
次に、制御手段は、真空ポンプを駆動して、真空引きにより洗浄室102を10kPa以下に減圧する。
【0062】
また、かかる搬入工程S120、減圧工程S130と並行して、第1濃縮工程を行う。以下、第1濃縮工程について説明する。なお、真空洗浄装置100を用いて初めてワークWを洗浄する場合、第1濃縮工程、後述する初期洗浄工程S140、第2濃縮工程、廃棄工程S190を省略してもよい。
【0063】
(第1濃縮工程)
上記搬入工程S120、減圧工程S130と並行して、制御手段は、開閉バルブ252を開弁して、蒸気室200と廃液濃縮室250とを連通し、蒸気室200の廃液を廃液濃縮室250に移動させ、移動が完了すると、開閉バルブ252を閉弁する。
【0064】
廃液濃縮室250には、濃縮室熱交換器320が設けられているため、廃液濃縮室250において廃液が加熱されて蒸気が生成されるとともに、廃液が濃縮される。なお、第1濃縮工程を行っている間、熱媒体が有する熱は、濃縮室熱交換器320において消費されるため、蒸気室熱交換器330による加熱が足りない場合がある。この場合、ヒータ202をオンにする。
【0065】
(初期洗浄工程S140)
上記搬入工程S120、減圧工程S130、および上記第1濃縮工程が終了すると、制御手段は、開閉バルブ260を開弁して、廃液濃縮室250および洗浄室102とを連通し、上記第1濃縮工程において廃液濃縮室250で生成された蒸気を洗浄室102に移動する。このとき、蒸気の温度は、80〜140℃に制御されており、高温の蒸気が洗浄室102に充満する。
【0066】
このように、洗浄室102に供給された蒸気がワークWの表面に付着すると、蒸気がワークWの表面で凝縮し、ワークWの表面に付着していた油脂類が、凝縮された炭化水素系洗浄剤によって溶解、流下され、ワークWが洗浄されることとなる。この初期洗浄工程S140は、予め定められた時間(廃液濃縮室250において、生成した蒸気のうち大部分が洗浄室102に導入される時間、例えば、1分〜2分)行われ、かかる時間が経過したところで、制御手段は、開閉バルブ260を閉弁し、初期洗浄工程S140が終了となる。なお、初期洗浄工程S140が終了した後には、廃液濃縮室250において廃液と濃縮室熱交換器320との接触が解除されるため、熱媒体が有する熱は、濃縮室熱交換器320において消費されなくなる。したがって、蒸気室熱交換器330が蒸気室200を加熱することができ、かかる熱によって蒸気室200の温度が予め定められた温度に到達したら、ヒータ202を停止する。
【0067】
(蒸気洗浄工程S150)
次に、制御手段は、開閉バルブ132を開弁して、蒸気室200において生成された蒸気を洗浄室102に供給する。このとき、蒸気の温度は、80℃〜140℃に制御されており、高温の蒸気が洗浄室102に充満する。
【0068】
洗浄室102に供給された蒸気がワークWの表面に付着すると、上述した初期洗浄工程S140と同様に、ワークWの温度が蒸気の温度に比べて低いことから、蒸気がワークWの表面で凝縮し、ワークWの表面に付着していた油脂類が、凝縮された炭化水素系洗浄剤によって溶解、流下され、ワークWが洗浄されることとなる。この蒸気洗浄工程S150は、ワークWの温度が、蒸気の温度(炭化水素系洗浄剤の沸点)である80℃〜140℃に到達するまで行われるとともに、ワークWの温度が蒸気の温度に到達したところで蒸気洗浄工程S150が終了となる。
【0069】
(シャワー洗浄工程S160)
上記蒸気洗浄工程S150が終了すると、制御手段は、開閉バルブ126aを開弁し、シャワー部110を駆動して、洗浄剤貯留部124に貯留された凝縮洗浄剤をワークWに噴射する。こうして、蒸気洗浄工程S150で洗浄しきれなかったワークWの細部に付着した油脂類等が洗浄される。
【0070】
(乾燥工程S170)
上記シャワー洗浄工程S160が終了すると、次に、洗浄の際にワークWに付着した炭化水素系洗浄剤を乾燥させる乾燥工程S170が行われる。この乾燥工程S170は、制御手段が開閉バルブ150を開弁して、洗浄室102と乾燥室152とを連通させることによって行われる。乾燥工程S170の開始時には、洗浄室102の温度が蒸気の温度である70℃〜150℃となっているのに対して、乾燥室152の温度は、温度保持装置154によって5℃〜50℃(より好ましくは5℃〜10℃)に維持されている。
【0071】
したがって、制御手段が開閉バルブ150を開弁すると、ワークWに付着している炭化水素系洗浄剤をはじめ、洗浄室102内に充満している蒸気は乾燥室152に移動して凝縮され、洗浄室102(ワークW)が短時間で乾燥する。
【0072】
(搬出工程S180)
上記のように、洗浄室102およびワークWの乾燥が完了したら、制御手段は、開閉バルブ150を閉弁して洗浄室102と乾燥室152とを遮断する。また、制御手段は、開閉バルブ142を開弁して、洗浄室102において生じた使用済み洗浄剤を蒸気室200に移動させ、移動が完了すると、開閉バルブ142を閉弁する。
【0073】
そして、制御手段は、大気開放弁を開弁して洗浄室102を大気開放し、洗浄室102が大気圧まで復圧したところで、開閉扉を開放して開口からワークWを搬出する。
【0074】
一方、蒸気洗浄工程S150、シャワー洗浄工程S160、乾燥工程S170、搬出工程S180と並行して、第2濃縮工程を行う。以下、第2濃縮工程について説明する。
【0075】
(第2濃縮工程)
上記蒸気洗浄工程S150、シャワー洗浄工程S160、乾燥工程S170、搬出工程S180と並行して、制御手段は、開閉バルブ280を開弁して、廃液濃縮室250と凝縮室290とを連通する。上述したように、廃液濃縮室250の温度が蒸気の温度である80℃〜140℃となっているのに対して、凝縮室290の温度は、温度保持装置292によって、例えば、30℃に維持されている。したがって、制御手段が、開閉バルブ280を開弁すると、廃液濃縮室250に残留している蒸気は凝縮室290に移動して凝縮される。
【0076】
そして、搬出工程S180が終了すると、廃棄工程S190が遂行される。以下、廃棄工程S190について説明する。
【0077】
(廃棄工程S190)
上記搬出工程S180が終了すると、制御手段は、開閉バルブ280を閉弁するとともに、開閉バルブ270を開弁して、廃液濃縮室250と乾燥室152とを連通させる。上述したように、廃液濃縮室250の温度が80℃〜140℃となっているのに対して、乾燥室152の温度は、温度保持装置154によって5℃〜50℃(より好ましくは5℃〜10℃)に維持されている。
【0078】
したがって、制御手段が、開閉バルブ270を開弁すると、廃液濃縮室250に残留している蒸気は乾燥室152に移動して凝縮される。
【0079】
そして、制御手段は、開閉バルブ270を閉弁するとともに、開閉バルブ296、開閉バルブ158を開弁して、凝縮した凝縮洗浄剤を蒸気室200へ送出する。また、制御手段は、廃液濃縮室250と外部とを接続する不図示のバルブを開弁して、廃液濃縮室250において濃縮された廃液を外部に廃棄し、廃棄が完了したらバルブを閉弁して、1のワークWに対する全工程が終了する。
【0080】
一方、真空洗浄装置100は、ユーザによって真空洗浄装置100の停止指示を受け付けると、停止割込処理を開始する。
【0081】
(停止処理:ステップS200)
ユーザによって真空洗浄装置100の停止指示が入力されると、真空洗浄装置100は、現在駆動されている機能部(例えば、シャワー部110、ヒータ202、140a、ヒートポンプユニット300、昇降装置等)を停止させたり、駆動部(例えば、昇降装置等)所定の位置に戻したりして、停止処理を行う。
【0082】
上述したように、廃液濃縮室250において生成された蒸気は、洗浄室102、凝縮室290、乾燥室152のうち、まず、もっとも温度の高い洗浄室102に導入され(初期洗浄工程S140)、続いて、次に温度の高い凝縮室290に導入され(第2濃縮工程)、最後にもっとも温度の低い乾燥室152に導入される(廃棄工程S190)。これにより、廃液濃縮室250において生成された蒸気を、効率よく凝縮することができる。
【0083】
また、元来、ワークWの乾燥のために用いられる低温の乾燥室152を利用するため、凝縮室290の温度を極めて低くする必要がなく、大気(空気)を冷却媒体としても蒸気を十分に凝縮することができる。したがって、凝縮室290における、冷却媒体に要する費用や、温度保持装置292における炭化水素系洗浄剤の凝縮に要する熱エネルギーの消費を低減することが可能となる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態にかかる真空洗浄装置100によれば、廃液濃縮室250において廃液(使用済みの洗浄剤)を短時間で蒸留、濃縮することができる。したがって、廃液濃縮室250において、単位時間あたりの蒸気の生成量を増加させることができ、廃液濃縮室250において生成された炭化水素系洗浄剤の蒸気を再度蒸気洗浄工程(初期洗浄工程S140)で利用することが可能となる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0086】
例えば、凝縮室熱交換器310および蒸気室熱交換器330によって、ヒータ202を備えずとも、蒸気室200において目的とする温度(80℃〜140℃、例えば、120℃)の蒸気を生成できれば、ヒータ202は初期稼働時のみに利用してもよい。
【0087】
また、本明細書の真空洗浄方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、上述した実施形態において、第2濃縮工程が、蒸気洗浄工程S150、シャワー洗浄工程S160、乾燥工程S170、搬出工程S180と並行して行われる場合を例に挙げて説明した。しかし、第2濃縮工程は、廃棄工程S190を遂行する前に終了していればよく、蒸気洗浄工程S150、シャワー洗浄工程S160、乾燥工程S170、搬出工程S180のいずれかの工程と並行して行われてもよいし、搬出工程S180の後に行われてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態において、廃液濃縮室250には、ヒータとして濃縮室熱交換器320が設けられている場合について説明したが、ヒータは、廃液濃縮室250において廃液を加熱できれば、電気ヒータ等であってもよい。
【0089】
また、上述した実施形態において、洗浄室102においてワークWを洗浄することで生じる廃液は、蒸気室200を介して、間接的に廃液濃縮室250に導入される場合を例に挙げて説明した。しかし、洗浄室102においてワークWを洗浄することで生じる廃液は、廃液濃縮室250に直接導入されてもよい。
【0090】
また、上述した実施形態では、洗浄室102において、シャワー部110から供給される凝縮洗浄剤による洗浄(シャワー洗浄工程S160)と、蒸気供給部130から供給される蒸気による洗浄(蒸気洗浄工程S150)が行われる真空洗浄装置100について説明した。しかし、例えば、真空容器104内の、洗浄室102の下方に浸漬室を設けておき、蒸気洗浄工程S150あるいはシャワー洗浄工程S160の後で、かかる浸漬室にワークWを浸漬することによって、ワークWをさらに洗浄してもよい。
【0091】
また、上述した実施形態において、廃液濃縮室250で生成された蒸気は、洗浄室102、凝縮室290、乾燥室152の順に導入されるが、廃液濃縮室250で生成された蒸気は、少なくとも洗浄室102に導入すればよく、凝縮室290および乾燥室152のいずれか一方に導入されてもよい。