特許第5756087号(P5756087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756087高効率触媒による特定のアルキレンオキサイド製造パラメーターを達成かつ維持する改良方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756087
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】高効率触媒による特定のアルキレンオキサイド製造パラメーターを達成かつ維持する改良方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 301/10 20060101AFI20150709BHJP
   C07D 303/04 20060101ALI20150709BHJP
   B01J 23/68 20060101ALI20150709BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20150709BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150709BHJP
【FI】
   C07D301/10
   C07D303/04
   B01J23/68 X
   B01J23/66 X
   !C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2012-507297(P2012-507297)
(86)(22)【出願日】2010年4月20日
(65)【公表番号】特表2012-524786(P2012-524786A)
(43)【公表日】2012年10月18日
(86)【国際出願番号】US2010031673
(87)【国際公開番号】WO2010123844
(87)【国際公開日】20101028
【審査請求日】2013年4月9日
(31)【優先権主張番号】61/171,284
(32)【優先日】2009年4月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】リッピン チャン
(72)【発明者】
【氏名】アルバート リュー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ハベンシュス
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−522138(JP,A)
【文献】 特表2005−518356(JP,A)
【文献】 特表2005−516900(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/035809(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D301/00−305/14
B01J 21/00− 38/74
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレン、酸素及び少なくとも1種の有機塩化物を含む供給ガスを、高効率銀触媒上で反応させて、アルキレンオキサイドを含む反応生成物を生成させることによって、アルキレンオキサイドを製造する方法であって、該方法が
初期総触媒塩化物化有効度値及び初期反応温度で前記製造方法を操作して、アルキレンオキサイド濃度、アルキレンオキサイド収率、アルキレンオキサイド製造速度、アルキレンオキサイド製造速度/触媒体積、アルキレン転化率及び酸素転化率からなる群から選択されるアルキレンオキサイド製造パラメーターの初期値を生じせしめ;
前記アルキレンオキサイド製造パラメーターの所望の数値を選択し;そして
前記総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲内の総触媒塩化物化有効度値を、反応温度を一定の値に維持しながら、前記アルキレンオキサイド製造パラメーターの値を所望の数値をもたらすように調節する
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
総触媒塩化物化有効度値が総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲内であり、反応温度が反応温度の選択された範囲内であり、そして総塩化物化有効度が、一定の温度、一定の反応器入口アルキレン濃度及び固定されたプロセス条件で変更されるとき、前記方法が、関数に従って、反応生成物中のアルキレンオキサイドの濃度と共に変化するアルキレンオキサイドの方に向かう効率を有し、この関数の勾配が、1%効率/モル%アルキレンオキサイドから−8%効率/モル%アルキレンオキサイドまでの範囲である請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項3】
前記方法が反応温度及び反応生成物中のアルキレンオキサイド濃度の両方と共に変化する最適効率を有し、総触媒塩化物化有効度値が総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲内であり、そして反応温度が反応温度の選択された範囲内であるとき、総触媒塩化物化有効度及び反応温度から選択された一方を調節する工程が、最適効率から0.5%以下だけ変化する、アルキレンオキサイドへの効率をもたらす、請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項4】
前記最適効率が一定の反応器入口アルキレン濃度及び実質的に固定されたプロセス条件での最適効率である請求項3に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項5】
前記総触媒塩化物化有効度値Z*が、式:
*=[塩化エチル当量(ppmv)]/[エタン当量(モル%)]
(式中、塩化エチル当量は、供給ガス中の少なくとも1種の有機塩化物の濃度で、実質的に同じの、供給ガス中の少なくとも1種の有機塩化物の触媒塩化物化有効度を与える塩化エチルのppmvでの全濃度であり、そして
エタン当量は、供給ガス中の非塩化物含有炭化水素の濃度で、供給ガス中の非塩化物含有炭化水素と同じ脱塩化物化有効度を与えるエタンのモル%での全濃度である)によって表される請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の有機塩化物が塩化エチル、二塩化エチレン及び塩化ビニルからなる群から選択され、塩化エチル当量が下記式:
塩化エチル当量(ppmv)=ECL+2EDC+VCL
(式中、ECLはppmvでの供給ガス中の塩化エチルの濃度であり、EDCはppmvでの供給ガス中の二塩化エチレンの濃度であり、そしてVCLはppmvでの供給ガス中の塩化ビニルの濃度である)
を有する請求項5に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項7】
供給ガス中の非塩化物含有炭化水素がエチレン及びエタンからなる群から選択された少なくとも1種を含み、エタン当量が下記の式:
エタン当量(モル%)=C26+0.01C24
(式中、C26はモル%での供給ガス中のエタンの濃度であり、そして
24はモル%での供給ガス中のエチレンの濃度である)
を有する請求項5に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項8】
*の選択された範囲が1〜20である請求項5に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項9】
前記総触媒塩化物化有効度値Z*を調節する工程が、Z*を2.0以下ほど調節することを含む請求項5に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項10】
前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドであり、そしてこのアルキレンがエチレンである請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項11】
少なくとも1種の有機塩化物が塩化エチル、塩化メチル、二塩化エチレン、塩化ビニル及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項12】
初期反応温度及び初期総触媒塩化物化有効度値が効率、触媒活性及び反応生成物中のアルキレンオキサイド濃度からなる群から選択された1個又はそれ以上の変数に基づく、総触媒塩化物化有効度及び反応温度の最適化された組合せを含む請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項13】
初期総触媒塩化物化有効度値が、初期反応温度及び初期アルキレンオキサイド製造パラメーターで、アルキレンオキサイドの方に向かう最大効率をもたらすように選択される請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項14】
前記方法が、更に、初期アルキレンオキサイド製造パラメーター値を選択する工程並びに選択された初期アルキレンオキサイド製造パラメーター値で、アルキレンオキサイドへの最大効率を得るように、初期反応温度及び初期総触媒塩化物化有効度値を選択する工程を含む請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項15】
前記総塩化物化有効度値が変更されるとき、前記方法が、固定された反応器入口アルキレン濃度及び固定されたプロセス条件で、反応温度及び総塩化物化有効度値のアルキレンオキサイド効率最大化組合せを有し、最大化効率が、直線関係に従って反応生成物中のアルキレンオキサイドの濃度と共に変化し、この直線関係が、−1%アルキレンオキサイドの方に向かう%効率/モル%アルキレンオキサイドから−5%アルキレンオキサイドの方に向かう%効率/モル%アルキレンオキサイドまでの範囲の勾配を有し、そしてこの調節工程が、0.5%以下である量ほど、直線関係によって規定される効率から変化する、アルキレンオキサイドへの効率をもたらす請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【請求項16】
高効率銀触媒がレニウムプロモーターを含有する請求項1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本件特許出願は、2009年4月21日出願の米国仮特許出願第61/171,284号(その全部を参照して本明細書に含める)の利益を主張する。
【0002】
この開示は、一般的に、アルキレンオキサイドの製造方法(以下、本明細書において、「製造プロセス」又は単に「プロセス」とも称します。)、更に詳しくは、特定のアルキレンオキサイド製造速度を達成するための、高効率触媒を使用してアルキレンオキサイド製造プロセスを運転する改良方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルキレンオキサイドは、多数の有用性について知られている。例えば、エチレンオキサイドは、自動車冷媒として、不凍液として並びにポリエステル繊維及び樹脂、非イオン性界面活性剤、グリコールエーテル、エタノールアミン並びにポリエチレンポリエーテルポリオールを製造する際に使用されるエチレングリコールを製造するために使用される。プロピレンオキサイドは、ポリウレタンポリマー応用において使用される、プロピレングリコール及びポリプロピレンポリエーテルポリオールを製造するために使用される。
【0004】
銀系触媒を用いる酸素の存在下でのオレフィンの接触エポキシ化によるアルキレンオキサイドの製造は公知である。このようなプロセスにおいて使用される従来の銀系触媒は、典型的には比較的低い効率又は「選択率」(即ち、反応されたアルキレンのより低いパーセントが、所望のアルキレンオキサイドに転化される)をもたらす。或る代表的なプロセスにおいて、エチレンのエポキシ化において従来の触媒を使用するとき、転化されたエチレンの分率として表される、エチレンオキサイドの方への理論的最大効率は、6/7又は85.7%限界値を超える値に到達しない。従って、この限界値は、長い間、下記の反応式の化学量論に基づいて、この反応の理論的最大効率であると考えられてきた。
【0005】
7C24+6O2 → 6C24O+2CO2+2H2
【0006】
非特許文献1参照。
【0007】
或る種の「高効率(high efficiency)」又は「高選択率(high selectivity)」最新銀系触媒は、アルキレンオキサイド製造に対して高度に選択性である。例えば、エチレンのエポキシ化に或る最新触媒を使用するとき、エチレンオキサイドへの理論的最大効率は、例えば88%又は89%又はそれ以上にまで向けられる、6/7又は85.7%限界値を超える値に到達することができる。本明細書中に使用される用語「高効率触媒」及び「高選択率触媒」は、85.7%よりも高い効率で、対応するアルキレン及び酸素からアルキレンオキサイドを製造することができる触媒を指す。高効率触媒の観察された実際の効率は、プロセス変数、触媒老化等に基づく一定の条件下で、85.7%よりも下に落ちるかも知れない。しかしながら、この触媒が、その寿命の間の何れかの点で、例えば、後記の実施例中に記載したような何れかの反応条件の組の下で又は時間基準の気体空間速度を変化させることによって得られる二つの異なった酸素転化率で観察される、より低い効率を、ゼロ酸素転化率の限界ケースまで外挿することにより、少なくとも85.7%効率を達成できる場合には、これは高効率触媒であると考えられる。それらの活性成分として、銀、レニウム、少なくとも1種の別の金属及び任意的にレニウムコプロモーター(co-promoter)を含んでいてよい、このような高効率触媒は、特許文献1及び幾つかの後の特許公報中に開示されている。ときには、「インヒビター(inhibitor)」又は「モデレーター(moderator)」として参照される「プロモーター」は、アルキレンオキサイドの所望の生成への速度を増加させることにより、そして/又はアルキレンオキサイドの所望の生成に対して、相対的に、二酸化炭素及び水への、オレフィン若しくはアルキレンオキサイドの望ましくない酸化を抑制することにより、触媒の性能を増強する物質を指す。本明細書中に使用される用語「コプロモーター」は、プロモーターと組合せたとき、プロモーターの促進効果を増加する物質を指す。更に、プロモーターは、「ドーパント(dopant)」として参照することもできる。高効率をもたらすこれらのプロモーターの場合に、用語「高効率ドーパント」又は「高選択率ドーパント」を使用することができる。
【0008】
「プロモーター」は触媒の製造の間に触媒に導入される材料(固相プロモーター)であってよい。更に、「プロモーター」は、エポキシ化反応器供給物に導入される気体状材料(気相プロモーター)であってもよい。一つの例において、有機ハロゲン化物気相プロモーターを、エポキシ化反応器供給物に連続的に添加して、触媒効率を上昇させることができる。銀系エチレンエポキシ化触媒のために、固相及び気相プロモーターの両方が、典型的には、任意の商業的プロセスに必要である。
【0009】
従来の触媒は、供給物中の気相プロモーター濃度に関して比較的平らな効率曲線を有する。即ち、この効率は、プロモーター濃度の広い範囲に亘って、殆ど変化せず(即ち、供給物中の気相プロモーター濃度における変化に関連する効率における変化は、約0.1%/ppmvよりも小さい)、この不変性は、触媒の長い運転の間、反応温度が変化したとき実質的に変わらない。しかしながら、従来の触媒は、供給物中の気相プロモーター濃度に関して、即ち、供給物中の気相プロモーター濃度を増加することに伴って、殆ど直線的な活性低下曲線を有しており、温度を上昇させなくてはならず又はアルキレンオキサイド製造速度は低下するであろう。従って、従来の触媒を使用するとき、最適効率のために、供給物中の気相プロモーター濃度は、比較的低い運転温度で最大効率を維持することができるレベルで、選択され得る。典型的には、この気相プロモーター濃度は、従来の触媒の全寿命の間、実質的に同じままであろう。他方、反応温度は、非最適気相プロモーター濃度に起因する効率への如何なる実質的な影響も無しに、所望の製造速度を得るように調節されるであろう。
【0010】
反対に、高効率触媒は、濃度が、最高効率をもたらす値から離れて動くとき、気相プロモーター濃度の関数としての比較的急勾配の効率曲線(即ち気相プロモーター濃度における変化に関連する効率における変化は、効率最大化プロモーター濃度から離れて作動するとき、少なくとも約0.2%/ppmvである)を示す傾向がある。従って、プロモーター濃度における小さい変化は、顕著な効率変化になり得、この効率は、与えられた反応温度及び触媒老化について、気相プロモーターの一定濃度(又は供給速度)で顕著な最大値、即ち最適値を示す。更に、この効率曲線及び最適気相プロモーター濃度は、反応温度の強い関数であり、従って、反応温度が変化する場合、例えば触媒活性における低下を補償するために、著しく影響を受ける(即ち反応温度における変化に関連する効率における変化は、選択された温度について、効率最大化プロモーター濃度から離れて作動するとき、少なくとも約0.1%/℃であり得る)。更に、レニウム促進高効率触媒は、供給物中の気相プロモーター濃度における増加と共に顕著な活性上昇を示した。即ち供給物中の気相プロモーター濃度を増加させることに伴って、温度を低下させなくてはならず又は製造速度が増加するであろう。
【0011】
高効率触媒の効率への反応温度及び気相プロモーター濃度の強い影響に取り組むために、最初に、新規な気相プロモーター濃度を計算するために、温度差を使用することが提案された。気相プロモーター濃度変化は、反応温度を変化させるか否かで作られる(特許文献2、特許文献3)。しかしながら、この技術は、プロセス及び自動運転のために必要である制御の複雑性を増加させる。これは、また、過剰な又は不十分な気相プロモーター消費になり、反応温度における変動に対するプロセスの感度を増大させることができる。これは、また、温度と効率との間の数学的関係の知識を必要とし、これは、得ることが困難であり、コストがかかる。最後に、この方法は、アルキレンオキサイド製造速度に無関係に、効率を最大にするように意図される。多くの場合に、このプロセスを、例えば下流の装置(例えばアルキレングリコール製造装置)への供給速度変動を最小にするために、特定のアルキレンオキサイド製造速度で運転することが望ましい。従って、上記の問題点に取り組むプロセスについてのニーズが生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公告第0352850B1号明細書
【特許文献2】米国特許第7,193,094号明細書
【特許文献3】欧州特許第1,458,699号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】カーク・オスマーの化学技術百科事典(Kirk-Othmer's Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版、第9巻、1994年、第926頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
アルキレン、酸素及び少なくとも1種の有機塩化物を含む供給ガスを、高効率銀触媒上で反応させることによる、アルキレンオキサイドの製造プロセスが提供される。このプロセスは、アルキレンオキサイド製造パラメーターの初期値をもたらすために、初期総触媒塩化物化有効度値(overall catalyst chloriding effectiveness value)及び初期反応温度で運転される。アルキレンオキサイド製造パラメーターの所望の値が選択され、供給ガスの総触媒塩化物化有効度値及び反応温度から選択された一方が、総触媒塩化物化有効度値及び反応温度の他方を、実質的に一定値で維持しながら、このアルキレンオキサイド製造パラメーターの所望の値を得るように調節される。総触媒塩化物化有効度値は、好ましくは、選択された範囲内で調節され、反応温度は、好ましくは選択された範囲内で調節される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面を参照して、例示的態様が詳細に示される。図面は幾つかの態様を表すが、図面は必ずしも縮尺したものではなく、或る構成は、本発明をより良く例示し、説明するために、誇張され、削除され又は部分的に断面表示されているであろう。更に、ここに記載された態様は、例示的であり、包括的であること又は特許請求の範囲を、図面に示され、下記の「発明を実施するための形態」中に開示された正確な形態及び形状に、他の方法で限定若しくは制限することを意図しない。
【0016】
図1図1は、オレフィンを、高効率触媒上で、エポキシ化することによるアルキレンオキサイドの製造プロセスの態様を示すプロセスフローダイヤグラムである。
【0017】
図2図2は、3個の異なった温度及び4個の異なった総触媒塩化物化有効度パラメーター値で、触媒効率(選択率)と反応器出口エチレンオキサイド濃度との間の関係を示す、一連の曲線である。
【0018】
図3図3は、所望のアルキレンオキサイド製造速度及び反応器出口アルキレンオキサイド濃度を達成し、維持するように、図1のプロセスの運転方法の態様を示すフローチャートである。
【0019】
図4図4は、高効率触媒によりエチレンオキサイドを製造するための例示的プロセスにおいて、高効率触媒の効率への、総塩化物化有効度パラメーター値を変化させる影響及び総触媒塩化物化有効度における変動の結果としての、最適条件からのプロセスの偏差を示すグラフである。
【0020】
図5図5は、高効率触媒を使用してエチレンオキサイドを製造するための例示的プロセスにおいて、触媒選択率(効率)への、総触媒塩化物化有効度パラメーター値を変化させる影響を示すグラフである。
【0021】
図6図6は、高効率触媒を使用してエチレンオキサイドを製造するための例示的プロセスにおいて、触媒効率への、反応(入口冷却液)温度を変化させる影響を示すグラフである。
【0022】
図7A図7Aは、アルキレンオキサイド製造プロセスの好ましい初期運転条件を選択する第一の例示的方法を示すフローチャートである。
【0023】
図7B図7Bは、アルキレンオキサイド製造プロセスの好ましい初期運転条件を選択する第二の例示的方法を示すフローチャートである。
【0024】
図7C図7Cは、アルキレンオキサイドの選択された反応器出口濃度で、アルキレンオキサイドへの効率を最大にすることによって、高効率触媒により実施されるアルキレンオキサイド製造プロセスを最適化することによる、アルキレンオキサイド製造プロセスの好ましい初期運転条件を選択する第三の例示的方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に検討するように、本開示は、総塩化物化有効度パラメーター又は反応温度を調節することによって、所望のアルキレンオキサイド製造パラメーター、例えばアルキレンオキサイド収率、アルキレンオキサイド反応器生成物濃度、アルキレン転化率、酸素転化率又はアルキレンオキサイド製造速度を達成し、維持するための方法を提供する。説明するように、この方法の使用によって、好ましい初期運転条件(これは、限定無しに、最適運転条件を含む)から著しく逸脱することなく、アルキレンオキサイド製造パラメーターを容易に調節することが可能になる。
【0026】
本開示の理解を容易にするために、触媒及びプロセス性能に関する或る種の用語を定義することが有用である。固定床反応器内の触媒の活性は、一般的に、反応器内の触媒体積の単位当たりの、所望の生成物の方に向かう反応速度として定義される。活性は、利用可能な活性部位の合計数とそれぞれの部位の反応速度との両方に関係している。活性部位の数は、幾つかの方法によって減少させられ得る。例えば、これらは、銀粒子の凝集(これは反応のために利用可能な銀の表面積を減少させる)によって減少させられ得る。これらは、また、例えば反応器供給物中の微量の硫黄化合物との反応により無力にすることによって減少させられ得る。活性部位の数は、また、通常のプロセス構成成分との反応により、例えばプロセス流中の塩化物化合物との反応により、塩化銀化合物(これはエポキシ化反応の方に不活性である)を生成させることによって減少させられ得る。この活性は、また、反応速度が、活性部位の少なくとも幾らかについて(例えば、局在化した無力化のために)降下する場合、活性部位の合計数に無関係に、低下するであろう。所定の製造速度を維持するために、活性低下を補償するために、或る反応条件を、利用可能な活性部位の総製造速度を上昇させるように変更しなければならない。例えば、反応温度が、この目的のために、活性部位により多くのエネルギーを与えるように、しばしば上昇される。「活性」は、多数の手段によって定量することができ、その一つは、反応温度を実質的に一定に維持している間の、反応器の入口流中に含有されているアルキレンオキサイドのモル%(入口流中のアルキレンオキサイドのモル%は、典型的には、必ずではないが、ゼロ%に近い)に対する、反応器の出口流中に含有されているアルキレンオキサイドのモル%であり、別のものは、アルキレンオキサイド生成の所定の速度を維持するために必要な温度である。多くの例において、活性は、一定の時間に亘って、特定された一定の温度で生成されたアルキレンオキサイドのモル%の項目で測定される。その代わりに、活性は、アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイドの特定の一定のモル%の生成を持続するために必要な温度、与えられた他の条件、例えば圧力及び供給物中の合計モル数の関数として測定される。
【0027】
「選択率」と同義語である、エポキシ化の「効率」は、特定の生成物を形成する転化した又は反応したオレフィンの相対量(分率として又はパーセントで)を指す。例えば、「アルキレンオキサイドへの効率」は、アルキレンオキサイド形成する転化した又は反応したオレフィンの、モル基準でのパーセントを指す。触媒の有用な寿命の一つの尺度は、その時間の間に、すべての関連する要因を考慮に入れて、許容できる生産性が得られる、反応剤が反応システムを通過することができる時間の長さである。アルキレンオキサイドの「収率」は、任意の与えられた時間について、プロセスによって生成されたアルキレンオキサイドの正味モル数÷プロセスに供給されたオレフィンの正味モル数である。
【0028】
用語「アルキレンオキサイド製造パラメーター」は、本明細書において、アルキレンオキサイドが製造される程度に関する変数を記載するために使用される。アルキレンオキサイド製造パラメーターの例には、限定無しに、アルキレンオキサイド濃度、アルキレンオキサイド収率、アルキレンオキサイド製造速度、アルキレンオキサイド製造速度/触媒体積、アルキレン転化率及び酸素転化率が含まれる。従って、製造速度は、アルキレンオキサイド濃度に正味生成物流速を掛けることによって得ることができるので、アルキレンオキサイド濃度はアルキレンオキサイド製造速度に関係している。アルキレンオキサイド製造速度/触媒体積は、製造速度を、触媒床の体積によって割ることによって決定することができる。酸素転化率及びアルキレン転化率は、効率によりアルキレンオキサイドの製造に関係している。
【0029】
図1は、アルキレンオキサイドを製造するためのプロセス20を例示する。プロセス20は、その中に配置された触媒床を有する管型容器を含んでなる反応器10を含んでいる。図1において水平配置で示されているが、反応器10の商業的態様は、典型的には、垂直に配置されている。オレフィン(即ちアルキレン)供給流12(これは、不純物として、飽和炭化水素、例えばエタンも含有し得る)が、酸素供給物15及び気相プロモーター供給物14と一緒になって、反応器入口に隣接する反応器供給物流22を規定する。反応器出口流24は、アルキレンオキサイド(「AO」)生成物プラス副生成物(例えばCO2、H2O及び少量の飽和炭化水素)、未反応オレフィン、酸素及び不活性物質を含有している。商業的プロセスにおいて、幾らかの水生成物を伴うアルキレンオキサイド生成物はアルキレンオキサイド回収装置(図示せず)内で反応器出口流24から除去される。所望により、循環流18を、未反応オレフィン及び酸素を循環させるために設けることもできる(この場合、正味生成物流16も設けられる)。しかしながら、循環流18が設けられる場合、不純物及び/又は副生物、例えばアルゴン及びエタンの蓄積を減少させるために、パージラインが好ましく設けられる。更に、商業的プロセスは、また、循環流18が、新しい供給物と一緒になり、反応器10に入る場所の上流で実施される二酸化炭素除去工程を含む。
【0030】
オレフィン供給流12を構成するオレインは芳香族オレフィン及びジオレフィン(共役しているか又はしていない)を含む、任意のオレフィンであってもよい。しかしながら、好ましいオレフィンは、下記の式:
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R1及びR2は、独立に、水素及び炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される)
を有するモノオレフィンである。プロピレン(R1=CH3、R2=H)及びエチレン(R1=R2=H)が更に好ましく、エチレンが最も好ましい。同様に、反応器出口流24中の好ましいアルキレンオキサイドは、式:
【0033】
【化2】
【0034】
(式中、R1及びR2は、独立に、水素及び炭素数1〜6のアルキル基からなる群から選択される)
のものである。プロピレンオキサイド(R1=CH3、R2=H)及びエチレンオキサイド(R1=R2=H)が更に好ましく、エチレンオキサイドが最も好ましい。
【0035】
酸素供給15は、実質的に純粋な酸素又は空気を含んでいてよい。純粋な酸素が使用される場合、バラスト気体又は希釈剤13、例えば窒素又はメタンが、また、易燃性考慮によって許容される最大レベルよりも低く酸素濃度を維持するために、含有されていてよい。反応器供給物流22中の酸素の濃度は、広範囲に亘って変化させることができ、実際に、易燃性は、一般的に酸素濃度のための制限要因である。一般的に、反応器供給物22中の酸素濃度は、少なくとも約1モル%、好ましくは少なくとも約2モル%であろう。この酸素濃度は、一般的に、約15モル%以下、好ましくは約12モル%以下であろう。バラスト気体13(例えば窒素又はメタン)は、一般的に、反応器供給物流22の全組成物の約50モル%〜約80モル%である。メタンバラスト気体が窒素よりも好ましい一つの理由は、そのより高い熱容量のために、メタンが、循環中のより高い酸素濃度の使用を容易にし、従って、活性及び効率の両方を改良することである。
【0036】
反応器供給物流22中のオレフィンの濃度は広範囲に亘って変化させることができる。しかしながら、これは、好ましくは少なくとも約18モル%、更に好ましくは少なくとも約20モル%である。反応器供給物流22中のオレフィンの濃度は、好ましくは約50モル%以下、更に好ましくは約40モル%以下である。
【0037】
存在するとき、反応器供給物流22中の二酸化炭素濃度は、反応器10内で使用される触媒の効率、活性及び/又は安定性に、大きい悪影響を有する。二酸化炭素は、反応副生物として生成され、また、他の入口反応気体と共に不純物として導入され得る。商業的エチレンエポキシ化プロセスにおいて、二酸化炭素の少なくとも一部分は、その濃度を循環中の許容できるレベルまで制御するために、連続的に除去される。反応器供給物22中の二酸化炭素濃度は、反応器供給物22の全組成物の、一般的に約5モル%以下、好ましくは約3モル%以下、なお更に好ましくは約2モル%以下である。水も供給ガス中に存在し得、好ましくは0〜約2モル%以下である濃度で存在し得る。
【0038】
気相プロモーターは、一般的に、所望のアルキレンオキサイドを製造するためのプロセス20の効率及び/又は活性を増大する化合物である。好ましい気相プロモーターには、有機塩化物が含まれる。更に好ましくは、気相プロモーターは塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、塩化ビニル及びこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種である。塩化エチル及び二塩化エチレンが気相プロモーター供給物(流れ14)として最も好ましい。1例としてクロロ炭化水素気相プロモーターを使用して、所望のアルキレンオキサイドのためのプロセス20の性能(例えば効率及び/又は活性)を増強するためのプロモーターの能力は、この気相プロプロモーターが、例えば特定の塩素種、例えば原子状塩素又は塩化物イオンを、触媒上に堆積させることにより、反応器10内の触媒の表面を塩素化する程度に依存する。しかしながら、塩素原子を欠く炭化水素は、触媒から塩化物を剥がし、従って、気相プロモーターによってもたらされる総性能増強を減じると信じられる。この現象の検討は、Berty,“エチレンオキサイドへのエチレンの酸化における塩化炭化水素の抑制剤作用(Inhibitor Action of Chlorinated Hydrocarbons in the Oxidation of Ethylene to Ethylene Oxide)”、Chemical Engineering Communications、第82巻(1989)第229-232頁及びBerty,“エチレンオキサイド合成(Ethylene Oxide Synthesis)”、Applied Industrial Catalysis、第I巻(1983)第207-238頁に記載されている。パラフィン系化合物、例えばエタン及びプロパンは、触媒から塩化物を剥がすことで特に効果的であると信じられる。しかしながら、オレフィン、例えばエチレン及びプロピレンも、触媒から塩化物を剥がすように作用すると信じられる。これらの炭化水素の幾つかは、また、エチレン供給物12中に不純物として導入されるであろうし又は他の理由(例えば循環流18の使用)のために存在するであろう。典型的に、存在するとき、反応器供給物22中のエタンの好ましい濃度は0〜約2モル%である。反応器供給物流22中の気相プロモーターと塩化物除去炭化水素との競争効果を考えると、触媒を塩化物化(chloriding)する際の気相種の正味効果を表す「総触媒塩化物化有効度値」を定義することが便利である。有機塩化物気相プロモーターの場合に、総触媒塩化物化有効度値(以下、「総触媒塩化物化有効度」ということもあります。)は、無次元量Z*として定義することができ、下記の式:
(1) Z*=[塩化エチル当量(ppmv)]/[エタン当量(モル%)]
(式中、塩化エチル当量は、反応器供給物流22中の有機塩化物の濃度で、実質的に同じの、反応器供給物流22中に存在する有機塩化物の触媒塩化物化有効度を与える塩化エチルのppmv(これはppmモルに等価である)での濃度であり、エタン当量は、反応器供給物流22中の非塩化物含有炭化水素の濃度で、実質的に同じの、反応器供給物流22中の非塩化物含有炭化水素の触媒脱塩化物化有効度を与えるモル%でのエタンの濃度である)
によって表される。
【0039】
塩化エチルが、反応器供給物流22中に存在する唯一の気体状塩化物含有プロモーターである場合、塩化エチル当量(即ち式(1)中の分子)は、ppmvでの塩化エチル濃度である。他の塩素含有プロモーター(特に塩化ビニル、塩化メチル又は二塩化エチレン)が、単独で又は塩化エチルと一緒に使用される場合、塩化エチル当量は、ppmvでの塩化エチルの濃度+他の気体状塩化物含有プロモーターの濃度(塩化エチルに対して比較したときの、プロモーターとしてのそれらの有効度について補正される)である。非−塩化エチルプロモーターの相対有効度は、塩化エチルを他のプロモーターによって置き換え、塩化エチルによって与えられる同じレベルの触媒性能を得るために必要な濃度を決定することによって、実験的に測定することができる。更なる例示の手段として、1ppmvの塩化エチルによって与えられる触媒性能の項目で当量有効度を実現するために、反応器入口での二塩化エチレンの必要な濃度が0.5ppmvである場合、1ppmvの二塩化エチレンについての塩化エチル当量は、2ppmvの塩化エチルであろう。1ppmvの二塩化エチレン及び1ppmvの塩化エチルを有する仮想供給物について、Z*の分子中の塩化エチル当量は、3ppmvであろう。更なる例として、或る触媒について、塩化メチルは、塩化エチルの塩化物化有効度の約10分の1を有することが見出された。従って、このような触媒について、ppmvでの塩化メチルの与えられた濃度についての塩化エチル当量は、0.1×(ppmvでの塩化メチル濃度)である。また、或る触媒について、塩化ビニルは、塩化エチルと同じ塩化物化有効度を有することが見出された。従って、このような触媒について、ppmvでの塩化ビニルの与えられた濃度についての塩化エチル当量は、1.0×(ppmvでの塩化ビニル濃度)である。反応器供給物流22中に2種より多い塩素含有プロモーターが存在するとき(これは、商業的エチレンエポキシ化プロセスにおいて、しばしば事実である)、総塩化エチル当量は、存在するそれぞれの個々の塩素含有プロモーターについての相当する塩化エチル当量の総計である。例えば、1ppmvの二塩化エチレン、1ppmvの塩化エチル及び1ppmvの塩化ビニルの仮想供給物について、Z*の分子中の塩化エチル当量は、2×1+1+1×1=4ppmvであろう。
【0040】
エタン当量(即ち、式(1)中の分母)は、反応器供給物流22中のモル%でのエタンの濃度+エタンに対する脱塩素化のためのそれらの有効度について補正された、触媒から塩化物を除去する際に有効な他の炭化水素の濃度である。エタンに対して比較したエチレンの相対有効度は、特定の塩化エチル当量濃度を有し、エタンを有しない以外は同じエチレン濃度を有する同じ供給物に対して比較したとき、エチレン及びエタンの両方を含む供給物のための同じレベルの触媒性能を与える、入口塩化エチル当量濃度を決定することによって、実験的に測定することができる。更なる例示の手段として、30.0モル%のエチレン濃度及び0.30モル%のエタン濃度からなる供給物組成で、6.0ppmvの塩化エチル当量のレベルが、エタンを欠く以外は同様の供給物組成で3.0ppmv塩化エチル当量と同じレベルの触媒性能を与えることが見出された場合、30.0モル%のエチレンについてのエタン当量は0.30モル%であろう。30.0モル%のエチレン及び0.30モル%のエタンを有する入口反応器供給物流22について、エタン当量は0.6モル%であろう。別の例示として、或る触媒について、メタンが、エタンの脱塩化物化有効度の約500分の1を有することが見出された。従って、このような触媒について、メタンについてのエタン当量は、0.002×(モル%でのメタン濃度)である。30.0モル%のエチレン及び0.1モル%のエタンを有する仮想入口反応器供給物22について、エタン当量は0.4モル%であろう。30.0モル%のエチレン、50モル%のメタン及び0.1モル%のエタンを有する入口反応器供給物22について、エタン当量は0.5モル%であろう。エタン及びエチレン以外の炭化水素の相対有効度は、供給物中のエタンの二つの異なった濃度で、供給物中のその濃度で関心のある炭化水素からなる供給物について同じ触媒性能を達成するために必要な、入口塩化エチル当量濃度を決定することによって実験的に測定することができる。炭化水素化合物が、非常に小さい脱塩化物化効果を有し、また低濃度で存在することが見出された場合、Z*計算におけるエタン当量濃度へのその寄与は無視することができる。
【0041】
従って、前記の関係が与えられると、反応器供給物流22が、エチレン、塩化エチル、二塩化エチレン、塩化ビニル及びエタンを含有する場合に、プロセス20の総触媒塩化物化有効度値は、下記:
(2) Z*=[(ECL+2×EDC+VCL)]/[(C26+0.01×C24)]
(式中、ECL、EDC及びVCLは、それぞれ、反応器供給物流22中の、塩化エチル(C25Cl)、二塩化エチレン(Cl−CH2−CH2−Cl)及び塩化ビニル(H2C=CH−Cl)のppmvでの濃度であり、C26及びC24は、それぞれ、反応器供給物流22中の、エタン及びエチレンのモル%での濃度である)
のように定義することができる。気体状塩素含有プロモーター及び炭化水素脱塩素化種の相対有効度を、また、このプロセスにおいて使用されつつある反応条件下で測定することも重要である。Z*は、好ましくは約20以下であるレベルで維持されるであろう。これは、最も好ましくは約15以下である。Z*は好ましくは少なくとも約1である。
【0042】
気体状塩素含有プロモーターは、単一の種として供給することができるが、触媒と接触する際に、他の種が形成され、気相中の混合物に至ることができる。従って、反応気体が、例えば循環流18によって循環される場合、種の混合物が反応器の入口内に見出されるであろう。特に、この入口での循環反応気体は、たとえ塩化エチル又は二塩化エチレンのみが、システムに供給されても、塩化エチル、塩化ビニル、二塩化エチレン及び塩化メチルを含有しているであろう。塩化エチル、塩化ビニル及び二塩化エチレンの濃度は、Z*を計算する際に、考慮しなくてはならない。
【0043】
入口気体(アルキレンオキサイド及び酸素及びバラスト気体)並びに気相プロモーターを一緒に混合する順序は、重要ではなく、これらは同時に又は逐次的に混合することができる。プロセスの気体状成分の混合順序は、便利性及び/又は安全性の理由のために選択することができる。例えば酸素は、一般的に、安全の理由のために、バラスト気体の後で添加される。しかしながら、気相プロモーターは、それが反応器10内の固体触媒に導入されるので、反応器供給物流22中に存在していなくてはならない。
【0044】
図1の態様において、反応器10は固定床反応器である。しかしながら、任意の適切な反応器、例えば固定床管型反応器、連続攪拌槽反応器(CSTR)及び流動床反応器でも使用することができ、広範囲の種々の反応器が当業者に公知であり、ここで詳細に説明する必要はない。未反応供給物を循環すること若しくは単一通過システムを使用すること又は直列配置での反応器を使用することによってエチレン転化率を上昇させるために逐次的反応を使用することの望ましさは、また、当業者によって容易に決定することができる。選択される運転の特定の様式は、通常、プロセス経済性によって指定される。エポキシ化反応は一般的に発熱性である。従って、冷却液システム28(例えば冷却ジャケット又は冷却流体、例えば熱移動流体若しくは沸騰水による水力回路)が反応器10の温度を調節するために設置されている。熱移動流体は、幾つかの公知の熱移動流体、例えばテトラリン(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)の任意のものであってもよい。沸騰水によって冷却された反応器において、冷却液は、反応器の冷却側、最も一般的にはシェル側に、液体水として導入される。それが冷却側を通って流れるとき、水はプロセス側から熱を除去し、水の幾らかはスチームに蒸発する。冷却液は、反応器の冷却側から、水及びスチームの混合物として出る。反応器から出るスチームは、それから熱を除去することによって凝縮され、冷却液側の入口に戻し循環される。反応器内の冷却液の温度は、水の沸点によって決定され、次いで、それが作動している圧力によって決定される。この圧力は、反応器の冷却側から出るスチーム−水混合物から幾らかの圧力を抜くベントバルブの手段によって制御される。典型的には、所望の温度を維持するために必要な圧力を維持するようにベントバルブを自動的に調節することによって、冷却液温度を調節するために、閉ループ制御器が使用される。
【0045】
用語「反応温度」、「エポキシ化温度」又は「エポキシ化反応温度」は、触媒床温度を直接的に又は間接的に表示する、任意の選択された温度(単数又は複数)を指すことが注目されるべきである。特定の態様において、反応温度は、触媒床中の特定の場所での触媒床温度であってよい。他の態様において、反応温度は、1個又はそれ以上の触媒床次元に沿って(例えば長さに沿って)行われた数回の触媒床温度測定の数値平均であってよい。追加の態様において、反応温度は、反応器出口気体温度であってよい。別の態様において、反応温度は、反応器冷却液出口温度であってよい。他の態様において、反応温度は、反応器冷却液入口温度であってよい。このエポキシ化反応は、好ましくは少なくとも約200℃、更に好ましくは少なくとも約210℃、最も好ましくは少なくとも約220℃である温度で実施される。300℃以下の反応温度が好ましく、約290℃以下の反応温度が更に好ましい。約280℃以下の反応温度が最も好ましい。反応器圧力は、望ましい質量速度及び生産性に基づいて選択され、一般的に約5atm(506kPa)〜約30atm(3.0MPa)の範囲である。時間基準の気体空間速度(GHSV)は、好ましくは約3000h-1よりも大きく、更に好ましくは約4,000h-1よりも大きく、最も好ましくは約5,000h-1よりも大きい。
【0046】
反応器10は、高効率銀触媒を含んでいる。一般的に、高効率銀系触媒は担持型触媒である。この支持体(「担体」としても知られている)は広範囲の不活性支持体材料から選択することができる。このような支持体材料は、天然の又は人工の無機材料であってよく、これらには、炭化ケイ素、クレー、軽石、ゼオライト、木炭及びアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウムが含まれる。耐熱性支持体材料、例えばアルミナ、マグネシア、ジルコニア及びシリカが好ましい。最も好ましい支持体材料はα−アルミナである。一つの代表的な態様において、銀が、以下に更に検討する1種又はそれ以上の固体プロモーターである触媒担体の上に堆積される。
【0047】
エチレンオキサイド触媒中に使用するために適している支持体を製造する多数の公知の方法がある。このような方法の幾つかは、例えば米国特許第4,379,134号明細書、米国特許第4,806,518号明細書、米国特許第5,063,195号明細書、米国特許第5,384,302号明細書、米国特許出願第20030162655号明細書等に記載されている。例えば少なくとも95%の純度のα−アルミナ支持体は、原材料を配合(混合)し、押し出し、乾燥しそして高温度焼成することによって製造することができる。この場合に、出発原材料には、通常、異なった特性を有する1種又はそれ以上のα−アルミナ粉末(単数又は複数)、物理的強度を与えるためのバインダーとして添加することができるクレー型材料及び焼成工程の間のその除去の後で所望の多孔度を与えるために混合物で使用されるバーンアウト材料(通常有機化合物)が含まれる。完成担体中の不純物のレベルは、使用する原材料の純度及び焼成段階の間のそれらの揮発の程度によって決定される。一般的な不純物には、シリカ、アルカリ及びアルカリ土類金属酸化物並びに微量の金属及び/又は非金属含有添加物が含まれるであろう。エチレンオキサイド触媒使用のために特に適切な特性を有する担体を製造するための別の方法は、任意的に、ケイ酸ジルコニウムを、ベーマイトアルミナ(AlOOH)及び/又はγ−アルミナと混合する工程、このアルミナを、酸性成分及びハロゲン化物アニオン(好ましくはフッ化物アニオン)を含有する混合物で解膠して、解膠されたハロゲン化アルミナを提供する工程、この解膠されたハロゲン化アルミナを(例えば押出又はプレスにより)成形して、成形され解膠されたハロゲン化アルミナを提供する工程、この成形され解膠されたハロゲン化アルミナを乾燥して、乾燥成形アルミナを提供する工程並びにこの乾燥成形アルミナを焼成して任意的に変性されたα−アルミナ担体の球状物を提供する工程を含む。
【0048】
非常に高い純度、即ち少なくとも98重量%のα−アルミナを有し、任意の残りの成分が、シリカ、アルカリ金属酸化物(例えば酸化ナトリウム)並びに微量の他の金属含有及び/又は非金属含有添加物若しくは不純物であるアルミナが使用されてきた。同様に、より低い純度、即ち約80重量%のα−アルミナで、残りが、無定形及び/又は結晶性アルミナ及び他のアルミナ酸化物、シリカ、シリカアルミナ、ムライト、種々のアルカリ金属酸化物(例えば酸化カリウム及び酸化セシウム)、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物(例えば酸化鉄及び酸化チタン)並びに他の金属及び非金属酸化物の1種又はそれ以上であるアルミナが使用されてきた。更に、担体を製造するために使用される材料は、触媒性能を改良するために公知である化合物、例えばレニウム(例えばレニウム酸塩)及びモリブデンからなっていてよい。
【0049】
特に好ましい態様において、この支持体材料は、少なくとも約80重量%のα−アルミナ及び重量基準で約30ppm(部/100万)よりも少ない酸浸出性アルカリ金属(α−アルミナの重量%及び酸浸出性アルカリ金属の濃度は、担体の重量基準で計算される)を含み、ここで、酸浸出性アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウム及びこれらの混合物から選択される。
【0050】
上記のようにして製造されたα−アルミナ担体は、好ましくは少なくとも約0.5m2/g、更に好ましくは少なくとも約0.7m2/gの比表面積を有する。この表面積は、典型的に約10m2/gよりも小さく、好ましくは約5m2/gよりも小さい。このα−アルミナ担体は、少なくとも約0.3cm3/g、更に好ましくは約0.4cm3/g〜約10cm3/gの細孔体積及び約1〜約50ミクロンの中央細孔直径を有する。球形、円柱、1個又はそれ以上の長軸開口を有する円筒、大塊、タブレット、片、ペレット、環、球、ワゴンホイール(wagon wheel)、サドルリング並びに星形内及び/又は外表面を有するトロイドを含む、種々の担体形状を使用することができる。好ましい態様において、高純度α−アルミナは、好ましくはその多くが少なくとも1個の実質的に平らな主表面を有し、薄板又は小板形状を有する粒子を含む。更に好ましい態様において、粒子は、六角板(幾らかの粒子は2個又はそれ以上の平らな表面を有する)の形状に近似し、(数基準での)その少なくとも50%は、約50ミクロンよりも小さい主寸法を有する。好ましい態様において、α−アルミナ担体は、完成した担体中に実質的にケイ酸ジルコニウムとして存在し、更に好ましくは、担体の重量基準で計算して、約4重量%以下の量で存在する、ケイ酸ジルコニウム(ジルコン)を含有している。
【0051】
アルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの製造のための本発明の触媒は、上記の担体で、当該技術分野で公知であるように、担体に、1種又はそれ以上の銀化合物の溶液を含浸させ、担体の細孔全体に銀を堆積させ、そして銀化合物を還元することによって製造することができる。例えば、Liu等、米国特許第6,511,938号明細書及びThorsteinson等、米国特許第5,187,140号明細書(参照して本明細書に含める)参照。
【0052】
一般的に、担体には、対応するアルキレンオキサイドへの、酸素又は酸素含有気体によるアルキレンの直接酸化に、触媒作用することができる銀の任意の量である、触媒量の銀を含浸させる。このような触媒を製造する際に、担体に、典型的には、触媒の重量基準で、約5重量%よりも多い、約10重量%よりも多い、約15重量%よりも多い、約20重量%よりも多い、約25重量%よりも多い、好ましくは約27重量%よりも多い、更に好ましくは約30重量%よりも多い量で、銀を担体上に担持させることを可能にするために充分な、1種又はそれ以上の銀化合物溶液を、(1回又はそれ以上)含浸させる。典型的には、担体上に担持される銀の量は、触媒の重量基準で、約70重量%未満、更に好ましくは約50重量%未満である。
【0053】
完成した触媒中の銀粒子サイズは重要であるが、好ましい範囲は狭くない。適切な銀粒子サイズは、直径が、約10〜約10,000オングストロームの範囲内であってよい。好ましい銀粒子サイズは、直径が、約100オングストロームよりも大きくから約5,000オングストロームよりも小さいまでの範囲内である。この銀は、アルミナ担体内に、全体中に及び/又は上に比較的均一に分散されていることが望ましい。
【0054】
当業者に公知であるように、種々の公知のプロモーター、即ち特定の触媒材料、例えば銀と組合せて存在するとき、触媒性能の1個若しくはそれ以上の面に有利であり又は他の方法で、所望の生成物、例えばエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを製造するための触媒の能力を促進するように作用する材料が存在する。このようなプロモーターは、それ自体、一般的に触媒材料とは考えられていない。触媒中のこのようなプロモーターの存在は、触媒性能への1個又はそれ以上の有利な効果、例えば所望の生成物の製造の速度又は量を増大させること、反応の適切な速度を達成するために必要な温度を低下させること、望まない反応の速度又は量を低下させること等々に寄与することが示されてきた。競争反応が反応器内で同時に起こり、方法全体の有効性を決定する際の重要な要因は、これらの競争反応を超えて有する制御の尺度である。所望の反応のプロモーターと呼ばれる材料は、別の反応、例えば燃焼反応の阻害剤であり得る。顕著なことは、反応全体へのプロモーターの効果が、所望の生成物、例えばエチレンオキサイドの効率的な製造に有利であることである。触媒中に存在する1種又はそれ以上のプロモーターの濃度は、触媒性能への所望の効果、特定の触媒の他の成分、担体の物理的及び化学的特性並びにエポキシ化反応条件に依存して、広範囲に亘って変えることができる。
【0055】
少なくとも2種類のプロモーター、即ち固体プロモーター及び気体状プロモーターが存在する。固体及び/又は気体状プロモーターが、促進量で与えられる。触媒の或る成分の「促進量」は、該成分を含有しない触媒に対して比較したとき、その触媒の触媒的特性の1個又はそれ以上において改良を与えるために有効に作用する、その成分の量を指す。触媒的特性の例には、とりわけ、操作性(暴走に対する抵抗)、効率、活性、転化率、安定性及び収率が含まれる。個々の触媒的特性の1個又はそれ以上を、「促進量」によって増強させることができ、一方、他の触媒的特性を増強させることができるか若しくはできないか又は減衰させることができることが、当業者によって理解される。更に、異なった触媒的特性は異なった操作条件で増強できることが理解される。例えば、操作条件の一つのセットで増強された効率を有する触媒は、条件の異なったセットで操作することができ、この場合には、改良は、効率ではなくて活性において現れ、エチレンオキサイドプラントのオペレーターは、原料コスト、エネルギーコスト、副生成物除去コストなどを考慮に入れることによって、利益を最大にするために、他の触媒的特性を犠牲にしてでも、ある種の触媒的特性の利点を得るために、操作条件を意図的に変更するであろう。
【0056】
プロモーターによってもたらされる促進効果は、多数の変数、例えば反応条件、触媒製造技術、支持体の表面積及び細孔構造及び表面化学的特性、触媒の銀及びコプロモーター含有量、触媒上に存在する他のカチオン及びアニオンの存在によって影響を受け得る。他の活性剤、安定剤、プロモーター、増強剤又は他の触媒改良剤の存在も、促進効果に影響を与え得る。
【0057】
エチレンオキサイドを製造するために使用される触媒用の公知の固体プロモーターの例には、カリウム、ルビジウム、セシウム、レニウム、硫黄、マンガン、モリブデン及びタングステンの化合物が含まれる。エチレンオキサイドを製造するための反応の間に、触媒上のプロモーターの特定の形は知ることができない。固体プロモーター組成物の例及びそれらの特徴並びに触媒の一部としてこれらのプロモーターを含有させる方法は、Thorsteinson等、米国特許第5,187,140号明細書、特に第11〜15欄、Liu等、米国特許第6,511,938号明細書、Chou等、米国特許第5,504,053号明細書、Soo等、米国特許第5,102,848号明細書、Bhasin等、米国特許第4,916,243号明細書、同第4,908,343号明細書及び同第5,059,481号明細書並びにLauritzen、米国特許第4,761,394号明細書、同第4,766,105号明細書、同第4,808,738号明細書、同第4,820,675号明細書及び同第4,833,261号明細書(全部を参照して本明細書に含める)中に記載されている。固体プロモーターは、一般的に、その使用の前に触媒に化学的化合物として添加される。本明細書で使用される用語「化合物」は、表面及び/又は化学結合、例えばイオン結合及び/又は共有結合及び/又は配位結合による、特定の元素と1種又はそれ以上の異なった元素との組合せを指す。用語「イオン性」又は「イオン」は電気的に帯電した化学単位を指し、「カチオン性」又は「カチオン」は正であり、そして「アニオン性」又は「アニオン」は負である。用語「オキシアニオン性」又は「オキシアニオン」は、他の元素と組合せて少なくとも1個の酸素原子を含有する、負に帯電した単位を指す。従って、オキシアニオンは、酸素含有アニオンである。イオンは真空中には存在しないが、触媒に化合物として添加されたとき、電荷バランス対イオンと組み合わせて見出されることが理解される。触媒中にあるとき、プロモーターの形は必ずしも知られておらず、そしてプロモーターは触媒の製造の間に添加された対イオン無しに存在し得る。例えば水酸化セシウムで製造された触媒はセシウムを含有するように分析できるが、完成した触媒中に水酸化物を分析できない。同様に、アルカリ金属酸化物、例えば酸化セシウム又は遷移金属酸化物、例えばMoO3のような化合物は、イオン性ではないが、触媒製造の間に又は使用中にイオン性化合物に転化できる。理解を容易にするために、固体プロモーターは、反応条件下で触媒中のその形に無関係に、カチオン及びアニオンの用語で参照されるであろう。
【0058】
担体上に製造された触媒には、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属がカチオンプロモーターとして含有されていてよい。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の例はリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムである。他のカチオンプロモーターには、ランタニド系金属を含む第3b族金属イオンが含まれる。幾つかの例において、プロモーターは米国特許第4,916,243号明細書(参照して本明細書に含める)に記載されているように、相乗効率増強を得るために、カチオンの混合物、例えばセシウムと少なくとも1種の他のアルカリ金属との混合物を含む。本明細書において周期表に対する参照はCRC Handbook of Chemistry and Physics、第46版、内側裏表紙において、Chemical Rubber Company、オハイオ州クリーブランド(Cleveland)により刊行されたものに対するものとすることに注目されたい。
【0059】
完成触媒中のアルカリ金属プロモーターの濃度の好ましい範囲は狭くなく、広範囲に亘って変化してよい。特定の触媒のための最適アルカリ金属プロモーター濃度は、性能特性、例えば触媒効率、触媒老化の速度及び反応温度に依存するであろう。
【0060】
完成触媒中のアルカリ金属の濃度(カチオン、例えばセシウムの重量基準)は、約0.0005〜1.0重量%、好ましくは約0.005〜0.5重量%で変化してよい。担体又は触媒の表面上に堆積される又は存在するカチオンプロモーターの好ましい量は、一般的に、全担体材料上で計算される、約10〜約4000、好ましくは約15〜約3000、更に好ましくは約20〜約2500ppm重量のカチオンである。全担体材料の約50〜約2000ppm重量のカチオンプロモーター量がしばしば最も好ましい。アルカリ金属セシウムカチオンを、他のカチオンと共に混合物中に使用するとき、所望の性能を達成するための、セシウムカチオン対任意の他のアルカリ金属及びアルカリ土類金属カチオン(使用する場合)の比は狭くなく、広範囲に亘って変化してよい。セシウムカチオンプロモーター対他のカチオンプロモーターの重量比は、約0.0001:1から10,000:1まで、好ましくは約0.001:1から1,000:1まで変化してよい。
【0061】
本発明で使用することができる幾つかのアニオンプロモーターの例には、ハロゲン化物、例えばフッ化物及び塩化物並びに周期表の第3b族〜第7b族及び第3a族〜第7a族の5〜83の原子番号を有する、酸素以外の元素のオキシアニオンが含まれる。窒素、硫黄、マンガン、タンタル、モリブデン、タングステン及びレニウムのオキシアニオンの1種又はそれ以上が、幾つかの用途のために好ましいであろう。
【0062】
本発明の触媒中に使用するのに適しているアニオンプロモーター又は変性剤の種類は、単なる例として、オキシアニオン、例えば硫酸塩、SO4-2、リン酸塩、例えばPO4-3、チタン酸塩、例えばTiO3-2、タンタル酸塩、例えばTa26-2、モリブデン酸塩、例えばMoO4-2、バナジン酸塩、例えばV24-2、クロム酸塩、例えばCrO4-2、ジルコン酸塩、例えばZrO3-2、ポリリン酸塩、マンガン酸塩、硝酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、タングステン酸塩、チオ硫酸塩、セレート(cerates)などを含む。フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物を含むハロゲン化物が存在してもよい。
【0063】
多くのアニオンが、錯体化学的性質を有し、1種又はそれ以上の形、例えばオルトバナジン酸塩及びメタバナジン酸塩並びに種々のモリブデン酸塩オキシアニオン、例えばMoO4-2、Mo724-6及びMo27-2で存在し得ることが、よく認められている。オキシアニオンには、ポリオキシアニオン構造を含有する混合金属含有オキシアニオンが含まれていてもよい。例えばマンガン及びモリブデンは混合金属オキシアニオンを形成することができる。同様に、アニオン性、カチオン性、元素状又は共有形で与えられる他の金属を、アニオン性構造の中に入れることができる。
【0064】
オキシアニオン又はオキシアニオンへの前駆体は、担体に含浸する溶液中に使用できるが、触媒の製造の状態の間及び/又は使用の間に、特定のオキシアニオン又は最初に存在する前駆体を、他の形に転換させることができる。実際に、元素をカチオン性形又は共有形に転換させることができる。多くの例において、分析技術は、存在する種を正確に同定するために充分ではないであろう。本発明は、使用の間に触媒上に最終的に存在し得る正確な種によって限定されることを意図しない。
【0065】
或る種の効率が高い触媒で、最も好ましいプロモーターは、種々の形で、例えば金属として、共有化合物として、カチオンとして又はアニオンとして与えることができるレニウムを含む。増強された効率及び/又は活性を与えるレニウム種は確かではなく、添加された成分又は触媒の製造の間若しくは触媒として使用する間に発生するものであろう。レニウム化合物の例には、レニウム塩、例えばハロゲン化レニウム、オキシハロゲン化レニウム、レニウム酸塩、過レニウム酸塩、レニウムの酸化物及びレニウムの酸が含まれる。しかしながら、過レニウム酸アルカリ金属、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸アルカリ土類金属、過レニウム酸銀、他の過レニウム酸塩及び七酸化レニウムも、適切に使用できる。七酸化レニウム、Re27は、水中に溶解したとき、加水分解して、過レニウム酸、HReO4又は過レニウム酸水素になる。従って、本明細書の目的のために、七酸化レニウムは、過レニウム酸塩、即ちReO4であると考えることができる。同様な化学は、モリブデン及びタングステンのような他の金属によって示されることができる。
【0066】
本発明で使用することができるプロモーターの別の種類には、マンガン成分が含まれる。多くの例において、マンガン成分は触媒の活性、効率及び/又は安定性を増強し得る。増強された活性、効率及び/又は安定性を与えるマンガン種は、確かではなく、添加される成分又は触媒製造の間若しくは触媒として使用する間に発生するものであってよい。マンガン成分には、これらに限定されないが、酢酸マンガン、硫酸アンモニウムマンガン、クエン酸マンガン、ジチオン酸マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン及びマンガン酸塩アニオン、例えば過マンガン酸塩アニオンなどが含まれる。ある種の含浸溶液中でマンガン成分を安定化するために、キレート化化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその適当な塩を添加することが必要であろう。
【0067】
アニオンプロモーターの量は、広く、例えば、触媒の全重量基準で、約0.0005〜2重量%、好ましくは約0.001〜0.5重量%で変化させることができる。使用するとき、レニウム成分は、しばしば、触媒の全重量基準でレニウムの重量として計算して、少なくとも約1、例えば少なくとも約5、例えば約10〜2000、しばしば20〜1000ppmwの量で与えられる。
【0068】
或る種の高効率触媒は、反応条件下でレドックス−半反応対の気体状効率増強員(gaseous efficiency-enhancing member)を形成することができる気体状窒素含有成分の存在下でのエポキシ化プロセスにおいて使用される、レドックス−半反応対の1員の少なくとも1種の効率増強塩を含有する。触媒及びエポキシ化プロセスのこのカテゴリーは、本明細書中に開示され、特許請求の範囲に記載されたアルキレンオキサイドを製造するための方法及びプロセスで使用するために好ましくない。用語「レドックス−半反応(redox-half reaction)」は、本明細書において、例えば“Handbook of Chemistry”、N.A.Lange編、McGraw-Hill Book Company, Inc.、第1213-1218頁(1961年)又は“CRC Handbook of Chemistry and Physics”、第65版、CRC Press, Inc.、フロリダ州Boca Raton、第D155-162頁(1984年)に記載されている種類の、標準又は単極電位としても知られている、標準還元又は酸化電位の表中に示されている方程式中に見出されるもののような半反応を意味するように定義される。このような化合物は、半反応対の1員の塩として触媒と会合するとき、アニオンが、オキシアニオン、例えば多価原子のオキシアニオンである塩である。即ち、酸素が結合しているアニオンの原子は、異なった原子に結合するとき、異なった原子価状態で存在することができる。本明細書で使用される用語「塩」は、塩のアニオン成分及びカチオン成分が、固体触媒中で会合又は結合することを示さず、両成分が反応条件下で触媒中に一定の形で存在することのみを示す。カリウムが典型的なカチオンであるが、ナトリウム、ルビジウム及びセシウムも作用でき、そして典型的なアニオンは、硝酸塩、亜硝酸塩及び置換又は他の化学反応を受けることができ、そしてエポキシ化条件下で硝酸塩アニオンを形成することができる他のアニオンである。典型的な塩には、KNO3及びKNO2が含まれ、KNO3が最もしばしば使用される。
【0069】
銀及び1種又はそれ以上の固体プロモーターは担体上に比較的均一に分散されていることが望ましい。銀触媒材料及び1種又はそれ以上のプロモーターを堆積させるための好ましい手順は、(1)本発明に従った担体に、溶媒又は可溶化剤、銀錯体及び1種又はそれ以上のプロモーターを含む溶液を含浸させる工程並びに(2)その後、含浸担体を処理して、銀化合物を転化させ、そして銀及びプロモーター(単数又は複数)の、担体の外部及び内部細孔表面上への堆積を実施する工程を含む。銀及びプロモーター堆積は、一般的に、担体を含有する溶液を高温度に加熱して、担体内の液体を蒸発させ、そして内部及び外部担体表面上への銀及びプロモーターの堆積を実施することによって達成される。この加熱工程の温度は、任意の銀化合物を金属銀にまで還元するために充分に高い。担体の含浸は、これが、被覆手順(これは、一般的に、担体の内部表面上への実質的な銀堆積を行うことができない)よりも一層効率的に銀を利用するので、銀堆積のための好ましい技術である。更に、被覆された触媒は機械的摩擦による銀損失を一層受けやすい。
【0070】
アルミナ担体の上に堆積された銀及び固体プロモーターの量について分析するために、公知の方法を使用することができる。当業者は、例えばこれらの堆積された成分の任意の量を決定するために物質収支を使用することができる。その代わりに、元素状組成を決定するための任意の適切な分析技術、例えばX線蛍光(XRF)を使用して、堆積された成分の量を決定することができる。
【0071】
当該技術分野で公知であるように、アルキレンオキサイドの収率は、オレフィン消費の速度及び競争副反応の速度に依存する。従来の触媒で、アルキレンオキサイド製造の所望の速度は、効率を実質的に犠牲にすることなく、反応温度を変化させることによって達成できる。しかしながら、高効率触媒でこのような調節を行う際に、効率は、典型的には、総触媒塩化物化有効度及び反応温度の両方に依存性である。従って、オレフィン消費の速度を増加させる変更は、効率における対応する減少によって達成できる。一般的に、原材料消費及び望まない副生成物(二酸化炭素及び水)の発生を最小にするために効率を最大にすることが望ましい。効率は、総触媒塩化物化有効度及び反応温度の両方と共に変化するので、両方の変数を、典型的には、所望のアルキレンオキサイド製造パラメーターを得るように変化させなくてはならない。図2は、この現象を示す。この図は、反応器出口エチレンオキサイド濃度及び総触媒塩化物化有効度パラメーターZ*の4個の異なった値(図2において□で示されるような、2.9、3.8、4.7及び5.7)(これらは、塩化エチルの入口濃度を変化させることによって得られた)で、3個の異なった反応温度(245℃、250℃及び255℃)で操作される、高効率レニウム促進銀触媒についての効率(選択率)データを示している。Z*の同じ値は、3個全ての温度について使用したが、単純化のために、245℃についてのグラフのみに、Z*値で標識を付ける。温度は、グラフの左上からグラフの右下の方に移動して上昇し、それぞれの曲線は全体的に放物線状である。従って、反応温度が245℃であるとき、4.7のZ*値で、約1.4モル%の出口エチレンオキサイド濃度が、89.8%の効率で達成される。しかしながら、同じ反応器出口エチレンオキサイド濃度について、効率は、温度が250℃まで上昇したとき約89.0%まで低下し、温度が255℃まで上昇したとき更に約88.0%まで低下する。また、この図が示すように、245℃で1.4モル%のエチレンオキサイド反応器出口濃度で運転した後、エチレンオキサイドの量を約1.7モル%まで増加させることを望む場合には、反応温度を上昇させることなく、Z*を5.7にまで単純に増加させることによって、所望の収率がもたらされるであろう。しかしながら、この効率は、約88.5%にまで低下するであろう。その結果、特許文献2に記載されているもののような或る種の公知の方法は、反応温度を変更するときはいつでも、総触媒塩化物化有効度を同時に変更する必要性を強調する。
【0072】
総触媒塩化物化有効度及び反応温度の一定の範囲内で、効率と反応温度との間及び効率と総触媒塩化物化有効度との間の関係は、比較的水平であるのに対して、反応速度は、気相塩化物化レベルにおける変化と共に単調に変化する。その結果、与えられた触媒活性について、総触媒塩化物化有効度値及び反応温度の一定の範囲内で、アルキレンオキサイド製造パラメーター、例えば反応器出口流24中のアルキレンオキサイドの濃度を、他の変数を一定に保持しながら、総触媒塩化物化有効度又は反応温度の一方を調節することによって、効率を実質的に犠牲にすることなく、調節し、維持することができる。反応温度又は総触媒塩化物化有効度への調節は、好ましくは反応器入口アルキレン濃度を実質的に一定の値に保持しながら、なお更に好ましくは、また、アルキレンオキサイド製造プロセスを実質的に固定されたプロセス条件で運転しながら行われる。固定されたプロセス条件は、圧力、反応器入口酸素濃度、反応器入口二酸化炭素濃度及び時間基準の気体空間速度からなる群から選択された少なくとも1個の変数が、実質的に一定値で保持されているものである。一つの例示態様において、これらの変数のそれぞれは、実質的に一定の値で保持される。
【0073】
所望のアルキレンオキサイド収率を達成し、維持するための改良方法の態様が、図3に示される。この方法に従って、アルキレンオキサイド製造パラメーターの初期値(図3において、反応器出口アルキレンオキサイド濃度(CAO1)である)、初期反応温度(T1)及び初期総塩化物化有効度値(Z1*)を含む、好ましい初期運転条件が選択される。選択された変数に従って、好ましい初期効率(E1)が得られる。図3に示される態様において、初期アルキレンオキサイド製造速度及び対応するアルキレンオキサイドの初期反応器出口濃度(CAO1)が、最初に選択される(工程1010)。その代わりに、所望のアルキレンオキサイド出口濃度CAO1を、目標製造速度を選択することなく、選択することができる。しかしながら、目標製造速度が選択される場合、CAO1を、選択されたアルキレンオキサイド製造質量流量、FAO及び標準温度及び圧力(T=273.15°K、P=1気圧)での全入口体積流量(V)から計算することができる。一つの方法に従って、モルパーセントとしてのアルキレンオキサイド濃度における変化(ΔAO%)は、最初に下記のように計算される。
【0074】
(3) ΔAO%=(FAO/MWAO)(RT/P)(100/V)
[式中、MWAOは、アルキレンオキサイドの分子量(例えば、エチレンオキサイドについて44.05g/gmol)であり、Rは、理想気体定数である]。ΔAO%及びアルキレンオキサイドの反応器入口濃度(CAO入口)に基づいて、下記の2個の式が同時に解かれて、モルパーセントでのアルキレンオキサイドの出口濃度(CAO1)が得られる。
(4) シュリンクファクター(SF)=(200+CAO入口)/(200+CAO1
(5) ΔAO%=SF×CAO1−CAO入口
【0075】
「シュリンクファクター」は、アルキレンオキサイドの製造のために起こる正味体積減少を表す。例えば、エチレンオキサイド製造の場合に、製造されるエチレンオキサイドの各モルについて、体積流量における対応する減少になる、全気体の0.5モルの正味減少が存在する。
【0076】
アルキレンオキサイドの初期反応器出口濃度(CAO1)に基づいて、初期反応温度(T1)及び総触媒塩化物化有効度パラメーター値(Z1*)は、工程1012において選択される。その代わりに、工程1010において、T1及びZ1*の一方を選択することができ、T1及びZ1*の他方を、工程1010において選択されたT1及びZ1*の一方に基づいて、工程1012において選択することができる。何れかの場合に、CAO1、初期反応温度T1及び初期総触媒塩化物化有効度パラメーターZ1*の組合せは、好ましくは、好ましい初期運転条件に基づいて選択される。一つの態様において、好ましい初期運転条件は、特定の範囲内の、一定の温度、反応器入口アルキレン濃度及び固定されたプロセス条件で、反応器出口アルキレンオキサイド濃度に対する効率の一次導関数(∂E/∂CAO)を維持するように選択される。この固定されたプロセス条件は、圧力、反応器入口酸素濃度、反応器入口二酸化炭素濃度及び時間基準の気体空間速度からなる群から選択された少なくとも1個の変数が、一定値で保持されているものである。一つの好ましい態様において、固定されたプロセス条件は、圧力、反応器入口酸素濃度、反応器入口二酸化炭素濃度及び時間基準の気体空間速度のそれぞれが、一定値で保持されている条件である。別の態様において、好ましい運転条件は、エポキシ化温度で、効率最大化アルキレンオキサイド濃度よりも高い反応器出口アルキレンオキサイド濃度(CAO1)をもたらすように選択される。更に別の態様において、好ましい運転条件は、同じ反応温度で効率最大化総塩化物化有効度値よりも高い総塩化物化有効度値をもたらすように選択される。更に別の態様において、初期総触媒塩化物化有効度値Z1*及び初期反応温度T1は、所望の反応器出口アルキレンオキサイド濃度、CAO1で、アルキレンオキサイドへの効率を最大にするように選択される。他の最適化方法及び好ましい初期運転条件を選択する他の方法を使用することもできる。例えば、プロセス20を、反応器出口24内のアルキレンオキサイド濃度に無関係に所定の選択された初期反応温度T1のための最大触媒効率で、運転することが望ましいであろう。更に、効率最大化スキームは、(冷却液回路28の容量に基づいて)最低の得ることができる反応温度で運転することにより及び最大効率を得るZ1*の値を選択することにより、選択することができる。その代わりに、反応器出口アルキレンオキサイド濃度を、(反応器が耐えることができる最高温度によって制限されるような)効率に無関係に最大化することができる。T1及びZ1*を選択するために、前記のような技術を使用することができ、以下更に検討する。
【0077】
工程1010及び1012において、好ましい初期運転条件(CAO1、T1、Z1*、E1)が選択された後、アルキレンオキサイド製造パラメーター(例えばアルキレンオキサイド製造速度及び/又は反応器出口中のアルキレンオキサイドの濃度)を調節することが望まれる場合、新しい値(濃度、CAO2)が選択される(工程1014)。所望の値を達成するために、Z*又は反応温度の何れかが、取り扱われる変数として選択される。Z*が選択された場合、工程1018において、Z*が、T1を一定に保持しながら、(例えば流れ14中の有機塩化物気相プロモーターの流量を増加させることによって)Z1*からZ2*に変更される。反応温度Tが選択された場合、工程1020において、温度が、Z1*を一定に保持しながら、(例えば冷却回路28内の冷却液の流量を減少させることにより又は沸騰水冷却システム内のスチームドラム圧力を上昇させることにより)T1からT2に変更される。アルキレンオキサイドの製造における増加が望まれる場合、Z*が工程1018において増加されるか、又はTが工程1020において、上昇されるであろう。逆に、アルキレンオキサイドの製造における減少が望まれる場合、Z*が工程1018において減少されるか又はTが工程1020において降下されるであろう。T又はZ*を取り扱う際に、実質的に一定の反応器入口アルキレン濃度でアルキレンオキサイド製造プロセスを運転することが好ましく、圧力、反応器入口酸素濃度、反応器入口二酸化炭素濃度及び時間基準の気体空間速度からなる群から選択された少なくとも1個の変数が、実質的に一定値で保持されている、実質的に固定されたプロセス条件で、このプロセスを運転することも、更に好ましい。一つの代表的な態様において、これらの変数のそれぞれは、実質的に一定の値で保持される。
【0078】
特許文献2に記載されているもののような方法とは反対に、図3の方法は、反応温度及び気相プロモーター濃度を同時に取り扱うことに含まれる複雑性(これは、プロセスの運転及び制御の中に複雑性を導入し、プロセス攪乱の影響を起こすか又は募らせ得る)を回避する。
【0079】
図3に記載されたZ*及びTにおける変更は、一般的に、アルキレンオキサイドの所望の収率(及び/又は反応器出口濃度)を得るために必要な程度まで、反応速度を変化させるために充分である大きさのものである。工程1018においてなされるZ*の変更(即ちΔZ*)は、好ましくは約2以下、更に好ましくは約1.5以下、なお更に好ましくは約1.3以下、最も好ましくは約1.0以下である。工程1020においてなされる反応温度Tにおける変更(即ちΔT)は、好ましくは約10℃以下、更に好ましくは約7℃以下、なお更に好ましくは約5℃以下、最も好ましくは約2℃以下である。或る態様において、工程1018におけるZ*における変更及び工程1020におけるTにおける変更は、好ましくは約1.0%以下、更に好ましくは約0.5%以下、最も好ましくは約0.3%以下である、効率における変化(ΔE)になる。
【0080】
前に示したように、プロセス20は、好ましくは触媒効率が総触媒塩化物化有効度及び反応温度に関して比較的水平なままであることを確保するように、運転される。この領域内での運転を確保するために、Z*及びTは、好ましくは、それぞれの選択された範囲内に維持される。従って、Z*は、好ましくは約20以下である、最も好ましくは約15以下であるレベルで維持されるであろう。Z*は、好ましくは少なくとも約1である。更に、反応温度は、好ましくは少なくとも約200℃、更に好ましくは少なくとも約210℃、最も好ましくは少なくとも約220℃である。300℃以下の反応温度が好ましく、約290℃以下の反応温度が更に好ましい。約280℃以下の反応温度が最も好ましい。
【0081】
当該技術分野で公知のように、触媒の老化(age)は、多数の機構に起因してその活性に影響を与え得る。Bartholomew,C.H.、“Mechanisms of Catalyst Deactivation”、Applied Catalysis,A:General(2001)、212(1-2)、17-60参照。活性が変化するとき、効率、Z*と反応温度との間の関係も変化するであろう。従って、図3の方法は、好ましくは、実質的に一定の触媒活性を与える比較的狭い触媒老化範囲に亘って実施される。しかしながら、新しい、寿命の半ばの及び老化した触媒を使用することができる。触媒齢は、多数の手段、例えば流上の日数又は蓄積生成物生産量(例えばメートル法のキロトン「kt」で)÷充填した反応器体積(例えば立方メートルで)の比で表すことができる。本明細書中に記載された方法は、好ましくは約10ktアルキレンオキサイド/m3触媒以下、更に好ましくは約8ktアルキレンオキサイド/m3触媒以下、なお更に好ましくは約6ktアルキレンオキサイド/m3触媒以下、最も好ましくは約4ktアルキレンオキサイド/m3触媒以下である齢を有する触媒上で実施される。
【0082】
前記のように、図3の方法の工程1012において、初期反応温度(T1)及び初期総触媒塩化物化有効度値(Z1*)は、好ましくは、好ましい初期運転条件を得るように選択される。好ましい初期運転条件(例えばT1、Z1*、CAO1、E1)を選択する方法を、ここで記載する。例えば、方法を例示するために使用されるアルキレンオキサイド製造パラメーターは、アルキレンオキサイド濃度、CAOである。しかしながら、他のアルキレンオキサイド製造パラメーターを使用することができる。
【0083】
第一の代表的な態様に従って、T1及びZ1*は、値の選択された範囲内にある、効率対反応器出口アルキレンオキサイド濃度の勾配に対応するように選択される。この勾配は、反応器入口アルキレン濃度を一定に保持し、固定されたプロセス条件で運転しながら、Z*が一定の温度で変化するときの、効率対反応器出口アルキレンオキサイド濃度の勾配である。この固定されたプロセス条件は、反応器入口酸素濃度、反応器入口二酸化炭素濃度、反応器圧力及び時間基準の気体空間速度からなる群から選択された少なくとも1個の変数が、一定で保持されている条件である。好ましい態様において、この固定されたプロセス条件は、これらの変数のそれぞれが、一定で保持されているものである。この勾配は、好ましくは約−1%効率/モル%アルキレンオキサイド以下、更に好ましくは約−1.5%効率/モル%アルキレンオキサイド以下、なお更に好ましくは約−2%効率/モル%アルキレンオキサイド以下である。この勾配は、好ましくは少なくとも約−5%効率/モル%アルキレンオキサイド、更に好ましくは少なくとも約−4.5%効率/モル%アルキレンオキサイド、なお更に好ましくは少なくとも約−4%効率/モル%アルキレンオキサイドである。約−3%効率/モル%アルキレンオキサイドの勾配が、特に好ましい。図7Aを参照して、代表的な態様を実行する方法が示されている。この方法に従って、工程802において、第一の選択された反応温度、T1が、少なくとも約200℃、更に好ましくは少なくとも約210℃、最も好ましくは少なくとも約220℃であるエポキシ化反応温度であるように選択される。T1は、好ましくは約300℃以下、更に好ましくは約290℃以下、最も好ましくは約280℃以下である。工程804において、効率及びCAOデータの第1組が、前記のように、反応温度を第一の選択された反応温度T1で保持しながら、そして反応器入口アルキレン濃度を固定されたプロセス条件で一定に保持しながら、Z*を変化させ、CAOを測定し、種々のZ*値で効率を決定することによって発生させられる。
【0084】
工程806において、効率値及びCAO値の隣接する対によって定義される直線勾配(例えばΔE/ΔCAO)が、T1で決定される。工程808において、CAO1の値が、前記のように、ΔE/ΔCAOが勾配(∂E/∂CAOTに対応する点で選択される。次いで、Z*を、ΔE/ΔCAOの選択された値に基づいて、(例えば内挿法により)集められたデータから決定することができる。
【0085】
別の代表的な態様に従って、好ましい初期運転条件が、最大効率よりも小さい効率を与えるように選択される。好ましい実施において、初期反応器出口アルキレンオキサイド濃度(CAO1)が効率最大化濃度よりも大きいように選択される。図7Bを参照して、代表的な態様を実施する方法が示されている。この方法に従って、工程902において、T1が、前記態様において説明されたようにして、選択される。工程904において、効率値が、図7Aの工程804について前記したものと同じ方法で決定される。工程906において、T1についての最大効率値が決定され、対応する効率最大化Z*及びCAO値(Z*max及びCAOmax)が決定される。一つの例示的例において、最大効率値は、効率対Z*及び/又はCAOの集めた値をプロットし、最大効率、Z*max及び/又はCAOmaxを、(例えば、曲線の当てはめ、モデル化及び/又は内挿法により)グラフ的に及び/又は数字的に決定することによって決定される。工程908において、Z*の効率最大化値(即ちZ*max)に基づいてZ1*を選択するか又は最初に、CAOの効率最大化値(即ちCAOmax)に基づいて反応器出口アルキレンオキサイド濃度CAO1を選択するかが決定される。後者の方法が選択された場合、CAO1は、工程910において、CAOmaxよりも大きいように選択される。CAO1は、好ましくはCAOmaxよりも少なくとも約1%大きい(即ち、少なくとも約1.01CAOmax)、更に好ましくはCAOmaxよりも少なくとも約5%大きい、なお更に好ましくはCAOmaxよりも少なくとも約10%大きい。CAO1は、好ましくはCAOmaxよりも約25%以下ほど大きい(即ち約1.25CAOmax以下)、更に好ましくはCAOmaxよりも約20%以下ほど大きい、なお更に好ましくはCAOmaxよりも約15%以下ほど大きい。CAO1の選択された値に基づいて、次いで、CAO1を達成するためのZ*の必要な値を、集めたデータから決定することができる。
【0086】
1*を決定するためにCAOが使用されない場合、工程912において、Z1*が、Z*の効率最大化値(即ち、Z*max)よりも大きいように選択される。Z1*は、好ましくはZ*maxよりも少なくとも約1%大きい(即ち少なくとも約1.01Z*max)、更に好ましくはZ*maxよりも少なくとも約5%大きい、更に好ましくはZ*maxよりも少なくとも約10%大きい。Z1*は、好ましくはZ*maxよりも約25%以下ほど大きい(即ち1.25Z*max以下)、更に好ましくはZ*maxよりも約20%以下ほど大きい、なお更に好ましくはZ*maxよりも約15%以下ほど大きい。Z1*及びT1の選択はCAO1を決定するであろう。
【0087】
再び図3を参照して、更に別の代表的な態様に従って、工程1010において、所望の初期アルキレンオキサイド製造速度又は出口濃度(CAO1)を選択した後、T及びZ*の好ましい初期値(即ち、T1及びZ1*)が、アルキレンオキサイドの所望の初期反応器出口濃度、CAO1で最大(最適)効率を得るように選択される。図2に示されるように、(また、反応器入口アルキレン濃度を一定に保持し、固定されたプロセス条件で操作しながら)一定温度でZ*を変化させるときの、効率とアルキレンオキサイド濃度との間の関係が、下向きに開いた放物線の形状を有する曲線を規定すること及び反応温度を上昇させることが、この放物線を、下方に且つ右に移動させることが見出された。(また、反応器入口アルキレンを一定に保持し、固定されたプロセス条件で操作しながら)一定温度でZ*を増加させることは、このプロセスを、効率対エチレンオキサイド曲線に沿って、エチレンオキサイド濃度を増加させる方向に移動させる。前記のように、固定されたプロセス条件は、反応器入口酸素濃度、反応器入口二酸化炭素濃度、反応器圧力及び時間基準の気体空間速度の少なくとも一つが、一定で保持されているものである。更に好ましくは、これらの変数のそれぞれは、一定で保持されている。また、アルキレンオキサイド製造速度の範囲に亘る、反応温度と総触媒塩化物化有効度値との間の最適な(効率最大化)組合せは、効率と種々の温度でのアルキレンオキサイド濃度との間の関係を規定する、前記の一連の放物線形状の曲線に対して接線である直線によって規定されることが見出された。従って、与えられた反応器入口アルキレン濃度及び固定されたプロセス条件(前記の通り)について、選択されたアルキレンオキサイド濃度は、反応温度と総塩化物化有効度との効率最大化組合せに対応する。換言すると、アルキレンオキサイド濃度は、この接線上の点及び効率対アルキレンオキサイド濃度放物線(それに対する直線が、選択されたアルキレンオキサイド濃度で接線である)に対応する温度に対応する。選択されたアルキレンオキサイド濃度は、また、特定された濃度で、Z*の特定の効率最大化値に対応する。再び図2を参照して、示された接線は、約1.4モル%のエチレンオキサイド濃度及び約89.8%の効率で、245℃(上左)放物線と交差している。従って、1.4モル%エチレンオキサイド濃度について、最適効率は89.8%であり、最適温度は約245℃であり、最適Z*は4.7よりも僅かに大きいであろう。
【0088】
最適温度及び総塩化物化有効度値は、必要な場合、アルキレンオキサイド濃度対温度のプロット及び接線を構成するために使用された点に対応する総塩化物化有効度値から、内挿法及び外挿法によって決定することができる。接線を構成するために使用された総塩化物化有効度値は、また、それ自体、実際の実験データから内挿又は外挿して、関連する効率対アルキレンオキサイド濃度曲線についての接触点で、温度及び総塩化物化有効度値Z*組合せを規定することができる。
【0089】
複数の温度で、特定の高効率銀触媒について生じた、効率対アルキレンオキサイド濃度曲線と交差する接線の勾配は、しばしば、約−1%効率/モル%アルキレンオキサイド以下、更にしばしば約−1.5%効率/モル%アルキレンオキサイド以下、なお更にしばしば約−2%効率/モル%アルキレンオキサイド以下である。この勾配は、しばしば少なくとも約−5%効率/モル%アルキレンオキサイド、更にしばしば少なくとも約−4.5%効率/モル%アルキレンオキサイド、なお更にしばしば少なくとも約−4%効率/モル%アルキレンオキサイドである。約−3%効率/モル%アルキレンオキサイドの勾配が、最もしばしばである。観点を変えて、図3の工程1012において、T1及びZ1*は、好ましくは一次導関数(即ち一定の温度、一定の反応器入口アルキレン濃度及び固定されたプロセス条件でZ*を変化させるときの「勾配」又は(∂E/∂CAO))が、前記の範囲内に入るように選択される。この固定されたプロセス条件は、反応器入口酸素及び二酸化炭素濃度、反応器圧力並びに時間基準の気体空間速度からなる群から選択された少なくとも1個の変数が、一定で保持されているものであり、更に好ましくは、これらの変数のそれぞれが、一定で保持されている条件である。更に、工程1018及び1020でなされたZ*及びTにおける変更は、好ましくは、選択されたZ*及び温度で、アルキレンオキサイドへの効率が、選択された温度及びZ*での一次導関数(勾配)(これは、好ましくは約1%効率/モル%アルキレンオキサイド以下、更に好ましくは約0%効率/モル%アルキレンオキサイド以下、なお更に好ましくは約−1%効率/モル%アルキレンオキサイド以下である)を有する関数に従って、一定の温度でアルキレンオキサイドの反応器出口濃度と共に変化するように行われる。選択された温度及びZ*での勾配は、好ましくは少なくとも約−8%効率/モル%アルキレンオキサイド、更に好ましくは少なくとも約−7%効率/モル%アルキレンオキサイド、なお更に好ましくは少なくとも約−5%効率/モル%アルキレンオキサイドである。好ましい態様において、Z*における変更(工程1018)及びTの変更(工程1020)は、最適効率とは異なる量ほど、好ましくは約0.5%以下、更に好ましくは約0.4%以下、最も好ましくは約0.3%以下ほど、アルキレンオキサイドへの効率(E)を変える。
【0090】
前記のように、一つの好ましい態様において、初期反応温度T1及び初期総触媒塩化物化有効度Z1*は、所望のアルキレンオキサイド製造パラメーター(例えば反応器出口アルキレンオキサイド濃度)で、アルキレンオキサイド濃度へのプロセス20の効率を最大にすることを含む最適化プロセスによって選択される。この最適化を実施する代表的方法が、図7Cに示される。この方法に従って、効率データ(E)及び反応器出口アルキレンオキサイド濃度データ(CAO)が、2個の温度(T1及びT2)で及びこれらの温度のそれぞれについて、少なくとも3個の総触媒塩化物化有効度値(Z1*、Z2*、Z3*)(これらは2個の温度について同じであるか又は異なっていてよい)で集められる(工程1030)。反応器入口アルキレン濃度は、好ましくは一定に保持され、固定されたプロセス条件は、好ましくは温度及びZ*が変更されるとき使用される。固定されたプロセス条件は前記の通りである。Z*が3個の値Z1*、Z2*及びZ3*の間で変化するとき、それぞれの温度でのEとCAOとの間の関係は、二次多項式(second order polynomial)としてモデル化され、それによって2個の放物線が生じ、E対CAOのプロット上で、より高い温度(T2)についての放物線は、より低い温度(T1)についての放物線から下方に且つ左に移動する(工程1032)。両方の放物線に対して接線である直線(例えば、E=m(CAO)+b(式中、mは勾配であり、bはy−切片である))が、次いで決定され(工程1034)、それぞれの放物線についての接触点で、2個の反応器出口アルキレンオキサイド濃度(CAO1T及びCAO2T)が決定され(工程1036)、この接触点でZ*の対応する値(Z1T*及びZ2T*)が決定される(工程1036)。Z1T*及びZ2T*を得るために、工程1030からのZ1*、Z2*及びZ3*の値の間で内挿することが必要であろう。アルキレンオキサイドの初期の選択された反応器出口濃度、CAO3について、反応温度及び総塩化物化有効度の最適値を、下記のようにして計算することができる。
(6) Topt=T1+[(T2−T1)/(CAO2T−CAO1T)]*(CAO3−CAO1T)(工程1038)
(7) Z*opt=ZIT*+[(Z2T*−Z1T*)/(CAO2T−CAO1T)]*(CAO3−CAO1T)(工程1040)
次いで、Topt及びZ*optを、図3の方法の工程1012におけるT1及びZ1*として使用することができる。
【0091】
本明細書中に記載された方法は、開ループ又は閉ループプロセスとして使用することができる。図1に示される閉ループシステムの一例において、反応器出口濃度分析器27、反応器供給物濃度分析器42、オレフィン供給物流量計40、気相プロモーター供給物流量計44及び正味生成物流量計52からのインプットを受け取る制御器26が設けられている。制御器26は、好ましくは、コンピュータ化制御システム内で実施され、CPU及びメモリー並びに最終的に制御バルブ30及び38を調節するために使用されるアウトプットも含む。受け取られたインプットに基づいて、制御器26は、反応器出口24中のアルキレンオキサイドのモルパーセント及び反応器供給物22のための総触媒塩化物化有効度(例えばZ*)を決定する。
【0092】
制御器26は、分析器42から反応器供給物流22中の塩素化炭化水素、例えば塩化エチル、塩化ビニル及び二塩化エチレンについての、そして反応器供給物流中のエチレン、エタン及び任意の他の非塩素化炭化水素の濃度についての濃度データも受け取る。次いで、この濃度データは、総触媒塩化物化有効度(例えばZ*)を計算するために使用される。制御器26は、また、反応器出口24中のアルキレンオキサイドのモル%(CAO)及び/又はアルキレンオキサイドの収率のためのユーザー入力設定点を受け取る。ユーザー入力設定点及び分析器24からのデータに基づいて、制御器26は、反応器出口24中のアルキレンオキサイドの濃度及び/又はアルキレンオキサイドの収率が、ユーザー入力設定点の予定の範囲内であるか否かを決定する。アルキレンオキサイド濃度及び/又は収率が、予定の範囲の外に落ちるとき、制御器26は、反応温度又は(Z*を変更するために)気相プロモーターの流速を、所望のアルキレンオキサイド濃度又は収率を得るように調節する。気相プロモーターの流速を調節するために、制御器26は、流量計44から流量データを受け取り、制御バルブ38を操作して、流量を制御する、気相プロモーター流量制御器36の設定点をリセットする。反応温度を調節するために、制御器26は、反応温度制御器34の設定点を調節する。反応温度制御器34は、反応器サーモカップルから温度信号を受け取り、冷却液流量制御器32(又は沸騰水冷却システムの場合に、流ドラム圧力制御器)の設定点をリセットするアウトプットを出す。冷却液流量制御器32は、流量計31から冷却液流量データを受け取り、冷却液制御バルブ30を調節して、冷却液流速を変更し、温度変更を実施する。
【0093】
図1に示されるように、反応器供給物22中のオレフィン濃度を調節するために、分析器制御器50も設けることができる。例示的例において、分析器制御器50は、反応器供給物22中のオレフィンの量を示す、分析器42からの組成データを受け取る。分析器制御器50(これは、反応器供給物流22中のオレフィン濃度のためのユーザー入力設定点を有してよい)は、次いで、流量計40から流量データを受け取り、制御バルブ12を操作して、新しいオレフィン供給物の流量を制御する、流量制御器51の設定点をリセットする。分析器制御器19は、反応器供給物22中の酸素の量を示す、分析器42(又は別の分析器)からの組成データを受け取る。次いで分析器制御器19は、酸素流量計21からデータを受け取る酸素流量制御器17(これは空気流量制御器であってよい)の設定点をリセットする。制御器17、19、32、34、36及び50は、アナログ又はディジタルであってよく、コンピュータ化分配制御システム内で実行することができる。示された制御スキームは単に例示であり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0094】
本明細書中で使用された方法は、コンピュータ読み取り可能な媒体、例えば磁気ディスク又は制御器26により使用するためのコンピュータハードドライブ上に記憶された一組のコンピュータ読み取り可能な使用説明書中で具体化することができる。制御器26は、多数の方法で実施することができるが、コンピュータ制御システムの使用が好ましい。
【実施例】
【0095】
実施例1
この実施例は、反応温度を変更することなく、エチレンオキサイドの所望の濃度を得るための、総触媒塩化物化有効度の調節を示す。55.2gの重量の高効率レニウム促進銀触媒のサンプル70ccを、研究室オートクレーブ反応器内で作動させる。始動供給物組成は、O27.0モル%、C2430.0モル%、塩化エチル2.8ppmv、C260.60モル%、CO21.0モル%及びN2残りである。始動反応温度は235℃であり、圧力は2006kPa(絶対)である。全反応器入口供給ガス流量は、7.82標準l/min(0℃及び1気圧基準)である。
【0096】
総触媒塩化物化有効度Z*は、下記の式を使用して計算する。
(8) Z*=[塩化エチル(ppmv)]/[(0.01×C24モル%+C26モル%)]
【0097】
試験の第5日から第9日まで、塩化エチルの供給濃度を、全ての他の反応条件を一定に保持したまま、1.8ppmvと3.2ppmvとの間で変化させる。その結果、Z*は、2.0から3.5まで変化する。図4は、それぞれの条件で定常状態に到達した後の、触媒効率(選択率)対エチレンオキサイド反応器出口濃度(上の曲線)及びZ*対エチレンオキサイド反応器出口濃度(下の曲線)を示す。点Aは、曲線の一次導関数(勾配)が約−3%効率/%アルキレンオキサイドである(これは、約2.05モル%の反応器出口エチレンオキサイド濃度について、温度とZ*との最適な組合せを表すと考えられる)、効率対エチレンオキサイド濃度曲線上の点を表す。エチレンオキサイドの出口濃度が(特定の反応温度でZ*を調節することによって)変化するとき、この効率は、上の曲線に従って変化するであろう。上の破線によって示されるように、約1.93モル%のエチレンオキサイド出口濃度で、温度とZ*との最適な組合せが、約86.0%の効率をもたらすであろう。しかしながら、1.93モル%のエチレンオキサイド濃度を達成するために、反応温度を変更することなく、Z*を2.1に調節する場合、実際の効率は、約85.7%で、僅かに約0.3%の損失(最適値からの偏差)であろう。同様に、約2.24モル%の選択されたエチレンオキサイド出口濃度で、Z*と温度との最適な組合せが、約84.9%の効率になるであろう。しかしながら、CAOを2.24モル%に調節するために、反応温度を変更することなく、Z*を3.4に変更する場合、実際の効率は、約84.7%で、僅かに約0.2%の損失(最適値からの偏差)であろう。従って、この実施例において、温度を調節することなく、そして0.3%ポイントよりも大きい効率ペナルティを招くことなく、エチレンオキサイド生産性を調節するために、Z*を使用することができ、反応温度を変更することなく、そして効率における如何なる実質的な損失も無しに、Z*を調節することによって、エチレンオキサイド製造速度を調節し、維持できることを示している。
【0098】
実施例2
この実施例は、第17日〜第21日で、継続した運転の後の、前記の実施例中に記載したプロセスの運転を示す。この実施例において、反応温度は245℃であり、実施例1に記載した全ての他の反応条件を一定に保持しながら、塩化エチルの入口濃度を、2.3ppmvから3.6ppmvまで変える。得られるデータを、表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に示すように、塩化エチル濃度を2.3ppmvから3.6ppmvまで調節することによって、Z*が2.6から4.0まで変化し、エチレンオキサイド出口濃度が2.14モル%から2.45モル%まで増加する。効率(選択率)は、Z*における変化に対して比較的鈍感であり、僅かに0.3%ポイントほど変わる。従って、選択されたプロセス条件で、反応温度を調節することなく、そして効率を著しく犠牲にすることなく、Z*を使用して、エチレンオキサイド出口濃度を調節することができる。
【0101】
実施例3
この実施例は、老化した触媒についてエチレンオキサイド生産性を調節するためにZ*又はTを調節する方法の適用性を例示する。エチレン、酸素及び塩化エチレンを、約330日間老化させた高効率レニウム促進銀触媒上で、245℃の温度で反応させる。この触媒は、29.4重量%のAgを含有しており、下記の特性、即ち、
表面積 0.88m2/g
全細孔体積 0.566cc/g
水吸収 53.1%
を有するα−アルミナ担体上で、Cs1000ppm、Re504ppm、SO4195ppm及びMn41ppmの目標配合で調製される。
【0102】
29.5mmの内径を有する管型反応器に、この触媒の7.62mの深さ(4081.8g)まで充填する。供給組成物は、O27.0モル%、C2430.0モル%、CO23.0モル%及びC260.15モル%である。反応器圧力は2100kPa(絶対)であり、時間基準の気体空間速度は4700時-1である。塩化エチル濃度を変化させて、3.5、4.4及び5.3のZ*値を得、エチレンオキサイド出口濃度及び対応する効率が決定される。観察されたデータ点が、図5において「x」で示され、図5に示される放物線を得るための二次方程式に適合される。図5における点Aは、曲線の一次導関数(勾配)が約−3%効率/モル%アルキレンオキサイドである、効率対エチレンオキサイド濃度曲線上の点を表す。示したデータ点についての触媒老化は、第331日〜第335日の範囲である。図5が示すように、エチレンオキサイド出口濃度を1.7モル%から2.1モル%まで調節するために、Z*を約4から約5.3まで変えることによって、約0.3%ポイント以下ほど(上の破線によって示されるように)最適値から偏差している効率がもたらされる。
【0103】
実施例4
この実施例は、寿命の半ばの触媒について、Z*を一定に保持しながら、エチレンオキサイド出口濃度を調節するための反応温度の使用を例示する。30〜50メッシュサイズの高効率レニウム促進銀触媒を、0.75gの量で、3.05mm(内径)ステンレススチール管型反応器の中に入れる。O2(8.8モル%)、C24(34.3モル%)、塩化エチル(5.9ppmv)、C26(0.61モル%)、CO2(1.5モル%)及び残りのN2からなる供給ガスを、反応器に供給する。反応器圧力は1406kPa(絶対)であり、供給混合物流量は、158標準cc/分(0℃及び1気圧基準)である。対応する総触媒塩化物化有効度、Z*は6.1である。図6は、第107日で、反応温度を約245℃から約250℃まで上昇させる前の数日間及び後の数日間の、モル%での出口エチレンオキサイド濃度の関数としての毎日平均効率を示す。破線群は、約−3%効率/モル%エチレンオキサイドの勾配を有しており、線の間の垂直空間は、約0.3%ポイントの効率(選択率)損失を表す。
【0104】
図6に示されるように、出口エチレンオキサイド濃度は、温度における変化に対応して、約1.33モル%から約1.55モル%まで変化し、効率は、約88.5%から約88.0%まで変化している。従って、この実施例は、反応温度を変更して、総触媒塩化物化有効度パラメーター、Z*を変更することなく、効率における顕著な損失を招くことなく、所望のアルキレンオキサイド出口濃度を得ることができることを示している。
【0105】
実施例5
前記のように、本明細書中に記載された方法で使用することができるアルキレンオキサイド製造パラメーターは、酸素転化率を含む。この実施例は、所望の酸素転化率値を達成するための、一定温度での総触媒塩化物化有効度(Z*)の調節を例示する。
【0106】
この実施例に従って、プロモーターとして、セシウム、ナトリウム、リチウム、レニウム、硫酸塩及びマンガン化合物を使用して、α−アルミナ担持銀触媒が調製される。この触媒のサンプルを、反応器出口気体の一部分が、新しい供給物成分の添加の後で、反応器入口に戻し再循環されるように構成された管型反応器に装入される。反応器を始動し、触媒を、プロセス条件の範囲内で、最初の24日間作動させる。反応器出口からの再循環のために、複数のCl含有種が供給物流中に存在し得るので、総触媒塩化物化有効度Z*は、下記の式:
【0107】
(9) Z*=(ECL+2×EDC+VCL)/(C26+0.01×C24
[式中、ECL、EDC及びVCLは、それぞれ、反応器供給物流中の、塩化エチル、二塩化エチレン及び塩化ビニルのppmvでの濃度であり、C26及びC24は、それぞれ、反応器供給物流中の、エタン及びエチレンのモル%での濃度である]
を使用して計算される。
【0108】
運転の第25日と第30日との間で、下記の条件、即ちエチレン35.0モル%、酸素8.5モル%、二酸化炭素1.1モル%、エタン0.6モル%の入口供給物濃度;230.0℃の入口冷却液温度;2140kPa絶対(295psig)の入口圧力及び5100(時-1)の時間基準の気体空間速度が維持される。第25日に、総触媒塩化物化有効度値Z*は2.9である。観察された効率は23.0%の酸素転化率で88.4%である。
【0109】
続く3日間の運転に亘って、酸素転化率は22.3%まで低下する。従って、23.0%の目標酸素転化率を取り戻すために、塩化エチルの供給速度が、第29日について、総触媒塩化物化有効度値Z*を3.1にまで増加させるように調節される。この変更の結果、酸素転化率は23.2%まで上昇し、効率は88.3%である。
【0110】
前記の説明は、本発明の方法及びシステムの代表的態様を例示し、説明するために示した。これは、包括的であること及び本発明を開示された任意の明確な形に限定することを意図しない。本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができること及び均等物で本発明の要素を置換できることが、当業者によって理解されるであろう。更に、本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、多くの修正を行うことができる。従って、本発明は、本発明を実施するために意図された最善の方式として開示された特定の態様に限定されないこと及び本発明は特許請求の範囲の範囲内に入る全ての態様を含むことが意図される。本発明は、その精神又は範囲から逸脱することなく詳細に説明され、例示されたもの以外の他の方法で実施することができる。本発明の範囲は専ら特許請求の範囲の記載によって限定される
以下に本発明の関連態様を記載する。
態様1.アルキレン、酸素及び少なくとも1種の有機塩化物を含む供給ガスを、高効率銀触媒上で反応させて、アルキレンオキサイドを含む反応生成物を生成させることによって、アルキレンオキサイドを製造する方法であって、
初期総触媒塩化物化有効度値及び初期反応温度でプロセスを操作してアルキレンオキサイド製造パラメーターの初期値を生じせしめ;
アルキレンオキサイド製造パラメーターの所望の値を選択し;そして
総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲内の総触媒塩化物化有効度及び反応温度の選択された範囲内の反応温度から選択された一方を、総触媒塩化物化有効度及び反応温度の他方を実質的に一定値に維持しながら、所望のアルキレンオキサイド製造パラメーターをもたらすように調節する
ことを含んでなる方法。
態様2.前記調節工程が、総触媒塩化物化有効度値を実質的に初期総触媒塩化物化有効度値に維持しながら、反応温度を、反応温度の選択された範囲内で調節することを含む態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様3.前記調節工程が、反応温度を実質的に初期反応温度に維持しながら、総触媒塩化物化有効度値を、総塩化物化有効度値の選択された範囲内で調節することを含む態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様4.総触媒塩化物化有効度が総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲内であり、反応温度が反応温度の選択された範囲内であり、そして総塩化物化有効度が、実質的に一定の温度、実質的に一定の反応器入口アルキレン濃度及び実質的に固定されたプロセス条件で変更されるとき、前記方法が、関数に従って、反応生成物中のアルキレンオキサイドの濃度と共に変化するアルキレンオキサイドの方に向かう効率を有し、この関数の勾配が、1%効率/モル%アルキレンオキサイドから−8%効率/モル%アルキレンオキサイドまでの範囲である態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様5.前記方法が反応温度及び反応生成物中のアルキレンオキサイド濃度の両方と共に変化する最適効率を有し、総触媒塩化物化有効度が総触媒塩化物化有効度値の選択された範囲内であり、そして反応温度が反応温度の選択された範囲内であるとき、総触媒塩化物化有効度及び反応温度から選択された一方を調節する工程が、最適効率から0.5%以下だけ変化する、アルキレンオキサイドへの効率をもたらす、態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様6.前記最適効率が実質的に一定の反応器入口アルキレン濃度及び実質的に固定されたプロセス条件での最適効率である態様5に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様7.前記アルキレンオキサイド製造パラメーターがアルキレンオキサイド濃度、アルキレンオキサイド収率、アルキレンオキサイド製造速度、アルキレンオキサイド製造速度/触媒体積、アルキレン転化率及び酸素転化率からなる群から選択される態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様8.前記総触媒塩化物化有効度が、式:
*=[塩化エチル当量(ppmv)]/[エタン当量(モル%)]
(式中、塩化エチル当量は、供給ガス中の少なくとも1種の有機塩化物の濃度で、実質的に同じの、供給ガス中の少なくとも1種の有機塩化物の触媒塩化物化有効度を与える塩化エチルのppmvでの全濃度であり、そして
エタン当量は、供給ガス中の非塩化物含有炭化水素の濃度で、供給ガス中の非塩化物含有炭化水素と実質的に同じ脱塩化物化有効度を与えるエタンのモル%での全濃度である)によって表される態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様9.前記少なくとも1種の有機塩化物が塩化エチル、二塩化エチレン及び塩化ビニルからなる群から選択され、塩化エチル当量が下記式:
塩化エチル当量(ppmv)=ECL+2EDC+VCL
(式中、ECLはppmvでの供給ガス中の塩化エチルの濃度であり、EDCはppmvでの供給ガス中の二塩化エチレンの濃度であり、そしてVCLはppmvでの供給ガス中の塩化ビニルの濃度である)
を有する態様8に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様10.供給ガス中の非塩化物含有炭化水素がエチレン及びエタンからなる群から選択された少なくとも1種を含み、エタン当量が下記の式:
エタン当量(モル%)=C26+0.01C24
(式中、C26はモル%での供給ガス中のエタンの濃度であり、そして
24はモル%での供給ガス中のエチレンの濃度である)
を有する態様8に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様11.Z*の選択された範囲が1〜20である態様8に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様12.総触媒塩化物化有効度及び反応温度から選択された一方を調節する工程が2.0以下ほどZ*を調節することを含む態様8に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様13.総触媒塩化物化有効度及び反応温度から選択された一方を調節する工程が、10℃以下ほど反応温度を調節することを含む態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様14.前記アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドであり、そしてこのアルキレンがエチレンである態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様15.少なくとも1種の有機塩化物が塩化エチル、塩化メチル、二塩化エチレン、塩化ビニル及びこれらの混合物からなる群から選択される態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様16.初期反応温度及び初期総触媒塩化物化有効度が効率、触媒活性及び反応生成物中のアルキレンオキサイド濃度からなる群から選択された1個又はそれ以上の変数に基づく、総触媒塩化物化有効度及び反応温度の最適化された組合せを含む態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様17.初期総触媒塩化物化有効度が、初期反応温度及び初期アルキレンオキサイド製造パラメーターで、アルキレンオキサイドの方に向かう最大効率をもたらすように選択される態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様18.前記方法が、更に、初期アルキレンオキサイド製造パラメーター値を選択する工程並びに選択された初期アルキレンオキサイド製造パラメーター値で、アルキレンオキサイドへの最大効率を得るように、初期反応温度及び初期総触媒塩化物化有効度値を選択する工程を含む態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様19.総塩化物化有効度及び反応温度から選択された少なくとも一方が変更されるとき、この方法が、固定された反応器入口アルキレン濃度及び固定されたプロセス条件で、反応温度及び総塩化物化有効度のアルキレンオキサイド効率最大化組合せを有し、最大化効率が、直線関係に従って反応生成物中のアルキレンオキサイドの濃度と共に変化し、この直線関係が、−1アルキレンオキサイドの方に向かう%効率/モル%アルキレンオキサイドから−5アルキレンオキサイドの方に向かう%効率/モル%アルキレンオキサイドまでの範囲の勾配を有し、そしてこの調節工程が、0.5%以下である量ほど、直線関係によって規定される効率から変化する、アルキレンオキサイドへの効率をもたらす態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
態様20.高効率銀触媒がレニウムプロモーターを含有する態様1に記載のアルキレンオキサイドの製造方法。
図1
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図3
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図5
図6
図7A
図7B
図7C