(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756160
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】ロールコータ
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20150709BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20150709BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20150709BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D3/12 F
B05D7/24 301J
B05C1/02 102
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-236790(P2013-236790)
(22)【出願日】2013年11月15日
(62)【分割の表示】特願2013-502889(P2013-502889)の分割
【原出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-30826(P2014-30826A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2014年1月21日
(31)【優先権主張番号】61/320,634
(32)【優先日】2010年4月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512244716
【氏名又は名称】アドヴェニラ エンタープライジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】リャボーヴァ,エルミラ
【審査官】
岸 進
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−126799(JP,A)
【文献】
特開2005−283849(JP,A)
【文献】
特開平10−180174(JP,A)
【文献】
特開2000−126660(JP,A)
【文献】
特開平10−137705(JP,A)
【文献】
特開2004−275860(JP,A)
【文献】
特開2001−070866(JP,A)
【文献】
特開2001−293410(JP,A)
【文献】
特開平08−276147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
B05C 1/00− 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールコータを用いて基板上に膜を形成する方法であって、
アプリケータロールと計測ロールとにより形成される空隙に、ゾルゲル前駆体を含むコーティング液を供給することと、
前記アプリケータロール上に前記コーティング液の層を形成することと、
前記コーティング液の層の少なくとも一部分を前記アプリケータロールから前記基板上に移送することにより、前記基板上に前記膜を形成することと、
余剰液を受容器に受け取ることと、
位相干渉の生成を通じて前記余剰液に超音波エネルギーを与えることにより、再循環ループ内で前記余剰液を処理することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記余剰液は、前記コーティング液を供給すること、前記コーティング液の層を形成すること、または、前記コーティング液の層の少なくとも前記一部分を移送すること、のうちの1つのステップの間に前記ゾルゲル前駆体の重合により生成される重合核を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記余剰液に前記超音波エネルギーを与えることは、前記余剰液中の前記ゾルゲル前駆体の重合を反転させ、前記余剰液の粘度を下げる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記超音波エネルギーを与えることは、前記超音波エネルギーを第1の周波数で与えることと、前記超音波エネルギーを前記第1の周波数と異なる第2の周波数で与えることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理された余剰液は、前記空隙に供給された前記コーティング液の一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理された余剰液は、重合核および粒子状物質を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記再循環ループ内で前記余剰液を処理することは、前記処理された余剰液の温度を下げることにより、前記処理された余剰液が前記再循環ループ内で重合しないようにすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記再循環ループ内で前記余剰液を処理することは、前記処理された余剰液の温度を前記空隙内の前記コーティング液の温度まで下げることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記再循環ループ内で前記余剰液を処理することは、前記処理された余剰液を濾過することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
超音波エネルギーは、前記余剰液の粘度および流速に基づいて選択される1以上の周波数で前記余剰液に与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基板上の前記膜を硬化させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記膜を硬化させることは、熱処理、紫外線照射、または赤外線照射のうちの1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゾルゲル前駆体は、非ニュートン性ゾルゲル前駆体溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティング液は、層流を用いて前記空隙に供給され、それにより前記コーティング液中の前記ゾルゲル前駆体の重合を抑える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティング液の層の少なくとも前記一部分を前記アプリケータロールから前記基板上へ移送することは、駆動ロールを使って、前記駆動ロールと前記アプリケータロールの間の空隙を基板が通過するように前記基板を送ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記駆動ロールと前記アプリケータロールは、反対方向に回転する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記駆動ロールと前記アプリケータロールは、同じ方向に回転する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ロールコータを用いて基板上に膜を形成する方法であって、
前記ロールコータの作動中に生成される余剰液を受け取り、位相干渉の生成を通じて前記余剰液に超音波エネルギーを与えることにより、再循環ループ内で前記余剰液を処理することを含み、
前記余剰液はゾルゲル前駆体を含む、方法。
【請求項19】
前記余剰液は、前記ロールコータの作動中に生成される重合核の少なくとも1つを含み、前記処理された余剰液は、重合核を実質的に含まない、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第35条119(e)項に基づいて、2010年4月2日に出願された米国特許仮出願整理番号第61/320,634号の利益を主張し、本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
ガラス、金属、プラスチックシートまたはホイルを含むが、これに限定されない、複数の基板上にナノコンポジット薄膜およびコーティングを堆積する方法およびロールコータシステムを開示する。
【背景技術】
【0003】
様々な組成物の二元および三元金属−非金属化合物が、種々の目的のために薄膜として広く使用されている。たとえば、Y
2O
3、ZrO
2、YZO、HfO
2、YHO、Al
2O
3、AlO
2、ZnO、AZO、ITO、SiC、Si
3N
4、SixCyNz、SixOyNz、TiO
2、CdS、ZnS、Zn
2SnO
4、SiO
2、WO
3、CeO
3などを含むが、これに限定されない、二元および三元金属−非金属化合物は、透明伝導性酸化物(TCO)電極、不動態膜、裏面電界層、アップコンバータおよびダウンコンバータ、選択的エミッタマスク、イオン貯蔵、固体電解質、防湿層、耐摩耗層、断熱層、インピーダンス補正層、表面改質などの様々な目的に役立つ複数層の積層膜の薄膜コーティングまたは層として堆積されてきた。
【0004】
これらの材料の堆積を提供する多くの方法が知られている。それらの方法は、PVD、CVD、ALD、MBEなどの真空技法、および電気メッキ、CBD、スクリーン印刷などの非真空技法の2つの分類に分けることができる。真空技法は、資本支出、運転費用および消耗品費が高い。非真空技法は、資本支出および廃棄物処理費用が高く、多くの面で非常に制限されている。
【0005】
ゾルゲルを使用により、前述に代わる手段を提供する。ゾルゲル前駆体は、正確な化学量論およびドーピングで超高純度の連続薄膜を形成するために、重合に耐える独自の能力を有し、それによって微細構造工学およびインターフェース工学の手段を提供する。現在ゾルゲルは、主に光学レンズなどの小型の塗布、または移植および血管ステントなどの生物医学デバイスに使用されている。ゾルゲル前駆体溶液は、通常ディップコーティング、スピンコーティングまたはスプレーコーティングにより、レンズまたは生物医学デバイスに塗布される。ロールコータは、非ニュートン流体を使用して、動的濡れ線を形成および持続することが困難なため、大型のゾルゲルに基づく薄膜の堆積への使用は成功したことがない。
【0006】
当技術分野において公知の、ロールコータの設計が多く存在する。しかし大部分は、こうした設計は、ゾルゲル前駆体を使用した多くの重要な薄膜の工業用の堆積ができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、硬軟の両方とも、ナノコンポジット薄膜の純度、化学量論、形態論および厚さの均一性について妥協することなく、大型の平坦基板上に単一層または複数層の積層部材として、前述の二元、三元および他の化合物を提供できる、システムおよび方法が必要とされている。
【0008】
材料の損失が最小でゾルゲル前駆体を有効に使用することができる、ロールコータの提供がさらに必要とされている。
【0009】
また、ゾルゲル前駆体溶液とともに使用する、アプリケータロールなどのロールコータ構成要素の予防保全を提供する手段も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、ゾルゲル前駆体および特に非ニュートン流体のゾルゲル前駆体を利用するように設計されたロールコータを使用する、薄膜堆積の従来の方法に関連した、1つまたは複数の上述の問題および他の問題を実質的に取り除く方法およびシステムを対象とする。
【0011】
一態様では、ロールコータは、
(1)ロールの回転軸が互いに平行であり、計測ロールとアプリケーションロールとの間に空隙を生成するように配置される、計測ロールとアプリケーションロールと、
(2)計測ロールとアプリケーションロールとの間の空隙と流体連通する貯蔵器と、
(3)ロールコータの作動中に生成された廃液を受け取るように配置された受容器と
(4)前記受容器から廃液を移送するための導管と、
(5)廃液の中に超音波エネルギーを与えるように配置された1つまたは複数の超音波変換器と、を備える。場合によっては、廃液は、変換器ならびに任意選択的な濾過装置および温度制御装置によって、再調整されたコーティング溶液、たとえば実質的に粒子状物質がなく、ロールコータまたは他の塗布において再利用可能な、再調整されたゾルゲル前駆体溶液に変換される。
【0012】
さらに別の実施形態では、ロールコータは、アプリケータロールおよび/または計測ロールを可逆的に係合する、清掃装置を備える予防保全装置を含む。清掃装置の係合表面は、アプリケータロールまたは計測ロールの表面に係合できるようにする形状を有する。その表面は、アプリケータロールまたは計測ロールの外径と同じ、またはわずかに大きい内径を有する、円柱の角度のある部分の内部に合うことが好ましい。係合表面は、導管によって溶媒源に連結された1つまたは複数のすすぎポート、およびアプリケータロールの表面から溶媒および残渣を除去するために、低圧力源に連結された少なくとも1つの呼気ポートを有する。また固定ブラシおよび回転ブラシなどのブラシも、ロール表面からの残渣の除去を容易にするために使用することができる。
【0013】
別の態様では、ロールコーティングチャンバは、閉鎖系または半閉鎖系であり、温度を含むロールコータの環境、外部汚染への露出およびチャンバ内の気体の特性は制御される。ロールコーティングチャンバは、基板をリールトゥーリール用途などにおけるコーティングチャンバ内に含むことができる場合には、完全に閉鎖することができる。しかし、コーティングチャンバより大きい固体基板を使用する場合は、チャンバに入出する基板の入口および出口を提供するように対策を施さなければならない。基板の断面よりわずかに大きいポートの入口ポートおよび出口ポートは、外側からの汚染を最小にするように、好ましくはコーティングチャンバ内の正圧と組み合わせて使用することができる。
【0014】
また再循環ループも、好ましくは閉鎖系であり、廃コーティング液の温度、圧力、濾過および層流を、調節および/または維持することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、コーティング溶液の使用を最大にし、堆積された薄膜内の欠陥の形成を最小にするように、ロールコーティングチャンバおよび再循環ループの両方の環境が制御される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】他の構成部品の中でとりわけ、熱安定ジャケット、撹拌器を備える再循環ループ、濾過デバイスおよび温度制御ゾーンならびに予防保全デバイスを備えるロールコーティングチャンバを含む、完全に閉鎖したロールコーティングシステムの概略図である。
【
図2】廃ゾルゲル液を処理するために再循環ループおよび超音波変換器を利用する、開示された実施形態の1つによる、ロールコータの概略図である。
【
図3】
図2におけるコーティングチャンバの作動する構成部品を示す概略図である。
【
図4】コーティングチャンバの外壁をわかりやすくするために除去した、ロールコーティングチャンバの代替的実施形態の移動する構成部品の三次元図である。
【
図5】薄層が基板の底面側に塗布される、
図4において説明した実施形態の代替的実施形態を示す図である。
【
図6】予防保全モジュールを含む、さらなる実施形態を示す図である。
【
図7】
図6で説明する、予防保全装置の代替的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
個別で、またはその他の実施形態と組み合わせて使用できる、いくつかの開示された実施形態がある。第1の実施形態は、再循環ループを伴うロールコータと呼ばれることがある。ロールコータを形成する廃コーティング材料は、たとえば1つまたは複数の超音波変換器、および任意選択的に濾過装置および/または温度制御装置を含む撹拌装置内で処理されて、実質的に重合核および粒子状物質がない、再調整されたゾルゲル前駆体溶液などの再調整されたコーティング溶液を生成し、これをロールコータ内で再利用するために貯蔵器に戻すことができる。
【0018】
第2の実施形態は、ロールコータ内のアプリケータロールおよび/または計測ロール(使用する場合)を清掃するように設計された、清掃装置を備えたロールコータである。
I.ロールコータシステム
【0019】
図1は、完全に閉鎖したロールコータシステム2の概略図である。システムはコーティングチャンバ4、熱安定ジャケット6、撹拌デバイス8、濾過デバイス10および熱交換機12を含む。その一部または全部が再循環ループを作り出す、これらのデバイスの相互関係を、以下に説明する。
【0020】
加えて、システムは、コーティングチャンバから下流に配置されたモジュール14を含むことができ、コーティングチャンバは、たとえば薄膜で被覆された基板をさらに処理するために使用することができる。このような工程は、重合を開始するまたはさらに重合すること、および薄膜の乾燥を開始するまたはさらに乾燥するための、熱処理ならびに/または紫外線および/もしくは赤外線の放射を含む。
【0021】
システムの別の任意選択の構成部品は、予防保全(PM)装置16を含む。この装置は、コーティングチャンバ4内のアプリケータおよび/または計測に係合するように設計され、作動中に構築される残渣および他の物質を除去し、除去されなかった場合は、薄膜内に欠陥の形成を生じる可能性がある。以下により詳細に論じる。
【0022】
システムの他の構成部品は、それぞれでコーディンブ溶液を準備し、ロールコートに計量して提供することができる、混合チャンバ18および用量チャンバ20を含むことができる。
【0023】
システム全体は、壁22ならびに底壁および上壁(図示せず)によって閉鎖される。適切なアクセスポート(図示せず)は、作動および保全のためのアクセスを可能にするために配置される。
I.ロールコータ再循環ループ
【0024】
ゾルゲル前駆体溶液および特に非ニュートン流体のゾルゲル前駆体溶液(たとえば膨張溶液)などの一部のコーティング溶液は、ロールコーティング工程中に操作された結果として重合を始める。ロールコータからの廃液は、したがってゾルゲル前駆体、重合核および場合によっては粒子状物質を含む可能性がある。こうした廃液は、欠陥が回避され、化学量論が維持される必要がある、高度に重要な塗布においては有用ではない。このような廃液の廃棄を回避するために、開示されたロールコータは、重合反応を反転するために廃液の中に超音波エネルギーを与えるように、超音波変換器などの電磁変換器を利用する。フィルタは、あらゆる残余粒子状物質を除去するために、変換器組立体から下流の廃液の流れの中で任意選択的に利用することができる。加えて、温度制御装置は、あらゆるさらなる重合の開始を防止するように、流体の流れの温度を下げるために、変換器から下流に任意選択的に配置することができる。基本的に、廃液は、ロールコータにより同じ工程で再循環ループを経由して再利用することができる、再調整されたゾルゲル前駆体流れに変換される。代替的に、再調整されたゾルゲル前駆体は、他の塗布に使用することができる。
【0025】
図2は、廃ゾルゲル液を処理するために、再循環ループおよび超音波変換器を利用する実施形態の1つによる、ロールコータの概略図である。コーティングチャンバ4、貯蔵器24、撹拌チャンバ26、および任意選択の温度制御装置28の、4つの主要構成部品が存在する。貯蔵器24は、導管26および蠕動ポンプ28を経由して、コーティングチャンバ4に流体連結される。コーティングチャンバ4は、導管30および蠕動ポンプ32を経由して、撹拌チャンバ26に流体連結される。同様に、撹拌デバイス26は、導管34および蠕動ポンプ36を経由して、任意の温度制御装置28および貯蔵器24に流体連結される。導管は、乱流流れを最小にするために、好ましくは、平滑な内部表面を導管内に提供するテフロン(商標)もしくは他のプラスチックから作成、または被覆される。蠕動ポンプも、乱流を最小にするために使用される。
【0026】
撹拌デバイス26は、枠40によって支持される複数の撹拌デバイス38を含む。好ましい実施形態では、撹拌器は、電気エネルギーを圧力エネルギーに変換する変換機である。このような変換器の例には、約20kHz〜約200MHz、より好ましくは約2MHz〜約200MHzで作動する超音波変換器が含まれる。しかし20kHz未満の周波数も使用することができる。したがって、周波数の範囲は、1Hz、10Hz、100Hz、1kHz、10kHzまたは20kHzのいずれか1つ程度の低さから、100kHz、200kHz、500kHz、1MHz、10MHz、100MHz、および200MHzのいずれか1つ程度の高さまでが可能である。変換器は、Olympus(http://www.olympus−ims.com/en/probes/)、Omega(http://www.omega.com)およびUPCORT(http://www.upcorp.com)を含む多数の供給業者から入手することができる。
【0027】
廃液に変換されるエネルギーの浸透は、周波数ならびに変換器によって発生される電力の選択に依存する。周波数および電力の選択は、内径、導管壁の厚さおよび構成を含む導管の物理的寸法、ならびに導管内の廃コーティング溶液の粘度および速度に依存する。廃溶液にエネルギーを与えるために、多くの場合、2つ以上および6個または8個もの異なる周波数が、撹拌デバイス26を通過して廃コーティング溶液の全容積を通る必要がある場合がある。変換器は、導管の表面と直接接触できるか、または導管の表面の数ミリメートル内に配置することができる。
【0028】
したがって、一部の実施形態では、2つ以上の変換器(たとえば、超音波変換器)は、第1の周波数で作動し、位相干渉(たとえば、超音波位相干渉)を廃液内に生成するために配置される。他の実施形態では、2つ以上の追加の超音波変換器が使用される。追加の変換器は、異なる第2の周波数で作動し、超音波位相干渉などの位相干渉を廃液内に生成するために配置される。
【0029】
作動中、ゾルゲル前駆体溶液などのコーティング溶液は、貯蔵器24内に配置される。次いで蠕動ポンプ28が、コーティング溶液をコーティングチャンバ4に移送する。その機能については以下により詳細に説明する。コーティングチャンバ4内で生成された廃液は、導管30および蠕動ポンプ32を経由して除去され、撹拌デバイス26に移送される。撹拌デバイス8内の超音波変換器38は、導管30から運ばれた廃液に超音波エネルギーを与える。このエネルギーは、コーティング工程中に誘発された重合を逆転させる。こうして処理された流体は、次いで任意選択の温度制御装置28に移送され、一実施形態では、蠕動ポンプ36および導管34を経由して貯蔵器24に移送される。
【0030】
温度制御装置28は、任意選択であるが、超音波または他の電気機械エネルギーに曝されると、流出液温度を上昇させる、撹拌デバイス26からの流出液温度を制御するために存在することが好ましい。温度制御装置28は、貯蔵器24に戻る流出液が、貯蔵器内に存在するコーティング溶液と同じ温度またはほぼ同じ温度であるように、温度を下げることが好ましい。
【0031】
フィルタデバイス(図示せず)も、粒子状物質を除去するために使用されてもよい。フィルタは、撹拌デバイス26と温度制御装置28との間、温度制御装置28と貯蔵器24との間、または両方に配置することができる。
【0032】
変換器38は、同じ周波数または異なる周波数で作動することができる。たとえば、変換器38Aは、1Hz〜100kHz、より好ましくは10Hz〜100kHz、最も好ましくは100Hz〜100kHzの周波数で作動することができる。一方、超音波変換器24Bは、1〜500Hz、より好ましくは10〜500Hz、最も好ましくは100〜500Hzなどの異なる周波数で作動することができる。2つの異なる周波数が
図2に示されているが、多数の異なる周波数が、この実施形態に使用することができることを理解されたい。
【0033】
代替的実施形態では、撹拌デバイス28および任意選択の温度制御装置28ならびに粒子状濾過デバイス(複数可)からの流出液を、コーティングチャンバ4および貯蔵器24を連結する再循環ループから迂回させ、貯蔵器24以外の受容器内に収集することができる。別々に分離された場合、このような再調整されたコーティング溶液は、同じまたは異なる塗布に使用することができる。
【0034】
図3は、
図1および
図2において、コーティングチャンバ4が作動する構成部品を示す概略図である。作動する構成部品は、存在する場合、駆動ロール50、アプリケータロール52、計測ロール54、コーティングチャンバ4の外壁56、導管26、および基板58からなる。実際には、駆動ロール50は、基板58を左に付勢するために示されたように、反時計回りに回転する。アプリケータロール52および計測ロール54も、反時計回りに回転し、それによって逆方向ロールコータとして作動する。コーティング流体(図示せず)は、貯蔵器24から蠕動ポンプ28を経由して導管26を通過する。コーティング流体は、アプリケータロール52と計測ロール54との間に堆積する。アプリケータロール52と計測ロール54との間の空隙Gの幅(図示せず)は、剪断テンソル(τ
i,j)、回転速度(V)およびキャピラリー数(Ca)とともに、基板58上に堆積した層の厚さに比例する、アプリケーションロール上に堆積した近似の膜の厚さ(H)を決定する。Hは、τ
i,j×G×Ca×Vにほぼ等しい。アプリケータロール上の膜の厚さ(H)は、基板58上に堆積した膜の厚さを決定する。
【0035】
図3では逆方向ロールコータとして作動するように示されているが、アプリケータロール52または計測ロール54の回転方向は、順方向ロールコータ塗布を構成するように逆転することができる。
【0036】
図4は、ロールコーティングチャンバ内で移動する構成要素の三次元図である。
図4では、コーティングチャンバの外壁は、明確にするために除去されている。駆動ロール50は、基板58の下に配置され、示された方向に基板58を移動させるように作用する。アプリケータロール52および計測ロール54も示されている。アプリケータロールは、長手軸60を中心に回転する。計測ロールは、長手軸62を中心に回転する。
【0037】
図5は、
図4で説明した実施形態の代替的実施形態を示し、コーティング材料の薄層は、基板58の底面側に塗布される。示されたように、駆動ローラ70は、基板58の上に配置され、基板58と係合して基板を示された方向に移動させる。アプリケータロール72および計測ロール74は、基板38の下に配置され、コーティング材料の薄膜を塗布するように、アプリケータロール72は基板58の下側表面に係合するように配置される。
図4と同じく、アプリケータロール72と計測ロール74との間に空隙が存在する。マニホールド76は、貯蔵器24と流体連通する中空内部を有する。このマニホールドは、計測ロール74を覆って湾曲し、開口78で終了する。開口78はアプリケータロール72と計測ロール74との間の接触面でコーティング溶液の補充を提供する。
【0038】
図4および5において、コーティング溶液がアプリケータロールと計測ロールとの間に配置されると、コーティング溶液はロール間の空隙(図示せず)を充填し、作動中にアプリケータロールは、コーティングの薄膜を基板58の表面に塗布する。しかし、コーティング溶液も、ローラの縁部に、次いで重力によって再循環ループの一部である廃物受容器の中に流れる。
III.予防保全モジュールを備えるロールコータ
【0039】
図6は、予防保全モジュールを含む、さらなる実施形態を示す。予防保全モジュールが、多くの実施形態に必要とされるのは、場合によって様々なコーティング溶液が、アプリケータロール82および/または計測ロール84の表面を汚染する可能性がある、粒子の中に沈殿および/または重合する可能性があるという事実に起因する。これらのローラの表面に生成された欠陥は、基板上に堆積した実際の薄層に深刻な影響を与える可能性がある。したがって、主要なアプリケータロール82の表面を処理して、基板38上に均一で実質的に欠陥のない薄膜の堆積を容易にするために、定期的な保全が必要である。そのために、コーティングチャンバ4の外壁86は、アプリケータロール82の一部を清掃装置90に露出するために、可逆的に開閉するチャンバ蓋88を有する。清掃装置90は、
図6に断面図が示されており、この場合、アプリケータロール82の上部に係合および係脱するように、(この実施形態に示されたように下方および上方に)移動可能である。清掃装置90は、アプリケーションロール82の表面に一致する寸法を有する係合表面を有する。清掃装置90は、係合表面上に配置された複数のすすぎ穴92および複数の吸引穴94を含む。すすぎ穴および吸引穴は、
図6に示したように交互になることが好ましい。一部の実施形態では、複数の固定ブラシ96が、清掃装置90の係合表面に配置され、すすぎ穴92と吸引穴94との間に配置される。このようなブラシは、プラスチックからなり、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる。
【0040】
実際には、アプリケータロール82が予防保全を必要とするときに、チャンバ蓋88が開き、清掃装置90がアプリケータロール82と接触するように移動する。この係合の前に、ダミー基板100が駆動ローラ80とアプリケータロール82との間に挿入される。ローラの回転の係合の開始前、または開始時に、駆動ロール、アプリケータロールおよび計測ロールの回転、およびダミー基板の移動と同時に、溶剤がすすぎ穴92を通って押し出される。陰圧を吸引穴94に継続的または断続的のいずれかで加えて、すすぎ穴を通って塗布された溶剤、およびアプリケータロール82または計測ロール84の表面から除去されたあらゆる材料を除去することができる。好ましい実施形態では、予防保全を実行するために使用する好ましい溶剤は、薄膜層の製造中に使用するコーティング溶液内で使用される溶剤と同じである。
【0041】
保守後、清掃装置90は除去され、チャンバ蓋88が閉まり、ダミー基板90が除去される。
【0042】
ほどんどの実施形態では、好ましくは係合表面上に交互にある、複数のすすぎポートおよび吸引ポートが存在する。清掃装置の本体内の断面で見ると、このようなポートは、断面が円形、または長方形もしくは他の細長い断面を有する細長いものとすることができる。清掃装置の表面では、すすぎポートおよび吸引ポートの表面は、アプリケータロールの屈曲に係合するために、適切な形状を有するように修正される。アプリケータロールの表面と係合すると、細長いポートは、係合表面の全長にわたって、すなわちアプリケータロールの回転軸に平行に、延在することができる。係合すると、アプリケータロールの一部の表面全体は、単一の細長いポートからの溶剤ですすがれる。アプリケータロールがその軸を中心に回転するにつれて、表面のさらなる部分が溶剤ですすがれる。回転中、ブラシ96は粒子状物質を係脱する助けとなる。
【0043】
図7は、
図6の予防保全モジュールの代替的実施形態を示す。この実施形態では、清掃装置の係合表面は、好ましくは、すすぎポートと吸引ポートとの間に配置された、複数の回転ブラシ98を含み、複数の回転ブラシ98はアプリケータロールの表面と直接係合する。これらのブラシは、好ましくは電気機械ブラシである。このような電気機械ブラシは、アプリケータロールの回転軸に平行な回転軸を有する、細長いブラシとすることができる。ブラシは、清掃装置の係合中、アプリケータロールの回転と同じ方向、または反対方向に回転することができる。同じ方向に回転すると、ブラシおよびアプリケータロールは、逆回転ロールコータと同様の方法で作動し、それによってアプリケータロールの表面で研磨環境を生成する。反対方向に回転すると、ブラシが、アプリケータロールの表面で研磨環境を生成する速度で回転することが好ましい。すなわち、回転するアプリケータロールとブラシロールの直線速度は異なる。このようなブラシは、好ましくはPTFEから作成される。一部の実施形態では、ブラシが移動可能であり、それによってロールの表面上にブラシによって加えられる圧力の調節が可能になる。
【0044】
一部の実施形態では、電荷をブラシに加えて、反対の電荷の残渣を引き付けることができる。このような実施形態では、2つ以上のブラシを使用し、正電荷または負電荷が1つのブラシに加えられる一方で、反対の電荷が他方に加えられることが好ましい。この実施形態では、ブラシは、電気的伝導性複合材料のPTFEからなることが好ましい。
【0045】
上記の記述は、アプリケータロールを清掃するために設計された予防保全モジュールを対象とするが、このようなモジュールは、計測ロールおよび駆動ロールなどの他のロールに係合するように容易に修正できる。
【0046】
一部の実施形態では、計測ロールおよびアプリケータロールを同時に清掃して、清掃されるときに、他方のロールの残渣で一方のロールが汚染されることを防止することが好ましい。