【実施例】
【0031】
1.方法
1.1 研究設計およびDNA試料収集
INFORM−1試験に登録された慢性C型肝炎(CHC)患者に対して、IL28B多型に関する遺伝子型分析を行った。INFORM−1試験の目的は、CHCの現在の標準治療(SOC)であるペグ化されたインターフェロンまたはリバビリンを伴わない、2つの実験的直接作用性抗ウイルス剤(DAA)の組み合わせが、安全に投与可能であり、そして耐性の発生なしに有意な抗ウイルス活性を提供可能であることを立証することであった。研究薬剤は、HCV NS5B RNAポリメラーゼの阻害剤であるシトシンヌクレオシド類似体β−D−2’−デオキシ−2’−フルオロ−2’−C−メチルシチジンのジイソブチルエステルプロドラッグ、RG7128(RO5024048としてもまた知られる)、およびHCV NS3/4Aプロテアーゼの大環状ペプチド擬似体阻害剤であるダノプレビル(RG7227、RO5190591およびITMN−191としてもまた知られる)からなった。どちらもHCVに対して、強力なin vitroおよびin vivo活性を有し、そして本研究時、どちらの化合物も第I相開発中であった。
【0032】
INFORM−1は、第1b期の無作為化二重盲検プラセボ対照用量増大試験であった。適格な患者は、慢性的な遺伝子型1のHCV感染を伴い、肝硬変を伴わず、かつ10
5IU/mLの最小ベースラインHCV RNA(Roche Taqmanアッセイ)を伴う、子どもを設ける可能性がない(non−child−bearing potential)18〜65歳の間の男性および女性であった。研究には、SOC治療未経験、治療失敗(TF)、およびヌル応答者の患者が含まれた。治療未経験は、CHCに関して、インターフェロンに基づく治療措置を受けたことがない、と定義した;治療失敗(非ヌル)は、再発患者(SOCを受けている間、HCV RNAが検出限界未満であったが、療法中断後に再発した患者)または部分的応答者(以前のSOCに際して、治療12週後、少なくとも2 log
10単位のHCV RNA減少を示したが、HCV RNAが常に血中で検出可能なままであった患者)のいずれか、と定義した。ヌル応答者は、1ヶ月でHCV RNAの1 log
10単位未満の減少および/または先のSOC療法の12週後に2log
10未満の減少を示した。登録された患者を、表1にしたがって研究治療またはプラセボのいずれかに無作為化した。コホートB〜Gは、13日間の実験的療法を受けた。すべてのコホートが有意なウイルス負荷減少を示したが、コホートC、D、F、およびGは、研究薬剤の最高の用量を投与され、そして同等の曝露を受けた。これらのコホートはまた、ウイルス負荷の同様の減少も示した。
【0033】
【表1】
【0034】
研究治療完了に際して、患者は治療中の医師の裁量で、SOC治療の開始を許された。
【0035】
COBAS TaqMan HCVアッセイ、バージョン2(Roche Molecular Systems)を用いて、定量下限43IU/mLおよび検出下限15IU/mLで、血漿HCV RNAレベルを測定した。スクリーニング時、ベースライン時、および治療時に研究薬剤投与終了まで複数回、ならびに追跡調査90日間に渡って、HCV RNAレベルを測定した。
【0036】
研究設計のさらなる詳細、包含および排除基準、ならびにこれらの試験の一次結果は、別の場所で公表する。
【0037】
遺伝的分析に参加することに同意した患者から遺伝的分析のための血液試料を収集し、Roche試料リポジトリに保存した。Roche試料リポジトリでDNAを抽出し、そして50ng/μLに規準化した。
【0038】
1.2 データ分析
14日間、異なる用量の併用療法を受けた53人の患者(37人の治療未経験者、8人のSOCに対する部分的応答者/再発者である以前の治療失敗患者、および8人のSOCに対するヌル応答者)を研究した。未経験患者を、治療薬の投薬量およびスケジューリングが異なる4つの治療コホートに無作為化した。IL28B遺伝子および上流領域の部分を直接配列決定することによって、rs28416813、rs12979860、およびrs8103142遺伝子座の遺伝子型を決定した。インターフェロン不使用療法の13日間、ならびに続くSOCの4週および12週後のウイルス動態プロファイルを、遺伝子型によって比較した。分析目的のため、最低投薬量コホート(B)は考慮しなかった。
【0039】
2.結果
53人のINFORM 1患者すべてに関して、rs12979860遺伝子型の全頻度は、CC−28.3%、CT−58.5%、およびTT−13.2%であった。CC遺伝子型頻度は、高用量コホートの間で同様であった(n=45)(表2)。rs28416813およびrs8103142に関する遺伝子型結果は、rs12979860に関するものと本質的に同一であった。
【0040】
【表2】
【0041】
ウイルス動態における相違(研究した患者の数が少数であったため、統計的に有意ではない)を、患者をrs12979860遺伝子型によって層別化した際、IFN不使用治療13日間に渡って観察した。
【0042】
同等の用量の研究薬剤を投与された患者に関して(
図1、表3)、rs12979860のCC遺伝子型を保有する患者は、療法14日後、他の遺伝子型よりも、およそ0.5 log10単位の平均ウイルス負荷減少を示し、そして応答分布は、非CC遺伝子型患者に比較して、シフトする。
【0043】
【表3】
【0044】
遺伝子型によるウイルス動態の相違は、研究薬剤の最高用量を投与された患者において、最も容易に観察された(
図2)。
【0045】
これらのデータは、IL28B遺伝子型は、C型肝炎のためのインターフェロン不使用治療を受けている患者において、早期ウイルス動態に影響を及ぼす可能性があるが、インターフェロン含有治療に関するよりも低い度合いであるようであることを示唆する。この観察は、IL28B遺伝子型情報が、内因性インターフェロン応答性を反映するという仮説と一致する。IL28B遺伝子型情報は、インターフェロン不使用およびインターフェロン含有措置の両方に関して、薬剤、投薬量、または期間に関して、CHC治療の選択を通知しうる。
【0046】
本明細書に開示し、特許請求の範囲に記載した組成物および/または方法はすべて、本開示を踏まえると、過度の実験を伴わずに、作製および実行可能である。好ましい態様に関して本発明の組成物および方法を記載してきたが、当業者には、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書記載の組成物および/または方法に対して、そして方法の工程において、または工程の順序において、変動を適用してもよいことが明らかであろう。当業者には明らかな、すべてのそのような類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の精神、範囲および概念内にあると見なされる。
【0047】
参考文献
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