特許第5756178号(P5756178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756178
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】エポキシ構造接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20150709BHJP
   C08G 59/28 20060101ALI20150709BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20150709BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20150709BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150709BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20150709BHJP
   C09J 163/04 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C08G59/28
   C09J4/02
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J163/02
   C09J163/04
【請求項の数】3
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-524082(P2013-524082)
(86)(22)【出願日】2011年7月19日
(65)【公表番号】特表2013-535561(P2013-535561A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】US2011044414
(87)【国際公開番号】WO2012021258
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年7月1日
(31)【優先権主張番号】61/372,304
(32)【優先日】2010年8月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エー.クロップ
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−516844(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/089410(WO,A1)
【文献】 特開2000−336333(JP,A)
【文献】 特開2007−009075(JP,A)
【文献】 特開2000−309625(JP,A)
【文献】 特開2009−018265(JP,A)
【文献】 特開2010−138400(JP,A)
【文献】 特表2012−517503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08G 59/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
(a1)第1エポキシ樹脂と、
(a2)第2エポキシ樹脂と、
を含む、エポキシ樹脂成分であって、ここで、前記第2エポキシ樹脂がポリウレタン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、エポキシ樹脂成分と;
(b)アミン1モル当量につき少なくとも50グラムのアミン当量を有する第1アミン硬化剤と;
(c)アミン1モル当量につき45グラム以下のアミン当量を有する第2アミン硬化剤と;
(d)アセトアセトキシ官能性化合物と;
(e)金属塩触媒と;
(f)多官能性アクリレートと;
を含む、接着剤。
【請求項2】
前記接着剤が2成分を含み、
(a)第1成分は、
(i)前記アセトアセトキシ官能性化合物と、
(ii)前記多官能性アクリレートと、
(iii)少なくとも一部の前記エポキシ樹脂成分と、
を含み、
(b)第2成分は、
(i)前記第1アミン硬化剤と、
(ii)前記第2アミン硬化剤と、
(iii)前記金属塩触媒と、
を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
2液型接着剤の第1成分を収容する第1チャンバと、前記2液型接着剤の第2成分を収容する第2チャンバと、混合用先端部と、を含む、接着剤ディスペンサーであって、前記第1成分及び前記第2成分が前記混合用先端部を通じて流れるように、前記第1チャンバ及び前記第2チャンバが前記混合用先端部に連結され、前記第1成分は、エポキシ樹脂、ポリウレタン変性又はイソシアネート変性エポキシ樹脂、多官能性アクリレート、及びアセトアセトキシ官能性化合物を含み、前記第2成分は、アミン1モル当量につき少なくとも50gのアミン当量を有する第1のアミン硬化剤、アミン1モル当量につき45g以下のアミン当量を有する第2アミン硬化剤、及び金属塩触媒を含む、接着剤ディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチック基材に対し良好な付着性を示す、臭気が少なく、迅速に反応する2液型エポキシ構造接着剤などの、2液型エポキシ構造接着剤に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
簡潔に述べると、本開示は一態様において、第1エポキシ樹脂と、第2エポキシ樹脂と、を含む、エポキシ樹脂成分と、アミン1モル当量につき少なくとも50グラムの当量を有する第1アミン硬化剤と、アミン1モル当量につき45グラム以下の当量の第2アミン硬化剤と、アセトアセトキシ官能性化合物と、金属塩触媒と、多官能性アクリレートと、を含む接着剤を提供する。
【0003】
一部の実施形態では、第1エポキシ樹脂は、一般式:
【0004】
【化1】
【0005】
(式中、Rは1以上の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族炭化水素基を含み、場合によりRは隣り合う炭化水素基の間に少なくとも1個のエーテル結合を更に含み、nは1よりも大きい整数である)を有する。一部の実施形態では、第1エポキシ樹脂は、ビスフェノール−Aのグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのグリシジルエーテル、又はノボラックのグリシジルエーテルを含む。
【0006】
一部の実施形態では、第2エポキシ樹脂は、ポリウレタン変性エポキシ樹脂である。一部の実施形態では、第2エポキシ樹脂は、イソシアネート変性エポキシ樹脂である。一部の実施形態では、エポキシ樹脂成分は第3エポキシ樹脂を含み、第3エポキシ樹脂は、少なくとも1つのエポキシ系反応性希釈剤を含む。一部の実施形態では、第3エポキシ樹脂は、例えば、6.5時間未満の時間で、第3エポキシ樹脂と接触させたままにした場合に、プラスチック基材の膨潤又は溶解により測定されるものとして、例えば、ポリカーボネート(PC)及び/又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)といったプラスチック基材に対し高親和性を示す。
【0007】
一部の実施形態では、第1アミン硬化剤の当量は、アミン1モル当量につき少なくとも55グラムである。一部の実施形態では、第2アミン硬化剤の当量は、アミン1モル当量につき40グラム以下である。一部の実施形態では、低当量アミン硬化剤と高当量アミン硬化剤の相対量は、低当量及び高当量アミン硬化剤の合計重量の少なくとも25重量%を低当量のアミン硬化剤が構成するように選択される。例えば一部の実施形態では、低当量アミン硬化剤及び高当量アミン硬化剤の相対量は、低当量及び高当量アミン硬化剤の合計重量の30〜60重量%(30及び60重量%を含む)を低当量アミン硬化剤が構成するように選択される。
【0008】
一部の実施形態では、少なくとも一方のアミン硬化剤、一部の実施形態では、両方のアミン硬化剤が、式:
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R、R、及びRは独立して、水素、1〜15個の炭素原子を有する炭化水素、及び1〜15個の炭素原子を有するポリエーテルから選択され、Rは1〜15個の炭素原子を有する炭化水素、又は1〜15個の炭素原子を有するポリエーテルを表し、nは2〜10である)を有する。
【0011】
一部の実施形態では、アセトアセトキシ官能性化合物は、一般式:
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、xは1〜10の整数であり、YはO、S又はNHを表し、R6は直鎖、分枝鎖及び環状アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ポリエーテル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、R6は炭素原子を介しYに結合し、R7は1〜12個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖又は環状アルキルである)を有する。一部の実施形態では、多官能性アクリレートとアセトアセトキシ官能性化合物は、合わせて接着剤の少なくとも11重量%を構成する。一部の実施形態では、多官能性アクリレートとアセトアセトキシ官能性化合物の比は、多官能性アクリレート80重量部:アセトアセトキシ官能性化合物20重量部〜多官能性アクリレート20重量部:アセトアセトキシ官能性化合物80重量部の範囲である。
【0014】
一部の実施形態では、金属塩触媒はカルシウムトリフラートを含む。一部の実施形態では、接着剤は組成物の総重量に対して0.3〜1.5重量%の触媒を含む。
【0015】
一部の実施形態では、接着剤は更に靭性付与剤(例えば、コア/シェル型ポリマー及び/又はブタジエン−ニトリルゴム)を含む。一部の実施形態では、接着剤は更に芳香族第3級アミンを含む。
【0016】
本開示の一部の態様では、接着剤は2つの成分を含む。第1成分は、アセトアセトキシ官能性化合物と、多官能性アクリレートと、少なくとも一部のエポキシ樹脂成分と、を含み、第2成分は、第1アミン硬化剤と、第2アミン硬化剤と、金属塩触媒と、を含む。一部の実施形態では、第2成分は更に一部のエポキシ樹脂成分を含む。一部の実施例では、第1成分は更に、少なくとも1つのエポキシ希釈剤を含む。
【0017】
一部の実施形態では、接着剤は、第1成分の総重量に基づいて少なくとも16重量%のアセトアセトキシ官能性化合物を含む。
【0018】
一部の実施形態では、25℃下でゲル化時間試験法に従って測定した場合に、接着剤のゲル化時間は、20分以下である。一部の実施形態では、23℃下で硬化させ、強度増加速度試験に従って測定した場合に、接着剤の30分以内の重なりせん断値は、少なくとも0.34MPaである。
【0019】
別の態様では、本開示は、2液型接着剤の第1成分を収容する第1チャンバと、2液型接着剤の第2成分を収容する第2チャンバと、混合用先端部とを含む接着剤ディスペンサーであって、第1成分及び第2成分が混合用先端部を通じて流れるように、第1チャンバ及び第2チャンバが混合用先端部に連結される、接着剤ディスペンサーを提供する。第1成分は、エポキシ樹脂と、ポリウレタン変性又はイソシアネート変性エポキシ樹脂と、多官能性アクリレートと、アセトアセトキシ官能性化合物と、を含み、一部の実施形態では、第1成分は更に少なくとも1つのエポキシ希釈剤を含む。第2成分は、アミン1モル当量につき少なくとも50グラムの当量のアミン第1硬化剤と、アミン1モル当量につき45グラム未満の当量のアミン第2硬化剤と、金属塩触媒と、を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの第1又は第2成分は、靭性付与剤(例えば、コア/シェル型ポリマー及び/又はブタジエン−ニトリルゴム)を更に含む。
【0020】
上記の本開示の概要は、本発明のそれぞれの実施形態を説明することを目的としたものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その説明文から、また特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
構造接着剤は多くの接着用途において有用である。例えば、構造接着剤は、溶接などの従来の接合技術、又はナットとボルト、ネジ、リベットなどの機械的締結具の使用に代わるものとして、あるいはこれらを補強するために使用することができる。
【0022】
一般に構造接着剤は、1液型接着剤と2液型接着剤という2つの大きな種類に分けることができる。1液型接着剤では、最終的な硬化接着剤を得るために必要な材料の全てを単一の組成物が含んでいる。このような接着剤は、典型的には、結合させようとする基材に適用され、高温に曝す(例えば、50℃超の温度)ことで接着剤を硬化させる。
【0023】
これに対して、2液型接着剤は2つの成分からなる。第1成分は一般に「ベース樹脂成分」と呼ばれ、例えば硬化性エポキシ樹脂などの硬化性樹脂を含む。第2成分は一般に「硬化促進剤成分」と呼ばれ、硬化剤及び触媒を含む。各種の他の添加剤が、一方又は両方の成分に含まれていてもよい。
【0024】
一般的に、2液型接着剤の2つの成分は、接着しようとする基材に塗布する前に混合される。混合後、2液型接着剤ゲルは所望の取り扱い強度に達し、最終的には所望の最終強度となる。2液型接着剤の中には、硬化させる、又は少なくとも所望の時間内に硬化させるうえで高温に曝さなければならないものがある。しかしながら、硬化させるうえで熱を必要とせず(例えば、室温硬化性接着剤)、なお耐剥離性、せん断抵抗及び耐衝撃性において優れた性能を与える構造接着剤が提供されることが望ましい場合がある。
【0025】
本明細書で使用するところの「ゲル化時間」とは、混合された成分がゲル化点に達するまでに要する時間のことを言う。本明細書で使用するところの「ゲル化点」とは、混合物の貯蔵弾性率がその損失弾性率を上回る点のことを言う。
【0026】
「取り扱い強度」とは、接着された部材を後の操作において接着を破壊させずに取り扱うことができる点にまで硬化する接着剤の能力のことを言う。必要とされる取り扱い強度は用途によって異なる。本明細書で使用するとき、「初期硬化時間」は、混合した成分の重なりせん断接着力が、一般的な取り扱い強度の目標値である0.34MPa(50psi)に達するまでに必要とされる時間を指す。一般的に、初期硬化時間はゲル化時間と相関している。すなわち、一般にゲル化時間が短いほど初期硬化時間が短い接着剤であることを示す。
【0027】
一般的に、構造接着剤の接着強度(例えば、剥離強度、重なりせん断強度、又は耐衝撃性)は、初期硬化時間をかなり過ぎても上昇し続ける。例えば、接着剤がその最終強度に達するには数時間、又は更には数日間かかる場合もある。
【0028】
例示的な2液型構造接着剤としては、アクリル、ポリウレタン、及びエポキシ化学成分に基づいたものがある。エポキシ系の2液型構造接着剤は、一般に、高温においても剥離強度及びせん断強度の点で高い性能を示す。一般的な硬化剤は、通常、アミン又はメルカプト官能性材料であり、これらの非常な様々な化合物がエポキシ硬化用に存在している。しかしながら、多くのアミン硬化性室温硬化性エポキシ系接着剤は硬化速度が比較的遅く、取り扱い強度に達するまでに数時間を要し得る。触媒、通常、第3級アミン、フェノール官能樹脂、及びある種の金属塩は、これらの硬化を促進し得る。それでもなお、エポキシ接着剤の室温での初期硬化時間は、通常、アクリル接着剤の初期硬化時間よりも大幅に長い。
【0029】
エポキシ樹脂に関しては、他にも、特定の基材、特にプラスチック基材に対する付着性が制限されるという不便がある。通常、プラスチックはアクリル系接着剤を用いて結合されるが、アクリル酸は強い臭気を発する場合があり、硬化は酸素により阻害されるため、これは結果として多孔質基材では硬化阻害を引き起こす。
【0030】
迅速に硬化し、熱可塑性プラスチックの加工に際し高い付着強度をもたらすエポキシ樹脂接着剤が、いまだに必要とされている。一部の実施形態では、本開示は、迅速に硬化し、室温でも硬化可能である2液型エポキシ接着剤を提供する。一部の実施形態では、このような接着剤は、迅速に取り扱い強度をもたらしつつも、プラスチックに対する優れた接着特性を維持する。一部の実施形態では、これらの接着剤は0.5mm(20ミル)までの接着剤の接着厚さにおいて30分未満の室温ゲル化時間及び初期硬化時間を与えるものである。一部の実施形態では、接着剤の臭気は少なく、メルカプタン官能性を含まないことから、特定の用途に望ましいものであり得る。
【0031】
一般的に、本開示の接着剤は、エポキシ樹脂成分と、高当量のアミン硬化剤と、低当量のアミン硬化剤と、アセトアセトキシ官能性化合物と、金属塩触媒と、多官能性アクリレートと、を含む。エポキシ樹脂成分は、第1エポキシ樹脂と、第2エポキシ樹脂と、を含み、第2エポキシ樹脂は、ポリウレタン変性若しくはイソシアネート変性エポキシ樹脂である。一部の実施形態では、エポキシ樹脂成分は、別のエポキシ樹脂も含み得る。一部の実施形態では、エポキシ樹脂成分は、更に第3エポキシ樹脂も含み、第3エポキシ樹脂は少なくとも1つのエポキシ系反応性希釈剤を含む。
【0032】
第1エポキシ樹脂。本開示の組成物中で、第1エポキシ樹脂として有用な例示的なエポキシ樹脂は、グリシジルエーテル型である。有用な樹脂としては、一般式(I):
【0033】
【化4】
【0034】
(式中、
Rは1つ以上の脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族炭化水素基を含み、場合により、Rは隣り合う炭化水素基の間に少なくとも1個のエーテル結合を更に含み、
nは1よりも大きい整数である)を有するものが挙げられる。
【0035】
一般的に、nはグリシジルエーテル基の数であり、接着剤中に存在する、式Iの少なくとも1つの第1エポキシ樹脂に関しては1超でなければならない。一部の実施形態では、nは2〜4(2及び4を含む)である。
【0036】
例示的な第1エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、及びノボラック樹脂のグリシジルエーテルと、これに加え脂肪族又は脂環式ジオールのグリシジルエーテルが挙げられる。市販のグリシジルエーテルの例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、商品名EPON 828、EPON 1001、EPON 1310及びEPON 1510でHexion Specialty Chemicals GmbH(Rosbach、Germany)から入手可能なもの、商品名D.E.R.でDow Chemical Co.から入手可能なもの(例えば、D.E.R.331、332、及び334)、大日本インキ化学工業から商品名EPICLONで入手可能なもの(例えば、EPICLON 840及び850)並びに商品名YL−980で日本エポキシ樹脂株式会社(Japan Epoxy Resins Co., Ltd.)から入手可能なもの)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、商品名EPICLONで大日本インキ化学工業から入手可能なもの(例えば、EPICLON 830))、ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル(例えば、商品名D.E.N.でDow Chemical Co.(例えば、D.E.N.425、431、及び438)から入手可能なノボラック型エポキシ樹脂)、並びに難燃剤エポキシ樹脂(例えば、Dow Chemical Co.から入手可能な、臭化ビスフェノール系エポキシ樹脂、D.E.R.580)が挙げられる。一部の実施形態では、二価フェノールを過剰量のエピクロロヒドリンと反応させることにより調製されたものなどの芳香族グリシジルエーテルが好ましい場合がある。
【0037】
一部の実施形態では、第1エポキシ樹脂の分子量は少なくとも170g/モルであり、例えば、少なくとも200g/モルである。一部の実施形態では、第1エポキシ樹脂の分子量は10,000g/モル以下であり、例えば、3,000g/モル以下である。一部の実施形態では、第1エポキシ樹脂のエポキシ当量は少なくとも50g/モルであり、一部の実施形態では、少なくとも100g/モルである。一部の実施形態では、第1エポキシ樹脂のエポキシ当量は500g/モル以下であり、一部の実施形態では、400g/モル以下である。
【0038】
本明細書で使用するとき、語句「組成物の総重量」は、両成分、すなわちベース樹脂成分と硬化促進剤成分、の合計重量を指す。
【0039】
第2エポキシ樹脂。一般的に、第2エポキシ樹脂は、ポリウレタン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。イソシアネートが直接エポキシと反応する場合には、イソシアネート変性エポキシ樹脂はオキサゾリジン官能性を有し、イソシアネートが、エポキシ分子中に存在する第2ヒドロキシル基と反応する場合にはウレイド官能性を有する。本開示の組成物において、第2エポキシ樹脂として有用なイソシアネート又はポリウレタン変性エポキシ樹脂の例としては、商品名EPU−17T−6、EPU−78−11、及びEPU−1761で株式会社アデカから入手可能なもの、商品名DER 6508でDow Chemical Co.から入手可能なもの、商品名AER 4152でAsahi Denkaから入手可能なものが挙げられる。本発明者らは、本開示の組成物内で、概して、ポリウレタン−及び/又はイソシアネート変性エポキシが、ABS及びポリ塩化ビニル(PVC)などのプラスチックに対する付着性を改善することを発見した。
【0040】
一般的に、エポキシ樹脂成分は、限定するものではないが、2つ以上の第1エポキシ樹脂及び/又は2つ以上の第2エポキシ樹脂などの、別のエポキシ樹脂を含み得る。一部の実施形態では、エポキシ樹脂成分は第3エポキシ樹脂を含み、第3エポキシ樹脂は少なくとも1つのエポキシ系反応性希釈剤を含む。
【0041】
エポキシ系反応性希釈剤。例えば、粘度を低減させるために及び濡れ性を改善するために、エポキシ系反応性希釈剤として、モノエポキシ化合物及び二官能性/多官能性エポキシ化合物を添加してもよい。エポキシド基が存在することで、反応希釈剤は他のエポキシ樹脂成分及び硬化剤と共に重合及び架橋に参加し得るようになり、ひいては希釈剤が共反応することで架橋ネットワークが得られる。好適な希釈剤は少なくとも1つの反応性末端部分、好ましくは飽和又は不飽和の環状骨格鎖を有し得る。例示的な反応性末端エーテル部分としては、グリシジルエーテルが挙げられる。第3エポキシ樹脂として本開示で有用な市販のエポキシ系反応希釈剤としては、精製p−t−ブチルグリシジルフェノール(商品名EP 509Sで株式会社アデカから入手可能)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(商品名ERISYS GE21でCVCから入手可能、及び商品名RD−2でCiba Product Corp.から入手可能)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名YED 216で日本エポキシ樹脂社から入手可能)、ジビニルベンゼンジオキシド、アロシメンジオキシド(allocimene dioxide)、モノビニルシクロヘキサンオキシド、エポキシペンチルエーテル、エポキシ化シクロヘキセニル化合物、リモネンジエポキシド、ビス(2,3−エポキシ−2−メチルプロピル)エーテル、アルキレングリコールの2,3−エポキシ−2−メチルプロピルエーテル、1,2−ビス(エポキシアルキル)シクロブタン、グリシジルグリシデート、3,4−エポキシヘキサヒドロベンジルグリシジルエーテル、C〜Cアルコールのグリシジルエーテル、オキシメチル−1,3−ジオザラングリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、及びオクチレンオキシドが挙げられる。
【0042】
一部の実施形態では、エポキシ系反応性希釈剤は、6.5時間以下の時間で、エポキシ系反応希釈剤と接触させたままにした場合に、プラスチック基材の膨潤又は溶解により測定されるものとして、1つ以上のプラスチック基材に対し高親和性を示す。一部の実施形態では、エポキシ系反応性希釈剤は、約5時間〜約6.5時間にわたってエポキシ系反応希釈剤と接触させたままにした場合に、プラスチック基材の膨潤又は溶解により測定されるものとして、1つ以上のプラスチック基材に対し高親和性を示す。例示的なプラスチック基材としては、PC、ABS、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、エポキシ系反応性希釈剤を添加することで、特定のプラスチック基材に対する接着剤の結合強さを改善することもできる。
【0043】
一部の実施形態では、本開示の組成物は、組成物の総重量に基づいて少なくとも20重量%、例えば、少なくとも25重量%、又は更に少なくとも30重量%のエポキシ樹脂成分を含む。一部の実施形態では、本開示の組成物は、組成物の総重量に基づいて90重量%以下、例えば、75重量%以下、又は更には60重量%以下のエポキシ成分を含む。
【0044】
アミン硬化剤好適な硬化剤は、エポキシ樹脂を架橋することが可能な化合物である。通常、これらの物質は第1級及び/又は第2級アミンである。アミンは脂肪族、脂環式、又は芳香族であってよい。一部の実施形態では、有用なアミン硬化剤としては、一般式(II):
【0045】
【化5】
【0046】
(式中、
、R、及びRは独立して、水素、炭素原子を1〜15個含有する炭化水素、及び炭素原子を最大で15個含有するポリエーテルであり、
は炭素原子を最大で1〜15個有する炭化水素、又は炭素原子を最大で15個含有するポリエーテルを表し、
nは包括的に2〜10である)を有するものが挙げられる。
【0047】
本開示の接着剤は少なくとも2種類のアミン硬化剤を含む。第1アミン硬化剤は、低当量のアミン硬化剤、すなわちアミン1モル当量につき45g以下のアミン当量を有するアミン硬化剤である。一部の実施形態では、低当量のアミン硬化剤は、アミン1モル当量につき40g以下、又は更には35g以下のアミン当量を有する。一部の実施形態では、2種類以上の低当量のアミン硬化剤を使用することができる。
【0048】
第2アミン硬化剤は、高当量のアミン硬化剤、すなわち当量1モルにつき少なくとも50gのアミン当量を有するアミン硬化剤である。一部の実施形態では、高当量のアミン硬化剤は、アミン1モル当量につき少なくとも55gのアミン当量を有する。一部の実施形態では、2種類以上の高当量のアミン硬化剤を使用することができる。
【0049】
例示的なアミン硬化剤としては、エチレンアミン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレン−ジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン(「TEPA」)、ヘキサエチレンヘプタミンなどが挙げられる。市販のアミン硬化剤としては、Air Products and Chemicals,Inc.よりANCAMINEの商品名で販売されるものがある。
【0050】
一部の実施形態では、アミン硬化剤の少なくとも1種類は、ポリプロピレンオキシド又はポリエチレンオキシドから誘導することが可能なポリエーテルアミンなどの1以上のアミン部分を有するポリエーテルアミンである。使用可能な好適なポリエーテルアミンとしては、HuntsmanよりJEFFAMINEの商品名で、及びAir Products and Chemicals,Inc.よりANCAMINEの商品名で販売されるものがある。
【0051】
一部の実施形態では、低当量及び高当量のアミン硬化剤の相対量は、低当量のアミン硬化剤が、低当量及び高当量のアミン硬化剤の合計重量の少なくとも25重量%、一部の実施形態では少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は更には少なくとも50重量%を構成するように選択される。一部の実施形態では、低当量のアミン硬化剤は、低当量及び高当量のアミン硬化剤の合計重量の30〜70重量%、一部の実施形態では30〜60重量%、又は更には約30〜50重量%を構成する。
【0052】
特に断りのない限り、本明細書で示す範囲は全て包括的なものであり、すなわち全ての範囲はその範囲の端点を含むものである。したがって、例えば30〜70重量%の範囲には30重量%、70重量%及びその間の全ての値(例えば、30.1重量%、40重量%及び69.9重量%)が含まれる。
【0053】
アセトアセトキシ官能性化合物アセトアセトキシ官能性化合物は、少なくとも1個のアセトアセトキシ基を、好ましくは末端位置に含む物質である。このような化合物としては、直鎖、分枝鎖及び環式アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、並びにポリエーテル、ポリエステル、又はこれらの組み合わせなどの炭化水素を担持している、アセトアセトキシ基が挙げられる。
【0054】
一般にアセトアセトキシ官能性化合物は、モノマー又は比較的低分子量のオリゴマーである。一部の実施形態では、オリゴマーは20個以下の繰り返し単位、一部の実施形態では10個以下、又は更には5個以下の繰り返し単位を含む。一部の実施形態では、アセトアセトキシ官能化オリゴマーは、10,000g/モル以下、例えば4,000g/モル以下、3000g/モル以下、又は更には1000g/モル以下の分子量を有する。一部の実施形態では、アセトアセトキシ官能性化合物は、少なくとも100g/モル、例えば少なくとも150g/モル、又は更には少なくとも200g/モルの分子量を有する。
【0055】
一部の実施形態では、アセトアセトキシ官能性化合物は一般式(III)を有する。
【0056】
【化6】
【0057】
式(III)中、
xは、1〜10の整数(例えば、1〜3の整数)であり、
Yは、O、S又はNHであり、
は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖又は環状アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなど)である。
【0058】
式(III)中、R6はポリオキシ基、ポリエステル−アルキル、−アリール、及び−アルキルアリール、並びに直鎖、分枝鎖、飽和及び不飽和アルキル−、アリール−、及びアルキルアリール基からなる基から選択され、R6は炭素原子を介しYに結合する。
【0059】
一般に、R6は直鎖又は分枝鎖である。一部の実施形態では、R6は2〜20個の炭素原子、例えば2〜10個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、R6は2〜20個の酸素原子、例えば2〜10個の酸素原子を含み得る。
【0060】
アセトアセトキシ官能性化合物は、例えばKing IndustriesからK−FLEX XM−B301として市販されている。
【0061】
本開示の組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも16重量%のアセトアセトキシ官能性化合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも17重量%、又は更に少なくとも18重量%のアセトアセトキシ官能性化合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、30重量%以下、例えば、25重量%以下、又は更には20重量%以下のアセトアセトキシ官能性化合物を含む。
【0062】
金属塩触媒好適な金属塩触媒としては、第1族の金属、第2族の金属及びランタノイドの塩が挙げられる。一部の実施形態では、第1族の金属カチオンはリチウムである。一部の実施形態では、第2族の金属カチオンはカルシウム又はマグネシウムである。一般にアニオンは、それらの水和物を含む、硝酸塩、ヨウ化物、チオシアネート、トリフラート、アルコキシド、過塩素酸塩、及びスルホン酸塩から選択される。一部の実施形態では、アニオンは硝酸塩又はトリフラートである。一部の実施形態では、金属塩触媒は、硝酸ランタン、ランタントリフラート、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硝酸カルシウム、カルシウムトリフラート、及びこれらの対応する水和物からなる群から選択される。
【0063】
一般に、触媒量の塩が用いられる。一部の実施形態では、組成物は組成物の総重量に対して少なくとも0.1重量%、例えば少なくとも0.5重量%、又は更には少なくとも0.8重量%の触媒を含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて2重量%以下の、例えば、1.5重量%以下、又は更には1.1重量%以下の触媒を含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて0.2〜2重量%の、例えば、0.3〜1.5重量%、又は更には0.8〜1.1重量%の触媒を含む。
【0064】
多官能性アクリレート。多官能性アクリレートとしては、2つ以上のアクリレート官能基を含む化合物が挙げられる。アクリレートは、エポキシとアミンの場合よりも迅速な反応であるマイケル反応により、2液型エポキシ系の硬化促進剤成分中のアミンと反応する。ゲル化時間を短縮させるのに有用な例示的な多官能性アクリレートとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、商品名M−CUREでSartomerから入手可能な多官能性アクリル樹脂のブレンド、及び、商品名EPON 8111でHexionから入手可能な、ビスフェノールAエポキシ樹脂との、様々な濃度のブレンドとして入手可能な、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)が挙げられる。
【0065】
一部の実施形態では、多官能性アクリレートとアセトアセトキシ官能性化合物は、合わせて接着剤の少なくとも11重量%を構成する。一部の実施形態では、多官能性アクリレートとアセトアセトキシ官能性化合物の比は、多官能性アクリレート80重量部:アセトアセトキシ官能性化合物20重量部〜多官能性アクリレート20重量部:アセトアセトキシ官能性化合物80重量部の範囲である。
【0066】
一部の実施形態では、本開示の接着剤組成物は、迅速な硬化時間と、PC、ABS、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、及びこれらの組み合わせなどのプラスチック基材に対する良好な付着性を必要とする結合用途で使用され得る。
【0067】
本開示の接着剤組成物は、広範な更なる必要に応じて用いられる成分を含んでもよい。例示的かつ非限定的な必要に応じて用いられる添加剤としては、以下のものが挙げられる。
【0068】
靱性付与剤靱性付与剤は、硬化したエポキシ樹脂の靱性を高めることが可能なポリマーである。靭性は硬化した組成物の剥離強度によって測定することができる。一般的な靱性付与剤としては、コア/シェル型ポリマー、ブタジエン−ニトリルゴム、並びにアクリルポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0069】
一部の実施形態では、靱性付与剤はコア/シェル型ポリマーである。一部の実施形態では、コアは例えばガラス転移温度が0℃よりも低いエラストマーなどのエラストマーでありうる。一部の実施形態では、ブタジエンポリマー若しくはコポリマー(例えば、ブタジエン−スチレンコポリマー)、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、アクリレートポリマー若しくはコポリマー、又はこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、コアのポリマー又はコポリマーは架橋されてもよい。
【0070】
一般にシェルは、コア上にグラフトされた1以上のポリマーからなる。一部の実施形態では、シェルポリマーは高いガラス転移温度、すなわち26℃よりも高いガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、動的熱機械分析(DMTA)(Polymer Chemistry,The Basic Concepts,Paul C.Hiemenz,Marcel Dekker 1984)によって測定することができる。
【0071】
例示的なコア/シェル型ポリマー及びその調製法については、例えば米国特許第4,778,851号に述べられている。市販のコア/シェル型ポリマーとしては、Rohm & Haas Company(米国、フィラデルフィア)より販売されるPARALOID EXL 2600及びKaneka(ベルギー)より販売されるKANE ACE MX120が挙げられる。
【0072】
一部の実施形態では、コア/シェル型ポリマーは少なくとも10nm、例えば少なくとも150nmの平均粒径を有する。一部の実施形態では、コア/シェル型ポリマーは1,000nm以下、例えば500nm以下の平均粒径を有する。
【0073】
一部の実施形態では、コア/シェル型ポリマーは全組成物の重量に対して少なくとも5重量%、例えば少なくとも7重量%の量で存在し得る。一部の実施形態では、コア/シェル型ポリマーは全組成物の重量に対して50重量%以下、例えば30重量%以下、例えば15重量%以下の量で存在し得る。
【0074】
一部の実施形態では、組成物は更に、二次触媒を含んでもよい。例示的な二次触媒としては、イミダゾール、イミダゾール塩、及びイミダゾリンが挙げられる。式(IV)の構造を有するものなどの芳香族第3級アミンを、二次硬化剤として使用することもできる。
【0075】
【化7】
【0076】
(式中、R8は、水素又はアルキル基であり、R9、R10、及びR11は、独立して水素又はCHNR12R13であり(ただしR9、R10、及びR11の少なくとも1つはCHNR12R13である)、R12及びR13は独立してアルキル基である。)一部の実施形態では、R8、R12、及び/又はR13は、メチル又はエチル基である。例示的な二次硬化剤の1つとして、Air Products ChemicalsよりANCAMINE K54として販売されるトリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノールがある。
【0077】
他の添加剤としては、接着促進剤、腐食防止剤及びレオロジー調整剤が挙げられ得る。例示的な添加剤としては、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、リン酸塩、モリブデン酸塩、ヒュームドシリカ、ベントナイト又はウォラストナイトなどの粘土、有機粘土、アルミニウム三水和物、中空ガラスマイクロスフェア、中空ポリマーマイクロスフェア、シランカップリング剤、及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0078】
顔料としては、酸化第二鉄、れんが粉、カーボンブラック、酸化チタンなどを含む無機又は有機顔料を挙げることができる。
【実施例】
【0079】
試験方法
ゲル化時間の試験方法。直径25mmのプレートを0.5mm間隔で配置した平行プレートを用い、ARES LS2レオメーター(TA Instruments)により、25℃下でのゲル化時間を測定した。測定は5%の歪みから始めて、1Hzのダイナミックモードで行なった。自動張力及び自動歪み設定を使用して、測定の間の間隔及びトルクを調節した。試料を下側のプレートに直接適用した後、間隔を設定して、30秒以内に試験を開始した。クロスオーバー点、すなわち貯蔵弾性率(G’)の値が損失弾性率(G”)の値を上回る点に達するまでの時間を、ゲル化時間として記録した。
【0080】
重なりせん断接着力の試験方法。複数種の異なる材料の幅2.5cm×長さ10.2cm(1インチ×4インチ)の試験パネルを用い、重なりせん断接着力を評価した。各パネルの接着面を、3M SCOTCH−BRITE No.86研磨パッド(緑色)を用い軽く研磨した後、イソプロピルアルコールで拭って研磨くずを全て取り除いた。次いで接着剤のビードを、試験パネルの一端に沿って、端部から約6.4mm(0.25インチ)の位置に塗布した。パネルの長さに沿ってパネルの面同士を互いに接合して、概ね長さ1.3cm×幅2.5cm(0.5インチ×1インチ)の重なり合った接着領域を得た。2枚の試験パネルを互いに接合する前に、少量の直径0.2mm(0.008インチ)の中実のガラスビーズを接着剤に振りかけることによって接着線の厚さを均一にした。接合した試験パネル試料を、23℃(室温)下に少なくとも48時間置き、接着剤を完全に硬化させた。各試料を、22℃下で2.5mm/分(0.1mm/分)の分離速度でピーク重なりせん断強度について試験した。記録された値は3つの試料の平均を表す。
【0081】
強度増加速度の試験方法。長さ10.2cm×幅2.5cm×厚さ1.6mm(4インチ×1インチ×0.063インチ)の6枚のアルミニウム製試験パネルを洗浄し、上述の重なりせん断接着力の試験方法に以下の変更を行なって接着した。接着線の厚さを調節するのには直径0.08〜0.13mm(0.003〜0.005インチ)のスペーサービーズを使用した。接着した試験パネルを室温(23℃)で保持し、接着を行なった時点から一定の時間間隔で重なりせん断強度について評価を行なった。
【0082】
材料。本組成物は、第1エポキシ樹脂(成分a1)及び第2エポキシ樹脂(成分a2)と、アミン1モル当量につき少なくとも50グラムの当量(成分b)の第1アミン硬化剤と、アミン1モル当量につき45グラム以下の当量の第2アミン硬化剤(成分c)と、アセトアセトキシ官能性化合物(成分d)と、金属塩触媒(成分e)と、多官能性アクリレート(成分f)と、から構成される。本組成物の一部の実施形態は、少なくとも1つのエポキシ系反応性希釈剤を含む第3エポキシ樹脂(成分a3)も含む。一部の組成物は他の添加剤(成分以外のもの)も含み得る。成分a1として実施例に使用される材料を表1に要約する。
【0083】
【表1】
【0084】
ベース成分の調製方法。表2に要約された組成を用い、バッチサイズに応じて全ての材料をサイズの異なるプラスチックカップ内に秤量した。材料を室温でDAC 600 FVZスピードミキサー(Hauschild Engineering,Hamm,Germany)中、1分から2分間、2350〜3000rpmで混合してベース成分を調製した。
【0085】
【表2】
【0086】
硬化促進剤成分の調製方法。硬化促進剤成分を、表3に示した組成に従って調製した。ACAMIN 1922A及び2678アミンを0.5L缶中に秤量した。この混合物を、ホットプレート上で71℃に加熱しつつ、窒素流下、オーバーヘッド式撹拌モータ及びインペラブレードにより350rpmで撹拌した。エポキシ樹脂を、シリンジにより、1回の添加につき約30gずつ複数回に分けて添加した。各エポキシ樹脂添加後に生じる発熱反応をおさまらせて、混合物の温度を71℃に戻した。温度が71℃に戻った時点で、追加のエポキシ樹脂を添加した。所望の量のエポキシ樹脂を添加し終わるまでこのプロセスを繰り返した。次に、アミン/エポキシ混合物の温度を82℃に上げ、CaOTfを添加し、混合速度を750rpmに増加させた。30分後、温度を71℃に下げた。この温度に達した時点でANCAMINE K−54を加え、この硬化促進剤組成物を更に5〜10分間撹拌した。硬化促進剤組成物に何らかの充填剤が用いた場合には、これらの材料を加え、ベース樹脂について上記に述べたようにしてDAC 600 FVZスピードミキサーを用いて混合した。
【0087】
【表3】
【0088】
樹脂/基材親和性。イソプロピルアルコールを用い、10.2×2.5×0.3cmのプラスチック片を洗浄した。プラスチック片基材の材料は表4に記載する。各プラスチック片の表面に少量のエポキシ反応希釈剤を配置し、76〜127マイクロメートル(3〜5ミル)のスペーサービーズを希釈剤上にまぶし、直径18mmの顕微鏡スライドカバーガラスを希釈剤の上に配置し、基材に押し付けた。樹脂をプラスチック片と接触させたまま5〜6.5時間おいた。次にカバーグガラスを取り外し、イソプロピルアルコールで拭き取り、視覚的に検査した。基材上のくぼみ又は隆起部のいずれかを残して、樹脂がプラスチック片をきれいに溶解した場合、又は膨潤させた場合「合格」と記録した。溶解又は膨潤の証拠がなく、基材に痕跡がなかった場合、又は基材がほんの僅かに曇るなどする程度だった場合、「不合格」と記録した。結果を表5に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
2液型ディスペンサー。ベース樹脂及び硬化促進剤成分を混合しながら真空下、室温で脱気した。次いで、この材料を2:1 DUO−PAKシリンジ(Wilcorp Corporationより販売)に装填した。その比は1重量部の硬化促進剤成分に対して2重量部のベース成分であり、アミン当量に対するエポキシ当量の比が2:1となるようにした。シリンジを70℃のオーブン内に15〜20分間置くことによって試料を脱気した。オーブンから取り出し、室温にまで冷ました後、カートリッジの両側から気泡のない、均一な流れが見られるようになるまで樹脂を吐出した。次にシリンジの出口に静的混合用先端部を取り付け、これを硬化及び結合の際の接着剤の分配に使用した。
【0092】
実験1:実施例1〜2(EX−1及びEX−2)、比較例1〜3(CE−1〜CE−3)。
【0093】
ベースエポキシ及びアミン硬化促進剤を様々に組み合わせてDuo−Pakシリンジに充填した。ARESレオメーターを使用し、ゲル化点についてこれらを試験した。PC2及びPC/ABS基材を用いる試験の際には、重なりせん断試料の調製には同じ接着剤を使用した。結果を表6に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
表6は、アセトアセトキシ官能性化合物(AcAc)と、CaOTfとアミン官能性化合物との組み合わせがアミン硬化性エポキシ樹脂接着剤のゲル化時間に対して作用する硬化促進効果を示す。AcAc成分を含有させずに多官能性アクリレートを用いた場合に、ゲル化時間が最も遅くなったことを示す。表6は、ポリウレタンエポキシ又は多官能性アクリレートを含有させなかった試料では、プラスチックに対する付着性が消失したことも示す。比較例3(CE−3)は、AcAc成分を含有させない場合に、プラスチックに対する良好な付着性が得られたものの、ゲル化時間が増加したことを示す。実施例1(EX−1)は、特に、結合させるプラスチックに対し希釈剤が強力な親和性を示す場合に、希釈剤を使用できることを示す(上記表5を参照)。
【0096】
実験2:実施例3(EX−3)、比較例4〜6(CE−4〜CE−6)、及び参照例1(REF−1)。
【0097】
更に、特定のプラスチック基材、例えば、純正ABS及びPC1の基材に対する結合性を実験した。このような場合、より良好な結合性を得るためには、エポキシ系反応希釈剤の添加が有効である。ARESレオメーターを使用し、様々な組み合わせのベースエポキシ及びアミン硬化促進剤をゲル化点について試験し、及びPC1及び純正ABSを用い重なりせん断試験用試料を調製した。結果を表7に示す。表6(EX−1、EX−2、及びCE−1)に示す組成物のゲル化時間と表7(EX−3、CE−6、及びREF−1)に示す組成物のゲル化時間とを比較すると、表6の組成物中のAcAcとアクリレートの総量が大きいものほどゲル化時間が早くなることが示される。使用するアミンの量を減らすと、それに伴いゲル化時間も長くなる。
【0098】
【表7】
【0099】
実験3:実施例4(EX−4)及び参照実施例2(REF−2)。
【0100】
静的混合用先端部により、10gの材料を2:1カートリッジからプラスチック製のペトリ皿に分配させてEX−4のゲル化時間を試験した。いつゲル化したかを判定するために、木製ダボを使用して材料をときどきかき回した。表8に示すとおり、試料は7分でゲル化した。
【0101】
REF−2(商品名DP 405(3M)の迅速硬化エポキシ樹脂接着剤)及びEX−4を使用して、PC2及びPC/ABS基材に対する重なりせん断試験片を調製した。
【0102】
【表8】
【0103】
1.3cmの重なりと、結合線の厚みを調製するための76〜127マイクロメートル(3〜5ミル)スペーサービーズとを用い、6枚の10.2×2.5cmアルミニウム片とEX−4接着剤を結合させた。強度増加速度の試験方法に従って、接着を行なった時点から一定の時間間隔で重なりせん断強度を測定した。強度増加速度試験の結果を表9に示す。
【0104】
【表9】
【0105】
表9は、一部の実施形態では、本開示の接着剤組成物が、重なりせん断試験において、20分の時点で約0.3MPA、及び30分の時点で0.34MPaの取り扱い強度を達成し得ることを示す。
【0106】
更なる特性また、チップ寿命を判定するために、分散開始後5分及び10分の時点でEX−4をカートリッジから分配した。材料は最初の分配から10分後にも、チップを詰まらせずに良好に分配することができた。
【0107】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明の実施態様の一部を以下の項目1−27に列記する。
[1]
(a)
(a1)第1エポキシ樹脂と、
(a2)第2エポキシ樹脂と、
を含む、エポキシ樹脂成分であって、ここで、前記第2エポキシ樹脂がポリウレタン変性エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、エポキシ樹脂成分と;
(b)アミン1モル当量につき少なくとも50グラムのアミン当量を有する第1アミン硬化剤と;
(c)アミン1モル当量につき45グラム以下のアミン当量を有する第2アミン硬化剤と;
(d)アセトアセトキシ官能性化合物と;
(e)金属塩触媒と;
(f)多官能性アクリレートと;
を含む、接着剤。
[2]
前記エポキシ樹脂成分が更に、
(a3)第3エポキシ樹脂
を含み、前記第3エポキシ樹脂が少なくとも1つのエポキシ系反応性希釈剤を含む、項目1に記載の接着剤。
[3]
前記第3エポキシ樹脂が、6.5時間以下の時間で、前記第3エポキシ樹脂と接触させた場合に、プラスチック基材の膨潤又は溶解により測定されるものとして、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のプラスチック基材に対し非常に高い親和性を示す、項目2に記載の接着剤。
[4]
多官能性アクリレート及びアセトアセトキシ官能性化合物を組み合わせた量が、前記接着剤の少なくとも11重量%を構成する、項目1〜3のいずれか一項目に記載の接着剤。
[5]
前記多官能性アクリレートと前記アセトアセトキシ官能性化合物の比が、多官能性アクリレート80重量部:アセトアセトキシ官能性化合物20重量部〜多官能性アクリレート20重量部:アセトアセトキシ官能性化合物80重量部の範囲である、項目1〜4のいずれか一項目に記載の接着剤。
[6]
前記第1アミン硬化剤のアミン当量が、アミン1モル当量につき少なくとも55グラムである、項目1〜5のいずれか一項目に記載の接着剤。
[7]
前記第2アミン硬化剤のアミン当量が、アミン1モル当量につき40グラム以下である、項目1〜6のいずれか一項目に記載の接着剤。
[8]
前記第1エポキシ樹脂が、ビスフェノール−Aのグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのグリシジルエーテル、又はノボラックのグリシジルエーテルを含む、項目1〜7のいずれか一項目に記載の接着剤。
[9]
前記アミン硬化剤のうちの少なくとも1つが、一般式:
【化8】
を有し、式中、
R1、R2、及びR4は独立して、水素、炭素原子を1〜15個含有する炭化水素、及び炭素原子を1〜15個含有するポリエーテルから選択され、
R3は炭素原子を1〜1個含有する炭化水素であるか、又は炭素原子を1〜15個含有するポリエーテルを表し、
nは包括的に1〜10である、項目1〜8のいずれか一項目に記載の接着剤。
[10]
低当量アミン硬化剤及び高当量アミン硬化剤の相対量が、前記低当量のアミン硬化剤が前記低当量及び高当量アミン硬化剤の合計重量の少なくとも25重量%を構成するように選択される、項目1〜9のいずれか一項目に記載の接着剤。
[11]
低当量アミン硬化剤及び高当量アミン硬化剤の相対量が、前記低当量アミン硬化剤が前記低当量及び高当量アミン硬化剤の合計重量の30〜60重量%(30及び60重量%を含む)を構成するように選択される、項目1〜10のいずれか一項目に記載の接着剤。
[12]
前記アセトアセトキシ官能性化合物が、一般式:
【化9】
を有し、式中、
xは1〜10の整数であり、
YはO、S又はNHを表し、
R6はポリオキシ基、ポリエステル−アルキル、−アリール、及び−アルキルアリール、並びに直鎖、分枝鎖、飽和及び不飽和アルキル−、アリール−、及びアルキルアリール基からなる群から選択され、R6は炭素原子を介しYに結合し、
R7は炭素原子を1〜12個有する直鎖若しくは分岐鎖又は環状アルキルである、項目1〜11のいずれか一項目に記載の接着剤。
[13]
前記金属塩触媒がカルシウムトリフラートを含む、項目1〜12のいずれか一項目に記載の接着剤。
[14]
前記接着剤が、組成物の総重量に対して0.3〜1.5重量%の触媒を含む、項目1〜13のいずれか一項目に記載の接着剤。
[15]
前記接着剤が靱性付与剤を更に含む、項目1〜14のいずれか一項目に記載の接着剤。
[16]
前記靱性付与剤が、コアシェル型ポリマー及びブタジエン−ニトリルゴムの少なくとも一方を含む、項目14に記載の接着剤。
[17]
芳香族第3級アミンを更に含む、項目1〜16のいずれか一項目に記載の接着剤。
[18]
前記接着剤が2成分を含み、
(a)第1成分は、
(i)前記アセトアセトキシ官能性化合物と、
(ii)前記多官能性アクリレートと、
(iii)少なくとも一部の前記エポキシ樹脂成分と、
を含み、
(b)第2成分は、
(i)前記第1アミン硬化剤と、
(ii)前記第2アミン硬化剤と、
(iii)前記金属塩触媒と、
を含む、項目1〜17のいずれか一項目に記載の接着剤。
[19]
前記第2成分が、更に一部の前記エポキシ樹脂成分を含む、項目17に記載の接着剤。
[20]
前記第1成分が、前記少なくとも1つのエポキシ系反応性希釈剤を含む第3エポキシ樹脂を更に含む、項目17又は18に記載の接着剤。
[21]
前記接着剤が、前記第1成分の総重量に基づき16重量%超のアセトアセトキシ官能性化合物を含む、項目17〜19のいずれか一項目に記載の接着剤。
[22]
25℃下でゲル化時間試験方法に従って測定した場合に、前記接着剤のゲル化時間が20分以下である、項目1〜21のいずれか一項目に記載の接着剤。
[23]
22℃で硬化させ、強度増加速度試験方法に従って測定した場合に、前記接着剤の20分以内の重なりせん断値が少なくとも0.3MPaである、項目1〜22のいずれか一項目に記載の接着剤。
[24]
22℃で硬化させ、強度増加速度試験方法に従って測定した場合に、前記接着剤の30分以内の重なりせん断値が少なくとも0.34MPaである、項目22に記載の接着剤。
[25]
2液型接着剤の第1成分を収容する第1チャンバと、前記2液型接着剤の第2成分を収容する第2チャンバと、混合用先端部と、を含む、接着剤ディスペンサーであって、前記第1成分及び前記第2成分が前記混合用先端部を通じて流れるように、前記第1チャンバ及び前記第2チャンバが前記混合用先端部に連結され、前記第1成分は、エポキシ樹脂、ポリウレタン変性又はイソシアネート変性エポキシ樹脂、多官能性アクリレート、及びアセトアセトキシ官能性化合物を含み、前記第2成分は、アミン1モル当量につき少なくとも50gのアミン当量を有する第1のアミン硬化剤、アミン1モル当量につき45g以下のアミン当量を有する第2アミン硬化剤、及び金属塩触媒を含む、接着剤ディスペンサー。
[26]
前記第1成分が更に少なくとも1つのエポキシ系反応希釈剤を含む、項目24に記載の接着剤ディスペンサー。
[27]
前記第1又は第2の成分の少なくとも一方が靱性付与剤を更に含み、前記靱性付与剤がコアシェル型ポリマー及びブタジエン−ニトリルゴムの少なくとも一方を含む、項目24又は25に記載の接着剤ディスペンサー。