(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5756207
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】油圧ホース用油漏れ防止材及び杭の施工方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/16 20060101AFI20150709BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20150709BHJP
G01M 3/20 20060101ALI20150709BHJP
G01M 3/22 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
F16L55/16
F16L57/00 A
G01M3/20 N
G01M3/22
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-86125(P2014-86125)
(22)【出願日】2014年4月18日
【審査請求日】2014年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002122
【氏名又は名称】調和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100146950
【弁理士】
【氏名又は名称】南 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏男
(72)【発明者】
【氏名】横山 博康
(72)【発明者】
【氏名】溝次 佳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇吉
【審査官】
横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−116579(JP,A)
【文献】
特開平8−200586(JP,A)
【文献】
特開平8−38892(JP,A)
【文献】
特開2014−47861(JP,A)
【文献】
特開2014−185483(JP,A)
【文献】
特開平11−311392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/16
F16L 57/00
G01M 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ホースの周囲に巻き付けて使用するための油漏れ防止材であって、
互いに重ねられ少なくとも一方が油透過性である帯状の第1シート部材と第2シート部材とを具備しかつ矩形の油吸収ユニットが幅方向に1又は複数個形成されるとともに長さ方向に連続的に形成されている帯状の本体シートを備え、
前記油吸収ユニットの各々は、前記第1シート部材と前記第2シート部材が接合されて封止された周縁部と、前記周縁部に囲まれ前記第1シート部材と前記第2シート部材の間に粉末状油ゲル化剤を充填されている袋部とを有することを特徴とする
油圧ホース用油漏れ防止材。
【請求項2】
前記本体シートは、隣り合う前記油吸収ユニット同士の境界線上に切り離し可能なミシン目を形成されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧ホース用油漏れ防止材。
【請求項3】
前記粉末状油ゲル化剤とともに、油の存在により発色する油検知剤を充填したことを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧ホース用油漏れ防止材。
【請求項4】
前記第1シート部材又は前記第2シート部材のうち油透過性である方の外面上の一部に接着剤層を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油圧ホース用油漏れ防止材。
【請求項5】
杭打ち抜き機を用いて杭の打込み又は引抜きを行う杭の施工方法において、
杭打ち抜き機の油圧ホースにおける油漏れの可能性のある箇所に巻き付けるために、請求項1〜4のいずれかに記載の油圧ホース用油漏れ防止材から必要な大きさに対応可能な個数及び形状にて前記油吸収ユニットを切り取り、
切り取った1又は複数の前記油吸収ユニットを、油圧ホースにおける油漏れの可能性のある箇所に巻き付け固定した後、杭打ち抜き機による杭の打込み又は引抜きを行うことを特徴とする
杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ホースに巻き付けて使用するための油漏れ防止材及びこれを用いた杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打ち抜き機等の油圧システムを用いる杭の打込み又は引抜きの現場では、多数の油圧ホースが用いられている。このような現場は、海上・海中・河川・陸上と多岐に亘っている。その場合、油圧ホースの接続部のネジの弛みやホース自体の破損により、作動油や潤滑油が流出すれば、これらの場所が環境汚染される。たとえ生分解性作動油であっても、大量であれば一時的な環境汚染は避けられない。油圧システムの油量は、通常、1本のホース当たり100〜600リットル/分である。従って、短時間のうちに大量の油が流出することとなるため、油圧ホースの破損が生じた場合には、初期の漏出拡散防止と、早期発見が重要である。
【0003】
特許文献1には、給油ホースの接続部に巻き付ける油漏れ予防器具が開示され、巻付固定手段を設けた巻付部と、巻付部の裏面側に設けた油吸収袋とを備えている。
【0004】
特許文献2には、油漏れを検出する検知塗料が開示され、パイプや配管に予め塗料を塗布しておくと、油漏れにより滲み出てくる油により白色の塗料中の油溶性染料が溶解して濃い色の指示模様を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−116579号公報
【特許文献2】特開平11−44605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の、油漏れのおそれのあるホース等に巻き付ける油吸収材は、面ファスナーによる固定手段を備えているので、ある程度の管径の変化には対応できるが管径が大きく異なる多種類の油圧ホースには対応できない。また、長さは決まっており調節できない。杭打ち抜き機等の油圧システムを利用する施工現場では、様々な管径をもつ多数の油圧ホースが存在し、油漏れのおそれのある箇所は極めて多数にのぼる。従って、特許文献1のように適用範囲が限られた油吸収材では汎用性がなく、また、取り付け作業も繁雑となる。
【0007】
特許文献2に記載の色の変化により油漏れを検出する検知塗料は、油漏れのおそれのある箇所に塗布する作業が必要であり、また、油漏れ自体を防止する効果はない。
【0008】
以上の現状に鑑み、本発明は、油圧ホースに巻き付けて周囲への油漏れを防止する油漏れ防止材であって、多様な管径及び長さの箇所に対して簡易な作業で取り付け可能な油漏れ防止材を提供することを目的とする。また、本発明は、油圧ホースからの油漏れを簡易に検出できる油漏れ防止材を提供することを目的とする。さらに、本発明は、斯かる油漏れ防止材を用いた杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を提供する。
本発明の第1の態様は、油圧ホースの周囲に巻き付けて使用するための油漏れ防止材であって、
互いに重ねられ少なくとも一方が油透過性である帯状の第1シート部材と第2シート部材とを具備しかつ矩形の油吸収ユニットが幅方向に1又は複数個形成されるとともに長さ方向に連続的に形成されている帯状の本体シートを備え、
前記油吸収ユニットの各々は、前記第1シート部材と前記第2シート部材が接合されて封止された周縁部と、前記周縁部に囲まれ前記第1シート部材と前記第2シート部材の間に粉末状油ゲル化剤を充填されている袋部とを有することを特徴とする。
【0010】
上記態様において、前記本体シートは、隣り合う前記油吸収ユニット同士の境界線上に切り離し可能なミシン目を形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記態様において、前記粉末状油ゲル化剤とともに、油の存在により発色する油検知剤を充填したことを特徴とする。
【0012】
上記態様において、前記第1シート部材又は前記第2シート部材のうち油透過性である方の外面上の一部に接着剤層を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様は、杭打ち抜き機を用いて杭の打込み又は引抜きを行う杭の施工方法において、
杭打ち抜き機の油圧ホースにおける油漏れの可能性のある箇所に巻き付けるために、請求項1〜4のいずれかに記載の油圧ホース用油漏れ防止材から必要な大きさに対応可能な個数及び形状にて前記油吸収ユニットを切り取り、
切り取った1又は複数の前記油吸収ユニットを、油圧ホースにおける油漏れの可能性のある箇所に巻き付け固定した後、杭打ち抜き機による杭の打込み又は引抜きを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による油漏れ防止材は、帯状の本体シートに多数の油吸収ユニットが連続的に形成されているので、適用箇所に必要な大きさの個数及び形状にて油吸収ユニットを本体シートから切り取り、油圧ホースに巻き付け使用することができる。油吸収ユニットは、少なくとも一方の側(油圧ホースに接する側)のシート部材(油圧ホースに接する側)が油透過性であり袋部の中には粉末状油ゲル化剤が充填されているので、油漏れが生じると、漏出した油は粉末状油ゲル化剤に吸収されゲル化して留まる。これにより、周囲への油の拡散を防止できる。使用後は、油吸収ユニットを取り外して回収し、焼却する等の適切な処理を簡易に行うことができる。また、安価に製造することができる。
【0015】
また、粉末状油ゲル化剤とともに、油の存在により発色する油検知剤を充填することにより、油漏出の早期発見を簡易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)(b)は、本発明による油漏れ防止材の2つの例を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した油吸収ユニットの具体的構成の一例を示す図であり、(a)は1つの油吸収ユニットを切り取った場合の表面図、(b)は裏面図、(c)はI−I断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の油漏れ防止材を油圧ホースに適用した状態を示す概略側面図であり、(a)は油漏れ防止材の取り付け前の油圧ホース、(b)油漏れ防止材を取り付けた油圧ホース、(c)は油漏れを生じた時の油圧ホースの状態をそれぞれ示している。
【
図4】
図4は、本発明の油漏れ防止材の別の適用例を示す図であり、(a)(b)は油圧ホースに取り付ける種々の保護カバーの外観斜視図であり、(c)は(a)(b)と本発明の油漏れ防止材を併用した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明の油漏れ防止材は、油圧ホースの周囲に巻き付けて使用するものである。油圧ホースは、例えば、杭打ち抜き機等の油圧システムで用いられている。杭打ち抜き機の場合、油圧式に限らず電気式であっても、杭把持装置、機械本体、電動機、歯車装置等への軸受給油装置等の配管部材として油圧ホースが用いられている。なお、「油圧ホースの周囲」には、ホース同士の接続部の周囲及びホースと各種機器との接続部の周囲並びにホース本体の周囲のいずれも含むものとする。
【0018】
図1(a)(b)は、本発明による油漏れ防止材の2つの実施例を示す外観斜視図である。
本発明による油漏れ防止材1は、帯状(テープ状)の本体シートを有する。この油漏れ防止材1は、適用箇所に必要な大きさを切り取って使用するものである。本体シートには、油吸収機能を備えた多数の油吸収ユニット10が形成されている。油漏れ防止材1の切り取り単位は、1つの油吸収ユニット毎である。
【0019】
図1(a)の例では、所定の大きさの矩形の油吸収ユニット10が、帯状の本体シートの幅方向に4個形成され、長さ方向には連続的に形成されている。
図1(b)の例では、油吸収ユニット10が、帯状の本体シートの幅方向に1個のみ形成され、長さ方向には連続的に形成されている。1つの油吸収ユニット10の大きさは、例えば、幅65〜70mm、長さ70〜80mm程度であるが、これらの範囲に限定されるものではない。油吸収ユニット10の具体的構成は、後に
図2で説明する。
【0020】
隣り合う油吸収ユニット10同士の境界線上には、切り離し可能なミシン目20a、20bを形成することが好適である。このミシン目20a、20bにより、本体シートから所望する大きさを容易に切り取ることができる。適用箇所の管径及び長さに応じて、どのような切り取り方をしてもよい。また、油圧ホースに巻き付ける場合、元の本体シートの幅方向及び長さ方向に関係なく巻き付けてよい。
【0021】
なお、ミシン目は必須ではなく、ミシン目を形成しない場合は、ハサミやカッターなどで切り取ることも可能である。
【0022】
図1(a)(b)では、油漏れ防止材1の本体シートの全体をコイル状に巻いた状態を示しており、例えば製品化する場合に一巻きを一製品としてもよい。別の例として、本体シートの全体を折り畳んだ状態としてもよい。
【0023】
図2は、
図1に示した油吸収ユニット10の具体的構成の一例を示す図であり、(a)は1つの油吸収ユニットを切り取った場合の表面図、(b)は裏面図、(c)はI−I断面図である。
【0024】
本体シートは、互いに重ねられた第1シート部材11と第2シート部材12とを具備する。説明の便宜上、ここでは、油漏れ防止材を巻き付けたときの表面側(油圧ホースに接する側と反対側)に第1シート部材11が配置され、裏面側(油圧ホースに接する側)に第2シート部材12が配置されるものとする。少なくとも裏面側の第2シート部材12は、油圧ホースから漏出した油を透過させるために油透過性のシート部材とする。油透過性のシート部材としては、例えば不織布が好適である。表面側の第1シート部材11は、油透過性でも非油透過性でもよい。コスト的には、第1シート部材11と第2シート部材12の双方とも不織布とすることが好適である。
【0025】
油吸収ユニット10は、その周縁に、第1シート部材11と第2シート部材12が接合された所定の幅の周縁部10aを形成されている。接合方法は、公知の接着、溶着、圧着等の手段を用いることができる。この結果、周縁部10aに囲まれた内側の部分は、第1シート部材11と第2シート部材に挟まれた袋部10bとなる。袋部10bは周縁部10aにより封止されている。
【0026】
第1シート部材11と第2シート部材12の間の袋部10bには、封止される前に粉末状油ゲル化剤13が充填されている。粉末状油ゲル化剤13は、親油性高分子ポリマーからなり、油を吸収すると、分子鎖間の空間に油を保持して膨潤する。すなわち、粉末がゼリー状又は固体状にゲル化する。このような粉末状油ゲル化剤としては、例えば、(株)ジャパン製の商品名アルファゲルがある。粉末状油ゲル化剤13は、対象の油圧ホースで使用する油の種類に適したものを選択する。粉末状油ゲル化剤13の充填量は、第1シート部材11と第2シート部材12の間の袋部10bの拡張する余地と、粉末状油ゲル化剤がゲル化した際の体積変化を考慮して適切に設定する。
【0027】
好適には、油透過性である第2シート部材12の外面上の一部に接着剤層30が設けられる。
図2の例では、油吸収ユニット10の周縁部10aの裏面側に接着剤層30が設けられている。なお、接着剤層30のパターンは、図示の例に限られない。裏面側の第2シート部材12は、漏れた油を通過させることが必要であるので
図2の例のように周縁部10aに設けることが好適であるが、油の通過を大きく損なわない限り、周縁部10a以外に接着剤層を設けてもよい。
【0028】
接着剤層30は、油吸収ユニット10(すなわち油漏れ防止材)を油圧ホースに固定するために使用される。油吸収ユニット10が漏れた油を吸収して重量が増した場合にも、落下することなく固定状態を保持できる程度の接着強度をもつ接着剤を選択する。なお、
図1に示したように油漏れ防止材をコイル状に巻いた場合、裏面側の接着剤層30が表面側と接触するが、使用前の接着剤層30が不要の箇所に付着しないように適宜の手段を講じることが好ましい。図示しないが、例えば、接着剤層30の上に剥離紙を貼着してもよい。このような剥離紙は公知のものである。
【0029】
なお、接着剤層30は必須ではなく、油吸収ユニット10を油圧ホースに巻き付け固定する手段は、接着に限られない。例えば、油吸収ユニット10を油圧ホースに巻き付け、面ファスナー、結束バンド、熱収縮チューブ、自己融着テープ等により固定することができる。さらに、これらの固定手段と接着剤層30とを併用してもよい。併用する場合は、接着剤層30は、仮止めできる程度の弱い接着強度でもよい。
【0030】
さらに好適には、粉末状油ゲル化剤13に加えて、袋部10bに、油の存在を発色により示すことができる油検知剤14を充填する。油検知剤14は、予め粉末状油ゲル化剤13と混合しておいてもよい。このような油検知剤14としては、油に溶解すると発色する油溶性染料がある。色は、赤、黒、青、緑等から選択できる。油溶性染料は、微粉末(例えば粒径が数μm〜10μm程度)の状態ではほぼ白色である。
【0031】
油検知剤14を混合する場合、粉末状油ゲル化剤13は、油検知剤14の発色が判別し易いように白色や淡色のものを選択することが好ましい。また、油吸収ユニット10の表面側の第1シート部材11も、袋部10b内の充填物の色を外側から確認できるような色と厚さを有することが好ましい。これにより、粉末状油ゲル化剤13が油を吸収すると、油検知剤14が油に溶解して発色し、これを油吸収ユニット10の外側から観察することができる。
【0032】
図3は、本発明の油漏れ防止材を油圧ホースに適用した状態を示す概略側面図であり、(a)は油漏れ防止材の取り付け前の油圧ホース、(b)油漏れ防止材を取り付けた油圧ホース、(c)は油漏れを生じた時の油圧ホースの状態をそれぞれ示している。
【0033】
図3(a)では、油圧ホース100の接続部101と、ホース本体102をそれぞれ例示している。接続部101には、継ぎ手金具やボルト等が存在する。ホース本体102は、通常、フレキシブルな材料で形成されている。
【0034】
図3(b)では、油吸収ユニット単位で適切な大きさに切り取った油漏れ防止材を、油圧ホースの接続部101とホース本体102にそれぞれ巻き付け固定した状態を示している。図示の例では、接続部101に巻き付けた油漏れ防止材1Aは、油圧ホースの長さ方向及び周方向に2個ずつ合計4個の油吸収ユニット10A、10B、10C、10Dからなる大きさである。ホース本体102に巻き付けた油漏れ防止材1Bは、油圧ホースの長さ方向に2個、周方向に1個の合計2個の油吸収ユニット10E、10Fからなる大きさである。油漏れ防止材1A、1Bの巻き付け方は、通常、油圧ホースを一周させて、巻き終わり端の接着剤層を巻き始め端の上に重ねて接着する。図示しないが、結束バンド等で補強してもよい。
【0035】
図3(b)において、油圧ホース100の隣に示す別の油圧ホース200のように、施工現場では多数の油圧ホースが存在するため、油圧ホース同士が擦れ合うことが頻繁に発生する。油漏れ防止部材1Bのようにホース本体に巻き付けた場合は、このような油圧ホース同士の擦れ合いや油圧ホースとその他の機器との擦れ合いによる損傷を防止する役割も果たすことができる。
【0036】
図3(c)の油漏れ発生状態では、油圧ホース100の接続部101に取り付けた油漏れ防止部材1Aでは下半分の向かって左側の油吸収ユニット10Bがゲル化して膨潤し、発色している。ホース本体102に取り付けた油漏れ防止材1Bでは上半分の油吸収ユニット10Eがゲル化して膨潤し、発色している。これにより、これらの油吸収ユニット10の位置で油漏れが発生していることを確認することができる。
【0037】
本発明の油漏れ防止材は、油漏れの初期段階において速やかに油を吸収できかつ、それを形状変化又は色により視認させることができるので、油漏れを限定的範囲に留めることができる。本発明の油漏れ防止材は、油の漏出量が粉末状油ゲル化剤の吸収許容量を超え周囲に漏れ出す前に油漏れを早期発見して然るべく対処することを前提としている。従って、大きな油漏れ事故に進行する前に点検やメンテナンスを行うことができる。この結果、環境汚染を防止することができる。
【0038】
また、本発明の油漏れ防止材は、独立した複数の油吸収ユニットを具備することにより、油漏れが発生している箇所を比較的狭い範囲に絞り込むことができる。仮に、油圧ホースに巻き付ける油漏れ防止材が1つの油吸収ユニットのみで構成されている場合には、一箇所で油漏れが発生しても全体が膨潤し発色することになるので、油漏れの箇所を特定することが難しい。
【0039】
油を吸収した油漏れ防止材は、取り外して回収し、焼却等により簡単に処理することができる。本発明の油漏れ防止材は、帯状の本体から必要な大きさを切り取って使用するので無駄が無く、省資源である。多数の油吸収ユニットを配置した帯状の油漏れ防止材は、量産に向いており、安価に製造できる。よって、使い捨て用途にも適している。
【0040】
図4は、本発明の油漏れ防止材の別の適用例を示す図であり、(a)(b)は油圧ホースに取り付ける種々の保護カバーの外観斜視図であり、(c)は(a)(b)の保護カバーと本発明の油漏れ防止材を併用した概略側面図である。
【0041】
現在、油圧ホースの周囲に取り付ける種々の保護カバーが用いられている。例えば、油圧ホース破損時の油飛散防止用カバー(油吸収機能は無い)、油圧ホースと周囲部材との摩擦による摩耗防止カバー、油圧ホースを高温の周囲環境から保護する耐熱カバー等がある。「保護カバー」には、油圧ホース自体を保護する目的のものと、油圧ホースの周囲の作業者を保護する目的のものの双方を含む。
【0042】
これらの保護カバーの形状は、例えば、
図4(a)(b)の様なものが知られている。
図4(a)は、筒状ないしは鞘(スリーブ)状の部材300であって、本体301の一箇所から割って開くことができるような形状である。例えば、切り割った箇所の端部における一方の表面と、他方の裏面に面ファスナー302a、302bをそれぞれ取り付けている。油圧ホースに取り付ける際は、面ファスナー302a、302bを重ねて固定する。
図4(b)は、筒状ないしは鞘(スリーブ)状の部材400であって、本体401には切り割りが無いので、油圧ホースに取り付ける際は、油圧ホースを貫通させる。
【0043】
図4(c)は、(a)(b)のような公知の油圧ホースの保護カバー300、400と本発明の油漏れ防止材1A、1Bを併用した状態の例を示している。油圧ホース100に対し、先ず本発明の油漏れ防止材1A、1Bを取り付け、その上から保護カバー300、400を取り付けている。油漏れ防止材1A、1Bと保護カバー300、400の間に両面テープ等を介在させて固定してもよい。
【0044】
最後に、本発明の油漏れ防止材を用いて杭の打込み又は引抜きを行う杭の施工方法について説明する。先ず、杭打ち抜き機の油圧ホースの油漏れの可能性のある箇所の各々に必要な油漏れ防止材の大きさを決定する。上述した帯状の油圧ホース用油漏れ防止材から、各箇所の大きさを満たすシートを切り取る。油漏れ防止材の切り取りは、隣り合う油吸収ユニットの境界線上でのみ行う。通常はシートを矩形に切り取るので、切り取ったシートには、縦方向及び横方向に1又は複数個の油吸収ユニットが並んでいる。
【0045】
切り取ったシートを油圧ホースの適用箇所に巻き付け固定した後、杭打ち抜き機による杭の打込み又は引抜きを行う。施工途中で、巻き付けられたシートの油吸収ユニットの膨潤(油検知剤を含む場合は発色も)を発見した場合は、油漏れにより粉末状油ゲル化剤のゲル化を生じたものと判断し、当該箇所の点検とメンテナンスを行う。
【符号の説明】
【0046】
1 油漏れ防止材
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F 油吸収ユニット
10a 周縁部
10b 袋部
11 第1シート部材
12 第2シート部材
13 油ゲル化剤粉末
14 油検知剤
20a、20b ミシン目
30 接着剤層
100、200 油圧ホース
101 ジョイント部
102 ホース部
300、400 油圧ホース保護カバー
【要約】
【課題】油圧ホースに巻き付けて周囲への油漏れを防止する油漏れ防止材であって、多様な管径及び長さの箇所に対して簡易な作業で適用可能な油漏れ防止材を提供する。
【解決手段】油圧ホースの周囲に巻き付けて使用するための油漏れ防止材であって、互いに重ねられ少なくとも一方が油透過性である帯状の第1シート部材と第2シート部材とを具備しかつ矩形の油吸収ユニットが幅方向に1又は複数個形成されるとともに長さ方向に連続的に形成されている帯状の本体シートを備え、油吸収ユニットの各々は、第1シート部材と前記第2シート部材が接合されて封止された周縁部と、周縁部に囲まれ第1シート部材と第2シート部材の間に粉末状油ゲル化剤を充填されている袋部とを有することを特徴とする。
【選択図】
図1