【文献】
Bioorg. Med. Chem. Lett. (2008) Vol.18, No.24, pp.6321-6323
【文献】
J. Org. Chem. (2013) Vol.78, No.24, pp.12321-12329
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗マイコバクテリア剤は、第1線経口抗結核剤、注射用抗結核剤、フルオロキノロン、第2線経口抗結核剤、その他の抗結核剤、および結核に対する現在臨床試験中の化合物よりなる群から選ばれ、前記第1線経口抗結核剤はイソニアジド、リファンピシン、エタンブトールおよびピラジンアミドを含む群から選ばれ、前記注射用抗結核剤はストレプトマイシン、アミカシン、カプレオマイシンおよびカナマイシンを含む群から選ばれ、前記フルオロキノロンはシプロフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシンおよびモキシフロキサシンを含む群から選ばれ、前記第2線経口抗結核剤はリファブチン、プロチオンアミド、エチオナミド、サイクロセリン、PASおよびチオアセタゾンを含む群から選ばれ、前記その他の抗結核剤はリネゾリド、クロファジミン、アモキシリン/クラブラン酸、クラリスロマイシン、およびジアミノジフェニルスルホンの誘導体を含む群から選ばれ、前記結核に対する現在臨床試験中の化合物はベダキリン、PA−824、ダラマニド、SQ−109、ステゾリド、リファペンチンおよび臨床前開発中の化合物、特にAZD5847、BTZ043、TBA−354、CPZEN−45、SQ−641、SQ−609、DC−159a、Q201、THPP、クロファジミンのリミノフェナジン類似体およびホウ素含有LeuRS抑制剤を含む群から選ばれる、請求項4に記載の薬学組成物。
請求項1に記載の化学式1または化学式2の抗結核環状ペプチドの製造のためのプロセスにおいて、液体培養培地で好気的条件の下に抗マイコバクテリアペプチドを生産する前記ノノムラエ種(Nonomuraea sp.)MJM5123菌株(ブダペスト条約に基づく国際寄託である受託番号:KCTC 12178BP)の微生物を培養する段階と、菌糸から請求項1に記載の抗結核環状ペプチドを分離する段階とを含む、抗結核環状ペプチドの製造プロセス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複製/非複製M.結核(replicating/non−replicating M.tuberculosis)および多様な薬剤耐性M.結核菌株に対抗して作用する新規な抗結核ペプチド(anti−TB peptides)を提供することにある。
本発明の他の目的は、抗結核ペプチドの生産プロセスおよび各種マイコバクテリア感染(mycobacterial infection)の予防および/または治療のための薬学組成物における抗結核ペプチドの用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明は、ノノムラエ種MJM5123菌株(Nonomuraea sp. MJM5123 strain)から分離された環状ペプチド(cyclic peptides)を提供する。本発明の好適な実施例において、本発明の環状ペプチドは下記化学式1または化学式2を有することができる。
【0009】
【化1】
【0010】
また、本発明は、マイコバクテリア菌種(mycobacterium spp.)関連疾患の予防および/または治療に効果的な薬学組成物を提供する。本発明の好適な実施例において、本発明の薬学的組成物は、ノノムラエ種MJM5123菌株(Nonomuraea sp. MJM5123 strain)から分離された新規な抗結核環状ペプチド(anti−TB cyclic peptides)と、マイコバクテリア(Mycobacteria)による感染を治療するために薬学的に許容される担体(a pharmaceutically acceptable carrier)を含む。本発明者は、ノノムラエ種MJM5123菌株(Nonomuraea sp. MJM5123strain)を2012年4月3日に韓国生命工学研究院(KRIBB)のKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に
ブダペスト条約に基づく国際寄託として寄託した(受託番号:KCTC 12178BP)。
【0011】
以下、本発明について詳細に記述する。
本発明は、マイコバクテリア菌種(Mycobacterium spp.)、好ましくはノノムラエ種MJM5123菌株から分離された環状ペプチドを提供する。本発明の好適な実施例において、本発明の環状ペプチドは化学式1または化学式2を有する。好ましくは、本発明の環状ペプチドはノノムラエ種(Nonomuraea sp.)MJM5123菌株から次の手続きによって分離できる。
【0012】
放線菌(Actinomycetes)−新規な抗結核抗生剤(Anti−TB Antibiotics)に対するソース(source)
放線菌は、非常に多様な2次代謝産物を生産すると知られている、何処にでもある土壌生物である。多様な細菌性感染の治療に用いられる幾つかの抗生剤は、ストレプトマイシン(streptomycin)、セファロスポリン(cephalosporins)、テトラサイクリン(tetracycline)、エリスロマシン(erythromycin)、リファンピン(rifampin)およびダプトマイシン(daptomycin)を含む放線菌に由来する。今日の結核治療に用いられる3種の薬物(リファンピン(rifampin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、サイクロセリン(cycloserine)は、寒天拡散分析(agar diffusion assays)を用いて放線菌から発見されたが、このようなスクリーン(screens)は最初に結核(M.tuberculosis)を用いて行われたのではない。これは結核(TB)の伝染性、およびたまに(当時の)致命的な結果に起因した。今、M.結核抗生剤が種々の抗菌剤に特異的に影響を受けやすい(susceptible)と理解するため、直接このような病原体に対抗して発酵培養液(fermentation broths)をスクリーニングすることについての過去の失敗は多くの潜在的に有用な化合物群が検出されない結果をもたらしたと仮定しなければならない。よって、M.結核の悪性菌株に対抗して直接スクリーニングすることにより、このようなTB薬物発見プログラムを開始した。
【0013】
ハイスループットスクリーニング(High−throughput Screening)
純粋な化合物または抽出物のハイスループットスクリーニングについての技術は、ITR(the Institute for Tuberculosis Research)で確立された。韓国明知大学校におけるECUM(Extract Collection of Useful Microorganisms)は、韓国、中国、ネパル、フィリピン、ベトナム、南国大陸および北極圏からの7000以上の放線菌分離菌(isolates)の菌株保存(culture collection)を維持する。より異国的な地域を含ませることは希少で新規な種を分離しようとする試みであった。
各分離菌(isolate)は、最初に3つの相異なる培養培地−G.S.S(富栄養培地(rich medium))、Bennett’sおよびGYC(最少培地(minimal medium))で20mLの培養液で発酵され、菌株別に3つの抽出物がMABA(Microplate Alamar Blue Assay)でテストされ、より優先的に処理された。
【0014】
MJM5123の識別
韓国の明知大学校のECUMに貯蔵された6万5千以上の抽出物をスクリーニングした後、新規な放線菌種、菌株MJM5123からの菌糸体(mycelium)のメタノール抽出物が強い抗結核活動(anti−TB activity)を有することが発見された。菌株MJM5123は多相分類学的接近法(polyphasic toxonomic approach)によってノノムラエ種(Nonomuraea sp.)として識別された。
【0015】
バイオアッセイによる分離(Bioassay−guided isolation)
菌株MJM5123が、真空液体クロマトグラフィー(VLC、vacuum−liquid chromatography)で初期分画(initial fractionation)した後、幾つかの高速向流クロマトグラフィー(CCC:high−speed counter current chromatograpy)段階で選別浄化(targeted purification)することに基づくバイオアッセイによる分離手続きのために選択された。
【0016】
天然物(natural products)のバイオ活性原理(bioactive privciples)に対するバイオアッセイ検索は、複雑な混合物を効率よく分析(分解)することが可能な予備分析技法(preparative analytical techniques)を必要とする[Hostettmann, K.; Marston, A. The search for new drugs from higher plants. Chimia 2007, 61, 322-326; Hostettmann, K.; Marston, A. Plants as a still unexploited source of new drugs. Nat Prod Com 2008, 3, 1307-1315; Hostettmann, K.; Marston, A.; Wolfender, J.-L. Strategy in the search for new lead compounds and drugs from plants. Chimia 2005, 59, 291-294]。この分野における現在の標準方法は、カラム/フラッシュ(column/flash)、真空および高性能液体クロマトグラフィー(CC、VLC、HPLC)のように、固体固定相(solid stationary phase)を使用する多様な形態の固体−液体クロマトグラフィーである。ところが、固体固定相(吸着剤)の使用に関連した幾つかの欠点があるが、これはバイオアッセイ誘導分画(bioassay−guided factionation)の脈絡からそれらの機能を相当制限する:非可逆的吸収(irreversible absorption)は、これらの制限の一つであり、広く認識される[Lindblom, T. Irreversible absorption of diphenylamine onto a straight phase and a reverse phase HPLC-column. Symposium on Chemical Problems Connected with the Stability of Explosives, [Proceedings] 1993, 9th, 205-213; Kubo, I. Recent applications of counter-current chromatography to the isolation of bioactive natural products. J Chrom 1991, 538, 187-191; Sadek, P. C.; Carr, P. W.; Bowers, L. D.; Haddad, L. C. A radiochemical study of irreversible adsorption of proteins on reversed-phase chromatographic packing materials. Anal Biochem 1986, 153, 359-371]。したがって、LC方法は、材料の損失(限られた回復)と頻繁に関連し、さらに重要なことには、分画経路(fractionation pathway)によってバイオ活性の減衰と関連する。これらの制限は向流クロマトグラフィー(CCC、counter−current chromatography)では存在しないが、これは分離を達成するために、2つの混ぜられない溶媒間の試料のパーティション(partition)に全的に依存する液体−液体技術(liquid−liquid technique)であって、それは試料物質の完全な回復(full recovery)を許容し、これにより複雑な天然物混合物の相乗効果を評価しうる可能性を提供するためである。また、それは特定の化合物群の選別分離のための理想的な方法である。このように、分離手続きは主に向流クロマトグラフィー(CCC)に基づく。
【0017】
菌株MJM5123が、純粋な化合物H−14とH−16の2つの高い抗結核活性環状ペプチドの分離(isolation)、構造解明(structure elucidation)、おび生物学的プロファイリング(biological profiling)のための十分なバイオマス(biomass)を生成するために、ECUMで20Lの発酵槽で培養、収穫および抽出された。
【0018】
バイオ活性成分の構造解明(structure elucidation of bioactive constituents)
H−14とH−16の完全な構造解明は、最高の品質と最先端の1D/2DNMR−およびペプチドのX線結晶学(X−ray crystallography)によって増加した高解像度MS基盤構造情報を用いて行われる。定量的NMR(qNMR)は、全ての分離段階の同時選択認識および定量決定(simultaneous selective recognition and quantitative determination)のために使用された。QNMRは、活性分離菌(active isolates)の純度および/または量(quantity)の決定のためにだけでなく、生物学的に活性であるが、依然として複雑な化合物の混合物/画分(compound fractions)をプロファイリングする目的のためにも最適の道具である。H−14およびそのアミノ酸残基(amino acid residues)の全般的な3D構造はX線結晶学(X−ray crystallography)によって決定された。
【0019】
発酵プロセスの最適化
抗結核ペプチド(anti−TB peptides)の生産性向上のために、最適の発酵プロセスと費用効率的な培地(media)が開発された。主要発酵は6日間600rpmの攪拌速度(agitation speed)と0.3vvmのエアレーション(aeration)によって34℃で行われた。 最終充填された菌糸体容積(final packed mycelium volume)はpH8.20で80%であり、総糖(totla sugar)は1.8%未満であった。発酵プロセスは373mg/LのH−14を産出した。
【0020】
また、本発明は、本発明の化学式1および/または化学式2の化合物を活性成分として含むマイコバクテリア種関連疾患の予防および/または治療に効果的な薬学的組成物を提供する。好適な実施例において、マイコバクリア種関連疾患は結核である。本発明の別の好適な実施例において、結核はMDR結核またはXDR結核である。
本発明の薬学的組成物は、ノノムラエ種(Nonomuraea sp.)MJM5123菌株から分離された本発明の新規な抗結核ペプチドを含む。好ましくは、本発明の薬学的組成物は薬学的に許容される担体(carrier)、賦形剤(excipient)および希釈剤(diluent)をさらに含むことができる。
【0021】
本発明の一実施例において、本発明の環状ペプチドは、結核治療剤として単独で、或いは別の抗マイコバクテリア剤(anti−mycobacterial agent)の1種または少なくとも2種の混合組成物と組み合わせて処置される。本発明の好適な実施例において、前記抗マイコバクテリア剤としては、イソニアジド(isoniazid)、リファンピシン(rifampicin)、エタンブトール(ethambutol)およびピラジンアミド(pyrazinamide)などの第1線経口抗結核剤(a 1st line oral antituberculosis agent);ストレプトマイシン(streptomycin)、アミカシン(amikacin)、カプレオマイシン(capreomycin)およびカナマイシン(kanamycin)などの注射用抗結核剤(injectable anti−TB agent);シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、オフロキサシン(ofloxacin)およびモキシフロキサシン(moxifloxacin)などのフルオロキノロン(fluoroquinolone);リファブチン(rifabutin)、プロチオンアミド(protionamide)、エチオナミド(ethionamide)、サイクロセリン(cycloserine)、PASおよびチオアセタゾン(thioacetazone)などの第2線経口抗結核剤(a 2nd line oral anituberculosis agent);リネゾリド(linezolid)、クロファジミン(clofzimine)、アモキシリン/クラブラン酸(amoxicillin/clavulanate)、およびジアミノジフェニルスルホンの誘導体(derivative of dianomidiphenylsulphone)などのその他の抗結核剤;ベダキリン(Bedaquiline)、PA−824、ダラマニド(Dalamanid)、SQ−109、ステゾリド(Sutezolid)、リファペンチン(rifapentine)などの結核に対する現在臨床試験中の化合物および臨床前開発(pre−clinical development)中の化合物、特にAZD5847、BTZ043、TBA−354、CPZEN−45、SQ−641、SQ−609、DC−159a、Q201、THPP、クロファジミン(clofazimine)のリミノフェナジン類似体(riminophenazine analogs)およびホウ素含有LeuRS抑制剤などの化合物を使用することができるが、常にそれに限定されるものではない。
【0022】
本発明の抗結核環状ペプチド(anti−TB cyclic peptides)は、経口投与のために、例えば、粉末、顆粒、錠剤、丸薬、カプセル、溶液、懸濁液、エマルジョンおよびシロップに製剤化できる。担体、賦形剤および希釈剤はラクトース(lactose)、デキストロース(dextros)、スクロース(sucrose)、ソルビトール(sorbitol)、マニトール(mannitol)、キシリトール(xylitol)、エリトリトール(erythritol)、マルチトール(maltitol)、澱粉(starch)、アラビアゴム(acasia gum)、アルギン酸塩(alginate)、ゼラチン(gelatin)、リン酸カルシウム(calcium phosphate)、ケイ酸カルシウム(calcium silicate)、セルロース(cellulose)、メチルセルロース(methyl cellulose)、微結晶性セルロース(microcrystalline cellulose)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、水(water)、ヒドロキシ安息香酸メチル(methyl hydroxybenzoate)、ヒドロキシ安息香酸プロピル(propyl hydroxybenzoate)、タルク(talc)、ステアリン酸マグネシウム(Magnesium stearate)および鉱油(mineral oil)によって例示される。
【0023】
経口投与のための固形製剤(solid formulations)には錠剤、丸薬、粉末、顆粒およびカプセルがある。このような固形製剤は、例えば澱粉、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)、ゼラチンなどの少なくとも1種の適切な賦形剤と混合して製造できる。簡単な賦形剤を除いて、例えばステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤(lubricants)が使用できる。
経口投与のための液状製剤は懸濁液、溶液、エマルジョンおよびシロップであり、前記言及された製剤は水や流動パラフィンなどのように一般に用いられる単純希釈剤に加えて、湿潤剤(wetting agents)、甘味剤(sweeteners)、芳香剤(aromatics)、保存剤(preservatives)などの多様な賦形剤を含むことができる。
【0024】
本発明の新規な抗結核ペプチドは、静脈注射(intravenous injection)のために製剤化できる。静脈(IV)内の使用のために、本発明の化合物の水溶性形態は一般に用いられるいずれの静脈流体内でも溶解でき、注入によって投与できる。静脈用製剤は担体、賦形剤、またはカルシウム、ヒト血清アルブミン、クエン酸、酢酸、塩化カルシウム、炭酸およびその他の塩を制限なく含む安定剤を含むこともできる。静脈用流体は、制限なく、生理食塩水またはリンガー液を含むこともできる。また、本発明の抗結核ペプチドは注射器、カニューレ(cannulae)、カテーテル(catheters)および線(lines)に配置されてもよい。
【0025】
非経口投与のための製剤は、水性または非水性等張性滅菌注射溶液または懸濁液の形でありうる。これらの溶液または懸濁液は経口投与のための製剤に使用するために言及された担体の少なくとも1種を有する滅菌粉末または顆粒から製造できる。本発明の新規な抗結核ペプチドは、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウムおよび/または多様なバッファで溶解できる。
筋肉内投与、非経口投与または静脈内投与の準備のために、抗結核ペプチドの殺菌製剤または前記化合物の適切な水溶性塩の形態、例えば塩酸塩(hydrochloride salt)が注射用水(WFI、Water−for−Injection)、生理食塩水或いは5%ブドウ糖などの薬学的希釈剤に溶解して投与できる。
【0026】
また、ペプチドの適切な不溶性形態は、水性塩基または薬学的に許容される油性塩基(oil base)、例えば、オレイン酸エチルなどの長鎖脂肪酸のエステル(ester of a long chain fatty acid)である塩基で懸濁液として製造、投与されてもよい。注射可能なデポー型(injectable depot forms)はポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーで抗結核ペプチドのマイクロカプセル化マトリクスを形成することにより作られる。薬物に対するポリマーの比率と採用された特定のポリマーの性質に依存し、薬物放出速度が制御できる。生分解性ポリマーはポリオルトエステル(poly−orthoesters)とポリ無水物(poly−anhydrides)を含む。また、デポー注射製剤(depot injectable formulations)は身体組織と両立可能な互換できるマイクロエマルジョンに薬物をエントラップ(entrap)することにより製造できる。
【0027】
目または耳に適用するために、本発明のペプチドは軟膏、クリーム、ローション、ペイントまたは粉末のように疎水性または親水性塩基に製剤化できる。
直腸投与に適用するために、本発明のペプチドはココアバター、ワックスまたはその他のグリセリド等の既存の担体と混合される坐薬として製剤化できる。
また、本発明の抗結核ペプチドは、測定された定量吸入器(metered dose inhalers)および噴霧器(nebulizers)などの吸入器に使用することもできる。
【0028】
また、本発明は、本発明の化学式1または化学式2の抗結核環状ペプチドを製造するためのプロセスを提供する。本発明のプロセスは、次の段階を含むことができる:液体培養培地で好気的条件の下に抗マイコバクテリアペプチドを生産するノノムラエ種(Nonomuraea sp.)MJM5123菌株の微生物を培養する段階、および発酵された菌糸体から本発明の抗結核環状ペプチドを分離する段階。
本発明の一実施例において、前記抗結核環状ペプチドを分離するための段階は、次の段階を含むことができる:溶離液としてメタノールとクロロホルムを用いてノノムラエ種MJM5123菌糸体のメタノール抽出物の真空液体クロマトグラフィー(VLC)を行う段階、溶離液としてメタノールを用いてセファデックスLH−20オーブンカラムクロマトグラフィー(Sephadex LH−20 open column chromatography)を行う段階、および溶媒としてHEMWat+2を用いて高速向流クロマトグラフィー(HSCCC:High Speed Countercurrent Chromatography)を行う段階。
【0029】
本発明の別の実施例において、前記抗結核環状ペプチドを分離するための段階は、次の段階を含むことができる:溶媒としてメタノールを用いてノノムラエ種MJM5123菌糸体を抽出する段階、液体メタノールを作るためにメタノール抽出液の30%まで水を添加する段階、ヘキサンを用いてメタノール抽出物を脱脂する段階、液体層を分離し、65%まで液体メタノールを調整する段階、クロロホルムを用いて前記液体層を抽出する段階、メタノールを用いて前記クロロホルム抽出物を濃縮および溶解する段階、溶離液としてメタノールを用いてセファデックスLH−20カラムクロマトグラフィーを行う段階、および逆相ゲル(RP−18)で充填されたカラムを備えたHPLCを行う段階。
【発明の効果】
【0030】
新規な抗結核環状ペプチドは、結核に対する治療剤として効果的に使用できるように、単一薬剤耐性結核菌株、MDR(multi−drug resistant)およびXDR−TB(extensively drug resistant tuberculosis)を含む複製/非複製M.結核に対抗して強い活性、および哺乳動物細胞に対しては非常に低い細胞毒性(cytotoxicity)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実用的で好適な実施様態が次の実施例に示されているように例示される。
ところが、当業者は本発明の開示を考慮することにより本発明の思想と範囲内で修正および改善を加え得ることが理解できるであろう。
【0033】
実施例1:ハイスループットスクリーニング(high−throughput screening)のための微生物抽出物ライブラリーの製造
約7,000の放線菌分離菌は、高山地域、熱帯地域、極地方、砂漠、火山などの独特な気候条件および生態系を有する地域から収集された土壌試料から分離され、韓国明知大学校のECUM(Extract Collection of Useful Microorganisms)によって維持されている。9種の相異なる抽出物が、各抗結核候補をスクリーニングするために各分離菌から製造された。第一、それぞれの分離菌はG.S.S、Bennett’sおよびGYCの30mLで培養された。菌糸体および培養液が遠心分離によって分離された後、前記菌糸体はメタノールで抽出され、前記培養上清液はそれぞれ酢酸エチルと水で分割された。最後に、3種の培地で培養された各微生物分離菌から9つの有機および水溶性抽出物が真空蒸発によって濃縮乾燥し、−70℃で急速冷凍機に保存された(
図1、
図2および表1)。
【0035】
実施例2:大規模のスクリーニング
ECUMの各放線菌分離菌は、最初3つの相異なる培養培地、すなわちG.S.S(富栄養培地)、Bennett’sおよびGYC(最少培地)で20mLの培養液で発酵された。前記菌糸体はメタノールで抽出され、培養上清液は酢酸エチルで抽出されたが、これは水で分割されて分離菌当たり9個の抽出物を生成した。100μLの分取量(aliquot)が96ウェルプレートで乾燥し、明知大学校からUICへ発送されたが、100μLのDMSOで可溶性とし、試験培養液で1:100に希釈した。〜63,000抽出物のHTSは、マイクロアラマーブルー分析(MABA、micro Alamar Blue Assay)の蛍光測定値によって決定される7H12培地で結核菌(
M.tuberculosis)=90%抑制(Cソースとしてのパルミチン酸)で349抽出物(0.55%)を産出した。次いで、初期ヒット(hits)の90はECUMで1リットルの規模で再発酵され、その後、抽出物当たり6個の画分(fraction)を産出するために、前記抽出物が、メタノール−水濃度勾配20〜100%(MeOH−water gradient 20〜100%)の後にクロロホルム(CHCl
3)100%で固体相反転シリカゲル抽出(solid phase reversed−silica gel extraction)でUICから分画された。画分は次の項目で生物学的にプロファイリングされた:1)哺乳類細胞毒性(ベロ細胞IC
50)、2)非複製結核菌(M.tuberculosis)に対抗する活性(LORA)、3)リファンピン、イソニアジド(INH)、ストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)、カプレオマイシン(CAP)、シクロセリン(CS)(また、単にこのような放線菌由来抗生剤のみを見つけるのではないことを明らかにするために)またはモキシフロキサシン(MOX)に耐性を有する結核菌株(M.tuberculosis strains)に対抗する活性、4)スメグマ菌(M.smegmatis)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大腸菌(E.coli)およびC.アルビカンス(C.albicans)に対抗する活性。これらの結果に基づいて、20個の放線菌株は追加調査のために優先順位が与えられた。
【0036】
実施例3:MJM5123の識別
形態学的および培養特性の決定
MJM5123は、韓国の漢拏山から収集された土壌試料から分離された。前記菌株の属(genus)は細胞壁構成要素の特性形態と化学的分析によって識別された。形態学的および培養特性を決定するために、前記菌株を酵母エキス麦芽エキス寒天(yeast extract malt extrat agar)(ISP2)、オートミール寒天(ISP3)、無機塩澱粉寒天(ISP4)、グリセロールアスパラギン寒天(ISP5)のように国際ストレプトミセスプロジェクト(ISP;International Streptomyces Project)培地を用いて28℃で2週間成長させた[Shirling, E. B. and D. Gottlieb, Methods for characterization of Streptomyces species. Int J Syst Evol Microbiol. 1966 16(Pt 3): 313-330]。前記コロニー色相(colony colors)が色相ハモニー説明書[Jacobson, E., W. C. Grauville, et al., Color Harmony Manual. 1958. Chicago, Container Corporation of America]を用いて決定された。胞子(spores)と菌糸体は電子顕微鏡(日立、S−3500N、日本)をスキャンして観察された(
図3)。
【0038】
気中菌糸体(aerial mycelium)の成長および胞子形成は、++、優秀;+、普通;±、不良;−、成長なしまたは胞子形成なしとしてスコアリングされる。
【0039】
前記菌株は、ISP2培地でよく成長し、他の培地で普通の成長を示した。栄養菌糸体(vegetative mycelium)および気中菌糸体の色相は拡散性色素のないベージュ色であった。白色胞子はオートミール培地(ISP3)でのみ形成され、走査電子顕微鏡は気中菌糸体上にシワの寄った胞子の螺旋状鎖を示した。
【0040】
メラノイド色素に対してテストするために、ペプトン酵母エキス鉄寒天(peptone yeast extract iron agar)(ISP6)とチロシン寒天(ISP7、チロシンを有し、或いはチロシンなし)が使用された。成長のための温度範囲、塩化ナトリウム(NaCl)耐性およびpHの範囲がISP3培地で決定され、抗生剤耐性試験は28℃で2週間ISP2培地を用いて行われた。
【0042】
特性は(++)、ポジティブ;(+)、普通;(−)、ネガティブとしてスコアリングされる。
【0043】
MJM5123はメラニンを生産することなく栄養供給源としてチロシンを吸収し、前記菌株はpH5.0〜9.0、0〜3.0%のNaClで成長することができ、20℃〜37℃で良い成長を示した。MJM5123はアプラマイシン(apramycin)、カナマイシン(kanamycin)、バンコマイシン(Vancomycin)およびチオストレプトン(thiostrepton)に対しては脆弱であったが、アンピシリン(ampicillin)に対しては耐性を有する。
【0045】
特性は(+)ポジティブ;(−)ネガティブとしてスコアリングされる。
【0046】
ISP9寒天培地が唯一の炭素ソースとして炭水化物の利用を試験する基礎培地(basal medium)として使用された。炭水化物(Sigma−Aldrich、CAR10)の原液(stock solution)(10%W/V)は濾過によって滅菌され、1.0%の最終濃度でISP9培地をオートクレーブするために添加された。MJM5123はヘキソース、ペントース、アルコール糖および二糖類を使用した(表5)。
【0048】
特性は(++)ポジティブ;(+)普通;(−)ネガティブとしてスコアリングされる。
【0049】
化学分類学的特性の決定
細胞壁構成要素の化学分類学的特性について、凍結乾燥した菌糸体が28℃で7日間回転振動機上のTSB培地(TSB、tripticase soy broth)で成長させて製造された。グリシンとジアミノピメリン酸(DAP、diaminopimelic acid)の立体異性体(stereoisomers)がTLCによって決定された[Becker, B.; Lechevalier, M. P.; Gordon, R. E.; Lechevalier, H.A. Rapid differentiation between Nocardia and Streptomyces by paper chromatography of whole-cell hydrolysates. Appl Microbiol 1964, 12, 421-423]。ドライセル(dry cells)5mgを1mLの6N塩酸と共に小さいアンプル内にシールした。アンプルは100℃のオーブンで一晩保管された。空冷した加水分解物がWattman1番の濾紙で濾過された。濾過液は濃縮乾燥し、蒸留水0.3mLに溶解した。前記溶液の2μLをTLCプレート上に滴下し(Merck、TLCセルロースFガラスプレート番号105,718)、メタノール:蒸留水:6N塩酸:ピリジン(80:26:4:10、vol/vol)の溶媒系で4時間成長させた。空気乾燥の後、0.2%のニンヒドリン溶液(アセトン)で噴霧し、100℃で3分間加熱してスポットを現した。0.1MD、L−DAP(Sigma Aldrich、番号D−1377)1μmと0.1Mグリシン(Sigma Aldrich、番号50046)1μLが定格標準(authentic standards)として使用された。グリシンとD,L−DAPスポットは灰色−緑色で視覚化された。
【0050】
糖類分析がLechevalierのやや修正された方法で行われた。ドライセル50mgを、1N硫酸2.0mLを有する密封アンプルで2時間沸かした。冷却した加水分解物を50mLの円錐型遠心チューブに移し、pHを飽和水酸化バリウムによって5.4に調整した。遠心分離の後、上清液は0.3mLまで濃縮し、不溶粒子は遠心分離によって除去した。溶液1μLをプレート(Merck、TLCセルロースFガラスプレート番号105718)TLC上にロードした。キシロース、アラビノース、ガラクトースを含む第1糖類(Sima Aldrich、CAR10)標準と、ラムノース、リボース、マンノース、ブドウ糖を含む第2(Sigma Aldrich、CAR10)糖類標準をn−ブタノール:蒸留水:ピリジン:トルエン(10:6:6:1、vol/vol)溶媒系で1%濃度でそれぞれ4時間適用した。アニリンフタル酸溶液(水飽和ブタノール100mLに溶解した、3.25gのフタル酸水素アニリン塩(TCI−GR、No.P0284))を噴霧した後、TLCプレートを100℃で4分間加熱した。グリシンとD,L−DAPはMJM5123のペプチドグリカンの構成成分であり、主要糖は全体細胞加水分解物におけるキシロース、ガラクトース、マンノース、ブドウ糖であった(
図4)。
【0051】
極性脂質とメナキノンがMinnikin et al.などの方法によって抽出された[Minnikin, D. E.; O'Donnella, A. G.; Goodfellowb, M.; Aldersonb, G.; Athalyeb, M.; Schaala, A.; Parlett, J. H. An integrated procedure for the extraction of bacterial isoprenoid quinones and polar lipids. J Microbiol Methods 1984, 2, 233-241]。メタノール:蒸留水(100:10、vol/vol)2mLと石油エーテル2mLをドライセル50mgに添加し、15分間混合した。上部層は新しいガラス瓶に移した。石油エーテル1mLを下部層に添加して混合した。組み合わせられた上部層は常温で窒素ガスの下で蒸発し、残留物がメナキノンの分析に使用された。極性脂質が下部層から抽出された。下部層は5分間沸騰水の容器内で加熱した。37℃に冷却した後、クロロホルム:メタノール:水(90:100:30、vol/vol)溶液2.3mLを添加して60分間混合した。遠心分離の後に上清液を新しいチューブに移した。クロロホルム:メタノール:水(50:100:40、vol/vol)溶液0.75mLを5分間混合して下部層が抽出され、上清液は前記チューブと組み合わせられた。この段階をもう1回繰り返し行った。収集された上清液はクロロホルム1.3mLと0.3%塩化ナトリウム溶液1.3mLと共に完全に混合された。遠心分離して分割した後、上部層は捨て、下部層は室温で窒素ガスの下に乾燥させた。極性脂質抽出物をクロロホルム:メタノール(2:1、vol/vol)60μLに溶解させ、溶液10μLをTLCプレート(Merck、TLCシリカゲル60F254ガラスプレート番号105729)上に滴下し、クロロホルム:メタノール:蒸留水(65:25:4、vol/vol)を用いる2次元TLC方法で識別し、現像溶剤(developing solvent)としてクロロホルム:メタノール:蒸留水(40:7.5:6:2、vol/vol)を用いた。極性脂質は4つの試薬、エタノール内の5%リンモリブデン酸溶液(Sigma Aldrich、P4869)、水飽和N−ブタノール内の0.2%ニンヒドリン溶液(Sigma Aldrich、N4876)、α−ナフトール硫酸およびモリブデンブルー(Sima Aldrich、M1942)をもって噴霧することにより視覚化された。
【0052】
極性脂質分析の結果より、MJM5123の極性脂質はホスファチジルエタノールアミン(PE;phosphatidylethanolamine)、ジホスファチジルグリセロール(DPG;diphosphatidylglycerol)、ホスファチジルモノメチルエタノールアミン(PME;phosphatidylmonomethylethanolamine)、ホスファチジルイノシトールマンノシド(PIM;phosphatidylinositol mannoside)、未知のリン脂質(PL;phospholipid)および未知の極性脂質(L)から構成されることが解明された(
図5)。
【0053】
細胞脂肪酸(cellular fatty acids)は気体クロマトグラフィーと結合した微生物識別システム(MIDI;Microbial Identification System、version4.5)を用いて分析され、ACTIN6データベースで識別された。主要細胞脂肪酸はiso−C16:0(25.5%)であり、各種の他の脂肪酸も検出された(表6)。
【0055】
値は全体細胞脂肪酸の比率である。1.0%以下の極少量は表示されない。
【0056】
系統発生分析
16S rDNAが27f(5’−AGAGTTTGATCCTGGCTCAG−3’、配列番号1)と1492r(5’−GGTTACCTTGTTACGACTT−3’、配列番号2)のプライマー対を持つMJM5123ゲノムDNAから増幅された。増幅されたDNAはABI 3730XL毛細管DNAシーケンサー上に上述のプライマーを用いてシーケンスされた(Applied Biosystems、USA)。コンピュータを用いた16S rDNAの比較はhttp://www.ncbi-nlm-nih.govで利用可能なNCBI BLASTを用いて行われた。
系統樹(phylogenetic tree)がMEGA4.0ソフトウェアを用いて近隣結合法(neighbor−joining method)によって構成された。系統樹のための分岐支持(branch support)が1000個のブートストラプト(bootstrap)複製によって生成された。
【0057】
BLAST検索によれば、16S rDNAシーケンスは、ノノムラエ・ルブラ(Nonomuraea rubra)DSM 43768T、ノノムラエ・ロゼオラ(Nonomuraea roseola)DSM 43767Tと98%の類似性を示し、ノノムラエ・ディエチアエ(Nonomuraea dietziae)DSM 44320Tと97%の類似性を示した。系統発生分析によってMJM5123がノノムラエファミリーに属したが、密接な関連のある菌株から相異なる下位系統分岐(subclade)に位置している。
ソフトウェアパッケージMEGA、version4.0を用いて近隣結合方法によって、距離が得られ(Kimura−2モデルによって距離オプションを用いて)、クラスタリング(clustering)が行われた。1000個の複製に基づくブートストラプト値は分岐点で百分率にて記載される。バーはヌクレオチド当たり0.002置換(substitutions)を示す(
図6)。
【0058】
密接に関連した菌株とのDNA連関性
密接に関連した菌株とのDNA−DNAの連関性がマイクロプレートハイブリッド化方法を用いて蛍光分析によって評価された。DNA−DNAの連関性値はMJM5123が別のゲノム種を示したことを表示する34%〜65%であった(表7)。
【0060】
本発明者は2012年4月3日にノノムラエ種(Nonomuraea sp.)MJM5123を韓国生命工学研究院(KRIBB)のKCTC(Korea Collection for Type Cultures)に寄託した(受託番号:KCTC 12178BP)。
【0061】
実施例4:発酵プロセスの最適化
抗結核ペプチドの生産性を改善するために、最適の発酵プロセスと費用効率的な培地が開発された。菌株MJM5123は、多様な炭素および窒素供給源、例えばブドウ糖、フルクトース、マルトース、ガラクトース、キシロース、スクロース、グリセリン、大豆油、澱粉、デキストリン、アミノ酸、酵母エキス、膵臓消化カゼイン、牛肉エキス、ペプトン、麦芽エキス、オートミール、大豆粉、酵素分解された大豆粉、綿実粕、コーンスティープリカー、無機塩類などを用いることができる。MJM5123は広範囲の温度とpH(20〜40℃、pH5.0〜9.0)で成長した。ところが、接種前に初期培地pHを〜7.2に調整することが有利である。発酵温度を34℃に維持したとき、最も効率的な成長と力価(titer)が達成された。各段階に対する3段階発酵手続きおよび培地が、費用効率的な生産および後続処理の容易性のために、次のとおり開発された。
【0065】
機械的で再生産可能な処理のために、冷凍栄養菌糸体(FVM:frozen vegetative mycelia)が次のとおり製造された;28℃で7日間ISP3培地で成長した単一菌糸を、SC培養液70mLを含む500mLのバッフルフラスコに接種し、3日間200rpmの振動速度にて34℃で培養した。全体培養液は50%グリセロールと完全に混合し、栄養菌糸体−グリセロール混合物を使用するまで−80℃で保管した。
【0066】
前記冷凍栄養菌糸体(FVM)は10%v/vで前記活性化培養の開始に使用された。活性化段階は54時間200rpmの振動速度にて34℃で行われた。この活性化段階を介して、充填された菌糸体容積(PMV)は15%であり、pHは7.58であった。前記幼若活性栄養培養液が10% v/vで種培養(seed culture)のために使用された。2番目の種培養は60時間200rpmの振動速度にて34℃で行われた。前記PMVとpHはそれぞれ43%、7.48であった。前記種培養は10%v/vで主発酵培地に移された。主発酵は144時間34℃で攪拌速度(agitation speed)600rpm、通気(aeration)0.3vvmで行われた。最終PMVはpH8.20で80%であり、総糖は1.8%未満であった。発酵過程は373mg/LのH−14を産出した(
図7)。
【0067】
実施例5:ノノムラエ種MJM5123菌株からの新規な抗結核ペプチドH−14とH−16の分離
分離例1:
20個の優先順位化された放線菌株の一つである菌株MJM5123が大規模発酵され、その有効な画分(fractions)が後述の方法によって実施例1で分離された。
活性と選択性指数(activity and selectivity index)をモニタリングするために、MABA、LORAおよびベロ細胞毒性を用いて生物学的特性化と併用して、菌株E5123の大規模菌糸体メタノール抽出物が化学的分画プロセス(chemical fractionation process)を経た。活性成分の分画および分離(isolation)はクロマトグラフィー分離の3つの段階を関連させた。20%での水/メタノール濃度勾配段階を用いて、逆相シリカゲル(reversed phase silica gel)上に、前記抽出物(128.7g)の真空液体クロマトグラフィー(VLC)は7個の化学的に異なる画分VC−1〜7を産出した。それぞれ100%メタノールと100%エタノールで溶出した画分VC−6とVC−7に対して、MIC<0.76、0.74μg/mLが観察された。VC−6およびVC−7は、再結合し(8.47g)、溶離液としての100%エタノールによってセファデックスLH−20オーブンカラム上に81個の画分にさらに分離され、S−1からS−11まで11個の再結合した画分のパネルを産出した(TLCによって)。副画分(subfactions)S−2とS−3に対して、MICは<0.21μg/mLであった。S−3(374mg)は、GUESS方法によって最も適した溶媒系として選択されたHEMWat+2で高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)によって110個の画分(fraction)に分離された[Kubo, I. Recent applications of counter-current chromatography to the isolation of bioactive natural products. J Chrom 1991, 538, 187-191]。これらの画分はH’−1からH’−11まで11個の画分のパネルに再結合した。副画分H−4、H−6、H−8およびH−9に対して、MICは<0.391μg/mLであった。S−2(177mg)がHEMWat+2でHSCCCによって140個の画分にさらに分離され、H−1からH−26まで26個の画分のパネルに再結合した。H−3、H−5、H−7、H−9〜H−23に対して、MICは<0.5μg/mLであった。活性ペプチド画分のうち、H−14とH−16(8mg、収率=0.4mg/L)が、qHNMR分析によれば最も純粋であったので、構造的解明(structural elucidation)のために選択された。
1HNMRスペクトルの類似性に応じて、H−11はH−15、H’−6はH’−8とそれぞれ再結合した後、H−14(約80%純度)189mgが得られた(収率=9.45mg/L)、活性ペプチドの全量は約369mgであり、収率は18mg/Lである。
【0068】
分離例2:
MJM5123の発酵によって生成された抗結核化合物は、主に細胞内部で維持された。抗結核化合物は菌糸ケーキ(mycelial cake)から抽出された。上述したように、後者は全体発酵液の濾過によって発酵過程から収穫された。菌糸ケーキの抽出はメタノールを用いることが最も効果的であったが、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルムなどのその他の有機溶媒を用いてもよい。未加工の抗結核活性化合物は適量で抽出物の蒸発および溶媒−溶媒分割(solvent−solvent partitioning)を含むルーチンプロセスによって抽出溶液から回復された。
【0069】
メタノール抽出物は37℃の真空で濃縮され、70%メタノールを得るために、前記濃縮された溶液に脱イオン水が添加された。水混合物はn−ヘキサンと脱イオン水の1容量(one volume)で希釈された脱脂溶液に分割することにより脱脂された。これは1容量のクロロホルムで抽出され、抗結核活性化合物を含むクロロホルム層は脱イオン水で振盪洗浄された。前記クロロホルム層を乾燥させ、100%メタノールに溶解させ、100%メタノールと平衡をなすセファデックス
TMLH−20に適用された黄色固体を産出した。抗結核活性化合物は100%メタノールの溶離により立体排除クロマトグラフィーでプールされた(pooled)。強力な抗結核活性を示すH−14とH−16は、移動相(mobile phase)として、20μMリン酸ナトリウム(pH8.0)で緩衝された35%水性アセトニトリル溶液と逆相C−18カラムを用いる高性能液体クロマトグラフィーで完全に精製された。精製された画分はアセトニトリルを除去するために気化し、クロロホルムで抽出された。最後に、クロロホルム層は乾燥濃縮され、高い水準に精製されたH−14とH−16は構造決定および体外抗結核活性を含む追加研究対象であった。
【0070】
実施例6:抗結核環状ペプチドH−14の構造解明
H−14は菌糸体のMeOH抽出によって得られたノノムラエ種MJM5123の代謝産物である。H−14に対する分子式は高解像度質量分析(high resolution mass spectrometry)と
1H、
13C NMRによって決定されたようにC
83H
134O
17N
14である。
H−14は光活性淡黄色粉末(optically active light yellow powder)として分離された。高解像度質量スペクトルは1600.0189m/zで陽イオンピーク[M+H]
+を示し、1621.9982m/zで陽イオンピーク[M+Na]
+を示し、1599.0111の正確な質量を示す。IRスペクトルはマルチプルアミド部分(multiple amide moities)(1632.16cm
−1)の存在を暗示する。UVスペクトルは、H−14が211nm(=54209M
−1Mcm
−1,48、25℃、メタノールで)、219nm(=55266M
−1cm
−1、48、25℃、メタノールで)、263nm(=7925M
−1cm
−1、48、25℃、メタノールで)、281nm(=6465M
−1cm
−1、48、25℃、メタノールで)、および291nm(=5839M
−1cm
−1、48、25℃、メタノールで)における吸収帯域であり、芳香族残基を有するペプチドであることを示唆した。CDスペクトルは、H−14が220nm(25℃、アセトニトリルで)でモル楕円率(molar ellipticity)が1918530degcm
2mol
−1であり、196nm(25℃、アセトニトリルで)で616094degcm
2mol
−1であり、H−14は逆平行−βシート構造(antiparallel β−sheet structure)であるペプチドであることを示唆する。
【0071】
この分子が相対的に大きいサイズを持つにも拘わらず、NMRスペクトルは許容可能な信号分散を示し、よって構造情報の価値のあるソースとなった。メタノール−d
3における
1H NMRスペクトルは、交換の際に完全に重水素化されたメタノールで消える9.20ppm〜7.72ppmの8つの交換可能なプロトン信号をディスプレーした。また、信号が一つのフェニル基と他の芳香族系に対しては芳香族領域コードで現れ、ダブレット(doublets)が20個の脂肪族メチル基に対応する0.73〜1.33ppmで発見された。ペプチドの場合に対しては、驚くべきことに、2.16、2.31、3.14、3.23、3.26、3.33および3.82ppmで7個のシングレット(singlet)が現れ、2.31ppmにおけるシングレットが2つのメチル基に対して統合することにより、これは8N−メチルおよび/またはメトキシ基を示す。アミド陽性領域でダブレットを持つ信号、および5.4〜0.7ppmの完全な範囲をカバーする信号の分布は、前記調査された化合物が本当にペプチドであることを明確に示した。
【0072】
ペプチドとして前記化合物の分類(classification)を支持する追加分光証拠は、13個のカルボニル炭素に該当する、170.92〜175.14ppmの範囲内にある総12個の(アミド−)カルボニル信号を示す
13C NMRスペクトルから派生した。DEPT135およびHSQC実験を用いることにより、34個のメチン、3つのメチレンおよび28個のメチル信号が識別された。これらの信号は155.23、142.68、140.04、118.36および112.47ppmで5つの第四級炭素信号と共に、H−14に存在する総83個の炭素を示した。
【0073】
特に、COSY、TOCSY、HSQC、HMBCおよび半選択的な(semi−selective)HMBC実験に基づく、H−14の2D NMRスペクトルの広範囲な分析の結果として、15個の離散、
1H、
1Hスピンシステム:N,N−Me
2−Val、Val
1、N−Me−L−allo−Ile、L−Thr、N−Me−L−Thr、L−Val
2、N−Me−L−Leu、L−Val
3、N−Me−L−Val、N−Me−4−OMe−L−Trp a、N−Me−4−OMe−L−Trp b、L−Val
4、R−β−OH−L−Phe a、R−β−OH−L−Phe bおよびL−Val
5の説明が行われた。
1Hと
13Cに対する詳細な割り当て(assignment)が表11に与えられた。ターミナルメチル基の
13Cと
1H信号は非常に混雑な地域内に存在する。
13C NMRスペクトルは19.10ppm〜20.04ppmまで0.94ppmウィンドウ内に14炭素を示す14炭素信号をディスプレーし、
1H NMRスペクトルは0.85ppm〜1.09ppmまで0.14ppmウィンドウ内に47プロトンを示す17プロトン信号をディスプレーした。HSQCおよびHMBC実験の解像度は、これらの信号に対する連結性を確立するのに十分高くないため、半選択(semi−selective)HMBC実験を導入したが、これはホモ核プロトンカップリング変調(homonuclear proton coupling modulation)を抑制することにより、間接的
13C次元で高解像度を得る。直接的なH−C連結性は半選択HMBC実験で抽出された
13C−
1H単一結合相関(single bond correlations)を用いて構築された。これらの相関はF2方向に沿って126Hzの周囲にカップリング定数(coupling constant)として観察された。メチル基は半選択(semi−selective)HMBC実験で抽出されたメチルプロトン信号と一般にβ−炭素信号、およびメチル炭素信号と一般にβ−プロトン信号間の前記
1H、
13C長距離相関(long−range correlations)を用いてそれぞれそれらのスピンシステムに連結された。
【0074】
N−Me−4−OMe−L−TrpとR−β−OH−L−Pheユニット内の連結性はHMBC実験で抽出された
1H、
13C長距離相関を用いて確立された。このようなHMBC相関がN−Me−4−OMe−L−Trp H
4/N−Me−4−OMe−L−Trp C
β、R−β−OH−L−Phe H
2’/R−β−OH−L−Phe C
β、およびR−β−OH−L−Phe H
5’/R−β−OH−L−Phe C
βについて観察された。
また、N−Me−4−OMe−L−Trpのメトキシ基の位置はHMBC相関を分析して決定された。HMBC相関がN−Me−4−OMe−L−Trp H
12/N−Me−4−OMe−L−Trp C
10、N−Me−4−OMe−L−Trp H
8/N−Me−4−OMe−L−Trp C
6、N−Me−4−OMe−L−Trp H
7/N−Me−4−OMe−L−Trp C
11、N−Me−4−OMe−L−Trp H
9/N−Me−4−OMe−L−Trp C
11について観察された。
【0075】
N−メチル基の位置はHMBC相関を分析して決定された。(i、i)H
NMe、Cαおよび/または(i、i−1)H
NMe、C
C=0HMBC相関がN,N−Me
2−Val H
6(7)/N,N−Me
2−Val C
α、N−Me−L−allo−Ile H
7/Val
1 C
C=0、N−Me−L−allo−Ile H
7/N−Me−L−allp−Ile C
α、N−Me−L−Thr H
5/L−Thr C
C=0、N−Me−L−Thr H
5/N−Me−L−Thr C
α、N−Me−L−Leu H
7/L−Val
2 C
C=0、N−Me−L−Leu H
7/N−Me−L−Leu C
α、N−Me−L−Val−H
6/L−Val
3 C
C=0、N−Me−L−Val H
6/N−Me−L−Val C
α、N−Me−4−OMe−L−Trp H
13/N−Me−L−Val C
C=0、N−Me−4−OMe−L−Trp H
13/N−Me−4−OMe−L−Trp C
αについて観察された。
【0076】
それぞれのアミノ酸残基の大部分は、以後、N,N−Me
2−ValおよびN−Me−L−Leuユニットを除いて、
1H、
13C−長距離相関によって順次連結された。各アミノ酸残基に対してH
α、C
C=0の間に2つの相関、(i、i)H
α、C
C=0および(i、i−1)H
α、C
C=0が観察された。これは一緒にペプチド結合連結性を決定する。これに対し、H
β、C
C=0の間に只一つの相関が観察される。これは前記残留物のカルボニル基を決定する。HMBC実験が170.91ppm〜175.14ppmの4.23ppmウィンドウに提供される13
13C信号で前記混雑したカルボニル領域を解決することができないので、さらに半選択HMBC実験が採用された。N,N−Me
2−Val H
α/N,N−Me
2−Val C
C=0、N,N−Me
2−Val H
β/N,N−Me
2−Val C
C=0、Val
1 H
α/Val
1 C
C=0、Val
1 H
β/Val
1 C
C=0、N−Me−L−allo−Ile H
α/N−Me−L−allo−Ile C
C=0、N−Me−L−all−Ile H
α/Val
1 C
C=0、N−Me−L−allo−Ile H
β/N−Me−L−allo−Ile C
C=0、L−Thr H
α/L−Thr C
C=0、L−Thr H
α/N−Me−L−allo−Ile C
C=0、L−Thr H
β/L−Thr C
C=0、N−Me−L−Thr H
α/N−Me−L−Thr C
C=0、N−Me−L−Thr H
α/L−Thr C
C=0、N−Me−L−Thr H
β/N−Me−L−Thr C
C=0、L−Val
2 H
α/L−Val
2 C
C=0、L−Val
2 H
α/N−Me−L−Thr C
C=0、L−Val
2 H
β/L−Val
2 C
C=0、N−Me−L−Leu H
α/N−Me−L−Leu C
C=0、N−Me−L−Leu H
α/L−Val
2 C
C=0、N−Me−L−Leu H
β/N−Me−L−Leu C
C=0、L−Val
3 H
α/L−Val
3 C
C=0、L−Val
3 H
β/L−Val
3 C
C=0、N−Me−L−Val H
α/N−Me−L―Val C
C=0、N−Me−L−Val H
α/L−Val
3 C
C=0、N−Me−L−Val H
β/N−Me−L−Val C
C=0、N−Me−4−OMe−L−Trp H
α/N−Me−4−OMe−L−Trp C
C=0、N−Me−4−OMe−L−Trp H
α/N−Me−L−Val C
C=0、N−Me−4−OMe−L−Trp H
β/N−Me−4−OMe−L−Trp C
C=0、L−Val
4 H
α/L−Val
4 H C
C=0、L−Val
4 H
α/N−Me−4−OMe−L−Trp C
C=0、L−Val
4 H
β/L−Val
4 C
C=0、R−β―OH−L−Phe H
α/R−β−OH−L−Phe C
C=0、R−β−OH−L−Phe H
α/L−Val
4 C
C=0、R−β―OH−L−Phe H
β/R−β−OH−L−Phe C
C=0、L−Val
5 H
α/L−Val
5 C
C=0、L−Val
5 H
α/R−β−OH−L−Phe C
C=0、L−Val
5 H
β/L−Val
5 C
C=0について関係が観察された。NMe
2−ValとNMe−L−Leuからカルボニル基の
13C信号は173.29ppmでオーバーラッピングし、カルボニル基とのVal
1 H
αとL−Val
3 H
αの連結性が未定のままで残し、このようにH−14に対する2つの可能な構造を残した。
【0077】
また、L−Thr H
βとL−Val
5 C
C=0間のHMBC相関が観察され、H−14がC末端カルボニル基とL−THR残基の側鎖との間で環化された環状デプシペプチド(cyclic depsipeptide)であることを示唆する。
高解像度質量スペクトル分析によって決定された1599.0111の分子量と共に、このデータは分子式C
83H
134N
14O
17と一致する。
ところが、N,N−Me
2−ValとL−Val
1間の連結性は、m/z354.32で断片イオン(fragment ion)[N,N−Me
2−Val+L−Val
1+N−Me−L−allo−Ile]
+を示すH−14のダンデム質量スペクトル(tandem mass spectrum)の分析によって確認された。
【0078】
分子のシーケンスを確立することに役立つ次の断片(fragment)がタンデム質量スペクトルで検出された:m/z(rel.int.)1600.23[M+H]
+(8)、1246.95[M−N,N−Me
2−Val−L−Val
1−N−Me−L−allo−Ile+2H]
+(48)、990.86[M−N,N−Me
2−Val−L−Val
1−N−Me−L−allo−Ile−L−Thr−L−Val
5+2H]
+(7)、800.6[M+2H]
2+(50)、610.41[N,N−Me
2−Val+L−Val
1+N−Me−L−allo−Ile+L−Thr+L−Val
5]
+(36)、354.32[N,N−Me
2−Val+L−Val
1+N−Me−L−allo−Ile]
+(87)。
【0082】
aオーバーラッピングのため、前記信号の多重性(multiplicity)は不確実である。
bメタノール−d
3で
1H NMR実験から得られたデータ
【0083】
MJM5123(Nonomuraea sp.)から分離され、精製されたH−14の構造は、化学式1で表される。
図11は環状H−14ペプチドの構造的配列を示す。
【0085】
結晶化および構造決定
57日にわたる遅い蒸発方法を用いてMeOH:MeCN:水=(1:1:0.5)からH−14の針状の結晶が得られた。結晶サイズは約0.1×0.15×0.5mmであった。X線データはBruker D8ディスカバーX線システム(Bruker D8 Discover x−ray system)上から室温で収集され、結晶(crystal)はX線を0.83に回折させた。前記結晶はユニットセル媒介変数、a=71.64、b=11.43、c=12.70を有する斜方晶系空間(orthorhombic space)P2(1)2(1)2に属した。非対称ユニットに一つの分子がある(
図8および表12)。
【0087】
相(phase)の問題はShelxDソフトウェアを用いて原子の任意の分布で始める反復二重空間直接方法(iterative dual−space direct methods)によって解決された。ShelxDから生成された初期モデルはH−14の2次元構造によって修正され、水分子がグラフィックプログラムWinCootで生成された初期電子密度図(initial electron density map)によって案内されて添加された。最後に、精製プログラムShelxLまたはRefmacでR因子を0.1723減らすことにより、精製されたモデルを得た。
図9に示すように、H−14の全体構造はツイストヘアピンなどの逆並列構造(anti−parallel structure)と類似する。主鎖のC=0とN−H基間の5つのH−結合が全体構造を安定化する。また、取り囲む水分子がH−結合形成に参与する。X−ray構造およびMarfey方法の結果より(図示されていないデータ)、H−14が全てのL−アミノ酸またはそれらの類似体(analogs)から構成されたと結論付けた。NMR分析によって示唆された非標準アミノ酸はいずれも、電子密度図を用いて各原子の位置を検査することにより確認された(
図9および
図10)。
【0088】
実施例7:抗結核環状ペプチドH−16の構造解明
H−16はノノムラエ菌糸体のメタノール抽出物から得たノノムラエ種(Nonomuraea sp.)M5123の別の代謝産物である。H−16に対する分子式は
1H、
13CNMRおよび高解像度質量データによって決定されたようにC
83H
134O
16N
14である。
【0089】
H−16は淡黄色非晶質粉末として得られた。高解像度質量スペクトルは1584.0227m/zで陽イオンピーク[M+H]
+を示し、1606.0035m/zで陽イオンピーク[M+Na]
+を示すが、1583.0149の正確な質量を示す。高解像度質量スペクトルおよび
13C NMRデータは分子式C
83H
134N
14O
16と一致した。
1H NMRデータもH−16がペプチドであることを示した。詳細な
1Hおよび
13C割り当てが表13で与えられる。H−16のNMR分光識別はH−14の分光識別と類似に行われた。この過程でアミノ酸残基のスピンシステムは、さらにCOSY、TOCSY、HSQCおよびHMBCスペクトルを含む、2D NMRスペクトルの解析によって識別された。それぞれのアミノ酸残基が明確にHMBCおよび半選択HMBC相関によって順次リンクされた。このような相関関係はN,N−Me
2−Val H
α/N,N−Me
2−Val C
C=0、N,N−Me
2−Val H
β/N,N−Me
2−Val C
C=0、Val
1 H
α/Val
1 C
C=0、Val
1 H
α/N,N−Me
2−Val C
C=0、Val
1 H
β/Val
1 C
C=0、N−Me−Ile H
α/N−Me−Ile C
C=0、N−Me−Ile H
α/Val
1 C
C=0、N−Me−Ile H
β/N−Me−Ile C
C=0、Thr H
α/Thr C
C=0、Thr H
α/N−Me−Ile C
C=0、Thr H
β/Thr C
C=0、N−Me−Thr H
α/N−Me−Thr C
C=0、N−Me−Thr H
α/Thr C
C=0、N−Me−Thr H
β/N−Me−Thr C
C=0、Val
2 H
α/Val
2C
C=0、Val
2 H
α/N−Me−Thr C
C=0、Val
2 H
β/Val
2 C
C=0、N−Me−Leu H
α/N−Me−Leu C
C=0、N−Me−Leu H
α/Val
2 C
C=0、N−Me−Leu H
β/N−Me−Leu C
C=0、Val
3 H
α/Val
3 C
C=0、Val
3 H
α/N−Me−Leu C
C=0、Val
3 H
β/Val
3 C
C=0、N−Me−Val H
α/N−Me−Val C
C=0、N−Me−Val H
α/Val
3 C
C=0、N−Me−Val H
β/N−Me−Val C
C=0、N−Me−4−OMe−Trp H
α/N−Me−4−OMe−Trp C
C=0、N−Me−4−OMe−Trp H
α/N−Me−Val C
C=0、N−Me−4−OMe−Trp H
β/N−Me−4−OMe−Trp C
C=0、Val
4 H
α/Val
4 C
C=0、Val
4 H
α/N−Me−4−OMe−Trp C
C=0、Val
4 H
β/Val
4 C
C=0、Phe H
α/Phe C
C=0、Phe H
α/Val
4 C
C=0、Phe H
β/Phe C
C=0、Val
5 H
α/Val
5 C
C=0、Val
5 H
α/Phe C
C=0、Val
5 H
β/Val
5 C
C=0について観察された。
【0092】
MJM5123から分離および精製されたH−16の構造は化学式2で表される。
図12は環状H−14ペプチドの構造的配列を示す。
【0094】
実験例1:好気性条件の下で結核に対抗するH−14とH−16のMICおよびMBC
結核菌(M.tuberculosis)に対抗してH−14とH−16の抑制活性はマイクロアラマーブルー分析を用いて測定した[Collins, L. and S.G. Franzblau, Microplate alamar blue assay versus BACTEC 460 system for high-throughput screening of compounds against Mycobacterium tuberculosis and Mycobacterium avium. Antimicrob Agents Chemother, 1997. 41(5): p. 1004-9; Hurdle, J.G., et al., A microbiological assessment of novel nitrofuranylamides as anti-tuberculosis agents. J Antimicrob Chemother, 2008. 62(5): p. 1037-45]。参照菌株M.tuberculosis H
37Rvを用いて好気性条件の下で測定したH−14とH−16に対するMIC(90%に成長を抑制するのに必要な最小抑制濃度)とMBC
99(有機体の99%を死なせる最小濃度)値を表14で示す。
各化合物のMBC
99がそのMICより約2倍高く、よって、H−14とH−16は殺菌的なものと分類されるべきである。
【0096】
結核菌は、細胞から細胞へ遺伝情報を交換しないクローン有機体(clonal organism)である。ヒトと共同進化の過程中に、多くの別個の血統(lineages)、または系統群(clades)が生成されてき、地球の多くの部分で目立つ[Filliol, I., et al., Global phylogeny of Mycobacterium tuberculosis based on single nucleotide polymorphism (SNP) analysis: insights into tuberculosis evolution, phylogenetic accuracy of other DNA fingerprinting systems, and recommendations for a minimal standard SNP set. J Bacteriol, 2006. 188(2): p. 759-72; Gagneux, S. and P.M. Small, Global phylogeography of Mycobacterium tuberculosis and implications for tuberculosis product development. Lancet Infect Dis, 2007. 7(5): p. 328-37]。
表15は、参照としてH
37Rv実験室菌株と共に、地理/遺伝的多様性を代表する6種のマイコバクテリア結核菌株に対抗するH−14とH−16のMIC値を提供する。この6種の菌株に対抗するH−14とH−16のMICは野生型H
37Rvに対抗するMICと比較でき、それが広く効能を持つことを示唆する。
【0098】
実験例2:低酸素の下でM.結核菌に対抗するH−14とH−16のMBC
低酸素の下で非複製M.結核菌に対抗するH−14とH−16の殺菌活性は、低酸素回復分析(LORA:low oxygen recovery assay)を用いて決定された。複製されていない条件の下で10日間培養した後、結核菌の生存能力99%減少に影響した濃度はH−14とH−16の両方とも約1.5μMであった。この低いMBCはH−14とH−16が非複製パーシスタ(non−replicating persistors)の部分母集団(subpopulation)を抑制することにより、結核治療期間を減らすことが可能な潜在性を持つことを示唆する。
【0099】
実験例3:H−14とH−16抗菌選択性
H−14とH−16の選択性は、大腸菌、グラム陰性菌、黄色ブドウ球菌、グラム陽性菌、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、酵母、および6種のマイコバクテリア種(表16)に対抗してそれらをスクリーニングすることにより決定された。その化合物のいずれも大腸菌、黄色ブドウ球菌、およびC・アルビカンスに対する抗菌活性を示さなかった。2つの化合物はMIC 0.4μM以下でM.Kansasiiに対抗し、MIC 1.0μM以下でM.aviumに対抗し、MIC 2.0μM以下でM.chelonaeおよびM.mariumに対抗し、MIC 4.0μM以下でM.smegmatisに対抗する活性であるが、M.abscessusに対抗しては相当少なく活性化された。それらの結果はH−14とH−16が選択的抗マイコバクテリア化合物であることを示唆する。
【0101】
実験例4:哺乳動物細胞に対抗するタンパク結合および毒性
タンパク結合(protein binding)は、化合物の薬物動態学(pharmacokinetics)に影響を与え、究極的に活性非結合化合物の量を減少させることにより、その効率性に影響を及ぼすおそれがある。M.結核に対抗するH−14およびH−16のMICは、表17に示すように、10%ウシ胎仔血清(FBS)、4%ウシ血清アルブミン(BSA)の存在下に追加補充タンパク質(0.4% BSA)なしで決定された。10%FBSまたは4%BSAの存在下でMICが2倍(2−fold)増加し、タンパク結合が自分の効能に悪影響を与えないことを示唆する。
【0103】
哺乳類細胞に対抗するH−14およびH−16の細胞毒性をベロ細胞、アフリカ緑色猿の腎臓細胞株に対してテストして評価した(表18)。細胞毒性は最高試験濃度(32μM)ですら2つの化合物について発見されなかった。
【0105】
実験例5:実験室で生成されたモノ薬剤耐性(mono−drug−resistant)M.結核菌株のパネルに対抗するH−14とH−16のMIC
H−14とH−16がリファンピン(RMP)、イソニアジド(INH)、モキシフロキサシン(Mox)、ストレプトマイシン(SM)、カナマイシン(KM)、サイクロセリン(CS)またはカプレオマイシン(CAP)にそれぞれ耐性があるH
37Rv−isogenic M.結核菌株のパネルに対してテストされた(表19)。2つの化合物はいずれもモノ薬剤耐性結核菌の菌株に対抗してそれらの活性水準を維持し、現在抗結核薬物と交差耐性(cross−resistance)がないことを示唆し、よって、薬物敏感および薬剤耐性結核菌感染に対抗する利用に同等に適する新しい行動モード(novel mode of action)を示唆する。
【0107】
結論的に、H−14およびH−16はいずれも、現在の第1線抗結核薬剤と比較すべき生体外抗結核活性プロファイルを有し、MBC 100−foldで生体外哺乳動物細胞毒性を有しない。複製するマイコバクテリア結核に対抗するMICは、H14、H16、リファンピンおよびイソニアジドに対してそれぞれ0.16μM、0.16μM、0.09μMおよび0.47μMである。H−14とH−16の選択インデックス(ベロセル(VERO cell)IC
50/M結核MIC)は全て620より大きい。活性レベルは地球の系統群を代表する臨床的分離菌に対してだけでなく、環状ペプチド、カプレオマイシンに対抗し、リファンピン、イソニアジド、ストレプトマイシン、カナマイシン、サイクロセリンに耐性を有するM.結核の同種菌株に対抗するように維持される。複製M.結核菌に対抗するMBCは、強い殺菌剤であることを示すH−14およびH−16に対してそれぞれ0.34μM、0.19μMである。化合物はいずれも。LORAにおいて略1.5μMでlog
10だけ非複製M.結核菌の生存能力を減少させ、M.結核パーシスタの部分母集団を抑制することにより、TB治療期間を短縮することが可能な潜在性を示唆する。対照的に、31μMで黄色ブドウ球菌(S.aureus)、大腸菌(E.coli)、C.アルビカン(C.albicans)に対抗する活性が観察されておらず、スメグマ菌(M.smegmatis)に対抗する活性はさらに低かった。これは両ペプチドともの抗結核活性が非常に選択的であることを意味する。さらに、これはこれらのペプチドが代替バクテリア(surrogate bacteria)に対抗してスクリーニングすることによりもともと検出されなかったことを示唆する。4%BSAまたは10%FBSの存在下でMICsが只2倍だけ増加するので、タンパク結合はそれらの効能に悪影響を及ぼしてはならない。