(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バイオマスを、非酸化性ガス雰囲気下又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気下において加熱するバイオマス熱分解ゾーンと、上記バイオマス熱分解ゾーンにおいて発生したガスを、スチームの存在下に加熱するガス改質ゾーンとを備え、かつ、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物を、上記ガス改質ゾーンから上記バイオマス熱分解ゾーンへと順次移動せしめて、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により、バイオマスの熱分解により発生したガスの改質及びバイオマスの熱分解を実行するガス化装置において、上記バイオマス熱分解ゾーンと上記ガス改質ゾーンとが、上記ガス改質ゾーンが上記バイオマス熱分解ゾーンの上方になるように一の容器中に備えられており、かつ、上記バイオマス熱分解ゾーンと上記ガス改質ゾーンとの間に、少なくとも1枚の仕切板を備えており、かつ、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の移動方向を制御するフローガイドを、上記バイオマス熱分解ゾーン中に、上記仕切板の、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の出口近傍から、該複数の粒状物及び/又は塊状物の移動方向に沿って千鳥状に複数段備え、かつ、上記バイオマスを、上記フローガイド近傍を移動する上記複数の粒状物及び/又は塊状物に供給して熱分解を実行することを特徴とするガス化装置。
上記仕切板が、仕切板内に開口部を備えており、及び/又は、仕切板と容器内壁との間に間隙を備えており、上記複数の粒状物及び/又は塊状物が、その開口部及び/又は間隙を通過して、上記ガス改質ゾーンから上記バイオマス熱分解ゾーンへと順次移動する、請求項1又は2記載のガス化装置。
複数の粒状物及び/又は塊状物を予め加熱するための予熱器を、ガス改質ゾーンとバイオマス熱分解ゾーンとを備える上記容器の上記ガス改質ゾーンの上部に更に備える、請求項1〜7のいずれか一つに記載のガス化装置。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日に発生した東日本大震災に端を発し、その後、安全性等の観点から多数の原子力発電設備の操業が停止している。それに伴って、電力供給不足が懸念されており、原子力発電の代替として、太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電、潮力発電、バイオマス発電等の再生可能エネルギーによる発電設備が注目されつつある。これらのうち、太陽光発電、風力発電及び潮力発電は、一時的な電力供給源として期待されてはいるものの、発電量が安定しないことから、安定した電力供給設備としては期待できない。また、水力発電及び潮力発電は、小規模設備であればある程度の需要が見込まれるが、大規模設備を建設するためには設置場所が限定されるという問題がある。
【0003】
一方、東日本大震災の影響による家屋の倒壊、森林崩壊等により、建設系木質廃材、森林の倒木、不要林地残材、間伐材等の木質系バイオマスが大量に発生している。これらの木質系バイオマスを有効利用するために、木質系バイオマス発電設備への期待が高まっている。加えて、該発電設備において木質系バイオマス以外のバイオマスに対する利用拡大が期待されている。
【0004】
木質系バイオマス発電設備には、直接燃焼発電方式とガス化発電方式とがある。直接燃焼発電方式は、バイオマスを燃焼し、その燃焼熱を利用してスチームを発生させてスチームタービンで発電する方式である。この方式では、バイオマスを大量に処理することは可能であるが、発電効率が低いという問題がある。ガス化発電方式は、バイオマスを熱分解し、必要に応じて、更に、熱改質又はスチーム改質を実施して高熱量ガスを製造する方式である。該方式によれば、効率が高く、直接燃焼発電方式に比べてバイオマス量を低く抑えることができる。しかし、該方式においては、バイオマスを均一に熱分解することが必要であり、かつ、熱分解時に発生するタールによる装置トラブルが生ずるという問題があった。
【0005】
上記のガス化発電方式における問題を解決するために、例えば、竪型のガス化炉の上部からバイオマスを供給してバイオマスの充填移動層を該ガス化炉内に形成し、該ガス化炉の下部からガス化剤を供給し、充填移動層を降下するバイオマスを、上昇するガス化剤と向流接触させ熱分解させて生成ガスを得るガス化炉を備えるバイオマスガス化装置において、バイオマスを分級して所定粒径以下のバイオマスの細粒物の重量比率が所定値以下である粒度分布調整バイオマスを得る振動篩と、振動篩からの粒度分布調整バイオマスをガス化炉に供給するバイオマス供給装置を有するバイオマスのガス化装置が提案されている(特許文献1)。該ガス化装置によれば、充填移動層内の均一な高温ガスの上昇流を形成でき、かつ充填移動層での圧力損失を低くすることができ、安定したガス化を維持することができる。しかし、供給されたバイオマスが均一に熱分解されるという証拠はない。また、上記のような粒度分布調整バイオマスを得る必要があり、そのための装置を設けなければならず、コスト高に繋がる。
【0006】
熱分解ガスからタールを除去する装置として、例えば、バイオマスから生成される燃料ガスの流通経路に、該燃料ガスを流通させる多孔状に形成され、且つ加熱されて1100℃以上の熱を蓄積する蓄熱体を設けたバイオマスガス化システムの燃料ガス改質装置が提案されている(特許文献2)。該装置は、燃料ガスが上記の蓄熱体を通過する際に、タールを燃焼させて除去するものである。しかし、該設備は複雑であるばかりではなく、運転操作も煩雑となる。また、タールを燃焼させる際に、燃料ガスの一部も燃焼して損失してしまうことが懸念される。熱分解ガスからタールを除去する他の装置として、例えば、バイオマス原料を熱分解処理して得た熱分解ガスからタールを除去する装置であって、上記熱分解ガスの流れ方向上流から下流に順次、該熱分解ガスを圧縮処理する圧縮装置と、圧縮処理後の該熱分解ガスを冷却処理する冷却装置を設けた、バイオマス熱分解ガス中のタール除去装置が提案されている(特許文献3)。該装置によれば、タールの主成分である、例えば、フルフラール、オルト-メトキシフェノール、フェノール等を効果的に除去することができる。しかし、圧縮及び冷却を必要とすることから、それに要する設備コスト、運転コストが必要であるという欠点がある。また、その他の装置として、例えば、下水汚泥や木質バイオマスなどのバイオマスの熱分解ガス化システムであって、熱分解ガス化炉と、該熱分解ガス化炉の下流側に設けられる燃焼炉と、前記熱分解ガス化炉と前記燃焼炉との間に設けられる配管とを備え、前記配管に接続され、不活性ガス及び酸素の混合ガスとされる酸化剤を前記配管に供給するための酸化剤供給口と、前記酸化剤の酸素濃度を5体積%以上13体積%以下に調整するための酸化剤調整部と、前記配管の内壁を加熱するための加熱部と、前記配管の内側を通過するガスの温度を計測するガス温度検出部と、前記ガス温度を制御するためのガス温度制御部とを備える熱分解ガス化システムが提案されている(特許文献4)。該熱分解ガス化システムにおいては、熱分解ガス化炉と燃焼炉との間に設けられる配管の内壁に付着した熱分解付着物、例えば、タールを燃焼させて除去するものである。該システムは、バイオマス由来の熱分解付着物を短時間で安全に除去することを目的とするが、燃焼処理する故、バイオマスの熱分解により発生するタールの有効利用を図ることはできない。
【0007】
バイオマスの熱分解により発生するタールの有効利用を図る装置としては、例えば、木質バイオマスガスの改質システムであって、熱分解炉と改質反応器とエンジンとを有しており、該熱分解炉は、投入された木質バイオマスを熱分解し、該改質反応器は、上部から、該熱分解炉の熱分解で得られた炭化物粒が供給されると共に、下部から、該熱分解炉の熱分解で得られた生成ガスが供給され、もって、該生成ガス中に含有されたタール蒸気が、水素、メタン、一酸化炭素等に改質され、該エンジンは、該生成ガスの改質ガスを燃料として使用する、木質バイオマスガスの改質システムが提案されている(特許文献5)。該システムによれば、熱分解残渣である炭化物粒(チャー)を有効利用しつつ、タールを水蒸気改質して、水素、メタン、一酸化炭素等を製造することから、ガス化効率の更なる向上を期待できる。しかし、該システムでは、熱分解炉に加えて改質反応器が必要である。また、改質反応器への炭化物粒(チャー)の供給設備、熱分解ガスの循環設備、酸素又は空気及び水の供給装置が必要となる。タールの有効利用を図る他の装置として、例えば、木質系バイオマス、都市ゴミ等の廃棄物系バイオマス及びこれらの混合バイオマス等のバイオマス燃料を熱分解して炭化しさらにガス化するバイオマス炭化・ガス化システムにおいて、前記バイオマス燃料を加熱して炭化物を生成する炭化装置と、この炭化物をガス化する高温ガス化部及び炭化物生成時に揮発したタールを含む可燃性熱分解ガスの改質を行うガス改質部からなる2段式のガス化炉と、前記炭化物を前記ガス化炉の高温ガス化部に供給する炭化物供給手段と、前記炭化装置で生成された可燃性熱分解ガスを前記ガス化炉のガス改質部に送り込むための熱分解ガス流路と、通常時は前記高温ガス化部にガス化剤を供給すると共に前記ガス化炉の出口温度が一定温度以下になる場合又はそのおそれがある場合には前記ガス改質部に酸素を含んだガス化剤を供給するガス化剤供給手段を備える、バイオマス炭化・ガスシステムが提案されている(特許文献6)。該システムによれば、タール発生量が低減し、また、シフト反応による改質により高熱量ガスが得られる可能性がある。また、熱分解及び熱分解ガスの改質、並びに、タールの分解を連続的に実施することが可能であり、効率的なシステムであると考えられる。しかし、バイオマスを事前に炭化する必要があり、また、酸化剤として空気を吹き込む必要があることから、ガス化効率が低下するという問題があった。
【0008】
木質系バイオマス等の有機物質のガス化方法として、熱担持媒体(ヒートキャリア)を使用する方法が開示されている。例えば、有機物質および物質混合物から高い発熱量を有する生成物ガスを製造する方法であり、循環する熱担持媒体が、加熱帯域、反応帯域、熱分解帯域および分離工程を通過し、引き続き加熱帯域に戻り、その際、有機物質または物質混合物を熱分解帯域中で加熱した熱担持媒体と接触することにより固体の炭素含有残留物および揮発性相として熱分解ガスに分離し、熱分解帯域を通過後、固体の炭素含有残留物を分離工程で熱担持媒体から分離し、熱分解ガスを反応媒体としての水蒸気と混合し、反応帯域中で加熱した熱担持媒体に含まれる熱の一部を交換することにより高い発熱量を有する生成物ガスが生じるように更に加熱する、有機物質および物質混合物から高い発熱量を有する生成物ガスを製造する方法において、水蒸気を熱分解帯域で熱分解ガスと混合し、全部の固体の炭素含有残留物を別の燃焼装置に供給し、ここで燃焼し、この燃焼装置の熱い排ガスを、加熱帯域に存在する熱担持媒体の堆積を通過させ、その際、大部分の顕熱を熱担持媒体に与える、有機物質および物質混合物から高い発熱量を有する生成物ガスを製造する方法が提案されている(特許文献7)。該方法においては、熱分解反応器を出た直後に熱分解コークス及び熱担持媒体からなる混合物を分離し、得た熱分解コークスを燃焼装置で燃焼して、これにより発生した顕熱を利用して、加熱帯域内で熱担持媒体を加熱するものであり、これにより、低いコストで発熱量の高い生成物ガスを得ようとするものである。また、熱分解帯域を備える熱分解器と、反応帯域を備えるガス改質器とを別個独立して備えることを基本としており、それにより、直列接続型と並列接続型のいずれも構成し得ることを特徴としているものである。また、加熱帯域の予熱器における熱担持媒体(ヒートキャリア)の加熱効率を維持して、生成ガスの品質の安定化を図ることを目的として、上記方法における予熱器を工夫したシステムが提案されている(特許文献8)。しかし、これらの熱担持媒体(ヒートキャリア)を使用した方法及びシステムにおいても、熱分解時に発生するタールによるトラブルを十分には回避することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、バイオマスの熱分解により発生するタール及び煤塵等によるトラブルを著しく軽減し得ると共に、発生したタールのガス化率を最大化し得るばかりではなく、高熱効率及び低コストで、バイオマスから水素含有ガスを製造し得る装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
熱担持媒体(ヒートキャリア)の持つ熱を利用して、バイオマスを熱分解し、かつ、発生したガスを改質する、従来の方法においては、バイオマスがヒートキャリア層に包み込まれて加熱されることから、バイオマスを比較的均一に熱分解することはできるが、熱分解時に発生したタール及び煤塵等による操業上のトラブルを回避することができなかった。従来の方法では、ヒートキャリアが予め所定温度に加熱されて熱分解ガス改質器に導入され、ここで、該ヒートキャリアが、バイオマス熱分解器から導入された熱分解ガス、及びスチームと接触されて、熱分解ガスはスチーム改質されて製品として取り出される。一方、ヒートキャリアは、配管内を通って下降し、バイオマス熱分解器に導入されてバイオマスの熱分解を生じさせる。バイオマスの熱分解により発生したガスは、配管内を上昇して熱分解ガス改質器に導入されるが、該熱分解ガスはタール及び煤塵等を含有していることから、これらタール及び煤塵等が熱分解ガス改質器への導入配管の内壁及びバルブ等に付着し、時には、該熱分解ガスと向流接触するヒートキャリアをも固着させて配管内に詰まらせてしまうと言う問題を引き起こした。該問題を解決するために、導入配管の直径を大きくすることが考えられる。しかし、該手段では、単に閉塞に至るまでの時間を延長することはできても、本質的な解決手段にはなり得なかった。また、ヒートキャリアの配管内での閉塞問題を解決するために、熱分解ガスが上昇する配管とヒートキャリアが下降する配管とを別々にする手段が考えられるが、この手段によっても、熱分解ガスが上昇する配管内壁及びバルブ等へのタール及び煤塵等の付着による閉塞トラブル等を回避できなかった。加えて、このように別々の配管を設置する方法では、装置及び操作が著しく複雑になってしまう。
【0012】
本発明者らは、タール及び煤塵等が熱分解ガス改質器への導入配管の内壁及びバルブ等に付着し、時には、該熱分解ガスと向流接触するヒートキャリアをも固着させて詰まらせてしまうと言う問題を解決するために、これら導入配管及びバルブ等を取り除いて、一つの容器中にバイオマス熱分解ゾーンと熱分解ガス改質ゾーンとを設けることができないかと考えた。しかし、一つの容器の下部にバイオマス熱分解ゾーンを設け、上部に熱分解ガス改質ゾーンを設けて、かつ、下部を熱分解温度である、例えば、550℃に設定し、一方、上部をガス改質温度である、例えば、950℃に設定しようとすると、該容器内部で熱風が自然対流を起こして、容器内部の温度が均一化してしまうと言う問題が生じた。従って、一つの容器中にバイオマス熱分解ゾーンと熱分解ガス改質ゾーンとを設けることは困難であった。これを解決するために、本発明者らは、容器内部にヒートキャリアを充填することに思い至った。即ち、容器内部をヒートキャリアで充填すれば、容器内部での熱風の自然対流を抑制することができる。しかし、このようにヒートキャリアを充填したのでは、バイオマスを、容器下部のバイオマス熱分解ゾーンに導入することが容易ではない。一方、容器上部に導入したのでは、バイオマスが熱分解されるのみで発生したガスが改質されず、該装置の本来の目的を達成し得ない。
【0013】
そこで、本発明者らは、これらの問題を解決すべく、更に検討を加えた。その結果、容器内部のヒートキャリアの流路に仕切板を設置すれば、ヒートキャリアを容器の上部と下部に適切に分配及び充填することができて、そして、それによって、容器内部での熱風の自然対流を抑制し得ると共に、ヒートキャリアの持つ熱量と放熱量とのバランスを取ることができて、一つの容器中にバイオマス熱分解ゾーンと熱分解ガス改質ゾーンとを設けることができるばかりではなく、仕切板の存在によりバイオマス熱分解ゾーンの上部に空間を設けることができて、この空間から、バイオマスを効果的にバイオマス熱分解ゾーンに導入することができることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、
(1)バイオマスを、非酸化性ガス雰囲気下又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気下において加熱するバイオマス熱分解ゾーンと、上記バイオマス熱分解ゾーンにおいて発生したガスを、スチームの存在下に加熱するガス改質ゾーンとを備え、かつ、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物を、上記ガス改質ゾーンから上記バイオマス熱分解ゾーンへと順次移動せしめて、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により、バイオマスの熱分解により発生したガスの改質及びバイオマスの熱分解を実行するガス化装置において、上記バイオマス熱分解ゾーンと上記ガス改質ゾーンとが、上記ガス改質ゾーンが上記バイオマス熱分解ゾーンの上方になるように一の容器中に備えられており、かつ、上記バイオマス熱分解ゾーンと上記ガス改質ゾーンとの間に、少なくとも1枚の仕切板を備えて
おり、かつ、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の移動方向を制御するフローガイドを、上記バイオマス熱分解ゾーン中に、上記仕切板の、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の出口近傍から、該複数の粒状物及び/又は塊状物の移動方向に沿って千鳥状に複数段備え、かつ、上記バイオマスを、上記フローガイド近傍を移動する上記複数の粒状物及び/又は塊状物に供給して熱分解を実行することを特徴とするガス化装置である。
【0015】
好ましい態様として、
(2)上記バイオマス熱分解ゾーンと上記ガス改質ゾーンとの間に、1又は2枚の仕切板を備える、上記(1)記載のガス化装置、
(3)上記バイオマス熱分解ゾーンに、少なくとも1枚の仕切板を備える、上記(1)又は(2)記載のガス化装置、
(4)上記バイオマス熱分解ゾーンに、1〜5枚の仕切板を備える、上記(1)又は(2)記載のガス化装置、
(5)上記バイオマス熱分解ゾーンに、1又は2枚の仕切板を備える、上記(1)又は(2)記載のガス化装置、
(6)上記仕切板が、仕切板内に開口部を備えており、及び/又は、仕切板と容器内壁との間に間隙を備えており、上記複数の粒状物及び/又は塊状物が、その開口部及び/又は間隙を通過して、上記ガス改質ゾーンから上記バイオマス熱分解ゾーンへと順次移動する、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(7)上記仕切板が、仕切板内に開口部を備えており、上記複数の粒状物及び/又は塊状物が、その開口部を通過して、上記ガス改質ゾーンから上記バイオマス熱分解ゾーンへと順次移動する、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(8)バイオマス供給口を、上記バイオマス熱分解ゾーンの上方に少なくとも1個備える、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(9)バイオマス供給口を、上記バイオマス熱分解ゾーンの上方に1〜5個備える、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(10)バイオマス供給口を、上記バイオマス熱分解ゾーンの上方に1〜3個備える、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(11)バイオマス供給口を、上記バイオマス熱分解ゾーンの上方に1〜2個備える、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
12)
上記複数の粒状物及び/又は塊状物の移動方向を制御するフローガイドを2〜5段備える、上記(1)〜(11)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
13)
上記複数の粒状物及び/又は塊状物の移動方向を制御するフローガイドを2〜3段備える、上記(1)〜(11)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
14)上記バイオマスを、上記フローガイドの最上段近傍を移動する上記複数の粒状物及び/又は塊状物に供給して熱分解を実行する、上記(
1)〜(
13)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
15)スチーム吹込み口を、上記バイオマス熱分解ゾーン、上記ガス改質ゾーン、及び、上記ガス改質ゾーンと上記バイオマス熱分解ゾーンとの間より成る群から選ばれる一つ以上の位置に備える、上記(1)〜(
14)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
16)スチーム吹込み口を、上記バイオマス熱分解ゾーン及び/又は上記ガス改質ゾーンに備える、上記(1)〜(
14)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
17)スチーム吹込み口を、上記バイオマス熱分解ゾーンに備える、上記(1)〜(
14)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
18)スチーム吹込み口を2〜4個備える、上記(
15)〜(
17)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
19)複数の粒状物及び/又は塊状物を予め加熱するための予熱器を、ガス改質ゾーンとバイオマス熱分解ゾーンとを備える上記容器の上記ガス改質ゾーンの上部に更に備える、上記(1)〜(
18)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
20)上記の複数の粒状物及び/又は塊状物の排出口を、ガス改質ゾーンとバイオマス熱分解ゾーンとを備える上記容器の上記バイオマス熱分解ゾーンの下方に備える、上記(1)〜(
19)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
21)上記の粒状物及び/又は塊状物が、金属ボール及びセラミックボールより成る群から選ばれる、上記(1)〜(
20)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
22)金属ボールが、ステンレス鋼製である、上記(
21)記載のガス化装置、
(
23)セラミックボールが、アルミナ、シリカ、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、ジルコニア及び窒化ケイ
素より成る群から選ばれる一以上の材質から成る、上記(
21)記載のガス化装置、
(
24)上記バイオマス熱分解ゾーンにおける気相温度が400〜700℃である、上記(1)〜(
23)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
25)上記バイオマス熱分解ゾーンにおける気相温度が500〜700℃である、上記(1)〜(
23)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
26)上記バイオマス熱分解ゾーンにおける気相温度が550〜650℃である、上記(1)〜(
23)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
27)上記ガス改質ゾーンにおける気相温度が700〜1,000℃である、上記(1)〜
(
26)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
28)上記ガス改質ゾーンにおける気相温度が850〜950℃である、上記(1)〜(
26)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
29)上記ガス改質ゾーンにおける気相温度が880〜930℃である、上記(1)〜(
26)のいずれか一つに記載のガス化装置、
(
30)上記バイオマスが、植物系バイオマス、生物系バイオマス、生活雑排出物及び食品廃棄物より成る群から選ばれるバイオマス資源である、上記(1)〜(
29)のいずれか一つに記載のガス化装置
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の装置においては、熱分解ゾーンで発生した熱分解ガスが、ガス改質ゾーンへと移動する際に、配管内部を通過しない。従って、熱分解ガスが同伴するタール及び煤塵等が、配管内壁及びバルブ等に付着して生ずる閉塞トラブルを発生することがなく、また、配管内部にヒートキャリアが固着して生ずる閉塞トラブルを発生することもない。従って、長期的に安定した連続操業が可能となる。加えて、熱分解ガスが、ヒートキャリア層の内部を通過して上昇することから、熱分解ガスに同伴されるタール及び煤塵等がヒートキャリアの表面に効果的に付着して、ヒートキャリアの熱で分解され得る。故に、ガス化効率が上昇する。また、分解されずに残ったタール及び煤塵等は、ヒートキャリアと共に容器下部から排出される故、全体的なトラブル低減に寄与し得る。加えて、熱分解ゾーンとガス改質ゾーンとの間においてヒートキャリアが配管内部を通過することがないので、ヒートキャリアの熱損失が著しく低減されて熱効率が改善される。更には、装置全体をコンパクト化することができるばかりではなく、装置材料の使用量を削減することができ、コスト低下を達成し得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のガス化装置は、バイオマスを、非酸化性ガス雰囲気下又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気下において加熱するバイオマス熱分解ゾーンと、上記バイオマス熱分解ゾーンにおいて発生したガスを、スチームの存在下に加熱するガス改質ゾーンとを備え、かつ、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物を、上記ガス改質ゾーンから上記バイオマス熱分解ゾーンへと順次移動せしめて、上記複数の粒状物及び/又は塊状物の持つ熱により、バイオマスの熱分解により発生したガスの改質及びバイオマスの熱分解を実行するものである。ここで、本発明のガス化装置においては、上記バイオマス熱分解ゾーンと上記ガス改質ゾーンとを、上記ガス改質ゾーンが上記バイオマス熱分解ゾーンの上方になるように、即ち、上記複数の粒状物及び/又は塊状物が、重力で上記ガス改質ゾーンから上記バイオマス熱分解ゾーンに移動するように、かつ、上記バイオマス熱分解ゾーンにおいて発生した熱分解ガスが、そのままガス改質ゾーンに流れ込むように一の容器中に備えられており、かつ、上記バイオマス熱分解ゾーンと上記ガス改質ゾーンとの間に、少なくとも1枚、好ましくは1又は2枚の仕切板を備えていることを特徴とする。ここで、該仕切板は、上記バイオマス熱分解ゾーンと上記ガス改質ゾーンとを分割するために設けられている。
【0019】
上記のように、バイオマス熱分解ゾーンとガス改質ゾーンとの間に仕切板を設けることにより、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物が、ガス改質ゾーンからバイオマス熱分解ゾーンへと落下して移動し得る空隙(ヒートキャリア通路)を制限し、それにより、予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物が、ガス改質ゾーンからバイオマス熱分解ゾーンへと落下して移動する速度を制御することができる。これにより、該複数の粒状物及び/又は塊状物を、ガス改質ゾーン及びバイオマス熱分解ゾーンの夫々において層の状態にて存在せしめることができ、かつ、ガス改質ゾーンにおけるガス改質温度、及び、バイオマス熱分解ゾーンにおける熱分解温度を適正に維持することができる。複数の粒状物及び/又は塊状物が層の状態を形成することにより、バイオマスの熱分解により発生したガスが、その層の内部を通過して、発生したガスの更なる熱分解及びスチームとの反応を促進し、ガスの発生量を増大させることができる。また、ガスが、その層内部を通過する際に、タール及び煤塵等が複数の粒状物及び/又は塊状物の表面に付着すると共に、付着したタール等が熱分解して、更なるガス発生量の増大に寄与することができる。また、仕切板を備えることにより、バイオマス熱分解ゾーンとガス改質ゾーンとの間、即ち、バイオマス熱分解ゾーンの上部であって、かつ、ガス改質ゾーンの下部、即ち、仕切板の下部(
図3の装置においては、仕切板の左側であり、
図5の装置においては、仕切板の下部及び周囲である。)に所望の空間を形成することができる。これにより、該空間から、原料としてのバイオマスをバイオマス熱分解ゾーンに導入することができ、所定の温度でバイオマスを熱分解することができる。また、該空間において、バイオマスの熱分解により発生したガスとスチームとの良好な混合を達成することが期待される。加えて、バイオマスの熱分解により発生したタール及び煤塵等が、仕切板、とりわけ、仕切板の下面に付着し、かつ、付着したタールの一部がスチームと反応してガス化されることが期待され、良好なタール除去効果が得られるばかりではなく、改質ガスの収率を増加させる効果も期待される。
【0020】
以下、本発明のガス化装置を添付図面に基づいて説明する。
図1は、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを一の容器(1)中に備える本発明の装置の一実施態様の概略図である。
図1の上図は、容器内部を側面から見たときの概略図であり、下図は、容器内部の仕切板を上から見たときの概略図である。複数の粒状物及び/又は塊状物(3)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)は、容器(1)中のガス改質ゾーン(B)に導入される前に、予熱器(2)において予め加熱される。ヒートキャリア(3)は、好ましくは1,000〜1,100℃、より好ましくは1,050〜1,100℃に加熱される。上記下限未満では、バイオマスの熱分解により発生したガスを、ガス改質ゾーン(B)において十分に改質することができないことがある。一方、上記上限を超えては、余分な熱を与えるばかりで著しい効果の増大は期待できず、却ってコスト高を招くばかりである。また、設備の熱効率低下の原因にもなる。
【0021】
予熱器(2)において上記の所定温度に加熱されたヒートキャリア(3)は、次いで、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを備える容器(1)の上方に位置するガス改質ゾーン(B)に導入される。ガス改質ゾーン(B)においては、容器(1)の下方に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A)において、バイオマスを熱分解することにより生成され、容器(1)中を上昇してガス改質ゾーン(B)に導入された熱分解ガスが、スチームの存在下にヒートキャリア(3)と接触されて加熱される。これにより、熱分解ガスとスチームとが反応して、熱分解ガスを水素に富むガスへと改質することができる。ここで、ガス改質に使用されるスチームは、ガス改質ゾーン(B)、若しくはガス改質ゾーン(B)とバイオマス熱分解ゾーン(A)との間[ヒートキャリア通路(9)近傍]、及び/又は、バイオマス熱分解ゾーン(A)において、スチーム吹込み口(6
1、6
2)から導入される。ガス改質ゾーン(B)における気相温度は、上限が、好ましくは1,000℃、より好ましくは950℃、更に好ましくは930℃であり、下限が、好ましくは700℃、より好ましくは850℃、更に好ましくは880℃である。上記下限未満では、改質反応が進まないことがある。一方、上記上限を超えても、著しい効果の増大は期待できず、ヒートキャリアの加熱に要する熱量が増大して、コスト高を招く。ガス改質ゾーン(B)における気相温度が、上記のより好ましい下限値である850℃以上において、スチームによる一酸化炭素の改質が顕著となり、更に好ましい下限値である880℃以上において、スチームによるメタンの改質が顕著になる。従って、一酸化炭素及びメタンの両方を効率的に改質するためには、ガス改質ゾーン(B)における気相温度が880℃以上であることが更に好ましい。ガス改質ゾーン(B)における気相温度のより好ましい上限は950℃であり、該温度以下で十分に熱分解ガスを改質し得るが、燃料使用量の削減を図るためには930℃以下であることが更に好ましい。
【0022】
容器(1)中の上方に位置するガス改質ゾーン(B)を通過したヒートキャリア(3)は、続いて、仕切板(7)のヒートキャリア通路(9)、ここでは、仕切板(7)と容器内壁との間の間隙を通過して、容器(1)中の下方に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A)に移動する。バイオマス熱分解ゾーン(A)においては、ヒートキャリア(3)は、別途、バイオマス供給口(4)からバイオマス熱分解ゾーン(A)に供給されたバイオマス(a)と接触される。また、バイオマス熱分解ゾーン(A)には、非酸化性ガス、例えば、窒素、及び、任意的にスチームが、夫々、非酸化性ガス供給口(5)及びスチーム吹込み口(6
1)から供給されて、非酸化性ガス雰囲気又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気に保たれている。そして、ヒートキャリア(3)とバイオマス(a)との接触により、バイオマス(a)が加熱されて熱分解し、熱分解ガスが生成する。バイオマス熱分解ゾーン(A)を非酸化性ガス雰囲気にすることにより、バイオマス(a)の燃焼を阻止して、バイオマス(a)を効率よく熱分解させることができる。生成した熱分解ガスは、容器(1)中を上昇して、仕切板(7)の熱分解ガス通路(8)[上記ヒートキャリア通路(9)と同じ]を通過して、上記のガス改質ゾーン(B)に導入される。バイオマス熱分解ゾーン(A)における気相温度は、上限が、好ましくは700℃、より好ましくは650℃あり、下限が、好ましくは400℃、より好ましくは500℃、更に好ましくは550℃である。上記下限未満では、バイオマスの熱分解が進まないことがある。上記上限を超えては、重質なタールを発生させる。このような重質タールは、スチームにより十分に改質することができないことから、タールによる装置トラブルの原因となることがある。
【0023】
上記のバイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマス(a)の熱分解及びガス改質ゾーン(B)における熱分解ガスの改質に必要な熱の殆どは、上記の温度に予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)の持つ熱により供給される。ヒートキャリア(3)の容器(1)への導入及びヒートキャリア(3)の容器(1)からの抜出しは、例えば、配管の上下に1個ずつ合計2個のバルブを備えた、いわゆる2段式バルブ(図示せず)を使用して行われる。該2段式バルブの操作を簡単に説明すると、上下2個のバルブを閉じておき、まず、上のバルブを開いてヒートキャリア(3)を配管内部に落下させ、下のバルブと上のバルブとの間にヒートキャリア(3)を充填する。次いで、上のバルブを閉じ、下のバルブを開くことによって、2個のバルブの間に充填されたヒートキャリア(3)を容器(1)へ導入し又は容器(1)から抜き出す。このようなバルブ操作を繰り返すことによって、ヒートキャリア(3)は容器(1)にほぼ連続的に導入され、かつ、容器(1)からほぼ連続的に抜出される。該導入及び抜出し方式は、一例であり、この方式に限定されるものではない。ヒートキャリア(3)の容器(1)への導入及びヒートキャリア(3)の容器(1)からの抜出し速度を制御することにより、バイオマス熱分解ゾーン(A)及びガス改質ゾーン(B)においてヒートキャリア層を形成せしめると共に、その層の厚さ(滞留量)を適切な値に制御し、かつ、バイオマス熱分解ゾーン(A)及びガス改質ゾーン(B)の気相温度を上記所定温度に制御することができる。ここで、ヒートキャリア(3)の容器(1)からの抜出し速度が速すぎると、バイオマス熱分解ゾーン(A)及びガス改質ゾーン(B)の気相温度が高くなり、一方、抜出し速度が遅すぎると、ヒートキャリアが放熱して、バイオマス熱分解ゾーン(A)の気相温度が低くなる。ヒートキャリア(3)の容器(1)への供給速度及び抜出し速度は、原料であるバイオマス(a)の供給量及びその種類、並びに、バイオマス(a)の水分及び灰分量等に依存するが、通常、バイオマス(a)の供給量に対して決定される。通常、乾燥原料、即ち、乾燥バイオマス(a)の容器(1)への供給速度の5〜60質量倍に設定される。好ましくは、乾燥バイオマス(a)の容器(1)への供給速度の5〜30質量倍に設定され、より好ましくは10〜20質量倍に設定される。上記下限未満では、バイオマス(a)を熱分解するために必要な熱量を供給できない。一方、上記上限を超えては、ヒートキャリア(3)の供給量が過剰になるばかりであり、そのため容器(1)を必要以上に大きくしなければならず、また、ヒートキャリア(3)の加熱に余分な熱量を必要とする。
【0024】
容器(1)中の圧力の上限は、好ましくは104.33kPa、より好ましくは102.33kPaであり、下限は、好ましくは100.33kPa、より好ましくは101.23kPaである。上記上限を超えては、生成した熱分解ガスが、バイオマス供給口(4)から逆流して容器(1)の外部へと漏れることがある。一方、上記下限未満では、生成した熱分解ガスが、ガス改質ゾーン(B)におけるヒートキャリア(3)の層内部を均一分散して通過せず、熱分解ガス及び同伴するタール等が十分に改質されないことがある。
【0025】
上記のようにスチーム吹込み口(6
1、6
2)は、好ましくは、ガス改質ゾーン(B)、若しくはガス改質ゾーン(B)とバイオマス熱分解ゾーン(A)との間、及び/又は、バイオマス熱分解ゾーン(A)に設置される。バイオマス熱分解ゾーン(A)に設置するに際しては、とりわけ、バイオマス熱分解ゾーン(A)の下部に設置することが好ましい。これにより、容器(1)中に導入したスチームを、ヒートキャリア(3)との接触により効果的に加熱することができ、かつ、バイオマスの熱分解により発生したガスとの接触時間を長くとることができるばかりではなく、ヒートキャリア(3)との接触時間をも長くとることができて、結果として、熱分解ガス、及びヒートキャリアに付着したタール等の改質を効率的に実施することができる。
図1においては、スチーム吹込み口は、ガス改質ゾーン(B)の下部(6
2)、及び、バイオマス熱分解ゾーン(A)の下部(6
1)に、夫々、1個、合計2個設置されているが、これに限定されることはない。スチーム吹込み口は、夫々の箇所に、好ましくは複数個設置することができ、より好ましくは2〜4個、更に好ましくは4個設置することができる。供給するスチームの温度は、特に限定されないが、好ましくは130〜200℃、より好ましくは約160℃である。また、好ましくは500〜600℃の過熱蒸気を使用することもできる。例えば、より好ましい約160℃のスチームを供給するに際して、スチームの供給量は、原料であるバイオマスの供給量とほぼ等量が供給されることが好ましい。
【0026】
上記のバイオマス供給口(4)は、バイオマス熱分解ゾーン(A)に、効果的にバイオマス(a)を供給し得る位置に設置されていればよい。好ましくは、バイオマス熱分解ゾーン(A)の上方、即ち、仕切板(7)の下方であって、バイオマス熱分解ゾーン(A)中に滞留するヒートキャリア(3)の層の上方の空間に設置される。これにより、バイオマス(a)とヒートキャリア(3)との接触時間を適切にすることができて、バイオマス(a)を十分に熱分解することができる。
図1においては、バイオマス供給口(4)は、1個記載されているが、これに限定されることはない。バイオマス供給口(4)は、好ましくは1個以上、より好ましくは1〜5個、更に好ましくは1〜3個、更により好ましくは1又は2個設置することができる。バイオマス供給口(4)を複数設置することにより、性状の異なるバイオマスを、夫々の供給口から、同時に供給することもできる。
【0027】
バイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマス(a)の滞留時間は、好ましくは10〜60分間、より好ましくは20〜40分間、更に好ましくは25〜35分間である。上記下限未満では、バイオマスに均一に熱が伝わらず、均一な熱分解が行なわれないことから熱分解ガスの発生量が低減する。一方、上記上限を超えても、著しい効果の増大は認められず、却って、設備コストの増加を招く。ここで、バイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマス(a)の滞留時間は、ヒートキャリア(3)の移動速度とバイオマス供給量とから適切に調節され得る。また、ガス改質ゾーン(B)におけるガスの滞留時間は、好ましくは1〜10秒、より好ましくは2〜5秒である。ガス改質ゾーン(B)におけるガスの滞留時間は、ヒートキャリア(3)の移動速度及び充填量、スチーム供給量並びに予定される熱分解ガス量とから設定し得る。
【0028】
上記のようにして、ガス改質ゾーン(B)、次いで、バイオマス熱分解ゾーン(A)を通過したヒートキャリア(3)は、バイオマスの熱分解残渣(チャー)、ヒートキャリアに付着した熱分解されないで残った微量のタール及び煤塵等と一緒に、容器(1)の底部から排出される。排出されたヒートキャリア(3)を含む排出物の処理は、従来公知の方法によって実施される。例えば、上記の特許文献7及び8に記載されている方法及び装置を採用することができる。ヒートキャリア(3)は、再度、予熱器(2)に戻されて容器(1)に供給される。
【0029】
複数の粒状物及び/又は塊状物(3)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)は、好ましくは、金属及びセラミックより成る群から選ばれる一以上の材質から成る。金属としては、好ましくは、鉄、ステンレス鋼、ニッケル合金鋼、及び、チタン合金鋼より成る群から選ばれ、より好ましくは、ステンレス鋼が選ばれる。また、セラミックとしては、アルミナ、シリカ、シリコンカーバイド、タングステンカーバイド、ジルコニア及び窒化ケイ素のより成る群から選ばれ、より好ましくは、アルミナが選ばれる。複数の粒状物及び/又は塊状物(3)の形状は、好ましくは球状(ボール)であるが、必ずしも真球である必要はなく、断面形状が楕円形又は長円形である球状物であってもよい。球状物の直径(最大径)は、好ましくは3〜25mm、より好ましくは8〜15mmである。上記上限を超えては、容器(1)内部での流動性、即ち、自由落下性を損なうことがあり、これにより、球状物が容器(1)内部で静止して閉塞の原因となることがある。一方、上記下限未満では、球状物に付着したタール及び煤塵等により球状物自体が固着することがあり、閉塞の原因となることがある。例えば、球状物の直径が3mm未満では、球状物に付着したタール及び煤塵等の影響により球状物が容器(1)の内壁に付着し、とりわけ、熱分解ガス通路(8)及びヒートキャリア通路(9)を狭め、該通路の閉塞を促進することが懸念される。また、タールが付着した球状物が、容器(1)底部のバルブから抜き出される際、3mm未満の球状物は軽く、そのうえタールが付着しているために自然落下せずにバルブ内部に固着して閉塞を助長する。
【0030】
本発明のバイオマスとは、いわゆるバイオマス資源を言う。ここで、バイオマス資源とは、植物系バイオマス、例えば、林業から廃棄される間伐材、製材廃材、剪定枝、林地残材、未利用樹等、農業から廃棄される野菜残渣及び果樹残渣等の農作物、稲藁、麦藁及び籾殻等、その他海洋植物、建設系廃木材等;生物系バイオマス、例えば、家畜排せつ物及び下水汚泥に代表される生物系排せつ物;並びに塵芥等の生活雑排出物及び食品廃棄物等を言う。本発明の装置は、好ましくは植物系バイオマス及び生物系バイオマスのガス化に適している。
【0031】
図2は、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを一の容器(11)中に備える本発明の装置の他の一実施態様の概略図である。
図2の上図は、容器内部を側面から見たときの概略図であり、下図は、容器内部の仕切板を上から見たときの概略図である。複数の粒状物及び/又は塊状物(31)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)は、容器(11)中のガス改質ゾーン(B)に導入される前に、予熱器(21)において上記と同様に所定温度に予め加熱される。予熱器(21)において所定温度に加熱されたヒートキャリア(31)は、次いで、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを備える容器(11)の上方に位置するガス改質ゾーン(B)に導入される。ガス改質ゾーン(B)においては、容器(11)の下方に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A)において、バイオマス(a)を熱分解することにより生成され、容器(11)に設けられている仕切板(71)の熱分解ガス通路(81)及びヒートキャリア通路(91)を上昇して、ガス改質ゾーン(B)に導入された熱分解ガスが、スチームの存在下にヒートキャリア(31)と接触されて加熱される。これにより、熱分解ガスとスチームとが反応して、熱分解ガスを水素に富むガスへと改質することができる。ここで、ガス改質に使用されるスチームは、ガス改質ゾーン(B)、若しくはガス改質ゾーン(B)とバイオマス熱分解ゾーン(A)との間[ヒートキャリア通路(91)近傍]、及び/又は、バイオマス熱分解ゾーン(A)において、スチーム吹込み口(61
1、61
2)から導入される。ガス改質ゾーン(B)における気相温度は、上記と同じである。容器(11)中の上方に位置するガス改質ゾーン(B)を通過したヒートキャリア(31)は、続いて、容器(11)中の下方に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A)に、容器(11)に設けられている仕切板(71)のヒートキャリア通路(91)、ここでは、仕切板(71)と容器内壁との間の間隙を通って移動する。バイオマス熱分解ゾーン(A)においては、ヒートキャリア(31)は、別途、バイオマス供給口(41)からバイオマス熱分解ゾーン(A)に供給されたバイオマス(a)と接触される。また、バイオマス熱分解ゾーン(A)には、非酸化性ガス、例えば、窒素、及び、任意的にスチームが、夫々、非酸化性ガス供給口(51)及びスチーム供給口(61
1)から供給されて、非酸化性ガス雰囲気又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気に保たれている。そして、ヒートキャリア(31)とバイオマス(a)との接触により、バイオマス(a)が加熱されて熱分解し、熱分解ガスが生成する。バイオマス熱分解ゾーン(A)を非酸化性ガス雰囲気にすることにより、バイオマス(a)の燃焼を阻止して、バイオマス(a)を効率よく熱分解させることができる。生成した熱分解ガスは、容器(11)中を上昇して、上記のガス改質ゾーン(B)に導入される。バイオマス熱分解ゾーン(A)における気相温度は、上記と同じである。また、上記のバイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマス(a)の熱分解及びガス改質ゾーン(B)における熱分解ガスの改質に必要な熱の殆どは、上記の温度に予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)の持つ熱により供給され、かつ、ヒートキャリア(31)の容器(11)への導入及びヒートキャリア(31)の容器(11)からの抜出しは、上記の
図1の装置と同様にして実施される。
【0032】
図3は、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを一の容器(12)中に備える本発明の装置の他の一実施態様の概略図である。
図1及び
図2に示した装置とは異なり、ガス改質ゾーン(B)をバイオマス熱分解ゾーン(A)の直上に配置せず、仕切板(72)を介してバイオマス熱分解ゾーン(A)の右側上方にガス改質ゾーン(B)を横置きに配置したものである。複数の粒状物及び/又は塊状物(32)は、ガス改質ゾーン(B)とバイオマス熱分解ゾーン(A)との間に設置された仕切板(72)を挟んで、各ゾーンにおいて層を形成している。複数の粒状物及び/又は塊状物(32)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)は、容器(12)中のガス改質ゾーン(B)に導入される前に、予熱器(22)において上記と同様に所定温度に予め加熱される。予熱器(22)において所定温度に加熱されたヒートキャリア(32)は、次いで、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを備える容器(12)の上方に位置するガス改質ゾーン(B)に導入される。ガス改質ゾーン(B)においては、容器(12)の左側下方に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A)において、バイオマス(a)を熱分解することにより生成された熱分解ガスが、容器(12)に設けられている仕切板(72)の下部に存在する熱分解ガス通路(82)、ここでは、仕切板(72)と容器内壁との間の間隙を通過して、ヒートキャリアと接触しながら上昇してガス改質ゾーン(B)に導入され、ガス改質ゾーン(B)に導入された熱分解ガスが、スチームの存在下にヒートキャリア(32)と接触されて加熱される。これにより、熱分解ガスとスチームとが反応して、熱分解ガスを水素に富むガスへと改質することができる。ここで、ガス改質に使用されるスチームは、ガス改質ゾーン(B)、若しくはガス改質ゾーン(B)とバイオマス熱分解ゾーン(A)との間[ヒートキャリア通路(92)近傍]、及び/又は、バイオマス熱分解ゾーン(A)において、スチーム吹込み口(62
1、62
2)から導入される。ガス改質ゾーン(B)における気相温度は上記と同じである。容器(12)中の右側上方に位置するガス改質ゾーン(B)を通過したヒートキャリア(32)は、続いて、容器(12)中の左側下方に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A)に、容器(12)に設けられている仕切板(72)の下部に存在するヒートキャリア通路(92)[上記熱分解ガス通路(82)と同じである。]を通って移動する。バイオマス熱分解ゾーン(A)においては、ヒートキャリア(32)は、別途、バイオマス供給機(42)からバイオマス熱分解ゾーン(A)に供給されたバイオマス(a)と接触される。また、非酸化性ガス、例えば、窒素が、非酸化性ガス供給口(図示せず)からバイオマス供給機(42)に導入され、バイオマス(a)と一緒にバイオマス熱分解ゾーン(A)に供給される。別途、任意的にスチームが、スチーム供給口(62
1)から供給されて、非酸化性ガス雰囲気又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気に保たれている。そして、ヒートキャリア(32)とバイオマス(a)との接触により、バイオマス(a)が加熱されて熱分解し、熱分解ガスが生成する。バイオマス熱分解ゾーン(A)を非酸化性ガス雰囲気にすることにより、バイオマス(a)の燃焼を阻止して、バイオマス(a)を効率よく熱分解させることができる。生成した熱分解ガスは、容器(12)中を上昇して、上記のガス改質ゾーン(B)に導入される。バイオマス熱分解ゾーン(A)における気相温度は、上記と同じである。この装置では、バイオマス原料供給機(42)を2基設置しており、異なる2種類のバイオマス(a)を同時に投入することができる。また、上記のバイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマス(a)の熱分解、及び、ガス改質ゾーン(B)における熱分解ガスの改質に必要な熱の殆どは、上記の温度に予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物(32)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)の持つ熱により供給され、かつ、ヒートキャリア(32)の容器(12)への導入及びヒートキャリア(32)の容器(12)からの抜出しは、上記の
図1の装置と同様にして実施される。
【0033】
図4は、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを一の容器(13)中に備える本発明の装置の一実施態様の概略図である。該装置は、
図1及び
図2に示した装置とは異なり、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)との間、及び、バイオマス熱分解ゾーン(A)に各1枚、合計2枚の仕切板(73
1、73
2)を備えている。ここで、2枚の仕切板(73
1、73
2)のうち、容器(13)の上方に設置されている仕切板(73
1)は、容器(13)中にバイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを分割するためのものであり、一方、容器(13)の下方に設置されている仕切板(73
2)は、バイオマス熱分解ゾーン(A)を更に二つの部分(A
1、A
2)に分けるためのものである。そして、この装置では、原料であるバイオマスの供給口を4基(43
1、43
2、43
3、43
4)備えて、異なる複数種類のバイオマスを同時に投入することを可能にしている。また、バイオマス投入口が2個ずつ仕切板(73
2)で仕切られており、その結果、バイオマスのバイオマス熱分解ゾーン(A)における滞留時間(熱分解時間)を2種類に設定することが可能となり、熱分解反応速度の異なるバイオマスを同時に供給することが可能である。複数の粒状物及び/又は塊状物(33)は、仕切板(73
1)によってガス改質ゾーン(B)とバイオマス熱分解ゾーン(A)とに分けられて、夫々において層を形成し、更に、仕切板(73
2)によってバイオマス熱分解ゾーン(A)が2つに仕切られて、一つの容器(13)中に、一つのガス改質ゾーン(B)と2つのバイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)を形成している。ここで、ガス改質ゾーン(B)及びバイオマス熱分解ゾーン(A)に設置する仕切板の数はこれに限定されることはなく、更に多数の仕切板を設けて、ガス改質ゾーン(B)及びバイオマス熱分解ゾーン(A)を更に細かく分割することも可能である。複数の粒状物及び/又は塊状物(33)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)は、容器(13)中のガス改質ゾーン(B)に導入される前に、予熱器(23)において上記と同様に所定温度に予め加熱される。予熱器(23)において所定温度に加熱されたヒートキャリア(33)は、次いで、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを備える容器(13)の上方に位置するガス改質ゾーン(B)に導入される。ガス改質ゾーン(B)においては、容器(13)の下部に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)において、バイオマス(a)を熱分解することにより生成された熱分解ガスが、容器(13)に設けられている仕切板(73
1)によって形成された熱分解ガス通路(83)を通過して、ヒートキャリアと接触しながらガス改質ゾーン(B)に導入され、その熱分解ガスとスチームがヒートキャリア(33)と接触されて加熱される。これにより、熱分解ガスとスチームとが反応して、熱分解ガスを水素に富むガスへと改質することができる。ここで、ガス改質に使用されるスチームは、バイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)において、スチーム吹込み口(63
1、63
2)から導入される。
図4においては、上記のようにスチーム吹込み口(63
1、63
2)はいずれもバイオマス熱分解ゾーンに備えられているが、ガス改質ゾーン(B)、若しくはガス改質ゾーン(B)とバイオマス熱分解ゾーン(A
1)との間[ヒートキャリア通路(93)近傍]に設置することもできる。ガス改質ゾーン(B)における気相温度は、上記と同じである。容器(13)中の上方に位置するガス改質ゾーン(B)を通過したヒートキャリア(33)は、続いて、容器(13)中の下部に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A
1)に、容器(13)に設けられている仕切板(73
1)と容器内壁との隙間であるヒートキャリア通路(93)[上記熱分解ガス通路(83)と同じである。]通って移動する。バイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)においては、ヒートキャリア(33)は、別途、バイオマス供給口(43
1、43
2、43
3、43
4)からバイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)に供給されたバイオマスと接触される。また、バイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)には、非酸化性ガス、例えば、窒素、及び、任意的にスチームが、夫々、非酸化性ガス供給口(53)及びスチーム供給口(63
1、63
2)から供給されて、非酸化性ガス雰囲気又は非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気に保たれている。そして、ヒートキャリア(33)とバイオマス(a)との接触により、バイオマス(a)が加熱されて熱分解し、熱分解ガスが生成する。バイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)を非酸化性ガス雰囲気にすることにより、バイオマス(a)の燃焼を阻止して、バイオマス(a)を効率よく熱分解させることができる。生成した熱分解ガスは、容器(13)中を上昇して、上記のガス改質ゾーン(B)に導入される。バイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)における気相温度は、上記と同じである。ここで、バイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)の気相温度は同一であるか、あるいは、バイオマス熱分解ゾーン(A
2)の気相温度が、バイオマス熱分解ゾーン(A
1)の気相温度より高く設定される。また、上記のバイオマス熱分解ゾーン(A
1、A
2)におけるバイオマス(a)の熱分解及びガス改質ゾーン(B)における熱分解ガスの改質に必要な熱の殆どは、上記の温度に予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物(33)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)の持つ熱により供給され、かつ、ヒートキャリア(33)の容器(13)への導入及びヒートキャリア(33)の容器(13)からの抜出しは、上記の
図1の装置と同様にして実施される。
【0034】
図5は、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを一の容器(14)中に備える本発明の装置の一実施態様の概略図である。
図5の上図は、容器内部を側面から見たときの概略図であり、下図は、X−X’線で切断したとき、容器内部の仕切板を上から見たときの概略図である。該装置は、
図1及び
図2に示した装置とは異なり、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とは、円柱形の仕切板(74)で仕切られており、かつ、円柱形の仕切板(74)を介してガス改質ゾーン(B)をバイオマス熱分解ゾーン(A)が取り囲んでいる形態を有している。円柱形の仕切板(74)の下部に、円周方向に4箇所開口部、即ち、ヒートキャリア通路(94)が設けられている。ここで、ヒートキャリア通路(94)の数及び大きさは、特に限定されるものではなく、装置自体の寸法、バイオマス処理量、複数の粒状物及び/又は塊状物の寸法等に依存して、適宜決定することができる。複数の粒状物及び/又は塊状物(34)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)は、容器(14)中のガス改質ゾーン(B)に導入される前に、予熱器(24)において上記と同様に所定温度に予め加熱される。予熱器(24)において所定温度に加熱されたヒートキャリア(34)は、次いで、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを備える容器(14)の上方に位置するガス改質ゾーン(B)に導入される。ガス改質ゾーン(B)においては、容器(14)の下方に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A)において、バイオマス(a)を熱分解することにより生成され、容器(14)に設けられている円柱形の仕切板(74)の熱分解ガス通路(84)及びヒートキャリア通路(94)、主として、円柱形の仕切板(74)の底面に設けられた熱分解ガス通路(84)を上昇して、ガス改質ゾーン(B)に導入された熱分解ガスが、スチームの存在下にヒートキャリア(34)と接触されて加熱される。これにより、熱分解ガスとスチームとが反応して、熱分解ガスを水素に富むガスへと改質することができる。ここで、ガス改質に使用されるスチームは、バイオマス熱分解ゾーン(A)においてスチーム吹込み口(64)から導入される。また、スチームは、ガス改質ゾーン(B)に直接導入することもできる。ガス改質ゾーン(B)における気相温度は、上記と同じである。
【0035】
容器(14)中の上方に位置するガス改質ゾーン(B)を通過したヒートキャリア(34)は、続いて、容器(14)中の下方に位置するバイオマス熱分解ゾーン(A)に、容器(14)に設けられている円柱形の仕切板(74)の側面下部に、円周方向に設けられている開口部、即ち、ヒートキャリア通路(94)を通って移動する。
図6は、
図5に示した装置の円柱形の仕切板(74)の側面下部に設けられたヒートキャリア通路(94)、及び、その出口近傍から、上記複数の粒状物及び/又は塊状物(34)の移動方向に沿って千鳥状に複数段備えられたフローガイド(c)、並びに、該フローガイド(c)近傍における複数の粒状物及び/又は塊状物(34)並びにバイオマス(a)の移動方向を模式的に示した説明図である。この実施態様においては、ヒートキャリア通路(94)は略台形の形状をしており、一定間隔を置いて円柱形の仕切板(74)の側面下部に円周方向に設けられている。ヒートキャリア通路(94)の形状に特に制限はなく、台形のほか、半円形、三角形等であることもできる。ヒートキャリア通路(94)の寸法は、とりわけ、複数の粒状物及び/又は塊状物(34)の寸法に依存し、その幅及び高さは、複数の粒状物及び/又は塊状物(34)の1個の寸法の10倍以上あることが好ましい。バイオマス熱分解ゾーン(A)中のヒートキャリア通路(94)の下方には、フローガイド(c)が、ヒートキャリア通路(94)の出口近傍から、上記複数の粒状物及び/又は塊状物(34)の移動方向に沿って、即ち、下方に向かって千鳥状に複数段、好ましくは2〜5段備えられている。
図5及び
図6では、フローガイド(c)は、千鳥状に2段図示されている。この態様においては、フローガイド(c)の断面は、その長さ方向に垂直な平面で切断したとき、
図6に示す通り略三角形である。但し、フローガイドの断面は、これに限定されることはなく、複数の粒状物及び/又は塊状物(34)及びバイオマス(a)に同様の移動状態を実現し得るものであればよく、例えば、上側に突出した円弧状の形状等であることもできる。ヒートキャリア通路(94)から、バイオマス熱分解ゾーン(A)中に移動した粒状物及び/又は塊状物(34)は、フローガイド(c)により、
図6に示されているように、その移動方向が制御され、それにより、粒状物及び/又は塊状物(34)が積み上がった場所と窪んだ場所が交互に作られる。
【0036】
一方、原料となるバイオマス(a)は、別途、バイオマス供給口(44)から、バイオマス熱分解ゾーン(A)中の上記の粒状物及び/又は塊状物(34)が窪んだ場所に主に供給される。そして、供給されたバイオマス(a)は、粒状物及び/又は塊状物(34)によって巻き込まれるようにして接触されつつ、バイオマス熱分解ゾーン(A)中を下方に移動する。また、バイオマス熱分解ゾーン(A)には、非酸化性ガス、例えば、窒素、及び、スチームが、夫々、非酸化性ガス供給口(54)及びスチーム供給口(64)から供給されて、非酸化性ガスとスチームとの混合ガス雰囲気に保たれている。ここで、スチームは、必ずしも、バイオマス熱分解ゾーン(A)に供給する必要はなく、その場合には、バイオマス熱分解ゾーン(A)は、非酸化性ガス雰囲気に保たれ、スチームは、ガス改質ゾーン(B)に直接供給される。そして、粒状物及び/又は塊状物(34)とバイオマス(a)との接触により、バイオマス(a)が加熱されて熱分解し、熱分解ガスが生成する。バイオマス熱分解ゾーン(A)を非酸化性ガス雰囲気にすることにより、バイオマス(a)の燃焼を阻止して、バイオマス(a)を効率よく熱分解させることができる。生成した熱分解ガスは、容器(14)中を上昇して、上記のガス改質ゾーン(B)に導入される。バイオマス熱分解ゾーン(A)における気相温度は、上記と同じである。また、上記のバイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマス(a)の熱分解及びガス改質ゾーン(B)における熱分解ガスの改質に必要な熱の殆どは、上記の温度に予め加熱された複数の粒状物及び/又は塊状物(34)、即ち、熱担持媒体(ヒートキャリア)の持つ熱により供給され、かつ、ヒートキャリア(34)の容器(14)への導入及びヒートキャリア(34)の容器(14)からの抜出しは、上記の
図1の装置と同様にして実施される。
【0037】
図5に記載した本発明の装置の一実施態様のガス化装置においては、ガス改質ゾーン(B)はバイオマス熱分解ゾーン(A)の内側に取り囲まれるように配置されているため、ガス改質ゾーン(B)からの熱がバイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマスの熱分解に利用されるため、ガス化装置の熱効率を上昇させることができる。また、バイオマス熱分解ゾーン(A)中にフローガイド(c)を設けて、複数の粒状物及び/又は塊状物(34)の積み上がった場所と窪んだ場所を作り、そして、原料となるバイオマス(a)を複数の粒状物及び/又は塊状物(34)の窪んだ場所に主に供給することにより、バイオマス(a)と複数の粒状物及び/又は塊状物(34)との比重が異なる場合、例えば、バイオマス(a)が木質チップであるとき、その比重は0.2〜0.3トン/m
3であり、一方、複数の粒状物及び/又は塊状物(34)がアルミナであるとき、その比重は3.6〜3.9トン/m
3である場合であっても、両者の効率的な混合を達成して、効果的にバイオマス(a)の熱分解を実行することができる。
【0038】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
実施例1において使用したバイオマス原料、及び、該バイオマス原料の熱分解及びガス改質に使用した反応器は、下記の通りである。
【0040】
バイオマス原料としては、建設系廃木材を使用した。該廃木材を粗粉砕して使用した。粗粉砕後の廃木材の大きさは、割り箸程度の寸法の棒状物、トランプの1/4程度の寸法の薄板状物、及び、鋸屑状物等の混合物であり、最大寸法が200〜300mm程度のものであった。該廃木材の性状を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1の各値は、JIS−M8812に準拠して測定したものである。ここで、灰分、揮発分及び固定炭素は、乾燥基準で算出したものである。また、水分は、バイオマス原料の受け入れ時のものである。
【0043】
バイオマス原料の熱分解及びガス改質に使用した反応器(1)としては、
図1に示したものを使用した。バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを一つの容器中に備え、かつ、これらのゾーン間に仕切板(7)を1枚設置した反応器(1)である。該反応器(1)の内径は約800mm、高さは約3000mmであり、内容積は約1m
3である。また、
図1に示したように、該反応器(1)の側壁上部から仕切板頂部までの長さは1,200mm(対応部分の容積:600リットル)であり、仕切板頂部から反応器コーン部開始部分までの長さは600mm(対応部分の容積:300リットル)であり、かつ、コーン部の長さは1,000mm(対応部分の容積:168リットル)である。また、仕切板(7)と容器(1)の内壁間に設けられた円周状の熱分解ガス通路(8)兼ヒートキャリア通路(9)は、半径方向の幅が100mmであり、
図1のように、熱分解ガス通路(8)兼ヒートキャリア通路(9)の円周方向の幅が100mmの留金(10)8個により8等分されている。ヒートキャリアとしては、直径(最大径)10〜12mmの略球形のアルミナ製ボールを使用した。次いで、ヒートキャリアを、1,050℃の温度において450キログラム/時間の量でガス改質ゾーン(B)に導入し、かつ、バイオマス熱分解ゾーン(A)から容器(1)の外部へ適量を抜出しつつ、ガス改質ゾーン(B)の気相温度が950℃であり、かつ、バイオマス熱分解ゾーン(A)の気相温度が550℃になるようにガス改質ゾーン(B)及びバイオマス熱分解ゾーン(A)におけるヒートキャリアの堆積量を調節した。このときの、バイオマス熱分解ゾーン(A)からのヒートキャリアの抜出し量は、即ち、容器(1)の外部への排出量は、ガス改質ゾーン(B)への供給量と同一の450キログラム/時間であり、その温度は600℃であった。ここで、ヒートキャリアは、ガス改質ゾーン(B)の約60体積%に層として堆積しており、かつ、バイオマス熱分解ゾーン(A)の約60体積%に層として堆積していた。
【0044】
バイオマス原料としての建設系廃木材を、定量フィーダーを使用して25キログラム/時間の供給量でバイオマス供給口(4)から反応容器(1)中のバイオマス熱分解ゾーン(A)に連続的に導入した。ここで、バイオマス熱分解ゾーン(A)の気相温度は550℃に保持され、かつ、容器(1)内の圧力は101.3kPaに保持された。また、バイオマス熱分解ゾーン(A)には、下部に設けられた非酸化性ガス供給口(5)から、1,200リットル/時間の量で窒素ガスが導入された。バイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマス原料の滞留時間は、約1時間であった。
【0045】
バイオマス熱分解ゾーン(A)において熱分解により生じたガスが23キログラム/時間で得られた。該ガスは、続いて、気相温度950℃及び圧力101.3kPaに保持されたガス改質ゾーン(B)に導入された。反応器(1)には、ガス改質ゾーン(B)の下部に設けられたスチーム吹込み口(6
2)から、16キログラム/時間で過熱蒸気(160℃、0.6MPa)が導入されてガス改質が行われた。温度950℃の改質ガスが39キログラム/時間の量で改質ガス出口(b)から得られた。得られた改質ガスをゴム製バッグに捕集し、ガスクロマトグラフィー[島津製作所製GC−14A(商標)]によりガス組成を測定した。表2に得られた改質ガスの組成を示した。また、該操業を3日間連続して実施することができた。該操業期間中、トラブル、とりわけ、タールに起因するトラブルのない良好な連続運転を維持することができた。
【0046】
【表2】
【0047】
(実施例2)
実施例2において使用したバイオマス原料は、実施例1と同一のものである。バイオマス原料の熱分解及びガス改質に使用した反応器としては、
図5に示したものを使用した。該反応器(14)は、バイオマス熱分解ゾーン(A)とガス改質ゾーン(B)とを一つの容器中に備え、かつ、これらのゾーン間に円柱形の仕切板(74)を1枚設置したものである。該反応器(14)において、ガス改質ゾーン(B)の内径は約800mmであり、高さは約1,200mmであり、内容積は約0.6m
3である。バイオマス熱分解ゾーン(A)のガス改質ゾーン(B)を取り囲む部分の幅は約150mmであり、高さは約1,200mmであり、内容積は約0.76m
3である。また、コーン部の高さは約1,000mmであり、対応部分の内容積は約0.85m
3である。バイオマス熱分解ゾーン(A)の内容積は、合計約1.61m
3である。また、円柱形の仕切板(74)の側面下部に円周方向に設けられたヒートキャリア通路(94)の形状は略台形であり、上底は約100mmであり、下底は約360mmであり、高さは約180mmであって、円周方向に等間隔で合計4個設けられている。フローガイド(c)は、ヒートキャリア通路(94)の直下から、ヒートキャリア(34)の移動方向に沿って、即ち、下方に向かって千鳥状に2段備えられている。フローガイド(c)の断面は、その長さ方向に垂直な平面で切断したとき略三角形である。該三角形は略二等辺三角形であり、その高さは約195mmであり、底辺は約500mmであり、底辺から垂直に延びた部分の長さは約50mmである。1段目のフローガイド(c)は、ヒートキャリア通路(94)の数に対応して、ヒートキャリア通路(94)の直下に1対1で設けられており、2段目のフローガイド(c)は、1段目の隣接する2つのフローガイド(c)の距離の半分の位置に、2段目のフローガイド(c)の中心、即ち、三角形の頂点が来るように設置されている。また、1段目の複数のフローガイド(c)の底辺を結ぶ直線と、2段目の複数のフローガイド(c)の頂点を結ぶ直線との間隔は約60mmである。ヒートキャリアとしては、直径(最大径)10〜12mmの略球形のアルミナ製ボールを使用した。また、ヒートキャリアは、1,050℃の温度において450キログラム/時間の量でガス改質ゾーン(B)に導入され、かつ、同量がバイオマス熱分解ゾーン(A)から600℃の温度で容器(14)の外部に排出された。ここで、ヒートキャリアは、ガス改質ゾーン(B)の約60体積%に層として堆積しており、かつ、バイオマス熱分解ゾーン(A)の約42体積%に層として堆積していた。
【0048】
バイオマス原料としての建設系廃木材を、定量フィーダーを使用して含水率14.3%(ウェットベース)で29キログラム/時間(乾燥重量25キログラム)の供給量でバイオマス供給口(44)から反応容器(14)中のバイオマス熱分解ゾーン(A)に連続的に導入した。ここで、バイオマス熱分解ゾーン(A)の気相温度は700℃に保持され、かつ、容器(14)内の圧力は101.3kPaに保持された。また、バイオマス熱分解ゾーン(A)には、下部に設けられた非酸化性ガス供給口(54)から、1,200リットル/時間の量で窒素ガスが導入された。バイオマス熱分解ゾーン(A)におけるバイオマス原料の滞留時間は、約1時間であった。
【0049】
バイオマス熱分解ゾーン(A)において熱分解により生じたガスが21キログラム/時間で得られた。該ガスは、続いて、気相温度1,000℃及び圧力101.3kPaに保持されたガス改質ゾーン(B)に導入された。反応器(14)には、バイオマス熱分解ゾーン(A)の下部に設けられたスチーム吹込み口(64)から、16キログラム/時間で過熱蒸気(230℃、0.6MPa)が導入されてガス改質が行われた。温度1,000℃の改質ガスが37キログラム/時間の量で改質ガス出口(b)から得られた。得られた改質ガスをゴム製バッグに捕集し、ガスクロマトグラフィー[島津製作所製GC−14A(商標)]によりガス組成を測定した。表3に得られた改質ガスの組成を示した。また、該操業を3日間連続して実施することができた。該操業期間中、トラブル、とりわけ、タールに起因するトラブルのない良好な連続運転を維持することができた。
【0050】
【表3】
【0051】
(比較例1)
従来の反応器として、特許文献7の
図1に記載のものを使用した。即ち、バイオマス熱分解ゾーンを有する熱分解反応器とガス改質ゾーンを有するガス改質器とを別々に備え、熱分解反応器の上部にガス改質器を、ゲートバルブを備える配管により直列に接続したものである。熱分解反応器及びガス改質器の内容積を、夫々、約170リットル及び約600リットルとした。ヒートキャリアは、ガス改質器から熱分解反応器へとゲートバルブを備える配管を通って移動させた。実施例1で使用したと同じ建設系廃木材を使用して、定量フィーダーを使用して、実施例1と同一の25キログラム/時間の供給量で熱分解反応器に連続的に導入した。ガス改質ゾーンへのヒートキャリアの供給速度及びヒートキャリアの温度、並びに、その他の操業条件は、実施例1と同一とした。温度950℃の改質ガスが15キログラム/時間の量で得られた。得られた改質ガスをゴム製バッグに捕集し、ガスクロマトグラフィー[島津製作所製GC−14A(商標)]によりガス組成を測定した。表4に得られた改質ガスの組成を示した。また、該操業を、実施例1と同じく3日間連続して実施することができた。しかし、該操業期間後に、熱分解反応器とガス改質器とを接続するゲートバルブを備える配管内部を検査したところ、とりわけ、ゲートバルブ及びその近傍に多量のタール及び煤塵の付着が観察された。従って、これ以上の期間、連続運転をすることは困難であり、更に連続運転を継続するためには、ゲートバルブ及びその近傍の洗浄又はゲートバルブ自体の交換、あるいは、熱分解反応器とガス改質器とを接続するゲートバルブを備えた配管以外に熱分解ガスをガス改質器へと導入するバイパス配管が必要であるとの結論に至った。
【0052】
【表4】
【0053】
実施例1及び実施例2、並びに比較例1の結果から、実施例1(39キログラム/時間)及び実施例2(37キログラム/時間)の反応器では比較例1(15キログラム/時間)の反応器に比べて、2倍以上の改質ガスが得られることが分かった。また、夫々の改質ガスの組成を示した表2〜4の結果から、実施例1及び実施例2の反応器では比較例1の反応器に比べて、水素含有量の著しく多い改質ガスを製造し得ることが分かった。また、実施例2の反応器では、実施例1の反応器に比べて、水素及び一酸化炭素含有量が著しく多く、その一方、二酸化炭素含有量が著しく少なくなっていることが分かった。