特許第5756234号(P5756234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756234
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】自動遮水管
(51)【国際特許分類】
   E21B 17/01 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   E21B17/01
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-522869(P2014-522869)
(86)(22)【出願日】2012年7月16日
(65)【公表番号】特表2014-521850(P2014-521850A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012046900
(87)【国際公開番号】WO2013016051
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】13/192,090
(32)【優先日】2011年7月27日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】アル−シャマリ,モハンマド,エム.
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/051881(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0044963(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0199401(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0246212(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0038086(US,A1)
【文献】 米国特許第5657822(US,A)
【文献】 米国特許第6581682(US,B1)
【文献】 特開平07−048983(JP,A)
【文献】 特開平06−042282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 17/01
E21B 43/00−43/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の浸入を制御するように動作可能な、石油およびガス貯留層からの炭化水素の生産のための装置であって、
多層管であって、
外部パイプ層と、
前記外部パイプ層の内部に長手方向に整列する内部パイプ層と、
前記外部パイプ層と前記内部パイプ層との間の親水性複合材料と、を含む、多層管を備え、
前記親水性複合材料は、砂、シルト、および粘土、ならびにそれらの混合物から成る群から選択され、
前記複合材料は、化的に非反応性であり
前記複合材料は、水の存在下で膨潤し、炭化水素を吸収せず、そして水にさらされると前記内部パイプ層のうちの少なくとも一部分を覆う、水に対して不透過性の障壁を形成するように膨潤するように動作可能であるような、吸収特性を有し、
前記複合材料は、六角形、八角形、十字形、および星形からなる群から選択される断面形状を有する成形粒子に形成される、装置。
【請求項2】
前記内部パイプ層および前記外部パイプ層は、中実壁部材である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複合材料は、石油およびガス貯留層の透過性以上の開始透過性を有する、請求項1乃至2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記外部パイプ層および前記内部パイプ層は、前記炭化水素が通過することができる穴を有する請求項3に記載の装置。
【請求項5】
水の浸入を制御しつつ石油およびガス貯留層から炭化水素生産する方法であって、
(a)多層管を提供するステップであって、前記多層管は、外部パイプ層と、前記外部パイプ層の内部に長手方向に整列する内部パイプ層と、を含、ステップと、
(b)砂、シルト、および粘土、ならびにそれらの混合物から成る群から親水性複合材料を選択するステップであって、前記複合材料は、化的に非反応性であり、前記複合材料は、水の存在下で膨潤し、炭化水素を吸収しないような、そして水にさらされると前記内部パイプ層のうちの少なくとも一部分を覆って、水に対して不透過性の障壁を形成するように膨潤するように動作可能であるような、吸収性を有し、前記複合材料は、六角形、八角形、十字形、および星形からなる群から選択される断面形状を有する成形粒子に形成される、ステップと、
(c)前記外部パイプ層と前記内部パイプ層との間の空間に前記複合材料を追加するステップと、
(d)前記多層管を石油およびガス貯留層に接触する石油およびガス生産坑井の内部に位置付けるステップと、を含む、方法。
【請求項6】
前記複合材料を追加する前記ステップは、予備成形によって実施される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記内部パイプ層および前記外部パイプ層は、中実壁部材であ
ステップ(b)は、前記多層管が坑井の内部に位置付けられた時に、完全に水に対して不透過性の複合材料を選択することをさらに含む、請求項乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記外部パイプ層および前記内部パイプ層は、流体が通過できる穴を有し、
ステップ(b)は、石油およびガス貯留層の透過性以上の開始透過性を有する複合材料を選択することをさらに含む、請求項乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)は、前記多層管を前記坑井の内部の有孔ケーシング内に位置付けることと、炭化水素を前記多層管の内部に輸送することと、をさらに含む、請求項乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップ(d)は、生産管類を前記多層管の内部に位置付けることをさらに含む、請求項乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
水の浸入を制御するように動作可能な、石油およびガス貯留層からの炭化水素の生産のためのシステムであって、
a.請求項3に記載の装置と、
b.前記請求項3に記載の装置を取り囲む有孔ケーシングと、備え、
前記請求項3に記載の装置が、炭化水素を輸送するように動作可能である、システム。
【請求項12】
生産管類を前記請求項3に記載の内部に位置付けることをさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油およびガス貯留槽の生産を制御することに関する。より具体的には、本発明は、感水性複合体を持つ多層管での水の生成を制御するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油およびガスを産出する坑井におけるケーシングの漏洩は、産業全体の恒常的懸念である。ケーシングの漏洩は、とりわけ、累層または貯留層からの酸性または苛性の水による腐食、点腐食、および亀裂によって引き起こされ得る。ケーシングを坑井内、特に傾斜井に降下させることによる摩耗は、累層からの腐食性の水によって引き起こされる漏洩による影響をより受けやすい弱点へとつながる可能性がある。ケーシングの漏洩は、高圧流体およびガス、ならびに不必要な化学物質がアニュラスに進入することを可能にする場合があり、極端な場合には、地下での暴噴につながる可能性がある。さらに、ケーシングの漏洩は、生産された炭化水素および他の坑井流体がケーシングから周辺環境へと漏れることを可能にする場合がある。ケーシングの漏洩に対処するための現行の実践は、一般的に漏洩しているケーシングの内部にライナーを設置することを含み、これは完成時に管類の内側の直径を縮小させる。これは次に、潜在的に掘削孔の生産およびサービス(メンテナンス等)を制限する可能性がある。
【0003】
石油およびガス井の生産者に立ちはだかる別の課題は、水の生成の管理および制御である。石油およびガスを産出する坑井が操業中であるとき、地層水もまた自然に生産中の掘削孔に向かって移動する。掘削孔内への水の侵入は、この水を後に地表で石油およびガスから分離させなければならないため、生産コストを増大させることになる。加えて、これは生産される石油およびガスの量を低下させることになる。水の生成を制御する一般的な現行の実践は、スマート坑井の完成については、パッシブ型およびアクティブ型両方の流入制御デバイスの使用による。しかしこれらの方法論は初期コストの点と、同時にメンテナンスおよび修理に費やす時間およびコストの点で高額である。
【0004】
したがって、これらの問題についてより効率的で費用効率の高い解決法を発見する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本願の実施形態は、ケーシングの漏洩および水の生成の両方の課題に対処し、石油およびガス開発の長期計画のために有効かつ実行可能な解決法である。本願の実施形態は、ケーシングまたは管類のために使用されるもの等であって、石油生産での貯留層の透過性と同様またはそれより高い透過性を維持する一方で、完全に水に対して不透過性であるか、または水の生成の早期の進入で代替的に水を遮断する能力を有する多層管を含む。本概念は、垂直坑井、水平坑井およびマルチラテラル坑井等の複雑な坑井に役立つことができるものと考えられる。
【0006】
本願の追加的な利益は、これらがメンテナンス不要かつ先行技術よりも操作しやすい解決法を提供することである。管のほとんどの製造は、特定の坑井の条件に合致するようにカスタマイズされた、地表でのより制御された環境において完了される。また、炭化水素の回収の改善に加えて、コスト削減のための場所の提供において、これは豊富に存在する、現地の砂および粘土等の容易に取得できる自然土壌資源を使用する。
【0007】
本願の一実施形態において、地下貯留層からの炭化水素の生産において有用なパイプ内への水の侵入を制御するための装置は、多層管を備え、本多層管は、外部パイプ層と、外部パイプ層の内部に長手方向に整列した内部パイプ層と、および外部パイプ層と内部パイプ層との間の親水性複合材料とを含む。複合体は、砂、シルト、および粘土、ならびにそれらの混合物から成る群から選択される材料を含む。本複合材料は、化学的に反応せず、この材料が水の存在下で膨潤するが炭化水素を吸収しないような、そして水にさらされたときに内部パイプ層の少なくとも一部分を覆う不透過性の障壁を形成するように機能するような、吸収性を有する。
【0008】
一実施形態において、内部パイプ層および外部パイプ層は、中実壁部材である。一実施形態において、複合材料は、石油およびガス貯留層の透過性以上の初期透過性を有する。外部パイプ層および内部パイプ層は、炭化水素がそこを通って流れることのできる穴を含むことができる。有孔ケーシングは多層管を取り囲むことができ、多層管は生産流体を輸送することができる。代替的に、生産管類は多層管の内部に配置されることができる。
【0009】
一実施形態において、複合体は、成形粒子をさらに含む。成形粒子の形状は、六角形、八角形、十字形、または星形であることができる。
【0010】
一実施形態において、地下貯留層からの炭化水素の生産において有用なパイプへの水の侵入を制御するための方法は、(a)多層管を提供するステップであって、本多層管は、外部パイプ層と、外部パイプ層の内部に長手方向に整列した内部パイプ層とを含む、ステップと、(b)砂、シルト、および粘土、ならびにそれらの混合物から成る群から複合材料を選択するステップであって、本複合材料は化学的に反応せず、本複合材料は、材料は水の存在下で膨潤するが炭化水素を吸収しないように、および水にさらされると本複合材料が内部パイプ層の少なくとも一部分を覆う不透過性の障壁を形成するように機能するように、吸収性を有する、ステップと、(c)外部パイプ層と内部パイプ層との間の空間に複合材料を追加するステップと、(d)坑井の内部に多層管を位置付けるステップと、を含む。
【0011】
一実施形態において、複合材料を追加するステップは、浸漬、浴、ダンピング、充填、および予備成形から成る群より選択される方法によって実施される。一実施形態において、内部パイプ層および外部パイプ層は、中実壁部材であり、ステップ(b)は、多層管が坑井の内部に位置付けられたときに、完全に水に対して不透過性の複合材料を選択することをさらに含む。一実施形態において、外部パイプ層および内部パイプ層は、流体がそこを通って流れることのできる穴を含むことができ、ステップ(b)は、石油およびガス貯留層の透過性以上の初期透過性を有する複合材料を選択することを含み得る。
【0012】
一実施形態において、ステップ(d)は、坑井の中の有孔ケーシングの内側に多層管を位置付けることと、多層管の内部に生産流体を輸送することとをさらに含む。一実施形態において、ステップ(d)は、多層管の内部に生産管類を位置付けることをさらに含む。
【0013】
一実施形態において、ステップ(b)は、成形粒子を持つ複合体を選択することをさらに含む。成形粒子の形状は、六角形、八角形、十字形、または星形であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
列挙された本発明の特長、側面、および長所、ならびに明白となる他のものが得られ、詳細に理解されることができるように、短く要約された本発明のより具体的な説明は、本明細書の一部分を形成する図面に図示される実施形態を参照することにより入手され得る。しかし、添付の図面は本発明の好ましい実施形態のみを図示しており、これらは、したがって、本発明は他の同等に有効な実施形態を認め得るため、本発明の範囲を限定するものとは考慮されないことに留意されたい。
【0015】
図1】本願の実施形態の管の断面図である。
【0016】
図2a図1の管の一実施形態の透視図である。
【0017】
図2b図1の管の一実施形態の別の透視図である。
【0018】
図3図1の管の一実施形態の断面図である。
【0019】
図4図1の管の別の実施形態の断面図である。
【0020】
図5a図1の管の一実施形態において使用される複合体の図である。
【0021】
図5b図1の管の一実施形態において使用される代替の複合体の図である。
【0022】
図5c図1の管の一実施形態において使用される別の代替の複合体の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照すると、本明細書の実施形態の多層管10は、多層(プレーン、中実、スロット、または穴あき)炭素鋼管の概念を用いて加工される。管10は、砂、シルト、および粘土、もしくは砂、シルトおよび粘土の混合物を含む土壌構成成分等を含む感水複合材料を含む特殊な堆積物である内部複合体12を有し、これは貯留層の水の生産と、透過性を貯留層と同程度になお維持するか、または炭化水素生産ではより高めることにより、複合体12の透過性を有意に除去または低下させることになる。
【0024】
多層管10は、内径16および外径18を持つ外部パイプ層14を備える。内部パイプ層20は、外径22および内径24を有する。外部パイプ層14の内径16は、内部パイプ層20の外径22より大きく、層の間にアニュラス26を形成する。内部複合体12は、アニュラス26の内部に配置される。内部パイプ層20の内径24が中央チャンバー25を画定する。生産およびメンテナンスを含む坑井の作業は、中央チャンバー25の空いた空間の内部で行われ得る。一実施形態において、生産は、中央チャンバー25を通り地表までに起こる。一実施形態において、中央チャンバー25の内部に存在する生産管類は、生成された流体を地表へと運搬する。
【0025】
管10は既製部材であり、使用されることになる坑井の位置に輸送される前に、現地外で製作され得る。管10は、設置されることに先立ち、最適化コストおよび生産の検討のために、それぞれのセグメントの全長および直径という点において、16、18、22および24のサイズとされる。例えば、アニュラス26のサイズ、およびそれに従い水の生成の効率的な制御のための複合体12の厚さの決定(つまり、有効厚さ要因)は、数々の要因に依存する。これらの要因は、水中塩分範囲および複合体12の透過性の変化を含む。有効厚さ要因は、例えば、効率的なパイプ断熱R値の策定になぞらえて、実験的にまたは理論的に決定されることができる。
【0026】
内部複合体12は、管10のアニュラス26の内部に配置されることになる、砂、シルト、粘土等の感水性複合体、または感水性のある他のあらゆる材料を含む。一実施形態において、管10は、浸漬処理または浴処理を通じて複合体12を内部パイプ層20の外表面または外部パイプ層14の内表面に塗布することによって製作される。一実施形態において、複合体12は、ビーズ状または他の粒子形状であり、アニュラス26内にダンピングまたは充填される。一実施形態において、複合体12は、鋳造または他の方法により予備成形される。アニュラス26の内部に複合体12を配置する他の代替的方法もまた使用され得る。以下でさらに説明するように、いくつかの用途において、複合体12は、貯留層の特性および特定の用途の目的のために専用に混合および適合された、容易に入手可能な現地の砂、シルト、および粘土の混合から成ることになる。複合体12は水を吸収するが、水と化学反応しない。複合体12は親水性であり、したがって水を吸収する能力がある一方で、生成された炭化水素との接触により、吸収も膨潤もしない。
【0027】
図2aを参照すると、本願の一実施形態において、管10は、腐食性の水28の層を含む区域の内部に置かれたケーシングである。外部パイプ層14および内部パイプ層20の両方は中実壁部材であり、つまり、これらは穿孔、穴またはスロット等のいかなる開口部も有しない。外部パイプ層14は、腐食性の水28に曝露する。設置後の一定期間、外部パイプ層14は、腐食性の水28に対する障壁を維持することができる。しかし、時間が経つにつれて、図2bに見られるように、腐食性の水28は外部パイプ層14を外部パイプ層14の中に裂け目30が形成されるまで劣化させるように作用する。腐食性の水28は、次に外部パイプ層14を貫通させることができ、内部複合体12と接触する。
【0028】
一実施形態において、内部複合体12は、その透過性が管10の内部への腐食性の水28のさらなる貫通を遮断するように、固体であるか、実質的に固体であるか、または流体との接触時に実質的に固体となるかのうちのどれかである。内部複合体12はまた、腐食性の水に極めて耐性がある特性を有することになり、つまり、腐食性の水28は内部複合体12の劣化を引き起こさない。腐食性の水28を遮断する複合体12の働きは、いかなる技師の観察や行動も必要とすることなく起こる。したがって、腐食性の水28が管10の外部パイプ層14を貫通することができても、腐食性の水28が管10の機能性を損なわず、生産または中央チャンバー25の内部で発生している他の作業にも影響を与えないように、複合体12は不透過性の障壁を形成している。これは、メンテナンスのコストを最小化し、中央チャンバー25の外側へ漏れる可能性のある石油またはガスの潜在的な損失を回避することになる。さらに、本解決法は、ケーシングの漏洩に対処するために一般的に使用されるケーシングライナーの適用を回避する。ケーシングライナーの使用は、中央チャンバー25のサイズを小さくし、それによりチャンバー25の内部で行われる作業に影響を与える。
【0029】
図3に示される一実施形態において、管10は、有孔ケーシング32の内部に配置する生産管類である。流動空間36は、ケーシング32の内表面と管10の外表面との間に形成される。パッカー34は、空間36の内部に断続的な間隔で置かれ、空間36に沿った流体の流れを遮断する。石油、ガス、水、および他の生産流体は、従来の手法によって有孔とされたケーシング32を通過し得る。管10は、外部パイプ層14内と内部パイプ層20内の両方に、スロットまたは穴あきの機械扉38を有する。これらの穴またはスロット38は、水圧または機械的手段により曝露され、著しい圧力降下なしに炭化水素が管10の壁を通過して中央チャンバー25へと入る(図1)ことを可能にする。
【0030】
もしも生産中に水がケーシング32を通って流動空間36に進入し、外部パイプ層14内の穴を通って移動した場合、複合体12と接触することになる。複合体12は、膨潤することによって反応し、これによりその透過性を低下させて水に対して不透過性になる。この反応は、いかなる技師の観察および活動も必要とせずに、複合体12の特性自体に基づいて行われる。
【0031】
したがって、管10の中央チャンバー25(図1)には水はほとんどまたは全く侵入しない。これは生成された液体の品質を維持することを支援し、流入制御デバイスの必要性を排除する。図3に示される実施形態において、複合体12は、それが使用される石油およびガス貯留層の透過性以上の開始透過性を有し、貯留層基準に基づいて水の侵入を排除させる膨潤特性を有するように開発または選択されることになる。貯留層基準は、累層水の塩分または生成された水の塩分の範囲を含む。
【0032】
図4に示される一実施形態は、生産ケーシングとして管10を有し、生産管類40は多層管10の中に配置される。本実施形態において、生産管類40と種々のパッカー34とを含む中央チャンバー25(図1)もまた、生産管類40と管10との間に配置される。一実施形態において、生成された液体は中央チャンバー25の内部表面を直接流れ、生産管類40およびパッカー34は使用されない。
【0033】
図4の実施形態における管10の外部パイプ層14および内部パイプ層20の両方が有孔であり、炭化水素が管10を通って流れることを可能にする穴を有する。生産中に水が管10に達し、複合体12と接触すると、複合体12は膨潤することによって反応する。膨潤はその透過性を低下させ、水に対して不透過性の障壁となる。この反応は、複合体12自体の特性に基づいて起こり、いかなる技師の観察や行動も必要とされない。したがって、管10の中央チャンバー25(図1)には水はほとんどまたは全く進入しない。水が管10を通って進入しないため、水は生産管類40に進入しない。これは生成された液体の品質を維持することを支援し、流入制御デバイスの必要性を排除する。
【0034】
管10の内部の複合体12の整合性を保護するため、油性の掘削流体等の特殊な掘削流体およびセメンテーション方法論が使用されることになる。複合体12は、掘削およびセメンテーション工程がその将来的機能に影響を及ぼさないように設計されることになる。本実施形態において、複合体12は、それが使用される石油およびガス貯留層の透過性以上の開始透過性を有し、貯留層基準に基づいて水の侵入を排除させる膨潤特性を有するように開発または選択されることになる。貯留層基準は、累層水の塩分または生成された水の塩分の範囲を含む。
【0035】
特定の用途について意図される機能に依存して、記載の実施形態において、数々の種類の複合体12が必要とされる。自然界に存在することが周知のものは、リバースエンジニアリングによって特定の目的に適するように適合された、費用効率の高い良好な複合体12を開発することができる。すでに発見されているように、石油およびガス井の生産性は、とりわけ、貯留層の砂の流体への効率的な透過性に依存する。砂の透過性の低下は、石油、ガス、および水の生成の全体の速度を低下させる。掘削に先立ち、ほとんどの貯留層の砂は、間隙水と粘土鉱物の両方を含む。間隙水の存在は、石油およびガス田の発見時に、粘土がある一定の程度まで水和し、水と膨潤平衡状態にあることを意味する。坑井が石油生産のために掘削されると、いくらかの水が掘削泥水から砂へと浸みこむことになる。この入ってきた水は粘土粒子の膨潤を招き、それにより部分的に砂中の極小開口を遮蔽し、炭化水素が通って掘削孔へと流れることができる通路のサイズを縮小し、それにより掘削孔への炭化水素の流速を低下させる。ほぼ枯渇した油田から追加的な炭化水素を得るために、砂に水が注入されると、問題はよりいっそう深刻になる。
【0036】
水にさらされることによる劣化に特に影響を受ける貯留層の砂は、「感水性がある」と呼ばれる。砂の感水性の定性的な指標として広く使用される実験室方法の1つは、乾燥時および種々の化学組成を持つ水での飽和時の、岩石試料の透過性における相違の判定である。異なる粘土は、水で濡らされた時に体積変化へのさまざまな能力を示す。体積の変化は、水の化学組成にある程度依存する。存在する粘土の種類、入ってきた水の塩分、および砂の感水性等の要素は、透過性の変化に影響を与えることになる。
【0037】
自然界において、カオリン、イライト、および混合層粘土(イライト‐モンモリロナイト)を含む砂が最も感水性が高いと認められており、ごく少量のカオリンおよびイライトのみを含む砂は、最も感水性が低い。最も多くカオリンおよびイライトを含む砂は、感水性において中間である。これを認識すると、生産速度に影響を与えるまさにその砂および粘土が、説明されたような特定の必要性に合致するために、複合体12を形成するために選択され組み合わされることにより積極的使用に供されることができる。
【0038】
複合体はまた、特殊な実験室作業による加工材料であり得る。図5a〜図5cを見て、実施形態は特別な形状をしたコンポーネントの複合体12を含む。例えば、複合体12は、図5aに図示されるように、流体の流れのためのチャネル44を持つ六角形42のコンポーネントを含み得る。代替的に、コンポーネントは、八角形または他の多面形状であってもよく、それぞれの形状の側面の長さは、互いに等しくてもよく、または異なってもよい。チャネル44は、流体の経路の歪みが制御され、しかも粘土が膨潤すると、透過性が効率的に低下するかまたは除去されるように、粘土でコーティングされてもよい。実施形態は、図5bに図示されるように、十字形粒子46を形成する、または図5cに図示されるように、星形粒子48を形成する、新規の複合体構造を含む。
【0039】
本発明は詳細に説明されたが、種々の変更、代替および修正が、それにより本発明の原則および範囲を逸脱することなく行われることができるということが理解されるものとする。したがって、本発明の範囲は、以下の請求項およびそれらの適切な法的同等物により画定されるものとする。
【0040】
単数形の「a」「an」、および「the」は、文脈が明確に別様であると指示しない限り、複数の指示対象を含む。随意のまたは随意的にとは、続いて説明された事象または状況が、発生することもしないこともあることを意味する。説明は、事象または状況が発生する事例および発生しない事例を含む。本願において、範囲は1つの特定の値からおよび/または別の特定の値まで表され得る。かかる範囲が表されるとき、別の実施形態は、かかる範囲内のすべての組み合わせとあわせて、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値であることが理解されるものとする。
【0041】
本願を通じて、特許または公開文献が参照される箇所では、これらの参照の全体の開示は、これらの参照が本願における記述と矛盾する場合を除き、本発明に係る技術をより完全に説明するために、参照により本願に組み込まれることが意図される。
以下に、本発明の概念を示す。
[概念1]
地下貯留層からの炭化水素の生産において有用なパイプへの水の浸入を制御するための装置であって、
多層管であって、
外部パイプ層と、
前記外部パイプ層の内部に長手方向に整列し、中央チャンバーを画定する内部パイプ層と、
前記外部パイプ層と前記内部パイプ層との間の親水性複合材料と、を含む、多層管を備え、
前記複合材料は、砂、シルト、および粘土、ならびにそれらの混合物から成る群から選択され、
前記複合材料は、水と化学反応せず、
前記複合材料は、前記複合材料が水の存在下で膨潤するように吸収性を有し、炭化水素を吸収せず、水にさらされると前記内部パイプ層のうちの少なくとも一部分を覆う、水に対して不透過性の障壁を形成するように機能する、装置。
[概念2]
前記内部パイプ層および外部パイプ層は、中実壁部材である、概念1に記載の装置。
[概念3]
前記複合材料は、石油およびガス貯留層の透過性以上の開始透過性を有する、概念1乃至2のいずれかに記載の装置。
[概念4]
前記多層管を取り囲む有孔ケーシングをさらに備え、前記多層管は、前記中央チャンバーを通じて生産流体を運搬する、概念1乃至3のいずれかに記載の装置。
[概念5]
前記多層管の前記中央チャンバーの内部に存在する生産管類をさらに備える、概念1乃至4のいずれかに記載の装置。
[概念6]
前記外部パイプ層および内部パイプ層は両方とも有孔であり、前記多層管は、炭化水素が前記外部および内部パイプ層を横断して前記中央チャンバーへと流れることを可能にするように機能可能である、概念1乃至5のいずれかに記載の装置。
[概念7]
前記複合体は、成形粒子をさらに含む、概念1乃至6のいずれかに記載の装置。
[概念8]
前記成形粒子の形状は、六角形、八角形、十字形、および星形から成る群から選択される、概念7に記載の装置。
[概念9]
地下貯留層からの炭化水素の生産において有用なパイプへの水の浸入を制御するための方法であって、
(a)多層管を提供するステップであって、前記多層管は、外部パイプ層と、前記外部パイプ層の内部に長手方向に整列する内部パイプ層と、を含み、中央チャンバーを画定する、ステップと、
(b)砂、シルト、および粘土、ならびにそれらの混合物から成る群から親水性複合材料を選択するステップであって、前記複合材料は、水と化学反応せず、前記複合材料は、前記材料が水の存在下で膨潤し、炭化水素を吸収しないような、そして水にさらされると前記複合材料が前記内部パイプ層のうちの少なくとも一部分を覆う、水に対して不透過性の障壁を形成するように機能するような、吸収性を有する、ステップと、
(c)前記外部パイプ層と前記内部パイプ層との間の空間に前記複合材料を追加するステップと、
(d)前記多層管を坑井の内部に位置付けるステップと、を含む、方法。
[概念10]
前記複合材料を追加する前記ステップは、浸漬、浴、ダンピング、充填、および予備成形から成る群から選択される方法によって実施される、概念9に記載の方法。
[概念11]
前記内部パイプ層および外部パイプ層は、中実壁部材である、概念9乃至10のいずれかに記載の方法。
[概念12]
前記外部パイプ層および内部パイプ層は、両方とも有孔であり、前記多層管は、炭化水素が前記外部および内部パイプ層を横断して前記中央チャンバーへと流れることを可能にするように機能可能であり、ステップ(b)は、石油およびガス貯留層の透過性以上の開始透過性を有する複合材料を選択することをさらに含む、概念9乃至11のいずれかに記載の方法。
[概念13]
ステップ(d)は、前記多層管を前記坑井の内部の有孔ケーシング内に位置付けることと、生産流体を前記多層管の前記中央チャンバーの内部に輸送することと、をさらに含む、概念9乃至12のいずれかに記載の方法。
[概念14]
前記方法は、生産管類を前記多層管の中央チャンバーの内部に位置付けることと、生産流体を前記多層管の内部に輸送することと、をさらに含む、概念9乃至13のいずれかに記載の方法。
[概念15]
ステップ(b)は、成形粒子を持つ複合材料を選択することをさらに含み、前記成形粒子の前記形状は、六角形、八角形、十字形、および星形から成る群から選択される、概念9乃至14のいずれかに記載の方法。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図5c