特許第5756239号(P5756239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756239
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20150709BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   A61M5/315
   A61M5/24
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-545856(P2014-545856)
(86)(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公表番号】特表2015-500087(P2015-500087A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】SE2012051311
(87)【国際公開番号】WO2013085453
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2014年7月24日
(31)【優先権主張番号】1151163-1
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/567,293
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503211493
【氏名又は名称】エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルメン,グンナル
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−511659(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/043605(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/089246(WO,A1)
【文献】 特表2010−521275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに解放可能に接続された後方ハウジング(2)および容器ハウジング(3)を備える薬剤送達装置(1)であって、前記容器ハウジング(3)は、プランジャを備える薬剤容器を受けて保持するように配置され、前記後方ハウジング(2)は、
前記容器ハウジング(3)に設置されると前記薬剤容器の前記プランジャに対して作用するように配置されたプランジャロッド(4)と、
前記プランジャロッド(4)を駆動するように配置された駆動機構と、
ロッキングホイール(6)およびロッキング手段(7)を備える、前記プランジャロッド(4)をロックするためのロッキング機構(5)とを備え、前記ロッキング手段(7)は、前記ロッキングホイール(6)が回転することを前記ロッキング手段(7)が防ぐ動作位置と、前記ロッキングホイール(6)が回転することを前記ロッキング手段(7)が可能にする非動作位置との間を移動可能であり、前記プランジャロッド(4)は、前記ロッキングホイール(6)の開口を貫通して延び、前記プランジャロッド(4)および前記ロッキングホイール(6)の前記開口は、互いに噛み合って、前記ロッキングホイール(6)に対する前記プランジャロッド(4)の回転を防ぎながら前記ロッキングホイール(6)に対する前記プランジャロッド(4)の軸方向移動を可能にするように配置され、
前記ロッキング機構はさらに、
弾性部材(8)を備え、前記弾性部材(8)は、可動ロッキング手段(7)に配置され、前記ロッキングホイール(6)が回転することを前記ロッキング手段(7)が可能にする前記非動作位置の方に前記可動ロッキング手段(7)をずらすように前記可動ロッキング手段(7)に対して作用するように配置されることを特徴とする、薬剤送達装置(1)。
【請求項2】
前記可動ロッキング手段(7)は、前記動作位置において前記ロッキングホイール(6)の歯付き面(11)と係合する歯付きセグメント(10)を有する可撓性アーム(9)を備える、請求項1に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項3】
前記可動ロッキング手段(7)は、各々が前記動作位置において前記ロッキングホイール(6)の歯付き面(11)と係合する歯付きセグメント(10)を有する2つの可撓性アーム(9)を備える、請求項1に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項4】
前記ロッキング機構(5)は、前記後方ハウジング(2)に配置された中空ケーシング(12)を備え、前記可撓性アーム(9)は、前記ケーシング(12)の外壁に設けられた凹部に形成され、前記ロッキングホイール(6)は、前記可動ロッキング手段(7)が動作位置にあるときに前記可撓性アーム(9)の前記歯付きセグメント(10)および前記ロッキングホイール(6)が相互作用するように前記中空ケーシング(12)内に配置される、請求項2または3に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項5】
前記容器ハウジング(3)は、前記後方ハウジング(2)に接続されると、前記可動ロッキング手段(7)と係合し、前記可動ロッキング手段(7)を動作位置に持っていく、請求項1から4のいずれか1項に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項6】
前記容器ハウジング(3)は、前記後方ハウジング(2)に解放可能に接続されることができるロッキングリング(13)に解放可能に装着され、前記ロッキングリング(13)は、前記後方ハウジング(2)に接続されると、前記可動ロッキング手段(7)と係合し、前記可動ロッキング手段(7)を動作位置に持っていく、請求項1から4のいずれか1項に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項7】
前記可動ロッキング手段(7)は、外向きに延びる突起(14)を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項8】
前記弾性部材(8)は、線ばねを備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項9】
前記線ばねは、各々が別々の可撓性アーム(9)に配置される2つの対向する端部を有する、請求項8に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項10】
前記中空ケーシング(12)は、円筒形の断面を有し、前記可動ロッキング手段(7)は、直径方向に互いに対向して配置され、前記線ばねは、前記中空ケーシング(12)の前記外壁の輪郭を辿るように配置される、請求項9に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項11】
前記弾性部材(8)は、金属薄板ばねを備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項12】
前記弾性部材(8)は、前記ケーシング(12)の内面に沿って装着される金属薄板ばねを備える、請求項4から7のいずれか1項に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項13】
前記可撓性アーム(9)は、前記プランジャロッド(4)の長手方向に対して垂直な方向に延びている、請求項2から12のいずれか1項に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項14】
前記可撓性アーム(9)は、前記プランジャロッド(4)の長手方向に平行な方向に延びている、請求項2から12のいずれか1項に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項15】
前記薬剤送達装置は、再利用可能な注射器である、請求項1に記載の薬剤送達装置(1)。
【請求項16】
前記薬剤送達装置は、再利用可能な吸入器である、請求項1に記載の薬剤送達装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬剤送達装置に関し、特に、新たな薬剤容器の再装填中にプランジャロッドが薬剤容器のプランジャに対して調整可能な、再利用可能な注射器または吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
従前の薬剤容器が空になったときに新たな薬剤容器を再装填できる再利用可能な送達装置が、先行技術において公知である。WO‐2009/101005には、薬剤カートリッジのプランジャに対するプランジャロッドの自動調整が可能な注射器が記載されている。当該注射器は、薬剤の用量を設定および再設定することができる用量設定機構と、上記用量設定機構に接続された駆動ナットとを備える。上記駆動ナットは、駆動ナットの開口における雌ねじおよびプランジャロッドの雄ねじによって、プランジャロッドに回転可能に結合されている。当該注射器は、プランジャロッドが通過する開口を有するロッキングナットをさらに備える。ロッキングナットおよびプランジャロッドは、プランジャロッドとロッキングナットとの間の相対的な回転移動を防ぎながら、ロッキングナットに対するプランジャロッドの軸方向移動が可能とされるように成形されている。注射器を作動させると、駆動ナットが回転し、プランジャロッドはロッキングナットによって回転移動できないので、結果として、プランジャロッドは薬剤容器のプランジャの方に軸方向移動し、その結果、ある量の薬剤が送達装置の注射針を通して放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、動作の信頼性が向上した薬剤送達装置を提供することである。この目的および他の目的は、請求項1に規定される薬剤送達装置によって解決される。本発明の好ましい実施例は、従属請求項に規定される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明の局面に従って、互いに解放可能に接続された後方ハウジングおよび容器ハウジングを備える薬剤送達装置が提供され、プランジャを備える薬剤容器が、容器ハウジング内に受けられ、保持され得る。後方ハウジングは、薬剤容器が上記容器ハウジングに設置されると上記薬剤容器のプランジャに対して作用するように配置されたプランジャロッドを備える。さらに、プランジャロッドを駆動するように駆動機構が後方ハウジングに配置され、プランジャロッドをロックするためにロッキング機構が配置される。ロッキング機構は、ロッキングホイールおよびロッキング手段を備え、ロッキング手段は、ロッキングホイールが回転することをロッキング手段が防ぐ動作位置と、ロッキングホイールが回転することをロッキング手段が可能にする非動作位置との間を移動可能である。プランジャロッドは、ロッキングホイールの開口を貫通して延び、プランジャロッドおよびロッキングホイールの開口は、互いに噛み合って、ロッキングホイールに対する上記プランジャロッドの回転を防ぎながらロッキングホイールに対するプランジャロッドの軸方向移動を可能にするように配置される。ロッキングホイールが回転することをロッキング手段が可能にする非動作位置の方に可動ロッキング手段を付勢するように可動ロッキング手段に対して作用するように、弾性部材が配置される。
【0005】
WO‐2009/101005に記載されている先行技術の解決策では、可動ロッキング部材は、ロッキング部材自体の弾性特性によって非動作位置の方に付勢される。時が経つにつれてこれらの付勢弾性特性は減少して、可動ロッキング手段は、非動作位置をとるべき時でさえロッキング位置にとどまることになり得る。本発明が可動ロッキング手段を非動作位置の方に付勢するために別個の弾性部材を設けるという事実のために、ロッキング部材の材料の疲労がロッキング部材を動作位置にとどまらせるというリスクが大幅に軽減され、そのため、送達装置の有用な耐用年数が向上し、使い勝手のよさが向上する。
【0006】
薬剤送達装置の実施例によれば、可動ロッキング手段は、動作位置においてロッキングホイールの歯付き面と係合する歯付きセグメントを有する少なくとも1つの可撓性アームを備える。ロッキング手段の歯付き面およびロッキングホイールにより、ロッキング手段が動作位置にあるときにプランジャロッドのロッキングが確実に行われる。
【0007】
薬剤送達装置の実施例によれば、可動ロッキング手段は、各々が動作位置においてロッキングホイールの歯付き面と係合する歯付きセグメントを有する2つの可撓性アームを備える。2つのロッキング手段を設けることにより、ロッキング動作の信頼性がさらに向上し、ロッキングホイールの傾斜および偏心位置決めを回避することができる。
【0008】
薬剤送達装置の実施例によれば、ロッキング機構は、後方ハウジングに配置された中空ケーシングを備え、可撓性アームは、ケーシングの外壁に設けられた凹部に形成され、ロッキングホイールは、上記可動ロッキング手段が動作位置にあるときに可撓性アームの歯付き面およびロッキングホイールが相互作用するように上記中空ケーシング内に配置される。この構成により、ロッキング機構が確実に機能することが保証される。ロッキング手段が非動作位置にある限り、ロッキングホイールはケーシング内で自由に回転可能であり、ロッキング手段が動作位置をとるとすぐに、ロッキングホイールはしっかりとロックされる。
【0009】
薬剤送達装置の実施例によれば、容器ハウジングは、後方ハウジングに接続されると、可動ロッキング手段と係合し、上記可動ロッキング手段を動作位置に持っていく。これにより、容器ハウジングが後方ハウジングに装着される(これは、ユーザが空の容器を新たな容器と交換した場合である)とすぐに、ロッキング手段は自動的に動作位置に持っていかれ、使用可能な状態の送達装置を得るためにユーザからさらなる動作が必要とされないことが保証される。
【0010】
薬剤送達装置の実施例によれば、容器ハウジングは、上記後方ハウジングに解放可能に接続されることができるロッキングリングに解放可能に装着され、上記ロッキングリングは、後方ハウジングに接続されると、可動ロッキング手段と係合し、上記可動ロッキング手段を動作位置に持っていく。多くの場合、容器は、薬剤供給業者から容器ハウジングに送達される。ユーザが空のまたはそうでなければ完了した容器を交換する必要がある場合、内部に容器を有する容器ハウジングがロッキングリングに滑り込ませられ、次いでロッキングリングが後方ハウジングに取付けられる。これがなされるので、ロッキングリングは、自動的にロッキング手段に動作位置をとらせることになる。
【0011】
薬剤送達装置の実施例によれば、可動ロッキング手段は、外向きに延びる突起を備える。当該突起により、例えば容器ハウジングまたはロッキングリングとの相互作用が確実に行われる。
【0012】
薬剤送達装置の実施例によれば、弾性部材は、線ばねを備える。線ばねは、送達装置内に容易に装着可能な、安価で信頼性が高くかつ予測可能なばね要素である。
【0013】
薬剤送達装置の実施例によれば、線ばねは、各々が別々の可撓性アームに配置される2つの対向する端部を有する。線ばねの端部は、接着剤、融剤によって、または機械的手段によって、可撓性アームに接着させることができる。
【0014】
薬剤送達装置の実施例によれば、中空ケーシングは、円筒形の断面を有し、可動ロッキング手段は、直径方向に互いに対向して配置され、線ばねは、中空ケーシングの外壁の輪郭を辿るように配置される。これにより、ロッキング機構の、バランスのとれた、空間効果的な構成が提供される。
【0015】
薬剤送達装置の実施例によれば、弾性部材は、金属薄板ばねを備える。金属薄板ばねは、非常に省スペースであり、高いばね定数を備えることができ、ロッキング機構が確実に機能することを達成する。
【0016】
薬剤送達装置の実施例によれば、弾性部材は、ケーシングの外壁の内面に沿って装着される金属薄板ばねを備える。これは、非常に空間効果的な、ロッキング機構を構成する態様である。
【0017】
薬剤送達装置の実施例によれば、可撓性アームは、プランジャロッドの長手方向に対して垂直な方向に延びている。これは、ロッキング機構の長さを縮小させる必要がある場合に有利である。
【0018】
薬剤送達装置の実施例によれば、可撓性アームは、プランジャロッドの長手方向に平行な方向に延びている。これは、送達装置の厚みを小さくすることが望ましい場合に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る送達装置の実施例の斜視図である。
図2】本発明に係る送達装置の第1の実施例の分解図である。
図3】本発明に係る送達装置の第1の実施例のロッキング機構の分解図である。
図4】本発明に係る送達装置の第1の実施例のロッキング機構の斜視図である。
図5a】本発明に係る送達装置の第1の実施例のロッキング機構の上面図である。
図5b】本発明に係る送達装置の第1の実施例のロッキング機構の上面図である。
図6】本発明に係る送達装置の第2の実施例のロッキング機構の分解図である。
図7】本発明に係る送達装置の第2の実施例のロッキング機構の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好ましい実施例の説明
ここで、本発明の実施例について詳細に説明する。本願に記載されるように、「遠位または後方部分/端部」という用語が用いられる場合、これは、患者の薬剤送達箇所から最も遠く離れたところにある送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。対応して、「近位または前方部分/端部」という用語が用いられる場合、これは、患者の薬剤送達箇所の最も近くにある送達装置の部分/端部またはその部材の部分/端部を指す。
【0021】
本発明の2つの実施例について以下で説明する。これらの実施例に共通であるのは、薬剤送達装置が、送達すべき薬剤の用量を設定および再設定するための用量設定機構と、プランジャロッドに回転可能に接続される駆動ナットを備える駆動装置と、ある用量の送達に必要なエネルギを受け、保存し、放出するように配置された、螺旋状に巻回された板ばねなどのエネルギ蓄積部材と、ある用量が設定されてユーザが薬剤を注射する準備ができているときに薬剤送達装置を作動させるための作動部材とを備えることである。駆動ナットは、好ましくは、プランジャに設けられた雄ねじと相互作用するように配置された雌ねじを有する開口を備える。
【0022】
本発明の薬剤送達装置の実施例において、図1に示されるように、薬剤送達装置1は、後方ハウジング2と、容器ハウジング3と、後方ハウジング2および容器ハウジング3を互いに解放可能に接続するロッキングリング13とを備える。
【0023】
図2は、本発明に係る薬剤送達装置の第1の実施例の分解図である。この図は、装置の構造、特にプランジャロッド4とロッキング機構5との相互作用を示している。図には図示されていないが、後方ハウジング2内に、駆動ナットの開口の雌ねじおよび上記プランジャロッド4に設けられた雄ねじによってプランジャロッド4に回転可能に接続される駆動ナットを有する駆動機構がある。容器ハウジング3は、針などの送達部材を有するシリンジまたはカートリッジなどの薬剤容器を保持する。送達部材は、また、ねじ切り結合またはバヨネット結合などの任意の従来の手段によって容器ハウジング3の前方端部に装着されるように適合されてもよい。送達部材は、針、ノズルまたはマウスピースであってもよい。容器は、薬剤が容器から放出されたときにプランジャロッドが相互作用する可動プランジャをさらに備える。容器ハウジング3は、好ましくは装着状態において薬剤送達装置の外殻の一部を形成するロッキングリング13によって、後方ハウジング2に接続されている。ロッキング機構5は、容器ハウジング3と、後方ハウジング2内に位置する駆動機構との間に配置されている。ロッキング機構5については、以下でより詳細に説明する。送達部材が針である場合に不測の針刺し損傷を回避して送達部材を破損から保護するために、薬剤送達装置が使用されていないときに容器ハウジングを覆うようにキャップ15が配置可能である。
【0024】
ここで、図3図4図5aおよび図5bを参照して、本発明の第1の実施例に係るロッキング機構5について説明する。ロッキング機構5は、弾性部材8と、ロッキング手段7と、歯付き面11を備えたロッキングホイール6とを備える。ロッキング手段7は、さらに、中空ケーシング12と、2つの可撓性ロッキングアーム9とを備える。各々の可撓性ロッキングアーム9は、ロッキングアームが動作位置にあるときにロッキングホイール6の歯付き面11と係合する歯付き面10を備える。ロッキングホイール6は、プランジャロッド4が貫通する開口を備え、それらは、軸方向の相対的な移動を可能にしながらプランジャロッド4とロッキングホイール6との間のいかなる相対的な回転移動も防ぐように、対応する形状を有している。これは、可撓性アーム9が非動作位置にあるときにはプランジャロッドが回転および軸方向に移動することが可能とされることを意味する(図5aを参照)。一方、可撓性アーム9が動作位置にあるときには、すなわち歯付きセグメントが歯付き面11と相互作用するときには、プランジャロッドは軸方向に移動可能であるが、いかなる回転移動も阻止される(図5bを参照)。金属薄板ばねの形態の弾性部材8が、中空ケーシング12の外壁の内面に隣接して位置決めされている。金属薄板ばねは、可撓性アーム9を非動作位置の方に付勢するように配置されている。
【0025】
図1図4図5aおよび図5bを参照して、本発明の第1の実施例に係る送達装置の機能について説明する。容器ハウジング3内に保持された容器が空になると、またはそうでなければ交換が必要な状態では、ロッキングリング13が後方ハウジング2から取外される。ロッキングリング13は、ねじ山またはその他の好適な接続によって後方ハウジング2に接続されていてもよい。これがなされると、容器ハウジング3は取外され、通常は内部に容器を備える新たな容器ハウジングと交換される。当然のことながら、容器ハウジング3を再利用して容器自体のみを交換することも可能である。新たな、または再利用される容器ハウジング3は、ロッキングリング13を貫通して延びるように配置され、後方ハウジング2の方に操作される。ほとんどの場合、古いカートリッジが空であったので、プランジャロッド4は、今や最も伸長した位置にあり、格納位置への再位置決めを行わなければならない。プランジャロッド4が駆動機構に回転可能に接続されているという事実のために、この軸方向の再位置決めは、プランジャロッド4が回転することが可能になる場合にのみ可能である。可撓性アーム9が動作位置にある限り、プランジャロッド4の回転は阻止される。しかし、この段階ではロッキングリング13は後方ハウジングに結合されていないので、可撓性アーム9は、弾性部材8、この場合金属薄板ばねによって、非動作位置に持っていかれて、プランジャロッド4は回転することが可能になる。ユーザは、容器のプランジャをプランジャロッド4に対して設置し、単にプランジャロッド4を後方に押すことによって、プランジャロッド4を格納位置に戻す。有利に、弾性部材が設けられ、当該弾性部材は、プランジャロッド4および後方ハウジングの遠位部に対して作用して、プランジャロッドを伸長位置の方に持っていくことによって、プランジャロッド4の端部が常に容器のプランジャと接触したままになることが確実になる。容器がプランジャロッド4を十分に再位置決めすると、ロッキングリング13は、例えばねじ切り接続、スナップフィット接続またはその他の好適な接続によって、再び後方ハウジング2に結合される。後方ハウジング2へのロッキングリング13の結合により、可撓性アーム9の突起14は、ロッキングリング13の内面と接触し、可撓性アーム9は、弾性部材8の付勢に対して再び動作位置をとるようになる。この段階ではプランジャロッド4のいかなる回転も阻止されるので、駆動ナットのいかなる回転移動もプランジャロッドに軸方向運動を行わせることになる。そして、プランジャロッド4は常に容器のプランジャと接触しているので、薬剤送達装置は、すぐに好ましい用量の薬剤を放出する準備ができる。好ましくは、プランジャロッド4の近位端、すなわち容器のプランジャと対向する端部は、プランジャに対する摩擦を軽減するためにスピナを備える。
【0026】
図6および図7を参照して、本発明に係る薬剤送達装置の第2の実施例について説明する。この実施例では、弾性部材8は、金属薄板ばねの代わりに、線ばねによって構成される。線ばねは、一端が、プランジャロッド4の長手方向軸に概して平行な方向に延びる2つの可撓性アーム9の各々に取付けられている。上記の可撓性アーム9と同様に、これらは、ロッキングホイール6に設けられた歯付き面11と相互作用するよう意図された歯付きセグメント10を備える。ロッキングリング13は、図6に別々の細部として示されている2つの部分13’および13”を備える。しかし、使用する際には、それらは通常は単一の細部、すなわちロッキングリング13として考えられる。前の図に示される第1の実施例と同様に、ロッキング機構5は後方ハウジング2内に配置されている。容器が空になると、容器ハウジング(図6には図示せず)は、ロッキングリング13とともに分解される。これがなされると、線ばね8は弾性で外向きに撓んで、可撓性アーム9に非動作位置をとらせることになる。新たな容器を備える容器ハウジングが後方ハウジング2に装着され、ロッキングリング13が後方ハウジング上の所定の位置に持っていかれるとすぐに、可撓性アーム9は再び動作位置に持っていかれ、薬剤送達装置は使用可能な状態になる。
【0027】
最後に、本発明に係る薬剤送達装置は、先行技術の装置に勝るいくつかの利点を有していることが理解される。公知の装置の可撓性アームは、疲労しがちであり、その結果、プランジャロッドをもはや格納できないか、またはほとんど格納できない装置がもたらされる。これは、可撓性アームがもはや動作位置に持っていかれないにもかかわらず非動作位置もとらないという理由のためである。これらの可撓性アームは、一般にプラスチックでできており、当該材料の弾性特性は、時間とともに劣化し、その結果、アームが永久的に変形して、非動作位置に戻らなくなる。可撓性アームの歯付きセグメントが依然として完全にまたは部分的にロッキングホイールの歯付き面と接触しているにもかかわらずプランジャロッドが戻されると、歯付きセグメントおよび歯付き面は急速に摩滅することになる。最悪の場合のシナリオでは、これは、薬剤送達装置の機能に影響を及ぼし得る。なぜなら、回転に対するプランジャロッドの確実なロッキングをもはや保証できないからである。さらに、可撓性アームおよびロッキングホイールが係合している状態でのプランジャロッドの格納は、無視できないノイズを引起す。
【0028】
上記のおよび図面中の実施例は、本発明の非制限的な例であるとみなされるべきであり、特許請求の範囲内でさまざまに変形されてもよい、ということが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7